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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1352652
審判番号 不服2018-12790  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-26 
確定日 2019-07-05 
事件の表示 特願2017-30310号「水処理設備および水処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年8月30日出願公開、特開2018-134586号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月21日の出願であって、平成29年12月26日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年3月7日付けで手続補正がされ、平成30年6月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の理由
原査定(平成30年6月26日付け拒絶査定)の理由は次のとおりである。
請求項1ないし3に係る発明は、引用文献1に記載の発明、引用文献2に記載の事項および本願出願前の周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2016-144778号公報(引用文献1)
2.特開2004-025018号公報(引用文献2)
3.特開2012-170848号公報(新たに引用された周知技術を示
す文献)(周知文献1)
4.特開2014-233658号公報(新たに引用された周知技術を示
す文献)(周知文献2)

第3 本願発明
請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成30年9月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される以下のものである。
「 【請求項1】
有機物を含む被処理水を膜分離する膜分離部と、
前記膜分離部の上流側に配され、前記被処理水中のバイオポリマー濃度を所定閾値以下となるように調整する前処理部と、を備え、
前記前処理部は、膜分離前の前記被処理水中のバイオポリマー濃度を測定するバイオポリマー濃度測定部と、
前記バイオポリマー濃度測定部によって測定された前記バイオポリマー濃度が前記所定閾値を超えた場合に、ファウリングを抑制するようにファウリング抑制物質を膜分離前の前記被処理水に添加するファウリング抑制物質添加部と、
前記バイオポリマー濃度測定部および前記ファウリング抑制物質添加部よりも上流側に、水質浄化作用を有する微生物を生育させた濾材を有し、かつ該濾材を用いて膜分離前の前記被処理水を濾過する生物接触濾過部とを備え、
前記所定閾値は、9μg/L以上17μg/L以下の範囲のいずれかの値に設定されている、
水処理設備。
【請求項2】
前記膜分離部は、精密濾過または限外濾過膜を備え、該精密濾過または該限外濾過膜を用いて前記被処理水を膜分離する、
請求項1に記載の水処理設備。
【請求項3】
有機物を含む被処理水を膜分離する膜分離工程と、
前記膜分離工程前に、前記被処理水中のバイオポリマー濃度を所定閾値以下となるように調整する前処理工程と、を備え、
前記前処理工程は、水質浄化作用を有する微生物を生育させた濾材を用いて前記被処理水を濾過し、濾過された前記被処理水中のバイオポリマー濃度を測定し、測定されたバイオポリマー濃度が所定閾値を超える場合に、前記被処理水にファウリング抑制物質を添加して、前記膜分離工程で膜分離する被処理水とし、測定されたバイオポリマー濃度が所定閾値以下の場合に、前記被処理水にファウリング抑制物質を添加せずに、前記膜分離工程で膜分離する被処理水とし、
前記所定閾値を、9μg/L以上17μg/L以下の範囲のいずれかの値に設定する、
水処理方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。
(a)「【請求項1】
分子量1万以上のタンニンの組成比率を高めたタンニン(以下「精製タンニン」と称す。)を含む水処理凝集剤。
【請求項2】
請求項1において、前記精製タンニンのうち、分子量1万以上のタンニンの占める割合が、TOC換算で20重量%以上であることを特徴とする水処理凝集剤。
【請求項3】
請求項1または2において、前記精製タンニンが、限外濾過膜あるいは透析膜を用いて精製した柿もしくはミモザ由来のタンニンであることを特徴とする水処理凝集剤。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水処理凝集剤を被処理水に添加して凝集処理する水処理方法。
【請求項5】
請求項4において、前記被処理水が生物代謝物を含むことを特徴とする水処理凝集剤。
【請求項6】
請求項5において、前記被処理水が多糖類を含むことを特徴とする水処理方法。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項において、無機凝集剤を併用添加することを特徴とする水処理方法。
【請求項8】
請求項7において、前記無機凝集剤が塩化鉄であることを特徴とする水処理方法。
【請求項9】
請求項4ないし8のいずれか1項において、前記被処理水に前記水処理凝集剤を添加して凝集処理した後、固液分離し、分離水を膜分離処理することを特徴とする水処理方法。
【請求項10】
請求項9において、前記固液分離処理を沈殿、加圧浮上、濾過、および膜分離のいずれか1以上で行うことを特徴とする水処理方法。」

(b)「【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、各種産業排水や生活排水または該排水の生物処理水、あるいは表層水、地下水などの被処理水に含まれる有機物、特に多糖類等の生物代謝由来の高分子有機物を、効率的に凝集処理することができる。
このため、これらの被処理水を凝集、固液分離処理し、得られた分離水を更にMF膜、UF膜またはRO膜、特にRO膜で膜分離処理する水処理において、膜汚染、それによる不可逆的ファウリングを防止して、長期に亘り安定かつ効率的な処理を行える。」

(c)「【0028】
<被処理水>
本発明で凝集処理する被処理水としては、各種産業排水や生活排水または該排水の生物処理水あるいは表層水、地下水などが挙げられるが、本発明は特に、多糖類等の生物代謝由来の高分子有機物、とりわけ生物処理水等の多糖類を含む被処理水の凝集処理に有効であり、本発明によれば、このような被処理水に対して、前述の作用機構で高い凝集処理効果を得ることができる。
通常、生物処理水には、多糖類等の生物代謝由来の高分子有機物が0.01?20mg/L程度含まれている。」

(d)「【0035】
被処理水に対する精製タンニンの添加量は、被処理水中の有機物含有量にもよるが、TOC成分として0.1?5mg/L、特に0.2?2mg/Lとなるように添加することが望ましい。精製タンニンの添加量が少な過ぎると十分な凝集処理効果を得ることができず、多過ぎても添加量に見合う凝集処理効果の向上効果は得られず、むしろ有機物の除去率が低減するおそれもある。」

上記(a)ないし(d)からして、上記引用文献1には、水処理方法として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「膜分離処理の前に、有機物(特に多糖類等の生物代謝由来の高分子有機物)を含む被処理水にタンニンを含む凝集剤を少な過ぎることなく多過ぎることのない量を添加することで凝集処理して分離水を得ることと、凝集処理した後、分離水の膜処理を行うこと、を備えた、水処理方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の【0027】、【0032】、【0045】、【図3】の記載からして、当該引用文献2には、「生物活性炭塔内の活性炭に担持された微生物により、逆浸透膜のファウリングに影響する微量有機物質の分解を行い、生物活性炭塔から流出した微生物による後段の逆浸透膜の目詰まりを防止し得る程度の非酸化性スライムコントロール剤を添加する」という技術的事項が記載されていると認められる。

3.周知文献1、2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記周知文献1(【発明が解決しようとする課題】【0009】【0010】、【0012】)には、「膜の目詰まりの発生を有効に防止するために、被処理水の水質の時間や季節による変動、地理的差異に応じて凝集剤注入率を適切に変動させる」ことの記載があり、また、同周知文献2(【0033】、【0054】、【0055】、【0059】【表1】、【0061】)には、「膜間差圧の上昇を抑える(膜の目詰まりを防止する)ために、被処理水のTOCに応じて、膜ろ過装置のろ過膜を閉塞させやすい100,000以上2,000,000g/mol以下程度の多糖類、タンパク質、ポリペプチド等の高分子量の親水性有機物、生物処理代謝物、分散剤等の高分子有機物を分解する酸化剤の添加量を調整する」ことの記載があることからして、膜の目詰まりの発生を抑制する添加剤の量を、被処理水の水質に応じて調整することは、本願出願前の周知技術であると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明3について
(1)対比
本願発明3と引用発明とを対比する。
○引用発明の「タンニンを含む凝集剤」は、本願発明3の「ファウリング抑制物質」に相当する。

○引用発明の「有機物(特に多糖類等の生物代謝由来の高分子有機物)を含む被処理水にタンニンを含む凝集剤を」「添加することで」「凝集処理した後、分離水の膜処理を行うこと」は、本願発明3の「有機物を含む被処理水を膜分離する膜分離工程」に相当する。

○引用発明の「膜分離処理の前に、有機物(特に多糖類等の生物代謝由来の高分子有機物)を含む被処理水にタンニンを含む凝集剤を少な過ぎることなく多過ぎることのない量を添加することで凝集処理して」膜分離がなされる「分離水を得ること」は、この有機物にバイオポリマーが含まれているといえる(下記※で示す周知文献2の【0055】および本願明細書の【0021】参照)ことを考慮すると、本願発明3の「膜分離工程前に、被処理水中のバイオポリマー濃度を」「調整する前処理工程」であって、「前処理工程は、」「被処理水にファウリング抑制物質を添加して」「調整」した「被処理水」を「膜分離工程で膜分離する被処理水と」することに一応相当する。


「表1において、「高分子有機物」は、100,000以上2,000,000g/mol以下程度の多糖類、タンパク質、ポリペプチド等の高分子量の親水性有機物、生物処理代謝物、分散剤等を含み、膜ろ過装置のろ過膜を閉塞させやすい物質である。」(周知文献2の【0055】)
「バイオポリマーとは、各種被処理水中に存在する有機物の一種であり、一般的には、みかけ分子量が10万Da以上の多糖類およびタンパク質とされている。」(本願明細書の【0021】)

上記からして、本願発明3と引用発明とは、「有機物を含む被処理水を膜分離する膜分離工程と、膜分離工程前に、被処理水中のバイオポリマー濃度を調整する前処理工程と、を備え、前処理工程は、被処理水にファウリング抑制物質を添加して調整した被処理水を膜分離工程で膜分離する被処理水とする、水処理方法」という点で一致し、
本願発明3は、膜分離工程前の前処理工程において、「被処理水中のバイオポリマー濃度を測定し、バイオポリマー濃度が所定閾値を超える場合に、被処理水にファウリング抑制物質を添加し」、「バイオポリマー濃度が所定閾値以下の場合に、被処理水にファウリング抑制物質を添加」しないものであるのに対して、引用発明は、膜分離工程前(前処理工程)において、バイオポリマーを含む被処理水にタンニンを含む凝集剤(ファウリング抑制物質)を少な過ぎることなく多過ぎることのない量を添加するものであるものの、「被処理水中のバイオポリマー濃度を測定し、バイオポリマー濃度が所定閾値を超える場合に、被処理水にファウリング抑制物質を添加し」、「バイオポリマー濃度が所定閾値以下の場合に、被処理水にファウリング抑制物質を添加」しないという特定がない点で、少なくとも相違している。

上記相違点について検討する。
引用文献1には、バイオポリマー濃度そのものの変動を閾値との関係で把握することについて記載も示唆もない。
また、引用文献2には、生物活性炭塔から流出した微生物による後段の逆浸透膜の目詰まりを防止し得る程度の非酸化性スライムコントロール剤を添加することの記載があり、周知文献1、2より、膜の目詰まりの発生を抑制する添加剤の量を、被処理水の水質に応じて調整することが本願出願前の周知技術であるとしても、引用文献2および周知文献1、2いずれにおいても、バイオポリマー濃度そのものの変動を閾値との関係で把握することについて記載も示唆もない。
そうすると、引用発明に、引用文献1、2に記載の事項および周知文献1、2に記載の事項(本願出願前の周知技術)を適用したとしても、バイオポリマー濃度そのものの変動を閾値との関係で把握することを前提にする、上記相違点に係る本願発明の特定事項を導き出すことはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明3は、引用発明、引用文献1、2に記載の事項および周知文献1、2に記載の事項(本願出願前の周知技術)に基いて当業者が容易に発明することができたものである、とはいえない。

2.本願発明1、2について
引用発明(水処理方法)を実施する装置(設備)の発明を引用発明’とみた上で、本願発明1、2(水処理設備)と引用発明’とを対比したとき、少なくとも上記「1.本願発明3について」で示した相違点と同じ相違点があるといえることからして、本願発明1、2は、「1.本願発明3」で示した理由と同様の理由より、引用発明’、引用文献1、2に記載の事項および周知文献1、2に記載の事項(本願出願前の周知技術)に基いて当業者が容易に発明することができたものである、とはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-06-25 
出願番号 特願2017-30310(P2017-30310)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 関根 崇  
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 豊永 茂弘
櫛引 明佳
発明の名称 水処理設備および水処理方法  
代理人 藤本 昇  
代理人 中谷 寛昭  
代理人 藤本 昇  
代理人 藤本 昇  
代理人 中谷 寛昭  
代理人 中谷 寛昭  

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