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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N |
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管理番号 | 1352686 |
審判番号 | 不服2018-8736 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-26 |
確定日 | 2019-07-02 |
事件の表示 | 特願2014-550752「光経路により生体試料中の微生物を検出し直接同定する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月18日国際公開、WO2013/104864、平成27年 2月 5日国内公表、特表2015-504163、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)1月9日(パリ条約による優先権主張 2012年1月10日 フランス)を国際出願日とする出願であって、平成28年9月16日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月7日付けで拒絶理由が通知され、同年9月12日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月22日付けで拒絶査定されたところ、同年6月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年2月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-11に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2003-052393号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正には、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって、請求項1の工程c)に「工程b)の後に、」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、「工程b)の後に、」という事項は、当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討すると、工程b)と工程c)の順序を限定するものであるから、「工程b)の後に、」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、実施例1のプロトコル(明細書段落【0048】?【0053】)には、一次増菌培地で16時間インキュベーションした後に、当該増菌培地をTTC(検出する手段)と感作捕捉基質(単一片基質)と接触させることが記載されているから、「工程b)の後に、」という事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すよう に、補正後の請求項1-11に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成30年6月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 試料中に存在する少なくとも1つの微生物を検出する方法において、 a)第1の容器において、前記試料を少なくとも1つの培地と接触させる工程と、 b)前記第1の容器を適切な条件で6-48時間培養し、前記微生物の増殖を可能にする工程と、 c)工程b)の後に、前記第1の容器又は第2の容器中で前記微生物を捕捉するための単一片基質及び反応混合物であって、前記微生物を検出する手段を含む前記反応混合物と、前記試料及び前記培地からなる混合物の一部又は全てを接触させる工程と、 d)混合物を含む前記第1又は第2の容器内で、前記検出する手段により検出され前記捕捉するための単一片基質に固定された前記微生物の存在を検出する工程と を本質的に含む方法。」 なお、本願発明2-11の概要は以下のとおりである。 本願発明2-11は、それぞれ本願発明1を減縮した発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2003-052393号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。以下同様。) 「【0050】実施例 実行可能性試験で、人工接種食品サンプルから標的病原菌の捕捉を示した。脂肪分22%の牛挽肉の小分けサンプル25gに、各種レベルの大腸菌O157:H7病原菌を人工的に接種した。標的病原菌を、ストマッカーバッグ内部に設置した捕捉基材上に固定化した捕捉抗体を用いて、ストマッカーバックから直接捕捉した。以下のプロトコールを用いた。 (1)脂肪分22%の牛挽肉25gを、無菌Whirl-Pakストマッカーバッグ5個のそれぞれに入れた。 (2)再生/増殖培地225mLを各バッグに加えた。 (3)5種類のレベルの大腸菌O157:H7それぞれのサンプルを、各バッグに加えた。 (4)バッグを30秒間消化/均質化した。 (5)捕捉基材(すなわち、ヤギ抗大腸菌O157:H7抗体をスポット添加したイモビロン-P膜)を各バッグ内に入れた。 (6)バッグを、約100rpmで振盪しながら、37℃で5時間インキュベートした。 (7)捕捉基材を各バッグから回収した。 (8)捕捉基材に捕捉された標的病原菌を検出した。 【0051】牛挽肉からの捕捉プロトコールの感度は、試験開始時(T0)でバッグ当たり計約50cfu(望ましい値:1cfu/225mL)であることが認められた。牛挽肉サンプルの総生物負荷(bio-burden)は、T0で約2×103cfu/mLであることが認められた。免疫捕捉は、BBL(商標)CHROMagar(商標)0157の表面に、各洗浄済み捕捉基材を倒置し、それを37℃で終夜インキュベートすることで検出した。スポット配置された捕捉抗体下で円形に藤色の増殖が存在すると、陽性捕捉を示している。 【0052】本明細書に記載のように、本発明の方法およびシステムは、各種検出法に対象微生物を搬送するための搬送プラットフォームとして用いることもできる。食物病原菌だけでなく、臨床的、工業的および環境的病原菌、ならびに生物テロに関与する病原菌も、本発明の方法およびシステムによれば、迅速に捕捉および検出することができる。以下に記載するいくつかの検出方法を、本発明の方法およびシステムと組み合わせて用いることができる。 (a)標的病原菌を含む消化/均質化被験サンプルを、固定化捕捉抗体を保持した狭い捕捉カートリッジ型機器に強制的に通すことができる。標的病原菌と捕捉基材の間の相互作用増加により、捕捉が促進される。 (b)捕捉基材(例:蛍光標識抗体)でコーティングした捕捉機器を、ストマッカーバッグ/サンプリング機器で、固体/液体被験サンプル中または前増菌被験サンプル内に挿入して、標的病原菌を捕捉/検出することができる。 (c)流動細胞計測を用いて、本発明の方法およびシステムを自動化することができる。改良された蛍光団および生存マーカーを用いることで、粒子状物による非特異的蛍光に対する識別向上を行うことができる。DNA含有量の測定によっても、対象とする病原菌の識別を改善することができる。」 したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「無菌Whirl-Pakストマッカーバッグに脂肪分22%の牛挽肉25gを入れ、 再生/増殖培地225mLを各バッグに加え、 大腸菌O157:H7それぞれのサンプルを、各バッグに加え、 バッグを30秒間消化/均質化し、 補足基材である、ヤギ抗大腸菌O157:H7抗体をスポット添加したイモビロン-P膜を各バッグ内に入れ、 約100rpmで振盪しながら、37℃で5時間インキュベートしてから、捕捉基材を各バッグから回収し、 BBL(商標)CHROMagar(商標)0157の表面に、各洗浄済み捕捉基材を倒置し、それを37℃で終夜インキュベートすることで捕捉基材に捕捉された標的病原菌を検出する方法」 2.引用文献2について また、平成28年9月16日付けの拒絶理由通知で引用された特表2011-512861号公報(引用文献2という。)には、次の事項が記載されている。 「【実施例】 【0022】 実施例1:表現型及び免疫学的反応を結合することによる、大腸菌種と大腸菌O157のダブル・カウント この分析の目的は、出願人によって市販されているTEMPO(登録商標)システムを使用して、大腸菌種を酵素的に、大腸菌O157を免疫学的に同時に計測することである。 (手順) 工程1:分析される試料のアリコートによる反応培地の再懸濁: 反応培地は、 -大腸菌種に特異的な酵素基質;4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニド(Biosynth ref.M-5700):T0、50mg/lにおいて非蛍光(0.1mg/lと1000mg/lとの間で変化できる); -ラテックス粒子(Oxoid,ref.DR0620M)、青色、大腸菌O157に特異的な抗体によって感作されたもの、1%の乾燥エキストラクト(0.1%と10%との間を変化することができる); -栄養ベース:濃度10g/lのペプトン; -インヒビター・システム:濃度1.5g/lの胆汁酸塩 を含む。 計数を実施する観点から、試料中(例えば、4mlの主要供給水)の中に再懸濁される反応培地は、次にTEMPO(登録商標)カードに組み込まれる。 カードのインキュベーション前に、後者のウェルは青色で非蛍光である。【0023】 工程2:カードのインキュベーション: TEMPO(登録商標)カードは、次に24時間37℃でインキュベートされる。このインキュベーションの間、抗大腸菌O157抗体により感作された粒子の凝集の反応及び酵素反応(大腸菌に特異的な基質の分解)は、TEMPO(登録商標)カードのウェルに存在する標的バクテリアの場合には、バクテリアの増殖と同時に起こる。 【0024】 工程3:24時間のインキュベーション後のテストの読み取り: 大腸菌O157についての陽性反応:抗大腸菌O157抗体/大腸菌O157細胞複合体の形成があり、ラテックス粒子の凝集を結果として生じ、続いて青色の呈色反応の消失、続いてウェルの底に青色の沈殿を形成する。 大腸菌種について陽性の反応:大腸菌種による基質の分解後の陽性ウェルにおける蛍光の出現(蛍光性の4-メチルウムベリフェロン分子の放出) 大腸菌種について陽性であり、大腸菌O157について陰性のウェル:蛍光性及び青色。 大腸菌種及び大腸菌O157について陽性のウェル:蛍光性及び無色(+ウェルの底における青色の沈殿)。 大腸菌種及び大腸菌O157について陰性のウェル:非蛍光性及び青色。 次に、大腸菌O157と大腸菌種について陽性であるウェルは、試料の1グラムごとの、大腸菌O157及び大腸菌種のコロニー形成単位(CFU)の数を、MPN表(内部アルゴリズム)により測定するために、計数した。」 したがって、上記引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「大腸菌種を酵素的に、大腸菌O157を免疫学的に同時に計測する方法であって、 工程1:TEMPO(登録商標)カード上で分析される試料のアリコートを反応培地に再懸濁する工程であって、前記反応培地は、大腸菌種に特異的な酵素基質である4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニド、大腸菌O157に特異的な抗体によって感作された青色のラテックス粒子、栄養ベース及びインヒビター・システムを含み、 工程2:前記カードのインキュベーションする工程であって、前記TEMPO(登録商標)カードは、次に24時間37℃でインキュベートされ、このインキュベーションの間、抗大腸菌O157抗体により感作された粒子の凝集の反応及び大腸菌に特異的な基質を分解する酵素反応を起こす工程であり、 工程3:24時間のインキュベーション後のテストの読み取りを行う工程であって、抗大腸菌O157抗体/大腸菌O157細胞複合体の形成があり、青色のラテックス粒子の凝集を結果として生じ、ウェルの底に青色の沈殿を形成するることで大腸菌O157について陽性であることが示されるとともに、ウェルに大腸菌種による基質の分解による蛍光が出現することにより大腸菌種について陽性であることが示される工程 を含む方法。」 3.引用文献3について また、平成28年9月16日付けの拒絶理由通知で引用された特開平11-133029号公報(引用文献3という。)には、次の事項が記載されている。 「【0025】 【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。 【実施例1】本実施例では、大腸菌O157含有液体試料を用いて、磁気ビーズ凝集法及び培養法の検出感度を評価した。 (1)培養菌含有試料の調製 大腸菌O157実験室保存株(ATCC43888から継代培養)をトリプチケースソイブイヨン(TSB)中で37℃にて18時間培養した。この培養液を滅菌生理食塩水で、10倍ずつ希釈して10段階(10^(-1)?10^(-9))のシリーズからなる培養菌含有試料(生理食塩水希釈シリーズ)を調製した。なお、別途、上記培養液を滅菌生理食塩水で10^(-1)?10^(-9)となるように希釈した各希釈液を調製し、その各希釈液をトリプチケースソイ寒天平板培地で培養し、最高希釈倍率で発育したコロニー数から培養原液の菌数を測定したところ、菌数は10^(9) mlであった。一方、市販牛ミンチ肉25gをトリプチケースソイブイヨン(TSB)225mlで洗い出した液を、37℃にて6時間培養した。その培養液を希釈液として、前記と同様の大腸菌O157培養液の10段階(10^(-1)?10^(-9))の希釈シリーズ(ミンチ肉洗出液希釈シリーズ)を調製した。 【0026】(2)抗体感作磁気ビーズの調製 実験室保存の大腸菌O157:H7株(ATCC43888)をハートインフュージョン寒天培地(HIA培地)で37℃にて20時間培養した後、生理食塩水に浮遊し、100℃にて2時間加熱処理して得た加熱菌体抗原を1/15Mリン酸緩衝液(pH7.4)に懸濁し、その懸濁液をウサギの耳静脈に投与した。1週間経過する毎に再度同様に免疫し、計4回の免疫操作を行った。免疫開始から5週目に採血して血清を分離し、抗血清を得た。上記抗血清を、磁気粒子(外径=2.8μm,ダイナル社)10^(7 )?10^(8) 個/mlを含むホウ酸緩衝液(pH9.5)と等量で混合し、37℃で24時間回転混和した。磁石で抗体感作磁気粒子を集め、上清を吸引除去し、抗体感作磁気粒子を、牛血清アルブミン0.1%を含むリン酸緩衝液(pH7.4)で4回洗浄し、更に前記リン酸緩衝液を加えて4℃で一晩放置した。磁気粒子を磁石で集め、上清を吸引除去し、0.02%アジ化ナトリウムと0.1%牛血清アルブミンとを含むリン酸緩衝液(pH7.4)に懸濁し、抗体感作磁気粒子懸濁液とした。 【0027】(3)検出法 (3a)磁気ビーズ凝集法 反応管に抗体感作磁気粒子懸濁液30μlをとり、前項(1)で調製した各培養菌含有試料1mlを加え、室温で10分間、攪袢しながら反応させた。続いて、磁石で磁気粒子を集め、上清を吸引除去した。磁気粒子に、0.05%ツイーン20を含む0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)1mlを加え、磁気粒子を再懸濁した後、反応ウェルに移し、再び磁気粒子を集め、上清を吸引除去した後、0.05%ツイーン20を含む0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)150μlを加えて緩やかに攪袢し、凝集の有無を肉眼で判定した。結果を以下の表1に示す。凝集が認められなかった場合を「-」で示し、凝集が認められた場合には、その程度に応じて3段階で、「+++」(著しく強い凝集)、「++」(強い凝集)、そして「+」(普通の凝集)でそれぞれ示す。 【0028】 【表1】 【0029】表1に示すように、被検試料1ml中に大腸菌O157が10^(5) 個以上存在すると、凝集が現れた。一般に、試料中の夾雑菌は、大腸菌O157の検出感度に影響を与えるが、ミンチ肉洗出液希釈シリーズの実験結果から明らかなように、本発明による磁気ビーズ凝集反応においては、夾雑菌が検出感度に影響を与えることはなかった。 【0030】(3b)磁気ビーズ培養法 上記凝集反応の判定後に、凝集の有無に関わらず、磁気ビーズ懸濁液50μlをセフェキシム・テルル酸カリウム添加ソルビットマッコンキー寒天培地(CT-SMAC)で分離培養した。培養菌含有試料が生理食塩水希釈シリーズである場合は、発育した集落の有無によって、大腸菌O157の有無を判定した。培養菌含有試料がミンチ肉洗出液希釈シリーズである場合は、CT-SMACでの疑わしい集落について、従来法による培養試験を実施して、大腸菌O157の有無を判定した。すなわち、疑わしい集落を、大腸菌O157因子血清(デンカ生研)を用いスライド凝集反応を行い、凝集した集落をハートインフュージョン寒天培地(HIA培地)で純培養し、TSI寒天培地でブドウ糖からの酸産生及びガス産生、硫化水素産生、乳糖からの酸産生、及び白糖からの酸産生を判定し、LIM確認培地で硫化水素産生及びリシンデカルボキシラーゼの有無を判定し、VP半流動寒天培地でブドウ糖からのアセトイン(アセチルメチルカルビノール)の産生を判定し、それらの諸性状が大腸菌特有であることを確認し、大腸菌O157の有無を判定した。結果を以下の表2に示す。表2において、大腸菌O157が確認された場合を「+」、大腸菌O157が確認されなかった場合を「-」で示す。 【0031】 【表2】 【0032】本発明による磁気ビーズ培養法によれば、被検試料1mlに大腸菌O157を10個添加した場合でも培養して検出することが可能であった。また、夾雑菌が検出感度に影響を与えることはなかった。」 したがって、上記引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 「大腸菌O157実験室保存株(ATCC43888から継代培養)をトリプチケースソイブイヨン(TSB)中で37℃にて18時間培養し、市販牛ミンチ肉25gをトリプチケースソイブイヨン(TSB)225mlで洗い出した液を、37℃にて6時間培養し、その培養液を希釈液として、大腸菌O157培養液の10段階(10^(-1)?10^(-9))の希釈シリーズ(ミンチ肉洗出液希釈シリーズ)を調製し、反応管に抗体感作磁気粒子懸濁液30μlをとり、各培養菌含有試料1mlを加え、室温で10分間、攪袢しながら反応させて、凝集の有無を判定するとともに、凝集反応の判定後に、凝集の有無に関わらず、磁気ビーズ懸濁液50μlをセフェキシム・テルル酸カリウム添加ソルビットマッコンキー寒天培地(CT-SMAC)で分離培養し、CT-SMACでの疑わしい集落について、従来法による培養試験を実施して、大腸菌O157の有無を判定する方法」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「再生/増殖培地225mLを各バッグに加え、」「大腸菌O157:H7それぞれのサンプルを、各バッグに加え」ることは、本願発明1の「a)第1の容器において、前記試料を少なくとも1つの培地と接触させる工程」に相当する。 イ 引用発明1の「約100rpmで振盪しながら、37℃で5時間インキュベート」することと、本願発明1の「b)前記第1の容器を適切な条件で6-48時間培養し、前記微生物の増殖を可能にする工程」とは、「b)前記第1の容器を適切な条件で」「培養し、前記微生物の増殖を可能にする工程」の点で共通する。 ウ 引用発明1の「補足基材である、ヤギ抗大腸菌O157:H7抗体をスポット添加したイモビロン-P膜を各バッグ内に入れ」ることと、本願発明1の「c)工程b)の後に、前記第1の容器又は第2の容器中で前記微生物を捕捉するための単一片基質及び反応混合物であって、前記微生物を検出する手段を含む前記反応混合物と、前記試料及び前記培地からなる混合物の一部又は全てを接触させる工程」とは、「c)第1の容器中で前記微生物を捕捉するための単一片基質と、前記試料及び前記培地からなる混合物の一部又は全てを接触させる工程」の点で共通する。 エ 引用発明1の「BBL(商標)CHROMagar(商標)0157の表面に、各洗浄済み捕捉基材を倒置し、それを37℃で終夜インキュベートすることで捕捉基材に捕捉された標的病原菌を検出する」ことと、本願発明1の「d)混合物を含む前記第1又は第2の容器内で、前記検出する手段により検出され前記捕捉するための単一片基質に固定された前記微生物の存在を検出する工程」とは、「d)前記捕捉するための単一片基質に固定された前記微生物の存在を検出する工程」の点で共通する。 オ 引用発明1の「大腸菌O157:H7それぞれのサンプルを」「加え」た「バッグ」に「補足基材」を入れ、「捕捉された標的病原菌を検出する方法」は、本願発明1の「試料中に存在する少なくとも1つの微生物を検出する方法」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「試料中に存在する少なくとも1つの微生物を検出する方法において、 a)第1の容器において、前記試料を少なくとも1つの培地と接触させる工程と、 b)前記第1の容器を適切な条件で培養し、前記微生物の増殖を可能にす る工程と、 c)前記第1の容器中で前記微生物を捕捉するための単一片基質と、前記試料及び前記培地からなる混合物の一部又は全てを接触させる工程と、 d)前記捕捉するための単一片基質に固定された前記微生物の存在を検出する工程とを本質的に含む方法。」 (相違点) (相違点1)「第1の容器において、前記試料を少なくとも1つの培地と接触させ、」「適切な条件で」「培養し、前記微生物の増殖を可能にする」時間が、本願発明1では「6-48時間」であるのに対して、引用発明1では、「5時間」である点。 (相違点2)「前記微生物を捕捉するための単一片基質」と「前記試料及び前記培地からなる混合物の一部又は全てを接触させる工程」が、本願発明1では、「工程b)の後に」、すなわち「前記第1の容器を適切な条件で6-48時間培養し、前記微生物の増殖を可能にする工程」の後に、行われるのに対して、引用発明1では、「再生/増殖培地225mLを各バッグに加え、大腸菌O157:H7それぞれのサンプルを、各バッグに加え、」「補足基材である、ヤギ抗大腸菌O157:H7抗体をスポット添加したイモビロン-P膜を各バッグ内に入れ、」「約100rpmで振盪しながら、37℃で5時間インキュベートして」おり、引用発明1では微生物を含む培地に捕捉基材を入れてから微生物の増殖を増殖させている点。 (相違点3)「単一片基質に固定された前記微生物の存在を検出する工程」が、本願発明1では、「容器中で前記微生物を捕捉するための単一片基質及び反応混合物であって、前記微生物を検出する手段を含む前記反応混合物と、前記試料及び前記培地からなる混合物の一部又は全てを接触させ」、「容器内で、前記検出する手段により検出され前記捕捉するための単一片基質に固定された前記微生物の存在を検出する」のに対して、引用発明1では、「捕捉基材を各バッグから回収し、BBL(商標)CHROMagar(商標)0157の表面に、各洗浄済み捕捉基材を倒置し、それを37℃で終夜インキュベートすることで捕捉基材に捕捉された標的病原菌を検出する」点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み最初に上記相違点3について検討する。 引用発明1は、「捕捉基材を各バッグから回収」し、「捕捉基材を」「BBL(商標)CHROMagar(商標)0157の表面に倒置し、それを37℃で終夜インキュベートすることで捕捉基材に捕捉された標的病原菌を検出」しており、引用発明1においてはバッグ、すなわち容器から、捕捉基材によって標的病原菌を回収し、バッグから取り出した捕捉基材に対して別途標的病原菌を検出する処理を施すことによって、標的病原菌の検出を行うものである。 すると、引用発明1には、「容器中で前記微生物を捕捉するための単一片基質及び反応混合物であって、前記微生物を検出する手段を含む前記反応混合物と、前記試料及び前記培地からなる混合物の一部又は全てを接触させ」る構成を採用していないことは明らかである。 また、引用発明2及び引用発明3についても同様に、「容器中で前記微生物を捕捉するための単一片基質及び反応混合物であって、前記微生物を検出する手段を含む前記反応混合物と、前記試料及び前記培地からなる混合物の一部又は全てを接触させ」る構成を採用していないことは明らかである。 したがって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1、引用発明2及び引用発明3のいずれに基づいても容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-11について 本願発明2-11も、本願発明1の「容器中で前記微生物を捕捉するための単一片基質及び反応混合物であって、前記微生物を検出する手段を含む前記反応混合物と、前記試料及び前記培地からなる混合物の一部又は全てを接触させ」、「容器内で、前記検出する手段により検出され前記捕捉するための単一片基質に固定された前記微生物の存在を検出する」ことに対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2及び引用発明3のいずれに基づいても容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1-11は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-06-19 |
出願番号 | 特願2014-550752(P2014-550752) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01N)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 草川 貴史 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
▲高▼見 重雄 三木 隆 |
発明の名称 | 光経路により生体試料中の微生物を検出し直接同定する方法 |
代理人 | 園田・小林特許業務法人 |