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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1352698
審判番号 不服2018-6547  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-14 
確定日 2019-07-03 
事件の表示 特願2014- 86584「情報処理装置、プログラム、ファイル取り込み方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日出願公開、特開2015-207102、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月18日の出願であって、平成29年11月1日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年12月27日付けで手続補正がされ、平成30年3月1日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成30年5月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年3月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-21に係る発明は、以下の引用文献1-4に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2005-047256号公報
2.特開2005-242661号公報
3.特開2011-087280号公報
4.特開2008-221634号公報

第3 本願発明
本願請求項1-21に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明21」という。)は、平成30年5月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
無線LANによる無線通信機能を使用してファイルの書き込みおよび読み出しが可能であって外部から削除されなければ書き込まれたファイルが残るリムーバブル記憶装置と有線で接続可能な接続部と、
前記接続部に接続されている前記リムーバブル記憶装置に、無線通信により外部から新たなファイルが書き込まれたか否かを監視する監視部と、
記憶部と、
前記リムーバブル記憶装置に新たなファイルが書き込まれたことを前記監視によって検出した場合に、前記ファイルを前記記憶部に複製すると共に前記リムーバブル記憶装置内の前記ファイルを削除する第1制御を実行するか否かを判断し、前記第1制御を実行すると判断した場合に前記第1制御を実行する制御部と、
を備える
ことを特徴とする情報処理装置。」

なお、本願発明2-21の概要は以下のとおりである。
本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明11は、本願発明1-10のいずれかに対応する、カテゴリ表現が異なる「プログラム」の発明である。
本願発明12は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「ファイル取り込み方法」の発明である。
本願発明13-21は、本願発明12を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2005-047256号公報)には、図面(特に、図1、5-6を参照。)とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。

(1) 段落【0031】-【0032】
「【0031】
図1に示すように、プリンタ1の本体2の右側上部には、第2表示装置11が取り付けられている。第2表示装置11の表示画面11aには、用紙Pに印刷される印刷画像が事前に表示される。
【0032】
本体2の正面右側には、カードスロット(CFカードスロット)12が設けられ、そのカードスロット12には赤外線通信機能内蔵CF(コンパクトフラッシュ(R))型カード(赤外線通信カード)(以下、CF型通信カードという)13が挿抜可能にセットされる。CF型通信カード13は、IrDA(Infrared Data Association)に準拠した赤外線通信機能を有したIrDAモジュールであって、カードスロット12にセットすることで、プリンタ1に赤外線データを受信可能な赤外線通信機能を付与する。プリンタ1は、CF型通信カード13が携帯電話14から受信したデータを取り込んでそのデータに基づく印刷処理を行う。」

(2) 段落【0045】-【0046】
「【0045】
次に、CF型通信カード13の電気的構成を説明する。
CF型通信カード13は、カード制御部31、メモリ32、カード側UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)33、プリンタ側UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)34、赤外線受発光部13a及び表示部(LED)13bを有している。
【0046】
カード制御部31は、メモリ32、カード側UART33、赤外線受発光部13a及び表示部13bを統括する。カード制御部31は、CPU、ROM等を有し、CPUがROMに記憶された制御プログラムや各種アプリケーションプログラムに基づいて各種動作を実行する。カード制御部31は、携帯電話14から赤外線受発光部13aを介してデータを受信すると、カード側UART33に対してそのオブジェクトデータ(個人情報データ又は画像データ)のプリンタ1への転送処理を指示する。この際、メモリ32の一部がオブジェクトデータを一時保存するバッファとして使用される。」

(3) 段落【0050】-【0054】
「【0050】
次に、プリンタ1の電気的構成を説明する。
プリンタ1は、CPU41、ROM42、EEPROM43、RAM44、通信インターフェイス45、ASIC(Application Specific IC)46、ドライバ47a?47d及びユーザインターフェイス48を有し、これらはデータバス49を介してそれぞれ互いに電気的に接続されている。
【0051】
通信インターフェイス(I/F)45は、通信インターフェイス部45a、パラレル通信部45b、ブルートゥース(Bluetooth)(TM)通信部45c、USB(Universal Serial Bus)通信部45d、スロット通信部45e及びシリアル通信部(図示せず)を備えている。各通信部45b?45e等は通信ポート(入力・出力ポート)をそれぞれ有しており、通信インターフェイス部45aは、例えば各通信部45b?45eごとに独立して複数設けられた通信インターフェイス群からなり、各通信部45b?45eがデータを受信するとその旨を、通信(データ受信)の優先順位を管理するCPU41に通知する。CPU41は通信インターフェイス部45aから受け付けたその受信の旨の情報に基づきそのデータの受信が可能かどうかを判定し、例えば次データの受信が可能になった後に最初にデータ受信した場合はその通信部の入力ポートを開く指示を出す。通信インターフェイス部45aはCPU41の指示に従って各通信部45b?45eの入力ポートのうち指示された1つを開くことにより、所定のホスト装置から送られてくるデータを受信し、共通のデータバス49に出力する。これら複数の入力ポート中のどれか1つのポートに最先にデータが到着すると、通信インターフェイス部45aは、そのポートからデータの取り込みを開始するとともにデータの取込みが終了するまでの間、他のポートをビジー状態にして他のポートからのデータ受信を禁止するようになっている。通信インターフェイス部45aはこのような処理をCPU41の指示に従って行う。CPU41は、1つの通信ポートからのデータ受信が開始されると、その受信データが印刷処理に至るまで通るデータ転送経路をその印刷終了時まで確保し、その間は他の通信ポートからのデータ受信を禁止するよう通信インターフェイス部45aに指示する。また、CPU41は通信ポートからのデータ受信を許可するか禁止するかのインターロック処理を行う。通信インターフェイス部45aがホスト装置又はCF型通信カード13から受信要求を受け付けると、CPU41は通信インターフェイス部45aからその旨の通知を受けるようになっており、その通信情報を基に通信ポートの空き状況や受信中の通信ポートなどを管理する。
【0052】
パラレル通信部45bは、ホストコンピュータ(パーソナルコンピュータ)HCから通信ケーブルを介してデータをパラレル通信で受信することが可能である。ブルートゥース通信部45cは、ブルートゥース対応携帯端末BCから所定通信プロトコルに従って所定規格周波数帯域の電波による近距離無線通信でデータを受信することが可能である。USB通信部45dは、USB対応機器(図示せず)から所定通信プロトコルに従ってデータを受信することが可能である。スロット通信部45eは、CFカードスロット12に挿着されたCF型通信カード13又はCFカード(メモリカード)からデータを受信することが可能である。なお、各通信部45b,45c,45d,45eは、ホスト装置との通信上必要な情報やプリンタ1の状態を通知する信号など所定の信号又はデータを送信可能となっている。

・・・(中略)・・・

【0054】
ASIC46は、データに画像処理を施して印刷データを生成したり、CPU41からの指令信号と印刷データに基づいてドライバ47cを介して複数の圧電素子PZを駆動制御する。RAM44には受信バッファ44a、ワークメモリ44b及び出力バッファ44cなどが備えられている。各通信部45b?45eを通じて受信したデータは受信バッファ44aに一旦格納され、所定の処理を施す際のデータはワークメモリ44bに格納され、さらに最終的に生成された印刷データは出力バッファ44cに格納される。」

(4) 段落【0058】-【0060】
「【0058】
CF型通信カード(赤外線通信カード)13に内蔵されているカード制御部31は、IrDA通信回路61、IrDAスタック(IrDAプロトコルスタック)62、ファイル転送部63及びオブジェクト送受信部64を有する。IrDA通信回路61は、CPU及び通信回路(いずれも図示せず)を含むハードウェアからなり、通信レイヤでは物理層に相当する。IrDAスタック62はIrDA通信プロトコル群からなり、データリンク層及びネットワーク層に相当する。また、ファイル転送部63は、携帯電話14から赤外線通信で受信するファイルの転送制御を司り、通信レイヤではトランスポート層及びセッション層に相当する。オブジェクト送受信部64は、携帯電話14との間で行われるIrDA通信と、プリンタ1との間で行われるシリアル通信との2つの通信系統の間でデータの受け渡し制御を行うとともに、受信データチェックなどの必要な処理を司る。オブジェクト送受信部64は、ファイル転送部63からのデータを処理するプレゼンテーション層及びアプリケーション層に相当する部分と、UART33の上位層でシリアル通信プロトコルスタックからなるプレゼンテーション層?データリンク層を構成する部分とからなる。

・・・(中略)・・・

【0060】
また、オブジェクト送受信部64は対応拡張子記憶部64aを有し、カードスロット12にCF型通信カード13が挿着された状態をプリンタ1が電源投入後はじめて検知した時に、プリンタ1からCF型通信カード13へ送られてくる拡張子データを対応拡張子記憶部64aに記憶(セットアップ)する。また、オブジェクト送受信部64は、受信したデータからファイル名を取得し、そのファイル名の中の拡張子と拡張子データとを比較参照することにより、受信したデータがプリンタ1にとって印刷対応能力のある印刷対応データか否かを判定する。詳しくはデータのヘッダ中にあるファイル名「aaaa.bbb」を読み取り、ファイル名から拡張子「bbb」を抜き出し、この拡張子「bbb」と拡張子データとを参照比較することにより印刷対応データか否かを判断する。そして、オブジェクト送受信部64は、その判定結果に基づき印刷対応データの受信は許可するが、印刷未対応データの受信は拒否するデータ選別処理を行う。オブジェクト送受信部64は、印刷対応データである場合、そのオブジェクトデータ及びファイル拡張子「bbb」のデータ(ファイル拡張子データという)をプリンタ1側へ転送する。」

(5) 図5
図5から、プリンタ1のスロット通信部45eが、CF型通信カード13とバス35を介して接続されていることが見てとれる。

よって、上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「プリンタ1の本体2には、カードスロット(CFカードスロット)12が設けられ、そのカードスロット12には赤外線通信機能内蔵CF(コンパクトフラッシュ(R))型カード(赤外線通信カード)(以下、CF型通信カードという)13が挿抜可能にセットされ、CF型通信カード13をカードスロット12にセットすることで、プリンタ1に赤外線データを受信可能な赤外線通信機能を付与し、
プリンタ1は、CF型通信カード13が携帯電話14から受信したデータを取り込んでそのデータに基づく印刷処理を行い、
CF型通信カード13は、カード制御部31、メモリ32、赤外線受発光部13aを有しており、カード制御部31が携帯電話14から赤外線受発光部13aを介してデータを受信すると、メモリ32がオブジェクトデータを一時保存するバッファとして使用され、
プリンタ1は、RAM44、通信インターフェイス45を有し、
通信インターフェイス(I/F)45は、スロット通信部45eを備えており、スロット通信部45eは、CFカードスロット12に挿着されたCF型通信カード13からデータを受信し、
RAM44には受信バッファ44aが備えられており、通信部45eを通じて受信したデータは受信バッファ44aに一旦格納され、
カード制御部31は、オブジェクト送受信部64を有し、オブジェクト送受信部64は、受信したデータがプリンタ1にとって印刷対応能力のある印刷対応データか否かを判定し、印刷対応データである場合、そのオブジェクトデータをプリンタ1側へ転送し、
プリント1のスロット通信部45eが、CF型通信カード13とバス35を介して接続されている、
プリンタ1。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2005-242661号公報)には、図面(特に、図1を参照。)とともに、以下の記載がある。

(1) 段落【0009】
「【0009】
<実施の形態1>
図1は本実施の形態における文書プリントシステムのブロック図である。この文書処理システムはパソコン等の文書処理装置1と、画像形成装置7及びそれらを接続するネットワーク6から構成される。文書処理装置1内のホットフォルダ5は、パソコンの中の1つのフォルダであり、本実施の形態において、ユーザはプリントしたい文書をホットフォルダ5に置く。又、本実施の形態においては、ホットフォルダ5は複数存在する。又、各ホットフォルダ5には、後述する不図示の設定ファイルがそれぞれ保持されている。監視アプリ4は、文書処理装置1で動いている常駐アプリケーションであり、複数のホットフォルダ5の中身を監視し、どれかのホットフォルダ5に文書が置かれると、その文書をプリントする処理を行うものである。具体的には、監視アプリ4は、どれかのホットフォルダ5に文書が存在すると、その文書に対応するアプリ2を起動し、その文書の位置と、先述した設定ファイルの位置を通知する。」

(2) 段落【0063】
「【0063】
以上の各実施の形態で、ホットフォルダの存在する場所と、監視アプリの動作する場所が同じであったが、これを異なる場所にした場合も他の実施の形態である。例えば、ホットフォルダ5を文書処理装置1内に配置し、これを画像形成装置7上の監視アプリ4が、ネットワーク越しに監視する構成にした場合も、本発明の他の実施の形態である。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2011-087280号公報)には、図面(特に、図1を参照。)とともに、段落【0025】に、以下の記載がある。

「【0025】
無線通信部22は、無線LAN,ブルートゥース(Bluetooth),赤外線などの規格に基づいて画像形成装置1との間でデータ通信を行う。メモリ23は、CPU24が各種の処理を実行する際に作業領域として使用するRAM等の記憶装置である。CPU24は、メモリ23を作業領域として各種の処理を実行することにより、この携帯端末装置2の全体の制御を司り、各種機能を実現させる。特に本実施の形態においては、後述の実行要求画面におけるユーザの操作入力に応じて画像形成装置1に対して画像の形成を要求する画像形成要求を無線通信部22を介して画像形成装置1に対して送信する機能と、画像の形成を要求する際の画像形成条件となる各機能の詳細設定項目を予め設定するための設定画面を操作表示部20に表示させ、ユーザの操作入力に応じて実行要求画面をカスタマイズする機能とが実現される。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2008-221634号公報)には、図面(特に、図1を参照。)とともに、段落【0030】に、以下の記載がある。

「【0030】
実施形態1及び2では、携帯電話-プリンタ間の通信に赤外線通信を用いたが、この代わりにBluetoothや無線LANを用いてもよい。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「赤外線通信機能内蔵CF(コンパクトフラッシュ(R))型カード」「(以下、CF型通信カードという)13」は、「プリンタ1」の「カードスロット12」に「挿抜可能にセットされ」「ることで、プリンタ1に赤外線データを受信可能な赤外線通信機能を付与」するから、本願発明1の「無線LANによる無線通信機能を使用してファイルの書き込みおよび読み出しが可能であって外部から削除されなければ書き込まれたファイルが残るリムーバブル記憶装置」と、「リムーバブル」「装置」である点で共通する。

イ 引用発明の「プリンタ1」の「スロット通信部45e」は、「CFカードスロット12に挿着された」「CF型通信カード13とバス35を介して接続され」るから、本願発明1の「リムーバブル記憶装置と有線で接続可能な接続部」と、「リムーバブル」「装置と有線で接続可能な接続部」である点で共通する。

ウ 引用発明の「プリンタ1」の「受信バッファ44a」は、本願発明の「記憶部」に相当する。

エ 引用発明の「CF型通信カード13」は、「携帯電話14から赤外線受発光部13aを介してデータを受信すると、メモリ32がオブジェクトデータを一時保存するバッファとして使用され」るから、引用発明の「CF型通信カード13」の「メモリ32」に、「携帯電話14から」「受信」された「オブジェクトデータ」が「一時保存」されることは、本願発明1の「前記リムーバブル記憶装置に新たなファイルが書き込まれたことを前記監視によって検出」することと、「前記リムーバブル」「装置に」「新たなファイルが書き込まれ」る点で共通する。

オ 引用発明の「プリンタ1」は、「CF型通信カード13」の「メモリ32」に「一時保存」された「オブジェクトデータ」を、「スロット通信部45e」が「受信し、」「受信したデータ」を「受信バッファ44aに」「格納」するから、引用発明の「プリンタ1」が、「CF型通信カード13」の「メモリ32」に「保存」された「オブジェクトデータ」を、「受信バッファ44aに」「格納」するとともに、「CF型通信カード13」の「メモリ32」に「保存」された「オブジェクトデータ」が削除されることは、本願発明1の「前記ファイルを前記記憶部に複製すると共に前記リムーバブル記憶装置内の前記ファイルを削除する第1制御を実行する」ことと、「前記ファイルを前記記憶部に」書き込む「と共に前記リムーバブル」「装置内の前記ファイル」が「削除」される点で共通する。

カ 引用発明の「CF型通信カード13」の「オブジェクト送受信部64は、受信したデータがプリンタ1にとって印刷対応能力のある印刷対応データか否かを判定し、印刷対応データである場合、そのオブジェクトデータをプリンタ1側へ転送」するもの、すなわち、「CF型通信カード13」の「メモリ32」に「一時保存」された「オブジェクトデータ」を、「プリンタ1側へ転送」する「か否かを判定し、」転送すると判定した場合に、転送するものであるから、本願発明1の「前記ファイルを前記記憶部に複製すると共に前記リムーバブル記憶装置内の前記ファイルを削除する第1制御を実行するか否かを判断し、前記第1制御を実行すると判断した場合に前記第1制御を実行する制御部」と、「前記ファイルを前記記憶部に」書き込む「か否か」が「判断」され、書き込む「と判断」された「場合に」書き込む「と共に前記リムーバブル」「装置内の前記ファイル」が「削除」される点で共通する。

キ 引用発明の「プリンタ1は、CF型通信カード13が携帯電話14から受信したデータ」「に基づく印刷処理を行」うから、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりであるといえる。

[一致点]
「リムーバブル装置と有線で接続可能な接続部と、
記憶部と、
を備え、
前記リムーバブル装置に新たなファイルが書き込まれた場合に、前記ファイルを前記記憶部に書き込むか否かが判断され、書き込むと判断された場合に書き込むと共に前記リムーバブル装置内の前記ファイルが削除される
ことを特徴とする情報処理装置。」

[相違点1]
リームバブル装置に関して、本願発明1では、「無線LANによる無線通信機能を使用してファイルの書き込みおよび読み出しが可能であって外部から削除されなければ書き込まれたファイルが残るリムーバブル記憶装置」であるのに対して、引用発明では、「プリンタ1」の「カードスロット12」に「挿抜可能にセットされ」る「赤外線通信機能内蔵」の「CF型通信カード13」であり、「記憶装置」でない点。

「相違点2」
本願発明1は、「前記接続部に接続されている前記リムーバブル記憶装置に、無線通信により外部から新たなファイルが書き込まれたか否かを監視する監視部」を備えるのに対して、引用発明は、そのような「監視部」を備えていない点。

[相違点3]
リムーバブル装置に新たなファイルが書き込まれた場合の判断及び制御に関して、本願発明では、「制御部」が「前記ファイルを前記記憶部に」書き込む「と共に前記リムーバブル記憶装置内の前記ファイルを削除する」「制御を実行するか否かを判断し、前記」「制御を実行すると判断した場合に前記」「制御を実行する」のに対して、引用発明では、「CF型通信カード13」が「前記ファイルを前記記憶部に」書き込む「か否かを判断」し、書き込む「と判断した場合に」、「プリンタ1」が書き込む「と共に」「CF型通信カード13」が「前記リムーバブル」「装置内の前記ファイルを削除する」点。

[相違点4]
ファイルの記憶部への書き込みに関して、本願発明1では、「複製する」のに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点。

(2) 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
引用文献2には、画像形成装置7の監視アプリ4が、文書処理装置1のホットフォルダ5に文書が置かれたことを監視することが記載されていると認められる(上記「第4」の「2.」を参照。)。
しかし、本願発明1の上記相違点3に係る、「情報処理装置」において、「制御部」が「前記ファイルを前記記憶部に」書き込む「と共に前記リムーバブル記憶装置内の前記ファイルを削除する」「制御を実行するか否かを判断し、前記」「制御を実行すると判断した場合に前記」「制御を実行する」構成(以下、単に「本願発明1の上記相違点3に係る構成」という。)とすることは、引用文献1-4のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、周知技術であるともいえない。
また、引用発明において、本願発明1の上記相違点3に係る構成に変更する起因や動機付けは見出し難い。

したがって、本願発明1は、上記相違点1-2、4を検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明、引用文献1-4に記載された技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-21について
本願発明2-10は、上記「第3」のとおり、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明11は、本願発明1-10のいずれかに対応する、カテゴリ表現が異なる「プログラム」の発明であり、本願発明12は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「ファイル取り込み方法」の発明であり、本願発明13-21は、本願発明12を減縮した発明であって、本願発明1の上記相違点3に係る構成と実質的に同一の構成を備えるものである。

よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-21も、当業者であっても、引用発明、引用文献1-4に記載された技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定についての判断
平成30年5月14日付けの手続補正で補正された請求項1-21は、上記「第5」のとおり、本願発明1の上記相違点3に係る構成を備えるものであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-06-20 
出願番号 特願2014-86584(P2014-86584)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 征矢 崇宮下 誠  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 白井 亮
梶尾 誠哉
発明の名称 情報処理装置、プログラム、ファイル取り込み方法  
代理人 長石 富夫  

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