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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A23L
管理番号 1352773
審判番号 不服2018-10941  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-09 
確定日 2019-07-16 
事件の表示 特願2013-248546「酸性液状調味料」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月 8日出願公開、特開2015-104361、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月29日を出願日とする出願であって、平成29年8月23日付けの拒絶理由に対し同年12月1日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年5月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月9日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶の理由は、平成29年8月23日付けの拒絶理由通知における理由1であり、その理由1の概要は、この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願の日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献3、4、7?14に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明1、2、5、6に基いて、その出願の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献等1:タケサン オリーブドレッシング(ローストガーリック)200ml,Amazon,2012年 6月12日,URL,http://www.amazon.co.jp/%E3%82%BF%E3%82%B1%E3%82%B5%E3%83%B3-%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%
引用文献等2:極みの料理 焼きあなごのえだまめソース,アサヒビール,2013年 7月16日,URL,http://hicbc.com/tv/umainokiwami/archive/recipe/20130716/index.htm
引用文献等3:特開平11-75764号公報
引用文献等4:武政 三男,新時代のスパイス活用術57 スパイスの適合性を把握する「頻度パターン分析法」(29),フードリサーチ,2007年,630号,p.48-50
引用文献等5:キユーピー カルパッチョドレッシング,キユーピー業務用商品情報,2013年 1月,URL,http://web.archive.org/web/20130227031755/http://www.kewpie.co.jp/prouse/products/detail.php
引用文献等6:サラダサポートシーザーサラダドレッシング,理研ビタミン株式会社,2013年 3月 3日,URL,http://web.archive.org/web/20130303003144/http://www.rikenvitamin.jp/business/food/catalog/d
引用文献等7:にんにくの加工と利用,月刊フードケミカル,1999年,15(1)(165),p.54-56
引用文献等8:指原信廣,酸性条件下で受けるストレス・損傷に対する細菌の挙動とその制御,日本食品微生物学会雑誌,2009年,26(2),p.81-85
引用文献等9:特開2003-47433号公報
引用文献等10:特開2011-115142号公報
引用文献等11:中国特許出願公開第103070385号明細書
引用文献等12:特開平9-121767号公報
引用文献等13:河野友美,野菜・藻類 新・食品事典5,株式会社 真珠書院,1992年,p.278-279
引用文献等14:特開昭53-139755号公報

第3 本願発明
この出願の請求項1、2に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明2」という。)は、平成29年12月1日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項によって特定された以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
魚醤と未加熱のガーリックオイルとステビアを含有し、
魚醤の含有量が10質量%以上40質量%以下であり、
魚醤1部に対する未加熱のガーリックオイルの含有質量比が0.001部以上0.1部以下である、
酸性液状調味料。
【請求項2】
請求項1記載の酸性液状調味料において、
魚醤1部に対するステビアの含有量比が0.0001部以上である、
酸性液状調味料。」

第4 引用文献等、引用発明等
1 引用文献等
(1)引用文献等1について
引用文献等1には、次の事項が記載されている。

(1a)「タケサン オリーブドレッシング(ローストガーリック)200ml
・・・
原材料:オリーブオイル:イタリア、ローストガーリック:中国、醸造酢、・・・ガーリックオイル、・・・にんにく、・・・、魚醤」(中央の商品説明欄第1行?第16行)

(2)引用文献等2について
引用文献等2には、次の事項が記載されている。

(2a)「極みの料理 焼きあなごのえだまめソース
食材(2人分)
・・・
・バルサミコ酢 :3cc
・ガーリックオイル :適量
・ナンプラー :適量」(左欄第1行?第10行)

(3)引用文献等3について
引用文献等3には、次の事項が記載されている。

(3a)「【請求項1】魚醤油に香気物質又はその処理物を添加することを特徴とする魚醤油の製造方法。」

(3b)「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、魚醤油に香気物質又はその処理物を添加するときに、この魚醤油の有する不快香気がマスキングされ大幅に改良されるが、これのもつ特徴的な香気や旨味は有することを知り、この知見に基づいて本発明を完成した。すなわち本発明は、魚醤油に香気物質又はその処理物を添加することを特徴とする魚醤油の製造方法であり、それの固形状又はペ-スト状魚醤油の製造方法である。
・・・
【0008】次に、ここに用いられる香気物質又はその処理物は、魚醤油の有する不快香気をマスキングする効果を有するものであれば化学合成物、天然物いずれでもよいが、食品に用いられるものが好ましい。香気物質としては、例えば醤油、味噌、食酢、酒類などの発酵食品およびその副産物(醤油油、醤油オリ、醤油粕、酒粕など)、また鰹節および宗田節、鮪節、鯖節、鯵節、鰯節などの雑節など、また煮干し類(鯖、鯵、鰯、いかなご、かます、キスなど)やフィッシュミ-ルなどの魚乾燥品が挙げられ、節類の有機溶媒抽出残さ、熱湯抽出残さなども用いられる。
【0009】また、コンブ、ワカメ、ヒジキなどの海藻類、シイタケ、マツタケ、シメジなどの茸類などが挙げられる。また、マスタ-ド、ナツメグ、メ-ス、キャラウエイ、カルダモン、こしょう、オ-ルスパイス、コリアンダ-、クロ-ブ、セ-ジ、タイム、バジル、ロ-レル、セロリ-、しそ、シナモン、ジンジャ-、ガ-リック、オニオン、タ-メリック、わさびなどの香辛料類が挙げられる。」

(3c)「【0017】そしてまた、抽出処理により得られる香気液を魚醤油に添加する添加比率は、例えば特公昭48-6539号公報や特公昭49-12711号公報の方法と同様にして得られる香気液を魚醤油に添加するときの添加比率は0.3?10%(V/V)であり、好ましくは0.8?7.0%(V/V)である。この範囲の添加比率で添加して得られる魚醤油は、香気液の有する濃厚な香気成分により魚醤油のもつ不快香気がマスキングされ、魚醤油の特徴的な香気と旨味を有して、かつ不快香気が大幅に改良された魚醤油が得られる。添加比率が0.3%(V/V)未満であると、不快香気の改良が不十分である魚醤油が得られる。一方、10%(V/V)をこえる添加比率であると、不快な香気は改良されるが、節類の香気および節類様(鰹節様)香気が強くなりすぎ魚醤油の特徴的な香気が消失し、旨味についても変質した魚醤油が得られる。」

(4)引用文献等4について
引用文献等4には、次の事項が記載されている。

(4a)「現在ではガーリックは日本人の嗜好にもよく合い、かなり広範囲にわたって種々の料理に適合する。特に魚介類、鶏肉、畜肉などの生臭みをとりたいときに用いるとよい。」(第49頁右欄第37行?第39行)

(5)引用文献等5について
引用文献等5には、次の事項が記載されている。

(5a)「キユーピー
カルパッチョドレッシング
・・・
オリーブオイルやレモンのさわやかな香りと、魚醤、にんにくのうま味が魚介とよく合います。
・・・
【原材料名】食用植物油脂、醸造酢、・・・魚醤、・・・ガーリックペースト、・・・ガーリックパウダー、・・・甘味料(ステビア)」(中央の商品説明欄第1行?第14行)

(6)引用文献等6について
引用文献等6には、次の事項が記載されている。

(6a)「サラダサポートシーザーサラダドレッシング
・・・
原材料
食用植物油脂、醸造酢、・・・にんにく、・・・魚醤、・・・、甘味料(ステビア)」(中央の商品説明欄第1行?第15行)

(7)引用文献等7について
引用文献等7には、次の事項が記載されている。

(7a)「このシーズニングオイルは,ラーメンスープの別添オイル初め,レトルト食品や冷凍食品の調味,ピラフ・チャーハン・炊き込み御飯といった米飯への味付け・艶出しオイルとして利用,香料のベースオイル,ドレッシングやソース・タレの香り付け等に利用されている。」(第55頁右欄第5行?第10行)

(8)引用文献等8について
引用文献等8には、次の事項が記載されている。

(8a)「大部分の食品は酸性領域にある。ドレッシングやマヨネーズは酸性食品にあたり、pHはおよそ3.5から4.5のものが多く、菌を添加した場合には徐々にあるいは急激に死滅する。」(第1頁左欄第2行?第5行)

(9)引用文献等9について
引用文献等9には、次の事項が記載されている。

(9a)「【請求項1】 酢酸が0.4%(w/w)以下、プロピオン酸が0.04%(w/w)以下、および酪酸が0.04%(w/w)以下である粉末魚醤油。
【請求項2】 アンモニアが0.65%(w/w)以下である請求項1記載の粉末魚醤油。」

(9b)「【0002】
【従来の技術】魚醤油とは、魚介類に塩を加えて醗酵させたものから、固形物を取り除いて得られる調味液である。
・・・
粉末状の魚醤油もまた不快臭を有するという問題がある。この不快臭は原料の魚の種類、量、自然醗酵の気候条件、発行期間等に大きく左右されるが、揮発性窒素類(例、アンモニア、トリメチルアミン、ジメチルアミンなどのアミン類)や揮発性有機酸(例、酢酸、酪酸)の成分であるといわれている。
・・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明は、不快臭が抑制され、賦形剤や添加物が少なく、酵素活性が無く、着色の少ない粉末魚醤油を提供することを目的とする。」

(10)引用文献等10について
引用文献等10には、次の事項が記載されている。

(10a)「【請求項1】
低塩化した醤油様調味料であって、アンモニウムイオン0.2?4.0%(w/v)およびステビア甘味料を含有する液体調味料。」

(10b)「【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる醤油様調味料について説明する。醤油様調味料とは、高タンパク質含有原料を加水分解し、液体部分を採取して調味を目的として使用されるものである。例えば、大豆や小麦などの植物性原料を加熱処理し、これに麹菌を繁殖させた後、食塩水中にて発酵、熟成させた醸造醤油、植物性原料を酸や酵素で分解して造られる化学醤油やHydrolyzed Vegetable Protein(HVP)、魚介類を発酵させた魚醤、蓄肉類を発酵させた肉醤、魚介類や蓄肉類を酵素や酸で分解させたHydrolyzed Animal Protein(HAP)等が挙げられる。これらの中でも、醸造醤油が好ましく、例えば醤油品質表示基準(農水省告示第1665号、改正告示第1704号)に記載される醤油が特に好ましい。醸造醤油には、原料の大豆と小麦との比率、原料処理の方法、塩分濃度等の製法の違いによって種々のものがあり、例えば、こいくち、うすくち、たまり、しろ、さいしこみ等が挙げられる。本実施形態においては、醤油様調味料は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。」

(10c)「【0016】
本発明のアンモニウムイオン濃度は、塩味付与効果があり、かつ異味が強すぎない範囲である0.2?4.0%(w/v)であり、好ましくは0.4?3.0%(w/v)である。例えば各種アンモニウム塩の添加による方法や醸造法の改良等(例えば、グルタミンの分解による生成や微生物による発酵生産等)を単独で又は2種以上を組み合わせて実現することができる。アンモニウム塩を醤油様調味料に添加する場合は、如何なる製造工程で行われてもよいし、完成品に添加されてもよい。添加される各種アンモニウム塩としては、食品として用いることができるものであれば特に限定されないが、例えば、塩化アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、酢酸アンモニウム等の有機酸アンモニウム塩等が用いられ、これらを単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。特に塩化アンモニウムとリン酸二水素アンモニウムがより食塩に近い塩味を呈するため、好ましく用いられる。
アンモニウムイオン濃度の定量方法は特に限定されないが、例えば高速液体クロマトグラフィーで分離し、ニンヒドリン法で検出する方法等が挙げられる。
【0017】
本発明で用いられるステビア甘味料とは、ステビオサイドとレバウディオサイドAの少なくとも1種類以上を含むものであり、レバウディオサイドCやズルコサイドA等の甘味成分のいずれか1種類以上を含んでいてもよい。ステビア甘味料中のステビオサイド、レバウディオサイドAの含有比率については、アンモニウムイオン由来の異味を効果的に抑制し、さらに塩味感を与えて、嗜好性を顕著に向上させることができれば、如何なる比率でもよいが、例えば、ステビオサイドとレバウディオサイドAとの比率が7:3?1:9、好ましくは5:5?1:9、さらに好ましくは3:7?2:8のものが用いられる。そして、レバウディオサイドCが好ましくは3?15%(w/v)、さらに好ましくは5?10%(w/v)含有されているものが用いられる。目的の甘味成分の含有比率であるステビア抽出物をそのまま用いてもよいし、各種甘味成分の含有比率が異なる2種類以上のステビア抽出物を適宜混合してもよいし、目的の甘味成分の含有比率で製剤化されている市販品を用いることもできる。ステビア甘味料中には、ステビア由来のその他の成分やデキストリン等の賦形剤が適宜含まれていてもよい。ステビア甘味料の添加量については、アンモニウムイオン由来の異味を効果的に抑制し、さらに塩味感を与えて、嗜好性を顕著に向上させることができれば、如何なる量でもよいが、例えば、5?300ppmが好ましい。ステビア甘味料を醤油様調味料に添加する場合は、如何なる製造工程で行われてもよいし、完成品に添加されてもよい。
ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドC、ズルコサイドAの定量方法は特に限定されないが、例えば高速液体クロマトグラフィーを用いる方法(例えば、非特許文献2、3参照)が挙げられる。」

(10d)「【実施例2】
【0028】
〔異味マスキング剤の探索〕
食塩濃度が4.0%(w/v)、塩化アンモニウム濃度が3.0%(w/v)[アンモニウムイオン濃度1.0%(w/v)]である低塩調味料(対照品1)に各種甘味料を表2に記載のとおり添加したサンプル(試験品A?L)を作製した。パネリスト10名により、試験品A?Lそれぞれについて、2点識別法で対照品1と異味を比較した。対照品1よりも試験品の方が異味が低減したと回答した人数は表2のとおりであった。
【0029】
ステビア甘味料を添加した試験品A?C、サッカリンナトリウムを添加した試験品D、アスパルテームを添加した試験品Eでは、対照品1の不快な異味が軽減されていることがわかった。特に、レバウディオサイドAとステビオサイドを6:4の比率で含有し、レバウディオサイドCを8.0%(w/w)含有するステビア甘味料(レバウディオA5H)を添加した試験品Bでは、異味が大きく低減していることを確認できた。
また、異味の低減化以外に、ステビア甘味料を添加した試験品A?Cでは、サッカリンナトリウムやアスパルテームのような他の甘味料を添加した試験品D、Eとでは確認できない、甘味とは異なる塩味の増強感、呈味の濃厚感があり、個々の味が突出せずに呈味にまとまりがある点という良好な評価が挙げられた。そこで、パネリスト10名により、試験品A?Lそれぞれについて、2点識別法で対照品1と塩味感を比較した。対照品1よりも試験品の方が塩味感が増強したと回答した人数は表2のとおりであった。すなわち、試験品A?Cでは、他の甘味料では実現できなかった、異味の低減化と塩味感増強の両方について確認することができた。
【0030】
【表2】



(11)引用文献等11について
引用文献等11には、次の事項が記載されている。以下訳文で示す。

(11a)「特許請求の範囲
1.以下を特徴とする泡椒銀魚醤:原料重量比によって以下の成分を含む:白魚シラウオ50部、紅泡椒50部、食塩3部、白砂糖1部、味の素1部、ヌクレオチド二ナトリウム(I+G)0.1部、水20部、60度の蒸留酒0.2部、酢酸0.2部、乳酸0.1部、生姜精油0.5部、ニンニクオイル0.1部、水溶性トウガラシ精油0.15部、濃厚型の麻辣精油0.1部」

(12)引用文献等12について
引用文献等12には、次の事項が記載されている。

(12a)「【請求項1】 生ニンニクの非加熱香味成分のみを付与した食用油脂加工品であって、該加工品の水分量が0.06重量%以下のものである生ニンニク香味の保持性および耐冷性に優れた生ニンニク風味油。」

(12b)「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記実情に鑑み、鋭意研究を行った結果、生ニンニクをみじん切りまたはさらに細かくすり潰して食用油脂で生ニンニクの香味成分を単純に抽出しただけの風味油では生ニンニクの風味の保持性は劣るが、これを所定の水分含有量以下に調整することにより、耐冷性が良好で、生ニンニク香味の保持性が極めて優れた生ニンニク風味油が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。」

(13)引用文献等13について
引用文献等13には、次の事項が記載されている。

(13a)「〔成分〕 ニンニクに含まれる栄養成分は、リン・カリウム・ビタミンB_(1)が比較的多い。栄養的な効用とともに薬効のあることが昔から知られ、漢方や民間療法的に用いられてきた。また、特有のにおいが肉料理の臭み消し料理の香りづけにスパイスとして広く用いられている。」(第278頁下欄第4行?第9行)

(14)引用文献等14について
引用文献等14には、次の事項が記載されている。

(14a)「食肉や魚肉は一般的にみて約45?75%の水分を含み良質の蛋白質、脂質および微量栄養成分に富んだものである。ミートもフィッシュも何れも原料由来の特有な香臭をもち美味しく食べるには鮮度のよい場合でもマスキングのための香辛料または生ニンニク、生オニオン、生姜など異臭の香臭抑制物を使うことが多い。」(第1頁右欄第8行?第14行)

2 引用文献等に記載された発明
(1)引用文献等5に記載された発明
引用文献等5には、食用植物油脂、醸造酢、魚醤、ガーリックペースト、ガーリックパウダー、および甘味料(ステビア)を原材料として含むカルパッチョドレッシングが記載されている(摘記(5a))。

そうすると、引用文献等5には、
「食用植物油脂、醸造酢、魚醤、ガーリックペースト、ガーリックパウダー、および甘味料(ステビア)を原材料として含むカルパッチョドレッシング」の発明が記載されている(以下「引用発明5」という。)。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明5との対比
本願発明1と引用発明5を対比する。
摘記(8a)の「ドレッシングやマヨネーズは酸性食品にあたり、pHはおよそ3.5から4.5のものが多い」との技術常識を参酌すると、引用発明5における「食用植物油脂、醸造酢、魚醤、・・・を原材料として含むカルパッチョドレッシング」は、pHが3.5から4.5である蓋然性が高く、pHを4.6以下に調整した調味料であるといえるから、本願発明の「酸性液状調味料」に相当する。
引用発明5には、食用植物油脂、ガーリックペースト、ガーリックパウダーが含まれていることから、ガーリックの香気成分等が食用植物油脂に移行し、ガーリックオイルが含有されているものともいえる。
しかしながら、引用文献等5には製造方法が記載されておらず、加熱の有無については不明であって「未加熱のガーリックオイル」が含有されているとまではいえないものの、両発明には「ガーリック由来成分」が含まれているといえる。

したがって、両者は、
「魚醤とガーリック由来成分とステビアを含有する酸性液状調味料」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。

(相違点1)
魚醤の含有量について、本願発明1では、「10質量%以上40質量%以下」と特定されているのに対して、引用発明5は、魚醤の含有量が10質量%以上であることについて明らかにされていない点

(相違点2)
ガーリック由来成分について、本願発明1では、「未加熱のガーリックオイル」と特定されているのに対して、引用発明5は、「ガーリックペースト、ガーリックパウダー」と特定されている点

(相違点3)
ガーリック由来成分の魚醤に対する含有質量比について、本願発明1では、「魚醤1部に対する未加熱のガーリックオイルの含有質量比が0.001部以上0.1部以下」と特定されているのに対して、引用発明5は、「ガーリックペースト、ガーリックパウダー」の魚醤に対する含有質量比については明らかにされていない点

(2)判断
上記相違点1について検討する。
引用文献等5には、カルパッチョドレッシングとして、「オリーブオイルやレモンのさわやかな香りと、魚醤、にんにくのうま味が魚介とよく合います。」と記載されていることから(摘記(1a))、引用発明5は、魚介とよく合うためのカルパッチョドレッシングであるといえる。
しかしながら、引用文献等5には、カルパッチョドレッシングの各成分の配合量についての記載はなく、その配合量を大きく変更し、他のドレッシングの製造を示唆するような記載はない。
調味料において、風味のバランス等を考慮して、各材料の配合比を調整することは、広く一般に行われているものといえるものの、引用発明5におけるカルパッチョドレッシングから離れて、他のドレッシングとする動機付けや、魚醤の含有量を10質量%以上40質量%以下とするような動機付けがあるとはいえない。
したがって、引用文献等5には、魚醤の含有量を10質量%以上40質量%以下とする動機付けや示唆がなく、また、他の引用文献等の記載を見ても引用発明5において魚醤の含有量を10質量%以上40質量%以下とする動機付けや示唆がないことから、当業者であっても、本願発明1を容易に想到し得るものとはいえない。
そして、本願発明1は、魚醤の含有量を10質量%以上40質量%以下の酸性液状調味料であっても、未加熱のガーリックオイルやステビアを併用することによって、魚醤の臭みを感じ難いという効果を奏しているといえる。
したがって、上記相違点2、3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明5及び引用文献等1?4、6?14に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を引用し、さらに魚醤1部に対するステビアの含有量比を特定したものであって本願発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明5及び引用文献等1?4、6?14に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

3 小括
したがって、本願発明1、2は、当業者が引用発明5及び引用文献等1?4,6?14に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1、2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとすることはできず、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-02 
出願番号 特願2013-248546(P2013-248546)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮岡 真衣  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 菅原 洋平
冨永 保
発明の名称 酸性液状調味料  

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