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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K |
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管理番号 | 1352784 |
審判番号 | 不服2018-1074 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-26 |
確定日 | 2019-06-20 |
事件の表示 | 特願2013- 89209「筐体ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日出願公開、特開2014-212287〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成25年年4月22日の出願であって、平成29年1月24日付けの拒絶理由通知に対して、同年4月6日付けで補正書と意見書が提出され、同年8月4日付けの拒絶理由通知(最後)に対して、同年10月20日付けで意見書が提出されたが、同年11月1日付けで拒絶査定がされた。これに対して平成30年1月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において平成31年1月17日付けで拒絶理由通知がなされ、同年3月19日付けで意見書と手続補正書が提出されたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成31年3月19日付け手続補正により補正された請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 電気的動作に伴って熱を発生する発熱体を含む電気機器を筐体の内部に収納し、上記熱により前記筐体の内部に生じる温熱風を該筐体の背面部から排出する排熱手段を備え、複数台重ねて使用可能であり、 前記電気機器を搭載して前記筐体の底面に装着される実装基板単体を、前記筐体の前面側に比較して該筐体の背面側に向けて高くして斜めに設けた筐体ユニットであって、 前記排熱手段は、前記筐体の前面部に設けられて該筐体の内部に空気を通流させる送風ファンと、前記筐体の背面部に設けられて前記実装基板の下面側に生じる温空気または前記筐体の下面側から前記筐体の内部に入り込む温熱風を、前記筐体の前面部から導入された空気とともに該筐体の背面側に排出する排気ファンと、であることを特徴とする筐体ユニット。」 第3.引用文献・引用発明 (1)引用文献1 当審で通知した平成31年1月17日付け拒絶理由に引用された特開平6-104587号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。(下線部は当審において付加した。以下同じ) ア.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、通信機器やコンピュータ等をユニットにパッケージとして実装するパッケージ実装装置に関し、特に対流誘導により実装部品からの発熱を装置外へ放散させるようにしたものである。 【0002】 【従来の技術】通信機器やコンピュータ等はパッケージとして実装されることが多い。このパッケージに保持される電気部品の形状は、年々小型化の傾向にありユニット内実装の高密度化が進んでいる。高密度化が進むにしたがい、保持される電気部品から生じる発熱の放散対策が必要となってくる。発熱の放散対策としては、これまでユニットに対流誘導板を設けることが広く実施されてきた。」 イ.「【0010】 【実施例】以下、図面を参照しながら本発明の一実施例を説明していく。図1は、ユニット1の斜視図である。ユニット1の両側面2、3に、通風孔4を形成するとともに、側面内側にはパッケージ5を搭載するためのガイド6を設けている。なお、パッケージ5には電気部品が保持されている。前記ガイド6は、搭載されたパッケージ5がユニット1の一方の側面2から他方の側面3にかけて一定の傾斜角をもって定置されるように、相対するガイド6に段差をもたせている。 【0011】また、パッケージ5の挿入側であるユニット1の前面8は、ユニット1内に所定のパッケージ5を全て搭載した後、板金等によって閉塞されるようになっている。ユニット1の後面9には、パッケージ5間相互接続のためのバックワイヤーボードが設けられている。ユニット1の上下面10、11には、それぞれ通風孔12、13を形成し、ユニット1を段積みした場合でもユニット1相互間の通風を可能としている。 【0012】図2は、上記ユニット1を段積みした状態を示す断面図である。図2に基づいて本実施例の動作を説明する。段積みされたユニット1a?1n内には、それぞれに搭載されているパッケージ5が全てユニット1a?1nの一方の側面2a?2nから他方の側面3a?3nにかけて、一定の傾斜角をもって定置されている。ユニットの前面と後面は密閉状態であるので、ユニット外部の冷風はユニット1a?1nの一方の側面2a?2nからユニット内に取り込まれ、他方の側面3a?3nから排出されていく。 【0013】破線表示は、上記の対流の状態を示したものである。冷風は、ユニット1a?1nの一方の側面2a?2nに形成されている通風孔(図示されていない)から取り込まれ、ユニット1a?1n内に搭載されているパッケージ5a?5n面に誘導されながら他方の側面3a?3n側に導かれ発熱はユニット外へ排出されていくのである。この場合、接合しているユニット相互間の対流は、ユニット上下面に形成されている通風孔(図示されていない)を介して行われる。」 ウ.「 」 エ.「 」 ・上記イの段落【0010】には、両側面2、3に、通風孔4が形成されるとともに、側面内側にはパッケージ5を搭載するためのガイド6が設けられるユニット1が記載されている。また、図1(上記ウ)及び図2(上記エ)によれば、両側面2a?2n、3a?3nは対向しており、さらに、ユニット1には下面11から上面10間に複数のパッケージ5a?5nが搭載されていることが、看取できる。 したがって、引用文献1には、対向する両側面2、3に、通風孔4が形成されるとともに、側面内側には下面11から上面10間に複数のパッケージ5を搭載するためのガイド6が設けられるユニット1が記載されているといえる。 ・上記イの段落【0010】には、パッケージ5には電気部品が保持されることが記載されている。また、上記アには、該電気部品から発熱を生じることが記載されている。 したがって、引用文献1には、パッケージ5には発熱が生じる電気部品が保持されることが記載されているといえる。 ・上記イの段落【0010】には、ガイド6は、搭載されたパッケージ5がユニット1の一方の側面2から他方の側面3にかけて一定の傾斜角をもって定置されるように、相対するガイド6に段差をもたせたものであることが記載されている。 ・上記イの段落【0011】には、ユニット1の上下面10、11には、ユニット1を段積みした場合でもユニット1相互間の通風を可能とする通風孔12、13がそれぞれ形成されることが記載されている。 ・上記イの段落【0012】及び【0013】には、ユニット1a?1nを段積みした状態では、ユニット外部の冷風がユニット1a?1nの一方の側面2a?2nに形成されている通風孔から取り込まれ、ユニット1a?1n内に搭載されているパッケージ5a?5n面に誘導されながら他方の側面3a?3n側に導かれ発熱をユニット外へ排出し、さらに、接合しているユニット相互間の対流は、ユニット上下面に形成されている通風孔を介して行われることが記載されている。 以上総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 「対向する両側面に、通風孔が形成されるとともに、側面内側には下面から上面間に複数のパッケージを搭載するためのガイドが設けられるユニットであって、 前記パッケージには発熱を生じる電気部品が保持され、 前記ガイドは、搭載されたパッケージがユニットの一方の側面から他方の側面にかけて一定の傾斜角をもって定置されるように、相対するガイドに段差をもたせており、 前記ユニットの上下面には、ユニットを段積みした場合でもユニット相互間の通風を可能とする通風孔がそれぞれ形成され、 前記ユニットを段積みした状態では、ユニット外部の冷風がユニットの一方の側面に形成されている通風孔から取り込まれ、ユニット内に搭載されているパッケージ面に誘導されながら他方の側面側に導かれ発熱をユニット外へ排出し、さらに、接合しているユニット相互間の対流は、ユニット上下面に形成されている通風孔を介して行われる、 ユニット。」 (2)引用文献2 当審で通知した平成31年1月17日付け拒絶理由に引用された特開昭63-70499号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 ア.「(産業上の利用分野) 本発明は電子部品を搭載したパッケージで構成した電子機器や電子装置の装機構造に関するものであり、特に、パッケージを収容するスペースを有効に利用し、効率的な冷却構造を提供しようとするものである。 (従来の技術及び問題点) 半導体素子の高集積化、高速化により高熱を発生する部品が増え、これらを高密度に搭載した配線板を高密度実装する電子装置を効率良く冷却することが望まれている。」(公報第1頁右下欄3-13行) イ.「実施例2 第3図は本発明の第2の実施例を説明する図であり、強制空冷の場合の適用例である。バックワイヤリングボードの上部の切り欠き、または削除した部分に排気口を開け、ここにファンユニット7bを取付けた構造である。これにより、排気ダクト11を省いた電子装置の構成が可能となる。冷却空気はユニット前面9から入り、パッケージの間を通り、バックワイヤリングボードの排気開口8からファンにより排気される。 第3図ではPULL形の強制空冷の例であるが、第4図の実施例のように、ユニットの前面にファンユニット7bを付けたPUSH形の強制冷却構造、さらにユニットの前面および排気口にファンユニット7bをつけた第5図の構成も可能となる。」(公報第2頁右下欄12行-第3頁左上欄6行) ウ.「 」 エ.「 」 上記アないしエによれば、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。 「熱を発生する電子部品を搭載したパッケージを内部に収納するユニットの前後の開口に、さらに、ファンユニットを設け強制冷却を行うこと。」 第4.対 比 本願発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「電気部品」は、発熱を生じるものであるから、本願発明の「電気的動作に伴って熱を発生する発熱体を含む電気機器」に相当する。 b.引用発明の「ユニット」は、電気部品が保持されるパッケージを搭載するものでるから、本願発明の「電気的動作に伴って熱を発生する発熱体を含む電気機器を」「内部に収納」する「筐体」に相当する。 c.引用発明の「ユニット」の「両側面」は、対向するものであるから、「一方の側面」側を前面側というと、「他方の側面」側は背面側といえる。 そして、引用発明の「ユニット外部の冷風がユニットの一方の側面に形成されている通風孔から取り込まれ、ユニット内に搭載されているパッケージ面に誘導されながら他方の側面側に導かれ発熱はユニット外へ排出され」ることは、一方の側面側の通風孔からユニット内に取り込まれた冷風が、電気部品から生じた熱によって温められ温熱風となり、他方の側面側の通風孔からユニット外へ排出されることと認められる。 したがって、引用発明の「両側面」に形成される「通風孔」は、本願発明の「上記熱により前記筐体の内部に生じる温熱風を該筐体の背面部から排出する排熱手段」に相当する。 d.引用発明の「パッケージ」は、電気部品を保持するものであり、また、ユニットの下面から上面間に複数のパッケージを搭載するためのガイドが設けられ、該ガイドに搭載されるものであるから、引用発明の複数の「パッケージ」の中のユニットの下面に設けられたガイドに搭載される「パッケージ」は、本願発明の「前記電気機器を搭載して前記筐体の底面に装着される実装基板単体」に相当する。 e.引用発明の「ユニット」は、段積み可能なものであるから、複数台重ねて使用可能なものといえる。 また、引用発明の「ユニット」の「ガイド」は、搭載されたパッケージがユニットの一方の側面から他方の側面にかけて一定の傾斜角をもって定置されるものである。 そして、上記b及びcに記載したように「ユニット」には「パッケージ」が搭載され、「両側面」に「通風孔」が形成されるものであるから、上記dの対比も考慮すると、引用発明の「ユニット」に「パッケージ」を搭載したものは、本願発明の「電気的動作に伴って熱を発生する発熱体を含む電気機器を筐体の内部に収納し、上記熱により前記筐体の内部に生じる温熱風を該筐体の背面部から排出する排熱手段を備え、複数台重ねて使用可能であり、前記電気機器を搭載して前記筐体の底面に装着される実装基板単体を、前記筐体の前面側に比較して該筐体の背面側に向けて高くして斜めに設けた筐体ユニット」に相当する。 f.上記cに記載したように、引用発明の「一方の側面」の「通風孔」は、ユニット外部の冷風をユニット内に取り込むものであるから、引用発明の「一方の側面」の「通風孔」は、本願発明の「送風ファン」と、「前記筐体の前面部に設けられて該筐体の内部に空気を通流させる送風手段」の点で共通する。 但し、上記「送風手段」が、本願発明では、「送風ファン」であるのに対して、引用発明では、通風孔であってファンではない点で相違する。 g.上記cで記載したように、引用発明の「他方の側面」の「通風孔」は、電気部品から生じた熱によって温められた温熱風をユニット外へ排出させるものであって、また、引用発明では、接合しているユニット相互間の対流は、ユニット上下面に形成されている通風孔を介して行われるものである。 してみると、引用発明においてユニットの下面に搭載される「パッケージ」の下面では、温熱風が接合しているユニットの上下面の通風孔を介して入り込み、該「パッケージ」の下面側に設けられた「他方の側面」の「通風孔」からユニット外へ排出されるものと認められる。 さらに、引用発明においてユニットの下面に搭載される「パッケージ」の上面では、「一方の側面」の「通風孔」から取り込んだ冷風が電気部品の熱によって温められ温熱風となり、該「パッケージ」の上面側に設けられた「他方の側面」の「通風孔」からユニット外へ排出されるものと認められる。 したがって、引用発明の「他方の側面」の「通風孔」は、本願発明の「排気送風ファン」と、「前記筐体の背面部に設けられて前記筐体の下面側から前記筐体の内部に入り込む温熱風と、前記筐体の前面部から導入された空気を該筐体の背面側に排出する排気手段」の点で共通する。 但し、上記「排気手段」が、本願発明では、「温熱風を」「空気ととも」に該筐体の背面側に排出する「排気ファン」であるのに対して、引用発明では、通風孔であってその旨の特定がされていない点で相違する。 したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「電気的動作に伴って熱を発生する発熱体を含む電気機器を筐体の内部に収納し、上記熱により前記筐体の内部に生じる温熱風を該筐体の背面部から排出する排熱手段を備え、複数台重ねて使用可能であり、 前記電気機器を搭載して前記筐体の底面に装着される実装基板単体を、前記筐体の前面側に比較して該筐体の背面側に向けて高くして斜めに設けた筐体ユニットであって、 前記排熱手段は、前記筐体の前面部に設けられて該筐体の内部に空気を通流させる送風手段と、前記筐体の背面部に設けられて前記筐体の下面側から前記筐体の内部に入り込む温熱風と、前記筐体の前面部から導入された空気を該筐体の背面側に排出する排気手段と、であることを特徴とする筐体ユニット。」 (相違点1) 送風手段が、本願発明では、「送風ファン」であるのに対して、引用発明では、通風孔であってファンではない点。 (相違点2) 排気手段が、本願発明では、「温熱風を」「空気ととも」に該筐体の背面側に排出する「排気ファン」であるのに対して、引用発明では、通風孔であってその旨の特定がされていない点。 第5.検討 そこで、上記相違点1、2について検討する。 熱を発生する電気機器を搭載したパッケージを内部に収納するユニットの前後の開口に、さらに、送風ファンと排気ファンを設け強制冷却を行うことは、例えば引用文献2に記載されるように周知の技術事項である。 そして、排気ファンを設ける趣旨は、パッケージ内の温められた空気(「筐体の下面側から前記筐体の内部に入り込む温熱風」と「筐体の前面部から導入された空気」)を排出することである。 してみれば、引用文献1に記載された発明において該周知の技術事項を適用して相違点1、2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 なお、審判請求人は、平成31年3月19日付け提出の意見書で上記引用文献2について、ユニットの前面に取り付けられる送風ファンは下方位置に設けられ、ユニットの後面に取り付けられる排気ファンは上方位置に設けられるので、引用文献2のファンを引用文献1のユニットに取り付けても、ユニット下面からユニット内に入り込む温熱風を排気することができない旨主張している。 しかしながら、引用文献2は、ユニットの前後にファンを設けるという上記周知の技術の例示として挙げたものである。そして、上記で記載したように排気ファンは、ユニット内の強制冷却のために設けられるものであるから、ユニットの後面の全面から熱が排出されるものに適用する際には、当然、全面から熱が排出できるように排気ファンが配置されるものと認められる。よって、審判請求人の上記主張は採用できない。 そして、本願発明の効果も、引用発明及び周知の技術から想到される構成から当業者が予想できる範囲のものである。 第6.むすび 以上のとおりであって、本願発明は、上記引用発明、周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-04-16 |
結審通知日 | 2019-04-23 |
審決日 | 2019-05-08 |
出願番号 | 特願2013-89209(P2013-89209) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石坂 博明 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
山澤 宏 山田 正文 |
発明の名称 | 筐体ユニット |
代理人 | 星野 裕司 |