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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B64C
管理番号 1352899
審判番号 不服2017-19087  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-22 
確定日 2019-06-19 
事件の表示 特願2015-525936号「着陸装置駆動システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月13日国際公開、WO2014/023939号、平成27年10月15日国内公表、特表2015-530304号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)8月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年8月8日、英国(GB))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 4月25日付け:拒絶理由通知書
平成29年 8月 7日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 8月16日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年12月22日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成29年12月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年12月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7のうちの請求項1の記載は、次のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。
「 【請求項1】
航空機の着陸装置の車輪を回転する駆動システムであって、
第一の駆動経路を介して第一の駆動ピニオンを回転させるように動作可能なモーターと、
前記車輪に固定するように設けられる被動ギアと、
を含み、
前記駆動システムは、前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができ、前記モーターによって前記第一の駆動経路を介して前記被動ギアを駆動可能な第一の形態をとることができ、
前記第一の駆動ピニオンと前記被動ギアの一方は、第一のスプロケットを備え、他方は、環状をなす一連のローラーを備え、
各ローラーが、前記第一の駆動ピニオンまたは被動ギアの回転軸から一定の距離にあるローラー軸周りにそれぞれ回転可能であり、
前記一連のローラーのそれぞれがピンの周りに回転可能であり、前記ピンはそれぞれ、少なくとも一方の端部において環状支持部材に固定され、
前記駆動システムは、前記第一の形態と、前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができない第三の形態と、の間で切り替え可能であることを特徴とする駆動システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年8月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8のうちの請求項1,3の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
航空機の着陸装置の車輪を回転する駆動システムであって、
第一の駆動経路を介して第一の駆動ピニオンを回転させるように動作可能なモーターと、
前記車輪に固定するように設けられる被動ギアと、
を含み、
前記駆動システムは、前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができ、前記モーターによって前記第一の駆動経路を介して前記被動ギアを駆動可能な第一の形態をとることができ、
前記第一の駆動ピニオンと前記被動ギアの一方は、第一のスプロケットを備え、他方は、環状をなす一連のローラーを備え、
各ローラーが、前記第一の駆動ピニオンまたは被動ギアの回転軸から一定の距離にあるローラー軸周りにそれぞれ回転可能であり、
前記一連のローラーのそれぞれがピンの周りに回転可能であり、前記ピンはそれぞれ、少なくとも一方の端部において環状支持部材に固定されることを特徴とする駆動システム。」
「 【請求項3】
前記駆動システムは、前記第一の形態と、前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができない第三の形態と、の間で切り替え可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の駆動システム。」

2 補正の適否
2-1 新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第一の駆動ピニオン」による「被動ギア」への噛み合いの形態に関して本件補正前の請求項3を根拠にして「前記駆動システムは、前記第一の形態と、前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができない第三の形態と、の間で切り替え可能である」ことの限定を付加するものであり、また補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合するとともに同法第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2-2 独立特許要件
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項等
ア 引用文献1について
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献1として示された本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/023505号(平成23年3月3日国際公開。以下「引用文献1」という。)には、日本語にして以下の事項が記載されている。なお、翻訳は、引用文献1の国際出願にかかる日本国内出願の内容を公表した特表2013-503070号公報(以下「参考文献」という。)の記載を参考にした当審の訳である(下線は当審で付した。以下同様。)。

(1a)請求項1
「航空機に取り付けるバネ入り部と、スライダ及び少なくとも1つの車輪を担持する車軸を含む非バネ入り部とを有し、前記車輪は歯付きリングギアを有する、衝撃吸収主脚と、
前記主脚の前記バネ入り部または前記非バネ入り部の外部に取り付けられ、少なくとも1つのモータと前記車輪の前記歯付きリングギアに噛み合う駆動ピニオンとを有する、伝動装置と、
前記伝動装置を持ち上げて前記歯付きリングギアと駆動係合させたり、当該駆動係合を解除したりし、かつ、地上走行運転中に前記着陸装置が撓むので前記駆動係合を維持するためのアクチュエータと
を有する航空機着陸装置。」(参考文献の請求項1)

(1b)明細書第1頁第4行?第8行
「本発明は、航空機の着陸装置であって、衝撃を吸収するための主脚を有し、前記主脚は、航空機に取り付けるバネ入り部と、スライダ及び少なくとも1つの車輪を担持する車軸とを備えた非バネ入り部とを含む、航空機着陸装置に関する。特に、本発明は、航空機が地上にある間に車輪を回転させるための駆動部に関する。さらに、本発明は、着陸装置を動作させる方法に関する。」(参考文献の段落【0001】)

(1c)明細書第7頁第2行?第11頁第17行(第1の実施形態についての記載事項)
「図1は、第1の実施形態における着陸装置1を示す。着陸装置1は衝撃を吸収する伸縮自在の主脚2を有し、この主脚2は、上部の伸縮部2a(メイン・フィッティング)と下部の伸縮部2b(スライダ)とを有する。上部の伸縮部2aは、不図示の上端部にて航空機の残りの部分に取り付けられる。下部の伸縮部2bは、主脚2の両側に1つずつの一対の車輪を担持する車輪軸を支持する。車輪3a、3bは、主脚2に対し共通の車輪軸4の周りを回転するように取り付けられる。上部の伸縮部2aは、主脚内側部の衝撃吸収コンポーネント上に配置され、それゆえ以下では、「バネ入り部」(sprung part)と称される。下部伸縮部2bは、衝撃吸収コンポーネントの下に配置され、それゆえ以下では、便宜的に、「非バネ入り部」(un-sprung part)と称する。
車輪3a、3bは、それぞれ、ハブ6a、6bにより支持されるタイヤ5a、5bを有する。歯付きリングギア7a、7bは、各ハブ6a、6bの外径に取り付けられる(図4も参照)。リングギア7a、7bの歯は、径方向外向きに向いている。着陸装置1は、さらに、主脚2におけるバネ入り部2aの外側に取り付けられる伝動装置8を有する。伝動装置8は、関節機構9により支持される(図2参照)。関節機構9は、第1のアーム10aと第2のアーム10bを有するエルボークランク10を有する。エルボークランク10のアーム10a、10bは、ヒンジ点11の両側に鈍角で設けられる。ヒンジ点11は、主脚2のバネ入り部2aに取り付けられるクレビス形ブラケット12に枢動可能に受け止められる。エルボークランク10の第1のアーム10aは、その遠位端13にて線形アクチュエータ14の一端に枢動可能に接続される。アクチュエータ14の他の端部は、ヒンジ点11上の主脚2のバネ入り部2aに取り付けられるクレビス形ブラケット15に、枢動可能に受け止められる。
エルボークランク10の第2のアーム10bは伝動装置8を支持する。これを、図2、3を参照して詳細に説明する。第1の実施形態における伝動装置8は、対称に配置される2つの独立した動力伝達装置を有する。各動力伝達装置は、大径の駆動ギア17に固定される、ラジアル・ピストン式の油圧モータ16を有する。各モータ16は、それぞれ同軸のスプライン18上に受け止められるステータ部分を有し、同軸のスプライン18はクランク10によって支持される取付けブラケット19の両側に配置される。従って、モータ16のステータ部分は、取付けブラケット19に対して回転するように固定され、一方で、モータ16のロータ部分は、その大径ギア17に固定される。大径ギア17は、小径ギア20と噛み合い係合する。小径ギア20はピニオン軸21に支持される。ピニオン軸21は、クランク10から延在しているラグ22により軸受で支持される。各ピニオン軸21には、それぞれの小径ギア20と一緒に回転するように固定される駆動ピニオン23及び駆動ピニオン追従子24とが支持される。
図4は、タイヤ5aを省いて歯付きリング7aが露出した状態の、着陸装置1の部分分解図を示す。各歯付きリング7a、7bに近接して、それぞれ歯付きリング追従子25がある。
次に、車輪3a、3bを駆動して回転させる伝動装置8の動作について、説明する。アクチュエータ14は、伝動装置8の駆動ピニオン23を上下させて歯付きリング7a、7bと噛合い係合させたり外したりするのに用いられる。アクチュエータ14は、線形タイプのアクチュエータであり、従って、アクチュエータ14の収縮は、アクチュエータ取付けブラケット15とクランク10の遠位端13との距離を縮め、クランク10をそのピボット点11の周りに回動させ、これにより、図1に示すように、伝動装置8を反時計回りに円弧に沿って持ち上げる。アクチュエータ14が収縮すると、駆動ピニオン23は車輪ハブ6a、6bの歯付きリング7a、7bとの噛合い係合から外れて持ち上げられる。車輪3a、3bから伝動装置8を離脱させれば、着陸装置1を従来の離着陸のための態様で動作させることができる。重要なのは、伝動装置8を車輪3a、3bから離脱させる際に
は、伝動装置8を歯付きリング7a、7bから十分に離して持ち上げて、着陸時に、車輪3a、3bを担持している主脚2の非バネ入り部2bが、歯付きリング7a、7bが伝動装置8に衝撃を与えることなく、主脚2のバネ入り部2a内の十分な行程路に沿ってはまり込むようにすることである。
航空機が地上にあるときは、アクチュエータ14を伸長させ、駆動ピニオン23が歯付きリング7a、7bと噛合い係合するまで伝動装置8を時計回りに円弧に沿って動かすことができる。伝動装置8が車輪3a、3bと歯付きリング7a、7bを介して係合したら、モータ16を付勢して、車輪3a、3bを軸4の周りに回転駆動させ、これにより、航空機も地上で走らせることができる。伝動装置8は、航空機の主エンジンを用いずに、車輪3a、3bに航空機を地上で走行させるのに十分な駆動トルクを与えることができる。2つの車輪3a、3bはそれぞれ独立した動力伝達装置を伝動装置8内に備えているので、車輪3a、3bは異なる速度で回転することができ、このことは、たとえば航空機が地上で方向転換するときに有利である。駆動ピニオン23の直径は、歯付きリング7a、7bの直径よりはるかに小さく、これは、駆動モータ16と歯付きリング7a、7bとのギア比を増大させる顕著なトルクを生成する。
駆動ピニオン23と歯付きリング7a、7bとを確実に噛み合い係合させるには、アクチュエータ14を伸長させて、伝動装置8を歯付きリング7a、7bに押し当てる。このことは、航空機が地上走行している間に、着陸装置1を介しての地上荷重によって衝撃吸収主脚2がいくらか撓んで、バネ入り部2a内で非バネ入り部2bを相対的に動かすことになるから、重要である。この相対的な動きは、おおよそ50mm程度である。
駆動ピニオン23の過度の磨耗を防ぎ、かつ、駆動ピニオン23と歯付きリング7a、7bとの正確なアライメントを確保するために、追従機構が採用される。前述したように、伝動装置8は、各駆動ピニオン23の直ぐ外側の各ピニオン軸21に駆動ピニオン追従子24を有する。駆動ピニオン追従子24は、駆動ピニオン23の外径より少しだけ大きい外径を有するとともに、駆動ピニオン追従子24は、滑らかな外面を有する。駆動ピニオン追従子24は、同じく滑らかな外面を有する歯付きリング追従子25に向かって当接する。歯付きリング追従子25は、歯付きリング7a、7bの外径より多少小さい直径を有し、歯付きリング7a、7bの直ぐ外側に配置される。駆動ピニオン23が歯付きリング7a、7bと噛合い係合すると、駆動ピニオン追従子24の滑らかな外面は、歯付きリング追従子25の滑らかな外面と摺動係合し、駆動ピニオン追従子24の内縁は、歯付きリング7a、7bの外縁に当接する。従って、追従子24、25は、駆動ピニオン23と歯付きリング7a、7bとの横方向、及び半径方向の良好なアライメントを確保することができる。
タイヤ5a、5bの撓みは、地表面の局所的な凹凸とともに、車輪の回転軸4を、横垂直面内で傾かせる(すなわち、ロールさせる)。伝動装置8とリングギア7a、7bとの間の駆動係合は、このような比較的小さい角度に対する動き、たとえば、約±12度以内の動きには反応しにくい。追従子対24、25を用いた追従機構は、伝動装置8を軸4と一緒にロールさせることができる場合にだけ、このローリング動作に適応させることができる。関節機構9の取付け点11は、伝動装置8が車輪軸4とともにロールすることができるように、取付けブラケット12内における球面軸受け、またはフレキシブル軸受けにより受け止められる。関節機構9はアクチュエータ14に接続されることにより、アクチュエータも主脚2上の取付けブラケット15における球面軸受けまたはフレキシブル軸受けに取り付けられる。
球面軸受けは、追従機構と相俟って一緒に作動して、伝動装置8をアクチュエータ14により歯付きリング7a、7b上に押し当てる際に、車輪3a、3bにかかる撓み荷重の
もとで伝動装置8と車輪との確実な駆動結合を維持できるようにする。駆動ピニオン23は、随意、駆動係合の維持に役立つ等速ジョイントを備えてもよい。
伝動装置8、関節機構9及びアクチュエータ14は、取付けブラケット12、15により主脚2に取り付けられる。取付けブラケット12、15は、伝動装置8、関節機構9及びアクチュエータ14を主脚2から取り外せるようにする解放機構を有する。これらの要素が取り外されると、着陸装置1の質量は、従来の着陸装置と同等となる。このことは、次の理由から有益である。航空機の地上での滞在時間が多くを占める短距離運用に航空機を用いる場合にのみ、車輪3a、3bの駆動に伝動装置8を用いるのが経済的であるが、長距離運用には、駆動コンポーネントを取り外すのがよい。
図には示していないが、駆動ピニオン23と歯付きリング7a、7bは、その耐久寿命に影響を及ぼすような周辺の瓦礫類から保護するために、密閉された環境内に配置するのがよい。単純な密閉装置は、駆動ピニオン23と歯付きリング7a、7bの対の周りに閉鎖シュラウドを一緒に形成するように、各駆動要素それぞれの周りに開放シュラウドを有する。シュラウドの2つの部分は、たとえば、ブラシタイプのシール、または、柔軟で、できればPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)タイプのランニングシールで封止することができる。他の封止装置の使用も可能である。
着陸装置1は、航空機を空港の搭乗ゲート周辺、及び地上走行運用で前進または後進させるのに用いることができる。従って、航空機は、空港の牽引車や航空機の主エンジンを用いることなく、地上で動かすことができる。航空機を地上で動かすのに航空機エンジンの使用をなくすか、または減らすことにより、騒音や汚染の低減、エンジン稼働時間の短縮、地上走行時にエンジンが瓦礫類を吸引したときの異物によるエンジン損傷の機会の低減、及び燃料燃焼の低減などといった幾つかの環境上または経済上の利点がある。それに加えて、空港の牽引車を依頼しなくて済むので、遅延を減らし、空港での安全性を向上させることができる。
伝動装置8のモータ16及びアクチュエータ14は航空機の既存のシステムに接続してもよいし、専用のシステムに接続してもよい。伝動装置8を車輪3a、3bと駆動係合させたり、これらを離脱させたりする動作は、航空機のコックピットからか、または地上の乗り物から遠隔的に制御するか、航空管制官がたとえばサテライトリンクを用いて制御することができる。」(参考文献の段落【0028】?【0041】)

(1d)引用文献1には以下の図(第1の実施形態の図)が示されている。

(イ)引用文献1に記載された発明
摘示(1a)?(1c)及び摘示(1d)の図から以下の事項が認定できる。

a 航空機着陸装置における、特に航空機が地上にある間に車輪を回転させるための駆動部に関する技術であること(摘示(1b))。

b 上記aにおける「航空機着陸装置」は、
航空機に取り付けるバネ入り部と、スライダ及び少なくとも1つの車輪を担持する車軸を含む非バネ入り部とを有し、前記車輪は歯付きリングギアを有する、衝撃吸収主脚と、
前記主脚の前記バネ入り部または前記非バネ入り部の外部に取り付けられ、少なくとも1つのモータと前記車輪の前記歯付きリングギアに噛み合う駆動ピニオンとを有する、伝動装置と、
前記伝動装置を持ち上げて前記歯付きリングギアと駆動係合させたり、当該駆動係合を解除したりし、かつ、地上走行運転中に前記着陸装置が撓むので前記駆動係合を維持するためのアクチュエータと
を有すること(摘示(1a)の請求項1)。

c 上記bにおける「バネ入り部」及び「非バネ入り部」はそれぞれ「上部の伸縮部2a」及び「下部伸縮部2b」を称したものである(摘示(1c))。
また上記bにおける「航空機着陸装置」は第1の実施形態の「航空機」の「着陸装置1」として構成され、同じく「衝撃吸収主脚」は「主脚2」として、「少なくとも1つの車輪」は「車輪3a、3b」として、「歯付きリングギア」は「歯付きリングギア7a、7b」として(「歯付きリングギア7a、7b」と「歯付きリング7a、7b」という記載は前者に統一する。)、「モータ」は「モータ16」として、「駆動ピニオン」は「駆動ピニオン23」として、「伝動装置」は「伝動装置8」として、「アクチュエータ」は「アクチュエータ14」として、構成される(摘示(1c)及び摘示(1d)の図1?4)。

d 上記bにおける「前記伝動装置を持ち上げて前記歯付きリングギアと駆動係合させたり、当該駆動係合を解除したりし」は、第1の実施形態における「伝動装置8の駆動ピニオン23を上下させて歯付きリング7a、7bと噛合い係合させたり外したりする」(摘示(1c))ことにより具体化されるものであるから、換言すると、伝動装置8の駆動ピニオン23を上下させて歯付きリングギア7a、7bと噛み合わせて駆動係合させたり、その噛み合わせを外して当該駆動係合を解除したりするということになる。

e 車輪3a、3bは、ハブ6a、6bにより支持されるタイヤ5a,5bを有し、歯付きリングギア7a、7bはハブ6a、6bの外径に取り付けられること(摘示(1c)及び摘示(1d)の図4)。

f モータ16のロータ部分は大径ギア17に固定され、大径ギア17は小径ギア20と噛み合い係合し、小径ギア20はピニオン軸21に支持され、ピニオン軸21には小径ギア20と一緒に回転するように固定される駆動ピニオン23が支持されること(摘示(1c)及び摘示(1d)の図2?4)。

したがって、これらを整理すると、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「航空機の着陸装置1における、特に航空機が地上にある間に車輪を回転させるための駆動部において、
前記着陸装置1は、
航空機に取り付けるバネ入り部と称される上部の伸縮部2aと、スライダ及び車輪3a、3bを担持する車軸を含む非バネ入り部と称される下部伸縮部2bとを有し、前記車輪3a、3bは歯付きリングギア7a、7bを有する、主脚2と、
前記主脚2の前記バネ入り部または前記非バネ入り部の外部に取り付けられ、少なくとも1つのモータ16と前記車輪の前記歯付きリングギア7a、7bに噛み合う駆動ピニオン23とを有する、伝動装置8と、
前記伝動装置8の前記駆動ピニオン23を上下させて前記歯付きリングギア7a、7bと噛み合わせて駆動係合させたり、その噛み合わせを外して当該駆動係合を解除したりし、かつ、地上走行運転中に前記着陸装置1が撓むので前記駆動係合を維持するためのアクチュエータ14と
を有し、
前記車輪3a、3bは、ハブ6a、6bにより支持されるタイヤ5a、5bを有し、前記歯付きリングギア7a、7bは前記ハブ6a、6bの外径に取り付けられ、
前記モータ16のロータ部分は大径ギア17に固定され、大径ギア17は小径ギア20と噛み合い係合し、小径ギア20はピニオン軸21に支持され、ピニオン軸21には前記小径ギア20と一緒に回転するように固定される前記駆動ピニオン23が支持される、
前記着陸装置1における駆動部。」

(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)後者の「航空機の着陸装置1」、「車輪3a、3b」、「駆動ピニオン23」、「モータ16」、「歯付きリングギア7a、7b」は、それぞれ前者の「航空機の着陸装置」、「車輪」、「第一の駆動ピニオン」、「モーター」、「被動ギア」に相当する。

(イ)後者の「前記モータ16のロータ部分は大径ギア17に固定され、大径ギア17は小径ギア20と噛み合い係合し、小径ギア20はピニオン軸21に支持され、ピニオン軸21には前記小径ギア20と一緒に回転するように固定される前記駆動ピニオン23が支持される」という構成について、「モータ16」を動かすことで「大径ギア17」、「小径ギア20」、「ピニオン軸21」を介して「駆動ピニオン23」を回転させることは明らかであるので、上記(ア)をも踏まえると、かかる「大径ギア17」、「小径ギア20」及び「ピニオン軸21」は全体で、前者の「第一の駆動経路」に相当する。してみると、後者の「モータ16」は、前者の「モーター」と同様に「第一の駆動経路を介して第一の駆動ピニオンを回転させるように動作可能」なものといえる。

(ウ)後者の「歯付きリングギア7a、7b」の配設構造は、その機能及び「前記車輪3a、3bは、ハブ6a、6bにより支持されるタイヤ5a、5bを有し、前記歯付きリングギア7a、7bは前記ハブ6a、6bの外径に取り付けられ」という構成から、上記(ア)をも踏まえると前者の「被動ギア」と同様に「前記車輪に固定するように設けられる」ものといえる。

(エ)後者の「航空機が地上にある間に車輪を回転させるための駆動部」は、「車輪3a、3b」を回転させるための構成要素である「駆動ピニオン23」と「モータ16」と「歯付きリングギア7a、7b」と「アクチュエータ14」を有することは明らかであるから、上記(ア),(イ),(ウ)をも踏まえると前者の「第一の駆動経路を介して第一の駆動ピニオンを回転させるように動作可能なモーターと、前記車輪に固定するように設けられる被動ギアと、を含」む「航空機の着陸装置の車輪を回転する駆動システム」に相当するものといえる。

(オ)後者の「前記伝動装置8の前記駆動ピニオン23を上下させて前記歯付きリングギア7a、7bと噛み合わせて駆動係合させたり、その噛み合わせを外して当該駆動係合を解除したりし、かつ、地上走行運転中に着陸装置1が撓むので前記駆動係合を維持するためのアクチュエータ14」という構成において「駆動係合させた」状態及び「駆動係合を解除した」状態は、上記(ア),(イ)をも踏まえるとそれぞれ前者の「前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができ、前記モーターによって前記第一の駆動経路を介して前記被動ギアを駆動可能な第一の形態」及び「前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができない第三の形態」に相当する。
してみると、後者の「航空機が地上にある間に車輪を回転させるための駆動部」は上記(エ)をも踏まえると「アクチュエータ14」により「駆動係合させた」状態及び「駆動係合を解除した」状態に切り替えられるものであるから、前者の「駆動システム」と同様に「前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができ、前記モーターによって前記第一の駆動経路を介して前記被動ギアを駆動可能な第一の形態をとることができ」、かつ「前記第一の形態と、前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができない第三の形態と、の間で切り替え可能である」ものといえる。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「航空機の着陸装置の車輪を回転する駆動システムであって、
第一の駆動経路を介して第一の駆動ピニオンを回転させるように動作可能なモーターと、
前記車輪に固定するように設けられる被動ギアと、
を含み、
前記駆動システムは、前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができ、前記モーターによって前記第一の駆動経路を介して前記被動ギアを駆動可能な第一の形態をとることができ、
前記駆動システムは、前記第一の形態と、前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができない第三の形態と、の間で切り替え可能である駆動システム。」

【相違点】
「第一の駆動ピニオン」と「被動ギア」について、本件補正発明は「前記第一の駆動ピニオンと前記被動ギアの一方は、第一のスプロケットを備え、他方は、環状をなす一連のローラーを備え、各ローラーが、前記第一の駆動ピニオンまたは被動ギアの回転軸から一定の距離にあるローラー軸周りにそれぞれ回転可能であり、前記一連のローラーのそれぞれがピンの周りに回転可能であり、前記ピンはそれぞれ、少なくとも一方の端部において環状支持部材に固定され」という構成を有するのに対し、引用発明はそのような構成を有さない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点について
(ア)本件補正発明における「環状をなす一連のローラー」について、本件明細書の段落【0039】の「第一、第二のスプロケット60、62はそれぞれ、ローラーチェーン30のローラー32(またはローラーギア34のローラー36)と嵌合可能な、径方向に延長する歯を備える車輪型スプロケットである。」という記載を参照すると、「環状をなす一連のローラー」は「ローラーチェーン30のローラー32」又は「ローラーギア34のローラー36」によるものと理解できる。
また本件補正発明における「スプロケット」について、本件明細書の段落【0039】の該記載を参照するとともに、「スプロケット」が字義的に「鎖車に同じ。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)とされ、その「鎖車」が字義的に「ベルトの代りに鎖を用いて伝動する鎖伝動に用いる歯車。鎖歯車。スプロケット。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味することを勘案すると、本件補正発明における「スプロケット」は「ローラーチェーン30のローラー32」又は「ローラーギア34のローラー36」と嵌合可能な径方向に延長する歯を備える車輪型の歯車と解される。

(イ)原査定の拒絶の理由において周知技術を示す引用文献2として示された本願の優先日前に頒布された特開2010-203608号公報(以下「引用文献2」という。)には、「回転体3」(本件補正発明の「ローラーギア」に相当する。以下括弧内に本件補正発明の相当する構成を記す。)とその「回転体3」に噛み合う「歯車2」(「スプロケット」)を用いた「駆動伝達装置1」において、その「回転体3」の回転軸から一定の距離の円周上に一方の端部を支持部材としての「板状体31」に固定された複数の「軸部420」(「ピン」)周りに、それぞれ回転可能な環状をなす一連の「ベアリング部410」の外筒(「環状をなす一連のローラー」)を配設したことで、インボリュート形状の通常の歯車の歯面同士が接することで発生していた歯車の回転伝達時の摩擦損失を極力小さくすることが開示されている(段落【0001】?【0005】,【0012】?【0013】,【0016】?【0020】,【0027】、図1?2,6)。

(ウ)原査定の拒絶の理由において周知技術を示す引用文献3として示された本願の優先日前に頒布された実願昭58-185367号(実開昭60-91837号)のマイクロフィルム(以下「引用文献3」という。)には、
「ピンラック(1)」(「ローラーギア」)と、その「ピンラック(1)」に噛み合う「ピニオン(5)」(「スプロケット」)を用いる「動力伝達機構」において、その「ピンラック(1)」の回転軸から一定の距離の円周上に少なくとも一方の端部を「保持部材(2)」(「環状支持部材」)に固定された複数の「ピン(3)」(「ピン」)周りにそれぞれ回転可能な環状をなす一連の「筒体4」(環状をなす一連のローラー)を配設したことで、面圧を広い面で受けるとともに接触摩擦を軽減し、「ピンラック(1)」及び「ピニオン(5)」の摩耗を防止することが開示されている(明細書第2頁第4行?第3頁第13行、第1?3図)。

(エ)さらに本願の優先日前に頒布された特開2009-161026号公報には、「前輪駆動装置」において、回転軸から一定の距離の円周上に両方の端部を圧入することにより固定された各々の「ピン84」(ピン)周りに回転可能な環状をなす一連の「ローラー80」(「環状をなす一連のローラー」)を配設した「ドライブスプロケット52」(「ローラーギア」)と、その「ドライブスプロケット52」に噛み合う「ドリブンスプロケット53」(スプロケット)を用いることで、その噛み合い部の摩擦抵抗を低減し、また耐久性を向上し、さらに耐泥性に優れて異物の噛み込みに対して有効とすることが開示されている(要約、段落【0024】,【0033】,【0043】,【0049】、図4?8)。

(オ)上記(イ)?(エ)に示されるように、ギアによる駆動伝達装置の技術分野において、環状をなす一連のローラーを備えるローラーギアとスプロケットの噛み合わせによる駆動伝達装置であって、その各ローラーをローラーギアの回転軸から一定の距離の円周上に少なくとも一方の端部を支持部材に固定した複数のピンによるローラー軸周りにそれぞれ回転可能に配設したものは、本願の優先日前に周知技術である。
そして、該周知技術において噛み合い部を構成するローラーがピンの周りに回転可能な構造であること踏まえると、通常の歯車同士による回転伝達時よりも摩擦抵抗を低減させて摩擦損失を小さくする効果は例えば引用文献2に示されるように自明であり、また異物の噛み込みに対して有効とする効果も例えば特開2009-161026号公報に示されるように自明であり、さらにローラー及びスプロケットの歯による噛み合い部に求められる精度が通常の歯車の歯同士による噛み合い部に求められる精度ほど高くないことも構造上自明といえる。

(カ)引用発明は該周知技術と同じくギアによる駆動伝達装置の技術分野に属するものである。そして該技術分野において、噛み合い部における摩擦抵抗を低減することや異物に対応することは基本的な課題であって、引用発明における「駆動ピニオン23」(「第一の駆動ピニオン」)及び「歯付きリングギア7a、7b」(「被動ギア」)の噛み合い部においても内在する課題といえる。してみると、引用発明において該課題を解決するために該周知技術を適用し、「駆動ピニオン23」(「第一の駆動ピニオン」)及び「歯付きリングギア7a、7b」(「被動ギア」)のうちの一方、例えば「駆動ピニオン23」をスプロケットとし、他方の「歯付きリングギア7a、7b」を環状をなす一連のローラーを備えるローラーギアとし、その各ローラーをローラーギアの回転軸から一定の距離の円周上に少なくとも一方の端部を支持部材に固定した複数のピンによるローラー軸周りにそれぞれ回転可能に配設することに格別な困難性は認められないし、その構成を具体化する際に該ローラーギアを「歯付きリングギア7a、7b」のときと同様に「車輪3a、3b」の「ハブ6a、6b」の外径に取り付けられるようにするために該支持部材を環状支持部材とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。
したがって、上記相違点に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び該周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たものといえる。

(キ)本件補正発明の効果の「本質的に強固で環境汚染に耐性があ」り、「破片や他の汚染物の侵入を防ぐために駆動システムをハウジングに収納する必要がない」こと(段落【0010】、以下「効果1」という。)、「車輪の変形およびピニオンと被動ギア間のずれに対する耐性が大きいこと」(段落【0011】、以下「効果2」という。)、「軽量化および高い構造強度という利点を有する」こと(段落【0012】、以下「効果3」という。)については、引用発明の奏する効果及び上記(オ)で述べた該周知技術の奏する効果の総和から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
補足すると、効果1については特に上記(オ)で述べた該周知技術の異物の噛み込みに対して有効とする効果に基いて予測し得た範囲内といえ、効果2については特に上記(オ)で述べた該周知技術における噛み合い部に求められる精度が高くないことに基いて予測し得た範囲内といえ、効果3についても該周知技術の駆動伝達装置における構造から強度や重量については自明であって予測し得た範囲内といえる。

イ 請求人の主張について
審判請求書における請求人の以下の各主張について検討する。
(ア)【主張1】
「引用文献2には、軸部420の上半部420aにベアリング部410を嵌入した構成の円形体が記載されているが、審査官殿にローラに相当すると指摘されたベアリング410は、低摩擦の軸受面であり、ベアリング410がピン420を中心に回転可能であるとの記載はない。「ベアリング」は、多くの場合、「回転する他の部材を支持する機構の一部」、「ある動作に対して相対的に動作し、動作部材同士の摩擦を低減する機械要素」などと定義されるものである。
このように、引用文献2は、引用文献1が欠いている請求項1記載の発明の特徴を開示するものではない。従って、引用文献1に引用文献2を組み合わせて請求項1記載の発明に想到することは容易ではない。」(第6頁第19行?第7頁第2行)
該主張1について検討する。
確かに拒絶査定において「特に引用文献2については、段落0027、図6を参照されたい。軸部420がピンに相当し、ベアリング部410がローラに相当する。」と述べられているものの、引用文献2の段落【0027】の記載及び図6並びに技術常識から、本件補正発明の「ローラー」に相当するものが上記ア(イ)でも述べたように「ベアリング部410」の外筒であることは、当業者にとって明らかである。
よって、該主張1は採用できない。

(イ)【主張2】
「また、補正後の請求項1記載の発明の第一の特徴は、上述したように、航空機の地上走行中にかかる荷重による車輪の変形とずれへの耐性を大きくするために特に有用であるが、これは、単純に摩擦損失を小さくすることを目的としている引用文献2、3には当てはまらない。実際に、引用文献2、3には、ずれなどへの耐性を大きくする必要性や要望は述べられていない。
補正後の請求項1記載の発明の第一の特徴は、ローラーとピンの構成を軽量化し、構造的に高い強度を得るためにも特に有用である。このことは、航空機にとって特に重要である。しかし、引用文献2、3には、軽量化等の必要性や要望は述べられていない。
引用文献2、3で開示されている円形体等は、航空機の着陸装置の車輪の回転に関するものではない。そのため、航空機分野の当業者が、異分野の引用文献2、3に注目して引用文献1に適用したとの指摘は適切ではない。従って、補正後の請求項1記載の発明は進歩性を有すると考えられる。」(第7頁第3?15行)
該主張2について検討する。
確かに上記ア(イ)?(ウ)に示した引用文献2?3に記載された事項は、ずれなどへの耐性を大きくする必要性や要望及び軽量化や高い強度についての必要性や要望に基づくものでなく、また航空機の着陸装置の車輪の回転に関するものでない。
しかしながら、上記ア(カ)で述べたように、引用発明は該周知技術と同じくギアによる駆動伝達装置の技術分野に属するものであり、該技術分野において噛み合い部における摩擦抵抗を低減することや異物による問題を解消することは基本的な課題であって引用発明においても内在する課題といえる。また上記ア(イ)に示した引用文献2に記載された事項は用途を限定しておらず、種々の用途への適用が見込まれるように、該周知技術も種々の用途への適用が見込まれるものといえる。
してみると、引用発明において基本的な該課題を動機付けとして該周知技術を適用することに格別な困難性は認められない。
よって、該主張2も採用できない。

(ウ)【主張3】
「さらに、補正後の請求項1記載の発明の第二の特徴である「駆動システムは、第一の形態と、第一の駆動ピニオンが被動ギアに噛み合うことができない第三の形態と、の間で切り替え可能であること」は、引用文献1に記載されているが、引用文献2、3には記載されていない。
当業者は、このような噛み合い状態の切り替え動作が対応可能でなければならない環境を考慮して、ピニオンの噛み合い状態の切り替えは航空機の着陸装置の分野に特有のものであると考えている。このことも、当業者が、異分野の文献である引用文献2、3に注目しないであろう理由である。
例えば、航空機の着陸装置の駆動ピニオンが置かれる特殊な環境や要求についての検討点として、以下の3点がある。
1)狭い空間内で噛み合い状態からの着脱ができること(着陸装置の車輪エリアには狭い空間しかない)
2)軽量で強度を有すること
3)滑走路や着陸装置の空洞が汚れやデブリが多い環境であっても、効率良く確実に噛み合えること
これらの検討点は引用文献2、3には当てはまらないので、繰り返しになるが、航空機分野の当業者が異分野の引用文献2、3に注目したとするのは後知恵である。引用文献2、3には、当業者に引用文献1のハウジングを取り去ることを考えるように駆り立てたり、当業者がそうできるように示唆したりする記載はない。従って、補正後の請求項1記載の発明は進歩性を有すると考えられる。」(第7頁第16行?第8頁第8行)
該主張3について検討する。
引用発明は航空機の着陸装置の車輪の回転のためのギアによる駆動伝達装置に関するものであって、上記(2)イで述べたように「第一の形態」と「第三の形態」との間で切り替え可能である。してみると、引用発明が属するといえるギアによる駆動伝達装置の技術分野における種々の技術に着目してその適用を試みることは、航空機分野の当業者であったとしても通常有する創作能力の発揮にすぎない。そして例えば引用文献2?3,6に示される周知技術を、航空機の着陸装置の車輪の回転のためのギアによる駆動伝達装置に関する引用発明に適用することを阻害するような事情(例えば「第一の形態」と「第三の形態」との間で切り替え可能な引用発明には適用できないとか、重量が重すぎて航空機の着陸装置の車輪の回転のためには適用できない等の事情)は特段ないことから、上記ア(カ)で述べたように引用発明において基本的な該課題を解決するために該技術分野における該周知技術に着目し、その適用を試みることは、航空機分野の当業者であったとしても格別な困難性は認められない。
よって、該主張3も採用できない。

ウ 小括
以上より、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年12月22日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年8月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2?3に示される周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1.国際公開第2011/023505号
引用文献2.特開2010-203608号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.実願昭58-185367号(実開昭60-91837号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)

3 引用文献の記載事項等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2 2-2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2 2-2で検討した本件補正発明から、「前記駆動システムは、前記第一の形態と、前記第一の駆動ピニオンが前記被動ギアに噛み合うことができない第三の形態と、の間で切り替え可能である」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2 2-2に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術(例えば引用文献2?3等)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び上記周知技術(例えば引用文献2?3等)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-01-21 
結審通知日 2019-01-22 
審決日 2019-02-04 
出願番号 特願2015-525936(P2015-525936)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B64C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畔津 圭介  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 中川 真一
中村 泰二郎
発明の名称 着陸装置駆動システム  
代理人 井上 誠一  
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