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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47C
管理番号 1352900
審判番号 不服2018-2207  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-16 
確定日 2019-06-19 
事件の表示 特願2016-502721号「事務用椅子」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日国際公開、WO2014/143958号、平成28年 5月 9日国内公表、特表2016-512738号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014年3月14日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2013年3月15日(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年3月23日に手続補正書が提出され、平成29年3月24日付けで拒絶理由が通知され、同年6月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成30年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成30年2月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成30年2月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を以下のとおり補正することを含むものである。(下線部は補正箇所である。以下「本件補正1」という。)
「 【請求項1】
背もたれ(12)を備える事務用椅子(10)において、
椅子枠(20)と前記椅子枠(20)に取り付けられた一対の直立支柱(18)とを備え、
前記一対の直立支柱(18)は、前記背もたれ(12)に含まれ、前記椅子枠(20)に取り付けられた水平の下部横材(26)と水平の上部横材(31)とによって互いに接続され且つ平行に延び、
前記直立支柱(18)から横方向外側に延びる複数の可撓性の支持アーム(21)を備え、
前記複数の支持アーム(21)は、各々が周縁(23)と前面(49)と背面(48)とを含むとともに、前記直立支柱(18)から第1の横方向に延びる第1組の支持アーム(21)と前記直立支柱(18)から第2の横方向に延びる第2組の支持アーム(21)とを含み、
前記第1組の支持アーム(21)の周縁(23)と前記第2組の支持アーム(21)の周縁(23)との間で引っ張られて延びるカバー(42)を備え、
前記カバー(42)は、前記支持アーム(21)の前記背面(48)の周りで延びて、少なくとも中央部分が前記支持アーム(21)の前記前面(49)から離間し、背部が前記支持アーム(21)の前記背面(48)を覆い、
前記一対の直立支柱(18)の間に取り付けられたランバーサポート機構(62)を備え、
前記ランバーサポート機構(62)は、前記一対の直立支柱(18)の間の支持アーム(63)と、前記支持アーム(63)に取り付けられた腰パッド(65)とを含み、
前記腰パッド(65)は、前記支持アーム(63)から延びて、座ったときのユーザの下背部に面することを特徴とする事務用椅子。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、平成29年6月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び8の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
背もたれ(12)を備える事務用椅子(10)において、
椅子枠(20)と前記椅子枠(20)に取り付けられた一対の直立支柱(18)とを備え、
前記一対の直立支柱(18)は、前記背もたれ(12)に含まれ、前記椅子枠(20)に取り付けられた水平の下部横材(26)と水平の上部横材(31)とによって互いに接続され且つ平行に延び、
前記直立支柱(18)から横方向外側に延びる複数の可撓性の支持アーム(21)を備え、
前記複数の支持アーム(21)は、各々が周縁(23)と前面(49)と背面(48)とを含むとともに、前記直立支柱(18)から第1の横方向に延びる第1組の支持アーム(21)と前記直立支柱(18)から第2の横方向に延びる第2組の支持アーム(21)とを含み、
前記第1組の支持アーム(21)の周縁(23)と前記第2組の支持アーム(21)の周縁(23)との間で引っ張られて延びるカバー(42)を備え、
前記カバー(42)は、前記支持アーム(21)の前記背面(48)の周りで延びて、少なくとも中央部分が前記支持アーム(21)の前記前面(49)から離間し、背部が前記支持アーム(21)の前記背面(48)を覆うことを特徴とする事務用椅子。
・・・
【請求項8】
前記背もたれ(12)は、第1部分(63)を含むランバーサポート機構(62)を備え、
前記第1部分(63)は、前記直立支柱(18)と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分(63)から延びる腰パッド(65)との間に、取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の事務用椅子。」

2 補正の適否

本件補正1は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「一対の直立支柱」について、「前記一対の直立支柱の間に取り付けられたランバーサポート機構を備え、前記ランバーサポート機構は、前記一対の直立支柱の間の支持アームと、前記支持アームに取り付けられた腰パッドとを含み、前記腰パッドは、前記支持アームから延びて、座ったときのユーザの下背部に面すること」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正1は、本件補正前の請求項8に記載された発明を特定するために必要な事項である「ランバーサポート機構(62)」について、「一対の直立支柱の間に取り付けられ」ていること及び「前記一対の直立支柱の間の支持アームと、前記支持アームに取り付けられた腰パッドとを含み、前記腰パッドは、前記支持アームから延びて、座ったときのユーザの下背部に面すること」との限定を付加するものともいえる。そして、補正前の請求項8に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明

本願補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項等

ア 引用文献

引用文献1:国際公開第2012/167940号(原査定における引用文献1)
引用文献4:特開2001-299501号公報(原査定における引用文献4)

イ 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた引用文献1の記載事項等(翻訳は当審にて作成した。また、下線は当審で付した。以下同様。)

(1a)(第1頁第3?4行)
「The invention relates to a seat, in particular an office chair, as claimed in the preamble of claim 1.」
(翻訳)「本発明は、請求項1の前書きに記載されているように、座席、特にオフィスチェアに関するものである。」

(1b)(第2頁第24行?第3頁第3行)
「Preferably, the support arms do not extend in parallel, but in a V-shape relative to one another, wherein the spacing of the support ends of the support arms on the backrest side is greater than the spacing of the ends of the support arms on the seat side relative to one another. As a result of this V-shaped and/or trapezoidal arrangement of the support arms, a lateral (sideways) inclination of the backrest in practice inevitably leads to a corresponding inclination of the backrest upper and lower edge in the corresponding lateral direction. The inclination or tilting movement of the backrest accordingly takes place in combination with an at least slight rotational movement of the backrest about a (virtual) rotational axis located between the support ends of the support arms.」
(翻訳)「好ましくは、支持アームは平行でなく、互いに対してV字状に延在している、すなわち、背もたれ側の支持アームの支持端部の間隔が、シート側の支持アームの端部の間隔よりも大きいことを特徴とする。支持アームのこのV字形状及び/または台形状の配置の結果として、実際に背もたれが側方(横方向)に傾くと、背もたれ上縁部及び下縁部も対応して横方向に傾く。それにともなって、背もたれの傾斜または傾動運動が、支持アームの支持端部の間に位置する(仮想)回転軸まわりの背もたれの少なくともわずかな回転運動との組み合わせにおいて行う。」

(1c)(第5頁第20?25行)
「The cover which forms the seating surface directly or by means of an additional cushion, is located between the opposing curved ribs. The cover is connected to each of the curved ribs, expediently in the region of the respective free ends, and preferably covers the seat opening and/or backrest opening such that - viewed in cross section along the width of the support shell and/or bearing shell - the cover forms a secant of the seat shell and/or backrest shell.」
(翻訳)「直接または付加的なクッションの座面を形成するカバーは、対向する湾曲リブの間に配置される。カバーは、それぞれの自由端部の領域で湾曲リブに接続され、好ましくは-支持シェル及び/または軸受シェルの幅に沿って横断面に見られるように-カバーが、シートシェルまたは背もたれシェルの割線を形成するように、座部及び/または背もたれ開口を覆っている」

(1d)(第5頁第26行?第6頁第8行)
「When the cover is subjected to load, in particular when the cover is subjected to load in the direction of the seat opening and/or backrest opening or at least a plane in which the respective opening is located, the bending of at least one of the curved ribs is altered. In other words, with such a loading at least one of the curved ribs or a group of curved ribs is positioned relatively more raised and/or curved in the direction of the seat opening and/or backrest opening. For example, when the cover is subjected to load, which takes place substantially centrally between the curved ribs, opposing curved ribs are raised. Conversely, in particular when the loading takes place closer to a curved rib, said curved rib is bent away from the seat opening and/or backrest opening, whilst the opposing curved rib is bent in the direction of the seat opening and/or backrest opening. The same applies to sets of curved ribs.」
(翻訳)「カバーが荷重を受けた場合、特に、カバーが座部及び/または背もたれの開口方向に荷重を受ける場合、あるいは、または少なくとも各開口が位置する平面に受ける場合に、湾曲リブのうちの少なくとも1つの湾曲が変更される。換言すれば、このような荷重を受けた湾曲リブの少なくとも1つまたは1グループの湾曲リブは、座部及び/または背もたれ部の開口方向に相対的により隆起及び/または湾曲される。例えば、カバーは、湾曲リブの間のほぼ中央で起こると、対向するリブが湾曲する。逆に、特定の荷重は、湾曲リブに近接して起こると、湾曲リブは、座部及び/または背もたれ開口から離れる方向に曲げられ、湾曲リブは、座部及び/または背もたれの開口部の方向に曲げられる。湾曲リブの組についても同様である。」

(1e)(第9頁第11?13行)
「The seat 1 configured as an office chair according to fig. 1 comprises a seat support 3 connected fixedly to a pedestal (base) 2, to which a backrest 5 is connected via a backrest support 4. 」
(翻訳)「図1のオフィスチェアとして構成されたシート1は、基台(ベース)2に固定的に連結されたシート支持体3と、背もたれ支持体4を介して接続されている背もたれ5とを備えている。」

(1f)(第9頁第22行?第10頁第9行)
「As may be seen from figs. 2a and 2b, the backrest support 4 comprises two support limbs, denoted hereinafter as support arms 4a, 4b, which are arranged relative to one another in a V-shape. The support arms 4a, 4b extend in the vertical direction z from the seat support 3 to a central region of the backrest 4. The connection of the support arms 4a, 4b and thus of the backrest support 4 to the backrest 5, i.e. on the rear face thereof, takes place via a connecting element 9 on the backrest side, which extends in the horizontal direction y. The support ends 9a, 9b of the support arms 4a and/or 4b on the backrest side are connected to said connecting element 9. In a similar manner, the support ends 10a, 10b of the support arms 4a and/or 4b on the seat side are connected by means of a connecting element 10 on the seat side.

In the exemplary embodiment shown, according to figs. 2a and 2b, the connecting element 9 on the backrest side and the connecting element 10 on the seat side are configured integrally with the two support arms 4a and 4b. Alternatively, also another type of rigid, in particular material, connection of the support arms 4a, 4b may be provided to the connecting elements 9, 10.」
(翻訳)「図2A及び図2Bから分かるように、背もたれ支持体4は、V字状に互いに相対的に配置されている支持アーム4a、4bとして示される、2本の支持アームから構成されている。支持アーム4a、4bは、座部支持体3から背もたれ4の中央領域に向かって垂直方向zに延在している。

図示の実施例では、図2A及び図2Bによれば、背もたれ側の接続要素9及び座部側の接続要素10は2本の支持アーム4a,4bと一体的に構成されている。あるいは、また、他の形式の支持アーム4a,4bの強固な接合は、接続要素9,10の特定の材料で提供される。」

(1g)(第14頁第8?15行)
「Alternatively, the simplified construction shown in figs. 6a to 6d may also be a bearing shell 5a denoted hereinafter as the backrest shell with a cover 5b of the backrest 5, as shown in relative detail in figures 7 to 10. The bearing shell 5a in turn comprises curved ribs 16. The curved ribs 16 of the backrest shell 5a are raised with their free ends in the x-direction. At the free end side, the cover 5b denoted hereinafter as the backrest cover, is attached to the curved ribs 16. The backrest cover 5b, in turn, consists of a non-stretchable material or a material which is at least relatively not easily stretchable.」
(翻訳)「あるいは、図7から図10までに比較的詳細に示されているように、図6a?図6dに示された簡略化された構成は、背もたれ5のカバー5bと背もたれシェルとして示すベアリングシェル5aにも当てはまる。ベアリングシェル5aは、湾曲リブ16を備えている。背もたれシェル5aの湾曲リブ16は、x方向でそれらの自由端とともに隆起する。自由端側の、背もたれカバー5bとして示されるカバー5bは、湾曲リブ16に取り付けられている。背もたれカバー5bは、非伸縮性材料であるか、または、少なくとも比較的容易に伸張しうる材料から構成されている。」

(1h)(第15頁第7?第14行)
「Similar to the seat shell 6a, the backrest shell 5a of the backrest 5 is also provided with slots 18 on the peripheral side of the shell, and which open into the shell edges and extend toward a central recess and/or backrest opening 19. Between two slots 18 a curved rib 16 is formed, in turn. As in the seat shell 6a, two curved ribs 16 are also arranged opposing one another diametrically in the backrest shell 5a. Whilst the shell upper face of the backrest shell 5a is in turn provided with slots 18, the backrest underside of the backrest shell 5a facing the rear face of the seat shell 6a is unslotted.」
(翻訳)「シートシェル6aと同様に、背もたれ5の背もたれシェル5aはまた、シェルの外周側にスロット18が設けられ、それは、シェルの縁部に開口しており、中心凹部及び/または背もたれ部開口19に向かって延びている。2つのスロット18の間で、湾曲リブ16が形成される。シートシェル6aのように、背もたれシェル5aには直径方向に互いに対向して配置されている2つの湾曲リブ16が設けられている。背もたれシェル5aの上面にはスロット18が設けられているが、座部シェル6aの後部に面した背もたれシェル5aの下側にはスロットがない。」

(1i)(第15頁第23行?29行)
「As visible from figs. 9 and 10, the seat cover 6b on the seat shell 6a is guided with a sufficient tension around the outer edges of the shell, forming a cover or fold- over edge 22 encompassing the seat shell 6a on the shell underside, and thus held reliably on the seat shell 6a. In a similar manner, the backrest cover 5b fully covering the backrest shell 5a is stretched around the outer edge thereof, forming a cover and/or fold-over edge 23 which encompasses the backrest shell 5a on the rear face of the backrest.」
(翻訳)「図9及び図10から見られるように、シートシェル6aにカバー6bがシェルの外側エッジの周囲に充分な張力をもって案内されて、シェルの下側にシートシェル6aの周縁部22を覆うカバーまたは折り目を形成するため、シートシェル6a上に確実に保持される。同様に、背もたれシェル5aを完全に覆っている背もたれカバー5bは、その外側エッジの回りに張られ、背もたれの背面に背もたれシェル5aを含むカバー及び/または折り重ねた縁部23が形成されている。」

(1j)(第18頁第1行?第20頁第25行)
「Claims
1. A seat (1), in particular an office chair, comprising a seat support (3) for a seating surface (6) and comprising a backrest support (4) of a backrest (5) which is held on the seat support (3) so as to be able to move in a tiltable manner to the side,
characterized in that
the backrest support (4) comprises two support arms (4a, 4b) which are configured to be flexible and/or articulated laterally and spaced apart from one another.
・・・
11. The seat (1) as claimed in one of claims 1 to 10,
characterized in that
the backrest (5) is configured as a curved bearing shell (5a) provided with a cover (5b) with a number of flexible curved ribs (16) on the edge of the shell, wherein the cover is stretched by the bearing shell (5a) such that when the cover (5b) is loaded, the bending of the curved ribs (16) and/or the bearing shell (5a) is altered.
12. The seat (1) as claimed in claim 10 or 11,
characterized in that
the support shell (6a) of the seating surface (6) and/or the bearing shell (5a) of the backrest (5) comprises a central recess which forms a seat opening and/or backrest opening (17, 19) on the side of the shell base which is covered by means of the cover (6b and/or 5b).
13. The seat (1) as claimed in claim 12,
characterized in that
the support arms (4a, 4b) flank the backrest opening (19) substantially on the vertical side.
14. The seat (1) as claimed in claim 12 or 13,
characterized in that
the connecting element (9) on the backrest side flanks the backrest opening (19) at the top substantially horizontally.
15. The seat (1) as claimed in one of claims 10 to 14,
characterized in that
the curved ribs (15, 16) are formed by a number of slots (18) incorporated on the peripheral side in the support shell and/or bearing shell (5a, 6a). 」
(翻訳)「請求項
1.シート(1)、特にオフィスチェアであって、
座面(6)のためのシート支持体(3)と、
前記シート支持体(3)に対して、側方に傾く方向に動くように保持された背もたれ(5)の背もたれ支持体(4)と、
を含むものであって、
背もたれ支持体(4)は、側方に可撓性及び/または関節運動できるように構成され、互いに離間された2本の支持アーム(4a,4b)からなることを特徴とする
シート(1)。
・・・
11.背もたれ(5)は、シェルの縁部の多数の可撓性の湾曲リブ(16)を覆ったカバー(5b)が設けられた湾曲されたベアリングシェル(5a)として構成され、
カバー(5b)を装着する時には、湾曲リブ(16)及び/またはベアリングシェル(5a)の撓みを変化させられるように、カバーがベアリングシェル(5a)によって伸張されることを特徴とする、
請求項1?10のいずれか1項に記載のシート(1)。
12.座面(6)のサポートシェル(6a)及び/または背もたれ(5)のベアリングシェル(5a)は、カバー(6b及び/または5b)によりカバーされる面において、座部及び/または背もたれの開口(17,19)を形成している中央凹みを含むことを特徴とする、請求項10または11に記載のシート(1)。
13.支持アーム(4a,4b)は垂直側部に実質的に背もたれの開口(19)に隣接することを特徴とする、請求項12に記載の座席(1)。
14.背もたれ側の接続要素(9)は、頂部で、実質的に水平に、背もたれの開口(19)に隣接することを特徴とする、請求項12または13に記載のシート(1)。
15.湾曲リブ(15,16)は、サポートシェル及び/またはベアリングシェル(5a,6a)において外周側に設けられた複数のスロット(18)によって形成されることを特徴とする、請求項10?14のいずれか1項に記載のシート(1)。」

(1k)
引用文献1には、Fig.7として、以下の図面が記載されている。

(1l)
上記Fig.7(摘示(1k))から、以下の点が看取される。
「一体となった複数の湾曲リブ(16)が、複数の湾曲リブ(16)が両側の横方向外側に向かうように2本の支持アーム(4a,4b)に接続されている。」

上記(1j)及び(1l)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「シート(1)、特にオフィスチェアであって、
座面(6)のためのシート支持体(3)と、
前記シート支持体(3)に対して、側方に傾く方向に動くように保持された背もたれ(5)の背もたれ支持体(4)と、
を含むものであって、
前記背もたれ支持体(4)は、側方に可撓性及び/または関節運動できるように構成され、互いに離間された2本の支持アーム(4a,4b)からなり、
前記背もたれ(5)は、シェルの縁部の多数の可撓性の湾曲リブ(16)を覆ったカバー(5b)が設けられた湾曲されたベアリングシェル(5a)として構成され、
前記カバー(5b)を装着する時には、前記湾曲リブ(16)及び/または前記ベアリングシェル(5a)の撓みを変化させられるように、前記カバーが前記ベアリングシェル(5a)によって伸張され、
前記座面(6)のサポートシェル(6a)及び/または前記背もたれ(5)の前記ベアリングシェル(5a)は、前記カバー(6b及び/または5b)によりカバーされる面において、座部及び/または前記背もたれの開口(17,19)を形成している中央凹みを含み、
前記支持アーム(4a,4b)は垂直側部に実質的に前記背もたれの開口(19)に隣接するとともに前記背もたれ側の接続要素(9)は、頂部で、実質的に水平に、背もたれの開口(19)に隣接し、
前記湾曲リブ(15,16)は、前記サポートシェル及び/またはベアリングシェル(5a,6a)において外周側に設けられた複数のスロット(18)によって形成され、
一体となった多数の前記湾曲リブ(16)が、前記湾曲リブ(16)が両側の横方向外側に向かうように2本の前記支持アーム(4a,4b)に接続されている
シート(1)。」

ウ 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献4の記載事項等

(4a)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、椅子におけるフレーム構造の背もたれ又は座体に関するものである。
・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来のフレーム構造の背もたれ又は座体は、着座による荷重で支持シートが伸び変形するのを許容するため、フレームを単なるループ状に形成しているに過ぎない場合が殆どである。
【0006】しかし、このようにフレームを単なるループ状に形成したに過ぎない構成では、フレームの強度(剛性)を向上し難いという問題があった。
【0007】他方、事務用等の椅子において、腰椎を支えるランバーサポートを背もたれに設けることが提案されており、その一例として前記特表平8-507935号公報では、支持シートの裏側にランバーサポートを配置し、このランバーサポートの左右端部をフレームの左右側部に固定することが開示されている。
【0008】しかし、この特表平8-507935号公報の構造では、ランバーサポートはその左右両端をフレームに固定できる形状でなければならないため、ランバーサポートの形状の自由性がなく、また、人の身体に応じてランバーサポートの前後位置を調節することも困難であるという問題があった。
【0009】本発明は、これらの現状を改善することを目的とするものである。」

(4b)
「【0019】(1).第1実施形態(図1?図10)
図1?図10では第1実施形態を示しており、このうち図1は、椅子の構成要素である座体1と背もたれ2だけの一部破断概略斜視図である。
【0020】座体1及び背もたれ2とも(当審注:「背もたれ2と」の誤記と認める。)、合成樹脂製のフレーム3とこれに張ったネット状の支持シート4とを備えている。本実施形態では、座体1と背もたれ2との(当審注:「背もたれ2の」の誤記と認める。)フレーム3は別体に構成しており、背もたれ2のフレーム3を座体1又は座受け部材(図示せず)に固定するように構成しているが、両者を一体成形することも可能である。
【0021】脚体は図面では表示してないが、様々の形態を採用できる。例えば、脚体を、座体1の四隅箇所又は左右量側部から斜め下向きに延びる形態とすることにより、椅子を積み重ねできる形態としても良いし、或いは、放射状の脚杆を備えると共にガスシリンダを内蔵した形態としても良い。
【0022】本実施形態では、本発明を背もたれ2に適用している。以下、図2以下の図面に基づいて背もたれ2を詳細を説明する。
【0023】≪フレーム≫図2(A)は背もたれ2の一部破断正面図、図2(B)は同じく右側面図、図3は平面図、図4のうち(A)は図2(A)の IVA-IVA視部分断面図、(B)は部材を分離した状態での側面図である。
【0024】背もたれ2のフレーム3は、逆台形状のループ状に形成されたメインフレーム3aと、メインフレーム3aの上辺と下辺とに連設した上下長手の2本のサブフレーム3bとから成っており、メインフレーム3aの下辺には取付け部3cを下向き突設している。
【0025】図2(B)に示すように、メインフレーム3aは側面視で後ろ向き凹状に緩く環曲しており、また、平面視で前向き凹状に緩く湾曲している。
【0026】図4(A)に示すように、メインフレーム3aには、支持シート4を固定するための溝条4が全周にわたって延びるように形成されている。この溝条4は、メインフレーム3aの左右側部と上辺部とでは後ろ向きに開口しており、下辺部では下向きに開口している。
【0027】支持シート4は例えば合成樹脂製の紐状繊維を素材として織り上げたもので、縦横の繊維は互いに重合する箇所で溶着されている。そして、この支持シート4の周縁をメインフレーム3aの溝状の底面に溶着し、かつ、溝錠4にはシール剤を充填している。なお、支持シート4は他の手段でメインフレーム3aに固定しても良い。
【0028】サブフレーム3bはメインフレーム3aの中心線を挟んだ両側に対称状に配置されており、正面視で外向き凹状に緩く湾曲している。そして、下部の曲率が大きく、上部の曲率が小さくなるように湾曲しており、かつ、上端から下方に向けて間隔が徐々に小さくなるように傾斜しており、更に、下端からやや上方の部位で最も間隔が小さくなるようにくびれた状態になっている。
【0029】着座した人が背もたれ2にもたれ掛かると、支持シート4は人の背で押されて伸び変形するが、サブフレーム3bは、支持シート4が伸び変形しても当たらないように、支持シート4よりも後方に位置している。
【0030】換言すると、支持シート4とサブフレーム3bとの間には大きな空間が空いており、この空間を利用してランバーサポート機構を設けている。次に、この点を図5?図7も参照して説明する。」

(4c)
「【0058】(4).第4実施形態(図14?図15)
図14?図15では第4実施形態を示しており、図14は一部破断正面図、図15は図13のXV-XV視断面図である。
【0059】この実施形態では、左右サブフレーム3bの平行部に前方から支持ベース8を重ね合わせ、この支持ベース8に形成したナット部16に後方から調節ボルト17をねじ込み、調節ボルト17でランバーサポート6を押圧している。
【0060】ランバーサポート6には、調節ボルト17に嵌まる筒部7bを有する中間支持体7を固着しており、このため、ランバーサポート6は調節ボルト17によって落下不能に保持されている。
【0061】他方、支持ベース8はサブフレーム3bに前方から嵌るように形成されており、このため、左右にずれることなく安定した状態に保持される。また、支持ベース8は上下動させることができるため、シートの腰の高さに合わせてランバーサポート6を上下動させることができる。
【0062】調節ボルト17の後端には円板状の摘まみ17aを設けており、この摘まみ17aを摘んで調節ボルト17を支持ベース8にねじ込むことにより、ランバーサポート6の前後位置を調節することができる。このようにねじ式の調節機構を採用すると、ランバーサポート6の前後位置を簡単に調節できると共に、ランバーサポート6を後退不能の安定した状態に保持できる利点がある。」

上記(4a)?(4c)を総合すると、引用文献4には、以下の技術(以下「引用文献4技術A」という。)が記載されている。
「事務用の椅子において、
支持シート4とサブフレーム3bとの間には大きな空間が空いており、この空間を利用してランバーサポート機構を設け、
左右サブフレーム3bの平行部に前方から支持ベース8を重ね合わせ、この支持ベース8に形成したナット部16に後方から調節ボルト17をねじ込み、調節ボルト17でランバーサポート6を押圧し、
ランバーサポート6には、調節ボルト17に嵌まる筒部7bを有する中間支持体7を固着しており、
ランバーサポート6は調節ボルト17によって落下不能に保持されている、
腰椎を支えるランバーサポートを上下動させるよう背もたれに設ける技術。」

(3)引用発明との対比

ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「背もたれ(5)」が、本願補正発明の「背もたれ」に相当し、引用発明の「シート(1)、特にオフィスチェア」が、本願補正発明の「事務用椅子」に相当するから、引用発明の「シート(1)、特にオフィスチェアであって、・・・背もたれ(5)の背もたれ支持体(4)と、を含む」構成が、本願補正発明の「背もたれを備える事務用椅子」に相当する。

(イ)引用発明の「シート支持体(3)」が、その機能・構成から、本願補正発明の「椅子枠」に相当する。

(ウ)引用発明の「2本の支持アーム(4a,4b)」は、「垂直側部に実質的に前記背もたれの開口(19)に隣接」するとともに、「背もたれ支持体(4)」を構成し、「背もたれ支持体(4)」は、「シート支持体(3)」に保持されていることから、引用発明の「2本の支持アーム(4a,4b)」と本願補正発明の「前記椅子枠に取り付けられた一対の直立支柱」とを対比すると、両者は「前記椅子枠に取り付けられた一対の支柱」の限度で共通する。

(エ)引用発明の「2本の支持アーム(4a,4b)」は、「背もたれ(5)の背もたれ支持体(4)」を構成するから、上記(ア)を踏まえると、引用発明の「2本の支持アーム(4a,4b)」は、本願補正発明の「前記背もたれに含まれ」る構成を有しているといえる。

(オ)引用発明の「接続要素(9)」は、「頂部で、実質的に水平に、前記背もたれの開口(19)に隣接し」ており、「2本の支持アーム(4a,4b)」を接続するものであるから、本願補正発明の「水平の上部横材」に相当する。

(カ)上記(ア)?(オ)を踏まえると、引用発明の「2本の支持アーム(4a,4b)」が「接続要素(9)」によって互いに接続された構成と、本願補正発明の「前記一対の直立支柱は、前記背もたれに含まれ、前記椅子枠に取り付けられた水平の下部横材と水平の上部横材とによって互いに接続され且つ平行に延び」る構成とを対比すると、両者は「前記一対の支柱は、前記背もたれに含まれ、水平の上部横材によって互いに接続され」る構成の限度で共通する。

(キ)本願補正発明の「前記直立支柱から横方向外側に延びる複数の可撓性の支持アーム」について、平成28年3月23日に提出された手続補正書により補正された本願明細書の段落【0015】には、「図1?図19Bは、略垂直で一対の直立支柱18を含む背もたれ12と、直立支柱18から外側に延びる複数の支持アーム21とを含む事務用椅子10の一態様を示している。」と記載されるとともに、平成28年3月23日に提出された手続補正書により補正された図面には、以下の図2が記載されている。
【図2】

そして、図2の記載から、一体となった「複数の支持アーム21」が「一対の直立支柱18」から横方向外側に延びていることが看取される。
そうすると、本願補正発明の「前記直立支柱から横方向外側に延びる複数の可撓性の支持アーム」の記載は、「直立支柱から」「複数の可撓性の支持アーム」が直接「横方向外側に延びる」構成に限らず、一体となった「複数の可撓性の支持アーム」が「直立支柱から横方向外側に延びる」構成をも含むと解される。

(ク)引用発明の「多数の可撓性の湾曲リブ(16)」が、本願補正発明の「複数の可撓性の支持アーム」に相当するから、引用発明の「一体となった多数の前記湾曲リブ(16)が、前記湾曲リブ(16)が両側の横方向外側に向かうように2本の前記支持アーム(4a,4b)に接続されている」構成と、本願補正発明の「前記直立支柱から横方向外側に延びる複数の可撓性の支持アームを備え」ている構成とを対比すると、上記(キ)を踏まえれば、両者は「前記支柱から横方向外側に延びる複数の可撓性の支持アームを備え」ている構成の限度で共通する。

(ケ)引用発明の「湾曲リブ(16)」は、「背もたれ(5)」を構成する「ベアリングシェル(5a)」の一部であり、「ベアリングシェル(5a)において外周側に設けられた複数のスロット(18)によって形成され」ていることから、形状として周縁と前面と背面を有していることは明らかであり、引用発明の「一体となった多数の前記湾曲リブ(16)」は、「前記湾曲リブ(16)が両側の横方向外側に向かうように2本の前記支持アーム(4a,4b)に接続されている」構成を有している。
そうすると、上記(キ)及び(ク)を踏まえると、引用発明の「湾曲リブ(16)」のかかる構成と、本願補正発明の「前記複数の支持アームは、各々が周縁と前面と背面とを含むとともに、前記直立支柱から第1の横方向に延びる第1組の支持アームと前記直立支柱から第2の横方向に延びる第2組の支持アームとを含」む構成とを対比すると、両者は「前記複数の支持アームは、各々が周縁と前面と背面とを含むとともに、前記支柱から第1の横方向に延びる第1組の支持アームと前記支柱から第2の横方向に延びる第2組の支持アームとを含」む構成の限度で共通する。

(コ)引用発明の「カバー(5b)」が、本願補正発明の「カバー」に相当し、引用発明の「カバー(5b)」は、「シェルの縁部の多数の可撓性の湾曲リブ(16)を覆っ」ており、「前記カバー(5b)を装着する時には、」「前記ベアリングシェル(5a)の撓みを変化させられるように、前記カバーが前記ベアリングシェル(5a)によって伸張され」ていることから、「カバー(5b)」の中央部分は「支持アーム(4a,4b)」から離間しているといえる。
そうすると、引用発明の「カバー(5b)」の「ベアリングシェル(5a)」への装着構成と、本願補正発明の「前記第1組の支持アームの周縁と前記第2組の支持アームの周縁との間で引っ張られて延びるカバーを備え、前記カバーは、前記支持アームの前記背面の周りで延びて、少なくとも中央部分が前記支持アームの前記前面から離間し、背部が前記支持アームの前記背面を覆」う構成とを対比すると、両者は、「前記第1組の支持アームの周縁と前記第2組の支持アームの周縁との間で引っ張られて延びるカバーを備え、前記カバーは、少なくとも中央部分が前記支持アームの前記前面から離間する」構成の限度で共通する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「背もたれを備える事務用椅子において、
椅子枠と前記椅子枠に取り付けられた一対の支柱とを備え、
前記一対の支柱は、前記背もたれに含まれ、水平の上部横材によって互いに接続され、
前記支柱から横方向外側に延びる複数の可撓性の支持アームを備え、
前記複数の支持アームは、各々が周縁と前面と背面とを含むとともに、前記支柱から第1の横方向に延びる第1組の支持アームと前記支柱から第2の横方向に延びる第2組の支持アームとを含み、
前記第1組の支持アームの周縁と前記第2組の支持アームの周縁との間で引っ張られて延びるカバーを備え、
前記カバーは、少なくとも中央部分が前記支持アームの前記前面から離間する、
事務用椅子。」

【相違点1】
「一対の支柱」に関し、本願補正発明は、「一対の直立支柱」であり、両者が「平行に延び」ているとともに「前記椅子枠に取り付けられた水平の下部横材」によっても接続されており、「一対の直立支柱の間に取り付けられたランバーサポート機構を備え、前記ランバーサポート機構は、前記一対の直立支柱の間の支持アームと、前記支持アームに取り付けられた腰パッドとを含み、前記腰パッドは、前記支持アームから延びて、座ったときのユーザの下背部に面する」構成を有するのに対し、引用発明の「一対の支柱」に相当する構成は「支持アーム(4a,4b)」であり、それらが「直立」であり、「平行に延び」ている特定がされておらず、それらの下部がどのように接続されているかも特定されておらず、ランバーサポートも備えていない点。

【相違点2】
本願補正発明の「カバー」は、「前記支持アームの前記背面の周りで延びて」、「背部が前記支持アームの前記背面を覆」っているのに対し、引用発明の「カバー(5b)」は、かかる構成が特定されていない点。

(4)判断

以下、相違点について検討する。

ア 相違点1について

(ア)「前記椅子枠に取り付けられた水平の下部横材」によっても接続される構成について

引用文献1には、「背もたれ側の接続要素9及び座部側の接続要素10は2本の支持アーム4a,4bと一体的に構成されている。」(摘示(1f))と記載され、「支持アーム(4a,4b)」の「座部側」すなわち下部を「座部側の接続要素10」で接続することが記載されているといえる。
そうすると、「背もたれ側の接続要素9」が「実質的に水平」であること及び当該記載を考慮すれば、「座部側の接続要素10」は水平の横材であるといえるから、引用発明の「支持アーム(4a,4b)」においても、「座部側の接続要素10」すなわち「前記椅子枠に取り付けられた水平の下部横材」で接続されていると認められ、上記相違点1のうち、「前記椅子枠に取り付けられた水平の下部横材」によっても接続される構成は実質的な相違点とはいえない。

(イ)「一対の支柱」が、「直立」であり、「平行に延び」るとともに、「一対の直立支柱の間に取り付けられたランバーサポート機構を備え、前記ランバーサポート機構は、前記一対の直立支柱の間の支持アームと、前記支持アームに取り付けられた腰パッドとを含み、前記腰パッドは、前記支持アームから延びて、座ったときのユーザの下背部に面する」構成について

a 「一対の支柱」が、「直立」であり、「平行に延び」る構成について

引用発明の「支持アーム(4a,4b)」に関し、引用文献1には、「好ましくは、支持アームは平行でなく、互いに対してV字状に延在している」(摘示(1b))こと及び「背もたれ支持体4は、V字状に互いに相対的に配置されている支持アーム4a、4bとして示される、2本の支持アームから構成され」(摘示(1f))ることが記載されている。
ここで、引用発明において「支持アーム(4a,4b)」について特定されている事項は、「前記シート支持体(3)に対して、側方に傾く方向に動くように保持された背もたれ(5)の背もたれ支持体(4)」と、「前記背もたれ支持体(4)は、側方に可撓性及び/または関節運動できるように構成され、互いに離間された2本の支持アーム(4a,4b)からな」る構成である。
すなわち、引用発明において「支持アーム(4a,4b)」について必須の構成は、「2本の支持アーム(4a,4b)」を「側方に可撓性及び/または関節運動できる」ようにすることにより、「背もたれ(5)」を「シート支持体(3)」に対して「側方に傾く方向に動く」ように保持することであるといえる。
そして、少なくとも「2本の支持アーム(4a、4b)」が可撓性を有していれば、着座者が「背もたれ(5)」に対し側方及び上下方向に力をかけたときに発生する「支持アーム(4a,4b)」のそれぞれの変形量は当然異なりうるものであり、変形量が異なれば、「背もたれ(5)」が「シート保持体(3)」に対して「側方に傾く方向に動く」ものである。
そうすると、引用文献1の「好ましくは、支持アームは平行でなく、互いに対してV字状に延在している」(摘示(1b))の記載も踏まえれば、引用発明においては、「支持アーム(4a,4b)」を「V字状に互いに相対的に配置」することは必須の構成ではないといえるとともに、「平行」であっても「背もたれ(5)」を「シート支持体(3)」に対して「側方に傾く方向に動く」ように保持することができることも示唆されているといえ、引用発明において、「支持アーム(4a,4b)」を互いに対して「平行」に配置し、「直立支柱」とすることは、「V字状」または「平行」の2つの配置形態から、当業者が適宜選択する程度のことに過ぎない。

b 「一対の直立支柱の間に取り付けられたランバーサポート機構を備え、前記ランバーサポート機構は、前記一対の直立支柱の間の支持アームと、前記支持アームに取り付けられた腰パッドとを含み、前記腰パッドは、前記支持アームから延びて、座ったときのユーザの下背部に面する」構成について

引用文献4には、事務用椅子においてランバーサポートを備えるようにする引用文献4技術Aが記載されている。そして、上記相違点1に係る本願補正発明の構成と引用文献4技術Aとを対比すると、以下のとおりである。

(a)引用文献4技術Aの「サブフレーム3b」と、本願補正発明の「一対の直立支柱」とを対比すると、両者は、「一対の支柱」の限度で共通する。

(b)引用文献4技術Aの「ランバーサポート6」が、その機能・構成から、本願補正発明の「腰パッド」に相当する。

(c)引用文献4技術Aの「調節ボルト17」は、上記(b)を踏まえれば、「左右サブフレーム3b」の間にあるといえることから、引用文献4技術Aの「調節ボルト17」と、本願補正発明の「一対の直立支柱の間の支持アーム」とを対比すると、両者は、「一対の支柱の間の支持アーム」の限度で共通する。

(d)引用文献4技術Aの「ランバーサポート6には、調節ボルト17に嵌まる筒部7bを有する中間支持体7を固着しており、ランバーサポート6は調節ボルト17によって落下不能に保持されている」ことを踏まえれば、引用文献4技術Aの「ランバーサポート6」は、「調節ボルト17」に取り付けられているといえるとともに、「腰椎を支える」ものである。
そうすると、上記(a)及び(c)を踏まえると、引用発明4技術の「ランバーサポート6」及び「調整ボルト17」からなる構成と、本願補正発明の「前記一対の直立支柱の間の支持アームと、前記支持アームに取り付けられた腰パッドとを含み、前記腰パッドは、前記支持アームから延びて、座ったときのユーザの下背部に面する」「ランバーサポート機構」とを対比すると、両者は、「前記一対の支柱の間の支持アームと、前記支持アームに取り付けられた腰パッドとを含み、前記腰パッドは、前記支持アームから延びて、座ったときのユーザの下背部に面する」「ランバーサポート機構」の限度で共通する。

(e)引用文献4技術Aの「左右サブフレーム3bの平行部に前方から支持ベース8を重ね合わせ、この支持ベース8に形成したナット部16に後方から調節ボルト17をねじ込」んでいる構成から上記(d)を踏まえると、「ランバーサポート6」及び「調整ボルト17」からなる構成、すなわち、「ランバーサポート機構」は、「サブフレーム3b」間に取り付けられているといえる。

上記(a)?(e)を総合すると、引用文献4技術Aは、上記相違点1に係る本願補正発明の構成のうち、「一対の支柱の間に取り付けられたランバーサポート機構を備え、前記ランバーサポート機構は、前記一対の支柱の間の支持アームと、前記支持アームに取り付けられた腰パッドとを含み、前記腰パッドは、前記支持アームから延びて、座ったときのユーザの下背部に面する」構成を有している。

つづいて、引用発明に引用文献4技術Aを適用する動機付けが存在するか否かについて検討する。
引用発明及び引用文献4技術Aは、いずれもオフィスチェア(事務用椅子)に係る発明であり、技術分野の共通性は認められるし、オフィスチェア(事務用椅子)は、着座者が長時間の着座を余儀なくされるものであることから、着座者の座り心地の向上・腰への負担軽減は、引用発明においても当然考慮すべき内在する課題であるといえるから、引用発明に引用文献4技術Aを適用する動機付けは十分に存在するといえる。
そして、適用に際しては、引用文献4技術Aの「サブフレーム3b」が、その機能・構成から、引用発明の「支持アーム(4a,4b)」に相当する構成であるといえることから、その前提で、引用文献4技術Aを引用発明に適用することになるが、引用文献4技術Aの「サブフレーム3b」は「平行部」を有する構成であるところ、引用文献1には、「背もたれ支持体4は、V字状に互いに相対的に配置されている支持アーム4a、4bとして示される、2本の支持アームから構成され」(摘示(1f))ることが記載されていることから、引用発明に引用文献4技術Aを適用するに際して、当該記載がその適用を阻害する要因となるか否かについて検討する必要がある。
しかし、すでに上記aにおいて検討したとおり、引用発明においては、「支持アーム(4a,4b)」を「V字状に互いに相対的に配置することは必須の構成ではなく、また、引用発明において、「支持アーム(4a,4b)」を互いに対して「平行」に配置し、「直立支柱」とすることは、「V字状」または「平行」の2つの配置形態から、当業者が適宜選択する程度のことに過ぎないことから、引用文献1の、「背もたれ支持体4は、V字状に互いに相対的に配置されている支持アーム4a、4bとして示される、2本の支持アームから構成され」(摘示(1f))る記載は、「サブフレーム3b」が「平行部」を有する引用文献4技術Aを引用発明に適用することを阻害するものとはいえない。
さらに、引用発明に引用文献4技術Aのランバーサポートの取付けを想定すると、ランバーサポートを上下動させるよう背もたれに設けることが想定され、引用発明において、「支持アーム(4a,4b)」を互いに平行に配置する方が有利であるともいえるので、引用発明に引用文献4技術Aを適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成のうち、「一対の直立支柱」が「平行に延び」るようにし、「一対の直立支柱の間に取り付けられたランバーサポート機構を備え、前記ランバーサポート機構は、前記一対の直立支柱の間の支持アームと、前記支持アームに取り付けられた腰パッドとを含み、前記腰パッドは、前記支持アームから延びて、座ったときのユーザの下背部に面する」構成を有するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

(ウ)上記(ア)及び(イ)において検討したとおり、引用発明に引用文献4技術Aを適用し、上記相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について

本願補正発明の「前記カバーは、前記支持アームの前記背面の周りで延びて、」「背部が前記支持アームの前記背面を覆」う構成は、「カバー」が「支持アーム」の「背面」の全面を覆うことを特定していないことから、「支持アーム」の「背面」の一部を覆うものも含むものであるといえる。
そうすると、引用文献1には、引用発明の「湾曲リブ(16)を覆ったカバー(5b)」に関して、「背もたれシェル5aを完全に覆っている背もたれカバー5bは、その外側エッジの回りに張られ、背もたれの背面に背もたれシェル5aを含むカバー及び/または折り重ねた縁部23が形成されている」(摘示(1i))ことが記載されており、当該記載から引用文献1には、「カバー」を、「背もたれ」の「外側エッジ」すなわち「湾曲リブ16」の周りで延びて、「カバー」の背部が「湾曲リブ16」の背面を一部覆う構成が明示的に記載されているといえ、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
仮に、本願補正発明の「前記カバーは、前記支持アームの前記背面の周りで延びて、」「背部が前記支持アームの前記背面を覆」う構成が、「カバー」が「支持アーム」の「背面」の全面を覆うことを特定しているものであるとしても、事務用椅子がその機能に加え、デザイン性・美観の向上も商品として求められるものであることは自明の事項であり、引用発明においてもデザイン性・美観の向上は当業者であれば当然に考慮すべき課題である。
したがって、引用発明において、デザイン性・美観の向上等の観点から、「カバー5b」が「湾曲リブ16」の「背面」の全面を覆うようにすることは、当業者が適宜なす設計事項に過ぎない。

ウ そして、相違点1及び2を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献4技術Aの奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献4に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正1を含む本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成30年2月16日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年6月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項8に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項8に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2及び4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2012/167940号
引用文献2:特開2001-275780号公報
引用文献4:特開2001-299501号公報

3 引用文献

(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項等

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項等は、上記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。

(2)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4及びその記載事項等

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4並びにその記載事項等は、上記第2の[理由]2(2)ウに記載した事項に加え、以下の事項等が記載されている。

(4d)
「【0031】≪ランバーサポート機構≫図5のうち(A)は図4(B)のVA-VA視図、(B)(C)はそれぞれ(A)のB-B視、C-C視断面図、図6は図2(A)のVI-VI視断面図、図7は図2(A)の VII-VII視断面図である。
【0032】図2(A)や図4(B)に示すように、ランバーサポート機構は、支持シート4に近いものから順に、側面視で前向き凸状に緩く湾曲したランバーサポート6と、上下幅の小さい中間支持体7と、左右のサブフレーム3bに取付けられた支持ベース8とを備えている。
【0033】ランバーサポート6はポリプロピレン等の合成樹脂製であり、撓み変形し得る。また、ランバーサポート6の下端には、落下防止のため、メインフレーム3aの下辺に当たる足部6aを設けている。なお、ランバーサポート6は人の腰にフィットするように、平面視においても緩く湾曲させた形態としても良い。また、ランバーサポート6は支持シート4の裏面に接着しておいても良い。
【0034】中間支持体7はゴム等の弾性体から成っており、ランバーサポート6の上下略中間部に接着等によって固定している。また、中間支持体7の後面には硬質の板7aを張っている。
【0035】例えば図5?図7に示すように、支持ベース8は合成樹脂板や金属板(板ばね)のような部材から成っており、平面視で前向き凸状に湾曲した変形許容部8aと、その左右両端に一体に連設した内向き部8bとを備えており、内向き板部8bに、左右のサブフレーム3bに内側から嵌合する鉤状ガイド部8cを折曲げ形成している。
【0036】鉤状ガイド部8cと左右外側に張り出しており、鉤状ガイド部8cをねじ9で締め付けることにより、支持ベース8を移動不能の状態に保持できる。符号10で示す部材は、硬質ゴム製等のスペーサである。
【0037】内向き板部8bは、リブ等によって撓み変形しないように構成されている。また、支持ベース8において、内向き板部8bは上下全長にわたって延びている。他方、鉤状ガイド部8cは内向き板部8bの上部のみに形成されている。これは、鉤状ガイド部8cがサブフレーム3bに沿ってスムースに上下動することを可能ならしめるためである(鉤状ガイド部8cの長さが長すぎると、サブフレーム3bの湾曲部でつかえて上下動できない)。」

上記第2の[理由]2(2)ウにおいて摘記した(4a)及び(4b)の記載に加え、(4d)の記載を総合すると、引用文献4には、以下の技術(以下「引用文献4技術B」)も記載されている。
「事務用の椅子において、
支持シート4とサブフレーム3bとの間には大きな空間が空いており、この空間を利用してランバーサポート機構を設け、
ランバーサポート機構は、支持シート4に近いものから順に、側面視で前向き凸状に緩く湾曲したランバーサポート6と、上下幅の小さい中間支持体7と、左右のサブフレーム3bに取付けられた支持ベース8とを備えている、
腰椎を支えるランバーサポートを背もたれに設ける技術。」

(3)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及びその記載事項

(2a)
「【0038】支持フレーム3は支持シート4と同じ素材からなっており、支持フレーム3の下面に、その全周にわたって延びる環状の溝7が形成されている。そして、この溝7の底面に支持シート4の周縁4bを溶着(融着)し、更に、溝7には、支持フレーム3及び支持シート4に対して接着性を有すると共にある程度の弾性を有するシール剤(コーキング剤)8が充填されている。」

なお、国際国際出願翻訳文提出書に添付された特許請求の範囲の翻訳文の請求項15で引用する請求項11に記載された「前記第1組の支持アームと前記第2組の支持アームとの周縁の各々は、前記第1組の支持アームと前記第2組の支持アームとを前記カバーに取り付けるための構造を有する取付部を含み、
前記取付部は、面を有し、
前記第1組の支持アームと前記第2組の支持アームとを前記カバーに取り付けるための構造は、前記取付部の面から延び、
前記取付部の面は、前記支持アームに対してある角度で位置決めされる」構成は、本願発明の発明特定事項とはされていない。

4 対比・判断

本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本願補正発明のうち、「前記一対の直立支柱(18)の間に取り付けられたランバーサポート機構(62)を備え、前記ランバーサポート機構(62)は、前記一対の直立支柱(18)の間の支持アーム(63)と、前記支持アーム(63)に取り付けられた腰パッド(65)とを含み、前記腰パッド(65)は、前記支持アーム(63)から延びて、座ったときのユーザの下背部に面する」構成を有しておらず、請求項8に記載された「前記背もたれ(12)は、第1部分(63)を含むランバーサポート機構(62)を備え、前記第1部分(63)は、前記直立支柱(18)と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分(63)から延びる腰パッド(65)との間に、取り付けられる」構成を有するものである。
したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、上記一致点で一致し、上記相違点2に加え、以下の点で相違する。

【相違点3】
「一対の支柱」に関し、本願発明は、「一対の直立支柱」であり、両者が「平行に延び」ているとともに「前記椅子枠に取り付けられた水平の下部横材」によっても接続されて」いるとともに、「前記背もたれは、第1部分を含むランバーサポート機構を備え、前記第1部分は、前記直立支柱と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分から延びる腰パッドとの間に、取り付けられる」のに対し、引用発明の「一対の支柱」に相当する構成は「支持アーム(4a,4b)」であり、それらが「直立」であり、「平行に延び」ている特定がされておらず、それらの下部がどのように接続されているかも特定されておらず、ランバーサポート機構も備えていない点。

上記相違点2については、上記第2の[理由]2(4)イにおいて検討済みであるから、上記相違点3について検討する。

(1)「前記椅子枠に取り付けられた水平の下部横材」によっても接続されて」いる構成については、上記第2[理由]2(4)ア(ア)に記載した理由と同様の理由から、実質的な相違点とはいえず、また、「一対の直立支柱」であり、両者が「平行に延び」ている構成については、上記第2[理由]2(4)ア(イ)aに記載した理由と同様の理由から、当業者が適宜に選択する程度のことに過ぎない。

(2)「前記背もたれは、第1部分を含むランバーサポート機構を備え、前記第1部分は、前記直立支柱と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分から延びる腰パッドとの間に、取り付けられる」構成について検討する。

引用文献4には、事務用椅子においてランバーサポートを備えるようにする引用文献4技術Bが記載されている。そして、上記相違点3に係る本願発明の構成と引用文献4技術Bとを対比すると、以下のとおりである。

ア 引用文献4技術Bの「背もたれ」が、本願発明の「背もたれ」に相当する。
イ 引用文献4技術Bの「中間支持体7」を備えた「ランバーサポート機構」が、本願発明の「第1部分を含むランバーサポート機構」に相当するとともに、引用文献4技術Bの「ランバーサポート」は「背もたれ」に設けられていることから、引用文献4技術Bの「背もたれ」は、「第1部分を含むランバーサポート機構を備え」る構成を有している。
ウ 引用文献4技術Bの「サブフレーム3b」と、本願発明の「一対の直立支柱」とを対比すると、両者は、「一対の支柱」の限度で共通する。
エ 引用文献4技術Bの「ランバーサポート6」が、その機能・構成から、本願発明の「腰パッド」に相当する。
オ 引用文献4技術Bの「支持シート4とサブフレーム3bとの間には大きな空間が空いており、この空間を利用してランバーサポート機構を設け」ていることから、「中間支持体7」は、「サブフレーム3b」と「ランバーサポート6」との間に、取り付けられており、「座っているユーザの背中に面している」ことは明らかであるから、引用文献4技術Bの「中間支持体7」の取り付け構成と本願発明の「前記直立支柱と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分から延びる腰パッドとの間に、取り付けられる」構成とを対比すると、両者は「前記支柱と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分から延びる腰パッドとの間に、取り付けられる」構成の限度で共通する。

上記ア?オを総合すると、引用文献4技術Bは、上記相違点3に係る本願発明の構成のうち、「前記背もたれは、第1部分を含むランバーサポート機構を備え、前記第1部分は、前記支柱と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分から延びる腰パッドとの間に、取り付けられる」構成を有している。
そして、上記第2[理由]2(4)ア(イ)bでの検討と同様の理由から、引用発明に引用文献4技術Bを適用する動機付けは十分に存在するといえるし、適用を阻害する特段の事情も認められないことから、引用発明に引用文献4技術Bを適用し、上記相違点3に係る本願発明の構成のうち、「前記背もたれは、第1部分を含むランバーサポート機構を備え、前記第1部分は、前記直立支柱と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分から延びる腰パッドとの間に、取り付けられる」構成を有するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

[予備的検討:引用文献4技術Aとの組合せ]

ア 引用文献4技術Aの「背もたれ」が、本願発明の「背もたれ」に相当する。
イ 引用文献4技術Aの「調節ボルト17」を備えた「ランバーサポート機構」が、本願発明の「第1部分を含むランバーサポート機構」に相当するとともに、引用文献4技術Aの「ランバーサポート」は「背もたれ」に設けられていることから、引用文献4技術Aの「背もたれ」は、「第1部分を含むランバーサポート機構を備え」る構成を有している。
ウ 引用文献4技術Aの「サブフレーム3b」と、本願発明の「一対の直立支柱」とを対比すると、両者は、「一対の支柱」の限度で共通する。
エ 引用文献4技術Aの「ランバーサポート6」が、その機能・構成から、本願発明の「腰パッド」に相当する。
オ 引用文献4技術Aの「支持シート4とサブフレーム3bとの間には大きな空間が空いており、この空間を利用してランバーサポート機構を設け」ていることから、「調節ボルト17」は、「サブフレーム3b」と「ランバーサポート6」との間に、取り付けられており、「座っているユーザの背中に面している」ことは明らかであるから、引用文献4技術Aの「調節ボルト17」の取り付け構成と本願発明の「前記直立支柱と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分から延びる腰パッドとの間に、取り付けられる」構成とを対比すると、両者は「前記支柱と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分から延びる腰パッドとの間に、取り付けられる」構成の限度で共通する。

上記ア?オを総合すると、引用文献4技術Aは、上記相違点3に係る本願発明の構成のうち、「前記背もたれは、第1部分を含むランバーサポート機構を備え、前記第1部分は、前記支柱と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分から延びる腰パッドとの間に、取り付けられる」構成を有している。
そして、上記第2[理由]2(4)ア(イ)bで検討したとおり、引用発明に引用文献4技術Aを適用する動機付けは十分に存在するといえるし、適用を阻害する特段の事情も認められないことから、引用発明に引用文献4技術Aを適用し、上記相違点3に係る本願発明の構成のうち、「前記背もたれは、第1部分を含むランバーサポート機構を備え、前記第1部分は、前記直立支柱と、座っているユーザの背中に面するように前記第1部分から延びる腰パッドとの間に、取り付けられる」構成を有するものとすることも、当業者が容易になし得たことである。

ウ したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献4技術Bまたは引用文献4技術Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-01-11 
結審通知日 2019-01-15 
審決日 2019-02-04 
出願番号 特願2016-502721(P2016-502721)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 仁木 学
和田 雄二
発明の名称 事務用椅子  
代理人 堀米 直子  
代理人 三橋 真二  
代理人 伊藤 公一  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 青木 篤  
代理人 平方 伸治  

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