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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02C
管理番号 1352934
審判番号 不服2017-16892  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-14 
確定日 2019-06-26 
事件の表示 特願2015-514219「水溶性N-(2ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドポリマー又はコポリマーを含むコンタクトレンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日国際公開、WO2013/177513、平成27年 9月10日国内公表、特表2015-526745〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特願2015-514219号(以下「本願」という。)は、2013年(平成25年)5月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年5月25日、米国 2013年3月4日、米国 2013年3月15日、米国 2013年5月22日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年 4月18日付け:手続補正書
平成29年 1月23日付け:拒絶理由通知書
平成29年 5月16日付け:意見書、手続補正書
平成29年 7月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年11月14日付け:審判請求書、手続補正書
平成30年 3月27日付け:上申書
平成30年 8月27日付け:拒絶理由通知書
平成30年11月27日付け:意見書、手続補正書

第2 平成30年8月27日付け拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由の概要
平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由は、概略、本願の請求項1-19に係る発明は、その優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2012-88525号公報
引用文献2:特開2010-239981号公報

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年11月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの、以下の発明である。

「 【請求項1】
シリコーンヒドロゲルから作られたコンタクトレンズ及び少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む医療用デバイスであって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが20モル%未満のアニオン性反復単位及び20モル%?100モル%の式I:
【化1】

のN-(2-ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、
式中、R^(1)は水素又はメチルであり、
R^(2)は、水素、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC_(1?4)アルキルであり、
R^(3)は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC_(1?4)アルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、100?100,000の重合度を有し、末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、医療用デバイス。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1の記載事項
平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由に引用文献1として引用され、本件優先日前に頒布された刊行物である特開2012-88525号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズの表面に簡便な処理で耐久性のある表面潤滑性とアメーバ付着抑制効果とを付与しうるコンタクトレンズ用ケア製剤及びコンタクトレンズを容器に密封する際に用いるパッケージング溶液に関する。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、コンタクトレンズの表面に簡便な処理で耐久性のある表面潤滑性とアメーバ付着抑制効果とを付与しうるコンタクトレンズ用ケア製剤を提供することにある。
本発明の別の課題は、コンタクトレンズの表面に耐久性のある表面潤滑性とアメーバ付着抑制効果とを付与しうるコンタクトレンズ用パッケージング溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定のホスホリルコリン類似基含有単量体と、(メタ)アクリルアミド誘導体と、疎水性基含有単量体とを重合することにより得られる共重合体が、特に表面潤滑性に優れ、かつアメーバ付着抑制効果を有する素材となることの知見を得て、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、式(1a)?(1c)で表される構成単位を有する重量平均分子量5,000?2,000,000の重合体(以下、PC重合体ということがある)を0.01?2.0重量/容積%含む溶液からなるコンタクトレンズ用ケア製剤(以下、本発明のケア製剤ということがある)が提供される。
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(4)はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。R^(3)はイソプロピル基、t-ブチル基または2-ヒドロキシエチル基を示す。R^(5)は炭素数12?24の一価の炭化水素基を示す。n1、n2、n3は構成単位のモル比を表し、n1:n2:n3=100:10?400:2?50を満たす)
また本発明によれば、上記コンタクトレンズ用ケア製剤からなるコンタクトレンズ用パッケージング溶液(以下、本発明のパッケージング溶液ということがある)が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のケア製剤は、特定のホスホリルコリン類似基含有単量体単位と、(メタ)アクリルアミド誘導体単位と、疎水性基含有単量体単位とを特定割合で有するPC重合体を含み、該PC重合体が、生体適合性、親水性及びゲル形成能を兼ね備えるので、簡便な処理でコンタクトレンズの表面に耐久性のある表面潤滑性とアメーバ付着抑制効果とを付与することができる。また、本発明のケア製剤は、ソフトコンタクトレンズ等のコンタクトレンズを容器に密閉してパッケージングする際のパッケージング溶液として好適に利用することができる。」

(2)「【0009】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のケア製剤に用いるPC重合体は、上記式(1a)?(1c)で表される構成単位を有する重量平均分子量5,000?2,000,000、好ましくは、100,000?1,500,000の重合体である。重量平均分子量が5,000未満の場合は、PC重合体のコンタクトレンズ表面への密着力が十分でないため耐久性が劣るおそれがあり、2,000,000を超える場合は、製造時の粘性が高くなりすぎ取り扱いが困難となるおそれがある。
前記PC重合体は、本発明の効果を損なわない範囲において、式(1a)?(1c)で表される構成単位以外の他の構成単位を有することも可能である。
【0010】
前記PC重合体を構成する式(1a)?(1c)において、R^(1)、R^(2)及びR^(4)はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。R^(3)はイソプロピル基、t-ブチル基または2-ヒドロキシエチル基を示す。R^(5)は炭素数12?24の一価の炭化水素基、例えば、ラウリル基、ステアリル基、ベヘニル基を示す。
式(1a)?(1c)において、n1、n2、n3は構成単位のモル比を表し、n1:n2:n3=100:10?400:2?50を満たす。n2が400より大きいと生体適合性が十分でなく、10未満ではレンズ装用感の改善が困難になるおそれがある。また、n3が2未満であると疎水性相互作用による物理架橋ゲル形成能が低下し、コンタクトレンズ表面との密着性の低下が発生し、装用感の改善が持続しないおそれがある。n3が50を超える場合は、PC重合体の親水性が低下し、水溶液への溶解度の低下と、表面親水化能の低下を引き起こすおそれがある。
・・・(中略)・・・
【0012】
【化2】

式(2)中、Xは不飽和結合を有する重合性官能基を有する1価の有機基を示す。
式(3)及び式(4)中、R^(2)?R^(5)は式(1b)及び(1c)のR^(2)?R^(5)と同様な基もしくは原子を示す。
PC単量体としては、例えば、入手性が良いことから2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートが好ましく、さらに式(5)で示される2-(メタクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(以下、MPCと略す)が好ましく挙げられる。
【0013】
【化3】

・・・(中略)・・・
【0015】
式(3)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-(t-ブチル)アクリルアミドが好ましく挙げられる。
式(4)で表される疎水性単量体として、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニルメタクリレート等の直鎖アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0026】
本発明のケア製剤は、ソフトコンタクトレンズ等のコンタクトレンズを容器に密閉してパッケージングする際に用いる本発明のパッケージング溶液としてそのまま使用することができる他、コンタクトレンズ装着液、点眼剤等の配合成分として使用することもできる。
ここで、パッケージング溶液とは、コンタクトレンズと共に、ブリスターパッケージ等の包装容器に封入される溶液のことである。一般にソフトコンタクトレンズは水溶液で膨潤した状態で使用するため、レンズは工場出荷時に水溶液で膨潤した状態で、すぐに使用できるように包装容器へ封入されている。
本発明のケア製剤又は本発明のパッケージング溶液は、コンタクトレンズの表面に接触させることにより、その表面を親水化、高潤滑化することができ、コンタクトレンズ装着時及び装用中の物理的な不快感を低減する作用を有する。更に、表面潤滑性を維持し、かつアメーバ付着抑制を付与することができる。
【0027】
本発明のケア製剤又は本発明のパッケージング溶液が対象とするコンタクトレンズの種類は限定されないが、特に、ソフトコンタクトレンズに有用である。該ソフトコンタクトレンズとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレートや、メタクリル酸/2-ヒドロキシエチルメタクリレートを重合し、水溶液で膨潤させて得られる従来型のヒドロゲルレンズや、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド等の親水性単量体と、シロキサニル基含有単量体とを共重合し、水溶液で膨潤させることにより得られるシリコーンハイドロゲルレンズが挙げられる。」

(3)「【0035】
合成例1-1(重合体A-1;MPC0.50-SMA0.05-NIPA0.45)
MPC(日油株式会社製)30.82g、ステアリルメタクリレート(SMA、日油株式会社製)3.54g、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPA、東京化成工業社製)10.64gを、エタノール55.0gに溶解し、4つ口フラスコに入れて30分間窒素を吹込んだ。その後、50℃で商品名「パーブチルND」(日油株式会社製)(以下、PB-NDと略す)0.10gを加えて8時間重合反応させた。重合液を3リットルのジエチルエーテル中にかきまぜながら滴下し、析出した沈澱を濾過し、48時間室温で真空乾燥を行って、粉末41.3gを得た。GPCにより評価した分子量は重量平均分子量1,000,000であった。これを重合体A-1とする。以下に、IR、NMR、元素分析のデータを示す。
・・・(中略)・・・
【0037】
合成例1-2?1-9
表1及び2に示す各単量体、溶媒、重合開始剤を用いた以外は、合成例1-1と同様に重合、精製、脱溶媒を行い、重合体A-2?重合体A-9を得た。組成、分子量等を表1及び表2に示す。
なお、表中、NTBAは、N-(t-ブチル)アクリルアミドを、HEAAは、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドを、LMAは、ラウリルメタクリレートを、VMA-70は、長鎖アルキルメタクリレート(商品名「ブレンマーVMA-70」、日油株式会社製、C16?C24アルキルメタクリレート混合物、アルキル基平均鎖長:21)をそれぞれ示す。
【0038】
【表1】

・・・(中略)・・・
【0043】
実施例1-1
合成例1-1で得られた重合体A-1を0.10g、塩化ポリヘキサニド20質量%溶液0.50g、塩化ナトリウム7.30g、塩化カリウム1.0g、リン酸水素二ナトリウム4.31g、リン酸二水素ナトリウム0.33g及び精製水987.06gを耐圧容器へ仕込み、80℃で1時間攪拌を行った。冷却後、セルロースアセテート(0.2μm)で濾過することによりコンタクトレンズ用ケア製剤S-1を得た。
【0044】
実施例1-2?実施例1-11
合成例1-1?合成例1-9で得られた重合体A-1?A-9を用いて、実施例1-1と同様にコンタクトレンズ用ケア製剤S-2?S-11を調製した。各原料の組成を表4及び表5に示す。
【0045】
【表4】

・・・(中略)・・・
【0061】
実施例2-1
合成例1-1で得られた重合体A-1を1g分取し、ISO生理食塩水499gへ80℃で1時間攪拌し、溶解した。この溶液をセルロースアセテート(0.2μm)メンブレンフィルターでろ過し、パッケージング溶液U-1とした。
【0062】
実施例2-2?実施例2-9
合成例1-2?1-9で得られた重合体A-2?A-9を用いて実施例2-1と同様の手順でパッケージング溶液U-2?U-9を得た。
・・・(中略)・・・
【0064】
【表16】


2 引用文献1に記載された発明
(1)引用発明1-1
上記1より、引用文献1には、実施例1-5として、次の発明(以下「引用発明1-1」という。)が記載されている。なお、MPC、SMA、HEAA及びエタノールの重量(g)並びにMPC、SMA及びHEAAのモル%は【0038】の表1に記載されたものである。また、重合体A-3、塩化ポリヘキサニド20質量%溶液、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム及び精製水の重量は、【0045】の表4に記載された組成に基づいて計算した(表4記載の値を10倍した)ものである。
「 2-(メタクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC、日油株式会社製)23.87g、ステアリルメタクリレート(SMA、日油株式会社製)2.74g、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)8.39gを、n-プロパノール65.0gに溶解し、4つ口フラスコに入れて窒素を吹込み、その後、商品名「パーブチルND」を加えて重合反応させ、重合液をジエチルエーテル中にかきまぜながら滴下し、析出した沈澱を濾過し、室温で真空乾燥を行って、MPC50モル%、SMA5モル%及びHEAA45モル%である、粉末の重合体A-3を得、
重合体A-3を1.0g、塩化ポリヘキサニド20質量%溶液0.50g、塩化ナトリウム7.30g、塩化カリウム1.0g、リン酸水素二ナトリウム4.31g、リン酸二水素ナトリウム0.33g及び精製水987.06gを耐圧容器へ仕込み、80℃で1時間攪拌を行い、冷却後、セルロースアセテート(0.2μm)で濾過することにより得た、
コンタクトレンズ用ケア製剤S-5。」

(2)引用発明1-2
引用文献1の【0001】には、引用文献1にいう本発明は、コンタクトレンズを密封する際に用いるパッケージング溶液に関するものであることが記載されている。
そうしてみると、上記1より、引用文献1には、実施例2-3として、次の発明(以下「引用発明1-2」といい、「引用発明1-1」と「引用発明1-2」を総称して「引用発明1」という。)が記載されている。
なお、MPC、SMA、HEAA及びエタノールの重量(g)並びにMPC、SMA及びHEAAのモル%は【0038】の表1に記載されたものである。
「 2-(メタクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC、日油株式会社製)23.87g、ステアリルメタクリレート(SMA、日油株式会社製)2.74g、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)8.39gを、n-プロパノール65.0gに溶解し、4つ口フラスコに入れて窒素を吹込み、その後、商品名「パーブチルND」を加えて重合反応させ、重合液をジエチルエーテル中にかきまぜながら滴下し、析出した沈澱を濾過し、室温で真空乾燥を行って、MPC50モル%、SMA5モル%及びHEAA45モル%である、粉末の重合体A-3を得、
重合体A-3を1g分取し、ISO生理食塩水499gへ80℃で1時間攪拌し、溶解し、この溶液をセルロースアセテート(0.2μm)メンブレンフィルターでろ過して得た、
コンタクトレンズを密封する際に用いるパッケージング溶液U-3。」

3 引用文献2の記載事項
平成30年8月27日付けの拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由に引用文献2として引用され、本件優先日前に頒布された刊行物である特開2010-239981号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑性被膜用組成物及び潤滑性部材に関する。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、密着性、耐薬品性、耐摩耗性、潤滑性に優れた潤滑性被膜を形成するための潤滑性被膜用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の通りである。
【0009】
1. 親水性モノマーに由来する構造単位及びN-メチロールアクリルアミドに由来する構造単位を含む親水性ポリマーを含有することを特徴とする潤滑性被膜用組成物。
・・・(中略)・・・
【0011】
・・・(中略)・・・
7. 基材上に、上記1?6のいずれかに記載の潤滑性被膜用組成物を塗布、乾燥して形成した潤滑性被膜を有することを特徴とする潤滑性部材。
・・・(中略)・・・
11. 前記潤滑性部材が、医療用チューブ、ガイドワイヤ、内視鏡、手術針、手術用縫合糸、鉗子、人工血管、人工心臓、及びコンタクトレンズからなる群から選ばれたいずれか1種のための部材であることを特徴とする上記7?10のいずれかに記載の潤滑性部材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、密着性、耐薬品性、耐摩耗性、潤滑性に優れた潤滑性被膜を形成するための潤滑性被膜用組成物を提供することができる。」

(2)「【0014】
〔潤滑性被膜用組成物〕
本発明の潤滑性被膜用組成物は、親水性モノマーに由来する構造単位及びN-メチロールアクリルアミドに由来する構造単位を含む親水性ポリマーを含有することを特徴とする。
【0015】
本発明では、親水性モノマーに由来する構造単位及び架橋構造を形成するN-メチロールアクリルアミドに由来する構造単位を含有する親水性ポリマーを用いることで高い潤滑性を維持できることに加えて潤滑性被膜表面に付着した水により潤滑性被膜が溶け出すことがなく長期にわたる耐水性にも優れる潤滑性被膜を提供することができるものと考えられる。
・・・(中略)・・・
【0024】
本発明では、N-メチロールアクリルアミドに由来する構造単位が、親水性ポリマー全体の1?30mоl%含まれることが好ましい。このような範囲にすることで、潤滑性被膜が膨潤しやすくなり潤滑性に優れるという点で好ましい。また、より好ましくは、N-メチロールアクリルアミドに由来する構造単位が、親水性ポリマー全体の2?25mоl%であり、さらに好ましくは、5?20mоl%である。
【0025】
該親水性ポリマーは、下記一般式(I-1)で表される構造及び下記一般式(I-2)で表される構造を含む親水性ポリマーであることが好ましい。
【0026】

【0027】
一般式(I-1)及び(I-2)中、R^(1)?R^(6)はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。Lは、単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。Aは-OH、-OR_(a)、-COR_(a)、-CO_(2)R_(e)、-CON(R_(a))(R_(b))、-N(R_(a))(R_(b))、-NHCOR_(d)、-NHCO_(2)R_(a)、-OCON(R_(a))(R_(b))、-NHCON(R_(a))(R_(b))、-SO_(3)R_(e)、-OSO_(3)R_(e)、-SO_(2)R_(d)、-NHSO_(2)R_(d)、-SO_(2)N(R_(a))(R_(b))、-N(R_(a))(R_(b))(R_(c))、-N(R_(a))(R_(b))(R_(c))(R_(g))、-PO_(3)(R_(e))(R_(f))、-OPO_(3)(R_(e))(R_(f))、又はPO_(3)(R_(d))(R_(e))を表す。ここで、R_(a)、R_(b)及びR_(c)は、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R_(d)は、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R_(e)及びR_(f)は、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、R_(g)はハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【0028】
上記一般式(I-1)及び(I-2)において、R^(1)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。
炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素原子数1?8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
R^(1)?R^(6)は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
・・・(中略)・・・
【0042】
一般式(I-1)及び(I-2)において、x及びyは親水性ポリマーにおける、一般式(I-1)で表される構造単位と一般式(I-2)で表される構造単位の組成比を表す。xは0<x<100、yは0<y<100である。xは70≦x≦99の範囲であることが好ましく、80≦x≦96の範囲であることがさらに好ましい。yは1≦y≦30の範囲であることが好ましく、4≦y≦20の範囲であることがさらに好ましい。
・・・(中略)・・・
【0044】
親水性ポリマーの質量平均分子量は、1,000?100,000,000が好ましく、1,000?50,000,000がさらに好ましく、1,000?10,000,000が最も好ましい。
・・・(中略)・・・
【0106】
〔基材〕
本発明に用いられる基材は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、合成樹脂、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。特に好ましい基材は、ガラス基板又はプラスチック基板である。
ガラス基板としては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low-E複層ガラスを使用することができる。また素板ガラスのまま、前記親水層を塗設できるが、必要に応じ、潤滑性被膜の密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
潤滑性を長期に渡って保持するには、基材表面に水酸基を有する基材が好ましく、例えば、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル樹脂などがより好ましい。
・・・(中略)・・・
【0108】
[用途]
本発明の潤滑性被膜用組成物の用途は特に限定されることはないが、医療用器具に適応されることが好ましい。例えば、各種医療用チューブ、ガイドワイヤ、内視鏡、手術針、手術用縫合糸、鉗子、人工血管、人工心臓、及びコンタクトレンズ等が挙げられる。本発明の潤滑性被膜用組成物を、例えば、患者の体内に挿入される医療用器具に塗設すれば、患者の体液を吸収して潤滑性が向上し、患者の負担の低減や医師の操作性向上などの効果が期待できる。」

(3)「【実施例】
【0109】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0110】
〔合成例1〕
(親水性ポリマー(A)の合成)
500ml三口フラスコにN,N-ジメチルアクリルアミド100g、N-メチロールアクリルアミド4.251g、及び蒸留水421.85gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕1.211gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。その後反応液をアセトン4リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、下記親水性ポリマー(A)を得た。乾燥後の質量は101gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により質量平均分子量4、500、000のポリマーであった。
下記の他の親水性ポリマーも上記と同様の手法により合成した。下記親水性ポリマー(S)は、N,N-ジメチルアクリルアミドのみを重合して作製した。
【0111】
【化17】

・・・(中略)・・・
【0114】
(実施例1?18、比較例1?3)
作製した各親水性ポリマー、触媒、純水を表1に示す配合組成で混合し、撹拌を行って各潤滑性被膜用組成物を得た。潤滑性被膜用組成物を塗設する基材として、内視鏡用ウレタン樹脂(ポリオールとイソシアネート架橋剤からなる塗料を塗布乾燥して作成した)を得られた各潤滑性被膜用組成物に浸漬し、ディップコートし、10時間室温で乾燥させた後、100℃で1時間加熱して潤滑性被膜を形成し、各潤滑性部材を作製した。
・・・(中略)・・・
【0126】
【表1】



4 引用文献2に記載された発明
引用文献2の【0011】には、引用文献2にいう本発明は、潤滑性被膜用組成物を基材上に塗布、乾燥して形成した潤滑性被膜を有する潤滑性部材とするものであること及び潤滑性部材がコンタクトレンズであることが記載されている。
そうしてみると、引用文献2には、実施例9として、潤滑性被膜用をコンタクトレンズに塗布、乾燥して潤滑性被膜を形成した潤滑性部材である、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「 500ml三口フラスコにN,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及び蒸留水を入れ、窒素気流下、2,2’-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕を加え、攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却し、その後反応液をアセトン中に投入し、析出した固体をろ取し、得られた固体をアセトンにて洗浄後、N,N-ジメチルアクリルアミド単位とN-メチロールアクリルアミド単位の比が70:30であって、質量平均分子量が5、300、000である、下記親水性ポリマー(G)を得、
親水性ポリマー(G)100g、触媒である1N HCl50g、純水900gを混合し、撹拌を行って、潤滑性被膜用組成物を得、
潤滑性被膜用組成物をコンタクトレンズに塗布、乾燥して潤滑性被膜を形成して得た、
潤滑性部材。



第5 対比・判断
(1)引用発明1
ア 対比
本願発明と引用発明1を対比すると、以下のとおりとなる。
(ア)非反応性親水性ポリマー
引用発明1の「重合体A-3」は、引用発明1-2においてはISO生理食塩水で攪拌して溶解したものである。そうしてみると、引用発明1の「重合体A-3」は、「水溶性」の「親水性ポリマー」であるといえる。
また、引用発明1の「重合体A-3」は、「2-(メタクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート」(「MPC」)、「ステアリルメタクリレート」(「SMA」)及び「N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド」(「HEAA」)をモノマー原料とするものである。ここで、「MPC」及び「SMA」は、その化学構造からみて、重合性のアクリル基以外で共有結合を形成する反応基を有しないものである。また、「HEAA」は、本願発明の式Iで表されるN-(2-ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに該当し(当合議体注:「HEAA」は、式IにおけるR^(1)、R^(2)及びR^(3)がそれぞれ水素、水素及びヒドロキシル基で置換されたエチル基である化合物である。)、その重合体におけるHEAA由来の構造単位は、非反応性であるといえる。そうしてみると、上記各モノマーを重合したものである「重合体A-3」は、官能基を有していないものであり、「非反応性」であるといえる。
したがって、引用発明1の「重合体A-3」は、本願発明の「水溶性の非反応性親水性ポリマー」に相当し、引用発明1は、本願発明の「医療用デバイス」における「水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む」という要件を満たすものである。
また、引用発明1の「MPC」、「SMA」及び「HEAA」は、いずれもアニオン性のものではない(当合議体注:「MPC」は、両性モノマーであって、アニオン性モノマーではない。)。そして、引用発明1の「HEAA」は、上述のとおり、本願発明の式Iで表されるN-(2-ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに該当する。そうしてみると、引用発明1の「重合体A-3」は、「MPC50モル%、SMA5モル%及びHEAA45モル%」からなるものである。したがって、引用発明1の「重合体A-3」は、本願発明の「非反応性親水性ポリマー」における「20モル%未満のアニオン性反復単位及び20モル%?100モル%の式IのN-(2-ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含」むという要件を満たすものである。
そして、「MPC」、「HEAA」及び「SMA」の分子量は、それぞれ295、115及び324であって、これらのモル比及び「重合体A-3」の重量平均分子量(600000)からすると、「重合体A-3」の重合度は2780程度である(600000/(295×0.50+115×0.45+324×0.05))。そうしてみると、引用発明1の「重合体A-3」は、本願発明の「非反応性親水性ポリマー」における「100?100,000の重合度を有」するという要件を満たすものである。
さらに、引用発明1の「重合体A-3」は、その合成方法からみて、ランダム共重合体である。そうしてみると、引用発明1の「重合体A-3」は、本願発明の「非反応性親水性ポリマー」における「末端の疎水性ポリマーブロックを含まない」という要件を満たすものである。

(イ)医療用デバイス
コンタクトレンズは一般に医療用のものである。そうしてみると、引用発明1-1の「コンタクトレンズ用ケア製剤S-5」及び引用発明1-2の「コンタクトレンズを密封する際に用いるパッケージング溶液U-3」は、いずれも本願発明の「医療用デバイス」に相当するといえる。

イ 一致点及び相違点
(ア)本願発明と引用発明1は、次の構成で一致する。
(一致点)
「 少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む医療用デバイスであって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが20モル%未満のアニオン性反復単位及び20モル%?100モル%の式I:
【化1】

のN-(2-ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、
式中、R^(1)は水素又はメチルであり、
R^(2)は、水素、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC_(1?4)アルキルであり、
R^(3)は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC_(1?4)アルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、100?100,000の重合度を有し、末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、医療用デバイス。」

(イ)本願発明と引用発明1は、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明の「医療用デバイス」は、「シリコーンヒドロゲルから作られたコンタクトレンズ」を含むのに対して、引用発明1は、このように特定されたものではない点。

ウ 判断
引用文献1の【0027】には、パッケージング溶液が対象とするコンタクトレンズはソフトコンタクトレンズが有用であって、ソフトコンタクトレンズとして、シリコーンハイドロゲルレンズが挙げられている。
そうしてみると、引用発明1-2の「コンタクトレンズを密封する際に用いるパッケージング溶液」は、シリコーンハイドロゲルレンズに用い得るものであるといえる。また、引用発明1-1の「コンタクトレンズ用ケア製剤S-5」もシリコーンハイドロゲルレンズに用い得るものであるといえる。 したがって、引用発明1において、コンタクトレンズとしてシリコーンハイドロゲルレンズを用い、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者の通常の創意工夫の範囲内の事項にすぎない。

(2)引用発明2
ア 対比
本願発明と引用発明2を対比すると、以下のとおりとなる。
(ア)コンタクトレンズ
引用発明2の「潤滑性部材」は、「潤滑性被膜用組成物をコンタクトレンズに塗布、乾燥して潤滑性被膜を形成して得た」ものである。
そうしてみると、引用発明2の「潤滑性部材」は、「コンタクトレンズ」を「含む」という要件を満たすものであるといえる。

(イ)非反応性親水性ポリマー
引用発明2の「親水性ポリマー(G)」は、「親水性」であるから、「水溶性」の「親水性ポリマー」であるといえる。
また、引用発明2の「親水性ポリマー(G)」は、「N,N-ジメチルアクリルアミド」及び「N-メチロールアクリルアミド」をモノマー原料とするものである。ここで、「N,N-ジメチルアクリルアミド」は、その化学構造からみて、重合性のアクリル基以外で共有結合を形成する反応基を有しないものである。また、引用発明2の「N-メチロールアクリルアミド」は、本願発明の式Iで表されるN-(2-ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに該当し(当合議体注:N-メチロールアクリルアミドは、式IにおけるR^(1)、R^(2)及びR^(3)がそれぞれ水素、水素及びヒドロキシル基で置換されたメチル基である化合物である。)、その重合体におけるN-メチロールアクリルアミド由来の構造単位は、非反応性であるといえる。そうしてみると、引用発明2の「親水性ポリマー(G)」は、「非反応性」であるといえる。
したがって、引用発明2の「親水性ポリマー(G)」は、本願発明の「水溶性の非反応性親水性ポリマー」に相当し、引用発明2の「潤滑性部材」は、本願発明の「医療用デバイス」における「水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む」という要件を満たすものである。
また、引用発明2の「N,N-ジメチルアクリルアミド」及び「N-メチロールアクリルアミド」は、いずれもアニオン性のものではない。そして、引用発明2の「N-メチロールアクリルアミド」は、上述のとおり、本願発明の式Iで表されるN-(2-ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに該当し、さらに引用発明2の「親水性ポリマー(G)」は、「N,N-ジメチルアクリルアミド単位とN-メチロールアクリルアミド単位の比が70:30」である。そうしてみると、引用発明2の「親水性ポリマー(G)」は、本願発明の非反応性親水性ポリマーにおける「20モル%未満のアニオン性反復単位及び20モル%?100モル%の式IのN-(2-ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含」むという要件を満たすものである。
そして、「N,N-ジメチルアクリルアミド」及び「N-メチロールアクリルアミド」の分子量は、それぞれ99及び101であって、これらのモル比及び「親水性ポリマー(G)」の質量平均分子量(5300000)からすると、「親水性ポリマー(G)」の重合度は53213程度である(5300000/(99×0.7+101×0.3))。そうしてみると、引用発明2の「親水性ポリマー(G)」は、本願発明の「非反応性親水性ポリマー」における「100?100,000の重合度を有」するという要件を満たすものである。
さらに、引用発明2の「親水性ポリマー(G)」は、その合成方法からみて、ランダム共重合体である。そうしてみると、引用発明2の「親水性ポリマー(G)」は、本願発明の「非反応性親水性ポリマー」における「末端の疎水性ポリマーブロックを含まない」という要件を満たすものである。

(ウ)医療用デバイス
コンタクトレンズは一般に医療用のものである。そうしてみると、引用発明2の「潤滑性被膜用組成物をコンタクトレンズに塗布、乾燥して潤滑性被膜を形成して得た」、「潤滑性部材」は、本願発明の「医療用デバイス」に相当する。

イ 一致点及び相違点
(ア)本願発明と引用発明2は、次の構成で一致する。
(一致点)
「 コンタクトレンズ及び少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーを含む医療用デバイスであって、前記少なくとも1つの水溶性の非反応性親水性ポリマーが20モル%未満のアニオン性反復単位及び20モル%?100モル%の式I:
【化1】

のN-(2-ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドに由来する反復単位を含み、
式中、R^(1)は水素又はメチルであり、
R^(2)は、水素、又は少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC_(1?4)アルキルであり、
R^(3)は、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されたC_(1?4)アルキルであり、
前記水溶性の非反応性親水性ポリマーが、100?100,000の重合度を有し、末端の疎水性ポリマーブロックを含まない、医療用デバイス。」

(イ)本願発明と引用発明2は、次の点で相違する。
(相違点2)
本願発明は、「コンタクトレンズ」が「シリコーンヒドロゲルから作られた」ものであるのに対して、引用発明2は、このように特定されたものではない点。

ウ 判断
引用文献2の【0106】には、(潤滑性被膜を形成する)基材が、潤滑性を長期に渡って保持するためには、シリコン系樹脂等の基材表面に水酸基を有する基材が好ましいことが記載されている。また、引用文献2の【0108】には、引用文献2にいう本発明の潤滑性被膜用組成物の用途の一つとしてコンタクトレンズが挙げられている。
そして、コンタクトレンズとして、シリコーンハイドロゲルレンズを用いることは周知技術である。例えば、引用文献1の【0027】には、パッケージング溶液が対象とするコンタクトレンズはソフトコンタクトレンズが有用であって、ソフトコンタクトレンズとして、シリコーンハイドロゲルレンズが挙げられている。
そうしてみると、引用発明2において、コンタクトレンズとして、シリコーンハイドロゲルレンズを用いることは、当業者が発明を具体化する際に適宜なし得るものであるといえる。
したがって、引用発明2において、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者の通常の創意工夫の範囲内の事項にすぎない。

(3)効果について
審判請求人は、平成30年11月27日付けの意見書において、概略、本願発明の目的は、本願明細書の【0128】に記載されているように、望ましい湿潤性とともに、低減したリポカリン、脂質、およびムチンの摂取によって証明されるように、改善した生体測定性能を有する、コンタクトレンズのような医療用デバイスを提供することができる一群のポリマーを提供すること、言い換えれば、単なるコンタクトレンズの湿潤性だけではなく、コンタクトレンズの摂取に向けられており、実施例では、請求項1,9に規定された非反応性親水性ポリマーで処理されたコンタクトレンズが、未処理のコンタクトレンズと比較して、所望の接触角とともに、減少したリポカリン、脂質、およびムチンの摂取を有することが示されているのに対し(【0162】、【0163】)、引用文献1、2は、コンタクトレンズの改善した生体測定性能に関係しておらず、この目的のために、シリコーンヒドロゲルから作られたコンタクトレンズに、請求項1、9に規定された非反応性親水性ポリマーを組み込むように当業者を導くことは、引用文献1および2には何も教示も示唆もされておらず、コンタクトレンズのリポカリン、脂質、およびムチンの摂取を減少させるために、コンタクトレンズに、例えば、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)を組み込むことは、引用文献1、2から容易に導き出せるものではない旨主張している。
しかしながら、引用発明1及び2は、前記(1)及び(2)に記載したとおり、本願発明の「非反応性親水性ポリマー」を含むものである。そうしてみると、引用発明1及び2は、コンタクトレンズのリポカリン、脂質、およびムチンの摂取を減少させるという本願発明と同じ効果を奏するものであるといえる。
また、本願明細書の【0027】及び【0068】には、それぞれ、生物医学デバイスはカテーテル等のコンタクトレンズ以外のものであること及びN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(HAMA)ポリマーは、ポリシロキサン等のシリコーンヒドロゲル以外のポリマー物品と会合され得ることが記載されていることからすると、本願発明の「非反応性親水性ポリマー」は、シリコーンヒドロゲルから作られたコンタクトレンズ以外にも適用されるものであるといえる。さらに、本願明細書の実施例の記載等を考慮しても、コンタクトレンズとしてシリコーンヒドロゲルから作られたものを用いることによる効果が他の材料から作られたものを用いた場合に比して、当業者が予測し得る範囲を超えた格別なものであるともいえない。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1に基づいて、あるいは引用発明2及び周知技術に基づいて、その優先権主張の日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-01-25 
結審通知日 2019-01-29 
審決日 2019-02-12 
出願番号 特願2015-514219(P2015-514219)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾福村 拓  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 川村 大輔
宮澤 浩
発明の名称 水溶性N-(2ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミドポリマー又はコポリマーを含むコンタクトレンズ  
代理人 加藤 公延  
代理人 大島 孝文  
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