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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1352950
審判番号 不服2017-13961  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-20 
確定日 2019-07-05 
事件の表示 特願2013-163415「プログラム及びサーバ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月16日出願公開、特開2015- 29837〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年8月6日の出願であって,平成28年9月29日付けで拒絶理由通知がされ,同年12月1日に意見書及び手続補正書が提出され,平成29年2月9日付けで拒絶理由通知がされ,同年4月24日に意見書が提出されたが,同年6月13日付けで,平成29年2月9日付けの拒絶理由通知により通知された理由1(以下,「原査定の理由」という。)による拒絶査定がなされ,その謄本は同年6月21日に請求人に送達された。
これに対し,同年9月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1乃至16に係る発明は,以下の引用文献1乃至3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1 特開2011-56129号公報
2 「ファイナルファンタジーXI 電撃の旅団編 ヴァナ・ディール公式ワールドガイド アルタナの神兵編 '080501バージョンアップ対応」,初版,株式会社アスキー・メディアワークス,2008年05月30日,12及び13頁
3 特開2003-88680号公報

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成28年12月1日付けで補正された特許請求の範囲における,請求項1に記載された事項によって特定されるべきものであり,その記載は次のとおりである。
「【請求項1】
マッチング処理を行うサーバのプログラムであって,
プレーヤキャラクタの情報を記憶部に記憶する処理を行う記憶処理部と,
第1のプレーヤキャラクタ及び第2のプレーヤキャラクタが登場する対戦ゲームに参戦可能な複数のキャラクタの中から,第3者キャラクタを抽出し,当該第1のプレーヤキャラクタ及び当該第2のプレーヤキャラクタに当該第3者キャラクタをマッチングする設定処理を行うマッチング処理部として,コンピュータを機能させ,
前記マッチング処理部が,
前記第1のプレーヤキャラクタの情報及び前記第2のプレーヤキャラクタの情報の組み合わせに基づいて,前記対戦ゲーム開始前に第3者キャラクタを抽出することを特徴とするプログラム。」

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1(特開2011-56129号公報)について
原査定の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で引いたものである。以下も同じ。)
(1)「【0034】
図3は,ゲーム端末1の一実施形態を示すハードウェア構成図である。制御部16はゲーム端末1の全体の動作を制御するもので,ゲームの進行全般に関する処理,画像表示処理の他,種々の情報処理を行う情報処理部(CPU)161と,処理途中の情報等を一時的に格納するRAM162と,所定の画像情報及びゲームプログラム等が予め記憶されたROM163とを備える。」

(2)「【0041】
図4は,ゲーム端末1の制御部16の機能構成図である。制御部16のCPU161は,RAM162上に保持されたゲームプログラム,制御プログラムを実行することによって,プレイヤからのゲームへの参加を受け付ける受付処理部161aと,ゲームの開始から終了までの一連の進行を制御して射撃ゲームを進行させるゲーム進行制御部161bと,モニタ11に受付画像やゲーム画像等を表示する画像表示制御部161cとして機能する。また,CPU161は,RAM162上に保持されたゲームプログラム,制御プログラムを実行することによって,仮想ゲーム空間に配置される仮想カメラ60の位置及び視線方向を制御する仮想カメラ制御部161d,自己プレイヤキャラクタの仮想ゲーム空間内での移動動作を処理するキャラクタ移動処理部161eと,自己プレイヤキャラクタが仮想的に所持する武器を用いて行う攻撃動作の処理する攻撃処理部161fと,攻撃動作に先立って行われる攻撃準備としての構え動作を行う構え処理部161gと,構え動作の実行と共に行われる攻撃方向を示す照準を表示する照準表示部161hと,自己プレイヤキャラクタの相手プレイヤキャラクタへ行われる攻撃を有無をゲーム中,監視しておき,攻撃が成功したとき,例えば銃による射撃において命中したとき所定のスコアの付与を行うスコア処理部161iと,自己プレイヤキャラクタの相手プレイヤキャラクタのスコアの大小を比較するスコア比較部161jと,コンピュータによって制御されるNPC(Non player Character)を第三勢力のキャラクタとして仮想ゲーム空間に登場させ,対戦ゲームの優劣バランスを図るNPC制御部161k,ゲーム開始前後及びゲーム中に各種情報の通信の制御を行う通信制御部161mとして機能する。」

(3)「【0062】
図4に戻って,制御部16のRAM162は,同じ仮想ゲーム空間での対戦ゲーム中のゲーム途中経過情報が,逐次プレイヤ毎に,すなわち自己及びネットワーク通信部18を介して得られる味方,相手側の全プレイヤについて更新的に記憶される途中経過情報記憶部162aと,各種スイッチ,ボタンで設定された設定情報及びスコア情報を記憶する設定情報記憶部162bとを備える。ゲームが終了する毎に,通信制御部161mは,スコア情報をプレイヤのユーザID,ゲーム端末1及び店舗の各識別情報と共にサーバ3に送信する。
【0063】
スコア比較部161jは,グループ対戦ゲームにおいて,味方側のキャラクタと相手側のキャラクタの各スコアの集計し,両集計スコアの大小を比較するものである。スコア比較部161jは,ゲーム開始時点では,スコアが全て0なので,味方側及び相手側の各キャラクタの過去のグループ対戦ゲームにおけるスコアをサーバ3から取得し,味方側及び相手側の各キャラクタの各スコアを集計し,その大小を比較する。さらに,スコア比較部161jは,ゲーム開始後,例えばゲーム開始から所定時間経過した後,例えば1分経過した後は,この1分間に取得したスコアを集計して,味方,相手間で集計スコアの大小比較するようにしている。すなわち,この例では,ゲーム開始から最初の1分は,過去のゲームにおけるスコア取得履歴からスコア集計し,それ以降からゲーム終了までは,現ゲームでの1分単位の取得スコアを集計するようにしている。
【0064】
NPC制御部161kは,スコア比較部161jの比較結果に基づいて,仮想ゲーム空間へのNPCの登場処理乃至は参戦処理を実行させるものである。NPC制御部161kは,本実施形態では,スコア比較部161jによる両集計スコアの大小比較での差が所定の閾値以上である場合に,NPCを登場させるようにしている。NPCの参戦処理は,対戦状況の調整であり,例えばスコアの低い方(弱い側)のグループ(チーム)を支援する第三者勢力としてのNPCを登場させ,できるだけ拮抗したグループ対戦を通して,面白味乃至は緊張感のあるゲーム展開を実現するようにしたものである。従って,優劣の差が僅かしかない場合に,敢えて支援のためのNPCを登場させると,NPC制御のソフトウエアの負担が増大する上,優劣関係が直ちに逆転する等の不自然さも考えられることから,所定の閾値を設定している。例えば,1回の射撃による攻撃が成功した時に取得できるスコアが仮に1000点とし,味方側,相手側のプレイヤの集計後のスコアが40,000点と60,000点であったとするとき,閾値が12,000点の場合には,NPCが登場することとなり,一方,閾値が24,000点であれば,NPCが登場しないことになる。登場するNPCは1つのキャラクタでもよいし,味方,相手のキャラクタの数と同数であってもよく,あるいはその間の適宜の数であってもよい。また,両集計スコアからスコアの比率(上記の例では,4対6)を求め,この比率の差(上記の例では,2(=6-4))とNPCの登場のための閾値(例えば,1.2とか2.4)とを大小比較する態様としてもよい。これらは,いずれも両集計スコアの差分を用いている点で同様である。
【0065】
NPC制御部161kは,NPCに対して味方側,相手側の各集計スコアの差に応じた,集計スコアの小さい側への支援度合いを設定する。支援度合いとは,より具体的には集計スコアの差に応じて設定される味方側,相手側の各キャラクタへの質的,量的な攻撃の割合として対応する。集計スコアの差と支援度合いとの関係は,任意に設定可能であるが,一般的には,略比例関係とすることが好ましい。例えば,両集計スコアの差が閾値を超えた最小値である場合の支援度合いを最小とし,前記差が大きくなるに従って所定の比率で支援度合いを増加させるようにすればよい。より具体的には,劣勢のグループ側への支援度合いの最小を6対4とし,最大を10対0で飽和するものとし,差分に応じてその間で設定されるようにすればよい。なお,6対4とは,優勢グループ側のキャラクタへの攻撃割合を6割,劣勢グループ側のキャラクタへの攻撃割合を4割とすることの意味である。従って,10対0とは,優勢グループ側のキャラクタへの攻撃割合が10割であることを意味する。」

(4)「【0079】
続いて,図12は,ゲーム端末1のCPU161のゲームプログラムによって実行されるゲーム処理の手順を説明するフローチャートである。先ず,グループ対戦ゲームでのプレイヤの選定(マッチング)が成立したか否かが判断される(ステップS1)。マッチングが成立していなければ,本フローチャートを抜ける。一方,マッチングが成立したのであれば,サーバ3から送信される,マッチングが成立したプレイヤのプレイヤ情報及び所定のスコア情報の受信が行われる(ステップS3)。次いで,受信したスコアから支援度合いの設定処理が実行される(ステップS5)。具体的には,各プレイヤのスコアからプレイヤ単位のスコアが算出され,さらに,味方側,相手側のプレイヤの各スコアを集計して,両集計スコアの大小比較(絶対値,比率のいずれによる態様でもよい)が行われ,この大小比較における差が閾値以上であれば,差に応じた支援度合いが設定され,NPCが登場する処理が実行され,そうでなければ,支援度合いは設定されず,かつNPCの登場処理も行われない。なお,各プレイヤのスコアからプレイヤ単位のスコアを算出する処理としては,例えば直近の所定回数分のゲームのスコアの合計値,あるいは平均値を算出することをいう。」

(5)「【0084】
これによれば,ゲーム開始時に,ゲーム開始から1分までにおける支援度合いが設定され,次に,1分?2分まで,続いて,2分?3分まで,そして最後の3分?4分までの3回の支援度合いの再設定が行われる。この再設定処理により,NPCがゲーム途中から登場したり,あるいは,ゲーム途中から登場しなくなったり,さらには,登場したり,しなかったりが混在したりするので,より面白味のあるゲームが提供できる。」

(6)「【0092】
(5)支援度合いに応じて,NPC人数を増減設定する態様としてもよい。差分に応じたNPCの登場数の対照表を予め準備しておき,算出された差分に応じてNPCの数を設定すればよい。これによれば,NPCの数で支援度合いに対応するので,NPCの強さ自体は一律とすることもできる。」

(7)【0095】
本実施形態では,グループ対戦ゲームで説明したが,1対1ゲームにも適用可能である。この場合,NPCの登場によって,三つ巴の対戦ゲームとなる。

引用文献1の上記記載事項によれば,引用文献1には以下の事項(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「ゲーム端末1の制御部16はゲーム端末1の全体の動作を制御するものであって,ゲームの進行全般に関する処理,画像表示処理の他,種々の情報処理を行う情報処理部(CPU)161と,処理途中の情報等を一時的に格納するRAM162と,所定の画像情報及びゲームプログラム及び第三者キャラクタの画像が所要数が予め記憶されたROM163とを備え,
制御部16のCPU161は,RAM162上に保持されたゲームプログラム,制御プログラムを実行することによって,プレイヤからのゲームへの参加を受け付ける受付処理部161aと,ゲームの開始から終了までの一連の進行を制御して射撃ゲームを進行させるゲーム進行制御部161bと,自己プレイヤキャラクタの相手プレイヤキャラクタのスコアの大小を比較するスコア比較部161jと,コンピュータによって制御されるNPC(Non player Character)をとして仮想ゲーム空間に登場させ,対戦ゲームの優劣バランスを図るNPC制御部161kとして機能し,
制御部16のRAM162は,同じ仮想ゲーム空間での対戦ゲーム中のゲーム途中経過情報が,逐次プレイヤ毎に,味方,相手側の全プレイヤについて更新的に記憶される途中経過情報記憶部162aと,スコア情報を記憶する設定情報記憶部162bとを備え,
スコア比較部161jは,グループ対戦ゲームにおいて,味方側のキャラクタと相手側のキャラクタの各スコアの集計し,両集計スコアの大小を比較するものであって,ゲーム開始時点では,スコアが全て0なので,味方側及び相手側の各キャラクタの過去のグループ対戦ゲームにおけるスコアをサーバ3から取得し,味方側及び相手側の各キャラクタの各スコアを集計して,その大小を比較するものであって,
NPC制御部161kは,スコア比較部161jの比較結果に基づいて,仮想ゲーム空間へのNPCの登場処理乃至は参戦処理を実行させるものであって,参戦処理は,対戦状況の調整であって,スコアの低い方(弱い側)のグループ(チーム)を支援する第三者勢力としてのNPCを登場させ,できるだけ拮抗したグループ対戦を通して,面白味乃至は緊張感のあるゲーム展開を実現するために行われ,スコア比較部161jによる両集計スコアの大小比較での差が所定の閾値以上である場合に,NPCを登場させるものとして機能するものであり,
さらに,NPC制御部161kは,NPCに対して味方側,相手側の各集計スコアの差に応じた,集計スコアの小さい側への支援度合いを設定し,
ゲーム端末1のCPU161のゲームプログラムによって実行されるゲーム処理の手順は,
グループ対戦ゲームでのプレイヤの選定が成立したのであれば,サーバ3から送信される,マッチングが成立したプレイヤのプレイヤ情報及び所定のスコア情報の受信が行われ,受信したスコアから支援度合いの設定処理が実行され,この大小比較における差が閾値以上であれば,差に応じた支援度合いが設定され,NPCが登場する処理が実行され,
ゲーム開始時には,ゲーム開始から1分までにおける支援度合いが設定されており,
支援度合いに応じて,NPC人数を増減設定する態様としてもよく,差分に応じたNPCの登場数の対照表を予め準備しておき,算出された差分に応じてNPCの数を設定することで,NPCの数で支援度合いに対応するので,NPCの強さ自体は一律とすることもできる,
1対1ゲームにも適用可能であるゲームプログラム。」

第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。
引用発明1の「味方側のキャラクタ」及び「相手側のキャラクタ」は,それぞれ本願発明の「第1のプレーヤキャラクタ」及び「第2のプレーヤキャラクタ」に相当する。
引用発明1の「途中経過情報記憶部162a」及び「設定情報記憶部162b」は,それぞれ「ゲーム途中経過情報が,逐次プレイヤ毎に,更新的に記憶」され,「スコア情報を記憶」するものであって,これらの記憶部は「制御部16」によって制御されているから,引用発明1の「途中経過情報記憶部162a」及び「設定情報記憶部162b」は「記憶部」であり,引用発明1の「制御部16」は,「制御部」であるといえ,さらに,ゲーム途中経過情報やスコア情報は,「プレーヤキャラクタの情報」に他ならないから,本願発明と引用発明1とは,「プレーヤキャラクタの情報を記憶部に記憶する処理を行う記憶処理部」を有している点で共通している。
引用発明1の「グループ対戦ゲーム」は,本願発明の「対戦ゲーム」に相当する。
引用発明1の「NPC(Non player Character)」は,「仮想ゲーム空間に登場させ,対戦ゲームの優劣バランスを図る第三勢力のキャラクタ」であって,「NPC人数を増減設定する態様」,「NPCの登場数の対照表を予め準備」との記載から複数用意されていることは自明であり,「対戦ゲームに参戦可能な複数のキャラクタ」であるといえる。また,引用発明1の「NPC(Non player Character)」は,「支援度合いに応じて,NPC人数を増減設定する態様としてもよく,差分に応じたNPCの登場数の対照表を予め準備しておき,算出された差分に応じてNPCの数を設定」するものであるから,「設定された数のNPC」は,複数用意されたNPCから,「抽出されたNPC」であるといえる。
さらに,引用発明1において「味方側のキャラクタと相手側のキャラクタの各スコアの集計し,両集計スコアの大小を比較」した,「スコア比較部161jの比較結果に基づいて」,「NPC制御部161k」が,「仮想ゲーム空間へのNPCの登場処理乃至は参戦処理を実行」するものであるから,引用発明1が「味方側のキャラクタ及び相手側のキャラクタに設定された数のNPCをマッチングする設定処理」を行っていること,「スコア比較部161j」及び「NPC制御部161k」が協働して,該設定処理を処理する処理部として機能していることは明らかである。
してみると,本願発明と引用発明1とは,「第1のプレーヤキャラクタ及び第2のプレーヤキャラクタが登場する対戦ゲームに参戦可能な複数のキャラクタの中から,第3者キャラクタを抽出し,当該第1のプレーヤキャラクタ及び当該第2のプレーヤキャラクタに当該第3者キャラクタをマッチングする設定処理を行うマッチング処理部」を有している点で共通している。
上述したとおり,引用発明1は,「味方側のキャラクタと相手側のキャラクタの各スコアの集計し,両集計スコアの大小を比較」した,「スコア比較部161jの比較結果に基づいて」,「NPC制御部161k」が,「仮想ゲーム空間へのNPCの登場処理乃至は参戦処理を実行」するものであるから,「味方側のキャラクタの情報及び相手側のキャラクタの情報の組み合わせに基づいて,設定された数のNPCを抽出」しているものである。
また,引用発明1は,「ゲーム開始時には,ゲーム開始から1分までにおける支援度合いが設定」されており,それは「ゲーム開始時点では,スコアが全て0なので,味方側及び相手側の各キャラクタの過去のグループ対戦ゲームにおけるスコアをサーバ3から取得し,味方側及び相手側の各キャラクタの各スコアを集計して,その大小を比較」したものに基づき,該支援度合いによってNPC人数を増減設定しているから,引用発明1は,「対戦ゲーム開始前にNPCを抽出」しているものである。
してみると,本願発明と引用発明1とは,「第1のプレーヤキャラクタの情報及び第2のプレーヤキャラクタの情報の組み合わせに基づいて,対戦ゲーム開始前に第3者キャラクタを抽出」している点で共通している。
引用発明1において,「味方側のキャラクタ及び相手側のキャラクタに設定された数のNPCをマッチングする設定処理」は,制御部16のCPU161の「スコア比較部161j」及び「NPC制御部161k」が,制御部16のCPU161は,RAM162上に保持されたゲームプログラム,制御プログラムを実行することによっておこなわれるものである。
してみると,本願発明と引用発明1とは,「コンピュータを機能させるマッチング処理を行うプログラム」である点で共通している。
したがって,本願発明と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「マッチング処理を行うプログラムであって,
プレーヤキャラクタの情報を記憶部に記憶する処理を行う記憶処理部と,
第1のプレーヤキャラクタ及び第2のプレーヤキャラクタが登場する対戦ゲームに参戦第3者キャラクタを抽出し,当該第1のプレーヤキャラクタ及び当該第2のプレーヤキャラクタに当該第3者キャラクタをマッチングする設定処理を行うマッチング処理部として,コンピュータを機能させ,
前記マッチング処理部が,
前記第1のプレーヤキャラクタの情報及び前記第2のプレーヤキャラクタの情報の組み合わせに基づいて,前記対戦ゲーム開始前に第3者キャラクタを抽出するプログラム。」

(相違点)
(相違点1)
第1のプレーヤキャラクタの情報及び第2のプレーヤキャラクタの情報の組み合わせに基づいて,第3者キャラクタを抽出するという,第1のプレーヤキャラクタ及び第2のプレーヤキャラクタに第3者キャラクタをマッチングする設定処理に関して,本願発明は,「複数のキャラクタの中から,第3者キャラクタを抽出」しているのに対して,引用発明1は,「NPC人数を増減設定」している点。
(相違点2)
本願発明は,マッチング処理を行うサーバのプログラムが「マッチング処理部」として,コンピュータを機能させているのに対して,引用発明1において,「マッチング処理部」に相当する構成は,ゲーム端末1のゲームプログラムがコンピュータを機能させている点。

2 相違点についての判断
(1)相違点1について検討する。
相違点1に係る本願発明の発明特定事項は,第1のプレーヤキャラクタの情報及び第2のプレーヤキャラクタの情報の組み合わせに基づいて複数のキャラクタの中から特定のキャラクタを抽出することであるところ,ゲームの技術分野において,複数のキャラクタの中から,ゲームのキャラクタの情報に応じて特定のキャラクタを抽出することは周知技術(以下,「周知技術1」という。)にすぎない。
引用発明1の「NPC人数を増減設定」することは,NPCの人数によって,味方側及び相手側の各キャラクタの各スコアの差によって決定された支援度合いに応じたNPC全体としての能力(強さ)を設定することを意味しており,引用発明1と周知技術1とは,ゲームという技術分野に属する点,及びユーザーのレベル等に応じた相手側キャラクタを抽出するという内在する課題を有する点で共通するから,引用発明1の「NPC人数を増減設定」に,該周知技術1を適用して,相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。
必要であれば,周知技術1を示す文献として以下の引用文献2乃至4を参照されたい。
引用文献2:特開2008-206800号公報
「【0050】
また,「探知モード」において,探知されるキャラクタは,プレーヤの「レベル」に応じて変化する。詳細には,同一のAP機器から送信される同一のビーコン信号を受信したとしても,プレーヤのレベルに応じてキャラクが出現する場合としない場合とがある。尚,このプレーヤのレベルは,例えばこれまでに捕獲したキャラクタの総数や,「対戦モード」における対戦成績等に応じて変化するパラメータである。
【0051】
図6は,プレーヤのレベルに応じたキャラクタの出現する/しないを説明する図である。同図に示すように,レベルが異なる二人のプレーヤP1,P2それぞれが持つゲーム装置1000がAP機器90から送信されるビーコン信号を受信した場合,レベル「5」のプレーヤP1のゲーム装置1000においては,探知中画面が表示されたままであるが,レベル「10」のプレーヤP2のゲーム装置1000においては,キャラクタが探知され,解析結果画面が表示されてキャラクタCRが出現している。」

引用文献3:特開2002-18142号公報
「【0009】本発明の第2の手段は,前記第1の手段において,前記ゲーム実施状況は,前記ゲームのプレイヤキャラクタのステータスであり,前記ゲームの設定は,出現する敵キャラクタの決定であるものである。
【0010】これによれば,プレイヤキャラクタのステータスにより出現する敵キャラクタが決定されることにより,戦いに緊張感を維持することができる。特に,プレイヤキャラクタの強さに応じた強さの敵キャラクタを出現させることにより,プレイヤは飽きることなくプレイを継続できる。」
「【0029】図5は敵キャラクタとの遭遇画面の例を示している。図5(a)はプレイヤキャラクタ31の能力が低い場合であり,敵キャラクタ34として比較的弱い「くさったしたい」が現れたところである。一方,図5(b)は,プレイヤキャラクタ31の能力が高い場合であり,敵キャラクタ35として比較的強い「くさったドラゴン」が現れたところである。」

引用文献4:特開2001-243153号公報
「【課題を解決するための手段】上記の目的は,請求項1に記載する如く,コンピュータネットワークを介してユーザコンピュータからログインしてきたユーザに対戦ゲームサービスを提供するオンラインゲームサーバであって,ログインしてきた各ユーザの競技ランクを取得するランク取得手段と,ログインしてきた一のユーザの競技ランクに相応しい競技ランクを有するログイン中の他のユーザを,前記一のユーザの対戦相手として指定する対戦相手指定手段と,前記一のユーザおよび前記他のユーザによる対戦ゲームサービスをコンピュータネットワークを介して提供するゲームサービス提供手段と,前記一のユーザおよび前記他のユーザの対戦結果に基づいて,前記一のユーザおよび前記他のユーザの競技ランクを更新するランク更新手段と,を備えるオンラインゲームサーバにより達成される。
【0006】また,上記の目的は,請求項7に記載する如く,コンピュータネットワークに接続されたゲームサーバによって,ユーザコンピュータからログインしてきたユーザに対戦型ゲームサービスを提供する方法であって,ログインしてきた各ユーザの競技ランクを取得するランク取得ステップと,ログインしてきた一のユーザの競技ランクに相応しい競技ランクを有するログイン中の他のユーザを,前記一のユーザの対戦相手として指定する対戦相手指定ステップと,前記一のユーザおよび前記他のユーザによる対戦ゲームサービスをコンピュータネットワークを介して提供するゲームサービス提供ステップと,前記一のユーザおよび前記他のユーザの対戦結果に基づいて,前記一のユーザおよび前記他のユーザの競技ランクを更新するランク更新ステップと,を備えるオンラインゲームサービスの提供方法により達成される。
【0007】請求項1および7記載の発明によれば,各ユーザの競技ランクがゲームの対戦結果に基づいて更新されるので,各ユーザの客観的な競技ランクが得られる。そして,この客観的な競技ランクに相応しい競技ランクが対戦相手として選択されるので,対戦相手が弱すぎたり強すぎたりするのを防止できる。」

(2)相違点2について検討する。
(ゲーム)サーバー,及び(プレーヤの)ゲーム端末とが,インターネットなどのネットワークに接続可能なゲームシステムは広く知られており,そのようなゲームシステムにおいて,(ゲーム)サーバー,及び(プレーヤの)ゲーム端末のいずれにもコンピュータが備えられていること,プログラムとは,コンピュータに何らかの処理を行わせる,つまり何らかの処理の処理部としてコンピュータを機能させるものであることは自明である。
また,ゲームの技術分野において,マッチング処理を含むゲームのプログラムを,(プレーヤの)ゲーム端末で実行するか,(ゲーム)サーバーで実行するか,つまり,「(プレーヤの)ゲーム端末のプログラムがコンピュータを機能させ」ること,及び「(ゲーム)サーバのプログラムがコンピュータを機能させ」ることは,引用文献をあげるまでもなく,両者とも周知技術(以下,「周知技術2」及び「周知技術3」という。)である。
そして,ゲームプログラムによってコンピュータを機能させるにあたり,周知技術2である「(プレーヤの)ゲーム端末1のコンピュータ」とするか,周知技術3の「(ゲーム)サーバのコンピュータ」とするかは,当業者が適宜選択しうるものであって,本願発明のように周知技術3の「(ゲーム)サーバのコンピュータ」を選択して,相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは,課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計的事項の採用であって,当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないから,当業者が容易に想到し得たものである。

また,本願発明の発明特定事項全体によって奏される作用効果も,引用発明及び周知技術1乃至3から,当業者が予測しうる程度のものである。
したがって,本願発明は,引用発明と周知技術1乃至3から当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明1と周知技術1乃至3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-21 
結審通知日 2018-09-26 
審決日 2018-10-12 
出願番号 特願2013-163415(P2013-163415)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宇佐田 健二  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 森次 顕
吉村 尚
発明の名称 プログラム及びサーバ  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 布施 行夫  

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