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審決分類 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正しない A63G
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない A63G
管理番号 1352984
審判番号 訂正2018-390138  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-09-18 
確定日 2019-07-01 
事件の表示 特許第5825567号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件訂正審判の請求に係る特許第5825567号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成26年7月17日の特許出願であって、平成27年10月23日にその特許権の設定登録がされたものであり、設定登録以降の本件に係る手続の経緯は、以下のとおりである。

平成29年11月27日付け 訂正審判の請求(訂正2017-390130)
平成29年12月18日付け 手続補正書の提出
平成30年 2月 2日付け 平成29年12月18日付けの手続補正書に係る手続についての却下理由の通知
平成30年 2月 2日付け 訂正拒絶理由の通知
平成30年 3月 1日 面接
平成30年 3月 5日付け 平成30年2月2日付訂正拒絶理由に対する意見書の提出
平成30年 3月14日付け 平成29年12月18日付けの手続補正書に係る手続についての手続却下の決定
平成30年 7月30日付け 審決(訂正を認めない)
平成30年 9月18日付け 本件訂正審判の請求(訂正2018-390138)
平成31年 1月22日付け 訂正拒絶理由の通知
平成31年 2月20日付け 訂正拒絶理由に対する意見書の提出

第2 請求の趣旨

本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第5825567号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める」というものであって、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を下記訂正事項のとおりに訂正することを求めるものである。

1.訂正事項
特許請求の範囲の請求項1に
「滑り台の滑走路表面上において、平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、更には、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け、前記の凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状が規則的、又は不規則的で多彩な三次元構造の設備を有することを特徴とする立体滑り台。」と記載されているのを、
「滑り台の滑走路表面上において、平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を有し、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を有し、及び/又は平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を有する滑走斜面に設け、前記の凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状が規則的、又は不規則的で多彩な三次元構造の設備を有することを特徴とする立体滑り台。」に訂正する(以下「訂正事項1」という。)。

特許請求の範囲の請求項2に
「平面上に凸型の大小さまざまな各半周立体曲面状を滑走斜面上の両サイドに個々的、全体的に連続したもの、或いは、滑走斜面上の全体的に凸型、凹型の大小さまざまな各全周立体曲面状、又、凹の曲面上で滑走斜面上の全体的に多彩な凸の曲面状、凹凸の曲面状、更には、全面上の滑走斜面上が凹凸の曲面状である3つの滑走斜面上を構成して、各滑走斜面上が単独、又は混合したものを活用し、曲面状の段差型、階段型、ウエーブ型を含む、凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を部分的、点在的、全体的、連続的に配置することで流動的な直滑降系、斜滑降系、上下動系、左右動系、ジャンプ系、ジグザグの回転系や合成された三次元動系の運動要素を有する複合機構のものを順序不同に設けることを特徴とする請求項1記載の立体滑り台。」と記載されているのを、
「平面上に凸型の大小さまざまな各半周立体曲面状を滑走斜面上の両サイドに個々的、全体的に連続したもの、或いは、滑走斜面上の全体的に凸型、凹型の大小さまざまな各全周立体曲面状、又、凹の曲面上で滑走斜面上の全体的に多彩な凸の曲面状、凹凸の曲面状、及び/又は全面上の滑走斜面上が凹凸の曲面状である3つの滑走斜面上を構成して、各滑走斜面上が単独、又は混合したものを活用し、曲面状の段差型、階段型、ウエーブ型を含む、凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を部分的、点在的、全体的、連続的に配置することで流動的な直滑降系、斜滑降系、上下動系、左右動系、ジャンプ系、ジグザグの回転系や合成された三次元動系の運動要素を有する複合機構のものを順序不同に設けることを特徴とする請求項1記載の立体滑り台。」に訂正する(以下「訂正事項2」という。)。

第3 当審の判断

本件訂正は、上記「第2」の「請求の趣旨」からみて、特許権全体に対して訂正審判を請求する場合に該当するところ、以下では、便宜的に訂正事項を上記「第2 1.」で示した訂正事項1及び2に分節して検討する。
また、訂正事項1は、「更には」を「及び/又は」と訂正すること(以下「訂正事項1-1」という。)、及び、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を」を「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を有し」と、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を」を「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を有し」と、「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を」を「凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を有する」と訂正すること(以下「訂正事項1-2」という。)の2点の訂正に整理することができるところ、訂正事項1についてはこれらの2点に分けて検討する。
なお、以下では、訂正前の請求項1の発明特定事項のうち、訂正事項1-1にかかる「更には」で接続された「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、更には、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」の部分を、「本件訂正前の発明特定事項1-1」という。

1.訂正事項1について
(1)訂正の目的の適否について
ア.誤記の訂正について
審判請求人は、訂正事項について、審判請求書第3ページないし第4ページの「5(3)ア(ア)a」において、本件訂正が特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである旨主張している。

誤記の訂正とは、本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな字句・語句の誤りを、その意味内容の字句、語句に正すことである(『特許・実用新案 審査基準』「第IV部第4章 目的外補正」参照)。

そこで、上記前提に立って、訂正事項について検討する。

(ア)訂正事項1-1について
a.請求項1の記載について
(a)本件訂正前の「更には」が誤りといえるか
本件訂正前の請求項1の「更には」との記載に関して、株式会社岩波書店『広辞苑第六版』には、「更に」について、「○1(当審注:丸数字の1を指す。以下同様。)その上に(なお)。」、「○2ことあらためて。」及び「○3(下に打ち消しを伴って)決して。さらさら。」の語義があり、このうち「○1その上に(なお)」について区分すると「○ア一つの事が重ねて(類似の事を伴って)起こり、または時と共に程度を増すさま。なお一層。」及び「○イ(前言を受け)それに付け加えて。」の複数の語義が記載されている。
一般に複数の語義を有する語は、同時に複数の語義を併せ持つのではなく、用いられる文脈等に応じていずれかひとつの語義で用いられるのが通常である。そこで、上記の『広辞苑第六版』における「更に」の語義を踏まえて、本件訂正前の請求項1における「更には」がいずれの語義で用いられているのかについて検討する。
まず、『広辞苑第六版』における「その上に(なお)。」との語義について検討する。この語義は「(前言を受け)それに付け加えて。」との語義を含むところ、本件訂正前の発明特定事項1-1は、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」と「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」とに言及した後で、「更には」を介して「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状」に言及しているから、「更には」は前言を受けて用いられているといえる。そして、本件訂正前の発明特定事項1-1は「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状」という3種類の面における形状を列記したものであるから、これら3者の記載の間に用いられる「更には」は3者間の関係を規定すると解するのが自然であって、「その上に(なお)。」、「(前言を受け)それに付け加えて。」との語義はこのような解釈とも整合するものである。
次に、「ことあらためて。」との語義について検討する。「あらためて」はその語義が「○1別の機会にまた。」、「○2新たに。」(『広辞苑第六版』)であるから、経時的な事象について用いられる語であるといえ、「ことあらためて。」の語義での「更には」も同様に経時的な事象について用いられるものであると解される。一方、請求項1は「立体滑り台」に係る物の発明であって、請求項1の「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、更には、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」との記載は「滑走斜面」の形状を特定する事項であるから経時的な要素を含むものではない。したがって、本件訂正前の請求項1における「更には」が、「ことあらためて。」の語義で用いられていると解することはできない。
続いて、「(下に打ち消しを伴って)決して。さらさら。」との語義について検討すると、請求項1の「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、更には、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」との記載は下に打ち消しを伴うものではない。したがって、本件訂正前の請求項1における「更には」が、「決して。さらさら。」の語義で用いられているとも認められない。
以上のとおりであって、「更に」の語義を踏まえると、本件訂正前の請求項1における「更には」は「その上に(なお)。」、より詳細には「(前言を受け)それに付け加えて。」の語義で用いられていると解することが相当である。
また、上述のとおり、複数の語義を有する語は、同時に複数の語義を併せ持つのではなく、いずれかひとつの語義で用いられるのが通常であるところ、本件訂正前の請求項1には「更には」という用語を同時に複数の語義を併せ持つ意味で用いたと解釈すべき根拠となる記載もないから、本件訂正前の請求項1における「更には」が、「その上に(なお)。」や「(前言を受け)それに付け加えて。」の語義に加えて、「ことあらためて。」や「(下に打ち消しを伴って)決して。さらさら。」の語義を併せ持つと解する余地もない。
そうすると、本件訂正前の請求項1の「更には」は「その上に(なお)。」や「(前言を受け)それに付け加えて。」との語義で用いられたものであり、これを踏まえると、本件訂正前の発明特定事項1は、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、その上に、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」と解されるものであって、それ以外の意味には解することができない。

なお、審判請求人は『広辞苑』に加えて、審判請求書において『大辞林』、『国語大辞典』、『大きな活字の三省堂国語辞典』、『角川新字源』、『大きな活字の全訳 漢辞海』、『大漢和辞典』、平成31年2月20日付け意見書において『古語大鑑』、『字通』、『新訂 字訓』及び『文章が変わる接続語の使い方』における「更に」等の語義を挙げているが、これらの書籍における「更に」等の語義についての記載も、上記の解釈を左右するものではない。
また、審判請求人は、平成31年2月20日付け意見書において、「更には」の「ことあらためて。」との語義について、「「あらためて」の語義が「1別の機会にまた。」は完全に経時的である。「2新たに。」で「新しいこと」は経時的でない、即時的である。又、「改めて始まること」の「新しいこと」は即時的。「改めて」は経時的と即時的がある。従って、経時的、即時的の両者が存在するものである。ゆえに、一方のみの語義の持つ、時間的要素だけを捉えるのは、否定する。」(第12/23ページ第19?23行)と主張しているが、「新たに」や「改めて始まること」における「改めて」とは、それ以前のものに対して新しいことや、それ以前のことを新しくすることであって、いずれも時間的要素を有すると解されるから、審判請求人の当該主張も、上記の解釈を左右するものではない。

(b)本来の意味が「及び/又は」であるといえるか
次に、本件訂正前の請求項1における「更には」の本来の意味が「及び/又は」であるといえるかについて検討する。

『広辞苑第六版』によると、「及び」は「主に名詞相互をつなぎ、それらの指すものに一括して言及する意を表す。」との語義を有し、「又は」は「これかあれかと並べていう時に用いる語。」であって、「A・B…の少なくとも一つが成り立つ意。」か「A・B…のどれか一つだけが成り立つ意。」という語義を有するものである。
そうすると、本件訂正後の「及び/又は」は、「及び」と「又は」とを並列した語句であるから、「主に名詞相互をつなぎ、それらの指すものに一括して言及する意を表す。」場合と、「これかあれかと並べていう時に用いる語。」であって、「A・B…の少なくとも一つが成り立つ意。」か「A・B…のどれか一つだけが成り立つ意。」の場合との両者の語義を併せ持つものと認められる。

本件訂正前の「更には」の語義と、本件訂正後の「及び/又は」の語義とを対比する。
上記「(a)」のとおり、本件訂正前の請求項1の「更には」の語義は「その上に(なお)。」、「(前言を受け)それに付け加えて。」と解されるものであって、前言を受けて後に続く語句を付け加えるのであるから「主に名詞相互をつなぎ、それらの指すものに一括して言及する意を表す。」ものであると認められる。
しかしながら、「その上に(なお)。」、「(前言を受け)それに付け加えて。」という語義に、前言や後に続く語句のうちの少なくとも一つやどれか一つだけが成り立つことを示す意味がないことは明らかであるから、本件訂正前の請求項1の「更には」が、「これかあれかと並べていう時に用いる語。」であって、「A・B…の少なくとも一つが成り立つ意。」や「A・B…のどれか一つだけが成り立つ意。」を有するとは認められない。
そうすると、本件訂正前請求項1の「更には」は、その本来の意味が「及び/又は」であるということはできない。

b.明細書及び図面の記載について
次に、本件特許の明細書及び図面の記載から、本件訂正前の「更には」が誤りであり、その本来の意味が「及び/又は」であるといえるかについて検討する。

本件特許の明細書には以下の記載がある。

「【0020】
図2は、滑走路表面上が平面上・各曲面上に各曲面状配置の概略正面図例であり、21、22は滑走路表面上が平面上と23の滑走路表面上が凹型曲面上には規則的、又は不規則的で多彩な三次元構造の各凹凸型曲面状のもの、24には滑走路表面上全体が凹凸曲面状曲面上の立体的な設備配置し、運動能力に適合した2Aから2Iの各曲面状の配合調整をして各立体滑り台にする。」

「【0021】
図3は、各滑走路表面上に設備配置される各曲面状の概略図例で、図面上で3iは滑走路表面上が凹型曲面上の曲り角度によって、整合性ある調整が必要であり、37の変形凸型曲面状は左右の曲り変化に、上下の凸型曲面状のデコボコ(大、中、小)を有したものであり、各滑走路表面上に31から39の各曲面状ものを設備配置されるが、その他で大きさ、配置、組合せ、仕様等を多様に工夫して使用することで、この限りではないものになる。」

「【0023】
図5は、立体滑り台の各滑走路表面上の各使用用途の概略図例で、51は3つの滑走斜面上を単数の各個別、52は複数で各並列別、53は各分岐別、55は5J、5K、5Lを直列合成、5Mの滑走面上と曲面上の合成部は隙間、段差などを最小に抑えるように構築し、滑走路表面上は各種曲面状の形状の大きさ、配置や構成と滑走路表面上全体には幅、長さ、厚さ、54は上部から下部に掛けて5Hの傾き部、5Iの滑走路裏面側の梁、材質などの構造を可変させ、総合的に滑走路の難易度を調節する機能の運動要素がある機構のものを選択して各プレーヤーに適合したものが利用できる各立体滑り台にする。」

「【0027】
図中の文字、数字は次の通りである。
11 :滑走路平面上の正面図 12 :左側面図(但し左側半分の範囲)
13 :右側面図(但し右側半分の範囲) 14 :斜視図
1A :滑走路平面上 1B :フレームカバー
1C :滑走路側壁 1D :滑走路手摺柵
1E :手摺トップ 1F :個々的の半周立体曲面状
1G :凸型全周立体曲面状 1H :凹型全周立体曲面状
1I :階段型曲面状 1J :凸型縦長全周立体曲面状
1a :滑走路減速域 1b :滑走路側壁・手摺柵を省略/透視
21 :滑走路表面上が平面上 22 :滑走路表面上が平面上
23 :滑走路表面上が凹型曲面上 24 :滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上
2A :全体的連続の半周立体曲面状 2B :大小凸型全周立体曲面状
2C :凹型全周立体曲面状 2D :階段型曲面状
2E :変形凹型曲面状 2F :変形凹型曲面状(回転系)
2G :変形凸型曲面状 2H :変形凸型曲面状(回転系)
2I :ウエーブ型曲面状 2a :滑走路減速域
31 :部分的周立体曲面状 32 :全体的連続の半周立体曲面状
33 :凸型全周立体曲面状 34 :変形凸型曲面状
35 :凹型全周立体曲面状 36 :変形凹型曲面状
37 :変形凸型曲面状 38 :変形凹型曲面状
39 :凹凸型曲面状 3A :全体的連続の1/4周立体曲面状
3B :凸型全周立体曲面状 3C :凹型半周立体曲面状
3D :凸型曲面状 3E :変形凸型曲面状(中)
3F :変形凸型曲面状(小) 3G :変形凸型曲面状(大)
3H :凹型曲面状 3I :半周立体曲面状
3J :1/4周立体曲面状 3K :2/3周立体曲面状
3L :凹型全周立体曲面状(大) 3M :凹型全周立体曲面状(小)
3N :階段型曲面状 30 :ウエーブ型曲面状
3a :32の断面図 3b :33の断面図
3c :35の断面図 3d :37の断面図
3e :37の断面図 3f :37の断面図
3g :37の断面図 3h :38の断面図
3i :滑走路表面上が凹型曲面上時調整
41 :半周立体曲面状 42 :凸型全周立体曲面状
43 :凹型全周立体曲面状 44 :半周立体曲面状
4A :半周立体曲面状 4B :凸型全周立体曲面状
4C :凸型全周立体曲面状 4D :凹型全周立体曲面状
4E :各凹凸曲面状の接合端部 4a :41の断面図
4b :41の断面図 4c :42の断面図
4d :43の断面図 4e :滑走路表面上が凹型曲面上時調整
51 :各滑走路表面上を単立体滑り台 52 :滑走路表面上を複数で並列別設置
53 :滑走路表面上を分岐別設置 54 :滑走斜面上の傾きを可変設置
55 :各滑走路表面上を直列合成設置 5A :滑走路表面上が平面上
5B :滑走路表面上が凹型曲面上 5C :滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上
5D :各滑走路の仕切り壁 5E :滑走路表面上が平面上
5F :滑走路表面上が凹型曲面上 5G :滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上
5H :滑走路斜度変化点(各上下斜度) 5I :滑走路裏面側の梁
5J :滑走路表面上が平面上 5K :滑走路表面上が凹型曲面上
5L :滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上 5M :滑走面上と曲面上の合成部」

(a)本件訂正前の「更には」が誤りといえるか
段落【0023】の記載によれば、「図5は、立体滑り台の各滑走路表面上の各使用用途の概略図例」であるから、図5において符号「52」、「53」、「55」で示されたものは、「立体滑り台の各滑走路表面上の各使用用途」の例であるといえ、段落【0027】の記載と図5を対照すると、図5において「52」で示されたものは「滑走路表面上を複数で並列別設置」、「53」で示されたものは「滑走路表面上を分岐別設置」、「55」で示されたものは「各滑走路表面上を直列合成設置」のものであると認められる。そして、図5においては、符号「52」、「53」、「55」で示されたものに、それぞれ「5Aないし5C」、「5Eないし5G」、「5Jないし5L」の符号が付されているから、段落【0027】の記載を参照すると、「滑走路表面上を複数で並列別設置」、「滑走路表面上を分岐別設置」、「各滑走路表面上を直列合成設置」のものそれぞれが「滑走路表面上が平面上」、「滑走路表面上が凹型曲面上」、「滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上」のすべてを設けたものであることが看取できる。また、上記段落【0020】においては「滑走路表面上」は「滑走路表面上が平面上」、「滑走路表面上が凹型曲面上」、「滑走路表面上全体が凹凸曲面状曲面上」であると記載されているところ、これを上記段落【0027】の記載や図5と照合すると、上記段落【0027】や図5において「滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上」と記載されたものは、「滑走路表面上全体が凹凸曲面状曲面上」であると解するのが自然である。
また、段落【0020】には「21、22は滑走路表面上が平面上と23の滑走路表面上が凹型曲面上には規則的、又は不規則的で多彩な三次元構造の各凹凸型曲面状のもの、24には滑走路表面上全体が凹凸曲面状曲面上の立体的な設備配置」と記載されているから、「滑走路表面上が平面上」、「滑走路表面上が凹型曲面上」のものについては「規則的、又は不規則的で多彩な三次元構造の各凹凸型曲面状のもの」が配置されると解される。そして、段落【0021】には「各滑走路表面上に31から39の各曲面状ものを設備配置される」と記載され、段落【0027】を参照すると符号「31」ないし「39」のものは、「部分的周立体曲面状」、「全体的連続の半周立体曲面状」、「凸型全周立体曲面状」、「変形凸型曲面状」、「凹型全周立体曲面状」、「変形凹型曲面状」、「変形凸型曲面状」、「変形凹型曲面状」、「凹凸型曲面状」であるから、「滑走路表面上が平面上」、「滑走路表面上が凹型曲面上」に配置される「各凹凸型曲面状」のものは段落【0021】でいう「各曲面状」のものであって、具体的には「凸型曲面状」、「凹型曲面状」、「凹凸型曲面状」のものが含まれていると認められる。
そうすると、本件特許の明細書及び図面には「凸型曲面状」、「凹型曲面状」、「凹凸型曲面状」が配置される「滑走路表面上が平面上」、「滑走路表面上が凹型曲面上」のものが記載されており、これらはそれぞれ、本件特許の請求項1における「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を」滑走斜面に設けたもの、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を」滑走斜面に設けたものに対応する。
また、明細書の段落【0020】における「滑走路表面上全体が凹凸曲面状曲面上の立体的な設備配置」のものは、請求項1における「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たものに対応するといえる。
また、段落【0023】の「図5は、立体滑り台の各滑走路表面上の各使用用途の概略図例で、51は3つの滑走斜面上を単数の各個別」との記載から見て、「滑走路表面上」と「滑走斜面上」とは実質的に同じ部位を指すと解することができる。
そうすると、本件特許の明細書及び図面には、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、その上に、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たものが、具体的な記載を伴って記載されているといえる。
また、本件特許の明細書及び図面全体の記載を見ても、本件訂正前の請求項1における「更には」が「その上に(なお)。」、「(前言を受け)それに付け加えて。」以外の語義で用いられたと解釈すべき根拠となる記載はなく、また、「更には」という用語を同時に複数の語義を併せ持つ意味で用いたと解釈すべき根拠となる記載もない。

(b)「更には」の本来の意が「及び/又は」であるといえるか
上記「a.(a)」のとおり、本件特許の明細書及び図面には、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、その上に、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たものが記載されていると解されるところ、当該事項は、上記「a.(b)」で検討した「及び」の語義に照らせば、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、及び、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たものであるともいうことができる。

また、明細書の段落【0023】には「図5は、立体滑り台の各滑走路表面上の各使用用途の概略図例で、51は3つの滑走斜面上を単数の各個別、52は複数で各並列別、53は各分岐別、55は5J、5K、5Lを直列合成、5Mの滑走面上と曲面上の合成部は隙間、段差などを最小に抑えるように構築し」との記載があって、「単数の各個別」が「複数で各並列別」、「各分岐別」、「直列合成」と並んで記載されていることから、「単数の各個別」の場合の「3つの滑走斜面上」は「複数で各並列別」、「各分岐別」、「直列合成」とする場合と同様のものであって、上記「(a)」における検討を踏まえると、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を」滑走斜面に設けたもの、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を」滑走斜面に設けたもの、「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たものであるといえる。
そして、明細書の段落【0023】には、図5において「51は3つの滑走斜面上を単数の各個別、52は複数で各並列別、53は各分岐別、55は5J、5K、5Lを直列合成」であることが記載されているところ、図5を参照すると、上記「(a)」のとおり、符号「52」、「53」、「55」で示されたものはそれぞれ「5Aないし5C」、「5Eないし5G」、「5Jないし5L」、すなわち、「滑走路表面上が平面上」、「滑走路表面上が凹型曲面上」、「滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上」の3つを有することを看取することができるから、「複数」とは「滑走路表面上が平面上」、「滑走路表面上が凹型曲面上」、「滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上」の「3つの滑走斜面上」であるといえ、これを踏まえると、「単数の各個別」とは「滑走路表面上が平面上」、「滑走路表面上が凹型曲面上」、「滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上」の「3つの滑走斜面上」のいずれかひとつであると解することが自然である。また、このような解釈は、図5において符号「51」で示されたものが、符号「52」、「53」、「55」で示されたものの「滑走路表面上が平面上」、「滑走路表面上が凹型曲面上」、「滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上」のいずれかひとつに相当する「滑走斜面上」(滑走路表面上)を有することが看取できることとも整合する。
そうすると、本件特許の明細書及び図面には、「滑走路表面上が平面上」、「滑走路表面上が凹型曲面上」、「滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上」の「3つの滑走斜面上」のいずれかひとつを有するものが記載されているといえるところ、当該事項は、上記「a.(b)」で検討した「又は」の語義に照らせば、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、又は、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たものであるともいうことができる。

してみると、本件特許の明細書及び図面には、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、及び、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たもの(以下「明細書記載事項1」という。)と、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、又は、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たもの(以下「明細書記載事項2」という。)とが記載されているということができる。

しかしながら、特許法第36条第5項に規定されるとおり、特許請求の範囲の記載は、特許出願人が自らの判断で特許を受けることによって保護を求めようとする発明について記載するのであって、発明の詳細な説明に記載した発明の一部についてのみ特許請求の範囲に記載することを妨げるものではない。そして、本件特許の請求項1は、明細書に記載された上記明細書記載事項1及び2のうちから明細書記載事項1のみを特許請求の範囲に記載したものと解することができるから、本件特許の明細書に上記明細書記載事項1及び2が記載されていることを以て、本件訂正前の請求項1に記載された「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、更には、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たものが、明細書記載事項1及び2を包含するものであることが自明であるということはできない。

(c)小括
以上のとおりであるから、本件訂正前の請求項1の「更には」との記載が、明細書又は図面の記載から誤りであって、その本来の意が「及び/又は」であるとすることはできない。

c.特許請求の範囲の記載との関係について
本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載については上記「a.」において検討したところであるが、次に、本件特許の特許請求の範囲全体の記載から、本件訂正前の「更には」が誤りであり、その本来の意味が「及び/又は」であるといえるかについて検討する。

本件特許の特許請求の範囲における請求項1以外の請求項は、以下のとおりである。

「【請求項2】
平面上に凸型の大小さまざまな各半周立体曲面状を滑走斜面上の両サイドに個々的、全体的に連続したもの、或いは、滑走斜面上の全体的に凸型、凹型の大小さまざまな各全周立体曲面状、又、凹の曲面上で滑走斜面上の全体的に多彩な凸の曲面状、凹凸の曲面状、更には、全面上の滑走斜面上が凹凸の曲面状である3つの滑走斜面上を構成して、各滑走斜面上が単独、又は混合したものを活用し、曲面状の段差型、階段型、ウエーブ型を含む、凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を部分的、点在的、全体的、連続的に配置することで流動的な直滑降系、斜滑降系、上下動系、左右動系、ジャンプ系、ジグザグの回転系や合成された三次元動系の運動要素を有する複合機構のものを順序不同に設けることを特徴とする請求項1記載の立体滑り台。
【請求項3】
3つの滑走斜面上を単数の各個別、又は複数で並列別、分岐別、直列合成にして構築し、滑走路表面上は各種曲面状の滑走に適合した形状や大きさ、配置や構成と滑走路表面上全体には幅、長さ、厚さ、上部から下部に掛けての傾き、材質などの構造を可変させ、滑走路の難易度を調節する機能の運動要素がある機構のものを有し、各滑走路面上構造両サイド端部は安定した滑走ができる支持具、柵、壁を用い、滑走路裏面側には梁で支持、フレームカバーで支持、又はフレームカバーを梁で補強する組合せ構成にし、全体的に安全性を保持した構造物として設け、屋外用、屋内用の何れでも可能なことを特徴とする請求項1記載の立体滑り台。」

(a)請求項2の記載について
請求項2は請求項1の記載を引用するものであって、請求項2記載の「平面上に凸型の大小さまざまな各半周立体曲面状を滑走斜面上の両サイドに個々的、全体的に連続したもの」、「滑走斜面上の全体的に凸型、凹型の大小さまざまな各全周立体曲面状、又、凹の曲面上で滑走斜面上の全体的に多彩な凸の曲面状、凹凸の曲面状」、「更には、全面上の滑走斜面上が凹凸の曲面状」である「3つの滑走斜面上」は、請求項1記載の「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状」を「滑走斜面に設け」たものに対応するものと認められる。
また、請求項2には、前記「3つの滑走斜面上」について、「3つの滑走斜面上を構成して、各滑走斜面上が単独、又は混合したものを活用し」と記載されており、当該記載は「3つの滑走斜面上」の配置について規定したものと認められる。しかしながら、本件特許の特許請求の範囲及び明細書には他に「滑走斜面上」について「単独」や「複合」との記載はない。
そこで、本件特許の明細書及び図面を参照すると、上記「b.(b)」での検討を踏まえれば、図5の符号「52」、「53」、「55」で示されたものは「滑走路表面上を複数で並列別設置」、「滑走路表面上を分岐別設置」、「各滑走路表面上を直列合成設置」であって、「滑走路表面上が平面上」、「滑走路表面上が凹型曲面上」、「滑走路表面上が凹凸曲面状曲面上」がそれぞれ並列別、分岐別、直列合成で設置されたものであると認められるところ、滑り台の通常の使用態様を踏まえると、使用者は符号「52」、「53」のものにおいては並列又は分岐して設置された3つの滑走路表面上のうちのいずれかひとつを滑走し、符号「55」のものにおいては直列合成された3つの滑走路表面上のすべてを滑走することは明らかであって、前者は滑走路表面上を単独で用い、後者は滑走路表面上が複合したものを用いるということができる。そうすると、符号「52」、「53」のものは「各滑走斜面上が単独」であるものを「活用し」たものであり、符号「55」のものは「各滑走斜面上」が「混合したものを活用し」たものであると認められる。

してみると、本件訂正前の請求項1の「更には」を「その上に(なお)。」、「(前言を受け)それに付け加えて。」の意味であると解することは、本件特許の特許請求の範囲の請求項2の記載とも整合する。

よって、特許請求の範囲の請求項2の記載からも、本件訂正前の「更には」が誤りであるとすることはできず、その本来の意味が「及び/又は」であるということもできない。

(b)請求項3の記載について
本件特許の特許請求の範囲の請求項3は請求項1の記載を引用するものであって、請求項3記載の「3つの滑走斜面上」は、請求項1記載の「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状」を「滑走斜面に設け」たものに対応するものと認められる。
また、請求項3には、「3つの滑走斜面上を単数の各個別、又は複数で並列別、分岐別、直列合成にして構築し」と記載されているところ、当該記載は立体滑り台が備える「3つの滑走斜面上」の配置について規定したものと認められる。しかしながら、このうち「単数の各個別」については、請求項3の記載からは「3つの滑走斜面上」をどのように配置するものであるのかが明らかでない。
そこで、本件特許の明細書及び図面を参照すると、明細書の段落【0023】には「図5は、立体滑り台の各滑走路表面上の各使用用途の概略図例で、51は3つの滑走斜面上を単数の各個別、52は複数で各並列別、53は各分岐別、55は5J、5K、5Lを直列合成、5Mの滑走面上と曲面上の合成部は隙間、段差などを最小に抑えるように構築し」との記載があって、上記「b.(b)」のとおり、「3つの滑走斜面上を単数の各個別」は、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、又は、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たものを指すと解することができる。
そして、明細書及び図面についての上記の検討を踏まえれば、同じく「単数の各個別」との語句を用いて記載された本件特許の特許請求の範囲の請求項3の「3つの滑走斜面上を単数の各個別……にして構築し」との記載は、「滑走斜面上」を請求項1記載の「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を」滑走斜面に設けたもの、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を」滑走斜面に設けたもの、「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たもののいずれかとして構築したものと解することができる。

一方、上記「a.(a)」のとおり、本件訂正前の請求項1の「更には」を「その上に(なお)。」、「(前言を受け)それに付け加えて。」の意味であると解することができ、請求項1の「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、更には、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」との記載は、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、その上に、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」と解される。

そうすると、以上の解釈に基づけば、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載と請求項3の記載とは整合するとはいえない。

しかしながら、このような不整合は、例えば、請求項3の記載の誤りに起因するとも解し得るものであって、請求項1の記載の誤りに起因することが一義的に定まるものではないから、請求項1の記載と請求項3の記載との間に不整合が存することを以て、請求項1の「更には」の記載が誤りであるとすることはできないし、その本来の意味が「及び/又は」であるとすることもできない。

(c)小括
請求項1については上記「a.」で、請求項2及び3については上記「(a)及び(b)」で検討したとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲全体の記載からも、本件訂正前の「更には」の記載が誤りであるとすることはできず、その本来の意味が「及び/又は」であるとすることもできない。

c.訂正事項1-1についての検討のまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1-1に係る本件訂正が、本来その意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句の誤りを、その意味内容の字句、語句に正すものであるということはできない。

(イ)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は本件訂正前の請求項1の「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を」を「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を有し」と、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を」を「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を有し」と、「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」を「凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を有する滑走斜面に設け」と訂正するものである。

上記の訂正によって、本件訂正前の請求項1の「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、更には、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たものにおいては、「滑走斜面に設け」られるのが、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状」であったのが、本件訂正後の請求項1の「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を有し、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を有し、及び/又は平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を有する滑走斜面に設け」たものにおいては、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状」は「滑走斜面」が「有する」ものとなり、その結果、何が「滑走斜面に設け」られるのかが文理上明らかではなくなった。
そうすると、本件訂正後の訂正事項1-2に係る事項は、その意味が明らかとはいえないから、本来その意であることが特許請求の範囲の記載から明らかであるとはいえないし、本件訂正後の訂正事項1-2は文理上明らかでない点を含むのだから、訂正事項1-2に係る訂正が内容を正すものであるともいえない。

また、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面の全体を参酌しても、本件訂正後の上記記載を文理上明確に解することができないことは明らかである。

以上のとおりであるから、訂正事項1-2に係る本件訂正が、本来その意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句の誤りを、その意味内容の字句、語句に正すものであるということはできない。

(ウ)小括
以上のとおりであって、訂正事項1に係る本件訂正は、本来その意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句の誤りを、その意味内容の字句、語句に正すものではないから、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものではない。

イ.誤記の訂正以外の目的について
上記「ア.」のとおり、審判請求人は、訂正事項について、本件訂正が特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである旨主張しているが、以下では、訂正事項が、同法第126条第1項ただし書き各号に掲げる他の事項を目的とするものであるかについて検討する。

(ア)特許請求の範囲の減縮について
本件訂正前の請求項1に係る発明の「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、更には、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」との事項は、上記「ア.(ア)a.(a)」のとおり、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を、その上に、平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を滑走斜面に設け」たものであるから、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状」の3つすべてを滑走斜面に設けと解することができる。
一方、本件訂正後の請求項1に係る発明の「及び/又は」は、上記「ア.(ア)a.(b)」で検討したとおり、「主に名詞相互をつなぎ、それらの指すものに一括して言及する意を表す。」場合と、「これかあれかと並べていう時に用いる語。」であって、「A・B…の少なくとも一つが成り立つ意。」か「A・B…のどれか一つだけが成り立つ意。」の場合との両者の語義を併せ持つものと認められるから、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を有し、凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状を有し、及び/又は平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状を有する滑走斜面に設け」との事項を備える本件訂正後の請求項1に係る発明は、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「平面上、凹の曲面上以外に全面上が凹凸の曲面状」の3者すべてを滑走斜面が有する場合に加えて、新たに「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」の3者のうちの一つを滑走斜面が有する場合を含むものとなる。
そうすると、訂正事項1-1に係る本件訂正は、訂正前の請求項1を減縮するものとはいえない。

してみると、訂正事項1-1を含む訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第126条ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。

(イ)明瞭でない記載の釈明について
訂正事項1-1に係る本件訂正前の「更には」は、上記「ア.(ア)a.」のとおりに明確に解されるものであって、その記載に不明瞭な点はない。
また、訂正事項1-2に係る本件訂正後の記載は、上記「ア.(イ)」で検討したとおり、文法上の誤りを含むものであって明確ではないから、訂正事項1-2に係る訂正は明瞭でない記載の釈明ということはできない。
そうすると、訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第126条ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものではない。

(ウ)他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものにすることについて
本件訂正前の請求項1は他の請求項の記載を引用するものではないから、訂正事項1に係る本件訂正が、特許法第126条ただし書第4号の他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものにすることを目的とする訂正に該当しないことは明らかである。

ウ.訂正の目的の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものであるとはいえない。

(2)特許請求の範囲の拡張、変更について
上記「(1)ア.(ア)c.及びイ.」のとおり、訂正事項1-1に係る本件訂正によって、本件訂正後の請求項1は、訂正前の「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」の3者全てを備える場合に加えて、新たに「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」の3者のうちのいずれか一つを備える場合をも含むものとなる。

そうすると、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。

特許法第126条第6項は、第1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない旨を規定したものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる場合、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため、そうした事態が生じないことを担保したものである。

然るに、訂正事項1-1に係る本件訂正については以上のとおりであるから、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「平面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」、「凹の曲面上に凸の曲面状、凹の曲面状、凹凸の曲面状」の3者のうちのいずれか一つを備えた「立体滑り台」を実施していた第三者にとって、訂正前の特許請求の範囲に含まれないとされていた実施に該当する行為が、この訂正によって、訂正後の特許請求の範囲に含まれることになる。

してみると、本件訂正後の請求項1に係る発明の「実施」に該当する行為は、訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張するものであるということができ、この訂正によって、第三者にとって不測の不利益が生じることは明らかである。

以上のとおり、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張するものであって、特許法第126条第6項の規定に違反するものである。

(3)小括
以上のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもなく、同条第6項に規定する要件にも適合しない。

2.訂正事項2について
訂正事項2に係る本件訂正は、本件訂正前の請求項2における「更には」を「及び/又」と訂正するものであって、本件訂正前の請求項1における「更には」を「及び/又」と訂正する訂正事項1-1と同様の訂正である。
また、本件訂正前後の請求項2は請求項1の記載を引用するものであって、訂正の前後で請求項の引用関係に変更はない。
そうすると、訂正事項1-1についての上記「1.」における検討を踏まえると、訂正事項2に係る本件訂正が、特許法第126条ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもなく、同条第6項に規定する要件にも適合しないことは明らかである。

第4 むすび

本件訂正は、特許権全体に対して訂正審判を請求する場合に該当するものであり、また、本件訂正事項は訂正事項1及び2から成る一体の訂正事項であるところ、訂正事項1及び訂正事項2については以上のとおりであるから、本件訂正に係る訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書各号に規定された目的に該当せず、かつ同条第6項の規定にも違反するものである。

したがって、特許第5825567号の特許請求の範囲を本件訂正審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認めることはできない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-26 
結審通知日 2019-05-08 
審決日 2019-05-21 
出願番号 特願2014-159882(P2014-159882)
審決分類 P 1 41・ 854- Z (A63G)
P 1 41・ 852- Z (A63G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
登録日 2015-10-23 
登録番号 特許第5825567号(P5825567)
発明の名称 立体滑り台  

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