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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1353015
審判番号 不服2018-6278  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-08 
確定日 2019-07-04 
事件の表示 特願2014- 93556「キャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月24日出願公開、特開2015-209248〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年 4月30日を出願日とする出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。
平成29年 8月29日付け:拒絶理由の通知
平成29年11月 6日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 2月 2日付け:拒絶査定
平成30年 5月 8日 :審判請求書の提出、及び同時に手続補正書の提出
平成31年 1月17日付け:拒絶理由の通知
平成31年 3月19日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成31年 3月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「内容物が収容される容器本体の口部に装着されるとともに、内容物を注出する注出筒が底壁部から立設された有底筒状のキャップ本体と、
前記キャップ本体に着脱自在に装着され、前記注出筒を開閉する計量キャップと、を有するキャップであって、
前記計量キャップは、
有頂筒状の計量カップと、
前記キャップ本体と前記計量キャップとのキャップ軸周りの相対回転に伴い、前記キャップ本体の周壁部に着脱される装着筒部と、を備え、
前記周壁部内には、前記計量キャップが前記キャップ本体に装着された装着状態において、前記計量カップのうち前記周壁部内に挿入される部分に、先端部が周方向に撓んだ状態で摺接する弾性変形可能な突起が配設され、
前記突起の前記キャップ軸方向の長さは、前記装着状態と、前記計量キャップが前記キャップ本体から取り外された取り外し状態と、の間を前記計量キャップが移行する際に、前記計量カップの全周を通過する長さに設定され、
前記突起における少なくとも前記先端部は、先端側に向かうに従い前記キャップ軸回りの周方向における両側から中心に向けて漸次薄くなっていることを特徴とするキャップ。」

第3 当審が平成31年 1月17日付けで通知した拒絶理由の概要
当審が平成31年 1月17日付けで通知した拒絶理由は次のとおりである。
本願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び、引用文献2に例示される従来周知の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2000-226055号公報
引用文献2.特開2012-116487号公報

第4 引用文献の記載事項
1.引用文献1
(1)当審の上記拒絶理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2000-226055号公報(平成12年 8月15日出願公開))には、図面とともに次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内容液を注出するノズルを有すると共に、このノズルの周囲に、計量カップとしても使えるキャップが装着された液剤注出容器に係わり、特にキャップの装着部からの液垂れが防止された液剤注出容器、およびこの液剤注出容器に液剤が充填された液剤製品に関する。」
「【0007】
・・・この環状空間に前記キャップが、その外壁面と前記筒状壁部との間に0.5mm?2.0mmの範囲内の間隙を形成するように挿入され、かつ前記の筒状壁部または装着されたときにこの筒状壁部と対向する前記キャップの外壁面のいずれかに、少なくとも1本の縦リブが形成された液剤注出容器を提供する。」
「【0009】・・・また前記キャップが螺合により装着されるものである場合には、前記縦リブが、対向する前記キャップの外壁面または前記筒状壁部に接触するように形成されていてもよい。・・・キャップが螺合により装着される場合は、前記縦リブが対向する前記キャップの外壁面または前記筒状壁部に接触するように形成されていると、螺合の際に、縦リブが対向するキャップの外壁面または筒状壁部に付着した液剤を掻き落とすようになるのでかえって都合がよい。」
「【0016】
・・・図1においてこの液剤注出容器1は、プラスチック製の容器本体10の頂部に、内容液注出用のノズル21を有するノズル部材20が固定され、このノズル部材の外ネジ部24に、前記のノズル21を離間して覆う有蓋筒状のキャップ30が、このキャップに形成された内ネジ部32によって着脱自由に螺合され装着されている。」
「【0017】前記のノズル21は、先端が嘴(くちばし)状に細く成形され、注ぎ口21aを形成している。また、ノズル21の基部21bからは、その周囲に環状のノズル底部22がなだらかな湾曲部を形成して広がっていて・・・」
「【0018】前記ノズル底部22の周辺はなだらかな湾曲部を形成して上方に立ち上がり、筒状壁部25を形成している。・・・また、この筒状壁部25の上方には、上方に拡径するテーパ部25aを経由して同心的に延びる筒状の外ネジ部24が形成されている。」
「【0019】キャップ30は、ノズル部材20に装着されたとき開口部が下向きとなるカップ状本体の外壁面33の高さ方向中間部にフランジ34を有し、このフランジの先端に、前記ノズル部材の外ネジ部24と螺合する筒状の内ネジ部32が形成され、この内ネジ部32を外ネジ部24に螺合することにより、キャップ30がノズル部材20に装着され、・・・」
「【0020】・・・そしてこの間隙Pを挟んでキャップの外壁面33と対向する前記筒状壁部25には、少なくとも1本の縦リブ27が形成されている。」
「【0022】・・・注出された液剤はキャップ30に受けて計量することができる。」
「【0025】前記において縦リブ27は、他の実施例として図2に示すように、キャップの外壁面33側に形成されていてもよく、またこの縦リブ27が、キャップをねじ込んだ際に対向することになる筒状壁部25に接触するように形成されていてもよい。縦リブ27が対向面と接触するように形成されていると、計量後のキャップ30をねじ込む際に、縦リブ27が対向面を擦り降ろすので、この対向面に付着した液剤を掻き落とすようになり、間隙Pおよび上部空間Sから液剤を更に急速に排除できるようになる。」

(2)上記記載から、引用文献1には次の技術的事項が記載されている。
ア.引用文献1に記載された技術は、内容液を注出するノズルを有すると共に、このノズルの周囲に計量カップとしても使えるキャップが装着された液剤注出容器に関するものである(【0001】)。
イ.液剤注出容器1は、液剤が充填される容器本体10の頂部に固定されるとともに液剤を注出するノズル21を有するノズル部材20と、前記ノズル部材20に着脱自由に装着され、前記ノズル21を離間して覆うキャップ30と、からなる部材を備える(【0016】【0017】、【図1】)。
ウ.ノズル部材20は、ノズル21が先端が注ぎ口21aを形成し、また、ノズル21の基部21bからその周囲になだらかな湾曲部を形成して環状のノズル底部22が広がり、当該ノズル底部22の周辺にはなだらかな湾曲部を形成して上方に立ち上がる筒状壁部25を備え、この筒状壁部25の上方には、上方に拡径するテーパ部25aを経由して同心的に延びる筒状の外ネジ部24を有している。(【0017】【0018】【図1】)。
エ.キャップ30は、計量カップとしても使える有蓋筒状のキャップであり、カップ状本体を備える。図1の開示も参酌すれば、当該カップ状本体は、キャップ30の主要な部分をなすものであるから、このカップ状本体が計量カップとしても使える有蓋筒状のものであることは自明である。(【0001】【0016】【0022】、【図1】)。
オ.キャップ30は、ノズル部材20の外ネジ部24に螺合する筒状の内ネジ部32を有し、当該螺合によりキャップ30がノズル部材20に装着される。(【0019】、【図1】)。
カ.キャップ30のカップ状本体の外壁面33と対向する前記筒状壁部25には、キャップ30がノズル部材20に装着された状態において、キャップ30のカップ状本体の外壁面33に接触する縦リブ27が形成される(【0007】【0009】【0020】【0025】、【図1】)。
キ.縦リブ27はキャップ30が螺合によりノズル部材20に装着される際に、前記キャップ30のカップ状本体の外壁面33を擦り降ろし、該外壁面33に付着した液剤を掻き落とす(【0009】【0025】)。

(3)これらのことから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「液剤が充填される容器本体10の頂部に固定されるとともに、液剤を注出するノズル21を有するノズル部材20と、
前記ノズル部材20に着脱自由に装着され、前記ノズル21を離間して覆うキャップ30と、からなる部材であって、
前記ノズル部材20は、ノズル21の基部21bからその周囲になだらかな湾曲部を形成して環状のノズル底部22が広がり、当該ノズル底部22の周辺にはなだらかな湾曲部を形成して上方に立ち上がる筒状壁部25を備え、この筒状壁部25の上方には、上方に拡径するテーパ部25aを経由して同心的に延びる筒状の外ネジ部24を有しており、
前記キャップ30は、
計量カップとしても使える有蓋筒状のカップ状本体と、
ノズル部材20の前記外ネジ部24に螺合する筒状の内ネジ部32を有し、
当該螺合によりキャップ30がノズル部材20に装着され、
キャップ30のカップ状本体の外壁面33と対向する前記筒状壁部25には、当該キャップ30が前記ノズル部材20に装着された状態において、当該キャップ30のカップ状本体の外壁面33に接触する縦リブ27が形成され、
当該縦リブ27は、キャップ30が螺合によりノズル部材20に装着される際に、前記キャップ30のカップ状本体の外壁面33を擦り降ろし、該外壁面33に付着した液剤を掻き落とす、部材。」

2.引用文献2
(1)当審の拒絶の理由で例示された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2(特開2012-116487号公報(平成24年 6月21日出願公開))には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は振り出し容器に関する。」
「【0025】
閉蓋具Bは、キャップ本体B1と、蓋体B2とを備えており、また、掻き落とし用のヘラB3を備えている。」
「【0030】
掻き落とし用のヘラB3は、合成樹脂或いはエラストマー等の比較的軟質の材質で形成され、特に柔軟で弾力性に富む材質が好ましく使用できる。上端の円板状をなす頭部50の下面から、容器本体Aの底部近傍まで至る棒状部51を垂下している。棒状部51は、横断面形状が半円柱状の基部51aより鋭角三角形状の摺動突部51bを突設した形態をなしており、基部51aを案内壁25内面の円弧状面に嵌合させて摺動突部51bの頂部が容器本体Aの内周面に圧接する如く構成している。」
「【0032】
・・・また、必要に応じて容器本体Aに対して閉蓋具Bを回動させれば、容器本体Aの周壁11内周に付着した収容物を掻き落とすことができ、・・・」

(2)上記記載から引用文献2には次の技術事項が記載されている。
「振り出し容器において、摺動突部51bを容器の内周面に圧接させて該内周面に付着した収容物を掻き落とすものであって、該摺動突部51bを柔軟で弾力性に富む材質で形成し、鋭角三角形状の頂部を上記内周面に圧接させる形状とした技術。」

第5 対比
1.本願発明と上記引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1は、内容液を注出するノズルを有すると共に、このノズルの周囲に計量カップとしても使えるキャップが装着された液剤注出容器に係る技術であり、本願発明と技術分野が共通する。
(2)引用発明1の「液剤」は、本願発明の「内容物」に相当し、引用発明1のノズル部材20について、「液剤が充填される容器本体10の頂部に固定される」点は、本願発明のキャップ本体が「内容物が収容される容器本体の口部に装着される」ことに相当する。
また、引用発明1の「液剤を注出するノズル21」、「ノズル底部22」は、それぞれ本願発明の「内容物を注出する注出筒」、「底壁部」に相当し、引用発明1のノズル部材20について、「液剤を注出するノズル21を有し、ノズル21の基部21bからその周囲になだらかな湾曲部を形成して環状のノズル底部22が広が」る点は、引用文献1の【図1】の図示も参酌すれば、本願発明のキャップ本体が「注出筒が底壁部から立設された有底筒状」であることに相当する。
してみると、引用発明1における「液剤が充填される容器本体10の頂部に固定されるとともに、液剤を注出するノズル21を有」し、「ノズル21の基部21bからその周囲になだらかな湾曲部を形成して環状のノズル底部22が広が」る「ノズル部材20」は、本願発明における「内容物が収容される容器本体の口部に装着されるとともに、内容物を注出する注出筒が底壁部から立設された有底筒状のキャップ本体」に相当する。
(3)引用発明1において、ノズル部材20に着脱自在に装着されるキャップ30が「ノズル21を離間して覆う」点については、キャップ30をノズル部材20に装着した際の状態を意味することは明らかである。また、キャップ30を取り外した際には、ノズル21が開放されることも明らかである。よって、キャップ30は、「ノズル21を開閉する」ものといえる。
また、「キャップ30」は計量カップとしても使えることから、本願発明の「計量キャップ」に相当する。
してみると、引用発明1における「前記ノズル部材20に着脱自由に装着され、前記ノズル21を離間して覆うキャップ30」は、本願発明における「前記キャップ本体に着脱自在に装着され、前記注出筒を開閉する計量キャップ」に相当する。
(4)上記(2)(3)から、引用発明1における「ノズル部材20」及び「キャップ30」からなる「部材」は、本願発明における「キャップ本体」と「計量キャップ」とを有する「キャップ」に相当する。
(5)引用発明1のキャップ30が有する「計量カップとしても使える有蓋筒状のカップ状本体」について、当該カップ状本体は、ノズル21を開閉する点においては「有蓋」であるものの、容器本体の頂部に固定されるノズル21を上方から覆う形状・構造であるところ、「有頂」であるということができる。してみると、引用発明1の「計量カップとしても使える有蓋筒状のカップ状本体」は、本願発明の「有頂筒状の計量カップ」に相当する。
(6)本願発明の「キャップ本体の周壁部」について、本願明細書の【0014】には、「キャップ本体11は、容器本体2の口部3に外装された外装筒13と、口部3内に配設された周壁部14と、周壁部14の下端縁に連設されて口部3を閉塞する底壁部15と、を有している。」と記載されており、同【0017】には、「周壁部14は、上端部が口部3よりも上方に位置しているとともに、下端部が口部3(縮径部3b)の内周面に液密に嵌合されている。周壁部14の上端部のうち、フランジ部21よりも上方に位置する部分の外周面には、雄ねじ部が形成されている。」、「また、周壁部14の下端部のうち、縮径部3bよりも下方に位置する部分は、下方に向かうに従い漸次縮径されている。」と記載されていること、及び本願の【図1】の図示からすると、本願発明の「キャップ本体の周壁部」は、キャップ本体における口部の上部から内部にわたる周壁状の部分であるといえる。そうすると、引用発明1の「筒状壁部25」、「テーパ部25a」及び「筒状の外ネジ部24」からなる部分は、本願発明のキャップ本体の「周壁部」に相当する。
また、引用発明1の「ノズル部材20の外ネジ部24に螺合する筒状の内ネジ部32」について、「外ネジ部24」は、上記のとおり本願発明の「周壁部」に相当する部分の一部であり、また、上記螺合によりキャップ30が装着されるところ、キャップ30の取り外しに伴って当該螺合が取り外されることは自明であるから、内ネジ部32は「キャップ本体の周壁部に着脱される」ものといえる。
してみると、引用発明1のキャップ30が有する「ノズル部材20の前記外ネジ部24に螺合する筒状の内ネジ部32」は、本願発明の「キャップ本体の周壁部に着脱される装着筒部」に相当する。
(7)本願発明の「キャップ軸」については、本願明細書の【0012】に「なお、容器本体2、キャップ本体11、及び計量キャップ12は、それぞれの中心軸が共通軸上に位置している。以下、この共通軸をキャップ軸Oといい、」と記載されており、また、請求項1でも特定されるとおり、キャップ本体と計量キャップとは、キャップ軸周りの相対回転により着脱操作がなされるものである。
引用発明1の筒状壁部24は「同心的に延びる」ものであり、これが筒状物についての表現であることから、当該「心」は「軸」を意味するものと解される。そうすると、外ネジ部24と内ネジ部32との螺合は、当該軸回りの両者の相対回転に伴ってなされることは明らかである。また、外ネジ部24はノズル部材20の一部であり、内ネジ部32はキャップ30の一部であるから、上記相対回転は、ノズル部材20とキャップ30との上記軸回りの相対回転に伴うものである。
したがって、上記(6)の対比内容も踏まえると、引用発明1における「ノズル部材20の前記外ネジ部24に螺合する筒状の内ネジ部32」は、本願発明における「前記キャップ本体と前記計量キャップとのキャップ軸周りの相対回転に伴い、前記キャップ本体の周壁部に着脱される装着筒部」に相当する。
(8)引用発明1の「縦リブ27」について、「リブ」の語は一般に、部材表面に形成された細長い突起部、すなわち「突条」を意味する。また、液剤注出容器1が通常置かれる際の姿勢から、「縦」は、概ね上記軸方向に沿う方向を意味するものといえる。また、本願発明の「突起」は、キャップ軸方向に長さを有することが特定されている。そうすると、引用発明1の「縦リブ27」と、本願発明の「突起」とは、「突条」であって「キャップ軸方向に長さを有する」点で共通する。
また、引用発明1の縦リブ27が、「キャップ30のカップ状本体の外壁面33と対向する前記筒状壁部25に」形成されていることは、当該筒状壁部25が本願発明の「周壁部」に相当する部分の一部であることを踏まえると、本願発明の突起が「周壁部内に」「配設され」ていることに相当する。
また、引用発明1の縦リブ27が「キャップ30のカップ状本体の外壁面33に接触」して「擦り降ろし」、「液剤を掻き落とす」ものであることは、その状態からみて本願発明の突起が「計量カップ」に「摺接」するものであることに相当する。また、引用発明1の「キャップ30が前記ノズル部材20に装着された状態」における「当該キャップ30のカップ状本体の外壁面33」は、本願発明の「前記計量キャップが前記キャップ本体に装着された装着状態において、前記計量カップのうち前記周壁部内に挿入される部分」に相当する。
また、引用発明1において、縦リブ27が「キャップ30が螺合によりノズル部材20に装着される際に、前記キャップ30のカップ状本体の外壁面33を擦り降ろし、該外壁面33に付着した液剤を掻き落とす」ことについて、「キャップ30が螺合によりノズル部材20に装着される際」は、本願発明の「前記装着状態と、前記計量キャップが前記キャップ本体から取り外された取り外し状態と、の間を前記計量キャップが移行する際」に相当する。
また、引用発明1の縦リブ27は、上記の際に、キャップ30のカップ状本体の外壁面33を擦り降ろすものであり、当該外壁面33は、カップ状本体の周面にあたる部分であることを考慮すれば、引用発明1の「縦リブ27」が「キャップ30が螺合によりノズル部材20に装着される際に、前記キャップ30のカップ状本体の外壁面33を擦り降ろ」すものであることと、本願発明の「突起」が「前記キャップ軸方向の長さは、前記装着状態と、前記計量キャップが前記キャップ本体から取り外された取り外し状態と、の間を前記計量キャップが移行する際に、前記計量カップの全周を通過する長さに設定され」ていることとは、「突条」が「前記装着状態と、前記計量キャップが前記キャップ本体から取り外された取り外し状態と、の間を前記計量キャップが移行する際に、前記計量カップの周を通過する」ものである限りにおいて共通する。

2.以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「内容物が収容される容器本体の口部に装着されるとともに、内容物を注出する注出筒が底壁部から立設された有底筒状のキャップ本体と、
前記キャップ本体に着脱自在に装着され、前記注出筒を開閉する計量キャップと、を有するキャップであって、
前記計量キャップは、
有頂筒状の計量カップと、
前記キャップ本体と前記計量キャップとのキャップ軸周りの相対回転に伴い、前記キャップ本体の周壁部に着脱される装着筒部と、を備え、
前記周壁部内には、前記計量キャップが前記キャップ本体に装着された装着状態において、前記計量カップのうち前記周壁部内に挿入される部分に摺接する突条が配設され、
前記突条が前記キャップ軸方向に長さを有し、前記装着状態と、前記計量キャップが前記キャップ本体から取り外された取り外し状態と、の間を前記計量キャップが移行する際に、前記計量カップの周を通過する、キャップ。」
である点。
【相違点1】
突条の材質及び形状について、本願発明は、先端部が周方向に撓んだ状態で摺接する弾性変形可能なものであって、少なくとも前記先端部は、先端側に向かうに従いキャップ軸回りの周方向における両側から中心に向けて漸次薄くなっているのに対し、引用発明1は、そのような構成かどうか不明である点。
【相違点2】
装着状態と取り外し状態との間を計量キャップが移行する際に計量カップの周を通過する突条の、キャップ軸方向の長さについて、本願発明は、突条が計量カップの全周を通過する長さに設定されるのに対し、引用発明1はそのような長さであるか不明である点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
1.相違点1について
引用発明1の「縦リブ27」は、「前記キャップ30のカップ状本体の外壁面33を擦り降ろし、該外壁面33に付着した液剤を掻き落とす」ものであるから、単に外壁面33に接触するだけでなく、擦り降ろしや掻き落としができる程度に「圧接」しているものと理解することができる。
そして、例えば引用文献2に記載された上記技術(第4「引用文献の記載事項」2.(2)を参照。)にみられるように、容器において、「摺動突部51bを容器の内周面に圧接させて該内周面に付着した収容物を掻き落とすものであって、該摺動突部51bを柔軟で弾力性に富む材質で形成し、鋭角三角形状の頂部を上記内周面に圧接させる形状とした」ことが、従来周知の技術であったところ、上記「摺動突部51b」は「突条」といえるものであり、上記「内周面」は「壁面」といえるものであり、摺動突部51bを、「柔軟で弾力性に富む材質で形成したこと」、「鋭角三角形状の頂部を壁面に圧接させる形状としたこと」は、それぞれ、「弾性変形可能としたこと」、「突条の先端部を先端に向かうに従い両側から中心に向けて漸次薄くなるように形成したこと」といえるものであるから、突条を容器の壁面に圧接させて該壁面に付着した内容物を掻き落とすものにおいて、「突条を弾性変形可能なものとし、突条の先端部を先端側に向かうに従い両側から中心に向けて漸次薄くなるように形成すること」は、従来周知の技術に過ぎない。
そうすると、引用発明1の「縦リブ27」が容器壁面に圧接させて該壁面に付着した内容物を掻き落とすものであるところ、その具体的な形状や構造として上記周知技術を適用し、上記相違点1における本願発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
その際、突条が多少なりとも周方向に撓んだ状態で摺接することは、上記のように柔軟な突条の先端が壁面に摺接するという構造上、当業者にとって自明のことである。

なお、出願人は、平成31年 3月19日に提出した意見書のなかで、引用文献2に記載された技術において、摺動突部51bが周方向に撓んだ状態で周壁11に摺接するように構成した場合に、摺動突部51bの撓み方向が閉塞具Bの回動方向と一致する状態と逆向きの状態とで摺動抵抗が異なることから、閉塞具Bの回転方向による摺動突部51bの摺動抵抗を均等にするには摺動突部51bが周方向で撓んだ状態まで摺動突部51bの圧接力を大きくできないなどと主張する。
しかし、引用文献2に記載された周知技術についての判断は上記のとおりであり、すなわち、柔軟な突条の先端が壁面に摺接するという構造上、突条が周方向に撓んだ状態で摺接することは自明のことである。また、引用発明1において上記周知技術を適用することを妨げるような事情も認められない。
よって、上記主張は採用できない。

また、出願人は同意見書のなかで、本願発明は、計量キャップの装着時には突起が装着方向への回転に伴い同方向に撓み変形するとともに、計量キャップを取り外し方向に回転させるときには計量キャップの回転方向と突起の撓み方向とが対向した状態で回転する、ということに基づいて本願発明の作用効果について主張する。
しかし、このような点は、本願の請求項1に特定されていないし、明細書、図面及び出願当時の技術常識を参酌しても当業者にとって自明な事項でもない。
よって、上記主張は、請求項の記載に基いたものでなく、採用できない。

2.相違点2について
引用発明1の「縦リブ27」は、「キャップ30が螺合によりノズル部材20に装着される際に、前記キャップ30のカップ状本体の外壁面33を擦り降ろし、該外壁面33に付着した液剤を掻き落とす」ものであるところ、通常液剤の付着はカップ状本体の全周において生じ得るものであることは技術常識であるから、カップ状本体の外周面33の周方向の一部ではなく全周に付着した内容物を掻き落とそうとすることは、当業者であれば十分に動機付けられるといえ、縦リブ27がカップ状本体の全周を通過するように設計すること、すなわち、相違点2に係る本願発明の構成とする程度のことは、当業者であれば適宜容易になし得たことである。

3.また、上記各相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用文献2に記載された上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。

4.よって、本願発明は、引用発明1及び引用文献2に記載された上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-24 
結審通知日 2019-05-07 
審決日 2019-05-20 
出願番号 特願2014-93556(P2014-93556)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一加藤 信秀  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 千壽 哲郎
西尾 元宏
発明の名称 キャップ  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 仁内 宏紀  
代理人 鈴木 三義  

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