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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F22B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F22B |
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管理番号 | 1353020 |
審判番号 | 不服2018-9020 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-02 |
確定日 | 2019-07-04 |
事件の表示 | 特願2016-192953号「蒸気生成システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月 5日出願公開、特開2018- 54246号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年9月30日の出願であって、平成29年9月14日付けで拒絶理由が通知され、平成30年1月11日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年3月27日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成30年7月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成30年7月2日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成30年7月2日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 平成30年7月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成30年1月11日提出の手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1を下記の(2)に示す請求項1に補正することを含むものである。(下線は、補正箇所を示す。) (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「船内で使用する低圧蒸気と船内で使用する高圧蒸気とを分けて生成する蒸気生成システムであって、 原動機の掃気路に配置された圧縮空気熱交換機と、前記圧縮空気熱交換機で加熱された第1媒体から蒸気を取り出す気水分離機と、前記圧縮空気熱交換機と前記気水分離機との間で前記第1媒体を循環させる第1循環路と、前記第1循環路に配置された第1ポンプとを有する掃気側蒸気生成部と、 原動機の排気路に配置された排気熱交換機と、前記排気熱交換機で加熱された第2媒体から蒸気を取り出すボイラと、前記排気熱交換機と前記ボイラとの間で前記第2媒体を循環させる第2循環路と、前記第2循環路に配置された第2ポンプとを有する排気側蒸気生成部とを備え、 前記掃気側蒸気生成部で低圧蒸気を生成し、前記排気側蒸気生成部で高圧蒸気を生成することを特徴とする蒸気生成システム。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「船内で使用する低圧蒸気と船内で使用する高圧蒸気とを分けて生成して別々に使用する蒸気生成システムであって、 原動機の掃気路に配置された圧縮空気熱交換機と、前記圧縮空気熱交換機で加熱された第1媒体から蒸気を取り出す気水分離機と、前記圧縮空気熱交換機と前記気水分離機との間で前記第1媒体を循環させる第1循環路と、前記第1循環路に配置された第1ポンプとを有する掃気側蒸気生成部と、 原動機の排気路に配置された排気熱交換機と、前記排気熱交換機で加熱された第2媒体から蒸気を取り出すボイラと、前記排気熱交換機と前記ボイラとの間で前記第2媒体を循環させる第2循環路と、前記第2循環路に配置された第2ポンプとを有する排気側蒸気生成部とを備え、 前記掃気側蒸気生成部で低圧蒸気を生成し、前記排気側蒸気生成部で高圧蒸気を生成するとともに、 前記原動機が船舶の主機関又は発電機であることを特徴とする蒸気生成システム。」 2 本件補正の目的について 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「船内で使用する低圧蒸気」及び「船内で使用する高圧蒸気」について「別々に使用する」という限定を、また、「原動機」について「船舶の主機関又は発電機である」という限定をそれぞれ付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。 3 独立特許要件の判断 (1)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 原査定の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2012-37089号公報(以下「引用文献1」という。)には、「廃熱回収システム」に関して、図面とともに次の記載がある。(下線は理解の一助のために当審にて付したものである。) 「【0029】 [第1実施形態] 図1は、本発明の第1実施形態に係る廃熱回収システム101の系統図である。図1に示すように、廃熱回収システム101は、船舶に搭載された舶用ディーゼルエンジン1(以下、エンジン1と称す)の排ガスの熱を回収する排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20を備え、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20により回収された熱で蒸気を生成し、その蒸気でターボ発電機2を駆動する。ターボ発電機2は、蒸気で回転駆動される多段式の蒸気タービン2aの出力軸に交流発電機2bを接続してなる。エンジン1は、硫黄分が異なる複数種の燃料のうち一種を選択的に使用することができ、燃料の選択肢として、硫黄分が比較的多い高硫黄燃料である残渣油や、残渣油よりも硫黄分が少ない低硫黄燃料である留出油及び軽油等がある。」 「【0045】 (廃熱回収システム) 以下、図1に戻り、第1実施形態に係る廃熱回収システム101の構成を具体的に説明する。この廃熱回収システム101は、上記排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20、高圧ドラム(補助ボイラ又は高圧気水分離器)41、低圧ドラム(低圧気水分離器)42、復水器51、給水系統61、高圧循環水系統62、蒸気系統63、低圧循環水系統64及び低圧混気系統65を備えている。 【0046】 蒸気タービン2aの蒸気排出口には、タービン2a内を通過した蒸気を凝縮させる復水器51が設けられている。復水器51には、凝縮した水を各ドラム41,42に供給するための給水系統61が接続されている。給水ポンプ61Pが駆動されると、復水器51で凝縮した水が、給水フィルタタンク52を介し、エンジン1への掃気を冷却するエアクーラ53へと供給され、エアクーラ53内を通流する過程でエンジン1の廃熱との熱交換により加熱される。エアクーラ53で加熱された水は、給水系統61を介して各ドラム41,42に供給される。 【0047】 高圧ドラム41には高圧循環水系統62が接続されており、給水系統61を介して供給された水が、高圧循環水系統62において循環水として循環する。高圧循環水系統62は、高圧ドラム41を第1熱回収部12の熱交換管12A(図9参照)の一端に接続するライン62Aと、熱交換管12Aと、熱交換管12Aの他端を高圧ドラム41に接続するライン62Bとを有する。ライン62A上の循環ポンプ62Pが駆動されると、循環水が高圧ドラム41からライン62Aを介して熱交換管12Aへと供給され、熱交換管12Aを通流する過程で排ガスとの熱交換により高圧蒸気となる。高圧蒸気となった循環水は、ライン62Bを介して高圧ドラム41に戻る。 【0048】 高圧ドラム41には蒸気系統63が接続されており、高圧ドラム41に送られた高圧蒸気は、高圧ドラム41内で液体の水と分離され、蒸気系統63を介してターボ発電機2の蒸気タービン2aに供給される。蒸気系統63には前述した熱交換管11Aが並列接続されており、高圧ドラム41から送り出された高圧蒸気は、熱交換管11Aを通流する過程で排ガスとの熱交換により更に加熱される。 【0049】 また、低圧ドラム42には低圧循環水系統64が接続されており、給水系統61を介して低圧ドラム42に供給された水が、低圧循環水系統64において循環水として循環する。低圧循環水系統64は、低圧ドラム42を二次熱回収部の熱交換管22A(図9参照)の一端に接続するライン64Aと、熱交換管22Aと、熱交換管22Aの他端を第2熱回収部14の熱交換管14Aの(図9参照)一端に接続するライン64Cと、熱交換管14Aと、熱交換管14Aの他端を低圧ドラム42に接続するライン64Bとを有する。ライン64A上の循環ポンプ64Pが駆動されると、低圧ドラム42内の循環水が、ライン64A、熱交換管22A、ライン64C、熱交換管14A及びライン64Bを順に通流して低圧ドラム42に戻る。」 「【0051】 低圧ドラム42には低圧混気系統65が接続されており、低圧ドラム42に送られた低圧蒸気は、低圧ドラム42内で液体の水と分離され、低圧混気系統65を介してターボ発電機2の蒸気タービン2aに供給される。」 「【0055】 なお、高圧ドラム41及び低圧ドラム42は、加熱器41A,42Aをそれぞれ有している。蒸気系統63に高圧蒸気を取り出す蒸気取出口(図中の米印参照)を設け、蒸気取出口より取り出された高圧蒸気によって加熱器41A,42Aを駆動するように構成してもよい。これにより、ドラム41,42内の循環水を、循環水系統62,64に送り出す前に加熱器41A,42Aで加熱しておくことができる。」 「【0069】 [第4実施形態] 図4は本発明の第4実施形態に係る廃熱回収システム104の系統図である。本実施形態に係る高圧ドラム41、高圧循環水系統62及び蒸気系統63は、第1?3実施形態と同様であり、第1熱回収部12が上記同様の高圧蒸発器31として機能する。本実施形態に係る低圧ドラム42、中圧ドラム43、低圧混気系統65及び中圧混気系統67は、第3実施形態と同様である。本実施形態は、給水系統61、低圧循環水系統64及び中圧循環水系統66が変更されている点で第1?3実施形態と相違している。 【0070】 図4に示すように、給水系統61は、第2実施形態と同様にしてエアクーラ53と分離され、復水器51を高圧ドラム41に接続するライン61A上に排エコ給水加熱器54が設けられており、排エコ給水加熱器54が給水加熱器61Qとして機能する。加熱された水は、ライン61Aを介して高圧ドラム41だけでなく中圧ドラム43にも供給される。 【0071】 低圧循環水系統64は、低圧ドラム42をエアクーラ53の入口に接続するライン64Dと、エアクーラ53の出口を低圧ドラム42に接続するライン64Eとを有する。ライン64D上の循環ポンプ64Qが駆動されると、循環水が低圧ドラム42からライン64Dを介してエアクーラ53へと供給され、エアクーラ53内を通流する過程でエンジン1の廃熱との熱交換により低圧蒸気となる。低圧蒸気となった循環水はライン64Eを介して低圧ドラム42に戻される。」 イ 引用文献1に記載された技術的事項 上記アの記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献1に記載された廃熱回収システム101は、船舶に搭載された舶用ディーゼルエンジン1の排ガスの熱を回収する排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20、高圧ドラム(補助ボイラ又は高圧気水分離器)41、低圧ドラム(低圧気水分離器)42、復水器51、給水系統61、高圧循環水系統62、蒸気系統63、低圧循環水系統64並びに低圧混気系統65を備え(【0029】、【0045】)、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20により回収された熱で蒸気を生成し、その蒸気でターボ発電機2を駆動するものである(【0029】)。 b ターボ発電機2は、蒸気で回転駆動される多段式の蒸気タービン2aの出力軸に交流発電機2bを接続してなるものである(【0029】)。 c 低圧ドラム42には低圧循環水系統64が接続されており、低圧循環水系統64は、舶用ディーゼルエンジン1への掃気を冷却するエアクーラ53の入口に低圧ドラム42を接続するライン64Dと、エアクーラ53の出口を低圧ドラム42に接続するライン64Eとを有し、ライン64D上の循環ポンプ64Qが駆動されると、循環水が低圧ドラム42からライン64Dを介してエアクーラ53へと供給され、エアクーラ53内を通流する過程で舶用ディーゼルエンジン1の廃熱との熱交換により低圧蒸気となり、低圧蒸気となった循環水はライン64Eを介して低圧ドラム42に戻され(【0049】、【0071】)、低圧ドラム42に送られた低圧蒸気は、低圧ドラム42内で液体の水と分離され、低圧混気系統65を介してターボ発電機2の蒸気タービン2aに供給されるものである(【0051】)。 d 高圧ドラム41には高圧循環水系統62が接続されており、高圧循環水系統62は、高圧ドラム41を第1熱回収部12の熱交換管12Aの一端に接続するライン62Aと、熱交換管12Aと、熱交換管12Aの他端を高圧ドラム41に接続するライン62Bとを有し、ライン62A上の循環ポンプ62Pが駆動されると、循環水が高圧ドラム41からライン62Aを介して熱交換管12Aへと供給され、熱交換管12Aを通流する過程で舶用ディーゼルエンジン1の排ガスとの熱交換により高圧蒸気となり、高圧蒸気となった循環水は、ライン62Bを介して高圧ドラム41に戻され(【0047】)、高圧ドラム41に送られた高圧蒸気は、高圧ドラム41内で液体の水と分離され、蒸気系統63を介してターボ発電機2の蒸気タービン2aに供給されるものである(【0048】)。 ウ 引用発明 上記ア、イから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「船舶に搭載された舶用ディーゼルエンジン1の排ガスの熱を回収する排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20、高圧ドラム(補助ボイラ又は高圧気水分離器)41、低圧ドラム(低圧気水分離器)42、復水器51、給水系統61、高圧循環水系統62、蒸気系統63、低圧循環水系統64並びに低圧混気系統65を備え、排ガスエコノマイザ10及び熱回収ユニット20により回収された熱で蒸気を生成し、その蒸気でターボ発電機2を駆動する廃熱回収システム101であって、 ターボ発電機2は、蒸気で回転駆動される多段式の蒸気タービン2aの出力軸に交流発電機2bを接続してなり、 低圧ドラム42には低圧循環水系統64が接続されており、低圧循環水系統64は、舶用ディーゼルエンジン1への掃気を冷却するエアクーラ53の入口に低圧ドラム42を接続するライン64Dと、エアクーラ53の出口を低圧ドラム42に接続するライン64Eとを有し、ライン64D上の循環ポンプ64Qが駆動されると、循環水が低圧ドラム42からライン64Dを介してエアクーラ53へと供給され、エアクーラ53内を通流する過程で舶用ディーゼルエンジン1の廃熱との熱交換により低圧蒸気となり、低圧蒸気となった循環水はライン64Eを介して低圧ドラム42に戻され、低圧ドラム42に送られた低圧蒸気は、低圧ドラム42内で液体の水と分離され、低圧混気系統65を介してターボ発電機2の蒸気タービン2aに供給され、 高圧ドラム41には高圧循環水系統62が接続されており、高圧循環水系統62は、高圧ドラム41を第1熱回収部12の熱交換管12Aの一端に接続するライン62Aと、熱交換管12Aと、熱交換管12Aの他端を高圧ドラム41に接続するライン62Bとを有し、ライン62A上の循環ポンプ62Pが駆動されると、循環水が高圧ドラム41からライン62Aを介して熱交換管12Aへと供給され、熱交換管12Aを通流する過程で舶用ディーゼルエンジン1の排ガスとの熱交換により高圧蒸気となり、高圧蒸気となった循環水は、ライン62Bを介して高圧ドラム41に戻され、高圧ドラム41に送られた高圧蒸気は、高圧ドラム41内で液体の水と分離され、蒸気系統63を介してターボ発電機2の蒸気タービン2aに供給される、廃熱回収システム101。」 (2)本願補正発明と引用発明との対比・判断 引用発明において、「循環水が低圧ドラム42からライン64Dを介してエアクーラ53へと供給され、エアクーラ53内を通流する過程で舶用ディーゼルエンジン1の廃熱との熱交換により低圧蒸気となり」、「循環水が高圧ドラム41からライン62Aを介して熱交換管12Aへと供給され、熱交換管12Aを通流する過程で舶用ディーゼルエンジン1の排ガスとの熱交換により高圧蒸気とな(る)」から、低圧蒸気と高圧蒸気とはそれぞれ別々に生成されるものである。さらに、引用発明は、「その蒸気でターボ発電機2を駆動する」ところ、ターボ発電機2が船舶内の設備であることは明らかであるから、蒸気を船内で使用するものといえる。よって、引用発明が、上記低圧蒸気と高圧蒸気を生成することは、本願補正発明の「船内で使用する低圧蒸気と船内で使用する高圧蒸気とを分けて生成(する)」に相当する。 引用発明の「舶用ディーゼルエンジン1」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「原動機」に相当する。 引用発明の「エアクーラ53」は、「舶用ディーゼルエンジン1への掃気を冷却する」ものであるから、本願補正発明の「原動機の掃気路に配置された圧縮空気熱交換機」に、「原動機の掃気路に配置された熱交換機」という限りにおいて一致する。 引用発明において、「低圧循環水系統64は、舶用ディーゼルエンジン1への掃気を冷却するエアクーラ53の入口に低圧ドラム42を接続するライン64Dと、エアクーラ53の出口を低圧ドラム42に接続するライン64Eとを有し、ライン64D上の循環ポンプ64Qが駆動されると、循環水が低圧ドラム42からライン64Dを介してエアクーラ53へと供給され、エアクーラ53内を通流する過程で舶用ディーゼルエンジン1の廃熱との熱交換により低圧蒸気とな(る)」のであるから、引用発明の「低圧循環水系統64」を循環する「循環水」は、本願補正発明の「熱交換機で加熱され」、「熱交換機と気水分離機との間で」循環される「第1媒体」に相当する。 引用発明において、「エアクーラ53内を通流する過程で舶用ディーゼルエンジン1の廃熱との熱交換により低圧蒸気となり、低圧蒸気となった循環水はライン64Eを介して低圧ドラム42に戻され、低圧ドラム42に送られた低圧蒸気は、低圧ドラム42内で液体の水と分離され(る)」のであるから、引用発明の「低圧ドラム42」は、本願補正発明の「熱交換機で加熱された第1媒体から蒸気を取り出す気水分離機」に相当する。 引用発明において、「低圧循環水系統64は、舶用ディーゼルエンジン1への掃気を冷却するエアクーラ53の入口に低圧ドラム42を接続するライン64Dと、エアクーラ53の出口を低圧ドラム42に接続するライン64Eとを有し、ライン64D上の循環ポンプ64Qが駆動されると、循環水が低圧ドラム42からライン64Dを介してエアクーラ53へと供給され(る)」のであるから、引用発明の「低圧循環水系統64」は、本願補正発明の「熱交換機と気水分離機との間で第1媒体を循環させる第1循環路」に相当する。 引用発明の「循環ポンプ64Q」は、「低圧循環水系統64」の「ライン64D上」に配置されるものであるから、本願補正発明の「第1循環路に配置された第1ポンプ」に相当する。 引用発明において、「高圧循環水系統62は、高圧ドラム41を第1熱回収部12の熱交換管12Aの一端に接続するライン62Aと、熱交換管12Aと、熱交換管12Aの他端を高圧ドラム41に接続するライン62Bとを有し、ライン62A上の循環ポンプ62Pが駆動されると、循環水が高圧ドラム41からライン62Aを介して熱交換管12Aへと供給され、熱交換管12Aを通流する過程で舶用ディーゼルエンジン1の排ガスとの熱交換により高圧蒸気とな(る)」のであるから、引用発明の「第1熱回収部12」は、本願補正発明の「原動機の排気路に配置された排気熱交換機」に相当し、同様に、「高圧循環水系統62」を循環する「循環水」は、「排気熱交換機で加熱され」、「排気熱交換機とボイラとの間で」循環される「第2媒体」に相当する。 引用発明において、「高圧蒸気となった循環水は、ライン62Bを介して高圧ドラム41に戻され、高圧ドラム41に送られた高圧蒸気は、高圧ドラム41内で液体の水と分離され(る)」のであるから、引用発明の「高圧ドラム41」は、本願補正発明の「排気熱交換機で加熱された第2媒体から蒸気を取り出すボイラ」に相当する。 引用発明において、「高圧循環水系統62は、高圧ドラム41を第1熱回収部12の熱交換管12Aの一端に接続するライン62Aと、熱交換管12Aと、熱交換管12Aの他端を高圧ドラム41に接続するライン62Bとを有し、ライン62A上の循環ポンプ62Pが駆動されると、循環水が高圧ドラム41からライン62Aを介して熱交換管12Aへと供給され(る)」のであるから、引用発明の「高圧循環水系統62」は、本願補正発明の「排気熱交換機とボイラとの間で第2媒体を循環させる第2循環路」に相当する。 引用発明の「循環ポンプ62P」は、「高圧循環水系統62」の「ライン62A上」に配置されるのであるから、本願補正発明の「第2循環路に配置された第2ポンプ」に相当する。 引用発明の「エアクーラ53」と「低圧ドラム42」と「低圧循環水系統64」と「循環ポンプ64Q」とを含む部分は、本願補正発明の「掃気側蒸気生成部」に相当し、また、引用発明の「第1熱回収部12」と「高圧ドラム41」と「高圧循環水系統62」と「循環ポンプ62P」とを含む部分は、本願補正発明の「排気側蒸気生成部」に相当する。 そして、引用発明において、「ライン64D上の循環ポンプ64Qが駆動されると、循環水が低圧ドラム42からライン64Dを介してエアクーラ53へと供給され、エアクーラ53内を通流する過程で舶用ディーゼルエンジン1の廃熱との熱交換により低圧蒸気となり」、「ライン62A上の循環ポンプ62Pが駆動されると、循環水が高圧ドラム41からライン62Aを介して熱交換管12Aへと供給され、熱交換管12Aを通流する過程で舶用ディーゼルエンジン1の排ガスとの熱交換により高圧蒸気とな(る)」のであるから、引用発明は、「掃気側蒸気生成部で低圧蒸気を生成し、排気側蒸気生成部で高圧蒸気を生成する」点で、本願補正発明と一致する。 また、引用発明の「廃熱回収システム101」は、本願補正発明の「蒸気生成システム」に相当する。 したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「船内で使用する低圧蒸気と船内で使用する高圧蒸気とを分けて生成する蒸気生成システムであって、 原動機の掃気路に配置された熱交換機と、前記熱交換機で加熱された第1媒体から蒸気を取り出す気水分離機と、前記熱交換機と前記気水分離機との間で前記第1媒体を循環させる第1循環路と、前記第1循環路に配置された第1ポンプとを有する掃気側蒸気生成部と、 原動機の排気路に配置された排気熱交換機と、前記排気熱交換機で加熱された第2媒体から蒸気を取り出すボイラと、前記排気熱交換機と前記ボイラとの間で前記第2媒体を循環させる第2循環路と、前記第2循環路に配置された第2ポンプとを有する排気側蒸気生成部とを備え、 前記掃気側蒸気生成部で低圧蒸気を生成し、前記排気側蒸気生成部で高圧蒸気を生成する、蒸気生成システム。」 [相違点1] 本願補正発明においては、「船内で使用する低圧蒸気と船内で使用する高圧蒸気とを分けて生成して別々に使用する」のに対して、引用発明においては、「船内で使用する低圧蒸気と船内で使用する高圧蒸気とを分けて生成」するものであるが、低圧蒸気及び高圧蒸気はいずれも「ターボ発電機2の蒸気タービン2aに供給され(る)」点(以下「相違点1」という。)。 [相違点2] 「原動機の掃気路に配置された熱交換機」について、本願補正発明においては「圧縮空気熱交換機」である(すなわち、掃気路を流通する空気が圧縮空気である)のに対して、引用発明においては「圧縮空気熱交換機」であるか明らかでない点(以下「相違点2」という。)。 [相違点3] 本願補正発明においては、「原動機」が「船舶の主機関又は発電機」であるのに対して、引用発明においては、「舶用ディーゼルエンジン1」が「船舶の主機関又は発電機」であるか明らかでない点(以下「相違点3」という。)。 上記相違点について検討する。 [相違点1について] 蒸気生成システムにおいて生成した低圧蒸気と高圧蒸気とを別々に使用することは、例えば、特開2008-145005号公報(段落【0020】及び図1の記載を参照。)及び特開昭57-49704号公報(第1ページ右下欄第3行ないし第2ページ右上欄第8行及び第1図の記載を参照。)等に示されるように、周知技術(以下「周知技術1」という。)である。 引用発明においては、低圧蒸気及び高圧蒸気はいずれもターボ発電機2の蒸気タービン2aに供給されるものであるが、引用文献1にはこれらの蒸気をそれぞれ別の用途に使用することを妨げる記載はなく、むしろ引用文献1の段落【0055】には、高圧ドラム41及び低圧ドラム42にそれぞれ設けられた加熱器41A,42Aを高圧蒸気によって駆動してもよいことが示唆されており、また、船内において多段式の蒸気タービン2aの駆動に用いる以外の蒸気の用途があることは技術常識である(例えば、特開昭57-49704号公報の第1ページ右下欄第3行ないし第2ページ右上欄第8行には、低圧蒸気の用途として雑用蒸気を使用する機器が、高圧蒸気の用途として荷油タンク加熱等のボイラ発生蒸気を必要とする機器が、それぞれ記載されている。)から、引用発明において、周知技術1を採用して、低圧蒸気と高圧蒸気とを別々に使用するよう構成することにより、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 [相違点2について] 過給機により吸気を圧縮してエンジンに供給することによりエンジンの出力を上げることができることは技術常識であり、引用発明の舶用ディーゼルエンジン1においても過給機を用いることは普通に想定されることである。 また、過給機により加圧された圧縮空気が流通する掃気路に圧縮空気熱交換機を配置することは、例えば、特開2015-17770号公報(段落【0023】、【0024】及び図1の記載を参照。)等に示されるように、周知技術(以下「周知技術2」という。)である。 してみると、引用発明において、周知技術2を採用して、舶用ディーゼルエンジン1への掃気を冷却するエアクーラ53を、過給機により加圧された圧縮空気が流通する掃気路に配置することにより、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 [相違点3について] 船舶に搭載された原動機を船舶の主機関又は発電機に用いることは、例えば、特開2015-17770号公報(段落【0022】の記載を参照。)等に示されるように、周知技術(以下「周知技術3」という。)であり、また、引用発明の舶用ディーゼルエンジン1は船舶に搭載されるものであるから、船舶の主機関や発電機に用いることは普通に想定されることである。 してみると、引用発明において、周知技術3を採用して、ディーゼルエンジン1を主機関又は発電機とすることにより、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 そして、本願補正発明は、全体としてみても引用発明及び周知技術1ないし3から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 (3)まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 むすび 以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面並びに平成30年1月11日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲からみて、上記第2[理由]1(1)に記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の概要は次のとおりである。 (1)本願の請求項1、3に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)本願の請求項1ないし3に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2012-37089号公報 引用文献2:特開2008-145005号公報 引用文献3:特開2015-17770号公報 3 引用文献 原査定の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]3(1)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、第2[理由]2において検討した本願補正発明から、「船内で使用する低圧蒸気」及び「船内で使用する高圧蒸気」に対しての「別々に使用する」ものであることの限定及び「原動機」に対しての「船舶の主機関又は発電機である」ものであることの限定を削除したものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記第2[理由]3(2)、(3)に記載したとおり、引用発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 前記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-04-26 |
結審通知日 | 2019-05-07 |
審決日 | 2019-05-22 |
出願番号 | 特願2016-192953(P2016-192953) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F22B)
P 1 8・ 121- Z (F22B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大谷 光司 |
特許庁審判長 |
松下 聡 |
特許庁審判官 |
紀本 孝 大屋 静男 |
発明の名称 | 蒸気生成システム |
代理人 | 信末 孝之 |