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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1353044
審判番号 不服2018-10178  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-25 
確定日 2019-07-26 
事件の表示 特願2017-534702「共有コンテンツアイテムのストレージ制約付きの同期」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 4日国際公開、WO2016/120683、平成30年 3月29日国内公表、特表2018-508855、請求項の数(28)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2015年10月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年1月30日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成29年8月25日に審査請求されると同時に,翻訳文とともに手続補正書が提出され,平成29年12月13日付けで拒絶の理由が通知され,平成30年2月14日に意見書とともに手続補正書が提出され,同年3月19日付けで拒絶査定(謄本送達日同年3月26日)がなされ,これに対して同年7月25日に審判請求がなされると共に手続補正がなされ,同年9月18日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,同年11月9日に上申書が提出されたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成30年3月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-28
・引用文献等 1-4

<引用文献等一覧>
1.特表2013-524358号公報
2.再公表特許第2011/148496号
3.特開2005-228242号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2002-140213号公報(周知技術を示す文献)


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は,特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1に「前記クライアントデバイスから各選択されたコンテンツアイテムを削除し」という事項を追加する補正,請求項14に「前記特定されたコンテンツアイテムを削除し」という事項を追加する補正,及び,請求項25に「前記選択されたコンテンツアイテムを削除し」という事項を追加する補正,並びに,請求項2より「前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイスから各選択されたコンテンツアイテムを削除すること」を削除する補正(以上をまとめて以下,「補正事項」という。)は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか,また,上記補正事項は,当初明細書の段落7及び8並びに図面の図1Aに記載されているから,当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討する。
審判請求時の補正前の「各選択されたコンテンツアイテムを、前記クライアントデバイス上の前記選択されたコンテンツアイテムを表すシャドウアイテムと置き換えること」(請求項1)において,さらに「前記クライアントデバイスから各選択されたコンテンツアイテムを削除し」という事項を追加する補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。同様に請求項14及び請求項25における上記補正事項も,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,当初明細書の段落8には,「クライアントデバイスは、選択したコンテンツアイテムを削除し、削除したコンテンツアイテムのそれぞれについての対応するシャドウアイテムを作成する。クライアントデバイスは、削除したコンテンツアイテムに対応するディレクトリの場所にシャドウアイテムを格納する。対応する場所へのシャドウアイテムの格納は、要求したアプリケーションに見える方法で削除したコンテンツアイテムのその後の検索を可能にする。」と記載されているから,上記補正事項は,当初明細書等に記載された事項であり,新規事項を追加するものではないといえる。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1乃至28に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1乃至28に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明28」という。)は,平成30年7月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至28に記載された,次のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
コンテンツアイテムを同期するコンピュータで実行される方法であって、前記方法は、
クライアントデバイスにおいて、コンテンツアイテムにアクセスする要求を受信することと、
前記クライアントデバイスにおいて、前記要求されたコンテンツアイテムがシャドウアイテムであるかを判定することであって、前記シャドウアイテムが前記クライアントデバイスからは遠隔の別個のホストデバイス上に格納されたコンテンツアイテムを表し、前記シャドウアイテムは、前記コンテンツアイテムのコンテンツデータが前記クライアントデバイス上に格納されず、前記クライアントデバイス上に格納される、該コンテンツアイテムのメタデータから成る、ことと、
前記要求されたコンテンツアイテムがシャドウアイテムであると判定されることに応じて、クライアントデバイスにおいて、前記ホストデバイスから該ホストデバイス上に格納された前記要求されたコンテンツアイテムのサイズを要求することと、
前記クライアントデバイスにおいて、前記要求されたコンテンツアイテムの前記サイズを受信することと、
前記要求されたコンテンツアイテムの前記サイズが前記クライアントデバイス上に割り当てされたストレージの残量を超えるかを判定することと、
前記要求されたコンテンツアイテムの前記要求したサイズが前記クライアントデバイスに割り当てられたストレージの前記残量を超えると判定したことに応じて、
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを選択することであって、選択されたコンテンツアイテムのそれぞれのコピーが前記ホストデバイスに格納される、ことと、
前記クライアントデバイスから各選択されたコンテンツアイテムを削除し、前記要求されたコンテンツアイテムを格納するための前記クライアントデバイス上の前記ストレージの一部を確保するために、各選択されたコンテンツアイテムを、前記クライアントデバイス上の前記選択されたコンテンツアイテムを表すシャドウアイテムと置き換えることと、
前記ストレージの前記確保した一部を用いて、前記要求されたコンテンツアイテムを表す前記要求されたシャドウアイテムを、対応する前記要求されたコンテンツアイテムと置き換えることと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
各選択されたコンテンツアイテムを置き換えることは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、各選択されたコンテンツアイテムを表す、前記クライアントデバイス上のシャドウアイテムを作成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各選択されたコンテンツアイテムを各シャドウアイテムに置き換えることは、さらに、前記クライアントデバイスにおいて、前記ホストデバイスから前記選択されたコンテンツアイテムをダウンロードすることと、
前記ダウンロードしたコンテンツアイテムを前記クライアントデバイス上に格納することと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クライアントデバイスにおいて、前記要求されたコンテンツアイテムがシャドウアイテムであるかどうかを判定することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイス上の前記要求されたコンテンツアイテムのサイズが所定のサイズ制限よりも小さいかを判定することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各コンテンツアイテムをシャドウアイテムに置き換える前に、各コンテンツアイテムを前記ホストデバイスと同期することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記クライアントデバイス上に割り当てられたストレージスペースの容量は、ユーザによって指定された設定に応じて構成された構成ファイルから読み出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを選択することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイス上に前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの容量を判定することと、
前記クライアントデバイスと前記ホストデバイスとの間で同期されるコンテンツアイテムのリストを特定することであって、前記リストはアクセス時刻に基づいてソートされる、ことと、
選択したコンテンツアイテムのトータルサイズが前記クライアントデバイス上に前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの前記容量以上となるまで、コンテンツアイテムにアクセスしてから最も長い時間が経過した、コンテンツアイテムの前記リストの先頭から、コンテンツアイテムを連続して選択することと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを選択することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイス上に前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの容量を判定することと、
前記クライアントデバイスと前記ホストデバイスとの間で同期されるコンテンツアイテムのリストを特定することであって、コンテンツアイテムの前記リストはアイテムサイズに基づいてソートされる、ことと、
選択したコンテンツアイテムのトータルサイズが前記クライアントデバイス上に前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの前記容量以上となるように、コンテンツアイテムの前記リストから、多数のコンテンツアイテムを選択することと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを選択することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイス上に前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの容量を判定することと、
前記クライアントデバイスと前記ホストデバイスとの間で同期されるコンテンツアイテムのリストを特定することであって、コンテンツアイテムの前記リストはアイテムサイズとアクセス時刻との重み付けされた組み合わせを用いてソートされる、ことと、
選択したコンテンツアイテムのトータルサイズが前記クライアントデバイス上に前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの前記容量以上となるように、コンテンツアイテムの前記リストから、コンテンツアイテムを選択することと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを選択することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイス上に前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの容量を判定することと、
前記クライアントデバイスと前記ホストデバイスとの間で同期されるコンテンツアイテムのリストを特定することであって、コンテンツアイテムの前記リストは前記コンテンツアイテムへのアクセスを有する任意のクライアントデバイスによるアクセス時刻に基づいてソートされる、ことと、
選択したコンテンツアイテムのトータルサイズが前記クライアントデバイス上に前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの前記容量以上となるまで、コンテンツアイテムにアクセスしてから最も長い時間が経過した、コンテンツアイテムの前記リストの先頭から、コンテンツアイテムを連続して選択することと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを選択することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイス上に前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの容量を判定することと、
前記クライアントデバイスと前記ホストデバイスとの間で同期されるコンテンツアイテムのリストを特定することであって、コンテンツアイテムの前記リストは、アクセス時刻と、前記クライアントデバイス上に常駐していることが記された全てのファイルを除くコンテンツアイテムの前記リストとに基づいてソートされる、ことと、
選択したコンテンツアイテムのトータルサイズが前記クライアントデバイス上に前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの前記容量以上となるまで、前記ホストデバイス上のコンテンツアイテムにアクセスしてから最も長い時間が経過した、コンテンツアイテムの前記リストの先頭から、多数のコンテンツアイテムを連続して選択することと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記クライアントデバイスにおいて、選択されたコンテンツアイテムを表す、前記クライアントデバイス上のシャドウアイテムを作成することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイスが前記ホストデバイスからの同期を要求しないコンテンツアイテムを示す、前記クライアントデバイスによって保持されるリストへ前記選択されたコンテンツアイテムについての識別子を追加することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
選択されたコンテンツアイテムを表す、クライアントデバイス上のシャドウアイテムを作成することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記選択されたコンテンツアイテムについての識別子を指定するメッセージを、前記ホストデバイスへ送信することであって、これにより、前記識別子は、前記ホストデバイスが前記クライアントデバイスと同期しない、前記ホストデバイスによって保持されるコンテンツアイテムのリストに追加される、ことを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
コンテンツアイテムを同期するコンピュータで実行される方法であって、前記方法は、
クライアントデバイスにおいて、コンテンツアイテムの選択を受信することと、
前記クライアントデバイスにおいて、前記選択されたコンテンツアイテムが前記クライアントデバイスから遠隔の個別のホストシステム上に格納されているかどうかを判定することと、
前記選択されたコンテンツアイテムが前記クライアントデバイスから遠隔の個別のホストデバイス上に格納されているとの判定に応じて、前記ホストデバイス上に格納された前記選択されたコンテンツアイテムのサイズを要求することと、
前記クライアントデバイスにおいて、前記選択されたコンテンツアイテムの前記サイズを受信することと、
前記選択されたコンテンツアイテムの前記サイズが前記クライアントデバイスに割り当てされたストレージの残量を超えるかどうかを判定することと、
前記選択されたコンテンツアイテムの前記サイズが前記クライアントデバイスに割り当てられたストレージの前記残量を超えると判定したことに応じて、
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを特定することであって、少なくとも1つの特定されるコンテンツアイテムのコピーが前記ホストデバイスに格納される、ことと、
前記特定されたコンテンツアイテムを削除し、前記要求されたコンテンツアイテムを格納するための前記クライアントデバイス上の前記ストレージの一部を確保するために、前記特定されたコンテンツアイテムを、前記クライアントデバイス上の前記特定されたコンテンツアイテムを表すシャドウアイテムと置き換えることであって、前記シャドウアイテムは、前記特定されたコンテンツアイテムのコンテンツデータが前記クライアントデバイス上に格納されず、前記クライアントデバイス上に格納される、前記特定されたコンテンツアイテムのメタデータから成る、ことと、
前記クライアントデバイスにおいて、前記ホストデバイスから前記選択されたコンテンツアイテムをダウンロードすることと、
前記ダウンロードしたコンテンツアイテムを前記クライアントデバイス上の前記ストレージの前記確保した一部に格納することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記コンテンツアイテムの選択は、前記クライアントデバイス上に常駐しているコンテンツアイテムの選択であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記クライアントデバイス上に常駐しているコンテンツアイテムを示すピン留めされたコンテンツアイテムのリストに前記選択されたコンテンツアイテムを追加することをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ホストシステムは、前記クライアントデバイスから前記特定されたコンテンツアイテム削除する前に、前記クライアントデバイスによって削除されるように特定された前記コンテンツアイテムを同期することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを特定することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイス上に前記選択されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの容量を判定することと、
前記クライアントデバイスと前記ホストデバイスとの間で同期されるコンテンツアイテムのリストを特定することであって、前記リストはアクセス時刻に基づいてソートされる、ことと、
特定したコンテンツアイテムのトータルサイズが前記クライアントデバイス上に前記選択されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの前記容量以上となるまで、コンテンツアイテムにアクセスしてから最も長い時間が経過した、コンテンツアイテムの前記リストの先頭から、コンテンツアイテムを連続して特定することと
を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを特定することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイス上に前記選択されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの容量を判定することと、
前記クライアントデバイスと前記ホストシステムとの間で同期されるコンテンツアイテムのリストを特定することであって、コンテンツアイテムの前記リストはアイテムサイズに基づいてソートされる、ことと、
特定したコンテンツアイテムのトータルサイズが前記クライアントデバイス上に前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの前記容量以上となるように、多数のコンテンツアイテムを特定することと
を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを特定することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイス上に前記選択されたコンテンツアイテムを格納するために必要なスペースの容量を判定することと、
前記クライアントデバイスと前記ホストデバイスとの間で同期されるコンテンツアイテムのリストを特定することであって、コンテンツアイテムの前記リストはアイテムサイズとアクセス時刻との重み付けされた組み合わせを用いてソートされる、ことと、
特定したコンテンツアイテムのトータルサイズが前記クライアントデバイス上に前記選択されたコンテンツアイテムを格納するために必要なスペースの前記容量以上となるように、コンテンツアイテムの前記リストから、コンテンツアイテムを特定することと
を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを特定することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイス上に前記選択されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの容量を判定することと、
前記クライアントデバイスと前記ホストデバイスとの間で同期されるコンテンツアイテムのリストを特定することであって、コンテンツアイテムの前記リストは前記コンテンツアイテムへのアクセスを有する任意のクライアントデバイスによるアクセス時刻に基づいてソートされる、ことと、
特定したコンテンツアイテムのトータルサイズが前記クライアントデバイス上に前記選択されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの前記容量以上となるまで、コンテンツアイテムにアクセスしてから最も長い時間が経過した、コンテンツアイテムの前記リストの先頭から、コンテンツアイテムを連続して特定することと
を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを特定することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイス上に前記選択されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの容量を判定することと、
前記クライアントデバイスと前記ホストデバイスとの間で同期されるコンテンツアイテムのリストを特定することであって、コンテンツアイテムの前記リストは、アクセス時刻と、前記クライアントデバイス上に常駐していることが記された全てのファイルを除くコンテンツアイテムの前記リストとに基づいてソートされる、ことと、
特定したコンテンツアイテムのトータルサイズが前記クライアントデバイス上に前記選択されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの前記容量以上となるまで、前記ホストデバイス上のコンテンツアイテムにアクセスしてから最も長い時間が経過した、コンテンツアイテムの前記リストの先頭から、多数のコンテンツアイテムを連続して特定することと
を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記クライアントデバイスにおいて、特定されたコンテンツアイテムを表す、前記クライアントデバイス上のシャドウアイテムを作成することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記クライアントデバイスが前記ホストデバイスからの同期を要求しないコンテンツアイテムを示す、クライアントアプリケーションによって保持されるリストへ前記特定されたコンテンツアイテムについての識別子を追加することを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項24】
特定されたコンテンツアイテムを表す、クライアントデバイス上のシャドウアイテムを作成することは、さらに、
前記クライアントデバイスにおいて、前記特定されたコンテンツアイテムについての識別子を指定するメッセージを、前記ホストデバイスへ送信することであって、これにより、前記識別子は、前記ホストデバイスが前記クライアントデバイスと同期しない、前記ホストデバイスによって保持されるコンテンツアイテムのリストに追加される、ことを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項25】
コンテンツアイテムを同期するコンピュータで実行される方法であって、前記方法は、
ホストシステムにおいて、クライアントデバイスからコンテンツアイテムを同期する要求を受信することであって、前記ホストシステムは、前記クライアントデバイスから遠隔に位置する、ことと、
前記要求されたコンテンツアイテムがシャドウアイテムであるかを判定することであって、前記シャドウアイテムは、前記要求されたコンテンツアイテムのコンテンツデータが前記クライアントデバイス上には格納されず、前記クライアントデバイス上に格納される、前記要求されたコンテンツアイテムのメタデータから成る、ことに応じて、
前記ホストシステムにおいて、前記要求されたコンテンツアイテムが前記クライアントデバイスに割り当てられたストレージの残量を超えるかどうかを判定することによって、前記クライアントデバイスへ前記要求されたコンテンツアイテムをダウンロードすることが、コンテンツアイテムを格納するための前記クライアントデバイス上の所定のストレージ制限を超えるかどうかを算出することと、
前記要求されたコンテンツアイテムのサイズが前記クライアントデバイスに割り当てられたストレージの前記残量を超えると判定したことに応じて、
前記ホストシステムにおいて、選択された前記コンテンツアイテムが前記クライアントデバイス上の前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの容量以上となるように、前記クライアントデバイス上の1以上の放置されたコンテンツアイテムを選択することであって、サイズ、最新のアクセス時刻、アクセス頻度、及び場所から成るグループからの選択に起因した少なくとも1つのコンテンツアイテムに基づいて選択することと、
前記ホストシステムにおいて、前記選択されたコンテンツアイテムを前記クライアントデバイス上のシャドウアイテムのリストに追加することと、
前記選択されたコンテンツアイテムを削除し、前記要求されたコンテンツアイテムを格納するための前記クライアントデバイス上の前記ストレージの一部を確保すべく、前記選択されたコンテンツアイテムをシャドウアイテムに置き換えるために、前記クライアントデバイスへ指示を送信することと、
前記要求されたコンテンツアイテムを前記クライアントデバイスの前記ストレージの前記確保した一部にダウンロードすることと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
前記ホストシステムは、放置ファイルを選択するために使用される属性を保持することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ホストシステムは、各クライアントデバイスにおけるシャドウアイテムのリストを保持することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記選択されたコンテンツアイテムをシャドウアイテムに置き換える前記指示は、前記シャドウアイテムを含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。」


第5 引用例

1 引用例1に記載された事項及び引用発明1
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特表2013-524358号公報(平成25年6月17日公表。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(当審注:下線は説明のために当審で付与した。以下同様。)

A 「【0007】
データセンタにCASデバイスを配置し、各拠点(例えば、会社の各事業部)にNASデバイスを配置し、CASデバイスとNASデバイスをWAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークで接続し、CASデバイス上でデータの集中管理を行うシステムがある。CASデバイスに格納されるデータはアーカイブデータに限らず、NASデバイスに格納されているデータをポリシーに従って、例えば一定期間アクセスされなかったデータなどを、CASデバイスにマイグレーション(ファイル移行)することで、各拠点で必要となるNASデバイスの容量を低く抑えることが出来る。そして、マイグレーションされたデータはスタブ化される。これにより、NASクライアントは、データの格納位置が変更されたことを意識せずに、マイグレーション前と同様にデータアクセスが可能となる。スタブ化に関しては、例えば特許文献1に記載されているため、詳細な説明は割愛する。また、各拠点のNASデバイスはデータセンタにあるCASデバイスにのみアクセス出来ればよいため、前述のシステムでは各拠点間の通信ネットワークは不要であり、通信インフラのコストを低く抑えることが出来る。」

上記記載事項Aより,引用例1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「CASデバイスとNASデバイスを通信ネットワークで接続し,CASデバイス上でデータの集中管理を行うシステムであって,
一定期間アクセスされなかったデータを,CASデバイスにマイグレーション(ファイル移行)することで,NASデバイスの容量を低く抑えることが出来,マイグレーションされたデータはスタブ化される
システム。」

2 引用例2に記載された事項及び引用発明2
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,再公表特許第2011/148496号号公報(平成25年7月25日公表。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

B 「【0030】
図2は、本発明の一実施例に係るシステム全体のハードウェア構成を示す。
【0031】
Edge100とCore200がある。Edge100とは、ローカルの計算機システムを含んだ拠点であり、例えば、支店や営業所などユーザが実際に業務を行う拠点である。また、Core200とは、リモートの計算機システムを含んだ拠点であり、例えば、サーバやストレージ装置を一括管理する拠点やクラウドサービスを提供する拠点である。
【0032】
なお、図1に示す例では、Edge100は複数、Core200が単数であるが、Edge100が単数、及び/又は、Core200が複数でも良い。また、図1では、ファイルストレージ装置120に接続されている1つのクライアント/ホスト130が示されているが、実際には、ファイルストレージ装置120には複数のクライアント/ホスト130が接続されている(図示の通り、クライアント/ホスト130は、1つでも良い)。
【0033】
Edge100は、RAIDシステム110と、ファイルストレージ装置120と、クライアント/ホスト130と、を備える。ファイルストレージ装置120は、例えば、通信ネットワーク(例えばLAN)経由で、クライアント/ホスト130に接続されている。また、ファイルストレージ装置120は、例えば、通信ネットワーク(例えばSAN(Storage Area Network))経由で、RAIDシステム110に接続されている。

…(中略)…

【0043】
Core200は、RAIDシステム210と、アーカイブ装置220と、を備える。アーカイブ装置220に、RAIDシステム210が接続されている。」

C 「【0046】
図3は、本実施例に係るシステム全体のソフトウェア構成を示す。
【0047】
RAIDシステム110(210)は、複数のLU(Logical Unit)1100(2100)を有する。LU1100(2100)は、論理的な記憶デバイスである。LU1100(2100)は、1以上のDISK113(213)に基づく実体的なLUであっても良いし、Thin Provisioningに従う仮想的なLUであっても良い。LU1100(2100)は、複数のブロック(記憶領域)で構成されている。LU1100(2100)に、ファイルが記憶される。また、LU1100(2100)に、後述のファイルシステム情報の全部又は一部が、記憶されて良い。

…(中略)…

【0050】
再び図3を参照する。ファイルストレージ装置120のメモリ121(アーカイブ装置220のメモリ221)には、データムーバプログラム1210(2210)と、ファイルシステム1211(2211)と、カーネル/ドライバ1212(2212)と、が記憶されている。ファイルストレージ装置120のメモリ121には、更に、ファイル共有プログラム1213が記憶されている。以下、ファイルストレージ装置120内のデータムーバプログラムを、「ローカルムーバ」と言い、アーカイブストレージ装置220内のデータムーバプログラムを、「リモートムーバ」と言い、それらを特に区別しない場合に、「データムーバプログラム」と言う。ファイルサーバ装置120とアーカイブ装置220との間では、ローカルムーバ1210及びリモートムーバ2210を介して、ファイルのやり取りが行われる。
【0051】
ローカルムーバ1210は、RAIDシステム110のLU1100から、レプリケーション対象のファイルを読み出し、そのファイルをアーカイブ装置220に転送する。リモートムーバ2210は、レプリケーション対象のファイルをファイルストレージ装置120から受信し、そのファイルを、RAIDシステム210のLU2100に書き込む。
【0052】
また、ローカルムーバ1210は、LU1100内のレプリケーション済みファイル(厳密にはその実体)を、ある所定の条件が満たされた場合に、削除し、それにより、レプリケーション済みファイルの実質的なマイグレーションを実現する。その後、ローカルムーバ1210は、削除されたファイルのスタブ(メタデータ)に対してクライアント/ホスト130からリード要求を受けた場合、リモートムーバ2210を経由して、スタブにリンクしているファイルを取得し、取得したファイルをクライアント/ホスト130に送信する。なお、本実施例において、「スタブ」とは、ファイルの格納先情報(リンク先を表す情報)に関連付けられたオブジェクト(メタデータ)である。クライアント/ホスト130からは、ファイルであるかスタブであるかは分からない。」

D 「【0081】
図9は、同期処理の流れを示す。
【0082】
データ同期要フラグ3101が「ON」のファイル、又は、メタデータ同期要フラグ3102が「ON」のファイルについてのメタデータについて、同期処理が行われる。
【0083】
まず、STEP9で、ローカルムーバ1210が、同期処理要求を受ける。同期処理要求の発行元や、同期処理要求が発行されるタイミングは、特に限定されない。同期処理要求は、例えば、定期的に又は不定期的に(例えば1日に1回の頻度で)、発行されて良い。」

E 「【0088】
なお、本同期処理では、ファイル(及び/又はメタデータ)の同期が完了した後に、レプリケーション済み且つ同期済みのファイルをLU1100から削除して良いか否か(すなわち、そのファイルをレプリケーション対象からマイグレーション対象に切り替えて良いか否か)の判断が行われる。
【0089】
具体的には、例えば、ローカルムーバ1210は、LU1100の空き容量をチェックする。LU1100の空き容量が所定の閾値未満の場合、LU1100の空き容量を増やすべく、レプリケーション済み且つ同期済みのファイルの削除(マイグレーション)が許可される。すなわち、STEP14で、ローカルムーバ1210が、レプリケーション済み且つ同期済みのファイル(レプリケーションフラグ3103が「ON」であり且つデータ/メタデータ同期要フラグ3101/3102が「OFF」となっているファイル)に対応するスタブ化フラグ3100を「ON」にし、そのファイルに対応するレプリケーションフラグ3103を「OFF」にする。
【0090】
なお、ファイルの削除(マイグレーション)が許可される条件は、ファイルが格納される記憶領域(LU)の空き容量が所定の閾値未満という条件に代えて又は加えて、別の条件が採用されて良い。例えば、削除が許可されるファイルは、例えば、そのファイルへの最終アクセス時刻から一定時間が経過したファイルで良い。」

F 「【0096】
図11は、ファイルのリード処理の流れを示す。
【0097】
まず、STEP17で、ファイルシステム1211(受付プログラム12110)が、クライアント/ホスト130から、ファイル共有プログラム1213を通じて、ファイルのリード要求を受ける。
【0098】
ファイルシステム1211(受付プログラム12110)は、そのファイルがリコール済みか否かを判断する。リコール済か否かは、例えば、そのファイルについてのデータブロックアドレス(図4参照)が表す値が0(ゼロ)か否かで判断できる。アドレスが表す値が0ということは、ファイルがLU1100に格納されていないということである。
【0099】
リコール済みであれば、STEP18で、ファイルシステム1211(受付プログラム12110)は、リード対象のファイルをLU1100から読み出し、STEP20で、そのファイルを、ファイル共有プログラム1213を通じて、クライアント/ホスト130に送信する。
【0100】
一方、リコール済みでなければ、ファイルシステム1210(受付プログラム12110)は、STEP19で、リコール、すなわち、アーカイブ装置220からリード対象のファイルを取得する(例えば、リード対象ファイルのリード要求をアーカイブ装置220に送信することで、リード対象ファイルを取得する)。そして、ファイルシステム1210は、そのファイルを、LU1100に書き込む。STEP20で、ファイルシステム1210(受付プログラム12110)は、そのファイルを、クライアント/ホスト130に送信する。」

上記記載事項B乃至Fより,引用例2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

「ローカルの計算機システムを含んだ拠点であるEdge100と,リモートの計算機システムを含んだ拠点であるCore200とからなるシステムであって,
前記Edge100は,RAIDシステム110と,ファイルストレージ装置120と,クライアント/ホスト130と,を備え,
前記Core200は,RAIDシステム210と,アーカイブ装置220と,を備え,アーカイブ装置220に,RAIDシステム210が接続され,
前記ファイルストレージ装置120は,通信ネットワーク経由で,RAIDシステム110に接続され,
前記RAIDシステム110(210)は,論理的な記憶デバイスである複数のLU(Logical Unit)1100(2100)を有し,
前記ファイルストレージ装置120のメモリ121(アーカイブ装置220のメモリ221)には,データムーバプログラム1210(2210)と,ファイルシステム1211(2211)と,カーネル/ドライバ1212(2212)と,が記憶され,
前記ファイルサーバ装置120と前記アーカイブ装置220との間では,前記ファイルストレージ装置120内のデータムーバプログラムであるローカルムーバと,前記アーカイブストレージ装置220内のデータムーバプログラムであるリモートムーバとを介して,ファイルのやり取りが行われ,
前記ローカルムーバ1210は,前記RAIDシステム110の前記LU1100から,レプリケーション対象のファイルを読み出し,そのファイルを前記アーカイブ装置220に転送し,前記リモートムーバ2210は,レプリケーション対象のファイルを前記ファイルストレージ装置120から受信し,そのファイルを,前記RAIDシステム210の前記LU2100に書き込み,
前記ローカルムーバ1210は,前記LU1100内のレプリケーション済みファイルの実体を,ある所定の条件が満たされた場合に,削除し,それにより,レプリケーション済みファイルの実質的なマイグレーションを実現し,その後,前記ローカルムーバ1210は,削除されたファイルのスタブ(メタデータ)に対して前記クライアント/ホスト130からリード要求を受けた場合,前記リモートムーバ2210を経由して,スタブにリンクしているファイルを取得し,取得したファイルを前記クライアント/ホスト130に送信し,ここで,スタブとは,ファイルの格納先情報(リンク先を表す情報)に関連付けられたオブジェクト(メタデータ)であり,
前記ローカルムーバ1210が,同期処理要求を受け,本同期処理では,ファイル(及び/又はメタデータ)の同期が完了した後に,レプリケーション済み且つ同期済みのファイルを前記LU1100から削除して良いか否かの判断が行われ,前記ローカルムーバ1210は,前記LU1100の空き容量をチェックし,前記LU1100の空き容量が所定の閾値未満の場合,前記LU1100の空き容量を増やすべく,レプリケーション済み且つ同期済みのファイルの削除が許可され,前記ファイルの削除が許可される条件は,ファイルが格納される記憶領域(LU)の空き容量が所定の閾値未満という条件に代えて又は加えてそのファイルへの最終アクセス時刻から一定時間が経過したことであり,
前記ファイルシステム1211(受付プログラム12110)が,前記クライアント/ホスト130から,ファイルのリード要求を受け,そのファイルがリコール済みか否かを判断し,リコール済みでなければ,前記ファイルシステム1210(受付プログラム12110)は,前記アーカイブ装置220からリード対象のファイルを取得する
システム。」

3 引用例3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開2005-228242号公報(平成17年8月25日公開。以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

G 「【0027】
本発明の移動体通信システムの第一の実施形態について、図1を参照して説明する。
図1は、移動体通信システムの構成を示すブロック図である。
【0028】
図1に示すように、移動体通信システム10は、移動端末機器100と、移動体交換システム200と、を含んでおり、ネットワーク300のサービスエリア内にて、無線基地局400を介して移動体通信サービスを提供する。」

H 「【0030】
ここで、上記移動端末機器100は、公知の構成であって、制御部110,入力操作部120,記憶装置130,表示部140,マイク150,スピーカ160およびカメラ170を設けてあり、上記制御部110は、移動体制御ソフトウェア111により制御されて、または入力操作部120からの入力操作に基づいて、所定の各種動作を行なうようになっている。」

I 「【0041】
まず、コンテンツデータ格納作業について、図2のフローチャートを参照して説明する。
図2において、ステップA1にて、移動端末機器100が、操作入力部120からの入力操作によって例えば既にダウンロードしてあるコンテンツデータの格納が指示されると、ステップA2にて、移動端末機器100の制御部110は、その記憶装置130の実メモリの空き容量をチェックする。
【0042】
次に、ステップA3にて、上記制御部110は、記憶装置130の実メモリの空き容量を、格納すべき当該コンテンツデータのデータ容量と比較して、空き容量がデータ容量以上である場合には、ステップA4にて、そのまま当該コンテンツデータを、記憶装置130の仮想フォルダ131内に格納すると共に、記憶装置130の実メモリに保存する。
続いて、ステップA5にて、上記制御部110は、当該コンテンツデータを、ネットワーク300を介して移動体交換システム200に転送する。
これを受けて、ステップA6にて、移動体交換システム200の制御部210は、転送されてきたコンテンツデータを、その記憶装置220の当該移動端末機器100の加入者が前もって登録してある仮想記憶データ格納エリア221に格納する。
【0043】
これに対して、上記ステップA3にて、空き容量がデータ容量未満と足りない場合には、上記制御部110は、ステップA7にて、記憶装置130に格納されているコンテンツデータのうち、最もアクセス頻度の低いコンテンツデータを実メモリから削除し、ステップA2に戻る。
このとき、削除したコンテンツデータと同じコンテンツデータが、移動体交換システム200の記憶装置220の仮想記憶データ格納エリア221にも格納されているが、この仮想記憶データ格納エリア221に格納されている当該コンテンツデータは削除せずに残しておく。
そして、制御部110は、記憶装置130の実メモリに、格納すべきコンテンツデータを保存するための空き領域が足りないときには、空き領域が確保できるまで、上記ステップA7におけるコンテンツデータの削除作業を繰返し行なう。
【0044】
このようにして、コンテンツデータを移動端末機器100の記憶装置130に格納する際、記憶装置130の実メモリに当該コンテンツデータを格納するための空き容量が足りないときには、最もアクセス頻度の低いコンテンツデータを削除して、空き領域を確保した後、格納すべきコンテンツデータが記憶装置130の実メモリに確実に保存されることになる。
したがって、実質的に移動端末機器100の記憶装置130の記憶容量を超えて、コンテンツデータを保存することができると共に、実メモリの空き容量確保のために削除されたコンテンツデータについては、記憶装置130への格納の際に、同時にネットワーク300を介して移動体交換システム200の記憶装置220の仮想記憶データ格納エリア221にも格納されているので、仮想フォルダ131からアクセス可能である。」

J 「【0050】
次に、コンテンツデータの読出作業について、図4のフローチャートを参照して説明する。
図4において、ステップC1にて、移動端末機器100が、操作入力部120からの入力操作によって例えば再生すべきコンテンツデータの読出が指示されると、ステップC2にて、移動端末機器100の制御部110は、その記憶装置130の実メモリをチェックして、当該コンテンツデータを検索する。
次に、ステップC3にて、上記制御部110は、記憶装置130の実メモリに当該コンテンツデータが存在する場合には、ステップC4にて、そのまま当該コンテンツデータを読出処理する。
【0051】
また、ステップC3で当該コンテンツデータが存在しない場合には、上記制御部110は、ステップC5にて、その記憶装置130の実メモリの空き容量をチェックする。
続いて、ステップC6にて、上記制御部110は、記憶装置130の実メモリの空き容量を、読出すべき当該コンテンツデータのデータ容量と比較して、空き容量がデータ容量以上である場合には、ステップC7にて、ネットワーク300を介して移動体交換システム200に当該コンテンツデータの転送を指示する。
【0052】
また、ステップC6にて、空き容量がデータ容量未満と足りない場合には、上記制御部110は、ステップC8にて、記憶装置130に格納されているコンテンツデータのうち、最もアクセス頻度の低いコンテンツデータを実メモリから削除し、ステップC6に戻る。
このようにして、制御部110は、記憶装置130の実メモリに、格納すべきコンテンツデータを保存するための空き領域が足りないときには、空き領域が確保できるまで、上記ステップC8におけるコンテンツデータの削除作業を繰返し行なう。」

上記記載事項G乃至Jから,引用例3には次の技術的事項(以下,「引用例3記載事項」という。)が記載されているといえる。

「移動体通信システム10は,移動端末機器100と,移動体交換システム200と,を含み,
上記移動端末機器100は,制御部110,入力操作部120,記憶装置130を設けてあり,
コンテンツデータ格納作業においては,
移動端末機器100が,操作入力部120からの入力操作によって既にダウンロードしてあるコンテンツデータの格納が指示されると,移動端末機器100の制御部110は,その記憶装置130の実メモリの空き容量をチェックし,
上記制御部110は,記憶装置130の実メモリの空き容量を,格納すべき当該コンテンツデータのデータ容量と比較して,空き容量がデータ容量以上である場合には,そのまま当該コンテンツデータを,記憶装置130の仮想フォルダ131内に格納すると共に,記憶装置130の実メモリに保存し,上記制御部110は,当該コンテンツデータを,ネットワーク300を介して移動体交換システム200に転送し,
移動体交換システム200の制御部210は,転送されてきたコンテンツデータを,その記憶装置220の当該移動端末機器100の加入者が前もって登録してある仮想記憶データ格納エリア221に格納し,
空き容量がデータ容量未満と足りない場合には,上記制御部110は,記憶装置130に格納されているコンテンツデータのうち,最もアクセス頻度の低いコンテンツデータを実メモリから削除し,
制御部110は,記憶装置130の実メモリに,格納すべきコンテンツデータを保存するための空き領域が足りないときには,空き領域が確保できるまで,コンテンツデータの削除作業を繰返し行ない,
コンテンツデータを移動端末機器100の記憶装置130に格納する際,記憶装置130の実メモリに当該コンテンツデータを格納するための空き容量が足りないときには,最もアクセス頻度の低いコンテンツデータを削除して,空き領域を確保した後,格納すべきコンテンツデータが記憶装置130の実メモリに確実に保存され,
コンテンツデータの読出作業においては,
移動端末機器100が,操作入力部120からの入力操作によって再生すべきコンテンツデータの読出が指示されると,移動端末機器100の制御部110は,その記憶装置130の実メモリをチェックして,当該コンテンツデータを検索し,
上記制御部110は,記憶装置130の実メモリに当該コンテンツデータが存在する場合には,そのまま当該コンテンツデータを読出処理し,
当該コンテンツデータが存在しない場合には,上記制御部110は,その記憶装置130の実メモリの空き容量をチェックし,
上記制御部110は,記憶装置130の実メモリの空き容量を,読出すべき当該コンテンツデータのデータ容量と比較して,空き容量がデータ容量以上である場合には,ネットワーク300を介して移動体交換システム200に当該コンテンツデータの転送を指示し,
空き容量がデータ容量未満と足りない場合には,上記制御部110は,記憶装置130に格納されているコンテンツデータのうち,最もアクセス頻度の低いコンテンツデータを実メモリから削除し,
制御部110は,記憶装置130の実メモリに,格納すべきコンテンツデータを保存するための空き領域が足りないときには,空き領域が確保できるまで,コンテンツデータの削除作業を繰返し行なうこと。」

4 引用例4に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開2002-140213号公報(平成14年5月17日公開。以下,これを「引用例4」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

K 「【0038】図7は図3に示すファイル管理処理のS6での退避/復元調整タスクの手順を示すフローチャートである。
【0039】退避/復元調整タスクでは、まず、HDD118(内部ハードディスクドライブ)の空き容量が取得され(S61)、空き容量が、ファイル管理処理でのS1のパラメータ設定により設定された退避しきい値(図4)以下であるか否かまた復元しきい値以上であるか否かが判定される(S62、S68)。
【0040】HDD118の空き容量が退避しきい値(たとえば30%)以下であれば(S62にてYES)、ファイル退避処理が行われている旨のメッセージがLCD116上に表示され(S63)、ファイル退避処理が行われ(S64、後に図8にて詳細を示す)、このファイル退避処理が正常に終了しているか否かが判定される(S65)。

…(中略)…

【0045】図8は退避/復元調整タスクのS64でのファイル退避処理の手順を示すフローチャートであり、図9は退避/復元調整タスクのS70でのファイル復元処理の手順を示すフローチャートである。
【0046】ファイル退避処理では、図8に示すように、ファイル管理処理でのS1のパラメータ設定にて設定された退避条件パラメータ(図4)が取得され(S6401)、退避条件が、”日付順”に設定されているか否かまた”ファイルサイズ順”に設定されているか否かが判定される(S6402、S6405)。
【0047】退避条件が日付順に設定されていれば(S6402にてYES)、HDD118に記憶されているファイル(PC120、PC130のファイル)のリストが日付順に取得され(S6403)、日付のもっとも古いファイル(また日付のもっとも新しいファイル)が選択され(S6404)、S6408へと処理が進められる。
【0048】退避条件がファイルサイズ順に設定されていれば(S6402にてNOかつS6405にてYES)、HDD118に記憶されているファイルのリストがファイルサイズ順に取得され(S6406)、サイズのもっとも小さい(またサイズのもっとも大きいファイル)が選択され(S6407)、S6408へと処理が進められる。
【0049】S6408ではS6404またはS6407にて選択されたファイルが仮想ディスクサーバ210に転送され、転送されたファイルに関してのレコードが付加されるよう、リモートファイルリストが更新され(S6409)、転送済みのファイルがHDD118から削除され(S6410)、本ファイル退避処理から退避/復元調整タスクに処理がリターンされる。
【0050】これらのファイル退避処理によると、退避条件に応じてHDD118上のファイルが特定され、HDD118から仮想ディスクサーバ210にファイルが転送され、リモートファイルリストが適切に更新されることとなる。」


第6 対比・判断

1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と,本願発明1と最も類似すると認められる引用発明2とを対比する。

(あ)引用発明2の「ローカルの計算機システムを含んだ拠点であるEdge100」,「リモートの計算機システムを含んだ拠点であるCore200」,及び「ファイル」,は,本願発明1の「クライアントデバイス」,「クライアントデバイスからは遠隔の別個のホストデバイス」,及び「コンテンツアイテム」に相当する。

(い)引用発明2は,「ローカルの計算機システムを含んだ拠点であるEdge100と,リモートの計算機システムを含んだ拠点であるCore200とからなるシステムであって」,「前記ローカルムーバ1210が,同期処理要求を受け,本同期処理で」,「ファイル(及び/又はメタデータ)の同期」が行われるものであるから,本願発明1と“コンテンツアイテムを同期するコンピュータで実行される方法”である点で一致するといえる。

(う)引用発明2の「ファイルサーバ装置120」と「アーカイブ装置220」との間にある,「前記ファイルストレージ装置120内のデータムーバプログラムであるローカルムーバ」は,「RAIDシステム110」の「LU1100から,レプリケーション対象のファイルを読み出し,そのファイルを前記アーカイブ装置220に転送」するが,上記(あ)での認定を踏まえると,当該「ファイル」の「読み出し」においては,所定のアクセス要求がなされることは自明であるから,引用発明2と本願発明1とは,“クライアントデバイスにおいて,コンテンツアイテムにアクセスする要求を受信する”点で一致する。

(え)引用発明2の「スタブ」は,「ファイルの格納先情報(リンク先を表す情報)に関連付けられたオブジェクト(メタデータ)」であることから,本願発明1の「シャドウアイテム」に相当するといえる。また,引用発明2の「ローカルムーバ1210」は,「RAIDシステム110の前記LU1100から,レプリケーション対象のファイルを読み出し,そのファイルを前記アーカイブ装置220に転送し,前記リモートムーバ2210は,レプリケーション対象のファイルを前記ファイルストレージ装置120から受信し,そのファイルを,前記RAIDシステム210の前記LU2100に書き込」み,「ファイル」の「レプリケーション」を行い,さらに,「LU1100内のレプリケーション済みファイルの実体を,ある所定の条件が満たされた場合に,削除し,それにより,レプリケーション済みファイルの実質的なマイグレーションを実現」している。
そして,引用発明2は,「削除されたファイルのスタブ(メタデータ)に対して前記クライアント/ホスト130からリード要求を受けた場合,前記リモートムーバ2210を経由して,スタブにリンクしているファイルを取得」することから,「前記クライアントデバイスにおいて,前記要求されたコンテンツアイテムがシャドウアイテムであるかを判定」することを実質的に行っているといえ,上記(あ)の「クライアントデバイス」及び「ホストデバイス」に対する認定及び上記「シャドウアイテム」の認定から,「前記シャドウアイテムが前記クライアントデバイスからは遠隔の別個のホストデバイス上に格納されたコンテンツアイテムを表し」ていて,引用発明2では,「LU1100内のレプリケーション済みファイルの実体を,ある所定の条件が満たされた場合に,削除」することから,「コンテンツアイテムのコンテンツデータが前記クライアントデバイス上に格納され」ていないといえることから,以上総合して,引用発明2と本願発明1とは,“前記クライアントデバイスにおいて,前記要求されたコンテンツアイテムがシャドウアイテムであるかを判定することであって,前記シャドウアイテムが前記クライアントデバイスからは遠隔の別個のホストデバイス上に格納されたコンテンツアイテムを表し,前記シャドウアイテムは,前記コンテンツアイテムのコンテンツデータが前記クライアントデバイス上に格納されず,前記クライアントデバイス上に格納される,該コンテンツアイテムのメタデータから成る”点で一致するといえる。

(お)上記(あ)乃至(え)の検討から,引用発明2と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
コンテンツアイテムを同期するコンピュータで実行される方法であって,前記方法は,
クライアントデバイスにおいて,コンテンツアイテムにアクセスする要求を受信することと,
前記クライアントデバイスにおいて,前記要求されたコンテンツアイテムがシャドウアイテムであるかを判定することであって,前記シャドウアイテムが前記クライアントデバイスからは遠隔の別個のホストデバイス上に格納されたコンテンツアイテムを表し,前記シャドウアイテムは,前記コンテンツアイテムのコンテンツデータが前記クライアントデバイス上に格納されず,前記クライアントデバイス上に格納される,該コンテンツアイテムのメタデータから成る,ことと,
を含む方法。

〈相違点1〉
本願発明1が,「前記要求されたコンテンツアイテムがシャドウアイテムであると判定されることに応じて、クライアントデバイスにおいて、前記ホストデバイスから該ホストデバイス上に格納された前記要求されたコンテンツアイテムのサイズを要求すること」を含むのに対し,引用発明2は,そのような判定及びコンテンツアイテムのサイズを要求することを特定していない点。

〈相違点2〉
本願発明1が,「前記クライアントデバイスにおいて,前記要求されたコンテンツアイテムの前記サイズを受信すること」と,「前記要求されたコンテンツアイテムの前記サイズが前記クライアントデバイス上に割り当てされたストレージの残量を超えるかを判定すること」とを含むのに対し,引用発明2は,「前記ローカルムーバ1210が,同期処理要求を受け,本同期処理では,ファイル(及び/又はメタデータ)の同期が完了した後に,レプリケーション済み且つ同期済みのファイルを前記LU1100から削除して良いか否かの判断が行われ,前記ローカルムーバ1210は,前記LU1100の空き容量をチェックし,前記LU1100の空き容量が所定の閾値未満の場合,前記LU1100の空き容量を増やすべく,レプリケーション済み且つ同期済みのファイルの削除が許可され,前記ファイルの削除が許可される条件は,ファイルが格納される記憶領域(LU)の空き容量が所定の閾値未満という条件に代えて又は加えてそのファイルへの最終アクセス時刻から一定時間が経過したこと」である点。

〈相違点3〉
本願発明1が,「前記要求されたコンテンツアイテムの前記要求したサイズが前記クライアントデバイスに割り当てられたストレージの前記残量を超えると判定したことに応じて、
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを選択することであって、選択されたコンテンツアイテムのそれぞれのコピーが前記ホストデバイスに格納される、ことと、
前記クライアントデバイスから各選択されたコンテンツアイテムを削除し、前記要求されたコンテンツアイテムを格納するための前記クライアントデバイス上の前記ストレージの一部を確保するために、各選択されたコンテンツアイテムを、前記クライアントデバイス上の前記選択されたコンテンツアイテムを表すシャドウアイテムと置き換えることと、
前記ストレージの前記確保した一部を用いて、前記要求されたコンテンツアイテムを表す前記要求されたシャドウアイテムを、対応する前記要求されたコンテンツアイテムと置き換えることと」を含むのに対し,引用発明2は,「レプリケーション対象のファイルを読み出し,そのファイルを前記アーカイブ装置220に転送し,前記リモートムーバ2210は,レプリケーション対象のファイルを前記ファイルストレージ装置120から受信し,そのファイルを,前記RAIDシステム210の前記LU2100に書き込」んだり,「前記LU1100内のレプリケーション済みファイルの実体を,ある所定の条件が満たされた場合に,削除し,それにより,レプリケーション済みファイルの実質的なマイグレーションを実現」したりするものの,「コンテンツアイテム」を,「シャドウアイテムと置き換える」ことや,「シャドウアイテム」を,「コンテンツアイテムと置き換える」ことが特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先に相違点3を検討する。
上記引用例3には,上記第5の3で認定した引用例3記載事項が記載されており,そのうち,「移動端末機器100が,操作入力部120からの入力操作によって既にダウンロードしてあるコンテンツデータの格納が指示されると,移動端末機器100の制御部110は,その記憶装置130の実メモリの空き容量をチェックし」た上,「格納すべきコンテンツデータを保存するための(記憶装置130の実メモリの)空き領域が足りないときには,空き領域が確保できるまで,コンテンツデータの削除作業を繰返し行な」う点は,本願発明1と“前記要求されたコンテンツアイテムの前記要求したサイズが前記クライアントデバイスに割り当てられたストレージの前記残量を超えると判定したことに応じて,前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを選択し,前記クライアントデバイスから各選択されたコンテンツアイテムを削除”する点で共通するといえるものの,「各選択されたコンテンツアイテムを、前記クライアントデバイス上の前記選択されたコンテンツアイテムを表すシャドウアイテムと置き換え」たり,「前記ストレージの前記確保した一部を用いて、前記要求されたコンテンツアイテムを表す前記要求されたシャドウアイテムを、対応する前記要求されたコンテンツアイテムと置き換え」たりすることまでは開示されていない。
さらに,上記相違点3に係る構成は,その他引用発明1や,引用例4にも記載されておらず,また本願第一国出願前に周知であったともいえないことから,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明2及び引用発明1並びに引用例3及び4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明14及び25について
本願発明14と本願発明25とは,本願発明1の上記相違点3に係る構成と共通する,「前記選択されたコンテンツアイテムの前記サイズが前記クライアントデバイスに割り当てられたストレージの前記残量を超えると判定したことに応じて、
前記クライアントデバイスから削除する少なくとも1つのコンテンツアイテムを特定することであって、少なくとも1つの特定されるコンテンツアイテムのコピーが前記ホストデバイスに格納される、ことと、
前記特定されたコンテンツアイテムを削除し、前記要求されたコンテンツアイテムを格納するための前記クライアントデバイス上の前記ストレージの一部を確保するために、前記特定されたコンテンツアイテムを、前記クライアントデバイス上の前記特定されたコンテンツアイテムを表すシャドウアイテムと置き換えること」,並びに「前記要求されたコンテンツアイテムのサイズが前記クライアントデバイスに割り当てられたストレージの前記残量を超えると判定したことに応じて、
前記ホストシステムにおいて、選択された前記コンテンツアイテムが前記クライアントデバイス上の前記要求されたコンテンツアイテムを格納するために必要なストレージスペースの容量以上となるように、前記クライアントデバイス上の1以上の放置されたコンテンツアイテムを選択することであって、サイズ、最新のアクセス時刻、アクセス頻度、及び場所から成るグループからの選択に起因した少なくとも1つのコンテンツアイテムに基づいて選択すること」及び「前記選択されたコンテンツアイテムを削除し、前記要求されたコンテンツアイテムを格納するための前記クライアントデバイス上の前記ストレージの一部を確保すべく、前記選択されたコンテンツアイテムをシャドウアイテムに置き換えるために、前記クライアントデバイスへ指示を送信することと、
前記要求されたコンテンツアイテムを前記クライアントデバイスの前記ストレージの前記確保した一部にダウンロードすること」との特定事項を有するものであり,上記1(2)で示したとおり,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明2及び引用発明1並びに引用例3及び4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明2乃至13,15乃至24及び26乃至28について
本願発明2乃至13は,本願発明1をさらに減縮したものであり,本願発明15乃至24は,本願発明14をさらに減縮したものであり,本願発明26乃至28は,本願発明25をさらに減縮したものであるから,上記1及び2で示した,本願発明1,14及び25と同様の理由により,当業者であっても、引用発明2及び引用発明1並びに引用例3及び4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

<特許法29条2項について>
審判請求時の補正により,本願発明1は「前記クライアントデバイスから各選択されたコンテンツアイテムを削除し」という事項を有するものとなったが,上記第6の1(1)で示した,相違点3に係る構成を有したものであり,上記第6の1(2)で示したとおり,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1乃至4に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-12 
出願番号 特願2017-534702(P2017-534702)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 須田 勝巳
山崎 慎一
発明の名称 共有コンテンツアイテムのストレージ制約付きの同期  
代理人 木村 秀二  
代理人 下山 治  
代理人 楠 康正  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  

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