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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B23K
審判 全部申し立て 2項進歩性  B23K
管理番号 1353132
異議申立番号 異議2017-700592  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-13 
確定日 2019-05-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6043773号発明「ダイレクトダイオードレーザ光による板金の加工方法及びこれを実行するダイレクトダイオードレーザ加工装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6043773号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、6、8、10〕、5、7、9、11、〔12、13〕、14について訂正することを認める。 特許第6043773号の請求項1-9、11、13、14に係る特許を取り消す。 特許第6043773号の請求項10及び12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 1.手続の経緯
特許第6043773号の請求項1-14に係る特許についての出願は、平成26年10月15日に出願され、平成28年11月18日にその特許権の設定登録がされ、平成28年12月14日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた。
平成29年 6月13日 :特許異議申立人藤本信男(以下、「申立人」という。)による請求項1-14に係る特許に対する特許異議の申立て
平成29年10月18日付け:取消理由通知書
平成29年12月18日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
平成30年 3月13日付け:訂正拒絶理由通知書
平成30年 4月16日 :特許権者による意見書の提出
平成30年 5月23日 :申立人よる意見書の提出
平成30年 8月15日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成30年10月18日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
平成30年11月 9日 :申立人よる意見書の提出

なお、平成30年10月18日に訂正請求がされたので、平成29年12月18日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「厚さ2mm以上の板金切断する場合には、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として、-2.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの平行レーザ光を前記板金に対して照射し、」とあるのを、「厚さ2mm以上のアルミ板金切断する場合には、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として、-1.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度3m/分で加工し、」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2-4、6、8も同様に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「厚さ2mmより薄い板金を切断する場合には、焦点距離fとしてf≦120mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.0mm<Pf≦2.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの平行レーザ光を前記板金に照射する」とあるのを、「厚さ2mmより薄いアルミ板金を切断する場合には、焦点距離fとしてf≦120mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.5mm<Pf≦1.5mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に照射して、加工速度14m/分で加工する」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2-4、6、8も同様に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「前記DDLモジュールから出射されるレーザ光のBPP(ビームパラメータ積(Beam parameter product))は、7mm*mrad以上20mm*mrad以下である請求項1乃至4の何れかに記載の板金加工方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「厚さ2mm以上のアルミ板金切断する場合には、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として、-2.0mm< Pf ≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射し、 厚さ2mmより薄いアルミ板金を切断する場合には、焦点距離fとしてf≦120mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.0mm< Pf ≦2.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に照射する板金加工方法において、
前記DDLモジュールから出射されるレーザ光のBPP(ビームパラメータ積(Beam parameter product))は、7mm*mrad以上20mm*mrad以下(ただし、8mm*mrad、14mm*mrad、18mm*mradを除く。)である板金加工方法。」に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至5の何れかに記載の板金加工方法」とあるのを、「請求項1乃至4の何れかに記載の板金加工方法」に訂正する。
請求項6を引用する請求項8も同様に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「厚さが1mmの薄い板金を切断する方法であって、焦点距離fとしてf≦120mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.0mm< Pf ≦2.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからのレーザ光を前記板金に照射し」とあるのを、「厚さが1mmの薄いアルミ板金を切断する方法であって、焦点距離fとしてf≦120mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.0mm< Pf ≦2.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に照射し」に訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1乃至7の何れかに記載の板金加工方法」とあるのを、「請求項1乃至4又は6の何れかに記載の板金加工方法」に訂正する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-2.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからのレーザ光を前記板金に対して照射し」とあるのを、「焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-1.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射し」に訂正する。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11に「厚さ2mm以上の板金切断する場合には、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-2.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの平行レーザ光を前記板金に対して照射する」とあるのを、「厚さ2mm以上のアルミ板金切断する場合には、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-1.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度3m/分で加工する」に訂正する。

コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項12を削除する。

サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項13に「加工速度2.5?3(m/分)で加工する請求項12の板金切断方法。」とあるのを、独立形式に改め、「厚さ3mmのアルミ板金を切断する方法であって、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-1.0mm< Pf ≦-0.5mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度2.5?3(m/分)で加工する板金切断方法。」に訂正する。

シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項14に「板金の上面を基準として0.0mm<Pf≦約0.5mmに配置した集光レンズを用いて、」とあるのを、「板金の上面を基準として0.0mm<Pf≦約0.5mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度3?6m/分で加工し、」に訂正する。

ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14に「DDLモジュールからのレーザ光を前記板金に対して照射する板金切断方法。」とあるのを、「DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度2.5?3m/分で加工する板金切断方法。」に訂正する。

セ 一群の請求項
訂正前の請求項1-8及び10は、請求項2-6、8及び10が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、請求項10が、訂正の請求の対象である請求項7の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1-8及び10について請求されている。
また、訂正後の請求項5及び7に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
訂正前の請求項12及び13は、請求項13が、訂正の請求の対象である請求項12の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項12及び13について請求されている。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「板金」を「アルミ板金」に限定し、焦点位置Pfを「-2.0mm<Pf≦約0.0mm」から「-1.0mm<Pf≦約0.0mm」に限定し、「平行レーザ光」を「出力2kWの平行レーザ光」に限定し、加工速度を「3m/分」に限定するものである。
そして、これらは、段落【0066】、【0081】?【0092】、【図8】及び【図9】の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、請求項1を引用する請求項2-4、6、8も同様である。

イ 訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載されていた「板金」を「アルミ板金」に限定し、焦点位置Pfを「0.0mm<Pf≦2.0mm」から「0.5mm<Pf≦1.5mm」に限定し、「平行レーザ光」を「出力2kWの平行レーザ光」に限定し、加工速度を「14m/分」に限定するものである。
そして、これらは、段落【0066】、【0073】?【0080】、及び【図7】の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、請求項1を引用する請求項2-4、6、8も同様である。

ウ 訂正事項3
訂正事項3に係る請求項5についての訂正は、特許請求の範囲の請求項5について請求項1との引用関係を解消するものであるから、引用関係の解消を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、訂正事項3は、段落【0066】の記載に基づいて「平行レーザ光」を「出力2kWの平行レーザ光」に限定し、「BPP(ビームパラメータ積Beam parameter product))」を「(ただし、8mm*mrad、14mm*mrad、18mm*mradを除く。)」と限定するものである。
したがって、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1?5を引用していたものを、請求項5を引用しないものとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、請求項6を引用する請求項8も同様である。

オ 訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項7に記載されていた「板金」を「アルミ板金」に限定し、「平行レーザ光」を「出力2kWの平行レーザ光」に限定するものである。
そして、これらは、段落【0066】、【0073】?【0080】、及び【図7】の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

カ 訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1?7を引用していたものを、請求項5及び7を引用しないものとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

キ 訂正事項7
訂正事項7は、請求項10を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ク 訂正事項8
訂正事項8は、訂正前の請求項9に記載されていた焦点位置Pfを「-2.0mm<Pf≦約0.0mm」から「-1.0mm<Pf≦約0.0mm」に限定し、「レーザ光」を「出力2kWの平行レーザ光」に限定するものである。
そして、これらは、段落【0052】、【0066】、【0081】?【0087】及び【図8】の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ケ 訂正事項9
訂正事項9は、訂正前の請求項11に記載されていた「板金」を「アルミ板金」に限定し、焦点位置Pfを「-2.0mm<Pf≦約0.0mm」から「-1.0mm<Pf≦約0.0mm」に限定し、「平行レーザ光」を「出力2kWの平行レーザ光」に限定し、加工速度を「3m/分」に限定するものである。
そして、これらは、段落【0066】、【0081】?【0092】、【図8】及び【図9】の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

コ 訂正事項10
訂正事項10は、請求項12を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

サ 訂正事項11
訂正事項11に係る請求項13についての訂正は、特許請求の範囲の請求項13について請求項12との引用関係を解消するものであるから、引用関係の解消を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、訂正事項11は、段落【0052】、【0066】の記載に基づいて「レーザ光」を「出力2kWの平行レーザ光」に限定するものである。
したがって、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

シ 訂正事項12
訂正事項12は、訂正前の請求項14に記載されていた「レーザ光」を「出力2kWの平行レーザ光」に限定し、加工速度を「3?6m/分」に限定するものである。
そして、これらは、段落【0052】、【0066】、【0081】?【0087】及び【図8】の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ス 訂正事項13
訂正事項13は、訂正前の請求項14に記載されていた「レーザ光」を「出力2kWの平行レーザ光」に限定し、加工速度を「2.5?3m/分」に限定するものである。
そして、これらは、段落【0052】、【0066】、【0088】?【0092】及び【図9】の記載に基づくものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、6、8、10〕、5、7、9、11、〔12、13〕、14について訂正することを認める。

3 取消理由の概要
請求項1-14に係る特許に対して、当審が平成30年8月15日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-8号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-8号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-8号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-11号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-13号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-13号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項9に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-13号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項11に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項12に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項13に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項14に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1-14に係る特許は、取り消されるべきものである。

4 当審の判断
(1)訂正請求項1-14に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1-14に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、次のとおりのものである。
【請求項1】
厚さ2mm以上のアルミ板金切断する場合には、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として、-1.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度3m/分で加工し、 厚さ2mmより薄いアルミ板金を切断する場合には、焦点距離fとしてf≦120mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.5mm<Pf≦1.5mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に照射して、加工速度14m/分で加工する板金加工方法。
【請求項2】
切断加工に際して加工点に供給されるアシストガスのガス圧は1.5MPa(メガパスカル)以上である請求項1の板金加工方法。
【請求項3】
前記DDLモジュールからのレーザ光は、少なくとも2つ以上の多波長(multiple-wavelength)レーザ光で構成され、何れのレーザ光の波長も1000nm未満である請求項1又は2の板金加工方法。
【請求項4】
前記DDLモジュールからのレーザ光の波長(Wavelength)は800nm以上990nm以下の多波長(multiple-wavelength)で構成される請求項1乃至3の何れかに記載の板金加工方法。
【請求項5】
厚さ2mm以上のアルミ板金切断する場合には、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として、-2.0mm< Pf ≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射し、 厚さ2mmより薄いアルミ板金を切断する場合には、焦点距離fとしてf≦120mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.0mm< Pf ≦2.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に照射する板金加工方法において、
前記DDLモジュールから出射されるレーザ光のBPP(ビームパラメータ積(Beam parameter product))は、7mm*mrad以上20mm*mrad以下(ただし、8mm*mrad、14mm*mrad、18mm*mradを除く。)である板金加工方法。
【請求項6】
レーザ光のレーリー長は、1.5mm以上6mm以下である請求項1乃至4の何れかに記載の板金加工方法。
【請求項7】
厚さが1mmの薄いアルミ板金を切断する方法であって、焦点距離fとしてf≦120mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.0mm< Pf ≦2.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に照射し、加工速度3?6(m/分)で加工する板金加工方法。
【請求項8】
加工点に供給されるアシストガスのガス圧は0.8MPa乃至1.5MPaである請求項1乃至4又は6の何れかに記載の板金加工方法。
【請求項9】
厚さが2mmのアルミ板金を切断する方法であって、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-1.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射し、加工速度3
?5(m/分)で加工する板金切断方法。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
多波長のレーザ光を発振するDDLモジュールと、 前記DDLモジュールからの多波長レーザ光を伝送する伝送ファイバと、前記伝送ファイバにより伝送された多波長のレーザ光を集光して板金を加工するレーザ加工機であって、
厚さ2mm以上のアルミ板金切断する場合には、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-1.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度3m/分で加工するレーザ加工機。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
厚さ3mmのアルミ板金を切断する方法であって、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-1.0mm< Pf ≦-0.5mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度2.5?3(m/分)で加工する板金切断方法。
【請求項14】
厚さ2mm以上のアルミ板金を切断する方法であって、
厚さ2mmのアルミ板金を切断する場合は、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.0mm<Pf≦約0.5mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度3?6m/分で加工し、
厚さ3mmのアルミ板金を切断する場合は、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-1.0mm< Pf ≦-0.5mmに配置した集光レンズを用いて、
DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度2.5?3m/分で加工する板金切断方法。

(2)引用文献
平成30年8月15日付けの取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献(甲号証)は次のとおりである。
甲第1号証:G.Costa Rodrigues,外3名,“Theoretical and experimental aspects of laser cutting with a direct diode laser”,Optics and Lasers in Engineering,ELSEVIER,2014年5月20日,第61巻,p.31-38
甲第2号証:特開平3-189088号公報
甲第3号証:特開平3-189089号公報
甲第4号証:M.KRISTIANSEN,外3名,“QUALITY AND PERFORMANCE OF LASER CUTTING WITH A HIGH POWER SM FIBER LASER”,Proceedings of The 14th Nordic Laser Materials Processing Conference(NOLAMP 14),ルレオ工科大学,2013年8月26-28日,p.109-120
甲第5号証:A.Riveiro,外4名,“Parametric investigation of CO2 laser cutting of 2024-T3 alloy”,Journal of Materials Processing Technology,ELSEVIER,2010年,第210巻,p.1138-1152
甲第6号証:新井武二著,“高出力レーザプロセス技術-切断・溶接の基礎と実用-”,初版,マシニスト出版株式会社,平成16年6月16日,p.109-154
甲第7号証:G.Costa Rodrigues,外4名,“Laser cutting with direct diode laser”,Physics Procedia,ELSEVIER,2013年,第41巻,p.558-565
甲第8号証:“レーザ加工機取扱作業者用安全講習テキスト”,改訂版,一般社団法人日本鍛圧機械工業会レーザ・プラズマ専門部会,2010年11月18日,p.3-15
甲第9号証:特表2007-518566号公報
甲第10号証:特開2012-43849号公報
甲第11号証:新井武二著,”レーザ加工の基礎工学”,改訂版,丸善出版株式会社,平成25年12月25日,p.146-149
甲第12号証:特開2013-75331号公報
甲第13号証:特開2010-105037号公報

(3)対比・判断
ア 本件発明1
上記甲第1号証には、第31ページ右欄第16、17行に、ダイレクトダイオードレーザ(DDL)を用いて金属シートをレーザ切断する旨記載されている。
また、Fig.1に関連して、コリメーティングレンズ及び集光レンズを用いる装置の全体構成が、Fig.6に関連して、厚さ1mmから6mmまでのアルミニウムを切断する実施例が示されている。
したがって、甲第1号証には、「集光レンズを用いて、DDLモジュールからの平行レーザ光を厚さ1mmから6mmのアルミ板金に照射する板金加工方法。」の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されている。
本件発明1と甲1-1発明とを比較すると、本件発明1においては、板金の厚さに応じて、焦点距離、焦点位置、レーザー光の出力及び加工速度を特定しているのに対し、甲1-1発明では、そのような特定がない点で相違する(以下、「相違点1」という。)。

ここで、甲第2号証の第1ページ右欄第9-13行には「非加工材が金属であって、板厚が3.2mm以下である場合には焦点距離2.5inのレンズ、板厚が3.2mm?9mmの場合には焦点距離5inのレンズ、板厚が9mm以上の場合には焦点距離7.5inのレンズが夫々用いられている。」と記載されている。この記載から、板厚が厚くなるほど焦点距離が長いレンズを用いることが従来周知であったといえる。
また、甲第2号証の第5ページ右上欄第15-20行には「次に上記の如く構成した切断装置Aによるレーザー光の結像について第5図(A)?(C)により説明する。
第5図(A)は被切断材Bの板厚が極く薄い場合に於ける被切断材Bとレーザー光の結像点18との関係を示すものである。」と記載され、第5ページ右下欄第13-18行には「また同図(B)は被切断材Bの表面にレーザー光の結像点18を設定した場合を示しており、被切断材Bの板厚が9mm以下の場合に有効である。
同図(C)は被切断材Bの板厚が6mm以上の厚板に対して切断を行う場合の被切断材Bとレーザー光の結像点18との関係を示したものである。」と記載されている。これらの記載と第5図からすると、板厚が薄い場合には、焦点位置を板の上方とし、板厚が厚くなると、焦点位置を板の上面又は板の中とすることが従来周知であったといえる。
同様の記載は、甲第3号証にも見受けられる。また、甲第4号証のTable3及びTable5、甲第5号証のTable2、甲第6号証の8.4.1の記載からすると、当業者であれば、焦点距離や焦点位置を適切に設定しなければならないことは当然に認識している事項にすぎないと認められる。

そうすると、甲1-1発明を実施しようとすれば、当業者であれば、焦点距離や焦点位置を変化させて適切な値を求めることは当然に想到しうる事項である。そして、その際に、ドロスが品質に影響することも、甲第1号証の第36ページ左欄第10-13行、甲第5号証第1138ページ右欄第19-29行、甲第6号証第120ページ第7-10行、甲第7号証第563ページ第1-15行に記載されているように従来周知である。
ここで、甲第1号証のTable2には、光源をDiodeとした場合の集光レンズとして焦点距離が80mm、125mm、150mmとしたことが示されているのであるから、甲第1号証の実施にあたって、甲第2号証に示された従来周知な考え方にしたがって、厚さが1mmの時には、焦点距離が短い80mmのレンズを選択し、焦点位置を板の上方としてドロスの状況を試してみることに困難性があったものとはいえない。
また、例えば厚さが4mmの時に、焦点距離が長い150mmのレンズを選択し、焦点位置を板の中とすることも困難性があったものとはいえない。

さらに、レーザー光の出力については、甲第1号証のTable2には、2000W、すなわち2kWであることが示されていることから、出力2kWのレーザー光を用いることは通常想到しうる事項である。また、加工速度も、甲第1号証のFig.6に厚さ4mmで2m/分、厚さ2mmで6m/分、厚さ1mmで13m/分が示されていることから、本件発明1の数値は通常想到しうる事項である。

したがって、本件発明1は、上記甲1-1発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(イ)本件発明2
本件発明2と甲1-1発明とを比較すると、上記相違点1に加えて、アシストガスの圧力が1.5MPa以上であることが特定されている点で相違する(以下、「相違点2」という。)。
甲第1号証のFig.1には「Gas pressure」と記載されていることから、甲1-1発明を実施しようとすれば、当然にアシストガスを用いることになる。そして、甲第1号証には、アシストガスの圧力は示されていないが、甲第8号証の第13ページ第2、3行に「アシストガスに窒素を使用して切断すると、切断面の酸化がなくなるので付着したドロスは軟らかく、簡単に指で取れ、しかも切断面は非常に美しい。」と記載されているように、アシストガスとドロスに関係があることは従来周知であることから、ドロス等の状況を見ながら、アシストガスを使用することは、当業者であれば当然に行うことにすぎない。
その際に、甲第4号証のTable 3に「Pressure Variable in the range 0-20 bar」と記載されていることから、2MPa程度までの圧力で試すことは十分に想到しうる事項であり、さらに甲第4号証のTable 5にアルミニウムの場合に20bar=2MPaとすることが開示されていることから、甲第1号証に記載された発明を実施するにあたり、例えばアシストガスの圧力を2MPaで試してみて、ドロスに問題がなければその圧力で実施することに困難性はない。
したがって、本件発明2は、上記甲1-1発明及び甲第2-8号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(ウ)本件発明3
本件発明3において特定された「前記DDLモジュールからのレーザ光は、少なくとも2つ以上の多波長(multiple-wavelength)レーザ光で構成され、何れのレーザ光の波長も1000nm未満である」点に関し、甲第1号証の第32ページ第8-10行に「The wavelengths used are 808nm,915nm,940nm and 980nm,with respectively 372W,841W,817W and 826W maximum output power.」と記載され、Fig1の「Laser source」部分にも同様の記載がされていることから、甲1-1発明との実質的な相違点とはならない。
したがって、上記(ア)、(イ)と同様の理由により、本件発明3は、上記甲1-1発明及び甲第2-8号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(エ)本件発明4
本件発明4において特定された「前記DDLモジュールからのレーザ光の波長(Wavelength)は800nm以上990nm以下の多波長(multiple-wavelength)で構成される」点に関し、甲第1号証の第32ページ第8-10行に「The wavelengths used are 808nm,915nm,940nm and 980nm,with respectively 372W,841W,817W and 826W maximum output power.」と記載され、甲1-1発明との実質的な相違点とはならない。
したがって、上記(ア)、(イ)と同様の理由により、本件発明4は、上記甲1-1発明及び甲第2-8号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(オ)本件発明5
本件発明5と甲1-1発明とを比較すると、上記相違点1に加えて、本件発明5において「前記DDLモジュールから出射されるレーザ光のBPP(ビームパラメータ積(Beam parameter product))は、7mm*mrad以上20mm*mrad以下(ただし、8mm*mrad、14mm*mrad、18mm*mradを除く。)である」ことが特定されているのに対し、甲第1号証のTable2においてにBPPが26.677、24.214、22.808であることが示されている点で相違する(以下、「相違点5」という。)。
ここで、甲第11号証の第146ページ第1行-第147ページ第3行には、「4.3.4 ビームの収束性
加工に及ぼすビームの品質には、ビームモードやエムスクェア(M^(2))のほかに集光光学系が影響し、レーザビームは用いる集光光学系によって異なる収束性を示す。特にレンズで集光する場合、入射ビーム径、集光角度、焦点深度が重要となる。焦点深度はレンズの焦点距離に関係する値でもあるが、同じスポット径を得られる場合でも、光の入射角度が加工特性には大きな影響を与える。このような光の集光の状態(収束性)を表すものに、ビームパラメータ積および光の輝度がある。これらによってもビーム品質を定量化することができる。
1(丸つき数字)ビームパラメータ積
レーザビームの広がりおよび収束において、ガウスビームのレンズ伝搬に対する保存量を定義したもので、ビームパラメータ積(BPP;beam parameter product)という値がある。仮に、スポット径が同じでも集光する角度(収束性)が異なると、これらは加工特性に大きな影響を与える。光の伝搬はビームウェストの半径とビームの発散角の半値全幅で表される。同じように、集光レンズで収束させた場合には、ビームウェストの広がり角とレンズ集光点を境にした集光ビームの広がり角との間にω_(1)θ_(1)=ω_(2)θ_(2)=const.の関係があることに基づくもので、その関係式は、
BPP=ω_(0)×θ=M^(2)×λ/π (4.26)
で表される。なお、BPPの単位は[mm・mrad]となる。
ビームパラメータ積の概念を図4.14に示す。」と記載されている。
この記載からすると、レーザで加工する際に、ビームパラメータ積を考慮することは当業者であれば当然に認識しうる事項にすぎないのであるから、甲第1号証に接した当業者が、例えば手元に用意されたDDLなど他のBPPの値を試してみることは十分に想到しうる事項である。

そして、甲第1号証のTable 2には、CO_(2)レーザのBPPとして12.633の値が示されている。
また、甲第9号証の段落【0043】に「溶接、切断および穿孔用途に対し、上記ビーム・パラメータ積は(関与する材料の加工距離および厚さに依存して)約30?約300の範囲が有用である。好適には上記範囲は約8?15である。」と記載され、甲第10号証の段落【0006】、【0007】に、
「【0006】
図7は、1ミクロン波長帯で、出力4kW、ビームパラメータ積(BPP値)が0.34mm-mradから8mm-mradまでの窒素切断で最大切断速度の板厚への依存性を示すグラフである。
【0007】
図7に示すように、板厚が5mmを越えると、切断速度のビームパラメータ積(BPP値)への依存性はほとんど無い。一方、板厚が5mm以下だと、BPP値が小さいほうが速く切れる。つまり、厚い金属板を切断する場合には、最高切断速度は、ただ単にレーザ総出力に依存するだけで、BPP値にはあまり依存しない。しかし、厚さ数mm未満の薄板を切断する場合には、BPP値が最高切断速度に及ぼす影響が大きくなる。」
と記載されていることからして、甲第1号証に記載された発明を実施するに際して、甲第1号証に示されているCO_(2)レーザとしてのBPPである12.633に近いような値のダイレクトダイオードレーザ(DDL)が存在するならば、そのようなDDLを用いてみるということは、通常想到しうる範囲の事項にすぎない。
そして、「(ただし、8mm*mrad、14mm*mrad、18mm*mradを除く。)」とした点は、申立人が、平成30年5月23日提出の意見書に添付して、次の甲号証を提出したことに起因している。
甲第19号証:Robin K.Huang,外2名,“Ultra-high brightness,wavelength-stabilized,kW-class fiber coupled diode laser”,Proceedings of SPIE,2011年,Vol.7918,p.791810-1-791810-9
甲第20号証:米国特許第8488245号明細書
ここで、甲第19号証の第791810-1ページ第6-10行にBPPが18であるダイレクトダイオードレーザが示され、甲第20号証の第17欄第56-65行には、ダイオードレーザとしてBPPが8と14のものが示されている。
すなわち、「(ただし、8mm*mrad、14mm*mrad、18mm*mradを除く。)」は、本件出願前に公知となったDLLのBPP値を除いたものであるが、公知のBPP値を除いた数値範囲としても、通常想到しうる範囲であることには変わりはない。

したがって、本件発明5は、上記甲1-1発明及び甲第2-11号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

なお、この点に関して、特許権者は平成29年12月18日提出の意見書において、本件出願時には、BPPが20mm*mradより大きいものが一般的技術水準である旨主張しているが、BPPを20mm*mrad以下とするDDLを実現するためにどのような工夫が必要であったのかということは主張しておらず、明細書を参照しても、BPPが20mm*mrad以上と以下とでどのような相違があるのかも不明であり、当該主張を採用することはできない。

(カ)本件発明6
本件発明6と甲1-1発明とを比較すると、上記相違点1に加えて、本件発明6において「レーザ光のレーリー長は、1.5mm以上6mm以下である」ことが特定されている点で相違する(以下、「相違点6」という。)。
しかしながら、レーリー長は、甲第13号証の段落【0029】に記載された数式で決まるところ、甲第1号証のTable 2の焦点距離150mmの場合で計算すると、3.6mmとなるので、実質的な相違点とはいえない。
また、甲第12号証の段落【0046】【0047】にレイリー長2mm?5mmと記載されているように、相違点6は通常用いられる値にすぎない。
したがって、本件発明6は、上記甲第1号証に記載された発明及び甲第2-13号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(キ)本件発明7
上記甲第1号証には、Fig.6に関連して、厚さ1mmのアルミニウムを切断する実施例が示されている。
したがって、甲第1号証には、「集光レンズを用いて、DDLモジュールからの平行レーザ光を厚さ1mmのアルミ板金に切断速度13m/分で照射する板金加工方法。」の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されている。
本件発明7と甲1-2発明とを比較すると、本件発明7においては、焦点距離、焦点位置及びレーザー光の出力を特定しているのに対し、甲1-2発明では、そのような特定がない点で相違する(以下、「相違点7-1」という。)。
また、本件発明7においては、加工速度3?6(m/分)であるのに対し、甲1-2発明では、切断速度が13m/分である点で相違する(以下、「相違点7-2」という。)。

ここで、相違点7-1は、上記(ア)と同様の理由により格別のものとは認められない。
また、相違点7-2については、本件【図7】において、13m/分でも適切な加工速度であると考えられるが、適切な加工速度を決めることは、当業者であれば当然に考慮することであるところ、より遅い速度でも切断できることは明らかであるから、甲1-2発明より遅い切断速度を選択することは適宜決定される程度の事項にすぎない。
したがって、本件発明7は、上記甲1-2発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(ク)本件発明8
本件発明8と甲1-1発明とを比較すると、上記相違点1に加えて、アシストガスのガス圧が0.8MPa乃至1.5MPaであるであることが特定されている点で相違する(以下、「相違点8-1」という。)。
甲第1号証のFig.1には「Gas pressure」と記載されていることから、甲1-1発明を実施しようとすれば、当然にアシストガスを用いることになる。
その際に、甲第8号証の第13ページの図18からは、アシストガス圧が高くなり1MPaに近いほどドロスの付着質量が減少していることがわかり、甲第5号証のTable 2に「Gas Pressure(bar) 2,4,6,8,10」と記載されていることから、1MPa程度のまでの圧力で試すことは十分に想到しうる事項であり、甲第1号証に記載された発明を実施するにあたり、例えばアシストガスの圧力を1MPaで試してみて、ドロスに問題がなければその圧力で実施することに困難性はない。
したがって、本件発明8は、上記甲1-1発明及び甲第2-13号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(ケ)本件発明9
上記甲第1号証には、Fig.6に関連して、厚さ2mm及び4mmのアルミニウムを切断する実施例が示されている。
したがって、甲第1号証には、「集光レンズを用いて、DDLモジュールからの平行レーザ光を厚さ2mmのアルミ板金に切断速度6m/分で照射し、厚さ4mmの板金に切断速度2m/分で照射する板金加工方法。」の発明(以下、「甲1-3発明」という。)が記載されている。
本件発明9と甲1-3発明とを比較すると、本件発明9においては、焦点距離、焦点位置及びレーザー光の出力を特定しているのに対し、甲1-3発明では、そのような特定がない点で相違する(以下、「相違点9-1」という。)。
また、本件発明9においては、加工速度3?5(m/分)であるのに対し、甲1-3発明では、切断速度が6m/分である点で相違する(以下、「相違点9-2」という。)。

ここで、相違点9-1は、上記(ア)と同様の理由により、試行錯誤の範囲内の事項であり、厚さが2mmの時に、焦点距離が長い150mmのレンズを選択し、焦点位置を板の中とすることも困難性があったものとはいえない。
また、相違点9-2は、適切な加工速度を決めることは、当業者であれば当然に考慮することであるところ、レーザの出力等に応じて適宜決定される程度の事項にすぎない。
したがって、本件発明9は、上記甲1-3発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(コ)本件特許11
上記甲第1号証には、Fig.6に関連して、厚さ2mmから6mmまでのアルミニウムを切断する実施例が示されている。
したがって、甲第1号証には、「集光レンズを用いて、DDLモジュールからの平行レーザ光を厚さ2mmから6mmのアルミ板金に照射するレーザ加工機。」の発明(以下、「甲1-4発明」という。)が記載されている。
本件特許11と甲1-4発明とを比較すると、本件特許11においては、板金の厚さに応じて、焦点距離、焦点位置、レーザー光の出力及び加工速度を特定しているのに対し、甲1-4発明では、そのような特定がない点で相違する(以下、「相違点11」という。)。

しかしながら、相違点11は、上記(ア)と同様の理由により格別のものとは認められない。
したがって、本件特許11は、上記甲1-4発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(サ)本件特許13
本件特許13と甲1-3発明とを比較すると、本件特許13においては、焦点距離、焦点位置、レーザー光の出力及び加工速度を特定しているのに対し、甲1-3発明では、そのような特定がない点で相違する(以下、「相違点13-1」という。)。
また、本件特許13においては、加工対象が厚さ3mmのアルミ板金であるのに対し、甲1-3発明では、加工対象が、厚さ2mmまたは4mmのアルミ板金である点で相違する(以下、「相違点13-2」という。)。

ここで、相違点13-1は、上記(ア)と同様の理由により、試行錯誤の範囲内の事項であり、厚さが2mm及び4mmの時に、焦点距離が長い150mmのレンズを選択し、焦点位置を板の中とすることも困難性があったものとはいえない。
また、相違点13-2は、甲1-3発明に厚さが2mmの場合と4mmの場合が示されている以上、厚さ3mmのアルミ板金を加工対象とすることは、適宜選択しうる程度の事項にすぎない。
したがって、本件特許13は、上記甲1-3発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(シ)本件特許14
本件特許14と甲1-3発明とを比較すると、本件特許14においては、焦点距離、焦点位置、レーザー光の出力及び加工速度を特定しているのに対し、甲1-3発明では、そのような特定がない点で相違する(以下、「相違点14」という。)。

しかしながら、相違点14は、上記(ア)と同様の理由により、試行錯誤の範囲内の事項であり、厚さが2mm以上の時に、焦点距離が長い150mmのレンズを選択し、焦点位置を厚さに応じて決定することに困難性があったものとはいえない。
したがって、本件特許14は、上記甲1-3発明及び甲第2-7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(4)特許権者の主張について
ア 特許権者は、平成30年10月18日提出の意見書第5-7ページにおいて次の主張をしている。
(ア)はじめに
本件予告通知では、プロトタイプに関する研究段階の論文である甲第1号証に記載された発明に、DDLではない従来のレーザを用いたレーザ加工装置における技術的事項を適用し、また、加工速度について「当業者であれば当然に考慮することであるところ、レーザの出力等に応じて適宜決定される程度の事項にすぎない」と説示して、本件訂正発明の進歩性を否定している。
しかしながら、プロトタイプに関する研究段階の論文である甲第1号証に記載された発明を主引用例とし、DDLではない従来のレーザを用いたレーザ加工装置における技術的事項を適用していることからみても明らかなとおり、DDLを実際に用いたレーザ加工装置による測定によりなされた発明は、本件訂正発明以前、本件特許権者以外には存在していない。すなわち、本件訂正発明は、DDLを用いたレーザ加工装置におけるパイオニア発明の一つに相当するものである。本件訂正発明のようなDDLを用いたレーザ加工装置におけるパイオニア発明を、DDLではない従来のレーザを用いたレーザ加工装置における技術的事項により進歩性を認めないとすると、DDLを用いたレーザ加工装置におけるパイオニア発明は、ほとんどすべて特許として成立しないことになるから、DDLを用いたレーザ加工装置におけるパイオニア発明の保護が十分に行われないこととなり、ひいては特許法第1条の「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与する」という理念にもとることになる。
本件訂正発明は、本件特許出願時存在していなかったDDLを用いたレーザ加工装置の実機により、相当な試行錯誤を行ってなされた発明であるから、単に、プロトタイプに関する研究段階の論文である甲第1号証に記載された発明に基づいて、DDLではない従来のレーザを用いたレーザ加工装置における技術的事項を適用したり、「当業者であれば当然に考慮することであるところ、レーザの出力等に応じて適宜決定される程度の事項にすぎない」と判断されるような機上の創造物ではない。プロトタイプに関する研究段階の論文である甲第1号証に記載された発明に基づいて、DDLではない従来のレーザを用いたレーザ加工装置における技術的事項を適用したり、「当業者であれば当然に考慮することであるところ、レーザの出力等に応じて適宜決定される程度の事項にすぎない」と判断することは、本件訂正発明をみて事後分析的に考えた後知恵にすぎないのであるから、本件訂正発明には、当然に進歩性が認められてしかるべきである。

(イ)本件訂正発明1について
本件予告通知(10?11頁)では、甲第2号証の記載から、板厚が厚くなるほど焦点距離が長いレンズを用いることが従来周知であったとし、「甲第1号証のtable2には、集光レンズとして焦点距離が80mm、125mm、150mmが示されているのであるから、甲第1号証の実施にあたって、甲第2号証に示された従来周知な考え方にしたがって、厚さが1mmの時には、焦点距離が短い80mmのレンズを選択し、焦点位置を板の上方としてドロスの状況を試してみることに困難性があったものとはいえない。また、例えば厚さが4mmの時に、焦点距離が長い150mmのレンズを選択し、焦点位置を板の中とすることも困難性があったものとはいえない。」と説示している。
しかしながら、平成29年12月18日付け意見書(7?8頁)で詳述したとおり、甲第2号証では、本件訂正発明や甲第1号証に記載された発明におけるコリメータレンズに相当するレンズはなく、焦点レンズへ平行光が入射されないから、甲第2号証に示された従来周知な考え方は、本件特許発明や甲第1号証に記載された発明のような平行レーザ光を用いたレーザ加工装置において従来周知な考え方ではない。したがって、甲第2号証に示された平行ではないレーザ光を用いたレーザ加工装置における従来周知な考え方を根拠として、甲第1号証の実施において、厚さが1mmの時には、焦点距離が短い80mmのレンズを選択し、焦点位置を板の上方としてドロスの状況を試してみることや、例えば厚さが4mmの時に、焦点距離が長い150mmのレンズを選択し、焦点位置を板の中とすることは、当業者といえども容易に想到できるものではない。

(ウ)本件訂正発明2?9、11、13及び14について
本件訂正発明2?9、11、13及び14と甲第1号証に記載された発明とは、本件訂正発明1と甲第1号証に記載された発明との相違点と同様の相違点で相違しており、上記(イ)で述べたとおり、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様の理由により、本件訂正発明2?9、11、13及び14も、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない

(エ)本件訂正発明5について
本件訂正発明5については、上記(ウ)で述べた理由に加えて以下の点からも、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件予告通知(13頁)では、甲第11号証の記載から、「甲第1号証に接した当業者が、例えば手元に用意されたDDLなど他のBPPの値を試してみることは十分に想到しうる事項である」と説示し、14頁で、「甲第19号証の第791810-1ページ第6-10行にBPPが18であるダイレクトダイオードレーザが示され、甲第20号証の第17欄第56-65行には、ダイオードレーザとしてBPPが8と14のものが示されている」と指摘している。
しかしながら、本件訂正発明5のBPPは、8mm*mrad、14mm*mrad、18mm*mradが除かれているのに対し、本件特許出願時に手元に用意できたDDLにおけるBPPの値は、甲第19号証及び甲第20号証で示された8mm*mrad、14mm*mrad、18mm*mradのみであるから、甲第1号証に接した当業者は、手元に用意されたDDLのBPPの値を試してみたとしても、本件訂正発明5を想到し得るものではない。すなわち、本件訂正発明5のDDLを想定し、そのDDLにおけるBPPの値を試すことは机上の空論でしかないから、本件訂正発明5は、この点からみても、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(オ)加工速度について
本件予告通知では、加工速度に関する相違点7-2(15頁)、 相違点9-2(17頁)及び相違点13(19頁)について、「適切な加工速度を決めることは、当業者であれば当然に考慮することであるところ、レーザの出力等に応じて適宜決定される程度の事項にすぎない」と説示している。
しかしながら、加工速度は、上記(ア)で述べたとおり、相当な試行錯誤を行って、他の条件を設定した上で、初めて特定できるパラメータであるから、レーザの出力に応じて一義的に決定されるものではない。したがって、この点からみても、加工速度が特定された本件訂正発明1?9、11、13及び14は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 上記主張に対する合議体の見解
(ア)パイオニア発明の主張について
特許権者が上記ア(ア)で主張するように、甲第1号証に記載された技術はプロトタイプであることは合議体も認識しているところである。したがって、プロトタイプのDDLに対して、実用化するにあたり工夫した点があれば、その点に特許性があることを否定するものではない。
しかしながら、特許権者は、単にパイオニア発明である旨の主張をするに留まり、甲第1号証に記載された技術に接した当業者が、甲第1号証に記載された技術を実施しようとしたら通常は想到し得ない事項が何であったのか何ら具体的に説明をしていないので、当該主張は採用することができない。
すなわち、甲第1号証に記載された技術を実施しようとすれば、最大出力2kWのDDLを用いて、Fig.6 に示されたような厚さのアルミニウム板金に対して、Fig.6 に示された加工速度で実施することは当業者であれば当然に考えることにすぎない。そして、その際には、技術常識を加味して、レンズの焦点距離や焦点位置を決定しないことには実施できないのであるから、なんらかの情報を取得してレンズの焦点距離や焦点位置を決定することになる。このような状況の中、甲第1号証に接した当業者が通常の思考過程では到達し得ない加工条件が何であったのか特許権者の主張からは理解することができない。
もしかしたら、本件出願時点では、甲第1号証に記載された技術を実用レベルで実施しようとしても、実用的なDDLは存在していなかったかもしれないが、実用的なDDLを実現するための技術的なブレークスルーが特許発明とされているわけではないので、合議体としては、甲第1号証に記載されたDDLが入手できることを前提として、甲第1号証に示された技術を実施しようとしたらどこに通常想到し得ない創意工夫があったのかを判断せざるを得ない。
本件発明1においては、板金の厚さ、焦点距離、焦点位置、レーザー光の出力及び加工速度がパラメータとして規定されている。
しかしながら、本件明細書全般からは、レーザー光の出力を変化させて試行錯誤を経て、特定の出力を見いだしたとは認められない。
また、レンズの焦点距離についても、段落【0096】に「板厚2mmのワークの切断に対しては焦点距離120mmの集光レンズよりも焦点距離150mmの集光レンズのほうが望ましいことが理解される。」とは記載されているものの、板厚1mmの場合には、レンズの焦点距離について試行錯誤をして決定したものとは認められない。
そして、板厚と加工速度については、甲第1号証においても検討されているのであるから、甲第1号証に記載された技術を実施しようとすれば、甲第1号証に示されていない焦点位置については、ある程度の試行錯誤が必要であったとは考えられるものの、実施するには焦点位置を決定しなければならないところ、従来知られた考え方に基づいて当業者が試行する範囲を超えた試行錯誤が必要な事項であったとは認めることができない。

(イ)平行光について
特許権者は、上記ア(イ)及び(ウ)において、甲第2号証に示されたレーザー光が平行でないから甲第1号証に示された技術には適用できない旨主張する。
しかしながら、上記(ア)に記載したとおり、甲第1号証に記載された技術を実施しようとすれば、レーザー光の焦点位置をどこかに決めなければならないところ、平行光であるか否かで、甲第2号証の焦点位置の決め方に影響があるものとは認められないので、当該主張は採用することができない。

(ウ)BPP(ビームパラメータ積)について
特許権者は、上記ア(エ)において、BPPの選定に特許性がある旨の主張をしている。
しかしながら、BPPを7mm*mrad以上20mm*mrad以下に選定するにあたり、どのような創意工夫が必要であったのか、明細書からは一切理解することができない。むしろ、実施例としたDDLのBPPの値は明記されておらず、BPPをいろいろな値で試した上で最適値を見つけたとする記載も見受けられない。
したがって、BPPの選定に格別の創意工夫が必要であったと認めることができないので、当該主張は採用することはできない。

(エ)加工速度について
特許権者は、上記ア(オ)において、加工速度の選定に特許性がある旨の主張をしている。
しかしながら、レーザー出力が変わらなければ、厚い板ほど加工速度を遅くしなければ加工できないことは技術常識であるところ、本件特許発明1-4、7-9、11、13及び14に記載された加工速度は、常識的な値であり、加工速度の選定に、格別の創意工夫が必要であったと認めることができないので、当該主張は採用することはできない。

5.むすび
以上のとおり、本件発明1-9、11、13、14は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2-13号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1-9、11、13、14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1-9、11、13、14に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項10及び12に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項10及び12に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ2mm以上のアルミ板金切断する場合には、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として、-1.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度3m/分で加工し、 厚さ2mmより薄いアルミ板金を切断する場合には、焦点距離fとしてf≦120mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.5mm<Pf≦1.5mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に照射して、加工速度14m/分で加工する板金加工方法。
【請求項2】
切断加工に際して加工点に供給されるアシストガスのガス圧は1.5MPa(メガパスカル)以上である請求項1の板金加工方法。
【請求項3】
前記DDLモジュールからのレーザ光は、少なくとも2つ以上の多波長(multiple-wavelength)レーザ光で構成され、何れのレーザ光の波長も1000nm未満である請求項1又は2の板金加工方法。
【請求項4】
前記DDLモジュールからのレーザ光の波長(Wavelength)は800nm以上990nm以下の多波長(multiple-wavelength)で構成される請求項1乃至3の何れかに記載の板金加工方法。
【請求項5】
厚さ2mm以上のアルミ板金切断する場合には、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として、-2.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射し、 厚さ2mmより薄いアルミ板金を切断する場合には、焦点距離fとしてf≦120mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.0mm<Pf≦2.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に照射する板金加工方法において、
前記DDLモジュールから出射されるレーザ光のBPP(ビームパラメータ積(Beam parameter product))は、7mm^(*)mrad以上20mm^(*)mrad以下(ただし、8mm^(*)mrad、14mm^(*)mrad、18mm^(*)mradを除く。)である板金加工方法。
【請求項6】
レーザ光のレーリー長は、1.5mm以上6mm以下である請求項1乃至4の何れかに記載の板金加工方法。
【請求項7】
厚さが1mmの薄いアルミ板金を切断する方法であって、焦点距離fとしてf≦120mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.0mm<Pf≦2.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に照射し、加工速度3?6(m/分)で加工する板金加工方法。
【請求項8】
加工点に供給されるアシストガスのガス圧は0.8MPa乃至1.5MPaである請求項1乃至4又は6の何れかに記載の板金加工方法。
【請求項9】
厚さが2mmのアルミ板金を切断する方法であって、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-1.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射し、加工速度3?5(m/分)で加工する板金切断方法。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
多波長のレーザ光を発振するDDLモジュールと、 前記DDLモジュールからの多波長レーザ光を伝送する伝送ファイバと、前記伝送ファイバにより伝送された多波長のレーザ光を集光して板金を加工するレーザ加工機であって、
厚さ2mm以上のアルミ板金切断する場合には、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-1.0mm<Pf≦約0.0mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度3m/分で加工するレーザ加工機。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
厚さ3mmのアルミ板金を切断する方法であって、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-1.0mm<Pf≦-0.5mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度2.5?3m/分で加工する板金切断方法。
【請求項14】
厚さ2mm以上のアルミ板金を切断する方法であって、
厚さ2mmのアルミ板金を切断する場合は、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として0.0mm<Pf≦約0.5mmに配置した集光レンズを用いて、DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度3?6m/分で加工し、
厚さ3mmのアルミ板金を切断する場合は、焦点距離f≧150mmを有し、焦点位置Pfを、板金の上面を基準として-1.0mm<Pf≦-0.5mmに配置した集光レンズを用いて、
DDLモジュールからの出力2kWの平行レーザ光を前記板金に対して照射して、加工速度2.5?3m/分で加工する板金切断方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-03-20 
出願番号 特願2014-211022(P2014-211022)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (B23K)
P 1 651・ 537- ZAA (B23K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 青木 正博  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 平岩 正一
中川 隆司
登録日 2016-11-18 
登録番号 特許第6043773号(P6043773)
権利者 株式会社アマダホールディングス
発明の名称 ダイレクトダイオードレーザ光による板金の加工方法及びこれを実行するダイレクトダイオードレーザ加工装置  
代理人 三好 秀和  
代理人 岩▲崎▼ 幸邦  
代理人 高橋 俊一  
代理人 伊藤 正和  
代理人 伊藤 正和  
代理人 岩▲崎▼ 幸邦  
代理人 三好 秀和  
代理人 高松 俊雄  
代理人 高橋 俊一  
代理人 高松 俊雄  

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