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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1353151
異議申立番号 異議2018-700479  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-12 
確定日 2019-05-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6255123号発明「リキッドインキ組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6255123号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第6255123号の請求項3?5に係る特許を維持する。 特許第6255123号の請求項1?2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6255123号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成29年3月30日に特願2017-67647号として特許出願されたものであって、平成29年12月8日に特許権の設定登録がされ、同年12月27日にその特許掲載公報が発行され、その請求項1?5に係る発明の特許に対し、平成30年6月12日に川原園生(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
平成30年 8月17日付け 取消理由通知
同年10月 5日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年10月11日付け 訂正請求があった旨の通知
同年12月12日付け 取消理由通知(決定の予告)
平成31年 2月13日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 2月19日付け 訂正請求があった旨の通知

なお、特許異議申立人は、平成30年10月11日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしておらず、平成31年2月19日付けの訂正請求があった旨の通知に対しても、指定した期間内に何ら応答をしていない。

第2 訂正の適否
1.訂正請求の趣旨及び内容
平成30年10月5日付けの訂正請求は特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされるところ、
平成31年2月13日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第6255123号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1?5のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付す。)。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項3に「更に、着色剤(F)を含有する請求項1又は2に記載のリキッドインキ組成物。」とあるのを「米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)、繊維素系樹脂(B)、有機溶剤(C)、及び可塑剤(D)を含有するリキッドインキ組成物であって、前記可塑剤(D)がスルホン酸アミド系であり、その添加量が組成物全量の0.1?5.0質量%であり、更に、キレート架橋剤(E)を組成物全量の0.1?5.0質量%含有し
更に、着色剤(F)を含有するリキッドインキ組成物。」に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項4に「前記有機溶剤(C)が芳香族有機溶剤及び/又はケトン系溶剤を含まない請求項1?3の何れか1つに記載のリキッドインキ組成物。」とあるのを「前記有機溶剤(C)が芳香族有機溶剤及び/又はケトン系溶剤を含まない請求項3に記載のリキッドインキ組成物。」に訂正する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項5に「請求項1?4の何れか1つに記載のリキッドインキを印刷してなる印刷物。」とあるのを「請求項3?4の何れか1つに記載のリキッドインキを印刷してなる印刷物。」に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の請求項1を削除する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項2を削除する。

2.訂正事項1?5の適否
(1)訂正事項1
ア.訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1又は2を引用する請求項3を請求項2を引用するものに限定し、その記載を独立形式での記載に改めるとともに、
その「可塑剤(D)」を「クエン酸エステル、エポキシ化植物油、リン酸エステル系及びスルホン酸アミド系から選ばれる少なくとも1つ」という選択肢の中から「スルホン酸アミド系」に限定するとともに、その組成物全量に対する添加量を「0.01?10.0質量%」から「0.1?5.0質量%」に限定し、
その「キレート架橋剤(E)」の組成物全量に対する添加量を「0.1?5.0質量%」に限定するものである。
また、訂正後の請求項3を直接又は間接に引用する請求項4?5も同様に訂正されることになる。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当する。

イ.拡張又は変更の存否
訂正事項1は、訂正前の「可塑剤(D)」を「スルホン酸アミド系」に限定するとともに、その添加量を「組成物全量の0.1?5.0質量%」に限定し、さらに、訂正前の「キレート架橋剤(E)」の添加量を「組成物全量の0.1?5.0質量%」に限定するものであり、訂正後の請求項3を直接又は間接に引用する請求項4?5についても同様に訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無
本件特許明細書の段落0020には「可塑剤(D)としては…スルホン酸アミド系が好ましい。…可塑剤(D)の配合量は…より好ましくは0.1?5.0質量%であり」との記載があり、同段落0021には「キレート架橋剤(E)の配合量は、組成物全量の0.1?5.0質量%が好ましく」との記載があるので、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(2)訂正事項2?5
ア.訂正の目的
訂正事項4及び5は、訂正前の請求項1及び2をそれぞれ削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2及び3は、訂正前の請求項4が請求項1?3を引用する記載であり、訂正前の請求項5が請求項1?4を引用する記載であるところ、訂正事項4及び5に係る訂正に伴い、多数項を引用している請求項4及び5において、引用先の請求項1及び2を削除し、引用請求項数を減少する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ.拡張又は変更の存否
訂正事項2?5は、上記アに示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無
訂正事項4及び5は、訂正前の請求項1及び2の各々を削除するものであり、訂正事項2及び3は、請求項1及び2の削除にともない引用形式の記載を整えたにすぎないものであるから、いずれも新規事項を導入するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(4)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1?5について、その請求項2?5はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1?5に対応する訂正後の請求項1?5は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
したがって、訂正事項1?5による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

3.訂正の適否のまとめ
以上総括するに、訂正事項1?5による本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1?5に係る発明(以下「本1発明」?「本5発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】 削除
【請求項2】 削除
【請求項3】米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)、繊維素系樹脂(B)、有機溶剤(C)、及び可塑剤(D)を含有するリキッドインキ組成物であって、前記可塑剤(D)がスルホン酸アミド系であり、その添加量が組成物全量の0.1?5.0質量%であり、
更に、キレート架橋剤(E)を組成物全量の0.1?5.0質量%含有し
更に、着色剤(F)を含有するリキッドインキ組成物。
【請求項4】前記有機溶剤(C)が芳香族有機溶剤及び/又はケトン系溶剤を含まない請求項3に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項5】請求項3?4の何れか1つに記載のリキッドインキを印刷してなる印刷物。」

第4 当審の判断
1.取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
本件特許の訂正前の請求項1?5に係る発明に対して平成30年8月17日付けで特許権者に通知した取消理由(及び同年10月5日付けの訂正請求による訂正後の請求項2、4及び5に係る発明に対して同年12月12日付けで特許権者に通知した取消理由)の概要は次のとおりである。

「本件特許の請求項1?5に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1?7に記載された発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許の請求項1?5に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。」

(2)引用刊行物及びその記載事項
取消理由通知において引用した刊行物の一覧及び刊行物1?7の記載事項は、以下のとおりである。

刊行物1:特開昭53-94343号公報(甲1)
刊行物2:特開2016-50286号公報(甲2)
刊行物3:特開2002-20655号公報(甲3)
刊行物4:特開2002-129082号公報(甲4)
刊行物5:特開2005-171167号公報(甲5)
刊行物6:特開平10-259345号公報
刊行物7:村田忠、“米ぬかを原料にした軟包装用ライスインキ”、包装技術(JPI Journal)、2015年6月、第53巻第6号第40?43頁(甲7)

上記刊行物1には、次の記載がある。
摘記1a:第1頁左下欄第14行?第2頁左上欄第5行
「本発明はコーテイング用組成物に関する。さらに詳しくは未処理ポリオレフインフイルムに対する接着性のすぐれたポリアミド樹脂を含有するコーテイング用組成物に関する。
従来ポリアミド樹脂含有コーテイング用組成物(たとえばグラビア印刷インキ組成物またはフレキソ印刷インキ組成物)としては、重合脂肪酸、モノカルボン酸およびポリアミンを反応させてなる通常溶融粘度が200℃で200cps以上のポリアミド樹脂を含むものが使用されている。…
しかしながらこれらは耐老化性が劣ること、芳香族炭化水素にしか溶解しないため作業衛生、公害防止という立場からも問題があるなどの欠点を有している。」

摘記1b:第3頁左上欄第14行?右上欄第17行
「本発明のコーテイング用組成物(たとえばグラビア印刷インキまたはフレキソ印刷インキ)は本発明におけるポリアミド樹脂、溶剤、必要により着色剤(染料または顔料)および他の配合剤を含有することができる。
上記溶剤としてはメタノール、エタノール、n-またはイソプロパノールなどのアルコール類トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メチルセロソルブなどのエーテル、酢酸エチルなどのエステルおよびこれらの混合物があげられアルコール類単独またはアルコール類と芳香族炭化水素との混合溶剤が好ましい。
また他の配合剤としては可塑剤、ニトロセルロース;ロジン;テルペン樹脂、ケトン樹脂;またはマレイン化ロジン、ロジンフエノール樹脂、テルペンフエノール樹脂などの樹脂類の変性物があげられる。これらの他の配合剤の含有量は樹脂に対して通常40重量%以下である。
着色剤は通常のインキに使用されているものでよい。
このようなコーテイング用組成物の組成の1例を示せばポリアミド樹脂20?40重量%、溶剤30?80重量%、着色剤0?40重量%、他の配合剤0?15重量%である。」

摘記1c:第4頁左上欄第16行?左下欄第1表
「参考例4 重合脂肪酸(バーサダイム216)173g(0.6当量)、ヒマシ油脂肪酸59.5g(0.2当量)、米ヌカ油脂肪酸56g(0.2当量)、エチレンジアミン30g(1.0当量)を使用し、参考例1と同様に行つて本発明におけるポリアミド樹脂を得た。第1表に物性値を、また第2表に溶液粘度と溶液ゲル化温度を示す。…



摘記1d:第5頁左下欄第3行?右下欄第1行
「実施例3 参考例1?5および比較例1?3で得られたポリアミド樹脂28.8部、トルエン28.8部、イソプロパノール14.4部を配合したものと、ロジン(W.Wロジン)、ニトロセルロースRS1/4秒(ダイセル(株)製品)4部、酢酸エチル4部、トルエン4部、イソプロパノール4部を配合したものを混合しコーテイング用組成物を作成し、実施例1と同様にしてセロテープはくり試験を行つた。結果を第5表に示す。」

上記刊行物2には、次の記載がある。
摘記2a:請求項1
「【請求項1】顔料、バインダー樹脂、有機溶剤を含有する紙用溶剤型グラビア印刷インキ組成物において、バインダー樹脂がニトロセルロース樹脂及び重合ロジンを含有し、有機溶剤が非芳香族系有機溶剤からなることを特徴とする紙用溶剤型グラビア印刷インキ組成物。」

摘記2b:段落0002?0003
「【0002】タバコ、紙コップ、お菓子箱等の紙基材には、紙用溶剤型グラビア印刷インキ組成物を用いてグラビア輪転方式で印刷が施される。紙用溶剤型グラビア印刷インキ組成物に含有するバインダー樹脂としては、ウレタン樹脂、塩酢ビ樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリアマイド樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が使用されている。
さらに、近年、環境に与える負荷を削減することが必要になり、溶剤として、ノントルエン型の溶剤が使用されるようになってきている。そして、バインダー樹脂としては、このノントルエン型の溶剤に適した、ウレタン樹脂、塩酢ビ樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース樹脂から選ばれる1種類又は2種類以上を混合したもので、紙基材への接着性の観点からニトロセルロース樹脂を単独、ニトロセルロース樹脂とアクリル樹脂を併用して(例えば、特許文献1参照)使用されていた。
【0003】しかし、ニトロセルロース樹脂を単独で使用した場合は、高湿度の場合、印刷インキが白化する(ブラッシング)問題、ニトロセルロース樹脂とアクリル系樹脂を併用した場合は、密着性が充分でない問題を有するものであった。
そこで、これらの問題を解決するために、ニトロセルロース樹脂とロジン、酸変性ロジン及びエステル化ロジンから選ばれる1種以上のロジン系樹脂を併用すること(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、耐摩擦性に改善の余地があった。
また、印刷会社においては、環境問題から、ハイソリッドインキを採用して、印刷時に発生する有機溶剤を削減し、大気中の有機溶剤を削減することが検討されるようになってきている。ところがそれらのいずれもが樹脂フィルム用であって、紙用のハイソリッドインキは実現していなかった。」

摘記2c:段落0015?0016
「【0015】(可塑剤)
本発明の紙用溶剤型グラビア印刷インキ組成物には、耐摩擦性の向上、残量溶剤の低減の観点から、可塑剤を含有させることが好ましい。
可塑剤としては、セバチン酸ジオクチル、エポキシ化大豆油、脂肪酸トリグリセリド、エチルトルエンスルホン酸アミド、アセチルクエン酸トリブチル、ステアリン酸2エチルヘキシルエステル、パルミチン酸2-エチルヘキシルエステル等が例示でき、この中でも、臭気の点からエポキシ化大豆油が好ましい。
可塑剤の紙用溶剤型グラビア印刷インキ組成物中の含有量は、0.1?5.0質量%が好ましい。
このような可塑剤を添加することにより、重合ロジン及びニトロセルロース樹脂と共に柔軟、密着性、耐熱性のバランスが優れたインキ組成物を得ることができる。
【0016】(有機溶剤)
有機溶剤としては、ケトン系有機溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル系有機溶剤(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチルなど)、アルコール系有機溶剤(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)などが利用できる。
最近の環境問題への対応と、インキの印刷適性や乾燥性などを考慮して、印刷時の有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物の有機溶剤として、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との混合有機溶剤を、エステル系有機溶剤:アルコール系有機溶剤=40/60?95/5の範囲となるように使用することが好ましい。」

上記刊行物3には、次の記載がある。
摘記3a:段落0031
「【0031】本発明にかかるマーキング用インクを構成する必須の成分は上記の通りであるが、これらに加えて、マーキング皮膜の被マーク材への密着性を高めるため、適量の密着性改善成分、例えばガムロジン、エステルガム、テルペン樹脂、石油樹脂あるいはそれらの水素化物等を含有させることも有効であり、またマークに適度の柔軟性を与えて亀裂脱落などを抑えるため、少量の可塑剤、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、エポキシ化油、トリクレジルホスフェート、ロジン誘導体などを配合することも可能である。但しこれら可塑剤は、該して速硬性や耐熱性を害することが多いので、配合するにしてもその量は極力少なく抑えることが望ましい。」

上記刊行物4には、次の記載がある。
摘記4a:段落0004?0006
「【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、処理ポリオレフィンフィルム、および未処理ポリオレフィンフィルムに対する密着性が良好であり、耐ブロッキング性、低温揉み性が良好なポリオレフィンフィルム用印刷インキを提供することにある。
【0005】…本発明の印刷インキは、結着樹脂、顔料あるいは染料等の着色剤、溶剤、および添加剤からなり、主にグラビア印刷、フレキソ印刷、およびスクリーン印刷に使用できる。
【0006】結着樹脂の主成分として使用するポリアミドとしては、分子量が1000?5000、軟化点が110?130℃であること以外に特に限定はない。ポリアミドのジカルボン酸成分としては、公知の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、あるいは芳香族時カルボン酸等を使用することができるが、近年、環境対策として芳香族系溶剤をなるべく少なくする傾向にあり、溶解性の面から脂肪族あるいは脂環式ジカルボン酸を使用するのが好ましい。ジアミン成分としては、公知の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、あるいは芳香族ジアミン等を使用することができるが、上記理由により溶解性の面から、脂肪族ジアミンあるいは脂環式ジアミンを使用するのが好ましい。ポリアミドの分子量は、1000?5000が好ましく、より好ましいのは1000?2000である。1000よりも小さい場合は耐ブロッキング性および耐熱性が低下し、5000を超えると低温揉み性が低下する。このような低分子量のポリアミドを印刷インキに配合した場合、従来使用されている高分子量ポリアミドを配合した場合と比べて、他の結着樹脂との相溶性が高くなるのでインキ塗膜のポリオレフィンフィルムとの密着性が向上する。また粘度が低くなるので、印刷インキの濃度を上げることもできる。ポリアミドの軟化点は110?130℃が好ましい。110℃未満では耐ブロッキング性が低下し、130℃を超えると印刷インキの低温流動性が低下する。したがって、分子量が1000?5000で、かつ軟化点が110?130℃のポリアミドを使用した場合は、耐ブロッキング性、耐熱性、および低温揉み性がともに優れた印刷インキが得られる。ポリアミドの添加量は、結着樹脂全体の60?90質量%が好ましく、さらに好ましくは70?85質量%である。」

摘記4b:段落0012?0013及び0015?0017
「【0012】【実施例】以下に、実施例及び比較例を用い本発明をさらに具体的に説明する。特に断らない限り、部および%はそれぞれ質量部および質量%を表す。
【0013】<樹脂溶液1の調製>ポリアミド(ハリマ化成製「ニューマイド833」;分子量:1500、軟化点:122℃)を、トルエン:イソプロピルアルコール=6:4(質量比)の混合溶剤に溶解し、固形分濃度38%の樹脂溶液1を調製した。…
【0015】<樹脂溶液3の調製>ニトロセルロース(旭化成工業製「HIG7」)を、酢酸エチル:イソプロピルアルコール=6:4(質量比)の混合溶剤に溶解し、固形分濃度11%の樹脂溶液2を調製した。
【0016】<樹脂溶液4の調製>天然ロジンをトルエンに溶解し、固形分濃度50%の樹脂溶液4を調製した。
【0017】(実施例)
<印刷インキAの調製>
樹脂溶液1 40部
樹脂溶液3 10部
酸化チタン(テイカ製「JR-600A」) 25部
可塑剤(大八化学工業製「BM-4」) 2部
溶剤(トルエン:IPA:酢酸エチル=6:3:1(質量比))23部
上記混合物をペイントシェーカーで2時間練肉した後、樹脂溶液4を3.5部加えて、さらにペイントシェーカーで15分間混合し印刷インキAを得た。」

上記刊行物5には、次の記載がある。
摘記5a:段落0018及び0020?0021
「【0018】…本発明では、従来のアルコール可溶性ポリアミド樹脂に、上記条件(1)?(2)で得られるごく低分子量で高凝集力の脂肪酸アミド樹脂を併用添加することにより、アルコール可溶性を確保しながら、上記従来樹脂で問題になっていた耐ブロッキング性や密着性などのインキ特性を有効に克服・改善できる。…
【0020】…脂肪族モノカルボン酸を多く含む天然油脂由来の脂肪酸としては…米糠脂肪酸…が挙げられる。…
【0021】上記重合脂肪酸(B)は…ヌカ油などの植物油系…を重合し、蒸留精製した脂肪酸である。」

摘記5b:段落0027
「【0027】耐熱性、乾燥性などの性能を向上する見地から、ポリアミド樹脂に硝化綿及び有機金属配位化合物を併用添加するが、この場合、硝化綿の配合量は、ポリアミド樹脂に対して5?40重量%、好ましくは10?30重量%である。有機金属配位化合物としては、有機チタネート系、有機アルミニウム系、有機ジルコニウム系化合物などが挙げられるが、ジ-イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、テトライソプロピルチタネート、テトラn-ブチルチタネートなどのアルキルチタネート系化合物が好ましい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物を用いたグラビアインキの配合例を挙げると、例えば、ポリアミド樹脂組成物10?30重量%、硝化綿1?20重量%、顔料5?40重量%、添加剤0?15重量%、溶剤40?70重量%である。」

上記刊行物6には、次の記載がある。
摘記6a:段落0012?0013
「【0012】前記炭素数12?22の脂肪族モノカルボン酸の具体例としては…米ヌカ脂肪酸…があげられる。
【0013】…炭素数が22を超えると、得られるポリアミドの軟化点が低くなって高温高湿下での皮膜安定性が悪化する」

摘記6b:段落0036?0037
「【0036】本発明に用いられる有機金属配位化合物としては、アルキルチタネート系化合物、アルミニウム系化合物などがあげられる。これらの有機金属配位化合物のなかでは、アルキルチタネート系化合物が好ましい。前記アルキルチタネート系化合物の代表例としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネートなどがあげられる。…
【0037】前記有機金属配位化合物の配合量は、強固なインキ皮膜を形成させる観点から、ポリアミドと硝化綿との合計量100重量部に対して、0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上であることが望ましく、また得られるインキ組成物の溶媒安定性の観点から、5重量部以下、好ましくは3重量部以下であることが望ましい。」

摘記6c:段落0042?0043
「【0042】本発明のレーベル印刷用インキ組成物は、前記したように、ポリアミド、硝化綿、着色剤、有機金属配位化合物、および特定の有機溶媒を混合することにより、得られる。
【0043】なお、本発明においては、レーベル印刷用インキ組成物には、必要により、さらに、例えば、可塑剤等の配合剤を適宜混合してもよい。」

上記刊行物7には、次の記載がある。
摘記7a:第41頁右欄第6行?第42頁右欄第3行
「『ピクセスライス』は,米ぬかを搾油した際にできる副産物の非食用米ぬか油を原料としてポリアミド樹脂をつくる。…図1には米ぬかから『ピクセスライスインキ』ができるまでの流れ(工程)を示した。…
米袋に印刷することで,内容物の米とその副産物である米ぬかから作ったインキということで米袋の商品自体を環境配慮製品であることを強くアピールできるとの考えからである。…
紙の包装紙として採用頂いた大日本パックェージ株式会社様では,新規性のあるものを探していた過程でピクセスライスが目に留まり,純白紙に印刷を行ったところ仕上がりが良好だったことから採用に至った(写真2)。
また,ライスインキだからということだけではなく,表刷りのプロセス印刷適性が優れているという点から株式会社ケイパックプロダクツ様でフィルム用のファッションバッグ用に採用頂いている(写真3)。」

(3)刊行物に記載された発明
ア.甲1発明
摘記1bの「本発明のコーテイング用組成物(たとえばグラビア印刷インキまたはフレキソ印刷インキ)は本発明におけるポリアミド樹脂、溶剤、必要により着色剤(染料または顔料)および他の配合剤を含有することができる。…他の配合剤としては可塑剤、ニトロセルロース;ロジン…があげられる。…このようなコーテイング用組成物の組成の1例を示せばポリアミド樹脂20?40重量%、溶剤30?80重量%、着色剤0?40重量%、他の配合剤0?15重量%である。」との記載、
摘記1cの「参考例4 重合脂肪酸(バーサダイム216)173g(0.6当量)、ヒマシ油脂肪酸59.5g(0.2当量)、米ヌカ油脂肪酸56g(0.2当量)、エチレンジアミン30g(1.0当量)を使用し、参考例1と同様に行つて本発明におけるポリアミド樹脂を得た。第1表に物性値を…を示す。」との記載、及び第1表における参考例4のポリアミド樹脂の溶融粘度が200℃で35cpsであることの記載、並びに
摘記1dの「実施例3 参考例1?5および比較例1?3で得られたポリアミド樹脂28.8部、トルエン28.8部、イソプロパノール14.4部を配合したものと、ロジン(W.Wロジン)、ニトロセルロースRS1/4秒(ダイセル(株)製品)4部、酢酸エチル4部、トルエン4部、イソプロパノール4部を配合したものを混合しコーテイング用組成物を作成」との記載からみて、刊行物1には、参考例4で得られたポリアミド樹脂を用いた「実施例3」として、
「重合脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、米ヌカ油脂肪酸及びエチレンジアミンを使用して得られた溶融粘度が200℃で35cpsのポリアミド樹脂28.8部、トルエン28.8部、イソプロパノール14.4部を配合したものと、ロジン、ニトロセルロース4部、酢酸エチル4部、トルエン4部、イソプロパノール4部を配合したものを混合したコーテイング用組成物。」についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

イ.甲4発明
摘記4aの「本発明の印刷インキは、結着樹脂、顔料あるいは染料等の着色剤、溶剤、および添加剤からなり、主にグラビア印刷、フレキソ印刷…に使用できる。」との記載、
摘記4bの「実施例…質量部…を表す。…ポリアミド…を…混合溶剤に溶解し、固形分濃度38%の樹脂溶液1を調製した。…<樹脂溶液3の調製>ニトロセルロース…を…混合溶剤に溶解し、固形分濃度11%の樹脂溶液…を調製した。…天然ロジンを…溶解し、固形分濃度50%の樹脂溶液4を調製した。…印刷インキAの調製…樹脂溶液1 40部 樹脂溶液3 10部 酸化チタン…25部 可塑剤(大八化学工業製「BM-4」)2部 溶剤…23部…樹脂溶液4を3.5部加えて…混合し印刷インキAを得た。」との記載からみて、刊行物4には「印刷インキA」として、
「ポリアミドを含む樹脂溶液(固形分濃度38%)40質量部、ニトロセルロースを含む樹脂溶液(固形分濃度11%)10質量部、酸化チタン25質量部、可塑剤(大八化学工業製「BM-4」)2質量部、溶剤23質量部、及び天然ロジンを含む樹脂溶液(固形分濃度50%)3.5質量部を混合してなるグラビア印刷、フレキソ印刷に使用できる印刷インキ。」についての発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。

(4)刊行物1を主引用例とした場合の検討
ア.対比
本3発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「重合脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、米ヌカ油脂肪酸及びエチレンジアミンを使用して得られた溶融粘度が200℃で35cpsのポリアミド樹脂」は、米ヌカ油脂肪酸(米ぬか脂肪酸)を反応原料に含み、溶融粘度が200℃で35cpsであるから、熱可塑性のポリアミド樹脂であるといえ、本3発明の「米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)」に相当する。
甲1発明の「ニトロセルロース」は、株式会社岩波書店 広辞苑第六版に「セルロースの硝酸エステル。正しくは硝酸セルロース。セルロースを硫酸・硝酸・水の混合液で処理してつくる。混合液の組成によりエステル化の程度(窒素の含有率で表し硝化度という)の異なるものを得る。硝化度の高いものは火薬、硝化度の低いものはラッカー・フィルムなどとして使用する。硝酸繊維素。硝化綿。」と記載されるように、硝酸繊維素、硝化綿とも呼ばれるものであるところ、本件特許明細書の段落0018に「繊維素系樹脂(B)の代表的なものとしては、硝化綿を挙げる事ができる。」と記載されていることから、本3発明の「繊維素系樹脂(B)」に相当する。
甲1発明の「酢酸エチル」、「トルエン」及び「イソプロパノール」は、摘記1bの「溶剤としては…イソプロパノール…トルエン…酢酸エチルなど…の混合物があげられ」との記載からみて、本3発明の「有機溶剤(C)」に相当する。
甲1発明の「コーテイング用組成物」は、溶剤を含有する液体の組成物であり、摘記1aの「ポリアミド樹脂含有コーテイング用組成物(たとえばグラビア印刷インキ組成物またはフレキソ印刷インキ組成物)」との記載からみて「インキ組成物」であることが明らかであるから、本3発明の「リキッドインキ組成物」に相当する。

してみると、本3発明と甲1発明は、「米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)、繊維素系樹脂(B)、及び有機溶剤(C)を含有するリキッドインキ組成物。」に関するものである点において一致し、次の〔相違点α〕?〔相違点γ〕の3つの点において相違する。

〔相違点α〕本3発明は、「可塑剤(D)」を含有し「前記可塑剤(D)がスルホン酸アミド系であり、その添加量が組成物全量の0.1?5.0質量%であ」るのに対して、甲1発明は、可塑剤を含有することは規定されていない点。

〔相違点β〕本3発明は、「キレート架橋剤(E)を組成物全量の0.1?5.0質量%含有」するのに対して、甲1発明は、キレート架橋剤を含有しない点。

〔相違点γ〕本3発明は、「着色剤(F)」を含有するのに対して、甲1発明は、着色剤を含有しない点。

イ.判断
上記〔相違点α〕及び〔相違点β〕についてまとめて検討する。
本件特許明細書の段落0042の「表1」には、スルホン酸アミド系の可塑剤(Sibercizer C6、N-エチルo/p-トルエンスルホンアミド)を0.1?9.0質量%の添加量で用い、更にキレート架橋剤(チタンTAA、チタニウムアセチルアセトネート)を1.0質量%用いた場合に、表1の8つの評価項目で示された特性について記載され、とりわけ、接着性、耐摩擦性、印刷適性に関して、スルホン酸アミド系の可塑剤を0.1?5.0質量%の添加量で用いた場合に、より優れた評価結果が得られたことが示されている。
そうすると、本3発明は、可塑剤を「スルホン酸アミド系」とし、その添加量、及びキレート架橋剤の添加量を特定することにより、本件特許明細書に示された特性について格別顕著な作用効果を奏するものということができる。
これに対して、刊行物1?7には、リキッドインキ組成物において「可塑剤(D)がスルホン酸アミド系であり、その添加量が組成物全量の0.1?5.0質量%であり、更に、キレート架橋剤(E)を組成物全量の0.1?5.0質量%含有」する点について記載がない。
してみると、上記〔相違点α〕及び〔相違点β〕について、その構成を想到し、効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、上記〔相違点γ〕について検討するまでもなく、本3発明は、刊行物1?7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。

(5)刊行物4を主引用例とした場合の検討
ア.対比
本3発明と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「ポリアミドを含む樹脂溶液(固形分濃度38%)40質量部」に含まれる「ポリアミド」と、本3発明の「米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)」は、両者とも「ポリアミド樹脂」という点において共通する。
甲4発明の「ニトロセルロースを含む樹脂溶液(固形分濃度11%)10質量部」に含まれる「ニトロセルロース」は、上記(4)ア.で述べたように、本3発明の「繊維素系樹脂(B)」に相当する。
甲4発明の「可塑剤(大八化学工業製「BM-4」)2質量部」は、甲第6号証(製品一覧 大八化学工業株式会社)の「スルホンアミド BM-4 N-ブチルベンゼンスルホンアミド」との記載、及び甲4発明の印刷インキを構成する全成分の合計値が40+10+25+2+23+3.5=103.5質量部になることからみて、スルホン酸アミド系の可塑剤を2質量部/103.5質量部=1.93質量%の量で配合しているものと解されることから、本3発明の「可塑剤(D)」及び「前記可塑剤(D)がスルホン酸アミド系であり、その添加量が組成物全量の0.1?5.0質量%であり」に相当する。
甲4発明の「溶剤23質量部」を含む各種の溶剤は、摘記4bの記載からみてイソプロピルアルコール(IPA)や酢酸エチルなどの有機系の溶剤を使用しているものであることから、本3発明の「有機溶剤(C)」に相当する。
甲4発明の「酸化チタン25質量部」は、刊行物5(甲5)の段落0048の「白色顔料…酸化チタン」との記載から、白色顔料であり、本件特許明細書の段落0022及び0024に「着色剤(F)としては…無機顔料…を挙げることができる。…無機顔料としては…酸化チタン…などが挙げられる。白インキには酸化チタン…を使用することが…好ましい。」と記載され、酸化チタンも「着色剤(F)」に含まれるから、本3発明の「着色剤(F)」に相当する。
甲4発明の「グラビア印刷、フレキソ印刷に使用できる印刷インキ」は、各種の樹脂溶液と溶剤という液状物質を混合してなるものであって、液体(リキッド)の形態にある組成物と解されることから、本3発明の「リキッドインキ組成物」に相当する。

してみると、本3発明と甲4発明は、「ポリアミド樹脂(A)、繊維素系樹脂(B)、有機溶剤(C)、及び可塑剤(D)を含有するリキッドインキ組成物であって、前記可塑剤(D)がスルホン酸アミド系であり、その添加量が組成物全量の0.1?5.0質量%であり、更に、着色剤(F)を含有するリキッドインキ組成物。」という点において一致し、次の〔相違点δ〕及び〔相違点ε〕の2つの点において相違する。

〔相違点δ〕ポリアミド樹脂が、本3発明は「米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂」であるのに対して、甲4発明は「米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂」であるかどうか不明な点。

〔相違点ε〕本3発明は、「キレート架橋剤(E)を組成物全量の0.1?5.0質量%含有」するものであるのに対して、甲4発明は、キレート架橋剤を含有しない点。

イ.判断
事案に鑑み、上記〔相違点ε〕について先ず検討する。
上記(4)イ.で述べたように、本3発明は、可塑剤を「スルホン酸アミド系」とし、その添加量、及びキレート架橋剤の添加量を特定することにより、本件特許明細書に示された特性について格別顕著な作用効果を奏するものということができる。
これに対して、刊行物1?7には、リキッドインキ組成物において「可塑剤(D)がスルホン酸アミド系であり、その添加量が組成物全量の0.1?5.0質量%であり、更に、キレート架橋剤(E)を組成物全量の0.1?5.0質量%含有」する点について記載がない。
してみると、上記〔相違点ε〕について、その構成を想到し、効果を予測することが、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、上記〔相違点δ〕について検討するまでもなく、本3発明は、刊行物1?7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。

(7)本4及び本5発明について
本4及び本5発明は、本3発明を引用し、さらに限定したものであるから、本3発明が刊行物1?7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本4及び本5発明が刊行物1?7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本4及び本5発明は、刊行物1?7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。

2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書の第16頁第8?10行において「本件請求項1?5に記載の本件特許発明は、いずれも、甲第1?5号証から当業者が容易に想到することのできるものであり、進歩性を欠如するものであります。」と主張しているところ、当審が特許権者に通知した取消理由は「上記第4 1.(1)」に示したとおりであり、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。

第5 まとめ
以上総括するに、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本3?本5発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本3?本5発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、訂正前の請求項1及び2は削除されているので、請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 削除
【請求項2】 削除
【請求項3】
米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)、繊維素系樹脂(B)、有機溶剤(C)、及び可塑剤(D)を含有するリキッドインキ組成物であって、前記可塑剤(D)がスルホン酸アミド系であり、その添加量が組成物全量の0.1?5.0質量%であり、
更に、キレート架橋剤(E)を組成物全量の0.1?5.0質量%含有し
更に、着色剤(F)を含有するリキッドインキ組成物。
【請求項4】
前記有機溶剤(C)が芳香族有機溶剤及び/又はケトン系溶剤を含まない請求項3に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項5】
請求項3?4の何れか1つに記載のリキッドインキを印刷してなる印刷物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-23 
出願番号 特願2017-67647(P2017-67647)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 木村 敏康
天野 宏樹
登録日 2017-12-08 
登録番号 特許第6255123号(P6255123)
権利者 DICグラフィックス株式会社
発明の名称 リキッドインキ組成物  
代理人 小川 眞治  
代理人 小川 眞治  
代理人 河野 通洋  
代理人 河野 通洋  

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