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審決分類 |
審判 全部申し立て 特39条先願 C08L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 C08L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L |
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管理番号 | 1353158 |
異議申立番号 | 異議2018-700644 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-08-03 |
確定日 | 2019-06-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6276927号発明「ハイドロゲル形成性組成物及びそれより作られるハイドロゲル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6276927号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕、〔9?12〕について訂正することを認める。 特許第6276927号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6276927号は、平成30年1月19日付けでその特許権の設定登録がされ、同年2月7日にその特許公報が発行され、その後、請求項1?12に係る特許に対して、同年8月3日に特許異議申立人 宮本俊明(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。 平成30年10月31日付け:取消理由の通知 同年12月28日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者) 平成31年 2月21日 :意見書の提出(申立人) 第2 訂正の可否 1 訂正の内容 平成30年12月28日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1?8及び請求項9?12は、それぞれ一群の請求項である。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の 「前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤である」を、 「前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される分散剤である」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項9の 「前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤である」を、 「前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される分散剤である」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項12の 「各々請求項9乃至請求項11のいずれか1項に特定されるところの、前記電解質高分子(A)、前記クレイ粒子(B)、及び前記分散剤(C)、並びに水又は含水溶媒を混合してゲル化させることを特徴とする伸縮性ハイドロゲルの製造方法。」を、 「電解質高分子(A)、クレイ粒子(B)、及び該クレイ粒子の分散剤(C)を含むハイドロゲル形成性組成物から作られ、直径6mm、長さ2cmの円柱形を成すハイドロゲル成形体において、長さ方向に2倍以上に伸縮可能な伸縮性ハイドロゲルの製造方法であって、 前記電解質高分子(A)、前記クレイ粒子(B)、及び前記分散剤(C)、並びに水又は含水溶媒を混合してゲル化させることを特徴とし、 前記電解質高分子(A)が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩であり、 前記クレイ粒子(B)が水膨潤性ケイ酸塩粒子であり、 前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される分散剤である伸縮性ハイドロゲルの製造方法。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、本件特許の請求項1に係る組成物のうち、水膨潤性ケイ酸塩粒子である分散剤(C)を、「分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」ものに限定するものである。 この訂正は、本件明細書【0019】の「分散剤(C)として、ケイ酸塩の分散性の向上や、層状ケイ酸塩を層剥離させる目的で使用される分散剤又は解膠剤を使用することができる。」との記載に基づくものである。 そうすると、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、訂正事項1と同様の訂正事項である。したがって、上記(1)で検討したことと同様の理由により、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の請求項9を引用する形式であった訂正前の請求項12に関し、訂正前の請求項9の構成を記載すると共に引用する形式を廃して独立形式とし、更に、訂正事項1や2と同様の「分散剤(C)」の限定事項を加えたものである。 そうすると、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。 第3 本件訂正後の請求項1?12に係る発明 本件訂正により訂正された訂正請求項1?12に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。 【請求項1】 解質高分子(A)、クレイ粒子(B)、及び該クレイ粒子の分散剤(C)を含む、ハイドロゲル形成性組成物であって、 前記電解質高分子(A)が有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する電解質高分子であり、 前記クレイ粒子(B)が水膨潤性ケイ酸塩粒子であり、 前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される分散剤であることを特徴とする、ハイドロゲル形成性組成物。 【請求項2】 前記電解質高分子(A)がカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有する電解質高分子である、請求項1に記載のハイドロゲル形成性組成物。 【請求項3】 前記電解質高分子(A)が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、請求項1又は請求項2に記載のハイドロゲル形成性組成物。 【請求項4】 前記電解質高分子(A)が重量平均分子量100万乃至1000万の完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のハイドロゲル形成性組成物。 【請求項5】 前記クレイ粒子(B)がスメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子である、請求項1に記載のハイドロゲル形成性組成物。 【請求項6】 前記分散剤(C)がオルトリン酸ナトリウム、二リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びポリリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載のハイドロゲル形成性組成物。 【請求項7】 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のハイドロゲル形成性組成物から作られるハイドロゲル。 【請求項8】 各々請求項1乃至請求項6のいずれか1項に特定されるところの、前記電解質高分子(A)、前記クレイ粒子(B)、及び前記分散剤(C)、並びに水又は含水溶媒を混合してゲル化させることを特徴とするハイドロゲルの製造方法。 【請求項9】 電解質高分子(A)、クレイ粒子(B)、及び該クレイ粒子の分散剤(C)を含むハイドロゲル形成性組成物から作られ、直径6mm、長さ2cmの円柱形を成すハイドロゲル成形体において、長さ方向に2倍以上に伸縮可能な伸縮性ハイドロゲルであって、 前記電解質高分子(A)が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩であり、 前記クレイ粒子(B)が水膨潤性ケイ酸塩粒子であり、 前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される分散剤である、伸縮性ハイドロゲル。 【請求項10】 前記ハイドロゲル100質量%中、前記電解質高分子(A)の含有量が0.1質量%乃至2.0質量%、前記クレイ粒子(B)の含有量が1.0質量%乃至5.0質量%、及び前記分散剤(C)の含有量が0.1質量%乃至1.0質量%である、請求項9に記載の伸縮性ハイドロゲル。 【請求項11】 前記電解質高分子(A)が重量平均分子量100万乃至1000万の完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩、前記クレイ粒子(B)がスメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子、並びに前記分散剤(C)がオルトリン酸ナトリウム、二リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びポリリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項9又は請求項10に記載の伸縮性ハイドロゲル。 【請求項12】 電解質高分子(A)、クレイ粒子(B)、及び該クレイ粒子の分散剤(C)を含むハイドロゲル形成性組成物から作られ、直径6mm、長さ2cmの円柱形を成すハイドロゲル成形体において、長さ方向に2倍以上に伸縮可能な伸縮性ハイドロゲルの製造方法であって、 前記電解質高分子(A)、前記クレイ粒子(B)、及び前記分散剤(C)、並びに水又は含水溶媒を混合してゲル化させることを特徴とし、 前記電解質高分子(A)が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩であり、 前記クレイ粒子(B)が水膨潤性ケイ酸塩粒子であり、 前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される分散剤である伸縮性ハイドロゲルの製造方法。 第4 取消理由通知について 1 取消理由通知の概要 当審は平成30年10月31日付け取消理由通知において、概要以下のとおりの取消理由を通知した。 「A (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 記 … 2 理由Aについて … この「クレイ粒子の分散剤(C)」に関し、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 … このように、発明の詳細な説明からは、本件発明1に係る「クレイ粒子の分散剤」に用いうるものとして、上記【0019】に記載される各種リン酸のナトリウム塩以外に、どのような分散剤が該当するのか、そして、それらは「混合するだけで作製することができる、優れた力学物性を持つ高分子/ナノ微粒子コンポジットハイドロゲルの提供」や「優れた伸縮性を有する高分子/ナノ微粒子コンポジットハイドロゲルの提供」(共に【0006】)といった、本件発明の課題を解決するように実施しうるのか、発明の詳細な説明のその余の記載を参酌しても、明らかであるとはいえない。 このため、発明の詳細な説明に記載された発明が、請求項1に記載された事項で特定される本件発明1であるのか否か不明である。 したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。」 2 検討 本件訂正により、本件発明1に係る「クレイ粒子の分散剤」は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される分散剤」となった。この点に関し、異議申立書及び平成31年2月21日提出の意見書において、申立人が主張するように、本件発明の詳細な説明の実施例では、係る「クレイ粒子の分散剤」としては、具体的には二リン酸ナトリウム十水和物しか示されていない。 しかし、係る「クレイ粒子の分散剤」は、単なる「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤」に留まらず、「水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる」ものであり、そして、本件明細書【0019】には「分散剤(C)としては、オルトリン酸ナトリウム、二リン酸ナトリウム(ピロリン酸ナトリウム)、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びポリリン酸ナトリウムが挙げられる。その中でも、好ましくは二リン酸ナトリウムである。」と記載されており、このような性質を有するものとしての例示と解することができる。 そうすると、本件発明1に係る「クレイ粒子の分散剤」である「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される分散剤」は、どのようなものであるか具体的例示をもとに把握でき、本件発明の課題を解決するように実施しうるものと認められる。 このため、請求項1に記載された事項で特定される本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえ、上記取消理由通知で示した取消理由は理由がない。 「クレイ粒子の分散剤(C)」に関し、同様の規定がある本件発明9、12、更には、本件発明1又は9を直接的あるいは間接的に引用する本件発明2?5、7、8、10についても同様である。 よって、上記取消理由通知で示した理由Aからは、本件発明1?5、7?12に係る特許を取り消すことはできない。 第5 異議申立ての理由についての検討 1 異議申立ての理由の概要 申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。なお、甲第1?4及び7?11号証、並びに、甲第5?6号証の各々に対応する国際公開公報は、本件出願前(優先権主張日前)において公知のものである。また、甲第12?14号証の各々に係る出願は、その優先日が本件の優先日と同日のものである。 甲第1号証:特開昭62-254841号公報(以下「甲1」という。) 甲第2号証:特開昭62-254842号公報(以下「甲2」という。) 甲第3号証:特開昭62-223203号公報(以下「甲3」という。) 甲第4号証:特表昭62-500033号公報(以下「甲4」という。) 甲第5号証:特表2014-500366号公報(以下「甲5」という。) 甲第6号証:特表2014-504317号公報(以下「甲6」という。) 甲第7号証:特許第5041807号公報(以下「甲7」という。) 甲第8号証:特開2002-226599号公報(以下「甲8」という。) 甲第9号証:特開2005-75852号公報(以下「甲9」という。) 甲第10号証:特開平11-92565号公報(以下「甲10」という。) 甲第11号証:特開平4-81492号公報(以下「甲11」という。) 甲第12号証:国際公開第2014/046136号(以下「甲12」という。) 甲第13号証:国際公開第2014/046127号(以下「甲13」という。) 甲第14号証:国際公開第2014/046124号(以下「甲14」という。) ・申立ての理由1 下記のとおり、本件各請求項に係る発明は、対応する甲各号証に記載された発明であり、取り消すべきものである。 本件請求項1?3:甲1?3、5?11の各々 本件請求項5:甲2、5?11の各々 本件請求項6:甲5、6の各々 本件請求項7、8:甲1?3、5、6、11の各々 ・申立ての理由2 下記のとおり、本件各請求項に係る発明は、対応する甲各号証に記載された発明に基づき容易に想到し得たものであり、取り消すべきものである。 本件請求項1?5:甲1?11の各々 本件請求項6:甲5、6の各々 本件請求項7、8:甲1?6、11の各々 本件請求項9、10、12:甲1又は2又は3、甲4、及び、甲5又は6 本件請求項9?12:甲5又は6、及び、甲4 ・申立ての理由3 下記のとおり、本件各請求項に係る発明は、対応する甲各号証に記載された発明と同一であり、取り消すべきものである。 本件請求項1?5、7、8:甲12 本件請求項1?7:甲13、14の各々 ・申立ての理由4 本件請求項1?12に係る発明は、明瞭でない。本件請求項1?12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 2 申立ての理由1について (1)甲1に基づくもの ア 甲1に記載された事項 (ア)「2.特許請求の範囲 (1)モノマーの重合により得られたアクリル酸アルカリ塩を重合体の構成成分として含有する吸水性ポリマーを共沸脱水時に、無機物質の存在下、2個以上の官能基を有する架橋剤で架橋せしめ、次いで乾燥することを特徴とする高膨張型吸水性ポリマーの製造法。 … (3)無機物質が層状構造を有するタルク、パイロフィライト、またはカオリナイトである特許請求の範囲第1項記載の高膨張型吸水性ポリマーの製造法。」 (イ)「カルボキシル基を含有する高膨張型ポリマーを得る方法としては、本発明では、重合後、共沸脱水で乾燥するため、作業性等から見てW/O懸濁重合が望ましい。W/O懸濁重合は、界面活性剤として、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル及び、エチルセルロース、ベンジルセルロース等のセルロースエーテル、マレイン化ポリエチレン、マレイン化ポリブタジエン等の高分子分散剤を例示することが出来、これらの1種又は2種以上いずれを用いても良い。又、その時に用いる疎水性溶媒としては、n-ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素を例示することができる。」(2頁右下欄8行?3頁左上欄5行) (ウ)「実施例1 攪拌機、還流冷却管、滴下ろう(注:原文はさんずいに戸。以下同じ。)斗、及び窒素ガス導入管を備えた1lのセパラフラスコにn-ヘキサン360.7g、ソルビタンモノラウレート4.32gを仕込み、50℃まで昇温し溶解後、室温下で過硫酸カリウム0.24gを水10gに溶解した水溶液を添加した。 一方、三角フラスコ中でアクリル酸72.0gを水93.6gに溶解した水酸化ナトリウム32.2gで部分中和し、モノマー水溶液中のモノマー濃度を43%とした。このモノマー水溶液を上記のセパラフラスコに窒素気流バブリング下に1時間かけて滴下、重合し、1時間還流後、30%過酸化水素水0.1gを添加し、さらに還流を2時間続けた。 その後、タルク(長崎県大串産、化学組成SiO_(2) 62.53%,Al_(2)O_(3) 1.05%,Fe_(2)O_(3) 1.34%,CaO 0.15%,MgO 30.96%,Na_(2)O 0.11%,K_(2)O 0.05%,H_(2)O 4.67%)8.85g、及びエチレングリコールジグリシジルエーテル0.73gを添加し、共沸脱水を行い乾燥すると、白色の粉粒状ポリマーを得た。 得られた乾燥ポリマーは、イオン交換水に対する吸水能が200(g/g)、生理食塩水に対する吸水能が45(g/g)、体積倍率3.0(cm^(3)/cm^(3))(水2.0g添加)のポリマーであった。 また、上記で得られた乾燥ポリマー(16メッシュふるい通過)0.2gにイオン交換水を加え、イオン交換水の添加量と膨潤ポリマーの体積倍率V/V_(0)との関係を調べた。」(4頁左上欄17行?左下欄5行) イ 甲1に記載された発明(甲1発明) 上記ア(ア)?(ウ)の記載から、甲1には以下の甲1発明が記載されているといえる。 「界面活性剤であるソルビタンモノラウレート存在下でのモノマーの重合により得られたアクリル酸アルカリ塩を重合体の構成成分として含有する吸水性ポリマーを共沸脱水時に、層状構造を有するタルク、パイロフィライト、またはカオリナイトである無機物質の存在下、2個以上の官能基を有する架橋剤で架橋せしめ、次いで乾燥することを特徴とする高膨張型吸水性ポリマー」 ウ 対比・判断 本件発明1と甲1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点a1:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子」である「クレイ粒子」を用いるのに対し、甲1発明は「層状構造を有するタルク、パイロフィライト、またはカオリナイト」である「無機物質」を用いる点。 相違点a2:本件発明1は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲1発明は「ソルビタンモノラウレート」である「界面活性剤」を用いる点。 (ア)まず、相違点a2に関し、上記ア(イ)に「W/O懸濁重合は、界面活性剤として、…ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル…等の高分子分散剤を例示することが出来」と記載されるように、「ソルビタンモノラウレート」は「W/O懸濁重合」のための界面活性剤であり、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤」ではなく、「水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」ものでもない。 (イ)また、相違点a1に関し、「層状構造を有するタルク、パイロフィライト、またはカオリナイト」は、本件発明でいう「水膨潤性」を有することが明らかでない。 (ウ)そうすると、この二つの相違点において本件発明1と甲1発明とは明確に相違し、両者は同一であるということはできない。 (2)甲2に基づくもの ア 甲2に記載された事項 (ア)「2.特許請求の範囲 (1)モノマーの重合により得られたアクリル酸アルカリ塩を重合体の構成成分として含有する吸水性ポリマーを共沸脱水時に、無機物質の存在下、2個以上の官能基を有する架橋剤で架橋せしめ、次いで乾燥することを特徴とする高膨張型吸水性ポリマーの製造方法。 … (3)無機物質がモンモリロナイトまたはモンモリロナイトの酸処理物である特許請求の範囲第1項または第2項に記載の高膨張型吸水性ポリマーの製造方法。」 (イ)「カルボキシル基を含有する高膨張型ポリマーを得る方法としては、本発明では、重合後、共沸脱水で乾燥するため、作業性等から見てW/O懸濁重合が望ましい、W/O懸濁重合は、界面活性剤として、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル及び、エチルセルロース、ベンジルセルロース等のセルロースエーテル、マレイン化ポリエチレン、マレイン化ポリブタジエン等の高分子分散剤を例示することが出来、これらの1種又は2種以上いずれを用いても良い。又、その時に用いる疎水性溶媒としては、n-ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素を例示することができる。」(2頁右下欄9行?3頁左上欄6行) (ウ)「実施例1 攪拌機、還流冷却管、滴下ろう斗、及び窒素ガス導入管を備えた1lのセパラフラスコにn-ヘキサン380.7g、ソルビタンモノラウレート4.32gを仕込み、50℃まで昇温し溶解後、室温下で過硫酸カリウム0.24gを水10gに溶解した水溶液を添加した。 一方、三角フラスコ中でアクリル酸72.0gを水93.8gに溶解した水酸化ナトリウム32.2gで部分中和し、モノマー水溶液中のモノマー濃度を43%とした。このモノマー水溶液を上記のセパラフラスコに窒素気流バブリング下に1時間かけて滴下、重合し、1時間還流後、30%過酸化水素水0.1gを添加し、さらに還流を2時間続けた。 その後、モンモリロナイト(山形県左沢産、化学組成SiO_(2) 57%,TiO_(2) 0.01%,Al_(2)O_(3) 21.9%,Fe_(2)O_(3) 1.92%,MgO 3.50%,CaO 0.83%,Na_(2)O 2.85%,K_(2)O 0.17%,H_(2)O 10.90%)8.85g、及びエチレングリコールジグリシジルエーテル0.73gを添加し、共沸脱水を行い乾燥すると、白色の粉粒状ポリマーを得た。 得られた乾燥ポリマーは、イオン交換水に対する吸水能が190(g/g)、生理食塩水に対する吸水能が35(g/g)、体積倍率3.0(cm^(3)/cm^(3))(水2.0g添加)のポリマーであった。 また、上記で得られた乾燥ポリマー(16メッシュふるい通過)0.2gにイオン交換水を加え、イオン交換水の添加量と膨潤ポリマーの体積倍率V/V_(0)との関係を調べた。」(4頁左上欄20行?左下欄8行) イ 甲2に記載された発明(甲2発明) 上記ア(ア)?(ウ)の記載から、甲2には以下の甲2発明が記載されているといえる。 「界面活性剤であるソルビタンモノラウレート存在下でのモノマーの重合により得られたアクリル酸アルカリ塩を重合体の構成成分として含有する吸水性ポリマーを共沸脱水時に、モンモリロナイトまたはモンモリロナイトの酸処理物である無機物質の存在下、2個以上の官能基を有する架橋剤で架橋せしめ、次いで乾燥することを特徴とする高膨張型吸水性ポリマー」 ウ 対比・判断 本件発明1と甲2発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点b1:本件発明1は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲2発明は「ソルビタンモノラウレート」である「界面活性剤」を用いる点。 相違点b1は相違点a2と同一であることに鑑みると、上記(1)ウ(ア)で示したことと同様の理由により、本件発明1と甲2発明とは明確に相違し、両者は同一であるということはできない。 (3)甲3に基づくもの ア 甲3に記載された事項 (ア)「2.特許請求の範囲 (1)モノマーの重合により得られたアクリル酸アルカリ塩を重合体の構成成分として含有する吸水性ポリマーを共沸脱水時に、無機塩の存在下、2個以上の官能基を有する架橋剤で架橋せしめ、次いで乾燥することを特徴とする高膨張型吸水性ポリマーの製造法。 (2)無機塩が陰イオン交換能を有する二元金属水酸化物である特許請求の範囲第1項記載の高膨張型吸水性ポリマー製造法。 (3)陰イオン交換能を有する二元金属水酸化物がハイドロタルサイトである特許請求の範囲第2項記載の高膨張型吸水性ポリマーの製造法。」 (イ)「カルボキシル基を含有する高膨張型ポリマーを得る方法としては、本発明では、重合後、共沸脱水で乾燥するため、作業性等から見てW/O懸濁重合が望ましい。W/O懸濁重合は、界面活性剤として、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル及び、エチルセルロース、ベンジルセルロース等のセルロースエーテルマレイン化ポリエチレン、マレイン化ポリブタジエン等の高分子分散剤を例示することが出来、これらの1種又は2種以上いずれを用いても良い。又、その時に用いる疎水性溶媒としては、n-へキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素を例示することができる。」(2頁右下欄5行?3頁左上欄2行) (ウ)「実施例1 攪拌機、還流冷却管、滴下ろう斗、及び窒素ガス導入管を備えた1lのセパラフラスコにn-ヘキサン380.7g、ソルビタンモノラウレート4.32gを仕込み、50℃まで昇温し溶解後、室温下で過硫酸カリウム0.24gを水10gに溶解した水溶液に添加した。 一方、三角フラスコ中でアクリル酸72.0gを水93.8gに溶解した水酸化ナトリウム32.2gで部分中和し、モノマー水溶液中のモノマー濃度を43%とした。このモノマー水溶液を上記のセパラフラスコに窒素気流バブリング下に1時間かけて滴下、重合し、1時間還流後、30%過酸化水素水0.1gを添加し、さらに還流を2時間続けた。 その後、合成ハイドロタルサイト8.85g(協和化学、キョーワード500.Mg_(6)Al_(2)(OH)_(16)CO_(3)・4H_(2)O)、及びエチレングリコールジグリシジルエーテル0.73gを添加し、共沸脱水を行い乾燥すると、白色の粉粒状ポリマーを得た。 得られた乾燥ポリマーは、イオン交換水に対する吸水能が210(g/g)、生理食塩水に対する吸水能が40(g/g)、体積倍率3.5(cm^(3)/cm^(3))(水2.0g添加)のポリマーであった。 また、上記で得られた乾燥ポリマー(16メッシュふるい通過)0.2gにイオン交換水を加え、イオン交換水の添加量と膨潤ポリマーの体積倍率V/V_(0)との関係を調べた。結果は第1図曲線Aに示すように、水の添加量に相当する体積よりも著しく大きい体積膨張を示した。比較のために市販のアクリル酸ナトリウム系の吸水性ポリマー(花王(株)社製ポイズSA-20)0.2gについて同様の試験をしたところ、第1図曲線Bに示した如く体積膨張は小さかった。」(4頁左上欄13行?左下欄5行) イ 甲3に記載された発明(甲3発明) 上記ア(ア)?(ウ)の記載から、甲3には以下の甲3発明が記載されているといえる。 「界面活性剤であるソルビタンモノラウレート存在下でのモノマーの重合により得られたアクリル酸アルカリ塩を重合体の構成成分として含有する吸水性ポリマーを共沸脱水時に、ハイドロタルサイトである無機塩の存在下、2個以上の官能基を有する架橋剤で架橋せしめ、次いで乾燥することを特徴とする高膨張型吸水性ポリマー」 ウ 対比・判断 本件発明1と甲3発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点c1:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子」である「クレイ粒子」を用いるのに対し、甲3発明は「ハイドロタルサイト」である「無機塩」を用いる点。 相違点c2:本件発明1は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲3発明は「ソルビタンモノラウレート」である「界面活性剤」を用いる点。 相違点c2は相違点a2と同一であること、相違点c1に関し、甲3発明の「ハイドロタルサイト」は本件発明でいう「水膨潤性」を有することが明らかでないことに鑑みると、上記(1)ウで示したことと同様の理由により、本件発明1と甲3発明とは明確に相違し、両者は同一であるということはできない。 (4)甲5に基づくもの ア 甲5に記載された事項 (ア)「【請求項1】 吸水性の表面改質されたクレイ結合ポリカルボン酸及び/又はポリカルボキシレートポリマーであって、 a)i)均一に分散した、対向する基底小板表面及び小板エッジを有するクレイ小板と、ii)溶解又は均一に分散した、カルボン酸基及び/若しくはカルボキシレート基を含む重合性モノマー、並びに/又は前記モノマーのうちの1つ以上の重合性オリゴマーと、を含む重合反応水溶液を得る工程であって、 前記水溶液が、6以下のpHを有し、かつ前記クレイ小板の前記基底表面が、表面改質化合物で改質される、工程と、 b)工程a)の前記液体中で前記モノマー及び/又はオリゴマーの重合を開始する工程と、を含む重合反応により得られる吸水性の表面改質されたクレイ結合ポリカルボン酸及び/又はポリカルボキシレートポリマー。 … 【請求項4】 前記反応液が、モノマーを含み、前記モノマーが、アクリル酸及び/又はアクリレート塩であり、前記ポリマーが、ポリアクリル酸ポリマー及び/又はポリアクリレートポリマーである、請求項1?3のいずれか一項に記載の吸水性の表面改質されたクレイ結合ポリカルボン酸ポリマー及び/若しくはポリカルボキシレートポリマー、又は方法。 … 【請求項12】 前記クレイ小板が、 i)リン酸化化合物であって、好ましくは、リン酸化塩、縮合リン酸塩、その誘導体及びその酸形態、ホスホン酸、その誘導体及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、リン酸化化合物、 ii)前記式SiR^(I)R^(II)R^(III)R^(IV)のシラン化化合物であって、R^(I)、R^(II)、R^(III)、R^(IV)部分がそれぞれ、サブグループa)アルキル、アリール、O-アルキル(アルコキシ)、N-アルキル、アルケン、アルケニル、及びb)水素、ハロゲン化物、及びc)ヒドロキシ、カルボキシ含有部分、エポキシ含有部分、イソシアノ含有部分からなる群から選択され、但し、前記部分のうちの少なくとも1つかつ最大3つが、前記サブグループa)から選択され、前記部分のうちの少なくとも1つかつ最大3つが、前記サブグループc)から選択され、前記部分の最大1つが前記サブグループb)から選択されるものとする、シラン化化合物; ii)フッ素化化合物であって、好ましくは、MF塩であり、Mが、一価カチオンである、フッ素化化合物、 又は上記のいずれかの混合物からなる群から選択される1つ以上のエッジ改質化合物により改質されるエッジを有する、請求項1?11のいずれか一項に記載の吸水性の表面改質されたクレイ結合ポリカルボン酸ポリマー及び/若しくはポリカルボキシレートポリマー、又は方法。」 (イ)「【0013】 前記ポリマーが、前記表面改質されたクレイ小板が実質的に均一に分散される方法/液体を用いて、前記改質されたクレイ小板により結合される、そのような吸水性SMCポリマーは、2つの結合点(例えば、2つのクレイ小板)の間にポリマー鎖セグメントの長さの狭い分散を有すると考えられる。したがって、吸水性SMCポリマーが、流体吸収に起因して膨張すると、それらは(実質的に)すべて移動し、同程度まで延伸すると考えられる。機構的に、同一の改質されたクレイ小板に結合されたポリマーは、共働して力(伸長又は圧力)を維持し、次いでこれは、架橋が有機架橋基によりのみ達成される、従来の架橋ポリマーネットワークと比較して、破断するまでの伸びを増加させると考えられる。このSMCポリマーは、せん断応力/歪みに対する耐性の増加を有し得る。これは、変形、したがってゲルブロッキングを減少させる。更に、クレイ小板の親水性性質に起因して、得られるSMCポリマーは、吸収速度において利点を有し得ると考えられる。」 (ウ)「【0031】 本明細書において改質される好適なクレイの例は、いわゆる膨潤性クレイ、すなわち、ヘクトライトを含む、スメクタイト型クレイであり、ラポナイト(すなわち、合成クレイ)、モンモリロナイト、サポナイト、バーミキュライト若しくはカオリン、又はそれらの混合物を含み、一実施形態では、ラポナイトを含む、モンモリロナイト及び/又はヘクトライトが好ましい。(これらのクレイは、水膨潤性と呼ばれる場合が多いが、本明細書に記載される実施形態では、クレイは、実質的に個別のクレイ小板として提示され、したがってそれらはもはや水膨潤性でないことに留意されたい。)」 イ 甲5に記載された発明(甲5発明) 上記ア(ア)の記載から、甲5には以下の甲5発明が記載されているといえる。 「リン酸化塩、縮合リン酸塩、その誘導体及びその酸形態、ホスホン酸、その誘導体及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、リン酸化化合物でエッジ改質されたクレイ小板を用いた、ポリマーが、ポリアクリル酸ポリマー及び/又はポリアクリレートポリマーである、吸水性の表面改質されたクレイ結合ポリカルボン酸及び/又はポリカルボキシレートポリマー」 ウ 対比・判断 本件発明1と甲5発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点e1:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子」である「クレイ粒子」を用いるのに対し、甲5発明は「クレイ小板」を用いる点。 相違点e2:本件発明1は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲5発明はクレイ小板のエッジ改質のための「リン酸化化合物」を用いる点。 相違点e1に関し、甲5明細書【0031】には「(これらのクレイは、水膨潤性と呼ばれる場合が多いが、本明細書に記載される実施形態では、クレイは、実質的に個別のクレイ小板として提示され、したがってそれらはもはや水膨潤性でないことに留意されたい。)」(上記ア(ウ))と記載されている。このため、甲5発明における「クレイ小板」は、本件発明でいう「水膨潤性」を有するものとはいえない。 相違点e2に関し、甲5発明における「リン酸化化合物」は、クレイ小板のエッジ改質に用いられるものの、このエッジ改質が「分散性の向上」を企図していることは明らかでなく、もし企図していたとしても、「水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」ことは何ら明らかでない。 そうすると、この二つの相違点において本件発明1と甲5発明とは明確に相違し、両者は同一であるということはできない。 (5)甲6に基づくもの ア 甲6に記載された事項 (ア)「【請求項1】 吸水性のエッジ改質されたクレイ結合ポリカルボン酸ポリマー及び/又はポリカルボキシレートポリマーであって、 c)i)均一に分散した、対向する基底小板表面及び小板エッジを有するクレイ小板と、ii)溶解又は均一に分散した、カルボン酸基及び/若しくはカルボキシレート基を含む重合性モノマー、並びに/又は前記モノマーの1つ以上の重合性オリゴマーと、を含む重合反応水溶液を得る工程であって、 前記水溶液が、6以下のpHを有し、かつ前記クレイ小板の前記エッジが、1つ以上のエッジ改質化合物で改質される、工程と、 d)前記工程a)の液体中で前記モノマー及び/又はオリゴマーの前記重合を開始する工程と、を含む重合反応により得られる、吸水性のエッジ改質されたクレイ結合ポリカルボン酸ポリマー及び/又はポリカルボキシレートポリマー。 … 【請求項5】 前記反応液が、アクリル酸及び/又はアクリレート塩であるモノマーを含み、かつ前記ポリマーが、ポリアクリル酸ポリマー及び/又はポリアクリレートポリマーである、請求項1?4のいずれか一項に記載の吸水性のエッジ改質されたクレイ結合ポリカルボン酸ポリマー及び/若しくはポリカルボキシレートポリマー、又は方法。 【請求項6】 前記1つ以上のエッジ改質化合物が、好ましくは、リン酸塩、縮合リン酸塩、その誘導体及びその酸形態、ホスホン酸、その誘導体及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、リン酸化化合物であるか、又はリン酸化化合物を含む、請求項1?5のいずれか一項に記載の吸水性のエッジ改質されたクレイ結合ポリカルボン酸ポリマー及び/若しくはポリカルボキシレートポリマー、又は方法。」 (イ)「【0012】 前記のポリマーが、前記のエッジ改質されたクレイ小板が実質的に均一に分散される方法/液体で、前記の改質されたクレイ小板により結合される、そのような吸水性EMCポリマーは、2つの結合点(例えば、2つのクレイ小板)の間にポリマー鎖セグメントの長さの狭い分散を有すると考えられる。したがって、吸水性EMCポリマーが、流体吸収に起因して膨張すると、それらは(実質的に)すべて移動し、同程度まで延伸すると考えられる。機構的に、同一のクレイ小板に結合されたポリマーは、共働して力(伸長又は圧力)を維持し、次いでこれは、架橋が有機架橋基により達成される、従来の架橋ポリマーネットワークと比較して、破断するまでの伸びを増加させると考えられる。次いでEMCポリマーは、より高いせん断応力/ひずみに耐え得る。これは、変形、したがってゲルブロッキングを減少させる。更に、クレイ粒子の親水性性質に起因して、得られるEMCポリマーは、吸収速度において利点を有し得ると考えられる。」 (ウ)「【0030】 本明細書において改質される好適なクレイの例は、いわゆる膨潤性クレイ、すなわち、ヘクトライトを含む、スメクタイト型クレイであり、ラポナイト(すなわち、合成クレイ)、モンモリロナイト、サポナイト、バーミキュライト若しくはカオリン、又はそれらの混合物を含み、一実施形態では、ラポナイトを含む、モンモリロナイト及び/又はヘクトライトが好ましい。(これらのクレイは、水膨潤性と呼ばれる場合が多いが、本明細書に記載される実施形態では、クレイは、実質的に個別のクレイ小板として提示され、したがってそれらはもはや水膨潤性でないことに留意されたい。)」 イ 甲6に記載された発明(甲6発明) 上記ア(ア)の記載から、甲6には以下の甲6発明が記載されているといえる。 「リン酸塩、縮合リン酸塩、その誘導体及びその酸形態、ホスホン酸、その誘導体及びその塩、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、リン酸化化合物であるか、又はリン酸化化合物を含むもので表面改質されたクレイ小板を用いた、ポリマーが、ポリアクリル酸ポリマー及び/又はポリアクリレートポリマーである、吸水性のエッジ改質されたクレイ結合ポリカルボン酸ポリマー及び/又はポリカルボキシレートポリマー」 ウ 対比・判断 本件発明1と甲6発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点f1:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子」である「クレイ粒子」を用いるのに対し、甲6発明は「クレイ小板」を用いる点。 相違点f2:本件発明1は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲6発明はクレイ小板の表面改質のための「リン酸化化合物であるか、又はリン酸化化合物を含む」ものを用いる点。 相違点f1に関し、甲6明細書【0030】には「(これらのクレイは、水膨潤性と呼ばれる場合が多いが、本明細書に記載される実施形態では、クレイは、実質的に個別のクレイ小板として提示され、したがってそれらはもはや水膨潤性でないことに留意されたい。)」(上記ア(ウ))と記載されている。このため、甲6発明における「クレイ小板」は、本件発明でいう「水膨潤性」を有するものとはいえない。 相違点f2に関し、甲6発明における「リン酸化化合物」は、クレイ小板の表面改質に用いられるものの、この表面改質が「分散性の向上」を企図していることは明らかでなく、もし企図していたとしても、「水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」ことは何ら明らかでない。 そうすると、この二つの相違点において本件発明1と甲6発明とは明確に相違し、両者は同一であるということはできない。 (6)甲7に基づくもの ア 甲7に記載された事項 (ア)「【請求項1】 内部架橋剤の存在下での重合可能なモノマー組成物の重合によって形成される内部架橋領域と、表面架橋剤の適用によってさらに架橋された、前記内部架橋領域の架橋密度よりも高い架橋密度を有する表面架橋領域とを有するポリマー粒子を含む高吸収性ポリマー組成物であって、 前記重合可能なモノマー組成物は、カルボキシル基を含有する重合可能な不飽和モノマーを55?99.9重量%含み、 前記表面架橋剤は、アルキレンカーボネートであり、 前記ポリマー粒子は、25モル%より高い中和率を有し、 前記高吸収性ポリマー組成物が、さらに 乾燥ポリマー粒子の重量に対して0?5重量%の透水性改質剤と、 前記ポリマー粒子表面上に適用される、乾燥ポリマー粒子の重量に対して0?5重量%の多価金属塩と、 前記ポリマー粒子表面上に適用される、乾燥ポリマー粒子の重量に対して0?2重量%の界面活性剤と、 乾燥ポリマー粒子の重量に対して0.01?5重量%の不溶性無機粉末とを含み、 前記不溶性無機粉末は、二酸化ケイ素、ケイ酸、ケイ酸塩、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、リン酸カルシウム、粘土、けい藻土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、ハイドロタルサイトおよび活性白土からなる群から選択され、 前記高吸収性ポリマー組成物は、800×10^(-9)cm^(2)?1500×10^(-9)cm^(2)のゲルベッド透水性および25?35g/gの遠心力下保水容量を有する高吸収性ポリマー組成物。」 (イ)「【0033】 本発明による高吸収性ポリマーは、ポリマー粒子表面への界面活性剤0?約5重量%の添加を含むことができる。これらは、表面架橋工程の直前または表面架橋工程中または表面架橋工程直後に添加することが好ましい。 【0034】 そのような界面活性剤の例として、アニオン性、非イオン性、カチオン性および両性界面活性剤、たとえば脂肪酸塩、ココアミンおよびアミドならびにそれらの塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキル、リン酸アルキル塩およびポリオキシエチレンアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸エステルおよびオキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー;アルキルアミン塩、四級アンモニウム塩;ラウリルジメチルアミンオキシドを挙げることができる。しかし、界面活性剤を上記のものに限定する必要はない。これらの界面活性剤は単独で使用することもできるし、組み合わせで使用することもできる。」 イ 甲7に記載された発明(甲7発明) 上記ア(ア)の記載から、甲7には以下の甲7発明が記載されているといえる。 「内部架橋剤の存在下での重合可能なモノマー組成物の重合によって形成される内部架橋領域と、表面架橋剤の適用によってさらに架橋された、前記内部架橋領域の架橋密度よりも高い架橋密度を有する表面架橋領域とを有するポリマー粒子を含む高吸収性ポリマー組成物であって、 前記重合可能なモノマー組成物は、カルボキシル基を含有する重合可能な不飽和モノマーを55?99.9重量%含み、 前記表面架橋剤は、アルキレンカーボネートであり、 前記ポリマー粒子は、25モル%より高い中和率を有し、 前記高吸収性ポリマー組成物が、さらに 乾燥ポリマー粒子の重量に対して0?5重量%の透水性改質剤と、 前記ポリマー粒子表面上に適用される、乾燥ポリマー粒子の重量に対して0?5重量%の多価金属塩と、 前記ポリマー粒子表面上に適用される、乾燥ポリマー粒子の重量に対して0?2重量%の界面活性剤と、 乾燥ポリマー粒子の重量に対して0.01?5重量%の不溶性無機粉末とを含み、 前記不溶性無機粉末は、二酸化ケイ素、ケイ酸、ケイ酸塩、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、リン酸カルシウム、粘土、けい藻土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、ハイドロタルサイトおよび活性白土からなる群から選択され、 前記高吸収性ポリマー組成物は、800×10^(-9)cm^(2)?1500×10^(-9)cm^(2)のゲルベッド透水性および25?35g/gの遠心力下保水容量を有する高吸収性ポリマー組成物」 ウ 対比・判断 本件発明1と甲7発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点g1:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子」である「クレイ粒子」を用いるのに対し、甲7発明は「二酸化ケイ素、ケイ酸、ケイ酸塩、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、リン酸カルシウム、粘土、けい藻土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、ハイドロタルサイトおよび活性白土からなる群から選択」される「不溶性無機粉末」を用いる点。 相違点g2:本件発明1は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲7発明はこれに相当するものが明確でない点。 相違点g1及びg2に関し、甲7発明の「ベントナイト」は本件発明1の「水膨潤性ケイ酸塩粒子」に相当するものということができる。しかし、甲7発明においてこの「ベントナイト」を選択して、この「ベントナイト」の分散剤を用いることは何ら明らかでない。 このため、相違点g1が相違点とはいえないとしても、少なくとも相違点g2において本件発明1と甲7発明とは明確に相違し、両者は同一であるということはできない。 (7)甲8に基づくもの ア 甲8に記載された事項 (ア)「【請求項1】 【請求項1】 重合後乾燥前の吸水性樹脂の含水ゲル状重合体(A)に無機微粒子(B)及び界面活性剤(C)を混合して乾燥する吸水性樹脂の製造法。 … 【請求項6】 (B)がシリカ類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、カーボンブラック類、白亜、寒水クレー、胡粉、チョーク、クレー類、アルミナ類、ジルコニア、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、石膏、鉛白、雲母粉、亜鉛華、酸化チタン、酸化マグネシウム、活性フッ化カルシウム、ゼオライト、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、アスベスト、ガラスファイバー、ロックファイバー、マイクロバルーンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1?5の何れか記載の製造法。」 (イ)「【0007】本発明において、重合後乾燥前の吸水性樹脂の含水ゲル状重合体(A)としては、水溶性または加水分解により水溶性となる1種以上のラジカル重合性モノマーと架橋剤および必要によりグラフト基材を水の存在下でラジカル重合して得られる含水ゲル状重合体であり、る。(A)の吸水性樹脂の具体的な例としては、デンプン-アクリル酸塩共重合体架橋物、デンプン-アクリル酸共重合体架橋体の中和物、デンプン-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、ポリスルホン酸塩架橋物、ポリアクリル酸塩/ポリスルホン酸塩共重合体架橋物、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体架橋物、架橋ポリアクリルアミドの加水分解物、 架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリビニルピロリドン、ビニルアセトアミド重合体架橋物、ポリアスパラギン酸架橋物などが挙げられる。塩の種類については特に限定はないが、通常ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩である。 【0008】好ましくは、イオン浸透圧により多量の液を吸収・保持することができ、荷重や外力が加わっても離水の少ないカルボン酸及び/又はカルボン酸塩を含有する重合性単量体を主構成成分とする含水ゲル状の親水性架橋重合体である。特に好ましくは、アクリル酸と架橋剤とを水溶液重合した後、アルカリ金属塩でカルボン酸基の50?90モル%を中和して得られる含水ゲル状重合体である。…」 (ウ)「【0016】本発明において、無機微粒子(B)としては、金属微粒子を除く天然無機微粒子及び合成無機微粒子の水不溶性のものであればいずれであってもよいが、吸水性樹脂の還元剤、中和剤として機能するものは除く。(B)として具体的には、例えば…、クレー類(カオリン質クレー、セリサイト質クレー、バイロフィライト質クレー、モンモリロナイト質クレー、ベントナイト、酸性白土等)…、雲母粉、…等が挙げられる。これらは2種以上を併用することもできる。好ましいものはシリカ類、炭酸塩類、タルク、ゼオライトであり、特に好ましくは酸化ケイ素、タルクである。 … 【0018】本発明において、界面活性剤(C)としては、ノニオン性界面活性剤(C1)、アニオン性界面活性剤(C2)、カチオン性界面活性剤(C3)、両性界面活性剤(C4)が挙げられる。… 【0021】…(B)と(C)を併用することで乾燥性が向上する理由としては、界面活性剤が(B)の均一な分散を助ける働きをするとともに、親水性基と疎水性基を有する界面活性剤の親水性基が(A)と親和性を有するため、疎水性基が外側を向いて配向することになり、ゲルの融着を防止する効果が向上するものと推定される。」 イ 甲8に記載された発明(甲8発明) 上記ア(ア)の記載から、甲8には以下の甲8発明が記載されているといえる。 「重合後乾燥前の吸水性樹脂の含水ゲル状重合体(A)に、シリカ類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、カーボンブラック類、白亜、寒水クレー、胡粉、チョーク、クレー類、アルミナ類、ジルコニア、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、石膏、鉛白、雲母粉、亜鉛華、酸化チタン、酸化マグネシウム、活性フッ化カルシウム、ゼオライト、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、アスベスト、ガラスファイバー、ロックファイバー、マイクロバルーンから選ばれる1種又は2種以上である無機微粒子(B)、及び界面活性剤(C)を混合して乾燥して得られる吸水性樹脂」 ウ 対比・判断 本件発明1と甲8発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点h1:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子」である「クレイ粒子」を用いるのに対し、甲8発明は「シリカ類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、カーボンブラック類、白亜、寒水クレー、胡粉、チョーク、クレー類、アルミナ類、ジルコニア、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、石膏、鉛白、雲母粉、亜鉛華、酸化チタン、酸化マグネシウム、活性フッ化カルシウム、ゼオライト、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、アスベスト、ガラスファイバー、ロックファイバー、マイクロバルーンから選ばれる1種又は2種以上である無機微粒子」を用いる点。 相違点h2:本件発明1は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲8発明は「界面活性剤」を用いる点。 相違点h1及びh2に関し、甲8発明の「雲母粉」は本件発明1の「水膨潤性ケイ酸塩粒子」に相当するものといえ、「クレー類」についても、甲8明細書【0016】においてその具体例として示される「モンモリロナイト質クレー」や「ベントナイト」(上記ア(ウ))は本件発明1の「水膨潤性ケイ酸塩粒子」に相当するものということができる。そして、甲8発明の「界面活性剤」は、甲8明細書【0021】の「(B)と(C)を併用することで乾燥性が向上する理由としては、界面活性剤が(B)の均一な分散を助ける働きをする」(上記ア(ウ))との記載からみて、「無機微粒子」の分散性の向上を果たすものと認められる。 しかし、甲8発明においてこれらの「雲母粉」や「クレー類」を選択して、「界面活性剤」を「水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で」用いることは何ら明らかでない。 このため、相違点h1が相違点とはいえないとしても、少なくとも相違点h2において本件発明1と甲8発明とは明確に相違し、両者は同一であるということはできない。 (8)甲9に基づくもの ア 甲9に記載された事項 (ア)「【請求項1】 陰イオン性界面活性剤の存在下、有機ベントナイトを含有する疎水性有機溶媒に、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する水溶性単量体を含有する水溶液を供給し、油中水滴型の逆相懸濁重合を行うことを特徴とする高吸収性樹脂の製造方法。」 (イ)「【0010】 以下に、本発明の高吸収性樹脂の製造方法を詳細に説明する。 本発明において用いる分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する水溶性単量体(以下水溶性不飽和単量体という)としては、高吸水性樹脂を与えることが知られている水溶性不飽和単量体であれば、いずれも原料として用いることができる。 【0011】 かかる水溶性不飽和単量体としては、a)イオン性単量体、例えば(メタ)アクリル酸及びそのアルカリ金属塩やアンモニウム塩、アクリルアミド-2-エチルスルホン酸及びそのアルカリ金属塩等、(b)非イオン性単量体、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等、(c)アミノ基含有単量体やその4級化物、例えばジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの単量体を単独又は2種以上を混合して用いることができる。 【0012】 これらの中で好ましいものは、(メタ)アクリル酸及びそのアルカリ金属塩やアンモニウム塩、(メタ)アクリルアミド等である。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、ルビジウム塩等が用いられるが、得られる高吸収性樹脂の性能、工業的入手の容易さ、安全性等の面からナトリウム塩またはカリウム塩が好ましい。 【0013】 これらの水溶性不飽和単量体は、水溶液中の単量体濃度が通常20重量%以上、好ましくは25%重量以上?飽和濃度となるように用いられる。又、前記のイオン性単量体、例えば(メタ)アクリル酸、アクリルアミド-2-エチルスルホン酸等は、その少なくとも一部がアルカリ金属水酸化物や水酸化アンモニウム等で中和された形、即ち塩の形で使用するのが好ましい。中和の程度は通常20?100モル%、好ましくは30?100モル%である。」 (ウ)「【0020】 本発明は、逆相懸濁重合に際し、反応媒体である疎水性有機溶媒に、有機ベントナイトを含有させ、水溶性不飽和単量体の水溶液中に、陰イオン性界面活性剤を含有させるものである。 【0021】 前記有機ベントナイトは、無機成分で親水基を持つスメクタイトを長鎖脂肪族炭化水素等を含む有機化合物で有機化して製造されたものであり、水に不溶性で疎水性有機溶媒に親和性があり、且つ疎水性有機溶媒を自身の層間に取り込み、膨潤して、増粘する性質を有している。 本発明に使用する有機ベントナイトは、スメクタイト族のモンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、ノントロナイト、サボナイト、ソーコナイト等を主成分とする天然産ベントナイト及び/又はそれらの合成品を含有するクレーを有機化して製造される。例えば、水中で十分に膨潤したスメクタイト含有クレーにカチオン性の有機化合物等を25?95℃で混合し、スメクタイトの交換性無機カチオンをカチオン性有機化合物等で交換することにより製造される。」 (エ)「【0029】 本発明に使用する陰イオン性界面活性剤は、通常、水溶性不飽和単量体水溶液中に、0.01?5重量%含有させるが、0.05?2重量%含有させるのが好ましい。0.01重量%未満であると所望の分散効果が得られず、逆に5重量%を越えると生成した樹脂粒子を乾燥させる時に凝集を起こす傾向がある。 【0030】 本発明は、反応媒体である疎水性有機溶媒にイオン性を有する有機ベントナイトを含有させ、単量体水溶液に陰イオン性界面活性剤を含有させることにより、特に蛋白質や血球成分、組織分解物等を含む血液に対する吸収特性が改善され、ハジキ等が抑制された吸収性樹脂が得られる。」 イ 甲9に記載された発明(甲9発明) 上記ア(ア)の記載から、甲9には以下の甲9発明が記載されているといえる。 「陰イオン性界面活性剤の存在下、有機ベントナイトを含有する疎水性有機溶媒に、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する水溶性単量体を含有する水溶液を供給し、油中水滴型の逆相懸濁重合を行うことで得られる高吸収性樹脂」 ウ 対比・判断 本件発明1と甲9発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点i1:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子」である「クレイ粒子」を用いるのに対し、甲9発明は「有機ベントナイト」を用いる点。 相違点i2:本件発明1は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲9発明は「陰イオン性界面活性剤」を用いる点。 相違点i1及びi2に関し、甲9発明の「有機ベントナイト」は、「疎水性有機溶媒を自身の層間に取り込み、膨潤して、増粘する性質を有している」(上記ア(ウ))ものの、本件発明1でいう「水膨潤性」の「ケイ酸塩粒子」とはいえない。仮に、甲9発明の「有機ベントナイト」が何らかの理由で「水膨潤性」の「ケイ酸塩粒子」といえたとしても、甲9発明の「陰イオン性界面活性剤」は、「有機ベントナイト」の分散剤であると認識しうる記載は甲9明細書から見いだすことはできず、更に、「有機ベントナイト」を「剥離させる目的で」用いることは何ら明らかでない。 このため、相違点i1及びi2において、あるいは少なくとも相違点i2において本件発明1と甲9発明とは明確に相違し、両者は同一であるということはできない。 (9)甲10に基づくもの ア 甲10に記載された事項 (ア)「【請求項1】 石油系炭化水素に界面活性剤、粉末状吸水性樹脂、微粉末状シリカ及び有機ベントナイトを混合・分散してなる吸水性樹脂の油性分散液。 【請求項2】 石油系炭化水素が同溶媒を用いて製造したアクリル系重合体の逆相エマルジョンである請求項1に記載の吸水性樹脂の油性分散液。 【請求項3】 逆相エマルジョン中のアクリル系重合体がポリアクリル酸ソーダ及びポリアクリルアミドの少なくとも一種を含有するものである請求項2に記載の吸水性樹脂の油性分散液。 … 【請求項5】 粉末状吸水性樹脂がポリアクリル酸(塩)架橋体である請求項1?4のいずれかに記載の吸水性樹脂の油性分散液。」 (イ)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このエマルジョンはその製造の際、重合反応中に架橋体が凝集ゲル物を生成し易い。また、得られたエマルジョン中の吸水性樹脂粒子の架橋密度に制限があり、また、粒子が微細であることよりエマルジョンを実際の使用時には吸水後のゲル強度が弱く、ゲル全体が柔らかい風合いになってしまい、特に前述の土木用途に使用するには適当でなくなる場合があった。本発明は、使用時における吸水後のゲル強度が十分あり、且つ使用前に長期間放置しておいた場合においても、溶媒中における吸水性樹脂の沈降或いはそのケーキが固化することのない吸水性樹脂の油性分散液を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者は、かゝる事情に鑑み鋭意検討した結果、界面活性剤を含む石油系炭化水素又は同溶媒を用いたアクリル系重合体逆相エマルジョン中に粉末状吸水性樹脂を特定の沈降防止剤を用いて混合・分散させてなる吸水性樹脂の油性分散液については、樹脂の分散安定性が大巾に向上することを見い出し、本発明を完成するに至った。 【0006】即ち、本発明の要旨は、石油系炭化水素に界面活性剤、粉末状吸水性樹脂、微粉末状シリカ及び有機ベントナイトを混合・分散してなる吸水性樹脂の油性分散液、にある。なお、本発明の分散液は、従来の分散液のように短期間、例えば1?2週間以内程度で吸水性樹脂が沈降し、更には固いケーキを生成し流動性を損なうようなことはない。以下、本発明を詳細に説明する。」 (ウ)「【0015】(有機ベントナイト)本発明に用いられる有機ベントナイトとは、いわゆるベントナイト、即ち、シリカとアルミナを主成分とするモンモリロン石を主とした粘土を塩基性有機物により変性したものをいう。この中、含水ケイ酸アルミニウムを第四級アンモニウム塩で変性したものが好ましい。これは精製ベントナイトを例えばオクタデシルアンモニウムクロライド、ジメチルオクタデシルアンモニウムクロライドのような第四級アンモニウム塩の水溶液と混合することにより変性して得られる物である。具体的な市販品としてオルベン、ニュウディオルベン(白石工業社製)が挙げられる。この使用量は分散媒が石油系炭化水素溶媒の場合には、吸水性樹脂に対し1?20重量%、好ましくは5?10重量%である。分散媒が石油系炭化水素溶媒を使用して製造したアクリル系重合体逆相エマルジョンの場合には、吸水性樹脂に対し0.5?10重量%、好ましくは1?5重量%である。」 イ 甲10に記載された発明(甲10発明) 上記ア(ア)の記載から、甲10には以下の甲10発明が記載されているといえる。 「石油系炭化水素を用いて製造した、ポリアクリル酸ソーダ及びポリアクリルアミドの少なくとも一種を含有するアクリル系重合体の逆相エマルジョンに、界面活性剤、ポリアクリル酸(塩)架橋体である粉末状吸水性樹脂、微粉末状シリカ及び有機ベントナイトを混合・分散してなる吸水性樹脂の油性分散液」 ウ 対比・判断 本件発明1と甲10発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点j1:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子」である「クレイ粒子」を用いるのに対し、甲10発明は「有機ベントナイト」を用いる点。 相違点j2:本件発明1は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲9発明は「界面活性剤」を用いる点。 相違点j3:本件発明1は、「ハイドロゲル形成性組成物」であるのに対し、甲10発明は「油性分散液」である点。 相違点j3に関し、甲10発明の「油性分散液」は油性であるから、「ハイドロゲル」を形成しうるものとはいえない。 また、相違点j1に関し、甲10発明の「有機ベントナイト」は、本件発明1でいう「水膨潤性」の「ケイ酸塩粒子」とはいえない。仮に、甲10発明の「有機ベントナイト」が何らかの理由で「水膨潤性」の「ケイ酸塩粒子」といえたとしても、甲10発明の「界面活性剤」は、「有機ベントナイト」の分散剤であると認識しうる記載は甲10明細書から見いだすことはできず、更に、「有機ベントナイト」を「剥離させる目的で」用いることは何ら明らかでない。 このため、相違点j3に加え、相違点j1及びj2、あるいは少なくとも相違点j2において本件発明1と甲10発明とは明確に相違し、両者は同一であるということはできない。 (10)甲11に基づくもの ア 甲11に記載された事項 (ア)「2.特許請求の範囲 1.高吸水性樹脂[I]、水[II]、実質的に水不溶性溶媒[III]および有機又は無機の粉末[IV]からなり、高吸水性樹脂[I]100重量部に対し、水[II]100?50000重量部、水[II]100重量部に対し実質的に水不溶性溶媒[III]10?300重量部、前記高吸水性樹脂[I]、水[II]および実質的に水不溶性溶媒[III]からなる組成物(A)100重量部に対し、有機および/または無機の粉末0.1?100重量部からなる保冷材。 2.実質的に水不溶性溶媒[III]が界面活性剤を0.01?20重量%含むものである請求項1記載の保冷材。 3.高吸水性樹脂[I]がポリアクリル酸部分中和物架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体の中和物、自己架橋型ポリアクリル酸ナトリウムおよびスルホン酸基を有する高分子化合物よりなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1または2記載の保冷材。 … 5.有機および/または無機の粉末[IV]がアエロジル、シリカゲル、金属酸化物粉末、金属粉末、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、ラジオライト、モンモリロナイト、タルク、カオリン、活性白土、ゼオライト、パルプ、木粉、紙および繊維くずおよびそれらの複合体より選ばれた少なくとも1種である請求項1?4記載の保冷材。」 (イ)「水不溶性溶媒中の高吸水性樹脂の分散性をよくするため界面活性剤を用いることができ、界面活性剤としてはHLB値10以下のものが好ましく、乳化性能の点から特に好ましいものはソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノマレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエートなどがある。」(3頁左上欄8?15行) イ 甲11に記載された発明(甲11発明) 上記ア(ア)の記載から、甲11には以下の甲11発明が記載されているといえる。 「ポリアクリル酸部分中和物架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体の中和物、自己架橋型ポリアクリル酸ナトリウムおよびスルホン酸基を有する高分子化合物よりなる群より選ばれた少なくとも1種である高吸水性樹脂[I]、水[II]、界面活性剤を0.01?20重量%含む実質的に水不溶性溶媒[III]および、アエロジル、シリカゲル、金属酸化物粉末、金属粉末、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、ラジオライト、モンモリロナイト、タルク、カオリン、活性白土、ゼオライト、パルプ、木粉、紙および繊維くずおよびそれらの複合体より選ばれた少なくとも1種である有機又は無機の粉末[IV]からなり、高吸水性樹脂[I]100重量部に対し、水[II]100?50000重量部、水[II]100重量部に対し実質的に水不溶性溶媒[III]10?300重量部、前記高吸水性樹脂[I]、水[II]および実質的に水不溶性溶媒[III]からなる組成物(A)100重量部に対し、有機および/または無機の粉末0.1?100重量部からなる保冷材」 ウ 対比・判断 本件発明1と甲11発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点k1:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子」である「クレイ粒子」を用いるのに対し、甲11発明は「アエロジル、シリカゲル、金属酸化物粉末、金属粉末、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、ラジオライト、モンモリロナイト、タルク、カオリン、活性白土、ゼオライト、パルプ、木粉、紙および繊維くずおよびそれらの複合体より選ばれた少なくとも1種である有機又は無機の粉末」を用いる点。 相違点k2:本件発明1は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲11発明は「界面活性剤」を用いる点。 相違点k1及びk2に関し、甲11発明の「有機および/または無機の粉末」における「ベントナイト」や「モンモリロナイト」は本件発明1の「水膨潤性ケイ酸塩粒子」に相当するものといえる。 しかし、甲11発明の「界面活性剤」は、「水不溶性溶媒中の高吸水性樹脂の分散性をよくするため」(上記ア(イ))のものであり、「有機および/または無機の粉末」の分散剤として用いるものではない。更には、「ベントナイト」や「モンモリロナイト」を「剥離させる目的で使用される」ものでもない。 このため、相違点k1が相違点とはいえないとしても、少なくとも相違点k2において本件発明1と甲11発明とは明確に相違し、両者は同一であるということはできない。 (11)本件発明2?12について 上記(1)?(10)で示したとおり、本件発明1が「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いることに対し、甲1?3発明ないし甲5?11発明のいずれにおいてもこの点を採用しないことで相違する。そして、本件発明9、12はいずれも「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いていることに鑑みると、本件発明9ないし12も本件発明1と同様、少なくとも「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いることにおいて、甲1?3発明ないし甲5?11発明のいずれとも相違する。本件発明1を引用する本件発明2?8、本件発明9を引用する本件発明10?11についても同様である。 (12)まとめ 以上のことから、本件発明1?12は、甲1?3ないし甲5?11のいずれかに記載された発明であるということはできない。よって、申立人が主張する申立ての理由1には理由がない。 3 申立ての理由2について (1)甲4に基づくもの ア 甲4に記載された事項 (ア)「請 求 の 範 囲 1.吸水剤量の架橋化水膨潤性親水性ポリマーと吸水剤組成物のゲル強度を増加するのに充分な量の無機粉末とを含んでなる吸水剤組成物のゲル強度の増加方法であって、ポリマーを重合させそして架橋させた後でポリマーと無機粉末とを物理的にブレンディングすることを特徴とする、前記の増加方法。 2.前記の無機粉末がクレーである請求の範囲第1項記載の方法。 3.ポリマーと無機粉末との合計重量を基準として、前記ポリマー量が1?99重量%であり、そして前記無機粉末量が1?99重量%である請求の範囲第1項記載の方法。 … 8.前記クレーがベントナイトまたはアタパルジャイトである請求の範囲第2項記載の方法。」 (イ)「本発明において有用な好ましい親水性ポリマーは高分子電解質であり、その例としてはアクリル酸またはメタクリル酸のホモポリマーのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩、およびそれらと1以上のエチレン系不飽和コモノマーとのコポリマーがある。」(2頁左下欄22行?右下欄2行) (ウ)「例1?例6および比較実験A メチレンビスアクリルアミド500ppmで架橋した分子量4,000,000の架橋ポリアクリルアミドポリマーとナトリウムベントナイトとをWaring Blendor中で乾式でブレンディングする。ポリマーとクレーとの重量比は50/50である。この複合体1gを脱イオン水50g中に分散する。20分後、複合体ゲル/水混合物を115メッシュナイロンスクリーン(125μm)に通して濾(注:原文はさんずいに戸)過する。ゲルをスクリーン上で20分間ドリップ乾燥させる。ゲルをスパチュラによって金網からこすり落とし、底部に20メッシュ金網スクリーン(850μm)を備えた直径1.5インチ(38.1mm)の円筒に置く。ゲル化組成物を充分に加え、直径1.5インチ(38.1mm)の円筒中に高さ1インチ(25.4mm)のゲルを提供する。次にスパチュラを使用して、ゲルの頂上からスクリーン底部に通じる小口を作り、閉じこめた空気を逃がす。続いて円筒の上に秤量ピストンを置き、ゲルをスクリーンに圧しつける。ピストンの上に空の1クォート(9.46×10^(-4)m^(3))のジャーを置き、少量のゲルが金網から押出されるまで充分な水を加える。ジャーと水の力およびピストンの力を使用してゲル強度を測定する。組成物のゲル強度に関するデータを表1に示す。」(3頁左下欄24行?右下欄23行) イ 甲4に記載された発明(甲4発明) 上記ア(ア)の記載から、甲4には以下の甲4発明が記載されているといえる。 「吸水剤量の架橋化水膨潤性親水性ポリマーと、吸水剤組成物のゲル強度を増加するのに充分な量のベントナイトまたはアタパルジャイトである無機粉末とを含んでなる吸水剤組成物」 ウ 対比・判断 本件発明1と甲4発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 相違点d1:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子」である「クレイ粒子」を用いるのに対し、甲4発明は「ベントナイトまたはアタパルジャイトである無機粉末」を用いる点。 相違点d2:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲4発明はこれに相当するものを用いることが明らかでない点。 相違点d2に関し、甲4発明の「ベントナイトまたはアタパルジャイトである無機粉末」に対して、これを分散させる分散剤を添加することについて想起させる記載事項は甲4には存在せず、また、そうすることが本件優先権主張日前における一般的な技術事項であるということもできない。 更に、上記2で検討したことからみて、甲1?3ないし甲5?11のいずれにも「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いることの記載ないし示唆は存在しない。 このため、少なくとも相違点d2において本件発明1と甲4発明とは明確に相違し、そして、本件発明1は、甲4発明から、あるいは甲4発明及び甲1?3ないし甲5?11に記載された事項から当業者が容易に想到したものとはいえない。 (2)甲1?3ないし甲5?11に基づくもの 上記(1)ウで示したとおり、甲1?3ないし甲5?11のいずれにも、また、甲4にも「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いることの記載ないし示唆は存在しない。そうすると、本件発明1は、甲1?3発明ないし甲5?11発明のいずれからも、あるいは甲1?3発明ないし甲5?11発明のいずれか、及びその余の甲1?11のいずれかに記載された事項から当業者が容易に想到したものとはいえない。 (3)本件発明2?12について 上記(1)?(2)で示したとおりであるから、上記2(11)で示したことと同様の理由で、本件発明2?12は、甲1?11発明のいずれからも、あるいは甲1?11発明のいずれか、及びその余の甲1?11のいずれかに記載された事項から当業者が容易に想到したものとはいえない。 (4)まとめ 以上のことから、本件発明1?12は、甲1?11から当業者が容易に想到することができたものであるということはできない。よって、申立人が主張する申立ての理由2には理由がない。 4 申立ての理由3について 申立ての理由3に関し、申立人はその証拠方法として甲12?14を提示するが、甲12及び13に係る出願の発明は、それぞれ下記の公報(以下、「公報12B」及び「公報13B」という。)に示されたとおり特許され、確定している。また、甲14に係る出願については、平成29年11月8日付けの拒絶査定が確定している。 公報12B:特許第6265498号公報 公報13B:特許第6265497号公報 したがって、申立ての理由3については、甲12及び13に基づくものは、それぞれ公報12B及び13Bに示された特許発明に基づき検討する。また、甲14に基づくものは理由がない。 (1)甲12に基づくもの ア 公報12Bに記載された事項 「【請求項1】 自己支持性を有するヒドロゲルを形成することができるヒドロゲル形成性組成物であって、重量平均分子量が100万乃至1000万である有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A)、水又は含水溶媒を分散媒としたコロイドを形成するケイ酸塩(B)、及び重量平均分子量が200乃至2万であり、かつ耐加水分解性を有する該ケイ酸塩の分散剤(C)を含むことを特徴とする、ヒドロゲル形成性組成物。 … 【請求項6】 前記水溶性有機高分子(A)がカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有する水溶性有機高分子である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成性組成物。 【請求項7】 前記水溶性有機高分子(A)が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、請求項6に記載のヒドロゲル形成性組成物。 【請求項8】 前記水溶性有機高分子(A)が重量平均分子量100万乃至1000万の完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、請求項7に記載のヒドロゲル形成性組成物。 【請求項9】 前記ケイ酸塩(B)が水膨潤性ケイ酸塩粒子である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成性組成物。 【請求項10】 前記ケイ酸塩(B)がスメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子である、請求項9に記載のヒドロゲル形成性組成物。 … 【請求項12】 請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成性組成物から作られる自己支持性を有するヒドロゲル。 【請求項13】 各々請求項1乃至請求項10のいずれか1項に特定されるところの、水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)、及び分散剤(C)、並びに水又は含水溶媒を混合してゲル化させることを特徴とする自己支持性を有するヒドロゲルの製造方法。」 イ 公報12Bの特許に係る発明(甲12発明) 上記ア、特に請求項1、9から、公報12Bの特許の請求項1を引用する請求項9に係る発明(甲12発明)は、以下のとおりである。 「水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)、及び該ケイ酸塩の分散剤(C)を含む、ヒドロゲル形成性組成物であって、 前記水溶性有機高分子(A)が重量平均分子量が100万乃至1000万である有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子であり、 前記ケイ酸塩(B)が水又は含水溶媒を分散媒としたコロイドを形成する水膨潤性ケイ酸塩粒子であり、 前記ケイ酸塩の分散剤(C)が重量平均分子量が200乃至2万であり、かつ耐加水分解性を有する分散剤であることを特徴とする、ヒドロゲル形成性組成物」 ウ 対比・判断 甲12発明の「水溶性有機高分子」は、本件発明1の「電解質高分子」に相当する。 そして、本件発明1と甲12発明とは、以下の点で相違する。 相違点l1:「電解質高分子」に関し、甲12発明は「重量平均分子量が100万乃至1000万である」ものを用いるのに対し、本件発明1はそのような規定のない点。 相違点l2:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲12発明は「重量平均分子量が200乃至2万であり、かつ耐加水分解性を有する」分散剤を用いる点。 相違点l1に関し、本件発明1は「重量平均分子量が100万乃至1000万である」ことの規定はないことからみて、本件発明1と甲12発明とは、この構成において相違するものといえる。 相違点l2に関し、甲12発明は「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」ことの特定はないから、本件発明1と甲12発明とは、用いられる分散剤に関し、その特定において相違するものといえる。 このため、本件発明1と甲12発明とは、同一であるとはいえない。 (2)甲13に基づくもの ア 公報13Bに記載された事項 「【請求項1】 自己支持性を有するヒドロゲルを形成することができるヒドロゲル形成性組成物であって、重量平均分子量が100万乃至1000万である有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A)、水又は含水溶媒を分散媒としたコロイドを形成するケイ酸塩(B)、該ケイ酸塩の分散剤(C)、及び多価アルコール(D)を含むことを特徴とし、 該分散剤(C)が、リン酸塩系分散剤、重量平均分子量1000乃至2万のポリカルボン酸塩系分散剤、重量平均分子量200乃至2万のポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、フミン酸ナトリウム及びリグニンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される、 ヒドロゲル形成性組成物。 … 【請求項3】 前記水溶性有機高分子(A)がカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有する水溶性有機高分子化合物である、請求項1又は請求項2に記載のヒドロゲル形成性組成物。 【請求項4】 前記水溶性有機高分子化合物が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、請求項3に記載のヒドロゲル形成性組成物。 【請求項5】 前記水溶性有機高分子化合物が重量平均分子量100万乃至1000万の完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、請求項4に記載のヒドロゲル形成性組成物。 【請求項6】 前記ケイ酸塩(B)が水膨潤性ケイ酸塩粒子である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成性組成物。 【請求項7】 前記ケイ酸塩(B)がスメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子である、請求項6に記載のヒドロゲル形成性組成物。 【請求項8】 前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤である、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成性組成物。 【請求項9】 前記分散剤(C)がオルトリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、アクリル酸ナトリウム/マレイン酸ナトリウム共重合体、アクリル酸アンモニウム/マレイン酸アンモニウム共重合体、水酸化ナトリウム、ヒドロキシルアミン、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、重量平均分子量200乃至2万のポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、フミン酸ナトリウム、及びリグニンスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項8に記載のヒドロゲル形成性組成物。 【請求項10】 請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のヒドロゲル形成性組成物から作られる自己支持性を有するヒドロゲル。」 イ 公報13Bの特許に係る発明(甲13発明) 上記ア、特に請求項1、6、8、9から、公報13Bの特許の請求項1、6、8を引用する請求項9に係る発明(甲13発明)は、以下のとおりである。 「水溶性有機高分子(A)、ケイ酸塩(B)、該ケイ酸塩の分散剤(C)、及び多価アルコール(D)を含む、ヒドロゲル形成性組成物であって、 前記水溶性有機高分子(A)が重量平均分子量が100万乃至1000万である有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子であり、 前記ケイ酸塩(B)が水又は含水溶媒を分散媒としたコロイドを形成する水膨潤性ケイ酸塩粒子であり、 前記ケイ酸塩の分散剤(C)が、リン酸塩系分散剤、重量平均分子量1000乃至2万のポリカルボン酸塩系分散剤、重量平均分子量200乃至2万のポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、フミン酸ナトリウム及びリグニンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される、水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であることを特徴とする、ヒドロゲル形成性組成物」 ウ 対比・判断 甲13発明の「水溶性有機高分子」は、本件発明1の「電解質高分子」に相当する。 そして、本件発明1と甲13発明とは、以下の点で相違する。 相違点m1:「電解質高分子」に関し、甲13発明は「重量平均分子量が100万乃至1000万である」ものを用いるのに対し、本件発明1はそのような規定のない点。 相違点m2:本件発明1は「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」分散剤を用いるのに対し、甲13発明は「リン酸塩系分散剤、重量平均分子量1000乃至2万のポリカルボン酸塩系分散剤、重量平均分子量200乃至2万のポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、フミン酸ナトリウム及びリグニンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される、水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤」を用いる点。 相違点m3:甲13発明は「多価アルコール(D)を含む」ものであるのに対し、本件発明1はそのような規定のない点。 相違点m1に関し、本件発明1は「重量平均分子量が100万乃至1000万である」ことの規定はないことからみて、本件発明1と甲13発明とは、この構成において相違するものといえる。 相違点m3に関し、本件発明1は「多価アルコール(D)を含む」ことの規定はないことからみて、本件発明1と甲13発明とは、この構成において相違するものといえる。 このため、本件発明1と甲13発明とは、同一であるとはいえない。 (3)本件発明2?12について 上記(1)?(2)で示したとおりであり、また、本件発明4及び11は、相違点l1やm1について相違しないものであるが、いずれにしても相違点l2やm3については相違するものであるから、上記2(11)で示したことと同様の理由で、本件発明2?12は、甲12及び13発明のいずれとも同一とはいえない。 (4)まとめ 以上のことから、本件発明1?12は、甲12及び13に係る出願の発明と同一であるということはできない。また、上記のとおり、甲14に基づくものは理由がない。よって、申立人が主張する申立ての理由3には理由がない。 5 申立ての理由4について 申立ての理由4について申立人は、特許法第36条第4項第1号並びに同第6項第1号の違反をいうが、申立書98頁からの「エ.サポート要件、実施可能要件、明瞭性等について」の項に記載された主張が、時にサポート要件及び実施可能要件に限らず「明瞭性」(明確性の意と解した。)について述べていることに鑑みて、主張内容に応じて同第6項第2号違反についても併せて検討する。 (1)「(a)本件請求項1,9に記載の『電解質高分子(A)』、『クレイ粒子(B)』、『分散剤(C)』」での主張について ア 申立人は、本件請求項1,9には、『電解質高分子(A)』、『クレイ粒子(B)』及び『分散剤(C)』(以下、「本件三成分」という。)の含有量に関する規定が無く、同請求項に係る発明は、本件特許のハイドロゲル形成性組成物及び伸縮性ハイドロゲルを得ることができない各成分の含有量の組成物も包含するものであり、明瞭でない旨主張する。 しかし、本件発明1及び9は、本件三成分を用いて構成されるハイドロゲル形成性組成物及び伸縮性ハイドロゲルに係るものであり、ハイドロゲル形成性組成物及び伸縮性ハイドロゲルとして本件三成分から得られることは明らかである。このため、係る規定は明瞭である。 イ 申立人は、本件三成分の含有量が規定されていないハイドロゲル形成性組成物及び伸縮性ハイドロゲルに関する記載はないので、本件発明1,9、及び本件発明1?8,11,12は発明の詳細な説明に記載されたものでない旨主張する。 しかし、本件明細書【0007】には「電解質高分子と、クレイ粒子と、該クレイ粒子の分散剤とを混合することにより、優れた力学物性を持つ高分子/ナノ微粒子コンポジットハイドロゲルが得られることを見出し、本発明を完成させた。 また、電解質高分子、クレイ粒子、及び該クレイ粒子の分散剤の含有量を調整することにより、優れた伸縮性を有する高分子/ナノ微粒子コンポジットハイドロゲルが得られることを見出し、本発明を完成させた。」と記載されており、本件発明に係るハイドロゲル形成性組成物及び伸縮性ハイドロゲルは、本件三成分から構成されることが明らかである。このため、本件発明1?12は発明の詳細な説明に記載されたものといえる。 (2)「(b)本件請求項1,9に記載の『分散剤(C)』」での主張について ア 申立人は、本件明細書には、本件発明1,9の「分散剤(C)」として、【0019】に記載のリン酸ナトリウム類以外の化合物が記載されておらず、該リン酸ナトリウム類以外に、どのような分散剤が本件発明の課題を解決しうるのか十分に示されているとはいえないので、本件発明1,9、及び本件発明2?5,7,8,10,12は発明の詳細な説明に記載されたものでない旨主張する。 本件訂正により、本件発明の「分散剤(C)」は、「水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される」ものとなった。そして、本件発明1?5、7?10、12は、上記第4で示したとおりの理由で、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。 (3)「(c)本件請求項4,11に記載の『電解質高分子(A)の重量平均分子量』」での主張について ア 申立人は、電解質高分子(A)が非架橋体であるとの規定が無いにもかかわらず、電解質高分子(A)の重量平均分子量を規定している本件発明4,11、及び本件発明7,8,12は明瞭でない旨主張する。 しかし、上記重量平均分子量の規定は、「電解質高分子(A)」において分子量を測定しうるものに関する規定に過ぎないから、本件発明4、7、8、11、12は明瞭である。 イ また、申立人は、電解質高分子(A)が架橋体である場合には、本件発明4,11、及び本件発明7,8,12を実施することができない旨主張する。 しかし、架橋体でない場合、あるいは、架橋体であっても分子量を測定しうるものであれば、実施しうることは明らかである。このため、本件発明の詳細な説明は、本件発明4、7、8、11、12を実施しうる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。 (4)「(d)本件請求項9記載の『ハイドロゲル成形体』、『伸縮性ハイドロゲル』」での主張について ア 申立人は、本件請求項9には、「直径6mm、長さ2cmの円柱形を成すハイドロゲル成形体において、長さ方向に2倍以上に伸縮可能な伸縮性ハイドロゲル」と記載されているが、該ハイドロゲル成形体の含水量が記載されていないので、含水量を規定しない長さ方向に2倍以上に伸縮可能な伸縮性ハイドロゲルと規定する本件発明9、及び本件発明10?12は明瞭でない旨主張する。 しかし、これは適当な条件下でハイドロゲル成形体を「直径6mm、長さ2cmの円柱形」としたものが、「長さ方向に2倍以上」に伸縮するものであればよいとする程度のものであることが明らかであるから、本件発明9?12は明瞭である。 イ また、申立人は、上記「ハイドロゲル成形体」についてどのような測定条件で伸縮性評価を行ったのか規定されていないので、本件発明9、及び本件発明10?12を実施することができない旨主張する。 しかし、本件明細書【0055】の実施例38において、約7.5倍あるいは約6倍に延伸し、張力解放後はほぼ元の長さまで収縮したことを確認した伸縮測定が記載されている。このため、本件発明の詳細な説明は、本件発明9?12を実施しうる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。 ウ 申立人は、「長さ方向に2倍以上に伸縮可能な伸縮性ハイドロゲル」に関し、具体的にどの程度の引張応力をどの程度の時間を掛けて該ハイドロゲルに加えたのか、測定条件に関して再現可能な客観的な記載が一切ないので、本件発明9、及び本件発明10?12は明瞭でない旨主張する。 しかし、本件発明は、2倍以上に伸縮可能、すなわち、2倍以上に延伸する応力を与え、その解放後は元の長さまで収縮するものであることが、上記【0055】の記載から理解できる。そうすると、どの程度の引張応力をどの程度の時間を掛けて加えること自体には特に技術的意義があるとはいえない。このため、本件発明9?12は明瞭である。 エ また、申立人は、上記ウで示した主張における測定条件につき、どのような測定条件で伸縮性評価を行ったのか規定されていないので、本件発明9、及び本件発明10?12を実施することができない旨主張する。 しかし、上記ウで示したとおり、【0055】には、2倍以上に延伸する応力を与え、その解放後は元の長さまで収縮するかを確認する試験方法が記載されている。このため、本件発明の詳細な説明は、本件発明9?12を実施しうる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。 オ 申立人は、本件実施例には、水に完全溶解する電解質高分子(A)を用いて作成したハイドロゲルを成形して試料(ハイドロゲル成形体)を作成したものしか記載されていないところ、本件発明9には電解質高分子(A)が水に完全溶解するとの規定がないので、水に完全溶解しないものも包含されることになるため、本件発明9、及び本件発明10?12は発明の詳細な説明に記載されたものでない旨主張する。 しかし、本件請求項9の規定は、「電解質高分子(A)、クレイ粒子(B)、及び該クレイ粒子の分散剤(C)を含むハイドロゲル形成性組成物から作られ、直径6mm、長さ2cmの円柱形を成すハイドロゲル成形体において、長さ方向に2倍以上に伸縮可能な伸縮性ハイドロゲル」であり、「電解質高分子(A)、クレイ粒子(B)、及び該クレイ粒子の分散剤(C)を含むハイドロゲル形成性組成物」から、「直径6mm、長さ2cmの円柱形を成すハイドロゲル成形体」が作られ、該成形体が「長さ方向に2倍以上に伸縮可能」であることを確認しうるものであればよいといえる。そして、上記ウ及びエで示したとおり、該成形体は本件発明の詳細な説明に記載されているといえる。このため、本件発明9?12は発明の詳細な説明に記載されたものといえる。 (5)「(e)本件請求項10に記載の『ハイドロゲル』」での主張について ア 申立人は、同じ量の電解質高分子(A)、クレイ粒子(B)及び分散剤(C)がハイドロゲルに含有されていたとしても、含水率が変化すれば、ハイドロゲル100質量%中の前記各成分の含有量は相対的に変化するので、ハイドロゲルの含水量を規定しないでハイドロゲル中の本件三成分の含有量を規定している本件発明10、及び本件発明11?12は明瞭でない旨主張する。 しかし、本件三成分はハイドロゲル形成性組成物の原料の一部に過ぎず、該組成物を用いて例えば【0023】に記載されるような「ハイドロゲル形成性組成物を用いたゲル化は、ハイドロゲル形成性組成物の2成分の混合物若しくはその水溶液又は水分散液と、残りの1成分若しくはその水溶液又は水分散液とを混合することによってゲル化させることができる。又、各成分の混合物に対して水を添加することによってもゲル化が可能である。」との手法を用いてハイドロゲルを構成した際に、係るハイドロゲル中において本件三成分が本件請求項10に規定されるような構成比を採っていればよいことは明らかであり、該構成比はハイドロゲルの含水率とは関係がない。このため、本件発明10?12は明瞭である。 イ また、申立人は、どのような含水量のハイドロゲルであるのかが規定されていないので、本件発明10、及び本件発明11?12を実施することができない旨主張する。 しかし、上記アで示したとおりであるから、本件発明10を実施する際には、ハイドロゲルが形成できるように含水率を適宜調整すれば足りる。このため、本件発明の詳細な説明は、本件発明10?12を実施しうる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。 (6)まとめ 以上のとおり、本件発明の詳細な説明は本件発明1?12を実施しうる程度に明確かつ十分に記載したものであり、本件発明1?12は発明の詳細な説明に記載されたものであり、本件発明1?12は明瞭である。よって、申立人が主張する申立ての理由4には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、請求項1?12に係る発明の特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 電解質高分子(A)、クレイ粒子(B)、及び該クレイ粒子の分散剤(C)を含む、ハイドロゲル形成性組成物であって、 前記電解質高分子(A)が有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する電解質高分子であり、 前記クレイ粒子(B)が水膨潤性ケイ酸塩粒子であり、 前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される分散剤であることを特徴とする、ハイドロゲル形成性組成物。 【請求項2】 前記電解質高分子(A)がカルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有する電解質高分子である、請求項1に記載のハイドロゲル形成性組成物。 【請求項3】 前記電解質高分子(A)が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、請求項1又は請求項2に記載のハイドロゲル形成性組成物。 【請求項4】 前記電解質高分子(A)が重量平均分子量100万乃至1000万の完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のハイドロゲル形成性組成物。 【請求項5】 前記クレイ粒子(B)がスメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子である、請求項1に記載のハイドロゲル形成性組成物。 【請求項6】 前記分散剤(C)がオルトリン酸ナトリウム、二リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びポリリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載のハイドロゲル形成性組成物。 【請求項7】 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のハイドロゲル形成性組成物から作られるハイドロゲル。 【請求項8】 各々請求項1乃至請求項6のいずれか1項に特定されるところの、前記電解質高分子(A)、前記クレイ粒子(B)、及び前記分散剤(C)、並びに水又は含水溶媒を混合してゲル化させることを特徴とするハイドロゲルの製造方法。 【請求項9】 電解質高分子(A)、クレイ粒子(B)、及び該クレイ粒子の分散剤(C)を含むハイドロゲル形成性組成物から作られ、直径6mm、長さ2cmの円柱形を成すハイドロゲル成形体において、長さ方向に2倍以上に伸縮可能な伸縮性ハイドロゲルであって、 前記電解質高分子(A)が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩であり、 前記クレイ粒子(B)が水膨潤性ケイ酸塩粒子であり、 前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される分散剤である、伸縮性ハイドロゲル。 【請求項10】 前記ハイドロゲル100質量%中、前記電解質高分子(A)の含有量が0.1質量%乃至2.0質量%、前記クレイ粒子(B)の含有量が1.0質量%乃至5.0質量%、及び前記分散剤(C)の含有量が0.1質量%乃至1.0質量%である、請求項9に記載の伸縮性ハイドロゲル。 【請求項11】 前記電解質高分子(A)が重量平均分子量100万乃至1000万の完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩、前記クレイ粒子(B)がスメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母からなる群より選ばれる水膨潤性ケイ酸塩粒子、並びに前記分散剤(C)がオルトリン酸ナトリウム、二リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びポリリン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項9又は請求項10に記載の伸縮性ハイドロゲル。 【請求項12】 電解質高分子(A)、クレイ粒子(B)、及び該クレイ粒子の分散剤(C)を含むハイドロゲル形成性組成物から作られ、直径6mm、長さ2cmの円柱形を成すハイドロゲル成形体において、長さ方向に2倍以上に伸縮可能な伸縮性ハイドロゲルの製造方法であって、 前記電解質高分子(A)、前記クレイ粒子(B)、及び前記分散剤(C)、並びに水又は含水溶媒を混合してゲル化させることを特徴とし、 前記電解質高分子(A)が完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩であり、 前記クレイ粒子(B)が水膨潤性ケイ酸塩粒子であり、 前記分散剤(C)が水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤であって、水膨潤性ケイ酸塩の分散性の向上および水膨潤性層状ケイ酸塩を剥離させる目的で使用される分散剤である伸縮性ハイドロゲルの製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-05-24 |
出願番号 | 特願2013-103027(P2013-103027) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C08L)
P 1 651・ 536- YAA (C08L) P 1 651・ 113- YAA (C08L) P 1 651・ 121- YAA (C08L) P 1 651・ 851- YAA (C08L) P 1 651・ 4- YAA (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 藤本 保 |
特許庁審判長 |
佐藤 健史 |
特許庁審判官 |
大熊 幸治 井上 猛 |
登録日 | 2018-01-19 |
登録番号 | 特許第6276927号(P6276927) |
権利者 | 国立大学法人群馬大学 |
発明の名称 | ハイドロゲル形成性組成物及びそれより作られるハイドロゲル |
代理人 | 萼 経夫 |
代理人 | 宮崎 嘉夫 |
代理人 | 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所 |
代理人 | 加藤 勉 |
代理人 | 伴 知篤 |
代理人 | 萼 経夫 |
代理人 | 宮崎 嘉夫 |
代理人 | 伴 知篤 |
代理人 | 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所 |
代理人 | 加藤 勉 |