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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C10B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C10B |
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管理番号 | 1353161 |
異議申立番号 | 異議2018-700724 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-09-07 |
確定日 | 2019-06-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6291620号発明「炭化物製造方法及び炭化物製造設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6291620号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕、〔7?12〕について訂正することを認める。 特許第6291620号の請求項1、3?7、9?12に係る特許を維持する。 特許第6291620号の請求項2、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6291620号の請求項1?12に係る特許(以下、各請求項に係る特許を項番号に合わせて「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、平成29年8月30日に出願され、平成30年2月16日にその特許権の設定登録がされ、同年3月14日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、本件特許1?12に対して、同年9月7日に特許異議申立人である土山秀男により特許異議の申立てがなされ、同年12月12日付けで当審より取消理由が通知され、平成31年2月5日に特許権者より意見書及び訂正請求書(当該訂正請求によってなされた訂正を以下「本件訂正」という。)が提出されたものである。 なお、本件訂正に対して特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えたが応答はなかった。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容(訂正事項) 本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項、並びに、同法同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1?6〕、〔7?12〕について訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである(下線は特許権者が付した訂正箇所)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程と、前記炭化物生成工程で生成された炭化物を当該炭化物を収容可能な収容部内に収容するとともに、前記収容部内を陰圧にすることによって前記炭化物に吸着されている熱分解ガスを除去する除去工程と、を備える、炭化物製造方法。」と記載されているのを、「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程と、前記炭化物生成工程で生成された炭化物を当該炭化物を収容可能な収容部内に収容するとともに、前記収容部内を陰圧にすることによって前記炭化物に吸着されている熱分解ガスを除去する除去工程と、前記除去工程の後に、前記収容部内の圧力が前記除去工程終了時の前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給するガス供給工程と、を備える、炭化物製造方法。」に訂正する(請求項1を引用する請求項3?6も同様)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「請求項2に記載の炭化物製造方法において、前記ガス供給工程では、前記ガスとして酸素を含むガスを供給する、炭化物製造方法。」と記載されているのを、「請求項1に記載の炭化物製造方法において、前記ガス供給工程では、前記ガスとして酸素を含むガスを供給する、炭化物製造方法。」に訂正する(請求項3を引用する請求項4?6も同様)。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「請求項2又は3に記載の炭化物製造方法において、前記ガス供給工程の後に前記収容部を再度減圧する再減圧工程をさらに備える、炭化物製造方法。」と記載されているのを、「請求項1又は3に記載の炭化物製造方法において、前記ガス供給工程の後に前記収容部を再度減圧する再減圧工程をさらに備える、炭化物製造方法。」に訂正する(請求項4を引用する請求項5、6も同様)。 (5) 訂正事項5 明細書の段落【0007】に「本発明は、このような観点からなされたものである。具体的に、本発明は、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程と、前記炭化物生成工程で生成された炭化物を当該炭化物を収容可能な収容部内に収容するとともに、前記収容部内を陰圧にすることによって前記炭化物に吸着されている熱分解ガスを除去する除去工程と、を備える、炭化物製造方法を提供する。」と記載されているのを、「本発明は、このような観点からなされたものである。具体的に、本発明は、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程と、前記炭化物生成工程で生成された炭化物を当該炭化物を収容可能な収容部内に収容するとともに、前記収容部内を陰圧にすることによって前記炭化物に吸着されている熱分解ガスを除去する除去工程と、前記除去工程の後に、前記収容部内の圧力が前記除去工程終了時の前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給するガス供給工程と、を備える、炭化物製造方法。を備える、炭化物製造方法を提供する。」に訂正する。 (6) 訂正事項6 明細書の段落【0009】の記載を削除する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段と、を備える、炭化物製造設備。」と記載されているのを、「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段と、前記収容部内が陰圧であるときに前記収容部内の圧力が前記陰圧であるときの前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給することが可能なガス供給手段と、を備える、炭化物製造設備。」に訂正する(請求項7を引用する請求項9、10、12も同様)。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に「請求項8に記載の炭化物製造設備において、前記ガス供給手段は、前記ガスとして酸素を含むガスを供給する、炭化物製造設備。」と記載されているのを、「請求項7に記載の炭化物製造設備において、前記ガス供給手段は、前記ガスとして酸素を含むガスを供給する、炭化物製造設備。」に訂正する(請求項9を引用する請求項10、12も同様)。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に「請求項8又は9に記載の炭化物製造設備において、前記収容部内の熱分解ガスの量が基準量未満になったこと及び/又は前記収容部内の炭化物の発熱が終了したことを示す条件が成立したときに、前記収容部から前記炭化物を排出させる制御部をさらに備える、炭化物製造設備。」と記載されているのを、「請求項7又は9に記載の炭化物製造設備において、前記収容部内の熱分解ガスの量が基準量未満になったこと及び/又は前記収容部内の炭化物の発熱が終了したことを示す条件が成立したときに、前記収容部から前記炭化物を排出させる制御部をさらに備える、炭化物製造設備。」に訂正する(請求項10を引用する請求項12も同様)。 (11) 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に「請求項7ないし10のいずれかに記載の炭化物製造設備において、切替部をさらに備え、前記収容部は、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第1収容室と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第2収容室と、を有し、前記切替部は、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第1収容室に流入する第1状態と、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第2収容室に流入する第2状態と、を切り替える、炭化物製造設備。」と記載されているのを、「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段と、を備える、炭化物製造設備において、切替部をさらに備え、前記収容部は、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第1収容室と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第2収容室と、を有し、前記切替部は、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第1収容室に流入する第1状態と、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第2収容室に流入する第2状態と、を切り替える、炭化物製造設備。」に訂正する(請求項11を引用する請求項12も同様)。 (12) 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項12に「請求項7ないし11のいずれかに記載の炭化物製造設備において、前記炭化炉と前記収容部との間に設けられており、前記炭化炉から排出された炭化物を冷却する冷却ユニットをさらに備える、炭化物製造設備。」と記載されているのを、「請求項7及び9?11のいずれかに記載の炭化物製造設備において、前記炭化炉と前記収容部との間に設けられており、前記炭化炉から排出された炭化物を冷却する冷却ユニットをさらに備える、炭化物製造設備。」に訂正する。 (13) 訂正事項13 明細書の段落【0019】に「また、本発明は、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段と、を備える、炭化物製造設備を提供する。」と記載されているのを、「また、本発明は、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段と、前記収容部内が陰圧であるときに前記収容部内の圧力が前記陰圧であるときの前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給することが可能なガス供給手段と、を備える、炭化物製造設備を提供する。」のとおり訂正する。 (14) 訂正事項14 明細書の段落【0021】の記載を削除する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1、7について 訂正事項1は、訂正前の請求項2に記載された事項を請求項1に追加して、当該請求項1に記載された事項を限定するものであり、同様に、訂正事項7は、訂正前の請求項8に記載された事項を請求項7に追加して、当該請求項7に記載された事項を限定するものである。 したがって、訂正事項1、7は、いずれも願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものといえ、また、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 そして、これらの訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (2) 訂正事項2、8について 訂正事項2、8は、訂正前の請求項2、8を削除するものであるから、これらの訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。 (3) 訂正事項3、4、9、10、12について 上記訂正事項1、2は、訂正前の請求項2に記載された事項を請求項1に追加し、当該請求項2を削除するものであり、実質的に、請求項1の記載内容を、訂正前の請求項2の記載内容とするものであるところ(実体としては、請求項1の削除に等しい。)、訂正事項3に係る請求項3の訂正は、当該請求項3の引用請求項であった「請求項2」を、「請求項1」(上記のとおり、実質的には、訂正前の請求項2)とするものであるから、当該訂正の前後において、請求項3の記載内容は実質的に変わらない。そうすると、訂正事項3は、上記訂正事項2により削除された請求項2をいまだ引用しているという、請求項3の明瞭でない記載を解消するためのものというべきである。 同様に、訂正事項4、9、10、12についても、訂正事項2、8による請求項2、8の削除に伴う請求項の記載の明瞭化を図るためのものということができる。 したがって、これらの訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。 また、これらの訂正事項は、訂正事項2及び訂正事項8に伴ってなされた請求項の記載の明瞭化にすぎないものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。 (4) 訂正事項11について 訂正事項11は、訂正前の請求項11が引用していた請求項7?10のうち、請求項7を引用していた部分を独立形式に書き下したものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第4号に掲げる、いわゆる引用関係の解消を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。 (5) 訂正事項5、6、13、14について 訂正事項5、6、13、14は、明細書の記載を、訂正された請求項の記載に整合させるものであるから、これらの訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。 3 小括 上記1、2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項、並びに、同法同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1?6〕、〔7?12〕について訂正することを求めるものであり、その訂正事項はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕、〔7?12〕について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載 上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件訂正後の、次のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)。 「【請求項1】 バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程と、 前記炭化物生成工程で生成された炭化物を当該炭化物を収容可能な収容部内に収容するとともに、前記収容部内を陰圧にすることによって前記炭化物に吸着されている熱分解ガスを除去する除去工程と、 前記除去工程の後に、前記収容部内の圧力が前記除去工程終了時の前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給するガス供給工程と、を備える、炭化物製造方法。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 請求項1に記載の炭化物製造方法において、 前記ガス供給工程では、前記ガスとして酸素を含むガスを供給する、炭化物製造方法。 【請求項4】 請求項1又は3に記載の炭化物製造方法において、 前記ガス供給工程の後に前記収容部を再度減圧する再減圧工程をさらに備える、炭化物 製造方法。 【請求項5】 請求項4に記載の炭化物製造方法において、 前記再減圧工程後、前記ガス供給工程と前記再減圧工程とを複数回繰り返す、炭化物製造方法。 【請求項6】 請求項4又は5に記載の炭化物製造方法において、 前記収容部内の熱分解ガスの量が基準量未満になったこと及び/又は前記収容部内の炭化物の発熱が終了したことを示す条件が成立したときに、前記収容部から前記炭化物を取り出す取出工程をさらに備える、炭化物製造方法。 【請求項7】 バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉と、 前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、 前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段と、 前記収容部内が陰圧であるときに前記収容部内の圧力が前記陰圧であるときの前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給することが可能なガス供給手段と、を備える、炭化物製造設備。 【請求項8】(削除) 【請求項9】 請求項7に記載の炭化物製造設備において、 前記ガス供給手段は、前記ガスとして酸素を含むガスを供給する、炭化物製造設備。 【請求項10】 請求項7又は9に記載の炭化物製造設備において、 前記収容部内の熱分解ガスの量が基準量未満になったこと及び/又は前記収容部内の炭化物の発熱が終了したことを示す条件が成立したときに、前記収容部から前記炭化物を排出させる制御部をさらに備える、炭化物製造設備。 【請求項11】 バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉と、 前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、 前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段と、を備える炭化物製造設備において、 切替部をさらに備え、 前記収容部は、 前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第1収容室と、 前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第2収容室と、を有し、 前記切替部は、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第1収容室に流入する第1状態と、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第2収容室に流入する第2状態と、を切り替える、炭化物製造設備。 【請求項12】 請求項7及び9?11のいずれかに記載の炭化物製造設備において、 前記炭化炉と前記収容部との間に設けられており、前記炭化炉から排出された炭化物を冷却する冷却ユニットをさらに備える、炭化物製造設備。」 第4 平成30年12月12日付けで通知した取消理由についての判断 1 標記取消理由の概要 本件訂正前の本件特許(本件発明)に対して通知した標記取消理由の要旨は、次の(1)、(2)のとおりである。 (1) (新規性)本件特許の請求項1、7、12に係る発明は、下記甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明であり、また、本件特許の請求項1、7に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定により特許を受けることができないものであるため、当該請求項1、7、12に係る発明の特許は、同項の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものである(特許法第113条第2号)。 (2) (進歩性)本件特許の請求項1、7、12に係る発明は、下記甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明に基いて、また、本件特許の請求項1、7に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるため、当該請求項1、7、12に係る発明の特許は、同項の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものである(特許法第113条第2号)。 記 甲第1号証:特開2016-124897号公報 甲第2号証:特開2004-323267号公報 甲第3号証:特許第5420159号公報 (以下、甲第1号証などを単に「甲1」という。)。 なお、訂正後の請求項1及び7に係る発明は、実質的に、取消理由を通知していない訂正前の請求項2及び8に係る発明に訂正されたので、取消理由は解消した。 また、訂正後の請求項12に係る発明において、請求項7、9及び10を引用する部分(訂正後の請求項7に係る発明の発明特定事項をすべて有する部分)についても、上記訂正後の請求項7に係る発明と同様、訂正によって取消理由は解消した。 2 取消理由(1)、(2)(新規性、進歩性)について (1) 甲1の記載事項 ア 甲1の【特許請求の範囲】には、次の記載がある。 ・「【請求項1】 炭素を含有する被処理物を加熱処理する加熱手段と、加熱手段からの加熱処理物に対し加湿する加湿手段と、加湿された加熱処理物を空気流搬送する空気流搬送手段と、空気流搬送手段によって搬送された加熱処理物を貯留する貯留手段とを有することを特徴とする炭素含有物の処理装置。 ・・・ 【請求項5】 前記加湿手段は、加熱処理物を移動させる移動路内に対して水分を添加する水分添加手段を含む請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の炭素含有物の処理装置。 ・・・ 【請求項7】 炭素を含有する被処理物を加熱処理し、加熱処理した加熱処理物を加湿し冷却し、加湿された加熱処理物を空気流搬送し、空気流搬送された加熱処理物を自己発熱性抑制処理することを特徴とする炭素含有物の処理方法。 【請求項8】 前記被処理物が、有機性廃棄物であって、前記加熱処理が炭化処理であることを特徴とする請求項7記載の炭素含有物の処理方法。」 イ また、甲1には、具体的な形態について、【図1】とともに、次の記載がある(下線は当審が付したもの)。 ・「【0026】 <第1の形態> 炭素を含有する被処理物の種類を問われるものではないが、代表例では下水汚泥である。下水汚泥は、通常80%程度の水分を含有するが、適宜形式の乾燥機により、脱水された下水汚泥を、蒸気等を熱源とした間接加熱方式の乾燥機にて乾燥する。 乾燥汚泥の水分は特に限定されるものではないが、ハンドリング性等を考慮すると10?30%、より望ましくは15?25%程度が好適である。乾燥機のタイプは、間接加熱乾燥方式のほか、直接熱風方式等も採用できる。 【0027】 かくして得た乾燥汚泥Mは、ロータリーキルン方式等の炭化炉10に移送され、低酸素雰囲気下で炭化温度250?600℃、より望ましくは300?350℃程度の炭化温度にて炭化処理する。 炭化炉10のタイプは、ロータリーキルン方式のほか流動床式やスクリュー式等も採用できる。 炭化炉10から排出された可燃性ガスは、たとえば再燃炉12に供給され燃焼された後、排ガス処理設備13を経て外部に排出される。 ・・・ 【0029】 炭化炉10から排出された炭化物は、直接的に加湿機20に導入される。加湿機20では、炭化物に直接、水が噴霧され70?90℃程度に急冷されるとともに、5?20%、特に好ましは7?15%程度の水分となるよう加湿される。加湿機20のタイプは、ロッド式やパドル式、スクリュー式等が採用でき、またこれらを組み合わせた構造の加湿機20も採用可能である。 ・・・ 【0034】 炭化炉10と加湿機20はシュート11を介して直接的に接続されているため、加湿機20より炭化物を取り出す際は、加湿機20出口にてロータリーバルブ21等を用いて機内雰囲気と縁切りする必要がある。 ・・・ 【0035】 加湿機20内と縁切りされながら排出された炭化物は、第1の空気流搬送装置により貯留槽41に移送される。 ・・・ 【0036】 空気流搬送装置は、吸引式と圧送式のいずれも採用できるが、圧送式の場合は、縁切り機構を通して、空気が加湿機20及び炭化炉10内にリークすることに配慮する必要がある。吸引式の場合は、縁切り機構の二次側を大気Aに開放することで、加湿機20及び炭化炉10内のガスのリークや、加湿機20及び炭化炉10内への空気のリークが防止できる。そのため、縁切り機構のシール性が低い場合には、吸引式の方が有利である。 ・・・ 【0037】 図1の形態の第1の空気流搬送装置吸引式であり、吸引ブロワ30により空気流搬送管路30Aを通して大気Aを吸引する過程で搬送するものである。搬送空気は炭化物分離装置31を介して炭化物が分離され、吸引ブロワ30の吐出側から排気される。 ・・・ 【0041】 空気流搬送された炭化物は、炭化物分離装置31により搬送空気から分離された後、後段機器に移送される。炭化物分離装置31は、バグフィルターやサイクロンが採用できる。また、炭化物中に微粉が含まれる場合、ハンドリング性向上等を目的として、微粉分離機構(例えば風力選別)と炭化物分離装置31を組み合わせても良い。 【0042】 この後段機器(仕向先処理手段)は、空気流搬送手段によって搬送された炭化物の自己発熱性を抑制する安定化処理する安定化処理手段である。図示例では、安定化処理槽41に炭化物は一時貯留され、安定化処理槽41に供給される空気や酸素ガスやオゾン水や過酸化水素水と接触させることで炭化物表面を酸化させる。その結果、加熱処理物の自己発熱性が抑制される。 ・・・ 【0043】 安定化処理が終了した炭化物は、たとえば吸引方式による、第2の空気搬送手段50により、第2の炭化物分離装置32を通って、貯留ホッパ60に一時的に貯留され、燃焼設備への燃料Fとして出荷される。 安定化処理槽41から排出される炭化物の温度が比較的高い温度の場合、吸引空気を冷却器51により冷却することができる。」 ・「【図1】 」 (2) 甲2の記載事項 ア 甲2の【特許請求の範囲】には、次の記載がある。 ・「【請求項1】 被処理物を間接加熱することで得た蓄熱状態の炭化物を回転炉内に供すると共に空気を吸引導入しながら攪拌と搬送とを行い、前記空気によって炭化物の表面を酸化することにより炭化物を賦活処理して多孔質炭化物を得ること を特徴とする多孔質炭化物の製造方法。 ・・・ 【請求項4】 被処理物を間接加熱により熱分解処理して炭化物を得る熱分解処理装置と、蓄熱状態の前記炭化物の表面を酸化処理することにより賦活処理して多孔質炭化物得る賦活処理炉とを備え、前記賦活処理炉は、空気を吸引導入すると共に前記炭化物を攪拌及び搬送する回転炉を具備したこと を特徴とする多孔質炭化物製造施設。」 イ また、甲2には、具体的な形態について、【図1】とともに、次の記載がある(下線は当審が付したもの)。 ・「【0002】 【従来の技術】 従来、廃棄されていた各種の汚泥、有機性廃棄物、生産活動で発生した端材等の廃棄物は乾燥処理さらには熱分解処理などの加熱処理がなされ、これによって得られた炭化物は再利用に供することが行われている。これらの加熱処理の方法としては、通常、間接加熱方式が採用されている。 【0003】 間接加熱処理方式は、例えば、図1に示した熱分解処理装置1における第一加熱炉11や第二加熱炉13のように、被処理物(原料)が導入される回転炉110,130に熱風ガスが流通する加熱ジャケット111,131を付帯させて、被処理物と加熱媒体(熱風ガス)との接触を断った状態で被処理物を加熱処理している。」 ・「【0016】 【発明の実施の形態】 以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。 【0017】 図1は、本発明の実施形態例の一つである熱分解処理施設の概略図である。 【0018】 図示された熱分解処理装置1は、各種廃棄物等の原料を熱分解処理して炭化物を得るための装置で、第一加熱炉11と第二加熱炉13と熱風炉15を備える。 ・・・ 【0027】 賦活処理炉7は、熱分解処理装置1で得た炭化物を一定の雰囲気で燃焼して賦活処理する装置で、前記炭化物と空気が導入される回転炉70を備える。ここでは、少なくとも第二加熱炉13内の加熱温度以下の雰囲気で燃焼する。回転炉70は筒状の鋼材から構成され、その筒状の鋼材の内壁部にはキャスタブル材からなる耐火耐熱層701が設けられている。回転炉70は、複数の回転ローラ71で支持され、モータMを備えた回転手段72によって回転する。また、回転炉70内には、炉内温度を監視する図示省略した温度センサーが設けられる。 【0028】 回転炉70の両端には、原料を導入するためのジャケット73と、賦活処理物を排出するためのジャケット77とが、それぞれシール部材730,770を介して設けられる。シール部材730,770は、回転炉70が回転自在となるように、回転炉70とジャケット73,77とを気密に接続する。 【0029】 ジャケット73には、原料を導入するための搬送手段74(例えばスクリューコンベア等)と、賦活ガスとして新鮮空気を導入するための空気導入口75とが具備される。新鮮空気は排気ブロア5によって吸引導入している。新鮮空気は少なくとも塩素及び硫黄を含んでいない空気をいう。尚、図示省略されているが、ジャケット73には回転炉70内で賦活処理する時以外に原料を適宜燃焼処理するための燃焼バーナーが設けられる。 【0030】 ジャケット77は、内壁部に耐火耐熱キャスタブル材からなる図示省略した耐火・耐熱層を設けている。また、ジャケット77内の底部付近には火格子(ロストル)が適宜設けられ、さらにジャケット77の上部位側には回転炉70内のガスを排気するための配管が接続されている。尚、図1中の円内に示したように、ジャケット77の賦活炭化物排出側には、賦活炭化物を系外排出する際に空気が混入しないように、バルブ771、バファータンク77及びバルブ772が順次接続される。 【0031】 次に、本実施形態の熱分解処理施設の動作例について説明する。 【0032】 第一加熱炉11に導入された原料は、例えば滞留時間30分のもと約350℃で加熱されて乾燥処理される。次いで、第二加熱炉13においては、例えば滞留時間30分のもと約600℃で加熱されて熱分解処理される。第二加熱炉13で生成した炭化物はダクト14を介して搬送手段74に供される。一方、第一加熱炉11及び第二加熱炉13で発生した水蒸気及び熱分解ガスはガス燃焼炉2に供される。 【0033】 搬送手段74は導入した炭化物を400?450℃の蓄熱状態で賦活処理炉7に供給する。賦活処理炉7の回転炉70には、新鮮空気が排気ブロア5による吸引によって空気導入口76から導入されている。回転炉70内に導入された炭化物は回転炉70の回転によって攪拌されながら搬送される。このとき、熱風炉15や加熱ジャケット11から排出された熱風ガスまたは熱交換器3で加熱された空気が空気導入口77から適宜導入され、回転炉70内の温度が一定に調節される。例えば、回転炉70内の雰囲気が第二加熱炉13にて炭化物を得る際の温度以下、より具体的には生成炭化物自体の温度以下(例えば約300℃)となるように、空気の導入量が調整される。回転炉70内に導入された炭化物は、相当の温度を保持し不安定な状態となっていると共に、回転炉70による攪拌と吸引導入された空気流とによって空気若しくは加熱空気との接触効率が高まった状態となっている。このようにして空気と接触した炭化物はその表面が酸化されて賦活処理される。賦活処理された炭化物は排出ジャケット77から回収される。この際、排出ジャケット77の出口側から空気が回転炉70内に混入しないように、バルブ771,772が開閉動作して賦活処理炭化物は一時的にバッファータンク77内に貯留される。一方、回転炉70内のガスはガス燃焼炉2に供されて燃焼処理される。」 ・「【図1】 」 (3) 甲3の記載事項 ア 甲3の【特許請求の範囲】には、次の記載がある。 ・「【請求項1】 酸素不足下で木質系バイオマスを炭化する炭化炉と、搬送系を介して該炭化炉で生成された炭化物を貯留する貯留ホッパを具備した炭化物貯留搬送装置において、 前記炭化炉より排出された炭化物を酸素不足下で冷却しながら貯留ホッパまで搬送する冷却手段を具えた炭化物搬送系を有し、前記炭化物搬送系は搬送過程に酸素不足状態を維持して炭化物を解砕する解砕手段を介装したことを特徴とする炭化物貯留搬送装置。 ・・・ 【請求項4】 前記炭化物搬送系は、前記解砕手段の出口で、前記解砕手段で解砕された前記炭化物へ向けて散水可能な散水手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の炭化物貯留搬送装置。 【請求項5】 請求項1記載の炭化物搬送装置において、前記貯留ホッパの後流側に前記炭化物に含まれる異物を分離する異物分離手段と、前記異物分離手段の後流側に炭化物を微粉砕する微粉砕手段を具備し、前記異物分離手段より燃焼炉までの搬送系が気流搬送系で構成されていることを特徴とする炭化物貯留搬送装置。 ・・・ 【請求項9】 酸素不足下で木質系バイオマスを炭化させた炭化物を炭化炉にて生成し、該炭化物を貯留する貯留ホッパで一旦保持して貯留するとともに、搬送系を介して炭化物を搬送する炭化物貯留搬送方法において、 前記炭化炉より排出された炭化物を酸素不足下で冷却するとともに搬送し、酸素不足状態を維持して炭化物を解砕して前記炭化物内部に残存している高温部を露出させ、解砕した炭化物を酸素不足下で冷却しながら貯留ホッパまで搬送することを特徴とする炭化物貯留搬送方法。 ・・・ 【請求項11】 解砕直後の前記炭化物へ向けて散水可能としたことを特徴とする請求項9記載の炭化物貯留搬送方法。 【請求項12】 請求項9記載の炭化物貯留搬送方法において、前記貯留ホッパから排出された炭化物に含まれる異物を分離し、異物分離された炭化物を微粉砕して燃焼炉まで気流搬送することを特徴とする炭化物貯留搬送方法。」 イ また、甲3には、具体的な形態について、【図1】、【図2】、【図4】とともに、次の記載がある(下線は当審が付したもの)。 ・「【発明を実施するための最良の形態】 【0018】 以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。 図1は本発明の実施例1に係る炭化物搬送装置の全体構成図、図2は実施例1に係る炭化物搬送のフロー図、図3は本実施例1に係る解砕機の側面図、図4は実施例1に係る貯留ホッパの概略図、図5は実施例1に係る異物分離手段を説明する概略図、図6は実施例2に係る炭化物搬送装置のフロー図である。 なお、以下に述べる実施例では、炭化炉に投入する被処理物として、植物、廃木材、農業廃棄物、家畜糞尿、下水汚泥等のバイオマスが挙げられるが、特に製材廃材、除間伐材、薪炭林等の林業系廃木材や建設廃木材の木質系バイオマスが好ましい。 【実施例1】 【0019】 まず、図1、図2を用いて実施例1の炭化物搬送装置について説明する。図1に示した炭化物搬送装置は、炭化炉1と、冷却コンベア2、冷却コンベア2の後段の解砕機16と、解砕機16の後段に設けられた冷却コンベア3と、冷却された炭化物を一旦保持する貯留ホッパ4と、貯留ホッパ4の出口部に設けられた払出コンベア5a、5bからなる冷却・貯留・異物分離手段と、炭化物サイクロン6、炭化物粉砕機7と、粉砕機サイクロン10と、粉砕機バグフィルタ11と、微粉炭バグフィルタ12と、微粉炭ホッパ8とからなる気流搬送手段とで構成され、炭化物21は微粉炭燃焼炉9に搬送される。 ・・・ 【0021】 実施例1においては、炭化炉1から排出された炭化物21は、冷却コンベア2で冷却されながら搬送され、解砕機16へ供給される。解砕機16へ供給された炭化物21は、解砕され、炭化物21内部に残存している高温部を露出させる。この炭化物21の高温部を解砕機16の出口部で必要な場合は散水し冷却する。散水は炭化物搬送系路上より炭化物へ向けて可能であるが、特に解砕機16の出口部で散水することにより炭化物21の冷却を促進し、発火の抑制を図っている。散水後、炭化物21は冷却コンベア3で冷却されるとともに搬送され、貯留ホッパ4に供給される。 ここで示した貯留ホッパは2槽の貯留槽とし、払出コンベア5a、5bは各貯留槽に設けた。払出コンベア5a、5bから排出された炭化物は、気流による比重差分離(気流分離)により、異物23が除去されて炭化物サイクロン6へ搬送される。ここで異物とは、被処理物であるバイオマスに混入されたものであり、例えば木質系バイオマスではちょうつがいやパチンコ玉などの小さな金属類である。 【0022】 異物分離されて炭化物サイクロン6へ搬送された炭化物は、微粉分と微粉分よりも粒径が大きい炭化物とに分級される。 分級された微粉分は、後述の微粉炭と混合されて微粉炭バグフィルタ12に気流搬送され、微粉炭ホッパ8を経て空送ブロワ13による空気流で排出されて微粉炭燃焼炉9へ搬送される。 【0023】 また、炭化物サイクロン6で分級された微粉分より大きい炭化物は、炭化物粉砕機7へ搬送され、粉砕され微粉炭となる。ここで微粉炭とは微粉砕された炭化物で、具体的には粒径74μm以下の粒体が90%以上である微粉炭化物をいう。その後、粉砕機サイクロン10、粉砕機バグフィルタ11を経て微粉炭を補集する。ここでの搬送は、炭化物が滞留するのを防止するために気流搬送とし、さらに空送方式を排気ファン14、空送ブロワ15による吸引式として、粉砕機サイクロン10及び粉砕機バグフィルタ11で捕集した微粉炭を炭化物サイクロン6から微粉炭ホッパ8空送ラインへ落とし込めるようにしてラインの単純化を図っている。 なお、上述した炭化物搬送装置の配管は、できるだけ曲折しないように設置し、炭化物が配管内で滞留しないように設計することが好ましい。」 ・「【0025】 次に、図4を用いて実施例1で用いられる貯留ホッパ4について説明する。ここでは炭化物の発火を抑制するために、貯留槽の内部に仕切り壁を設けて炭化物を貯留する2層の仕切り空間を備えた貯留ホッパを用いているが、前記貯留ホッパは炭化物を長期貯留させないで且つ非燃焼状態で維持された閉鎖空間を備えた貯留槽であれば単槽でもよい。 【0026】 図4に示した貯留ホッパ4は、仕切り壁37と、仕切り壁37により形成された仕切り空間19a、19bと、その仕切り空間19a、19b内の炭化物を正逆転可能に排出する払出コンベア5a、5bと、仕切り壁37上に形成される空間に設けられた炭化物の流路を切り替える流路切替手段35と、不活性ガスを注入可能に構成した不活性ガス注入手段24とで構成されている。 ・・・ 【0028】 仕切り空間19a、19bに貯留された炭化物21は、仕切り空間19a、19bに夫々備えられた酸素濃度計17と一酸化炭素濃度計18により炭化物燃焼状態を監視され、自然発火を抑制している。また、自然発火を抑制するために、不活性ガス注入手段24により仕切り空間19a、19b内に不活性ガスを注入している。 【0029】 このようにして、仕切り空間19a、19b内で非燃焼状態を維持するように貯留された炭化物21は、払出コンベア5a、5bにより排出される。排出された炭化物21は、後述する異物分離手段により、異物23が分離される。」 ・「【図1】 【図2】 【図4】 」 (4) 甲1発明(甲1方法、甲1装置) 甲1の請求項7、8には炭素含有物の処理方法が、また、同請求項1、5には炭素含有物の処理装置が、それぞれ記載されているところ(上記(1)ア参照)、それらの具体的な形態を記載した図1及びその説明(上記(1)イ参照)には、次の発明が記載されているといえる。 ・「乾燥汚泥Mを、炭化炉10において、低酸素雰囲気下で250?600℃程度の炭化温度にて炭化処理する工程と、 当該炭化炉10から排出された炭化物を、加湿器20において、急冷及び加湿する工程と、 当該加湿器20内と縁切りされながら排出された炭化物を、吸引ブロワ30により空気流搬送管路30Aを通して大気Aを吸引する過程で搬送する吸引式の第1の空気流搬送装置により、炭化物分離装置31に空気搬送する工程と、 当該空気搬送された炭化物を、炭化物分離装置31により、搬送空気から分離した後、安定化処理槽41に一時貯留し、空気などを接触させて炭化物表面を酸化し、自己発熱性を抑制する安定化処理をする工程と、 当該安定化処理が終了した炭化物を、吸引方式による第2の空気搬送手段50により、第2の炭化物分離装置32を通して貯留ホッパ60に一時的に貯留し、燃料設備へ燃料Fとして出荷する工程と、 を有する炭素含有物の処理方法。」 ・「乾燥汚泥Mを、低酸素雰囲気下で250?600℃程度の炭化温度にて炭化処理する、炭化炉10と、 当該炭化炉10から排出された炭化物を、急冷及び加湿する、加湿器20と、 当該加湿器20内と縁切りされながら排出された炭化物を、吸引ブロワ30により空気流搬送管路30Aを通して大気Aを吸引する過程で炭化物分離装置31に空気搬送する、吸引式の第1の空気流搬送装置と、 当該空気搬送された炭化物を、搬送空気から分離する、炭化物分離装置31と、 当該搬送空気から分離された炭化物を、一時貯留し、空気などを接触させて炭化物表面を酸化し、自己発熱性を抑制する安定化処理をする、安定化処理槽41と、 当該安定化処理が終了した炭化物を、吸引方式による第2の空気搬送手段50により、第2の炭化物分離装置32を通して一時的に貯留する、貯留ホッパ60と、 を有する炭素含有物の処理装置。」 (以下、前者を「甲1方法」といい、後者を「甲1装置」といい、合わせて「甲1発明」という。) (5) 甲2発明(甲2方法、甲2装置) 甲2の請求項1には多孔質炭化物の製造方法が、また、同請求項4には多孔質炭化物製造施設が、それぞれ記載されているところ(上記(2)ア参照)、それらの具体的な形態を記載した図1及びその説明(上記(2)イ参照)には、次の発明が記載されているといえる。 ・「各種廃棄物等の原料を、第一加熱炉11と第二加熱炉13と熱風炉15を備える熱分解処理装置1において、熱分解処理して炭化物を得る工程と、 当該熱分解処理装置1で得た炭化物を、回転炉70を備える賦活処理炉7において、排気ブロア5による吸引によって空気導入口75から導入した賦活ガスとしての新鮮空気と接触させて賦活処理する工程と、 当該賦活処理された炭化物を、回転炉70に設けられた排出ジャケット76において、回収する工程と、 当該回収された炭化物を、バッファータンク77において、排出ジャケット76の出口側から空気が回転炉70内に混入しないように、バルブ771、772を開閉動作して、一時的に貯留する工程と、 を有する多孔質炭化物の製造方法。」 ・「各種廃棄物等の原料を熱分解処理して炭化物を得る、第一加熱炉11と第二加熱炉13と熱風炉15を備える熱分解処理装置1と、 当該熱分解処理装置1で得た炭化物を、排気ブロア5による吸引によって空気導入口75から導入した賦活ガスとしての新鮮空気と接触させて賦活処理する、回転炉70を備える賦活処理炉7と、 当該賦活処理された炭化物を回収する、回転炉70に設けられた排出ジャケット76と、 当該回収された炭化物を、排出ジャケット76の出口側から空気が回転炉70内に混入しないように、バルブ771、772を開閉動作して、一時的に貯留する、バッファータンク77と、 を有する多孔質炭化物製造施設。」 (以下、前者を「甲2方法」といい、後者を「甲2装置」といい、合わせて「甲2発明」という。) (6) 甲3発明(甲3方法、甲3装置) 甲3の請求項9、11、12には炭化物貯留搬送方法が、また、同請求項1、4、5には炭化物貯留搬送装置が、それぞれ記載されているところ(上記(3)ア参照)、それらの具体的な形態を記載した図1、2及びその説明(上記(3)イ参照)には、次の発明が記載されているといえる。 ・「木質系バイオマスを、炭化炉1において、炭化する工程と、 当該炭化炉1から排出された炭化物21を、冷却コンベア2、3及び解砕機16において、冷却及び解砕する工程と、 当該冷却された炭化物を、2槽の貯留槽を有する貯留ホッパ4及び払出コンベア5a、5bにおいて、一旦保持するとともに異物23を除去する工程と、 当該異物除去された炭化物を、炭化物サイクロン6において、微粉分と微粉分よりも粒径が大きい炭化物とに分級する工程と、 当該分級された微粉分よりも粒径が大きい炭化物を、炭化物粉砕機7、粉砕機サイクロン10及び粉砕機バグフィルタ11において、粉砕して微粉炭を補集する工程と、 当該分級された微粉分と捕集された微粉炭を、排気ファン14及び空送ブロワ15による吸引式の空送方式により、微粉炭バグフィルタ12に気流搬送するとともに、空送ブロワ13による空気流により、微粉炭ホッパ8を経て微粉炭燃焼炉9へ排出する工程と、 を有する炭化物貯留搬送方法。」 ・「木質系バイオマスを炭化する、炭化炉1と、 当該炭化炉1から排出された炭化物21を冷却及び解砕する、冷却コンベア2、3及び解砕機16と、 当該冷却された炭化物を、一旦保持するとともに異物23を除去する、2槽の貯留槽を有する貯留ホッパ4及び払出コンベア5a、5bと、 当該異物除去された炭化物を、微粉分と微粉分よりも粒径が大きい炭化物とに分級する、炭化物サイクロン6と、 当該分級された微粉分よりも粒径が大きい炭化物を粉砕して微粉炭を補集する、炭化物粉砕機7、粉砕機サイクロン10及び粉砕機バグフィルタ11と、 当該分留された微粉分と捕集された微粉炭とを、微粉炭バグフィルタ12に気流搬送するとともに微粉炭ホッパ8を経て微粉炭燃焼炉9へ排出する、排気ファン14、空送ブロワ15及び空送ブロワ13と、 を有する炭化物貯留搬送装置。」 (以下、前者を「甲3方法」といい、後者を「甲3装置」といい、合わせて「甲3発明」という。) (7) 甲1発明に基づく新規性・進歩性の判断 ア 本件発明1について (ア) 「甲1方法」との対比 「甲1方法」における「乾燥汚泥Mを、炭化炉10において、低酸素雰囲気下で250?600℃程度の炭化温度にて炭化処理する工程」は、本件発明1における「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程」に相当するものといえ、また、「甲1方法」の「炭素含有物の処理方法」は、本件発明1の「炭化物製造方法」に相当するものということができる。 そうすると、本件発明1と「甲1方法」とは、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程を備える、炭化物製造方法である点で一致し、次の点で相違するものといえる。 相違点1:本件発明1は、「前記炭化物生成工程で生成された炭化物を当該炭化物を収容可能な収容部内に収容するとともに、前記収容部内を陰圧にすることによって前記炭化物に吸着されている熱分解ガスを除去する除去工程」を備えているのに対して、「甲1方法」は、そのような工程を備えているか不明な点。 相違点2:本件発明1は、「前記除去工程の後に、前記収容部内の圧力が前記除去工程終了時の前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給するガス供給工程」を備えているのに対して、「甲1方法」は、そのような工程を備えていない点。 (イ) 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 「甲1方法」における「炭化物分離装置31」及び「安定化処理槽41」も、炭化物を中に収めている点で、ある種の「収容部」であるということができ、吸引式の「第1の空気流搬送装置」あるいは「第2の空気流搬送手段」によって吸引されていることから、「陰圧」の状態にあるといえたとしても、「甲1方法」の「第1の空気流搬送装置」及び「第2の空気流搬送手段」は、搬送のために空気流を生成しているものであって、「炭化物分離装置31」及び「安定化処理槽41」内を積極的に陰圧とするものではない。また、仮に、陰圧の状態が生じたとしても、「第1の空気流搬送装置」及び「第2の空気流搬送手段」が停止すれば空気流が停止し、圧力が高まって、陰圧の状態が自然と解除されるものといえることから、「甲1方法」において、「炭化物分離装置31」及び「安定化処理槽41」内にガスを供給して、それらの内部の圧力を高くするようなガス供給工程を備えることは、想定されていないというべきである。 また、甲1?3には、そのようなガス供給工程を示唆する記載はなく、「甲1方法」において、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することが容易想到であるとする根拠は見当たらない。 そして、本件発明1は、当該発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書の【0010】に記載された効果、すなわち、「このようにすれば、前記収容部から取り出された炭化物からの熱分解ガスの発生が抑制される。具体的に、除去工程において収容部内が減圧された後にガス供給工程において収容部内にガスが供給されることにより、その供給されたガスは、収容部内での撹拌等の物理的な操作を伴わなくても差圧に起因して炭化物の表面に有効に接触するので、炭化物に吸着されていた熱分解ガスが供給されたガスに置き換えられる。よって、収容部から取り出された炭化物からの熱分解ガスの発生が抑制される。」という、甲1?3の記載からは予想し得ない顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、上記相違点2は実質的な相違点である上、当該相違点2に係る発明特定事項は当業者が容易に想到し得るものでもないから、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、「甲1方法」に対して新規性及び進歩性を有するものである。 イ 本件発明7について (ア) 「甲1装置」との対比 「甲1装置」における「乾燥汚泥Mを、低酸素雰囲気下で250?600℃程度の炭化温度にて炭化処理する、炭化炉10」は、本件発明7における「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉」に相当するものといえ、また、「甲1装置」の「炭素含有物の処理装置」は、本件発明7の「炭化物製造設備」に相当するものということができる。 そうすると、本件発明7と「甲1装置」とは、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉を備える炭化物製造設備である点で一致し、次の点で相違するものといえる。 相違点3:本件発明7は、「前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段」を備えているのに対して、「甲1装置」は、これらを備えているかどうか不明な点。 相違点4:本件発明7は、「前記収容部内が陰圧であるときに前記収容部内の圧力が前記陰圧であるときの前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給することが可能なガス供給手段」を備えているのに対して、「甲1装置」は、これを備えていない点。 (イ) 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点4について検討する。 「甲1装置」における「炭化物分離装置31」及び「安定化処理槽41」も、炭化物を中に収めている点で、ある種の「収容部」であるということができ、吸引式の「第1の空気流搬送装置」あるいは「第2の空気流搬送手段」によって吸引されていることから、「陰圧」の状態にあるといえたとしても、「甲1装置」の「第1の空気流搬送装置」及び「第2の空気流搬送手段」は、搬送のために空気流を生成しているものであって、「炭化物分離装置31」及び「安定化処理槽41」内を積極的に陰圧とするものではない。また、仮に、陰圧の状態が生じたとしても、「第1の空気流搬送装置」及び「第2の空気流搬送手段」が停止すれば空気流が停止し、圧力が高まって、陰圧の状態が自然と解除されるものといえることから、「甲1装置」において、「炭化物分離装置31」及び「安定化処理槽41」内にガスを供給して、それらの内部の圧力を高くするようなガス供給手段を備えることは、想定されていないというべきである。 また、甲1?3には、そのようなガス供給手段を示唆する記載はなく、「甲1装置」において、上記相違点4に係る本件発明7の発明特定事項を採用することが容易想到であるとする根拠は見当たらない。 そして、本件発明7は、当該発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書の上記【0010】に記載された、甲1?3の記載からは予想し得ない顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、上記相違点4は実質的な相違点である上、当該相違点4に係る発明特定事項は当業者が容易に想到し得るものでもないから、上記相違点3について検討するまでもなく、本件発明7は、「甲1装置」に対して新規性及び進歩性を有するものである。 ウ 本件発明12について (ア) 本件発明12に係る炭化物製造設備は、請求項7及び請求項9?11の記載を引用して特定されたものであるところ、そのうちの請求項7、9、10の記載を引用して特定された部分は、上記イにおいて検討した本件発明7の発明特定事項をすべて具備するものであるから(請求項9、10は、請求項7を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明9、10は、本件発明7の発明特定事項をすべて具備するものである。)、この部分は、上記イと同様の理由により、「甲1装置」に対して新規性及び進歩性を有するものであるといえる。 (イ) そうすると、本件発明12のうち、請求項11の記載を引用して特定された部分が問題となるが、ここで、あらかじめ、本件発明11が、「甲1装置」に対して新規性及び進歩性を有するものであるか否かについて検討しておく。 a 本件発明11と「甲1装置」の対比 「甲1装置」における「乾燥汚泥Mを、低酸素雰囲気下で250?600℃程度の炭化温度にて炭化処理する、炭化炉10」は、本件発明11における「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉」に相当するものといえ、また、「甲1装置」の「炭素含有物の処理装置」は、本件発明11の「炭化物製造設備」に相当するものということができる。 そうすると、本件発明11と「甲1装置」とは、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉を備える炭化物製造設備である点で一致し、次の点で相違するものといえる。 相違点5:本件発明11は、「前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第1収容室と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第2収容室」とを有する「収容部」、「前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段」、及び、「前記炭化炉から排出された炭化物が前記第1収容室に流入する第1状態と、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第2収容室に流入する第2状態と、を切り替える」「切替部」を備えているのに対して、「甲1装置」は、これらすべてを備えるものではない点。 b 相違点についての検討 そこで、当該相違点5について検討すると、甲1?3の記載をみても、「甲1装置」における「炭化物分離装置31」あるいは「安定化処理槽41」を、2つの収容室から構成し、さらに切替部を設けることを動機付ける記載は見当たらない。確かに、甲3の【0025】?【0029】及び図4(上記(3)イ参照)には、貯留ホッパ4を仕切り壁37により仕切って仕切り空間19a、19bを形成し、当該仕切り壁37上に形成される空間に、炭化物の流路を切り替える流路切替手段35を設けることが記載されている。しかしながら、当該仕切り空間19a、19bは、単に、炭化物を一時的に貯留するためのものであって、本件発明11の収容部のように、減圧手段により陰圧にすることを予定したものではないから、当該甲3記載の仕切り空間19a、19b及び流路切替手段35は、「甲1装置」における「炭化物分離装置31」あるいは「安定化処理槽41」を、2つの収容室から構成し、さらに切替部を設けることを動機付けるほどのものとは認められない。 そして、本件発明11は、当該相違点5に係る収容部の構造及び切替部を具備することにより、本件特許明細書の【0028】に記載された効果、すなわち、「このようにすれば、連続的に炭化物の減圧処理を行うことが可能となる。具体的に、第1収容室内を減圧している間に切替部を第2状態とすることで炭化炉から排出された炭化物を第2収容室に導くこと、及び、第2収容室内を減圧している間に切替部を第1状態とすることで炭化炉から排出された炭化物を第1収容室に導くこと、を繰り返すことにより、炭化炉から排出された炭化物の連続的な減圧処理が可能となる。」という、甲1?3の記載からは予想し得ない顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、本件発明11は、「甲1装置」に対して新規性及び進歩性を有するものである。 (ウ) そうである以上、本件発明12のうち、請求項11の記載を引用して特定された部分についても、「甲1装置」に対して新規性及び進歩性を有することは明らかであるから、結局、本件発明12は、「甲1装置」に対して新規性及び進歩性を有するということができる。 エ 小括 以上のとおり、本件発明1、7、12は、「甲1発明」であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しないし、当該「甲1発明」から容易想到のものでもないから、同法同条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。 (8) 甲2発明に基づく新規性・進歩性の判断 ア 本件発明1について (ア) 「甲2方法」との対比 「甲2方法」における「各種廃棄物等の原料を、第一加熱炉11と第二加熱炉13と熱風炉15を備える熱分解処理装置1において、熱分解処理して炭化物を得る工程」は、本件発明1における「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程」に相当するものといえ、また、「甲2方法」の「多孔質炭化物の製造方法」は、本件発明1の「炭化物製造方法」に相当するものということができる。 そうすると、本件発明1と「甲2方法」とは、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程を備える、炭化物製造方法である点で一致し、次の点で相違するものといえる。 相違点1’:本件発明1は、「前記炭化物生成工程で生成された炭化物を当該炭化物を収容可能な収容部内に収容するとともに、前記収容部内を陰圧にすることによって前記炭化物に吸着されている熱分解ガスを除去する除去工程」を備えているのに対して、「甲2方法」は、そのような工程を備えているか不明な点。 相違点2’:本件発明1は、「前記除去工程の後に、前記収容部内の圧力が前記除去工程終了時の前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給するガス供給工程」を備えているのに対して、「甲2方法」は、そのような工程を備えていない点。 (イ) 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点2’について検討する。 「甲2方法」における「回転炉70を備える賦活処理炉7」及び「バッファータンク77」も、炭化物を中に収めている点で、ある種の「収容部」であるということができ、「排気ブロア5」によって吸引されていることから、「陰圧」の状態にあるといえたとしても、「甲2方法」の「排気ブロア5」は、賦活処理炉7に賦活ガスとしての空気を導入するためのものであって、「回転炉70を備える賦活処理炉7」あるいは「バッファータンク77」内を積極的に陰圧とするものではない。また、仮に、陰圧の状態が生じたとしても、「排気ブロア5」が停止すれば空気流が停止し、圧力が高まって、陰圧の状態が自然と解除されるものといえることから、「甲2方法」において、「回転炉70を備える賦活処理炉7」及び「バッファータンク77」内にガスを供給して、それらの内部の圧力を高くするようなガス供給工程を備えることは、想定されていないというべきである。 また、甲1?3には、そのようなガス供給工程を示唆する記載はなく、「甲2方法」において、上記相違点2’に係る本件発明1の発明特定事項を採用することが容易想到であるとする根拠は見当たらない。 そして、本件発明1は、当該発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書の上記【0010】に記載された、甲1?3の記載からは予想し得ない顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、上記相違点2’は実質的な相違点である上、当該相違点2’に係る発明特定事項は当業者が容易に想到し得るものでもないから、上記相違点1’について検討するまでもなく、本件発明1は、「甲2方法」に対して新規性及び進歩性を有するものである。 イ 本件発明7について (ア) 「甲2装置」との対比 「甲2装置」における「各種廃棄物等の原料を熱分解処理して炭化物を得る、第一加熱炉11と第二加熱炉13と熱風炉15を備える熱分解処理装置1」は、本件発明7における「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉」に相当するものといえ、また、「甲2装置」の「多孔質炭化物製造施設」は、本件発明7の「炭化物製造設備」に相当するものということができる。 そうすると、本件発明7と「甲2装置」とは、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉を備える炭化物製造設備である点で一致し、次の点で相違するものといえる。 相違点3’:本件発明7は、「前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段」を備えているのに対して、「甲2装置」は、これらを備えているかどうか不明な点。 相違点4’:本件発明7は、「前記収容部内が陰圧であるときに前記収容部内の圧力が前記陰圧であるときの前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給することが可能なガス供給手段」を備えているのに対して、「甲2装置」は、これを備えていない点。 (イ) 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点4’について検討する。 「甲2装置」における「回転炉70を備える賦活処理炉7」及び「バッファータンク77」も、炭化物を中に収めている点で、ある種の「収容部」であるということができ、「排気ブロア5」によって吸引されていることから、「陰圧」の状態にあるといえたとしても、「甲2装置」の「排気ブロア5」は、賦活処理炉7に賦活ガスとしての空気を導入するためのものであって、「回転炉70を備える賦活処理炉7」及び「バッファータンク77」内を積極的に陰圧とするものではない。また、仮に、陰圧の状態が生じたとしても、「排気ブロア5」が停止すれば空気流が停止し、圧力が高まって、陰圧の状態が自然と解除されるものといえることから、「甲2装置」において、「回転炉70を備える賦活処理炉7」及び「バッファータンク77」内にガスを供給して、それらの内部の圧力を高くするようなガス供給手段を備えることは、想定されていないというべきである。 また、甲1?3には、そのようなガス供給手段を示唆する記載はなく、「甲2装置」において、上記相違点4’に係る本件発明7の発明特定事項を採用することが容易想到であるとする根拠は見当たらない。 そして、本件発明7は、当該発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書の上記【0010】に記載された、甲1?3の記載からは予想し得ない顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、上記相違点4’は実質的な相違点である上、当該相違点4’に係る発明特定事項は当業者が容易に想到し得るものでもないから、上記相違点3について検討するまでもなく、本件発明7は、「甲2装置」に対して新規性及び進歩性を有するものである。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1、7は、「甲2発明」であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しないし、当該「甲2発明」から容易想到のものでもないから、同法同条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。 (9) 甲3発明に基づく新規性・進歩性の判断 ア 本件発明1について (ア) 「甲3方法」との対比 「甲3方法」における「木質系バイオマスを、炭化炉1において、炭化する工程」は、本件発明1における「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程」に相当するものといえ、また、「甲3方法」の「炭化物貯留搬送方法」は、炭化物を製造する工程を含んでいることから、本件発明1の「炭化物製造方法」に相当するものということができる。 そうすると、本件発明1と「甲3方法」とは、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程を備える、炭化物製造方法である点で一致し、次の点で相違するものといえる。 相違点1’’:本件発明1は、「前記炭化物生成工程で生成された炭化物を当該炭化物を収容可能な収容部内に収容するとともに、前記収容部内を陰圧にすることによって前記炭化物に吸着されている熱分解ガスを除去する除去工程」を備えているのに対して、「甲3方法」は、そのような工程を備えているか不明な点。 相違点2’’:本件発明1は、「前記除去工程の後に、前記収容部内の圧力が前記除去工程終了時の前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給するガス供給工程」を備えているのに対して、「甲3方法」は、そのような工程を備えていない点。 (イ) 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点2’’について検討する。 「甲3方法」における「微粉炭バグフィルタ12」及び「微粉炭ホッパ8」(さらにいうと、甲3の図1において、空送ブロワ13より直接空気流が送られる箇所)も、炭化物を中に収めている点で、ある種の「収容部」であるということができ、「空送ブロワ15」及び「空送ブロワ13」によって吸引されていることから、「陰圧」の状態にあるといえたとしても、「甲3方法」の「空送ブロワ15」及び「空送ブロワ13」は、搬送のための空気流を生成しているものであって、「微粉炭バグフィルタ12」及び「微粉炭ホッパ8」内を積極的に陰圧とするものではない。また、仮に、陰圧の状態が生じたとしても、「空送ブロワ15」及び「空送ブロワ13」が停止すれば空気流が停止し、圧力が高まって、陰圧の状態が自然と解除されるものといえることから、「甲3方法」において、「微粉炭バグフィルタ12」及び「微粉炭ホッパ8」内にガスを供給して、それらの内部の圧力を高くするようなガス供給工程を備えることは、想定されていないというべきである。 また、甲1?3には、そのようなガス供給工程を示唆する記載はなく、「甲3方法」において、上記相違点2’’に係る本件発明1の発明特定事項を採用することが容易想到であるとする根拠は見当たらない。 そして、本件発明1は、当該発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書の上記【0010】に記載された、甲1?3の記載からは予想し得ない顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、上記相違点2’’は実質的な相違点である上、当該相違点2’’に係る発明特定事項は当業者が容易に想到し得るものでもないから、上記相違点1’’について検討するまでもなく、本件発明1は、「甲3方法」に対して新規性及び進歩性を有するものである。 イ 本件発明7について (ア) 「甲3装置」との対比 「甲3装置」における「木質系バイオマスを炭化する、炭化炉1」は、本件発明7における「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉」に相当するものといえ、また、「甲3装置」の「炭化物貯留搬送装置」は、炭化物を製造するものでもあるから、本件発明11の「炭化物製造設備」に相当するものということができる。 そうすると、本件発明7と「甲3装置」とは、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉を備える炭化物製造設備である点で一致し、次の点で相違するものといえる。 相違点3’’:本件発明7は、「前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段」を備えているのに対して、「甲3装置」は、これらを備えているかどうか不明な点。 相違点4’’:本件発明7は、「前記収容部内が陰圧であるときに前記収容部内の圧力が前記陰圧であるときの前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給することが可能なガス供給手段」を備えているのに対して、「甲3装置」は、これを備えていない点。 (イ) 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点4’’について検討する。 「甲3装置」における「微粉炭バグフィルタ12」及び「微粉炭ホッパ8」も、炭化物を中に収めている点で、ある種の「収容部」であるということができ、「空送ブロワ15」及び「空送ブロワ13」によって吸引されていることから、「陰圧」の状態にあるといえたとしても、「甲3装置」の「空送ブロワ15」及び「空送ブロワ13」は、搬送のための空気流を生成しているものであって、「微粉炭バグフィルタ12」及び「微粉炭ホッパ8」内を積極的に陰圧とするものではない。また、仮に、陰圧の状態が生じたとしても、「空送ブロワ15」及び「空送ブロワ13」が停止すれば空気流が停止し、圧力が高まって、陰圧の状態が自然と解除されるものといえることから、「甲3装置」において、「微粉炭バグフィルタ12」及び「微粉炭ホッパ8」内にガスを供給して、それらの内部の圧力を高くするようなガス供給手段を備えることは、想定されていないというべきである。 また、甲1?3には、そのようなガス供給手段を示唆する記載はなく、「甲3装置」において、上記相違点4’’に係る本件発明7の発明特定事項を採用することが容易想到であるとする根拠は見当たらない。 そして、本件発明7は、当該発明特定事項を具備することにより、本件特許明細書の上記【0010】に記載された、甲1?3の記載からは予想し得ない顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、上記相違点4’’は実質的な相違点である上、当該相違点4’’に係る発明特定事項は当業者が容易に想到し得るものでもないから、上記相違点3’’について検討するまでもなく、本件発明7は、「甲3装置」に対して新規性及び進歩性を有するものである。 ウ 本件発明12について (ア) 本件発明12に係る炭化物製造設備は、請求項7及び請求項9?11の記載を引用して特定されたものであるところ、そのうちの請求項7、9、10の記載を引用して特定された部分は、上記イにおいて検討した本件発明7の発明特定事項をすべて具備するものであるから(請求項9、10は、請求項7を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明9、10は、本件発明7の発明特定事項をすべて具備するものである。)、この部分は、上記イと同様の理由により、「甲3装置」に対して新規性及び進歩性を有するものであるといえる。 (イ) そうすると、本件発明12のうち、請求項11の記載を引用して特定された部分が問題となるが、ここで、あらかじめ、本件発明11が、「甲3装置」に対して新規性及び進歩性を有するものであるか否かについて検討しておく。 a 本件発明11と「甲3装置」の対比 「甲3装置」における「木質系バイオマスを炭化する、炭化炉1」は、本件発明11における「バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉」に相当するものといえ、また、「甲3装置」の「炭化物貯留搬送装置」は、炭化物を製造するものでもあるから、本件発明11の「炭化物製造設備」に相当するものということができる。 そうすると、本件発明11と「甲3装置」とは、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉を備える炭化物製造設備である点で一致し、次の点で相違するものといえる。 相違点5’:本件発明11は、「前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第1収容室と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第2収容室」と有する「収容部」、「前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段」、及び、「前記炭化炉から排出された炭化物が前記第1収容室に流入する第1状態と、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第2収容室に流入する第2状態と、を切り替える」「切替部」を備えているのに対して、「甲3装置」は、これらすべてを備えるものではない点。 b 相違点についての検討 そこで、当該相違点5’について検討すると、甲1?3の記載をみても、「甲3装置」における「微粉炭バグフィルタ12」あるいは「微粉炭ホッパ8」を、2つの収容室から構成し、さらに切替部を設けることを動機付ける記載は見当たらない。確かに、甲3の【0025】?【0029】及び図4(上記(3)イ参照)には、貯留ホッパ4を仕切り壁37により仕切って仕切り空間19a、19bを形成し、当該仕切り壁37上に形成される空間に、炭化物の流路を切り替える流路切替手段35を設けることが記載されている。しかしながら、当該仕切り空間19a、19bは、単に、炭化物を一時的に貯留するためのものであって、本件発明11の収容部のように、減圧手段により陰圧にすることを予定したものではないから、当該甲3記載の仕切り空間19a、19b及び流路切替手段35は、「甲3装置」における「微粉炭バグフィルタ12」あるいは「微粉炭ホッパ8」を、2つの収容室から構成し、さらに切替部を設けることを動機付けるほどのものとは認められない。 そして、本件発明11は、当該収容部の構造及び切替部を具備することにより、本件特許明細書の上記【0028】に記載された、甲1?3の記載からは予想し得ない顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、本件発明11は、「甲3装置」に対して新規性及び進歩性を有するものである。 (ウ) そうである以上、本件発明12のうち、請求項11の記載を引用して特定された部分についても、「甲3装置」に対して新規性及び進歩性を有することは明らかであるから、結局、本件発明12は、「甲3装置」に対して新規性及び進歩性を有するということができる。 エ 小括 以上のとおり、本件発明1、7、12は、「甲3発明」であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しないし、当該「甲3発明」から容易想到のものでもないから、同法同条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。 3 まとめ 以上の検討のとおり、本件発明1、7、12に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものとは認められず、これらの特許は、同法第113条第2号に該当するものではないから、平成30年12月12日付けで通知した、上記取消理由(1)、(2)は、いずれも理由がない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断 上記第4で検討した取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、要するに、上記第4において検討対象とした本件特許1、7、12以外の特許(すなわち、本件特許3?6、9?11)についても、甲1あるいは甲3に記載された発明に対して、新規性あるいは進歩性を有するものとはいえない、というものである。 しかしながら、本件特許3?6に係る本件発明3?6は、上記第4において検討した本件発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるし、同様に、本件特許9、10に係る本件発明9、10は、上記第4において検討した本件発明7の発明特定事項をすべて具備するものであるから、本件発明3?6、9、10が、上記「甲1発明」あるいは「甲3発明」に対して、新規性及び進歩性を有することは明らかである。 また、本件特許11に係る本件発明11についても、上記第4の(7)ウ(イ)、(9)ウ(イ)において検討したとおり、「甲1発明」あるいは「甲3発明」に対して、新規性及び進歩性を有するものである。 したがって、本件特許3?6、9?11は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものとは認められず、これらの特許は、同法第113条第2号に該当するものではないから、当該特許異議申立理由に理由があるとはいえない。 第6 結び 以上のとおりであるから、本件特許1、3?7、9?12は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当するとは認められないから、上記取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立の理由によっては、取り消すことはできない。また、ほかにこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、上記第2のとおり、本件訂正により、請求項2、8は削除されたので、本件特許2、8についての特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 炭化物製造方法及び炭化物製造設備 【技術分野】 【0001】 本発明は、炭化物を製造する炭化物製造設備に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来、下水の汚泥や畜産排泄物や廃木材等のバイオマスから炭化物を製造する炭化物製造設備が知られている。例えば、特許文献1には、下水の汚泥や、牛糞、鶏糞、酒かす、珈琲かす、廃木材、竹材などの被処理物を加熱することによって当該被処理物から炭化物を生成する炭化炉を備える炭化物製造設備が開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2016-124897号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 特許文献1に記載されるような炭化物製造設備では、製造された炭化物から熱分解ガスが発生する場合がある。この熱分解ガスは、通常、一酸化炭素、水素ガス、メタンガス等の可燃性ガスや、二酸化炭素、水蒸気、その他臭気成分を含有している。製造された炭化物から熱分解ガスが発生すると、炭化物のハンドリングに際して不便である。 【0005】 本発明の目的は、炭化炉から排出された炭化物からの熱分解ガスの発生を抑制可能な炭化物製造方法及び炭化物処理設備を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者らは、炭化炉で生成される炭化物が多孔質であるため、炭化炉でのバイオマス(汚泥等)の加熱処理中に発生する熱分解ガスが当該炭化炉内において炭化物に吸着され、その結果、炭化炉から排出された炭化物から熱分解ガスが発生することを見出した。よって、炭化物に吸着された熱分解ガスを除去することにより、上記課題を解決できることに想到した。 【0007】 本発明は、このような観点からなされたものである。具体的に、本発明は、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程と、前記炭化物生成工程で生成された炭化物を当該炭化物を収容可能な収容部内に収容するとともに、前記収容部内を陰圧にすることによって前記炭化物に吸着されている熱分解ガスを除去する除去工程と、前記除去工程の後に、前記収容部内の圧力が前記除去工程終了時の前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給するガス供給工程と、を備える、炭化物製造方法を提供する。 【0008】 本炭化物製造方法では、除去工程において、収容部内を陰圧にすることによって収容部に収容されている炭化物に吸着されていた熱分解ガスが炭化物から除去される。よって、この製造方法で製造された炭化物からの熱分解ガスの発生が抑制される。 【0009】(削除) 【0010】 このようにすれば、前記収容部から取り出された炭化物からの熱分解ガスの発生が抑制される。具体的に、除去工程において収容部内が減圧された後にガス供給工程において収容部内にガスが供給されることにより、その供給されたガスは、収容部内での撹拌等の物理的な操作を伴わなくても差圧に起因して炭化物の表面に有効に接触するので、炭化物に吸着されていた熱分解ガスが供給されたガスに置き換えられる。よって、収容部から取り出された炭化物からの熱分解ガスの発生が抑制される。 【0011】 この場合において、前記ガス供給工程では、前記ガスとして酸素を含むガスを供給することが好ましい。 【0012】 このようにすれば、炭化物の発熱がより確実に抑制される。具体的に、減圧された収容部内に酸素を含むガスが供給されることにより、炭化物の表面に対して酸素が有効に接触する。このため、収容部内において炭化物が酸化される(炭化物のうち活性しやすい部位が消失する)ので、収容部から取り出された炭化物が収容部外で空気中の酸素と接触して発熱することが抑制される。すなわち、当該製造方法で製造された炭化物が発熱することが抑制される。 【0013】 さらに、前記ガス供給工程の後に前記収容部を再度減圧する再減圧工程をさらに備えることが好ましい。 【0014】 このようにすれば、ガス供給工程において酸素を含むガスを供給した場合に炭化物と酸素との反応によって熱分解ガスが発生したとしても、再減圧工程によって収容部内を減圧することにより、その熱分解ガスも除去される。また、ガス供給工程において酸素を含まないガスを供給した場合においては、1回目の除去工程で熱分解ガスが除去しきれずに炭化物内や収容部内に残存していたとしても、再減圧工程によって収容部内を減圧することにより、その熱分解ガスも除去される。 【0015】 この場合において、前記再減圧工程後、前記ガス供給工程と前記再減圧工程とを複数回繰り返すことが好ましい。 【0016】 このようにすれば、収容部内の熱分解ガスがより確実に除去される。 【0017】 さらにこの場合において、前記収容部内の熱分解ガスの量が基準量未満になったこと及び/又は収容部内の炭化物の発熱が終了したことを示す条件が成立したときに、前記収容部から前記炭化物を取り出す取出工程をさらに備えることが好ましい。 【0018】 このようにすれば、当該製造方法で製造された炭化物から熱分解ガスが発生することや炭化物が発熱することがより確実に抑制される。 【0019】 また、本発明は、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段と、前記収容部内が陰圧であるときに前記収容部内の圧力が前記陰圧であるときの前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給することが可能なガス供給手段と、を備える、炭化物製造設備を提供する。 【0020】 本炭化物製造設備では、減圧手段が収容部内を陰圧にすることにより、収容部に収容されている炭化物に吸着されていた熱分解ガスが炭化物から除去される。よって、当該設備で製造された炭化物からの熱分解ガスの発生が抑制される。 【0021】(削除) 【0022】 このようにすれば、前記収容部から取り出された炭化物からの熱分解ガスの発生が抑制される。具体的に、減圧手段によって収容部内が一度減圧された後にガス供給手段が収容部内にガスを供給することにより、その供給されたガスは、収容部内での撹拌等の物理的な操作を伴わなくても差圧に起因して炭化物の表面に有効に接触するので、炭化物に吸着されていた熱分解ガスが供給されたガスに置き換えられる。よって、収容部から取り出された炭化物からの熱分解ガスの発生が抑制される。 【0023】 この場合において、前記ガス供給手段は、前記ガスとして酸素を含むガスを供給することが好ましい。 【0024】 このようにすれば、炭化物の発熱がより確実に抑制される。具体的に、ガス供給部から収容部内に供給されるガスが空気等の酸素を含むガスであるので、炭化物の表面に対して酸素が有効に接触する。これにより、収容部内において炭化物が酸化される(炭化物のうち活性しやすい部位が消失する)ので、収容部から取り出された炭化物が収容部外で空気中の酸素と反応することによる発熱が抑制される。さらに、炭化物と酸素との反応によって熱分解ガスが発生したとしても、再度減圧手段によって収容部内を減圧することにより、その熱分解ガスも除去される。 【0025】 この場合において、前記収容部内の熱分解ガスの量が基準量未満になったこと及び/又は収容部内の炭化物の発熱が終了したことを示す条件が成立したときに、前記収容部から前記炭化物を排出させる制御部をさらに備えることが好ましい。 【0026】 このようにすれば、前記条件の成立後、つまり、収容部内の熱分解ガスの量が基準量未満となり、且つ/又は収容部内の炭化物の発熱が終了したときに収容部から炭化物が排出されるので、収容部から排出された炭化物から熱分解ガスが発生することや炭化物が発熱することがより確実に抑制される。なお、前記熱分解ガスの量が基準量未満となったことを示す条件としては、収容部から抜き出されたガスのある特定の成分の測定値が所定値未満になることや、収容部内を陰圧にする操作と当該操作終了後に収容部内にガスを供給する操作とが所定回繰り返されたこと等が挙げられ、前記収容部内の炭化物の発熱が終了したことを示す条件としては、収容部内の温度が所定値未満になることや、ガス供給工程の開始時における収容部内の温度とガス供給工程の終了時における収容部内の温度との温度差が所定値未満になることや、収容部から抜き出されたガスの成分うち炭化物の酸化によって発生する一酸化炭素及び二酸化炭素の測定値が所定値以下になることや、収容部内を陰圧にする操作と当該操作終了後に収容部内に酸素を含むガスを供給する操作とが所定回繰り返されたこと等が挙げられる。 【0027】 また、本発明は、バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段と、を備える、炭化物製造設備において、切替部をさらに備え、前記収容部は、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第1収容室と、前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第2収容室と、を有し、前記切替部は、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第1収容室に流入する第1状態と、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第2収容室に流入する第2状態と、を切り替える。 【0028】 このようにすれば、連続的に炭化物の減圧処理を行うことが可能となる。具体的に、第1収容室内を減圧している間に切替部を第2状態とすることで炭化炉から排出された炭化物を第2収容室に導くこと、及び、第2収容室内を減圧している間に切替部を第1状態とすることで炭化炉から排出された炭化物を第1収容室に導くこと、を繰り返すことにより、炭化炉から排出された炭化物の連続的な減圧処理が可能となる。 【0029】 また、前記炭化物製造設備において、前記炭化炉と前記収容部との間に設けられており、前記炭化炉から排出された炭化物を冷却する冷却ユニットをさらに備えることが好ましい。 【0030】 このようにすれば、炭化炉から排出された炭化物が収容部に流入する前に有効に冷却される。 【発明の効果】 【0031】 以上のように、本発明によれば、炭化炉から排出された炭化物からの熱分解ガスの発生を抑制可能な炭化物製造方法及び炭化物処理設備を提供することが可能となる。 【図面の簡単な説明】 【0032】 【図1】本発明の第1実施形態の炭化物製造設備の概略を示す図である。 【図2】本発明の第2実施形態の炭化物製造設備の概略を示す図である。 【発明を実施するための形態】 【0033】 本発明の好ましい実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。 【0034】 (第1実施形態) 本発明の第1実施形態の炭化物製造設備について、図1を参照しながら説明する。 【0035】 図1に示されるように、本実施形態の炭化物製造設備は、バイオマス(例えば、下水の乾燥汚泥)を貯留するホッパ10と、炭化炉20と、冷却ユニット30と、減圧ユニット40と、ガス供給手段50と、制御部70と、を備えている。 【0036】 炭化炉20は、ホッパ10から供給されるバイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する。この炭化炉20は、バイオマスを加熱しながら搬送する。なお、バイオマスを加熱しながら搬送する過程で発生した熱分解ガスは、燃焼装置に供給される。一方、炭化炉20から排出された炭化物は、冷却ユニット30に供給される。 【0037】 冷却ユニット30は、炭化炉20から排出された炭化物を冷却する装置である。具体的に、冷却ユニット30は、炭化炉20から排出された炭化物を受け入れるケース32と、ケース32内の炭化物を搬送する搬送部34と、炭化物に給水する給水部36と、を有している。ケース32は、下流に向かうにしたがって次第に高さ位置が高くなる姿勢で配置されている。給水部36は、ケース32に設けられており、ケース32内を搬送される炭化物に水を供給(噴霧)する。本実施形態では、給水部36は、ケース32のうち当該ケース32の長手方向についてケース32の中央部よりも下流側の部位に接続されている。 【0038】 減圧ユニット40は、冷却ユニット30から排出された炭化物を陰圧下におくことが可能なユニットである。具体的に、減圧ユニット40は、冷却ユニット30から排出された炭化物を収容する収容部42と、収容部42に接続されており収容部42内を陰圧にする減圧手段44と、を有している。収容部42は、炭化物を受け入れる受入口(図示略)、炭化物を取り出すことが可能な取出口(図示略)及び取出口を開閉可能な開閉部(図示略)を有している。収容部42には、収容部42内の圧力(負圧及び正圧)を測定可能な圧力計(図示略)が設けられている。減圧手段44として、ロータリポンプ、ダイヤフラムポンプ、スクリューポンプ、ルーツポンプ等が挙げられる。 【0039】 ガス供給手段50は、収容部42内が例えば常圧となるように当該収容部42内にガスを供給する。具体的に、ガス供給手段50は、収容部42内に酸素を含むガス(空気等)を供給する。 【0040】 制御部70は、収容部42内の熱分解ガスの量が基準量未満になったこと及び収容部42内の炭化物の発熱が終了したことを示す条件が成立したときに、収容部42の取出口から炭化物を排出させる(収容部42の開閉部を開く)。前記条件としては、収容部42に設けられた温度センサ71の検出値が所定値以下になること(炭化物の発熱が実質的に終了したこと)や、収容部42にガス抜出流路(図示略)と当該流路の下流側の端部にガスのある特定の成分を測定可能な測定装置(図示略)とが設けられ、この測定装置の測定値が所定値以下になることや、収容部42内を陰圧にする操作と常圧に戻す操作とが所定回繰り返されたこと等が挙げられる。なお、前記ガス抜出流路から抜き出されたガスは、袋等の容器に収容され、所定の施設に輸送されてそこで分析されてもよい。 【0041】 次に、以上に説明した炭化物製造設備の運転方法について説明する。 【0042】 まず、ホッパ10からバイオマスが炭化炉20に供給される。そして、炭化炉20は、ホッパ10から供給されたバイオマスを加熱しながら搬送する。この過程でバイオマスが炭化し、これにより炭化物が生成される。このとき、熱分解されることによって多孔質体となった炭化物は、炭化炉20内で生じる熱分解ガスの一部を吸着する。 【0043】 次に、炭化炉20で生成された炭化物は、冷却ユニット30のケース32に送られる。炭化物は、ケース32内を下流側に向かって搬送部34で搬送されながら給水部36から供給される水で冷却される。 【0044】 そして、冷却ユニット30から排出された炭化物は、収容部42内に収容され、減圧手段44が収容部42内を陰圧にする(収容部42内を排気する)。これにより、多孔質体である炭化物に吸着されている一酸化炭素等の熱分解ガスが除去される(収容部42外に排出される)。 【0045】 続いて、ガス供給手段50は、収容部42内が例えば常圧になるまで収容部42内に酸素を含むガスを供給する。その後、減圧手段44は、再度収容部42内を陰圧にする。この収容部42内を陰圧にする操作と常圧に戻す操作とが複数回繰り返された後、収容部42の取出口から炭化物が取り出される。具体的に、前記条件が成立したときに、制御部70が収容部42の開閉部を開く。なお、制御部70が省略され、前記条件が成立したときに収容部42の開閉部を開く操作が手動で行われてもよい。 【0046】 以上に説明したように、本実施形態の炭化物製造設備では、減圧手段44が収容部42内を陰圧にすることにより、収容部42に収容されている炭化物に吸着されていた熱分解ガスが炭化物から除去される。よって、炭化物からの熱分解ガスの発生が抑制される。 【0047】 また、ガス供給手段50は、収容部42内が常圧となるように当該収容部42内に酸素を含むガスを供給するので、収容部42から取り出された炭化物が発熱することが抑制される。具体的に、減圧手段44によって収容部42内が一度減圧された後にガス供給手段50が収容部42内に酸素を含むガス(空気等)を供給することにより、炭化物のほとんどすべての表面に対して酸素が有効に接触する。これにより、炭化物が酸化される(炭化物のうち活性しやすい部位が消失する)ので、収容部42から取り出された炭化物が空気中の酸素と反応することによる発熱が抑制される。さらに、ガス供給手段50によって収容部42内にガスを供給した際(ガス供給工程において)炭化物と酸素との反応によって熱分解ガスが発生したとしても、再度減圧手段44によって収容部42内を減圧することにより、その熱分解ガスも除去される。 【0048】 (第2実施形態) 次に、図2を参照しながら、本発明の第2実施形態の炭化物製造設備について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。 【0049】 本実施形態の炭化物製造設備は、切替ユニット60をさらに備えており、減圧ユニット40の収容部42は、複数の(この実施形態では2つの)収容室42a,42bを有し、減圧手段44は、複数の(この実施形態では2つの)減圧部44a,44bを有し、ガス供給手段50は、複数の(この実施形態では2つの)供給部50a,50bを有している。 【0050】 具体的に、収容部42は、冷却ユニット30から排出された炭化物の一部を収容する第1収容室42aと、冷却ユニット30から排出された炭化物の残部を収容する第2収容室42bと、を有している。各収容室42a,42bには、それぞれ温度センサ71a,71bが設けられている。減圧手段44は、第1収容室42a内を陰圧にすることが可能な第1減圧部44aと、第2収容室42b内を陰圧にすることが可能な第2減圧部44bと、を有している。ガス供給手段50は、第1収容室42a内が例えば常圧となるように当該第1収容室42a内に酸素を含むガスを供給することが可能な第1供給部50aと、第2収容室42b内が例えば常圧となるように当該第2収容室42b内に酸素を含むガスを供給することが可能な第2供給部50bと、を有している。 【0051】 切替ユニット60は、第1流路61と、第2流路62と、切替部63と、を有している。第1流路61は、冷却ユニット30から排出された炭化物を第1収容室42aに導く。第2流路62は、冷却ユニット30から排出された炭化物を第2収容室42bに導く。切替部63は、冷却ユニット30から排出された炭化物が第1収容室42aに流入する第1状態と、冷却ユニット30から排出された炭化物が第2収容室42bに流入する第2状態と、を切り替える。具体的に、切替部63は、第1状態において第1収容室42aの炭化物の収容量が基準量に達したときに第2状態に切り替え、第2状態において第2収容室42bの炭化物の収容量が基準量に達したときに第1状態に切り替える。なお、各収容室42a,42bにおける炭化物の収容量は、それぞれの収容室42a,42bに設けられたレベルセンサ等で検知される。 【0052】 この実施形態の炭化物製造設備では、連続的に炭化物の減圧処理を行うことが可能となる。具体的に、第1収容室42a内を第1減圧部44aが減圧している間に切替部63を第2状態とすることで冷却ユニット30から排出された炭化物を第2収容室42bに導くこと、及び、第2収容室42b内を第2減圧部44bが減圧している間に切替部63を第1状態とすることで冷却ユニット30から排出された炭化物を第1収容室42aに導くこと、を繰り返すことにより、冷却ユニット30から排出された炭化物の連続的な減圧処理が可能となる。 【0053】 本実施形態では、例えば切替部63が第2状態である場合において第1減圧部44aによる第1収容室42aの減圧処理が終了した後、切替部63が第1状態に切り替わる前に第1供給部50aにより第1収容室42aを常圧とする操作と陰圧とする操作とが繰り返される。そして、制御部70は、第2状態において、第1収容室42a内の熱分解ガスの量が基準量未満になったこと及び第1収容室42a内の炭化物の発熱が終了したことを示す条件が成立したときに、第1収容室42aの開閉部を開く。 【0054】 なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。 【0055】 例えば、切替部63は、一定時間ごとに第1状態と第2状態とを切り替えてもよいし、各収容室を陰圧とする操作と常圧とする操作とが所定回繰り返されたときに第1状態と第2状態とを切り替えてもよい。 【0056】 また、ガス供給手段50は、収容部42内が常圧になるまでガスを供給するものに限られない。ガス供給手段50は、収容部42内の圧力が、減圧手段44によって収容部42内の排気が終了したときの当該収容部42の圧力よりも高くなるように収容部42内にガスを供給すればよい。 【0057】 また、ガス供給手段50は、ガス供給工程を複数回繰り返す場合において、毎回、酸素を含むガスを供給するもの、又は、毎回、酸素を含まないガスを供給するものに限られない。例えば、ガス供給工程において酸素を含まないガスを供給した後、再度のガス供給工程おいて酸素を含むガスを供給するものであってもよい。 【符号の説明】 【0058】 10 ホッパ 20 炭化炉 30 冷却ユニット 40 減圧ユニット 42 収容部 42a 第1収容室 42b 第2収容室 44 減圧手段 50 ガス供給手段 50a 第1供給部 50b 第2供給部 60 切替ユニット 63 切替部 70 制御部 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化物生成工程と、 前記炭化物生成工程で生成された炭化物を当該炭化物を収容可能な収容部内に収容するとともに、前記収容部内を陰圧にすることによって前記炭化物に吸着されている熱分解ガスを除去する除去工程と、 前記除去工程の後に、前記収容部内の圧力が前記除去工程終了時の前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給するガス供給工程と、を備える、炭化物製造方法。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 請求項1に記載の炭化物製造方法において、 前記ガス供給工程では、前記ガスとして酸素を含むガスを供給する、炭化物製造方法。 【請求項4】 請求項1又は3に記載の炭化物製造方法において、 前記ガス供給工程の後に前記収容部を再度減圧する再減圧工程をさらに備える、炭化物製造方法。 【請求項5】 請求項4に記載の炭化物製造方法において、 前記再減圧工程後、前記ガス供給工程と前記再減圧工程とを複数回繰り返す、炭化物製造方法。 【請求項6】 請求項4又は5に記載の炭化物製造方法において、 前記収容部内の熱分解ガスの量が基準量未満になったこと及び/又は前記収容部内の炭化物の発熱が終了したことを示す条件が成立したときに、前記収容部から前記炭化物を取り出す取出工程をさらに備える、炭化物製造方法。 【請求項7】 バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉と、 前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、 前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段と、 前記収容部内が陰圧であるときに前記収容部内の圧力が前記陰圧であるときの前記収容部内の圧力よりも高くなるように当該収容部内にガスを供給することが可能なガス供給手段と、を備える、炭化物製造設備。 【請求項8】(削除) 【請求項9】 請求項7に記載の炭化物製造設備において、 前記ガス供給手段は、前記ガスとして酸素を含むガスを供給する、炭化物製造設備。 【請求項10】 請求項7又は9に記載の炭化物製造設備において、 前記収容部内の熱分解ガスの量が基準量未満になったこと及び/又は前記収容部内の炭化物の発熱が終了したことを示す条件が成立したときに、前記収容部から前記炭化物を排出させる制御部をさらに備える、炭化物製造設備。 【請求項11】 バイオマスを加熱することによって当該バイオマスから炭化物を生成する炭化炉と、 前記炭化炉から排出された炭化物を収容する収容部と、 前記収容部内を陰圧にすることが可能な減圧手段と、を備える、炭化物製造設備において、 切替部をさらに備え、 前記収容部は、 前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第1収容室と、 前記炭化炉から排出された炭化物を収容する第2収容室と、を有し、 前記切替部は、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第1収容室に流入する第1状態と、前記炭化炉から排出された炭化物が前記第2収容室に流入する第2状態と、を切り替える、炭化物製造設備。 【請求項12】 請求項7及び9?11のいずれかに記載の炭化物製造設備において、 前記炭化炉と前記収容部との間に設けられており、前記炭化炉から排出された炭化物を冷却する冷却ユニットをさらに備える、炭化物製造設備。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-05-31 |
出願番号 | 特願2017-165087(P2017-165087) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C10B)
P 1 651・ 113- YAA (C10B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 森 健一 |
特許庁審判長 |
川端 修 |
特許庁審判官 |
蔵野 雅昭 日比野 隆治 |
登録日 | 2018-02-16 |
登録番号 | 特許第6291620号(P6291620) |
権利者 | 株式会社神鋼環境ソリューション |
発明の名称 | 炭化物製造方法及び炭化物製造設備 |
代理人 | 村松 敏郎 |
代理人 | 小谷 昌崇 |
代理人 | 小谷 悦司 |
代理人 | 村松 敏郎 |
代理人 | 荒田 秀明 |
代理人 | 荒田 秀明 |
代理人 | 小谷 悦司 |
代理人 | 山本 康平 |
代理人 | 山本 康平 |
代理人 | 小谷 昌崇 |