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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B23K
審判 全部申し立て 2項進歩性  B23K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B23K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B23K
管理番号 1353181
異議申立番号 異議2018-700185  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-28 
確定日 2019-06-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6190855号発明「レーザ加工方法およびレーザ加工装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6190855号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5-8〕について訂正することを認める。 特許第6190855号の請求項1-3、5-7に係る特許を維持する。 特許第6190855号の請求項4及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1.手続の経緯
特許第6190855号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成27年9月8日に特許出願され、平成29年8月10日付けでその特許権の設定登録がされ、平成29年8月30日に特許掲載公報が発行された。その後の、本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年 2月28日 :特許異議申立人藤本信男(以下、「異議申立人」という。)による請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立て
平成30年 5月29日付け:取消理由通知書
平成30年 7月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年 9月10日 :異議申立人による意見書の提出
平成30年11月15日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成31年 1月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、当該訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「訂正」という。)
平成31年 4月 4日 :異議申立人による意見書の提出
なお、平成30年7月27日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項1
請求項1に、
「一つの発振器と、プロセスファイバとが設けられており、前記発振器が発振したレーザ光が前記プロセスファイバを通って、前記プロセスファイバの端部に設けられている出射端から、レーザ加工ヘッドに向かって出射されるようになっており、
波長が1μm帯であるレーザ光を用いて、板状のワークの切断加工を行うレーザ加工方法において、
前記切断加工をするときにおけるレーザ光の1つの焦点の位置を、前記ワークの上面におけるエネルギー密度を小さくして前記ワーク上面での酸化作用の発生を抑制するために、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間に位置させることを特徴とするレーザ加工方法。」と記載されているのを、
「一つの発振器と、プロセスファイバとが設けられており、前記発振器が発振したレーザ光が前記プロセスファイバを通って、前記プロセスファイバの端部に設けられている出射端から、レーザ加工ヘッドに向かって出射されるようになっており、
波長が1μm帯であるレーザ光(ただし、パルス状レーザ光を除く)を用いて、板状のワークの切断加工を行うレーザ加工方法において、
前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており、
前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており、
前記切断加工をするときにおけるレーザ光の1つの焦点の位置を、前記ワークの上面におけるエネルギー密度を小さくして前記ワーク上面での酸化作用の発生を抑制するために、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間(ただし、前記ワークの板厚が15mmである場合に、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面から10mm及び12mmの位置を除く)に位置させ、前記ワーク上面での前記レーザ光の集光径を0.540mm?0.916mmとし、
前記切断加工を行う前に前記ワークにピアス加工を行う場合、
前記ピアス加工をするときのレーザ光の焦点の固定位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面との間、もしくは、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面と、この前側の端面の近傍であって前側の端面から僅かに離れた箇所との間に位置させることを特徴とするレーザ加工方法。」と訂正する(下線部は訂正箇所を示す。以下同じ。)。

(2)訂正事項2
請求項2に、
「請求項1に記載のレーザ加工方法において、
前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており、
前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており、
前記小径ノズルの内径は、0.6mm以上であって前記ワークの板厚の15%以下の値になっていることを特徴とするレーザ加工方法。」と記載されているのを、
「請求項1に記載のレーザ加工方法において、
前記小径ノズルの内径は、0.6mm以上であって前記ワークの板厚の15%以下の値になっていることを特徴とするレーザ加工方法。」と訂正する。

(3)訂正事項3
請求項3に、
「請求項1に記載のレーザ加工方法において、
前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており、
前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており、
前記ワークに切断加工をするときに、前記アシストガスを前記切断加工で形成される孔や溝の内部に吹き付けることを特徴とするレーザ加工方法。」と記載されているのを、
「請求項1に記載のレーザ加工方法において、
前記ワークに切断加工をするときに、前記アシストガスを前記切断加工で形成される孔や溝の内部に吹き付けることを特徴とするレーザ加工方法。」と訂正する。

(4)訂正事項4
請求項4を削除する。

(5)訂正事項5
請求項5に、
「一つの発振器と、プロセスファイバとが設けられており、前記発振器が発振したレーザ光が前記プロセスファイバを通って、前記プロセスファイバの端部に設けられている出射端から、レーザ加工ヘッドに向かって出射されるようになっており、
波長が1μm帯であるレーザ光を板状のワークに向けて出射するとともに、レーザ光の焦点の位置を変更自在であるレーザ加工ヘッドと、
前記ワークが設置されるワーク設置部と、
前記ワークに切断加工をする場合、前記レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光の1つの焦点の位置を、前記ワークの上面におけるエネルギー密度を小さくして前記ワーク上面での酸化作用の発生を抑制するために、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光進行方向後側のワークの端面との間に位置させるように、前記レーザ加工ヘッドを制御する制御部と、
を有することを特徴とするレーザ加工装置。」と記載されているのを、
「一つの発振器と、プロセスファイバとが設けられており、前記発振器が発振したレーザ光が前記プロセスファイバを通って、前記プロセスファイバの端部に設けられている出射端から、レーザ加工ヘッドに向かって出射されるようになっており、
波長が1μm帯であるレーザ光(ただし、パルス状レーザ光を除く)を板状のワークに向けて出射するとともに、レーザ光の焦点の位置を変更自在であるレーザ加工ヘッドと、
前記ワークが設置されるワーク設置部と、
前記ワークに切断加工をする場合、前記レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光の1つの焦点の位置を、前記ワークの上面におけるエネルギー密度を小さくして前記ワーク上面での酸化作用の発生を抑制するために、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光進行方向後側のワークの端面との間(ただし、前記ワークの板厚が15mmである場合に、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面から10mm及び12mmの位置を除く)に位置させ、前記ワーク上面での前記レーザ光の集光径を0.540mm?0.916mmとするように、前記レーザ加工ヘッドを制御する制御部と、
を有し、
前記ワークが、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されている場合、
前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるように構成されており、
前記制御部は、前記切断加工を行う前に前記ワークにピアス加工を行う場合、前記レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光の焦点の固定位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面との間、もしくは、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面と、この前側の端面の近傍であって前側の端面から僅かに離れた箇所との間に位置させるように、前記レーザ加工ヘッドを制御することを特徴とするレーザ加工装置。」と訂正する。

(6)訂正事項6
請求項6に、
「請求項5に記載のレーザ加工装置において、
前記ワークが、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されている場合、
前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるように構成されており、
前記小径ノズルの内径は、0.6mm以上であって前記ワークの板厚の15%以下の値になっていることを特徴とするレーザ加工装置。」と記載されているのを、
「請求項5に記載のレーザ加工装置において、
前記小径ノズルの内径は、0.6mm以上であって前記ワークの板厚の15%以下の値になっていることを特徴とするレーザ加工装置。」と訂正する。

(7)訂正事項7
請求項7に、
「請求項5に記載のレーザ加工装置において、
前記ワークが、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されている場合、
前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるように構成されており、
前記ワークでの切断加工をするときに、前記アシストガスを前記切断加工で形成される孔や溝の内部に吹き付けるように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。」と記載されているのを、
「請求項5に記載のレーザ加工装置において、
前記ワークでの切断加工をするときに、前記アシストガスを前記切断加工で形成される孔や溝の内部に吹き付けるように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。」と訂正する。

(8)訂正事項8
請求項8を削除する。

ここで、訂正事項1ないし4は、訂正前に引用関係を有する請求項1ないし4に対して請求されたものであり、また、訂正事項5ないし8は、訂正前に引用関係を有する請求項5ないし8に対して請求されたものである。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されている。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に係る発明の「波長が1μm帯であるレーザ光」について、「波長が1μm帯であるレーザ光(ただし、パルス状レーザ光を除く)」という限定を付加(以下、訂正事項1-1」という。)し、また、請求項1に係る発明の「ワーク」の形状及び材料について、「前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており」という限定を付加(以下、訂正事項1-2」という。)し、また、請求項1に係る発明の「板状のワークの切断加工を行うレーザ加工方法」におけるレーザ加工について、「前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており」という限定を付加(以下、訂正事項1-3」という。)し、また、請求項1に係る発明の「切断加工をするときにおけるレーザ光の1つの焦点の位置」である「前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間」について、「前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間(ただし、前記ワークの板厚が15mmである場合に、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面から10mm及び12mmの位置を除く)」という限定を付加(以下、訂正事項1-4」という。)し、また、請求項1に係る発明の「切断加工をするときにおけるレーザ光」について、「前記ワーク上面での前記レーザ光の集光径を0.540mm?0.916mm」とする限定を付加(以下、訂正事項1-5」という。)し、さらに、請求項1に係る発明の「ワークの切断加工」について、「前記切断加工を行う前に前記ワークにピアス加工を行う場合、前記ピアス加工をするときのレーザ光の焦点の固定位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面との間、もしくは、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面と、この前側の端面の近傍であって前側の端面から僅かに離れた箇所との間に位置させる」という限定を付加(以下、訂正事項1-6」という。)するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
また、訂正事項1-1は、「波長が1μm帯であるレーザ光」について、「パルス状レーザ光」を除くものであるから、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
次に、訂正事項1-2は、訂正前の特許請求の範囲の【請求項2】及び【請求項3】に「前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており」と記載されていることから、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
次に、訂正事項1-3は、訂正前の特許請求の範囲の【請求項2】及び【請求項3】に「前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており」と記載され、明細書の段落【0077】に「レーザ加工(ピアス加工や切断加工)の対象となるワークWは、厚さ12mmのSS400であり、レーザ加工時には、アシストガス(O_(2))37を0.07MPaでワークWに吹き付けている。」と記載されていることから、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
次に、訂正事項1-4は、「前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間」について、「前記ワークの板厚が15mmである場合に、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面から10mm及び12mmの位置」を除くものであるから、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
次に、訂正事項1-5は、明細書の段落【0063】ないし【0069】に「【0063】図7(a)では、厚さ12mmの板状のワークW(軟鋼;SS400)を切断加工した場合における焦点位置(ワークWの上面と焦点11との間の距離)と、集光径(ワークWの上面でのレーザ光9の直径)と、加工の可否(○;可、×;不可)とを示している。なお、焦点位置は、ワークWの上面から上方へ向かう場合を「+」とし、ワークWの上面から下方へ向かう方向を「-」としている。【0064】焦点位置が-5mmであるとき(焦点位置がワークWの上面から5mmだけ下に下がったところに位置しているとき)には、集光径は、0.463mmであり、加工の状況は不可である。【0065】焦点位置が-6mmであるとき(焦点位置が厚さ12mmのワークWの上面から6mmだけ下に下がったところに位置しているとき;焦点位置がワークWの厚さ方向中央に位置しているとき)には、集光径は、0.540mmであり、加工の状況は可である。【0066】同様にして、焦点11の位置が-7mm、-8mm、-9mm、-10mm、-11mmであるときにも、集光径は、それぞれ、0.613mm、0.677mm、0.751mm、0.817mm、0.916mmであり、加工の状況は可である。【0067】なお、焦点位置が-12mmであるとき(焦点位置がワークWの下面WUのところに位置しているとき)には、集光径は、0.987mmであり、加工の状況は不可である。【0068】図7(b)では、加工が可である場合における、ワークWの側面(切断加工された面)39の態様を示している。図7(b)では、ワークWの側面39を示す6つの写真が掲載されているが、上から順に、焦点位置を-6mm、-7mm、-8mm、-9mm、-10mm、-11mmとして切断加工した場合を示している。【0069】さらに説明すると、焦点11の位置が-6mmの付近もしくはその下方にあるときに、12mmの厚さのワークWを切断加工するのに適正な集光径を得ている。焦点11の位置が-6mmよりも高い位置にあると、加工精度が悪くなる。焦点11の位置が-12mm付近では、エネルギー密度の低下と、切断集光径限界から切断加工の加工精度が悪くなり、実用に耐えない。」と記載されていることから、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
次に、訂正事項1-6は、訂正前の特許請求の範囲の【請求項4】に「前記切断加工を行う前に前記ワークにピアス加工を行う場合、前記ピアス加工をするときのレーザ光の焦点の位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面との間、もしくは、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面と、この前側の端面の近傍であって前側の端面から僅かに離れた箇所との間に位置させる」と記載され、レーザ光の焦点位置はピアス加工中固定されていると解されるからことから、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
したがって、訂正事項1-1ないし1-6からなる訂正事項1は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められ、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項1は、ワーク、ワークのレーザ加工及びワークの切断加工に関して、発明特定事項を下位概念化するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2が引用する請求項1に、訂正事項1によって「ワーク」の形状及び材料について、「前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており」という限定を付加し、また、請求項1に係る発明の「ワーク」の「切断加工」について、「前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており」という限定を付加したため、請求項2の記載から、訂正事項1と重複する部分の「前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており、前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており」との記載を削除することにより、訂正事項1による訂正と整合を図るものであって、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。また、訂正事項2は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められ、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項3が引用する請求項1に、訂正事項1によって「ワーク」の形状及び材料について、「前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており」という限定を付加し、また、請求項1に係る発明の「ワーク」の「切断加工」について、「前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており」という限定を付加したため、請求項3の記載から、訂正事項1と重複する部分の「前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており、前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており」との記載を削除することにより、訂正事項1による訂正と整合を図るものであって、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。また、訂正事項3は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められ、新規事項の追加に該当しない。さらに、訂正事項3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。また、訂正事項4は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められ、新規事項の追加に該当しない。さらに、訂正事項4は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項5に係る発明の「波長が1μm帯であるレーザ光」について、「波長が1μm帯であるレーザ光(ただし、パルス状レーザ光を除く)」という限定を付加(以下、「訂正事項5-1」という。)し、また、請求項5に係る発明の「前記ワークに切断加工する場合」の「レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光の1つの焦点の位置」である「前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光進行方向後側のワークの端面との間」について、「前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光進行方向後側のワークの端面との間(ただし、前記ワークの板厚が15mmである場合に、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面から10mm及び12mmの位置を除く)」という限定を付加(以下、「訂正事項5-2」という。)し、また、請求項5に係る発明の「前記ワークに切断加工する場合」の「レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光」について、「前記ワーク上面での前記レーザ光の集光径を0.540mm?0.916mm」とする限定を付加(以下、「訂正事項5-3」という。)し、請求項5に係る発明の「ワーク」の形状及び材料について、「前記ワークが、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されている場合」という限定を付加(以下、「訂正事項5-4」という。)し、請求項5における「レーザ加工装置」におけるレーザ加工について、「前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるように構成されており」という限定を付加(以下、「訂正事項5-5」という。)し、請求項5に係る発明の「制御部」について、「前記制御部は、前記切断加工を行う前に前記ワークにピアス加工を行う場合、前記レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光の焦点の位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面との間、もしくは、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面と、この前側の端面の近傍であって前側の端面から僅かに離れた箇所との間に位置させるように、前記レーザ加工ヘッドを制御する」という限定を付加(以下、「訂正事項5-6」という。)するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
また、訂正事項5-1は、訂正事項1-1と同様の理由で、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
次に、訂正事項5-2は、訂正事項1-4と同様の理由で、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
次に、訂正事項5-3は、訂正事項1-5と同様の理由で、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
次に、訂正事項5-4は、訂正前の特許請求の範囲の【請求項6】及び【請求項7】 に「前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されている場合」と記載されていることから、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
次に、訂正事項5-5は、訂正前の特許請求の範囲の【請求項6】及び【請求項7】 に「前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており」と記載され、明細書の段落【0077】に「レーザ加工(ピアス加工や切断加工)の対象となるワークWは、厚さ12mmのSS400であり、レーザ加工時には、アシストガス(O_(2))37を0.07MPaでワークWに吹き付けている。」と記載されていることから、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
次に、訂正事項5-6は、訂正前の特許請求の範囲の【請求項8】に「前記制御部は、前記切断加工を行う前に前記ワークにピアス加工を行う場合、前記レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光の焦点の位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面との間、もしくは、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面と、この前側の端面の近傍であって前側の端面から僅かに離れた箇所との間に位置させるように、前記レーザ加工ヘッドを制御する」と記載され、レーザ光の焦点位置はピアス加工中固定されていると解されるからことから、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められる。
したがって、訂正事項5-1ないし5-6からなる訂正事項5は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められ、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項5は、ワーク、ワークのレーザ加工及びワークの切断加工に関して、発明特定事項を下位概念化するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項6が引用する請求項5に、訂正事項5によって「ワーク」の形状及び材料について、「前記ワークが、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されている場合」という限定を付加し、また、請求項5に係る発明の「ワーク」の「切断加工」について、「前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるように構成されており」という限定を付加したため、請求項6の記載から、訂正事項5と重複する部分の「前記ワークが、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されている場合、前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるように構成されており」との記載を削除することにより、訂正事項5による訂正と整合を図るものであって、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。また、訂正事項6は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められ、新規事項の追加に該当しない。さらに、訂正事項6は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、請求項7が引用する請求項5に、訂正事項5によって「ワーク」の形状及び材料について、「前記ワークが、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されている場合」という限定を付加し、また、請求項5に係る発明の「ワーク」の「切断加工」について、「前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるように構成されており」という限定を付加したため、請求項7の記載から、訂正事項5と重複する部分の「前記ワークが、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されている場合、前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるように構成されており」との記載を削除することにより、訂正事項5による訂正と整合を図るものであって、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。また、訂正事項7は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められ、新規事項の追加に該当しない。さらに、訂正事項7は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。また、訂正事項8は、明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内のものと認められ、新規事項の追加に該当しない。さらに、訂正事項8は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.訂正についてのまとめ
したがって、本件訂正請求による訂正事項1ないし8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5-8〕について訂正を認める。

第3.訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし8に係る発明は(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
一つの発振器と、プロセスファイバとが設けられており、前記発振器が発振したレーザ光が前記プロセスファイバを通って、前記プロセスファイバの端部に設けられている出射端から、レーザ加工ヘッドに向かって出射されるようになっており、
波長が1μm帯であるレーザ光(ただし、パルス状レーザ光を除く)を用いて、板状のワークの切断加工を行うレーザ加工方法において、
前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており、
前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており、
前記切断加工をするときにおけるレーザ光の1つの焦点の位置を、前記ワークの上面におけるエネルギー密度を小さくして前記ワーク上面での酸化作用の発生を抑制するために、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間(ただし、前記ワークの板厚が15mmである場合に、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面から10mm及び12mmの位置を除く)に位置させ、前記ワーク上面での前記レーザ光の集光径を0.540mm?0.916mmとし、
前記切断加工を行う前に前記ワークにピアス加工を行う場合、
前記ピアス加工をするときのレーザ光の焦点の固定位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面との間、もしくは、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面と、この前側の端面の近傍であって前側の端面から僅かに離れた箇所との間に位置させることを特徴とするレーザ加工方法。」
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工方法において、
前記小径ノズルの内径は、0.6mm以上であって前記ワークの板厚の15%以下の値になっていることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ加工方法において、
前記ワークに切断加工をするときに、前記アシストガスを前記切断加工で形成される孔や溝の内部に吹き付けることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
一つの発振器と、プロセスファイバとが設けられており、前記発振器が発振したレーザ光が前記プロセスファイバを通って、前記プロセスファイバの端部に設けられている出射端から、レーザ加工ヘッドに向かって出射されるようになっており、
波長が1μm帯であるレーザ光(ただし、パルス状レーザ光を除く)を板状のワークに向けて出射するとともに、レーザ光の焦点の位置を変更自在であるレーザ加工ヘッドと、
前記ワークが設置されるワーク設置部と、
前記ワークに切断加工をする場合、前記レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光の1つの焦点の位置を、前記ワークの上面におけるエネルギー密度を小さくして前記ワーク上面での酸化作用の発生を抑制するために、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光進行方向後側のワークの端面との間(ただし、前記ワークの板厚が15mmである場合に、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面から10mm及び12mmの位置を除く)に位置させ、前記ワーク上面での前記レーザ光の集光径を0.540mm?0.916mmとするように、前記レーザ加工ヘッドを制御する制御部と、
を有し、
前記ワークが、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されている場合、
前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるように構成されており、
前記制御部は、前記切断加工を行う前に前記ワークにピアス加工を行う場合、前記レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光の焦点の位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面との間、もしくは、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面と、この前側の端面の近傍であって前側の端面から僅かに離れた箇所との間に位置させるように、前記レーザ加工ヘッドを制御することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工装置において、
前記小径ノズルの内径は、0.6mm以上であって前記ワークの板厚の15%以下の値になっていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項5に記載のレーザ加工装置において、
前記ワークでの切断加工をするときに、前記アシストガスを前記切断加工で形成される孔や溝の内部に吹き付けるように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
(削除)

第4.取消理由通知(決定の予告)の概要
訂正前の(取り下げられたとみなされる平成30年7月27日の訂正請求による)請求項1ないし3及び5ないし7に係る特許に対して平成30年11月15日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨(特許法第29条第2項)は、次のとおりである。

1.請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第9号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証に提示される)に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2.請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに周知技術(甲第9号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証に提示される)及び周知技術(甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証に提示される)に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

3.請求項5及び6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに周知技術(甲第9号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証に提示される)、周知技術(甲第3号証、甲第5号証に提示される)、周知技術(甲第5号証、甲第13号証に提示される)及び周知技術(甲第3号証、甲第5号証、甲第21号証に提示される)に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項5及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

4.請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに周知技術(甲第9号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証に提示される)、周知技術(甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証に提示される)、周知技術(甲第3号証、甲第5号証に提示される)、周知技術(甲第5号証、甲第13号証に提示される)及び周知技術(甲第3号証、甲第5号証、甲第21号証に提示される)に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。
よって、請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

第5.証拠について
1.異議申立人が提出した各甲号証
甲第1号証:Catherine Wandera、「PERFORMANCE OF HIGH POWER FIBRE LASER CUTTING OF THICK-SECTION STEEL AND MEDIUM-SECTION ALUMINIUM 」, Lappeenranta University of Technology 、2010
甲第2号証:C Wandera、外2名、「Laser power requirement for cutting thick-section steel and effects of processing parameters on mild steel cut quality」、Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers, Part B:Journal of Engineering Manufacture、2011年5月31日、第225巻、第5号、651?661ページ
甲第3号証:特開2013-75331号公報
甲第4号証:IPGフォトニクス社のインターネットオンラインの表示画面(http://www.ipgphotonics.com/en/products/lasers/high-power-cw-fiber-lasers/1-micron-3/yls-1-100-kw#[yls-1-10-kw])
甲第5号証:特開2014-117730号公報
甲第6号証:特開平6-170578号公報
甲第7号証:特開2010-194558号公報
甲第8号証:特開2013-27907号公報
甲第9号証:特開2011-224600号公報
甲第10号証:特開平5-57469号公報
甲第11号証:特開昭60-240393号公報
甲第12号証:特開昭63-108984号公報
甲第13号証:特開2013-107089号公報
甲第14号証:特開2011-177788号公報
甲第15号証:特開平6-320295号公報、
甲第16号証:特開昭63-171289号公報
甲第17号証:フィンランド国立図書館によって運営されているホームページDoria(ドリア)のインターネットオンラインの表示画面(https://www.doria.fi/handle/10024/3999/discover?filtertype_1=dateIssued&filter_relational_operator_l=equals&filter_1=2010-10-15&filtertype_2=title&filter_relational_operator_2=contains&filter_2=&submit_apply_filter=)
甲第18号証:甲第2号証のインターネットオンラインの表示画面(http://journals.sagepub.com/toc/pibb/225/5)
甲第19号証:R.Bejjani、外3名、「Laser assisted turning of Titanium Metal Matrix Composite」、CIRP Annals、2011年4月21日、第60巻、第1号、61ないし64ページ
甲第20号証:甲第19号証のインターネットオンラインの表示画面(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0007850611000874)
甲第21号証:特開平1-218780号公報
甲第22号証:齋藤茂樹、次世代ディスクレーザーを用いた“E-car”へのレーザー加工適用の最新動向、レーザー研究、第39巻第9号、685ないし689ページ、平成23年9月)
甲第23号証:特開2012-24810号公報
甲第24号証:特開2012-24811号公報

2.特許権者が提出した各乙号証
乙第1号証:特許庁特許・実用新案審査基準第III部第2章第2節「進歩性
乙第2号証:産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会第3回審査基準専門委員会WG 配付資料「参考資料1-3 進歩性に関する主な裁判例」「2.A 周知技術の適用の際の論理付けについて」
乙第3号証:知財高判平成21年9月30日(平成20年(行ケ)第10431号)
乙第4号証:知財高判平成25年1月21日(平成24年(行ケ)第10196号)

3.甲第1号証の記載事項
取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第1号証には以下の事項が図面(特にFigure 9、Figure 21参照。)とともに記載されている。
なお、甲第1号証の表紙の次のページの下から5行目には「ISBN 978-952-214-973-2」と記載されている。ISBNは、世界共通で図書を特定するための番号であって、このISBNを用いて図書に関する事項を検索すると、甲第1号証が2010年に発行されていることが分かる。
したがって、甲第1号証は2010年に発行された刊行物であるといえる。

(1)「The use of an active assist gas jet (usually oxygen)for laser cutting ofa metal workpiece influences the energy balance at the cutting zone. Theoxygen gas jet plays two major roles during the laser cutting process, firstly the oxygen gas reacts exothermically with the molten metal resulting into energy addition to the cutting zone, and secondly the oxygen gas jet exerts the necessary thrust required to eject the oxidized melt from the cut kerf.」(35ページ2ないし7行)
「(和訳:以下、英文に続く「 」内の和文は訳文である。)金属加工品のレーザ切断のための活性アシストガス噴流(通常は酸素)の使用は、切断領域におけるエネルギーバランスに影響を与える。酸素ガス噴流は、レーザ切断プロセスの間に2つの主要な役割を果たす。第1に、酸素ガスは溶融金属と発熱的に反応して、切断領域にエネルギーを加える。第2に、酸素ガス噴流は、切断カーフから酸化された溶融物を追い出すのに必要な推力を及ぼす。(下線は当審で付した。以下同じ。)」

(2)「2.4.1 Cut kerf width
The kerf is the cut slot that is formed during through-thickness cutting 62. The cut kerf width is the distance separating the two cut surfaces of the cut slot(see Figure 9)and represents the amount of material removed during the laser cutting process. The cut kerf width depends on the focused spot size,laser power, and to some extent cutting speed 2. The cut kerf width is also affected by the oxygen pressure during laser cutting of mild steel using oxygen assist gas. The dynamic nature of the erratic exothermic oxidation reaction produces an irregular cut kerf width and deep grooves (striations)on the cut edge.」(35ページ29ないし36行)
「2.4.1 カーフ幅
カーフは、厚さ全体の切断中に形成される切断スロットである。切断カーフ幅は、切断スロットの2つの切断面を隔てる距離であり(図9参照)、レーザ切断プロセス中に除去される材料の量を表す。切断カーフ幅は、集光スポットサイズ、レーザー出力及びある程度切断速度に依存する。切断カーフ幅は、酸素アシストガスを用いた軟鋼のレーザ切断中の酸素圧力の影響をも受ける。不規則な発熱酸化反応の動的な性質は、不規則なカットカーフ幅およびカットエッジ上の深い溝(条痕)を生じる。」

(3)「Figure 9. Cut kerf width in 15 mm mild steel (4 kW laser power,1.0 bar oxygen,1.0m/min cutting speed, 254 mm focal length, and focal point position (a) 12 mm below workpiece top surface, (b)4 mm above workpiece top surface).」(36ページのFigure 9の説明)
「図9 15mm軟鋼における切断カーフ幅(4kWレーザ出力、1.0バール酸素、1.0mm/分切断速度、254mm焦点距離、焦点位祓(a)加工品の上面の-12mm下方、(b)加工品の上面の4mm上方)

(4)「4.1 Specifications of the Used Laser System
The main laser equipment used in this study was the solid-state ytterbium fibre laser (model YLR - 5000 - S)manufactured by IPG Photonics (see Figure 20)and delivering output power in the range of 40W-5000 W at CW mode with emission wavelength of 1070 - 1080 nm. This laser system is compact having dimensions (W×D×H)of 856 ×806×1482 mm and weight of 450 kg.
The laser beam generated by the ytterbium fibre laser was transferred to the cutting head via the 100 μm and 150 μm diameter optical fibres. The nominal beam parameter product was 4.2 mm.mrad when a 100 μm optical fibre was used for beam delivery and 5.2 mm.mrad when the 150 μm diameter optical fibre was used. The cutting head was a standard Precitec cutting head Hp1.5YW50 (shown in Figure 21)for thick-section flat cutting and suitable for high pressure cutting. The optical system consisted of a 100 mm collimation lens and a focusing lens. The focusing lens was changed for different cutting tests and consequently focusing lenses with focal lengths of 127 mm, 190.5 mm, and 254 mm were used in separate cutting tests. All cutting tests were made with a CN‐controlled workstation. The working area (X×Y×Z)of the workstation was 11.7 m × 2.7 m×1.2 m and the acceleration of the workstation was less than 0.5 G with a maximum achievable speed of 20 m/min.」(48ページ18ないし35行)
「4.1 使用されたレーザシステムの仕様
本研究において使用されたメインのレーザ装置は、IPGフォトニクス社によって製造され、かつ、1070nmから1080nmの発光波長を有し連続波(CW)モードにおいて40Wから5000Wの範囲の出力を出射する固体イッテルビウムファイバレーザ(モデルYLR-5000-S)(図20参照)である。このレーザシステムはコンパクトであり、856mm×806mm×1482mmの寸法(幅×奥行×高さ)と450kgの重量とを有する。
イッテルビウムファイバレーザによって生成されるレーザビームは、100μmと150μmの径を有する光ファイバを介して、切断ヘッドに伝送される。公称ビームパラメータ積は、100μmの光ファイバが用いられる場合、4.2ミリメートルミリラジアンであり、150μm径の光ファイバが用いられる場合、5.2ミリメートルミリラジアンである。切断ヘッドは、厚い厚さ区分のフラット切断用である、標準的なプレシテック社のHp1.5YW50(図21に示される)であり、高圧切断に適している。光学系は、100mmのコリメートレンズと集光レンズとから構成されている。集光レンズは、異なる切断試験のために変更され得て、その結果、集光レンズは、127mm、190.5mm及び254mmの焦点距離を有する集光レンズが、別々の切断試験に用いられる。全ての切断試験は、数値制御された作業ステーションを用いて行われる。作業ステーションの作業領域(X×Y×Z)は、11.7m×2.7m×1.2mであり、作業ステーションの加速度は、20m/分の最大達成可能速度で、0.5G未満である。」

(5)「 The test materials used in this study included: Aluminium alloy AA 5754 (EN AW 5754)of 4 mm thickness, Austenitic stainless steel AISI 304 (EN 1.4301)of 10 mm thickness and mild steel Laser 355MC (EN 10149-2)of 15 mm thickness. In this study the workpiece thickness is defined in two categories: medium section is 2 mm - 6 mm and thick section is above 6 mm. Therefore thicknesses of the test workpieces investigated in this study are categorized as medium section for the aluminium workpiece of 4 mm thickness, and thick section for the stainless steel and mild steel workpieces of 10 mm and 15 mm thickness respectively.」(50ページ6ないし13行)
「本研究に使用される試験素材には、4mmの厚さを有するアルミニウム合金AA5754(EN AW5754)、10mmの厚さを有するオーステナイト系ステンレス鋼AISI304(EN1.4301)、15mmの厚さを有する軟鋼 Laser 355MC(EN 10149-2)が含まれる。本研究では、加工品の厚さは、2mmから6mmである中間の厚さ区分と6mm超である厚い厚さ区分との2つのカテゴリーに規定される。したがって、本研究において調べられる試験加工品の厚さは、4mmの厚さを有するアルミニウム加工品は中間の厚さ区分として分類され、それぞれ10mmの厚さと15mmの厚さとを有するステンレス鋼加工品と軟鋼加工品とは、厚い厚さ区分に分類される。」

(6)「The test workpieces of dimensions 200 mm ×150 mm were prepared from the large plates that were delivered. Straight line cut slots were made at a distance of approximately 10 mm from each other as illustrated in Figure 22. A conical nozzle tip was used to deliver the assist gas jet to the cutting zone. Nitrogen was used as the assist gas for cutting of aluminium and stainless steel while oxygen was used for the cutting of mild steel.」(50ページ16ないし20行)
「搬送される大きな板から200mm×150mmの寸法を有する試験加工品が準備された。図22に示されるように、約10mmの間隔で直線状の切断スロットが形成された。アシストガス噴流を切断ゾーンに供給するために、円錐伏のノズル先端が使用される。アルミニウム及びステンレス鋼の切断には、アシストガスとして窒素が用いられ、軟鋼の切断には、酸素が用いられる。」

(7)「The tested materials were 10 mm austenitic stainless steel AISI 304 (EN 1.4301)workpiece and 15 mm mild steel Laser 355MC (EN 10149-2) workpiece. Cutting of mild steel was performed using oxygen as assist gas and stainless steel cutting was performed using nitrogen as assist gas. The levels of the processing parameters are given in Table 2. The effects of the processing parameters - i.e. cutting speed, assist gas pressure and nozzle diameter - on the rate of the oxidation reaction and the resulting cut edge quality in oxygen assisted laser cutting of mild steel using the ytterbium fibre laser were also examined.」(52ページ1ないし7行)
「試験素材は、10mmのオーステナイト系ステンレス鋼AISI 304(EN1.4301)加工品と、15mmの軟鋼Laser 355MC(EN 10149-2)加工品である。軟鋼の切断は、アシストガスとして酸素を用いて行われ、ステンレス鋼の切断はアシストガスとして窒素を用いて行われる。プロセスパラメータのレベルが表2に与えられる。イッテルビウムファイバレーザを用いた、酸素によってアシストされた軟鋼のレーザ切断における、酸化反応の速度及び得られる切断端面の品質への、プロセスパラメーターすなわち、切断速度、アシストガス圧及びノズル径-の効果もまた調べられた。」

(8)「The mild steel laser cutting experiments with oxygen assist gas have shown that the processing parameters have a strong influence on the power balance in the cutting zone and consequently affect the resulting cut edge quality. The cutting speed, oxygen pressure and nozzle diameter significantly affect the rate of the exothermic oxidation reaction and the resulting cut edge quality. Low cutting speed, high oxygen pressure and large nozzle diameter favour an erratic oxidation reaction and cause deterioration in the cut edge quality. The rate of the oxidation reaction is favoured by high oxygen pressure which enhances the concentration of the oxygen gas at the cutting zone and results in an erratic oxidation reaction. The erratic oxidation reaction increases the reaction power addition at the cutting zone and the excess reaction power causes excessive melting and widening of the cut kerf resulting in an irregular cut kerf width with deep grooves on the cut edge. More uniform cut edges with uniform striation pattern can be obtained with reasonably higher cutting speed, lower oxygen pressure, and with a smaller nozzle diameter.」(57ページ28ないし40行)
「酸素アシストガスを用いた軟鋼レーザ切断実験では、プロセスパラメータが切断領域におけるパワーバランスに強い影響を及ぼし、その結果、得られる切断エッジの品質に影響を与えることが示されている。切断速度、酸素圧力およびノズル径は、発熱酸化反応の速度及び得られる切断エッジの品質に重大な影響を及ぼす。低い切削速度、高い酸素圧力及び大きなノズル径は、不規則な酸化反応を促進し、切断エッジの品質の悪化を引き起こす。酸化反応の速度は、高い酸素圧力によって促進され、高い酸素圧力、切断領域における酸素ガスの濃度を高め、不規則な酸化反応をもたらす。不規則な酸化反応は、切断領域において反応パワーの追加を増加させ、過剰な反応パワーは、過剰な溶融と切断カープの拡がりを引き起こし、切断エッジに深い溝を有する不規則な切断カーフ幅をもたらす。合理的に高い切断速度、低い酸素圧力、およびより小さなノズル径で、均一な条痕パターンを有するより均一な切断エッジを得ることができる。」

(9)Table2「表2」から、Minimum focused spot diameter 「最小集光スポット径」は、0.3mmであることが分かり、Nozzle diameter「ノズル径」は、Mild Steel「軟鋼」の場合は1.7mmと2.0mmであることが分かり、Focal point position「焦点位置」は、Mild Steel「軟鋼」の場合は-10mmと-12mmであることが分かり、(-)とは、focal point position located below the workpiece top surface「加工品の上面の下方に位置する焦点位置」を意味していることが分かる。」

(10)Figure 21「図21」は、Laser cutting head(Precitec HP1.5YW50)「レーザ切断ヘッド(プレシテック HP1.5YW50)」であって、当該ヘッドは、Cutting head「切断ヘッド」とLaser beam delivery fiber「レーザビーム伝送ファイバ」を有することが分かり、切断ヘッドの下部に加工品が載置される作業ステーションを有することは明らかである。

上記(1)ないし(10)の記載事項を整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲第1号証に記載された発明1」という。)が記載されている。
「1070nmから1080nmの発光波長を有し連続波(CW)モードにおいてレーザ光を出射するイッテルビウムファイバレーザと、レーザビーム伝送ファイバと、前記レーザビーム伝送ファイバの先端に接続されている切断ヘッドと、円錐状のノズルと、作業ステーションとを備え、前記レーザビーム伝送ファイバは、前記レーザ光を前記切断ヘッドに伝送するレーザ加工装置を用いて、前記円錐状のノズルからアシストガスとして酸素を供給しながら、前記レーザ光を用いて、15mmの厚さを有する軟鋼である板状の加工品を切断するレーザ加工方法において、
前記円錐状のノズルは1.7mmまたは2.0mmのノズル径を有し、
前記レーザ光の焦点位置は-10mmまたは-12mmにあり、負の前記焦点位置は前記焦点位置が前記加工品の上面の下方にあることを意味し、
均一な切断カーフを得る、レーザ加工方法。」

また、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲第1号証に記載された発明2」という。)が記載されている。
「1070nmから1080nmの発光波長を有し連続波(CW)モードにおいてレーザ光を出射するイッテルビウムファイバレーザと、
レーザビーム伝送ファイバと、
前記レーザビーム伝送ファイバの先端に接続されている切断ヘッドと、
円錐状のノズルと、
作業ステーションとを備え、
前記レーザビーム伝送ファイバは、前記レーザ光を前記切断ヘッドに伝送し、
前記円錐状のノズルからアシストガスとして酸素を供給しながら、前記レーザ光を用いて、15mmの厚さを有する軟鋼である板状の加工品を切断し、
前記円錐状のノズルは1.7mmまたは2.0mmのノズル径を有し、
前記レーザ光の焦点位置は-10mmまたは-12mmにあり、負の前記焦点位置は前記焦点位置が前記加工品の上面の下方にあることを意味し、
均一な切断カーフを得る、レーザ加工装置。」

第6.当審の判断
1.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と甲第1号証に記載された発明1とを対比すると、甲第1号証に記載された発明1の「イッテルビウムファイバレーザ」は、本件発明1の「一つの発振器」に相当し、以下同様に、「レーザビーム伝送フアイバ」は「プロセスファイバ」に、「切断ヘッド」は「レーザ加工ヘッド」に、「レーザ加工方法」は「レーザ加工方法」に、それぞれ相当する。
次に、甲第1号証に記載された発明1の「レーザビーム伝送ファイバ」は「イッテルビウムファイバレーザ」から「出射」される「レーザ光を切断ヘッドに伝送」し、「レーザビーム伝送ファイバの先端に」「切断ヘッド」「が接続されている」ことは、本件発明1の「前記発振器が発振したレーザ光が前記プロセスファイバを通って、前記プロセスファイバの端部に設けられている出射端から、レーザ加工ヘッドに向かって出射されるようになって」いることに相当する。
次に、本件発明1の「波長が1μm帯であるレーザ光(ただし、パルス状レーザ光を除く)」について、本件特許明細書の段落【0019】に、「波長が1μm帯(たとえば、0.7μm?1.2μm)であるレーザ光9」と記載されていることから、甲第1号証に記載された発明1の「1070nmから1080nmの発光波長を有し連続波(CW)モードにおいてレーザ光を出射するするレーザ光」「を用いて、15mmの厚さを有する軟鋼である板状の加工品を切断する」ことは、本件発明1の「波長が1μm帯であるレーザ光(ただし、パルス状レーザ光を除く)を用いて、板状のワークの切断加工を行う」ことに相当する。
次に、本件発明1の「厚板」について、本件特許明細書の段落【0038】には、「ワークWの板厚は、レーザ加工の被加工物としては厚板になっており、たとえば、6mm?18mm(4mm?22mmでもよい。)の範囲内になっている。」と記載されていることから、甲第1号証に記載された発明1の「15mmの厚さを有する軟鋼である板状の加工品」は、本件発明1の「前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されて」いることに相当する。
次に、甲第1号証に記載された発明1の「1.7mmまたは2.0mmのノズル径を有」する「円錐状のノズル」は、甲第1号証に記載された発明1の「軟鋼である板状の加工品」の板厚(15mm)の15%の値は、2.25mmであることから、本件発明1の「小径ノズル」に相当し、甲第1号証に記載された発明1の「1.7mmまたは2.0mmのノズル径を有」する「円錐状のノズルからアシストガスとして酸素を供給しながら」「15mmの厚さを有する軟鋼である板状の加工品を切断する」ことは、「前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされる」ことを限度として、本件発明1の「前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされる」ことと一致する。
次に、甲第1号証に記載された発明1において「負の前記焦点位置は前記焦点位置が前記加工品の上面の下方にあることを意味」することから、甲第1号証に記載された発明1の「前記レーザ光を用いて、15mmの厚さを有する軟鋼である板状の加工品を切断する」際に、「前記レーザ光の焦点位置は-10mmまたは-12mmにあ」ることは、本件特許発明1の「前記切断加工をするときにおけるレーザ光の1つの焦点の位置を」、「前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間に位置させる」ことに相当する。
そうすると、本件発明1と甲第1号証に記載された発明1とは次の点で一致する。
「一つの発振器と、プロセスファイバとが設けられており、前記発振器が発振したレーザ光が前記プロセスファイバを通って、前記プロセスファイバの端部に設けられている出射端から、レーザ加工ヘッドに向かって出射されるようになっており、
波長が1μm帯であるレーザ光(ただし、パルス状レーザ光を除く)を用いて、板状のワークの切断加工を行うレーザ加工方法において、
前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており、
前記ワークでの切断加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており、
前記切断加工をするときにおけるレーザ光の1つの焦点の位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間に位置させるレーザ加工方法。」

そして、両者は次の各点で相違する。
[相違点1]
本件発明1では、「前記切断加工をするときにおけるレーザ光の1つの焦点の位置を、前記ワークの上面におけるエネルギー密度を小さくして前記ワーク上面での酸化作用の発生を抑制するために、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間(ただし、前記ワークの板厚が15mmである場合に、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面から10mm及び12mmの位置を除く)に位置させ」るのに対し、甲第1号証に記載された発明1では、かかる点を有しない点。

[相違点2]
「前記切断加工をするときにおけるレーザ光の1つの焦点の位置を」「前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間」に位置させたときに、本件発明1では、「前記ワーク上面での前記レーザ光の集光径を0.540mm?0.916mm」としているのに対し、甲第1号証に記載された発明1では、かかる点が明らかでない点。

[相違点3]
本件発明1では、「前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになって」いるのに対し、甲第1号証に記載された発明1では、「前記ワークでのレーザ加工」のうち、「前記ワークでの切断加工」は、「酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになって」いるものの、「前記ワークでのレーザ加工」のうち、「前記ワークでのピアス加工」は、「酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになって」いるかどうか明らかでない点。

[相違点4]
本件発明1では、「前記切断加工を行う前に前記ワークにピアス加工を行う場合、前記ピアス加工をするときのレーザ光の焦点の固定位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面との間、もしくは、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面と、この前側の端面の近傍であって前側の端面から僅かに離れた箇所との間に位置させる」のに対し、甲第1号証に記載された発明1では、かかる点が明らかでない点。

イ.判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
上記第5.3.(9)から、甲第1号証には、Minimum focused spot diameter 「最小集光スポット径」は、0.3mmであることは記載されているものの、「ワーク上面でのレーザ光の集光径を0.540mm?0.916mm」とすることは記載も示唆もない。
そして、本件特許明細書の段落【0065】に「焦点位置が-6mmであるとき(焦点位置が厚さ12mmのワークWの上面から6mmだけ下に下がったところに位置しているとき;焦点位置がワークWの厚さ方向中央に位置しているとき)には、集光径は、0.540mmであり、加工の状況は可である。」と記載され、同段落【0066】に「同様にして、焦点11の位置が-7mm、-8mm、-9mm、-10mm、-11mmであるときにも、集光径は、それぞれ、0.613mm、0.677mm、0.751mm、0.817mm、0.916mmであり、加工の状況は可である。」と記載されるように 「ワーク上面でのレーザ光の集光径を0.540mm?0.916mm」とすることにより、加工の状況が可となる効果を奏するものである。
また、異議申立人が提出した他の証拠である甲第2ないし24号証のいずれにも「前記切断加工をするときにおけるレーザ光の1つの焦点の位置を」「前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間」に位置させたときに、「ワーク上面でのレーザ光の集光径を0.540mm?0.916mm」とすることは記載も示唆もない。
よって、相違点2に係る本件発明1の構成については、甲第1号証に記載された発明1及び甲第2ないし24号証に記載された事項から、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
したがって、他の相違点1、3及び4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明1及び甲第2ないし24号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1を直接的に引用しており、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明1及び甲第2ないし24号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、請求項2及び3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(3)本件発明5について
本件発明1は方法の発明であるのに対して本件発明5は装置の発明であるが、本件発明1と同様に「前記切断加工をする場合、前記レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光の1つの焦点の位置を」「前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光進行方向後側のワークの端面との間」に位置させたときに、「前記ワーク上面での前記レーザ光の集光径を0.540mm?0.916mm」とする発明特定事項を有している。
そうすると、本件発明5は、本願発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明2及び甲第2ないし24号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(4)本件発明6及び7について
本件発明6及び7は、本件発明5を直接的に引用しており、本件発明5の発明特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明5と同様に、甲第1号証に記載された発明2及び甲第2ないし24号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、請求項6及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(5)本件発明4及び8について
請求項4及び8に係る特許は、訂正により削除されたため、対象となる請求項が存在しない。

2.取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条第1項第3号
ア.申立理由の概要
異議申立人は、証拠として、甲第1号証を提出して、請求項1ないし3に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
イ.当審の判断
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証に記載された発明1とを対比すると、上記1.(1)ア.で示したとおり相違点1ないし4を有すると認められる。
よって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
したがって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものとはいえない。

(イ)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1を直接的に引用しており、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに構成を限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明1と対比すると、相違点1ないし4を有すると認められるから、本件発明2及び3は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。
よって、請求項2及び3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものとはいえない。

(2)特許法第29条第2項
ア.申立理由の概要
異議申立人は、証拠として、甲第2号証を提出して、請求項1ないし8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

イ.当審の判断
(ア)本件発明1について
甲第2号証には、Table3「表3」にMin. focused spot diameter 「最小集光スポット径」は、0.3mmであることは記載されているものの、「ワーク上面でのレーザ光の集光径を0.540mm?0.916mm」とすることは記載も示唆もない。
また、異議申立人が提出した他の証拠である甲第1号証及び甲第3ないし24号証のいずれにも「前記切断加工をするときにおけるレーザ光の1つの焦点の位置を」「前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間」に位置させたときに、「ワーク上面でのレーザ光の集光径を0.540mm?0.916mm」とすることは記載も示唆もない。
そうすると、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1号証及び甲第3ないし24号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(イ)本件発明2、3、5、6及び7について
本件発明1と同様の理由で、請求項2、3、5、6及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(ウ)本件発明4及び8について
請求項4及び8に係る特許は、訂正により削除されたため、対象となる請求項が存在しない。

(3)特許法第36条第4項第1号
ア.申立理由の概要
異議申立人は、特許異議申立書90ページ1行ないし92ページ1行の「エ 取消理由3(特許法第36条第4項第1号、同法第113条第4号)について」の項において、「実施例1?4には、切断速度、レーザ光の出力、アシストガスである酸素の圧力、アシストガスの流量、アシストガスを供給するノズルの径、レーザ光のビーム径、被加工物の厚さ及び被加工物と加工ヘッドとの間の角度といった、セルフバーニングの発生に影響を及ぼす因子のうち多くの因子が特定されていない。そうすると、本件特許明細書及び図面の記載並びに本件特許の出願時における技術常識を併せ考慮しても、当業者が過度な負担なしに、『ワークの上面におけるエネルギー密度を小さくして前記ワーク上面での酸化作用の発生を抑制』して(本件特許発明1?8を参照)、本件特許明細書の段落0007に記載された課題を解決し得るような具体的な条件を決定することはできない。」旨主張している。

イ.当審の判断
この点について検討すると、発明の詳細な説明にレーザ加工を行う際の加工条件をすべてを記載していないから発明の実施ができないとまではいえず、例えば、本件特許明細書の段落【0078】には、「レーザの出力が4KWである場合、最大の送り速度は1700mm/minであり、最小の送り速度は1400mm/minである。」、また、段落【0080】には「ワークW(厚さ12mmのSS400)に、アシストガス(O_(2))37を0.07MPaで吹き付け、レーザの出力を4KWとし、送り速度を1400mm/min(F1400)もしくは1700mm/min(F1700)として加工した」とあるように具体的な加工条件も記載されている。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないとまではいえないから、異議申立人の主張は理由はない。

(4)特許法第36条第6項第1号
ア.申立理由の概要
異議申立人は、特許異議申立書92ページ4行ないし93ページ11行の「(ア)取消理由4-1」の項において、「本件特許発明1?8は、発明の詳細な説明に記載された事項及び本件特許の出願時における技術常識に基づき、当業者が、「ワークの上面におけるエネルギー密度を小さくして前記ワーク上面での酸化作用の発生を抑制」して (本件特許発明1?8を参照)、本件特許明細書の段落0007に記載された課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。」旨主張している(以下、「理由1」という。)。
また、異議申立人は、特許異議申立書93ページ12行ないし95ページ14行の「(イ)取消理由4-2」の項において、「本件特許発明1,4,5,8には、レーザ光を用いてワークを切断する際に、アシストガスとして酸素を吹き付けることが記載されていない。そのため、本件特許発明1,4,5,8が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。」旨主張している(以下、「理由2」という。)。
さらに、異議申立人は、特許異議申立書95ページ15行ないし97ページ21行の「(ウ)取消理由4-3」の項において、本件特許明細書の段落【0067】に記載された「なお、焦点位置が-12mmであるとき(焦点位置がワークWの下面WUのところに位置しているとき)には、集光径は、0.987mmであり、加工の状況は不可である。」とされる、加工の状況が不可であって発明の課題を解決できると認識できないものが含まれる。そのため、本件特許発明1?8が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない旨主張している(以下、「理由3」という。)。

イ.当審の判断
(ア)理由1について
この点について検討すると、前記(3)で検討したようにレーザ加工を行う際の加工条件をすべて発明の詳細な説明に記載する必要はなく、同様に特許請求の範囲にレーザ加工を行う際の加工条件をすべて加工条件を記載する必要があるともいえず、請求項1の記載や請求項4の記載が本件特許明細書の段落【0007】に記載された課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできないとまではいえないから、異議申立人の主張は理由がない。

(イ)理由2について
この点について検討すると、訂正により、請求項1及び5に「前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされる」ようになっており」との発明特定事項が付加された。
よって、異議申立人の主張は理由がない。

(ウ)理由3について
この点について検討すると、レーザ加工の焦点の位置に関連して、「前記ワーク上面での前記レーザ光の集光径を0.540mm?0.916mmとする」ことが訂正により発明特定事項とされ、発明の課題を解決できないとされるものは除外されたから、異議申立人の主張は理由がない。

第7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし3及び5ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本本件請求項1ないし3及び5ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4及び8に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。
これにより異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項4及び8に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの発振器と、プロセスファイバとが設けられており、前記発振器が発振したレーザ光が前記プロセスファイバを通って、前記プロセスファイバの端部に設けられている出射端から、レーザ加工ヘッドに向かって出射されるようになっており、
波長が1μm帯であるレーザ光(ただし、パルス状レーザ光を除く)を用いて、板状のワークの切断加工を行うレーザ加工方法において、
前記ワークは、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されており、
前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるようになっており、
前記切断加工をするときにおけるレーザ光の1つの焦点の位置を、前記ワークの上面におけるエネルギー密度を小さくして前記ワーク上面での酸化作用の発生を抑制するために、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向後側における前記ワークの端面との間(ただし、前記ワークの板厚が15mmである場合に、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面から10mm及び12mmの位置を除く)に位置させ、前記ワーク上面での前記レーザ光の集光径を0.540mm?0.916mmとし、
前記切断加工を行う前に前記ワークにピアス加工を行う場合、
前記ピアス加工をするときのレーザ光の焦点の固定位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面との間、もしくは、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面と、この前側の端面の近傍であって前側の端面から僅かに離れた箇所との間に位置させることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工方法において、
前記小径ノズルの内径は、0.6mm以上であって前記ワークの板厚の15%以下の値になっていることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ加工方法において、
前記ワークに切断加工をするときに、前記アシストガスを前記切断加工で形成される孔や溝の内部に吹き付けることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
一つの発振器と、プロセスファイバとが設けられており、前記発振器が発振したレーザ光が前記プロセスファイバを通って、前記プロセスファイバの端部に設けられている出射端から、レーザ加工ヘッドに向かって出射されるようになっており、
波長が1μm帯であるレーザ光(ただし、パルス状レーザ光を除く)を板状のワークに向けて出射するとともに、レーザ光の焦点の位置を変更自在であるレーザ加工ヘッドと、
前記ワークが設置されるワーク設置部と、
前記ワークに切断加工をする場合、前記レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光の1つの焦点の位置を、前記ワークの上面におけるエネルギー密度を小さくして前記ワーク上面での酸化作用の発生を抑制するために、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光進行方向後側のワークの端面との間(ただし、前記ワークの板厚が15mmである場合に、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面から10mm及び12mmの位置を除く)に位置させ、前記ワーク上面での前記レーザ光の集光径を0.540mm?0.916mmとするように、前記レーザ加工ヘッドを制御する制御部と、
を有し、
前記ワークが、厚板であり、鉄もしくは鋼もしくは鉄合金もしくは酸化反応によって発熱する材料で構成されている場合、
前記ワークでのレーザ加工は、酸素を含み小径ノズルから前記ワークに向かって吹き付けられるアシストガスを用いてなされるように構成されており、
前記制御部は、前記切断加工を行う前に前記ワークにピアス加工を行う場合、前記レーザ加工ヘッドから出射されるレーザ光の焦点の固定位置を、前記ワークの板厚方向で、前記ワークの中心と、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面との間、もしくは、前記レーザ光の光軸方向であって前記レーザ光の進行方向前側における前記ワークの端面と、この前側の端面の近傍であって前側の端面から僅かに離れた箇所との間に位置させるように、前記レーザ加工ヘッドを制御することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工装置において、
前記小径ノズルの内径は、0.6mm以上であって前記ワークの板厚の15%以下の値になっていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項5に記載のレーザ加工装置において、
前記ワークでの切断加工をするときに、前記アシストガスを前記切断加工で形成される孔や溝の内部に吹き付けるように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-06-06 
出願番号 特願2015-176479(P2015-176479)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B23K)
P 1 651・ 536- YAA (B23K)
P 1 651・ 121- YAA (B23K)
P 1 651・ 113- YAA (B23K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 黒石 孝志青木 正博  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 平岩 正一
中川 隆司
登録日 2017-08-10 
登録番号 特許第6190855号(P6190855)
権利者 株式会社アマダホールディングス
発明の名称 レーザ加工方法およびレーザ加工装置  
代理人 高松 俊雄  
代理人 高橋 俊一  
代理人 伊藤 正和  
代理人 高橋 俊一  
代理人 伊藤 正和  
代理人 岩▲崎▼ 幸邦  
代理人 高松 俊雄  
代理人 岩▲崎▼ 幸邦  
代理人 三好 秀和  
代理人 三好 秀和  

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