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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1353185
異議申立番号 異議2018-700385  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-08 
確定日 2019-06-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6228734号発明「電子部品封止用樹脂シート、樹脂封止型半導体装置、及び、樹脂封止型半導体装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6228734号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6228734号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成25年2月14日の出願であって、平成29年10月20日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年11月8日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成30年5月8日に特許異議申立人 吉田 秀平(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、当審において同年6月28日付けで取消理由が通知され、同年8月21日に特許権者 日東電工株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出され、同年9月14日付けで取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)が通知され、同年11月13日付け(受理日:同年同月15日)で特許権者から意見書が提出され、平成31年1月4日付けで特許異議申立人に対し審尋がされ、同年同月24日に特許異議申立人から回答書が提出され、同年2月18日付けで特許権者に対し審尋がされ、同年3月6日に特許権者から回答書が提出されたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
樹脂封止型半導体装置の製造に使用され、被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを、半導体チップと被着体との間の空隙を残しつつ埋め込むための電子部品封止用樹脂シートであって、
無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70?93重量%含み、
さらに、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、及び、ビフェニルアラルキル樹脂の群から選ばれる1または2以上のフェノール樹脂と、エラストマーとを含み、
混練押出により製造されており、
厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m^(2)・24時間以下であることを特徴とする電子部品封止用樹脂シート(ただし、下記の一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物を含む場合を除く。)
m(M_(a)O_(b))・n(Q_(d)O_(e))・cH_(2)O ・・・(1)
〔上記式(1)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは、周期律表のIVa,Va,VIa,VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属元素である。また、m,n,a,b,c,d,eは正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。〕。
【請求項2】
厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度60℃、湿度90%、168時間の条件下において、100g/m^(2)・24時間以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品封止用樹脂シート。
【請求項3】
被着体と、
前記被着体にフリップチップ接続された半導体チップと、
前記半導体チップを封止する電子部品封止用樹脂シートと
を備え、
前記電子部品封止用樹脂シートは、
無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70?93重量%含み、さらに、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、及び、ビフェニルアラルキル樹脂の群から選ばれる1または2以上のフェノール樹脂と、エラストマーとを含み、混練押出により製造されており、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m^(2)・24時間以下であり、
前記被着体と前記半導体チップとの間には、空隙が形成されていることを特徴とする樹脂封止型半導体装置(ただし、前記電子部品封止用樹脂シートは、下記の一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物を含む場合を除く。)
m(M_(a)O_(b))・n(Q_(d)O_(e))・cH_(2)O ・・・(1)
〔上記式(1)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは、周期律表のIVa,Va,VIa,VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属元素である。また、m,n,a,b,c,d,eは正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。〕。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電子部品封止用樹脂シートを有する樹脂封止型半導体装置。
【請求項5】
樹脂封止型半導体装置の製造方法であって、
被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを覆うように、半導体チップ側から電子部品封止用樹脂シートを積層する工程であって、半導体チップと被着体との間の空隙を残しつつ埋め込む工程を具備し、
前記電子部品封止用樹脂シートは、
無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70?93重量%含み、
さらに、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、及び、ビフェニルアラルキル樹脂の群から選ばれる1または2以上のフェノール樹脂と、エラストマーとを含み、
混練押出により製造されており、
厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m^(2)・24時間以下であることを特徴とする樹脂封止型半導体装置の製造方法(ただし、前記電子部品封止用樹脂シートは、下記の一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物を含む場合を除く。)
m(M_(a)O_(b))・n(Q_(d)O_(e))・cH_(2)O ・・・(1)
〔上記式(1)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは、周期律表のIVa,Va,VIa,VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属元素である。また、m,n,a,b,c,d,eは正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。〕。」

第3 取消理由(決定の予告)の概要
取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。

本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(主引用文献は、甲第2号証である。)。

甲第1号証:特開2008-285593号公報
甲第2号証:特開2013-7028号公報
甲第3号証:特開2011-219726号公報
甲第4号証:特開平7-216196号公報

第4 当審の判断
1 甲第1ないし4号証の記載事項等
(1)甲第2号証の記載事項等
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「封止用シートおよび電子部品装置」に関して、次の記載がある(以下、まとめて、「甲第2号証の記載事項」という。)。なお、化学式の摘記は他の甲号証を含め省略する。また、下線は他の甲号証を含め当審で付したものである。

・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填剤とを混練して得られる混練物を、塑性加工することにより得られることを特徴とする、封止用シート。
一般式(1):
【化1】
・・・(略)・・・
【請求項2】
前記硬化剤が、ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の封止用シート。
【請求項3】
前記混練物に、さらに、可撓性付与剤が混練されていることを特徴とする、請求項1および2に記載の封止用シート。
【請求項4】
前記可撓性付与剤が、スチレン骨格を有するエラストマーであることを特徴とする、請求項3に記載の封止用シート。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載の封止用シートを、硬化させることにより電子部品を封止して得られることを特徴とする、電子部品装置。」

・「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に記載のゲル状エポキシ樹脂シートは、上記のように、各種成分を配合してワニス(組成物)を調製した後、そのワニスをフィルム上に塗布することにより成膜され、作製される。
【0006】
しかし、このような作製では、ゲル状エポキシ樹脂シートにおける充填剤の配合割合が、一定値以上であると、ワニスをフィルム上に塗布するときに、成膜することができない場合がある。
【0007】
そのため、ゲル状エポキシ樹脂シートの性能の向上を十分に図ることができない場合がある。
【0008】
また、特許文献1および2に記載のゲル状エポキシ樹脂シートのような封止用シートでは、封止用シートとして使用可能な可撓性を得るために、多量の可撓性付与剤(ゲル化剤)が配合される場合がある。一方、多量の可撓性付与剤が封止用シートに配合されると、その封止用シートの接着性および耐熱性が低下するという不具合がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、充填剤の配合割合を増加させることができ、かつ、接着性および耐熱性の向上を図ることができる封止用シート、および、その封止用シートにより封止された電子部品を備える電子部品装置を提供することにある。」

・「【発明の効果】
【0016】
本発明の封止用シートは、上記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填剤とを混練して得られる混練物を、塑性加工することにより得られる。
【0017】
つまり、エポキシ樹脂や無機充填剤を含有するワニスをフィルム上に塗布することなく、封止用シートが形成されるので、無機充填剤の配合割合を増加させることができる。
【0018】
その結果、封止用シートの性能の向上を十分に図ることができる。
【0019】
また、本発明の封止用シートは、多量の可撓性付与剤を配合しなくとも、十分な可撓性を有するので、その接着性および耐熱性の向上を図ることができる。
【0020】
したがって、本発明の封止用シートは、無機充填剤の配合割合を増加させることができ、かつ、その接着性および耐熱性の向上を図ることができる。」

・「【0049】
硬化剤は、上記したエポキシ樹脂の硬化剤であって、特に制限されず、例えば、フェノール樹脂、酸無水物系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。
【0050】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂(ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂)、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾール樹脂などが挙げられる。
・・・(略)・・・
【0054】
また、このような硬化剤のなかでは、硬化反応性(信頼性)を考慮すると、好ましくは、フェノール樹脂が挙げられ、硬化後の封止用シートの強度と硬化反応性とのバランスを考慮すると、さらに好ましくは、ビフェニルアラルキル樹脂が挙げられる。」

・「【0057】
また、必要により、混練物は、硬化剤とともに硬化促進剤を含有する。」

・「【0063】
無機充填剤としては、特に制限されず、公知の充填剤などが挙げられる。
【0064】
具体的には、石英ガラス、タルク、シリカ(例えば、溶融シリカ、結晶性シリカなど)、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、白艶華など)、酸化チタンなどの粉末が挙げられる。
【0065】
このような充填剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0066】
また、このような充填剤のなかでは、硬化後の封止用シートの線膨張係数の低減を考慮すると、好ましくは、シリカ粉末が挙げられ、さらに好ましくは、溶融シリカ粉末が挙げられる。
【0067】
また、溶融シリカとしては、例えば、球状溶融シリカ粉末、粉砕溶融シリカ粉末が挙げられ、混練物の流動性を考慮すると、好ましくは、球状溶融シリカ粉末が挙げられる。
【0068】
このような球状溶融シリカ粉末の平均粒子径は、例えば、0.1?40μm、好ましくは、0.1?30μm、さらに好ましくは、0.3?15μmである。
【0069】
なお、平均粒子径は、例えば、レーザー回折錯乱式粒度分布測定装置により、測定することができる。
【0070】
充填剤の配合割合は、混練物100質量部に対して、例えば、60?95質量部、硬化後の封止用シートの線膨張係数の低減を考慮すると、好ましくは、70?93質量部、さらに好ましくは、85?90質量部である。
【0071】
また、充填剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、1000?3000質量部、好ましくは、1300?2500質量部である。」

・「【0072】
また、混練物には、封止用シートの可撓性の向上を考慮すると、可撓性付与剤を添加することもできる。
【0073】
可撓性付与剤は、封止用シートに可撓性を付与するものであれば、特に制限されないが、例えば、ポリアクリル酸エステルなどの各種アクリル系共重合体、例えば、ポリスチレン-ポリイソブチレン系共重合体、スチレンアクリレート系共重合体などのスチレン骨格を有するエラストマー、例えば、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴムなどのゴム質重合体などが挙げられる。
【0074】
このような可撓性付与剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0075】
また、このような可撓性付与剤のなかでは、混練物の耐熱性および強度を考慮すると、好ましくは、スチレン骨格を有するエラストマーが挙げられ、さらに好ましくは、ポリスチレン-ポリイソブチレン系共重合体が挙げられる。
【0076】
可撓性付与剤の含有割合は、混練物100質量部に対して、例えば、30質量部未満、接着性および耐熱性を考慮すると、好ましくは、10質量部未満、さらに好ましくは、5質量部未満である。
【0077】
また、混練物には、上記成分に加えて、上記したエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂(以下、その他のエポキシ樹脂とする。)、さらに、必要に応じて、難燃剤、カーボンブラックなどの顔料などの公知の添加剤を適宜の割合で添加することもできる。
【0078】
なお、その他のエポキシ樹脂を添加する場合、その他のエポキシ樹脂の含有割合は、上記のエポキシ樹脂およびその他のエポキシ樹脂の総量100質量部に対して、例えば、30質量部未満、封止用シートの可撓性を考慮すると、好ましくは、20質量部未満である。
【0079】
このような混練物を調製するには、上記した各成分を、上記した配合割合において配合し、溶融混練する。
【0080】
溶融混練する方法としては、特に限定されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などの公知の混練機により、溶融混練する方法などが挙げられる。
【0081】
混練条件としては、温度が、上記した各成分の軟化点以上であれば特に制限されず、例えば、30?150℃、エポキシ樹脂の熱硬化性を考慮すると、好ましくは、40?140℃、さらに好ましくは、60?120℃であり、時間が、例えば、1?30分間、好ましくは、5?15分間である。
【0082】
これによって、混練物が調製される。
【0083】
このような混練物は、塑性加工されることにより封止用シートとして調製される。具体的には、溶融混練後の混練物を冷却することなく高温状態のままで、塑性加工することで、封止用シートが調製される。
【0084】
このような塑性加工方法としては、特に制限されず、平板プレス法、Tダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、インフレーション押出法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。」

・「【0088】
本発明の封止用シートは、エポキシ樹脂や無機充填剤を含有するワニスをフィルム上などに塗布することなく、混練物が塑性加工されることにより形成される。
【0089】
そのため、無機充填剤の配合割合を増加させることができ、封止用シートの性能の向上を十分に図ることができる。」

・「【0092】
このような封止用シートの用途としては、例えば、実装基板上の電子部品の封止が挙げられる。電子部品としては、特に制限されないが、例えば、半導体素子、コンデンサ、抵抗素子などが挙げられる。
【0093】
上記の封止用シートによる、実装基板上の電子部品の封止では、封止用シートを硬化せることにより電子部品が封止される。これによって、電子部品が封止された電子部品装置が作製される。
【0094】
詳しくは、電子部品装置を作製するには、図1(a)に示すように、まず、実装基板1上に電子部品2を、実装基板1の接続用電極部(図示せず)と、電子部品2の接続用電極部(図示せず)とが電気的に連結されるように設置する。
・・・(略)・・・
【0098】
次いで、図1(b)に示すように、実装基板1に設置された電子部品2上に、封止用シート3を配置する。
【0099】
そして、電子部品2は、封止用シート3が所定条件でプレスされることにより、封止用シート3により被覆され、封止用シート3は、電子部品2および実装基板1と接着する。
・・・(略)・・・
【0104】
以上によって、封止用シート3を硬化させることにより電子部品2を封止して得られる、電子部品装置5が作製される。
【0105】
このような電子部品装置5は、上記した封止用シート3により封止されているため、封止用シート3と電子部品2との接着性、および、電子部品装置5の耐熱性の向上を図ることができる。」

・「【実施例】
【0106】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
【0107】
実施例1?6および比較例1、2
表1に示す処方(単位:質量%)において、各成分を配合し、ロール混練機により60?120℃、10分間溶融混練し、混練物を調製した。
【0108】
次いで、得られた混練物を、平板プレス法により、シート状に形成して、厚み500?1000μmの封止用シートを形成した。
【0109】
比較例3
表1に示す処方(単位:質量%)において、各成分を配合し、これに各成分の総量と同量のメチルエチルケトンを添加して、シート塗工用ワニスを調製した。
【0110】
次いで、得られたシート塗工用ワニスを、コンマコ?タ-により、厚み50μmのポリエステルフィルムA(三菱化学ポリエステル社製、MRF-10)の剥離処理面上に、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗工し、乾燥した。
【0111】
次いで、乾燥後のシート塗工用ワニスを挟み込むように、厚み38μmのポリエステルフィルムB(三菱化学ポリエステル社製、MRX-38)の剥離処理面を、乾燥後のシート塗工用ワニス上に張り合わせて、シート状樹脂組成物を調製した。
【0112】
その後、ポリエステルフィルムAおよびポリエステルフィルムBを適宜剥離しながら、ロールラミネ?タ?により、シート状樹脂組成物を4枚積層することにより、厚み200μmの封止用シートを調製した。
【0113】
比較例4
表1に示す処方(単位:質量%)において、各成分を配合した点以外は、比較例3と同様にして、封止用シートの調製を試みた。
【0114】
その結果、無機充填剤の偏析が発生し、成膜することができず、封止用シートを調製することができなかった。
【0115】
(評価)
得られた各実施例および各比較例の封止用シートについて、可撓性および接着性試験を、次のように実施した。
(1)可撓性試験
各実施例および各比較例の封止用シートを、幅60mm×長さ60mmに切り出し、その幅方向両端部を把持し、ゆっくりと90°折り曲げて、可撓性を下記の基準により評価した。その結果を表1に示す。
○:90°折り曲げても割れなかった。
△:90°折り曲げるとヒビが入った。
×:90°折り曲げると割れた。
(2)接着性試験
ガラスエポキシ基板(幅10mm×長さ40mm×厚み0.3mm)に、各実施例および比較例の封止用シート(幅10mm×長さ40mm×厚み0.2mm)をラミネートした。
【0116】
次いで、ガラスエポキシ基板からはみ出た部分の封止用シートを除去した。そして、封止用シートがラミネートされたガラスエポキシ基板を90℃に加熱し、その封止用シートに、3mm^(2)×厚み0.625mmのシリコンチップを搭載した。
【0117】
次いで、封止用シートを175℃、1時間の条件下で、硬化させた。
【0118】
25℃または260℃において、万能型ボンドテスター(デイジ・ジャパン社製)によりシリコンチップの側面から荷重を加えて、シリコンチップがガラスエポキシ基板から脱離する荷重を測定した。
【0119】
なお、評価基準としては、25℃において、荷重が6MPa未満である場合を×、荷重が6?10MPaである場合を△、荷重が10MPa超過する場合を○とした。
【0120】
また、260℃において、荷重が1MPa未満である場合を×、荷重が1?3MPaである場合を△、荷重が3MPa超過する場合を○とした。
その結果を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
なお、表1の略号などを以下に示す。
エポキシ樹脂a:上記化学式(2)で示されるビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量200g/eq.軟化点80℃)
エポキシ樹脂b:上記化学式(5)で示される4,4’-チオビスフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量170g/eq.軟化点44℃)
エポキシ樹脂c:上記化学式(8)で示される4,4’-オキシビスフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量164g/eq.軟化点83℃)
エポキシ樹脂d:下記化学式(11)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量193g/eq.軟化点105℃)
・・・(略)・・・
【0124】
エポキシ樹脂e:下記化学式(12)で示されるエポキシ樹脂(エポキシ当量244g/eq.軟化点113℃)
・・・(略)・・・
【0126】
エポキシ樹脂f:変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON EXA-4850-150,水酸基当量447g/eq.液体)
エポキシ樹脂g:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EPPN-501HY、水酸基当量169g/eq.軟化点60℃)
フェノール樹脂a:ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH7851SS、水酸基当量203g/eq.軟化点67℃)
フェノール樹脂b:フェノールノボラック樹脂(群栄化学工業社製、GS-200、水酸基当量105g/eq.軟化点100℃)
無機充填剤:球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB-9454、平均粒子径20μm)
硬化促進剤:テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート
可撓性付与剤a:ポリスチレン-ポリイソブチレン系共重合体
可撓性付与剤b:アクリル系共重合体(組成:ブチルアクリレート:アクリロニトリル:グリシジルメタクリレート=85:8:7(重量比))(重量平均分子量80万)」

・「【図1】



イ 甲2発明
甲第2号証の記載事項、特に実施例2及び図1に関する記載事項を整理すると、甲第2号証には、次の発明(以下、順に「甲2-1発明」のようにいう。)が記載されていると認める。

<甲2-1発明>
「実装基板1上に電気的に連結した電子部品2の封止に使用される封止用シート3であって、
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量200g/eq.軟化点80℃)4.0質量%と、ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH7851SS、水酸基当量203g/eq.軟化点67℃)4.3質量%と、球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB-9454、平均粒子径20μm)88.0質量%と、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート0.1%と、ポリスチレン-ポリイソブチレン系共重合体3.6%とを溶融混練して得られる混練物を、平板プレス法により形成した封止用シート3。」

<甲2-2発明>
「実装基板1と、
前記実装基板1に電気的に連結した電子部品2と、
前記電子部品2を封止する封止用シート3と
を備え、
前記封止用シート3は、
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量200g/eq.軟化点80℃)4.0質量%と、ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH7851SS、水酸基当量203g/eq.軟化点67℃)4.3質量%と、球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB-9454、平均粒子径20μm)88.0質量%と、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート0.1%と、ポリスチレン-ポリイソブチレン系共重合体3.6%とを溶融混練して得られる混練物を、平板プレス法により形成した封止用シート3である電子部品装置5。」

<甲2-3発明>
「電子部品装置5の製造方法であって、
実装基板1上に電気的に連結した電子部品2を覆うように、電子部品2側から封止用シート3を積層する工程であって、電子部品2を埋め込む工程を具備し、
前記封止用シート3は、
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量200g/eq.軟化点80℃)4.0質量%と、ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH7851SS、水酸基当量203g/eq.軟化点67℃)4.3質量%と、球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB-9454、平均粒子径20μm)88.0質量%と、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート0.1%と、ポリスチレン-ポリイソブチレン系共重合体3.6%とを溶融混練して得られる混練物を、平板プレス法により形成した封止用シート3である電子部品装置5の製造方法。」

(2)甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「封止用熱硬化型接着シート」に関して、次の記載がある(以下、まとめて、「甲第1号証の記載事項」という。)。

・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に搭載されたチップ型デバイスを封止するために用いられるエポキシ樹脂組成物製の封止用熱硬化型接着シートであって、熱硬化前の80?120℃の温度範囲での粘度が5×10^(4) ?5×10^(6)Pa・sの範囲内であることを特徴とする封止用熱硬化型接着シート。
【請求項2】
上記エポキシ樹脂組成物が、下記の(A)?(E)成分を含有する請求項1記載の封止用熱硬化型接着シート。
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)エラストマー。
(D)無機質充填剤。
(E)硬化促進剤。
【請求項3】
上記(D)成分である無機質充填剤の含有量が、エポキシ樹脂組成物全体の60?80重量%の割合に設定されてなる請求項2記載の封止用熱硬化型接着シート。」

・「【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型デバイスを封止するために用いられる熱硬化型接着シートに関するものであって、詳しくは、その表面を中空とする必要があるデバイス、例えば、弾性表面波装置(SAWデバイス)、水晶デバイス、高周波デバイス、加速度センサー等の、いわゆる中空デバイスの封止に用いられる熱硬化型接着シートに関するものである。」

・「【0015】
上記フェノール樹脂(B成分)としては、上記エポキシ樹脂(A成分)との間で硬化反応を生起するものであれば特に限定するものではないが、例えば、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。そして、上記フェノール樹脂としては、水酸基当量が70?250、軟化点が50?110℃のものを用いることが好ましく、中でも、硬化反応性が高いという観点から、フェノールノボラック樹脂が好適に用いられる。」

・「【0017】
上記A成分およびB成分とともに用いられるエラストマー(C成分)は、エポキシ樹脂組成物に柔軟性および可撓性を付与するものであり、このような作用を奏するものであれば特にその構造を制限するものではないが、例えば、つぎのようなゴム質重合体があげられる。すなわち、ポリアクリル酸エステル等の各種アクリルエステル共重合体、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム等からなる重合体があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。」

・「【0019】
上記A?C成分とともに用いられる無機質充填剤(D成分)としては、特に限定されるものではなく従来公知の各種充填剤が用いられる。例えば、石英ガラス粉末、タルク、シリカ粉末(溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等)、アルミナ粉末、窒化アルミニウム、窒化珪素粉末等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、得られる硬化物の線膨張係数の低減できるという点から、上記シリカ粉末を用いることが好ましく、上記シリカ粉末の中でも溶融シリカ粉末を用いることが、高充填性および高流動性という点から特に好ましい。上記溶融シリカ粉末としては、球状溶融シリカ粉末、破砕溶融シリカ粉末があげられるが、流動性という観点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが特に好ましい。中でも、平均粒径が0.2?30μmの範囲のものを用いることが好ましく、特に好ましくは0.5?15μmの範囲のものを用いることである。なお、上記平均粒径は、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導出することができる。
【0020】
上記無機質充填剤(D成分)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の60?80重量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは65?75重量%である。すなわち、無機質充填剤(D成分)の含有量が下限値未満では、熱硬化前の前記所定範囲の温度での粘度が低くなり所望の物性を得ることが困難となる傾向がみられ、上限値を超えると、熱硬化前の前記所定範囲の温度での粘度が高くなりすぎ所望の物性を得ることが困難となる傾向がみられるからである。」

・「【0025】
本発明の封止用熱硬化型接着シートは、例えば、つぎのようにして製造することができる。まず、各配合成分を混合することによりエポキシ樹脂組成物を調製するが、各配合成分が均一に分散混合される方法であれば特に限定するものではない。そして、必要に応じて各配合成分を溶剤等に溶解しワニス塗工により製膜する。あるいは、各配合成分を直接ニーダー等で混練することにより固形樹脂を調製し、このようにして得られた固形樹脂をシート状に押し出して製膜形成してもよい。中でも、簡便に均一な厚みのシートを得ることができるという点から、上記ワニス塗工法が好適に用いられる。」

・「【0032】
本発明の封止用熱硬化型接着シートを用いての基板上に搭載されたチップ型デバイスの封止は、例えば、つぎのようにして行なわれる。すなわち、基板上の所定位置にチップ型デバイスを搭載した後、搭載したチップ型デバイスを覆うように封止用熱硬化型接着シートを配置し、所定の封止条件にて、シートを加熱硬化することによりチップ型デバイスと基板との空間を中空に保持した状態でチップ型デバイスを樹脂封止する。」

・「【0034】
このようにして得られる半導体デバイスの構成の一例について述べる。すなわち、図1に示すように、チップ型デバイス1に設けられた接続用電極部(バンプ)3と配線回路基板2に設けられた接続用電極部(図示せず)を対向させた状態で、配線回路基板2上にチップ型デバイス1が搭載されている。そして、上記配線回路基板2上に搭載されたチップ型デバイス1を覆うように、配線回路基板2上に封止樹脂層4が形成され樹脂封止されている。なお、チップ型デバイス1と配線回路基板2との間となるチップ型デバイス1の下部は、中空部分5に形成されている。」

・「【実施例】
【0037】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0038】
まず、下記に示す各成分を準備した。
【0039】
〔エポキシ樹脂a〕
ナフタレンジオール型エポキシ樹脂(東都化成社製、ESN-355)
〔エポキシ樹脂b〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)
〔エポキシ樹脂c〕
トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EPPN-501HY)
〔フェノール樹脂a〕
ノボラック型フェノール樹脂(明和化成社製、H-4)
〔フェノール樹脂b〕
ノボラック型フェノール樹脂(明和化成社製、DL-65)
〔アクリル樹脂a〕
アクリル共重合体(ナガセケムテックス社製、テイサンレジン SG-70L)
〔アクリル樹脂b〕
アクリル共重合体(ナガセケムテックス社製、テイサンレジン SG-P3)
〔硬化促進剤a〕
テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート(北興化学社製、TPP-K)
〔硬化促進剤b〕
トリフェニルホスフィン(北興化学社製、TPP)
〔シリカ粉末〕
平均粒径5.5μmの球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB-7SDC)
【0040】
〔実施例1?4、比較例1?2〕
後記の表1に示す各成分を同表に示す割合で分散混合し、これに有機溶剤(メチルエチルケトン)100重量部を加えてシート塗工用ワニスを調製した。
【0041】
つぎに、上記ワニスを厚み50μmのポリエステルA(三菱化学ポリエステル社製、MRF-50)上にコンマコーターにて塗工し乾燥させ、ついで厚み38μmのポリエステルフィルムB(三菱化学ポリエステル社製、MRX-38)にて貼り合わせることにより熱硬化型接着シートを得た。その後、ロールラミネーターを用いて上記接着シートを積層することにより、厚み400μmの熱硬化型接着シートを作製した。
【0042】
〔粘度〕
得られた熱硬化型接着シートの各粘度(熱硬化前の80℃および120℃における各粘度)を、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置ARESを用いて、剪断速度28.0(1/s)、昇温速度5℃/分の条件にて測定した。
【0043】
〔封止評価〕
得られた熱硬化型接着シートを、セラミック基板上にマトリックス状に配列搭載したSAWフィルターチップ(チップ厚み200μm、バンプ高さ30μm)上に覆うように載置し、温度100℃,圧力300kPaの条件にて1分間真空プレス(到達真空度6.65×10^(2) Pa)した。大気開放後、基板を175℃のオーブンに1時間投入することにより熱硬化性接着シートを加熱硬化させた。その後、ダイシング装置を用いてパッケージを個片化し、得られたチップの断面観察を行い、チップ下部の中空部分への樹脂の侵入の有無、ならびに、基板と熱硬化型接着シートにより形成された封止樹脂部分との密着性を観察した。そして、チップ下部の中空部分への樹脂の侵入が確認されたものを×、侵入が確認されなかったものを○として評価した。一方、密着性に関しては、密着が充分であったものを○、密着が不充分でダイシング後のチップ側面において、樹脂とセラミック基板上に隙間があったものを×として評価した。
【0044】
〔耐リフロー試験〕
さらに、各チップを260℃×10秒間×3回の半田リフロー条件下にさらし、熱硬化型接着シート(封止樹脂部分)の基板からの剥離の有無を観察した。その結果、剥離が生じなかったものを○、剥離が生じたものを×として評価した。
【0045】
〔常温保存性〕
得られた熱硬化型接着シートを20℃で6ヶ月保存した後、80℃における硬化前の粘度を、上記と同様にしてレオメトリックス社製の粘弾性測定装置ARESを用いて測定した。その結果、測定した粘度を示すとともに、その粘度が、先に測定した熱硬化前の80℃における粘度に比べて上昇率20%未満のものを○、上昇率が20%以上のもの、あるいは硬化して粘度測定が不可能となったものを×として評価した。
【0046】
上記測定・評価結果を下記の表1に併せて示す。
【0047】
【表1】



・「【図1】



(3)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「封止用エポキシ樹脂組成物シート及びこれを用いて封止した中空型デバイス」に関して、次の記載がある(以下、まとめて、「甲第3号証の記載事項」という。)。

・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、無機充填材の配合量が全エポキシ樹脂組成物中の70?90質量%であり、かつ平均粒子径が0.2?10μmである封止用エポキシ樹脂組成物を、半硬化状態のシート状樹脂層(A層)に成形したことを特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物シート。
【請求項2】
エラストマー成分を含有した、前記封止用エポキシ樹脂組成物を、半硬化状態のシート状樹脂層(A層)に成形したことを特徴とする請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物シート。
・・・(略)・・・
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物シートをもって封止されていることを特徴とする中空型デバイス。」

・「【0021】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物シートによれば、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材を必須成分とし、無機充填材の配合量が全エポキシ樹脂組成物中の70?90質量%の範囲であり、平均粒子径が0.2?10μmである封止用エポキシ樹脂組成物を、半硬化状態のシート状樹脂層(A層)に成形したので、中空型デバイスの封止を確実、容易に、歩留まりよく行うことができ、耐吸湿リフロー性に優れた封止が行える封止用エポキシ樹脂組成物シートを得ることができる。」

・「【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
本発明で用いられる必須成分としてのエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキルエポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等を挙げることができる。さらにこれらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0025】
本発明で用いられる必須成分としての硬化剤としては、ジシアンジアミド、酸無水物、ノボラック型フェノール樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラック、フェノールアラルキル樹脂等)、ナフトールアラルキル樹脂等、各種多価フェノール化合物、あるいはナフトール化合物を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。」

・「【0030】
無機充填材は、全エポキシ樹脂組成物に対して70?90質量%、好ましくは75?85質量%の範囲で配合することができる。」

・「【0067】
グリニス値(%)={1-28.26/成型後の試験片の面積}×100 ・・・(1)
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物シートは、中空部を有する中空型デバイスに好適に適用することができ、これらの中空型デバイスであれば種類を問わず適用することができる。
【0068】
このような中空型デバイスとしては、例えば、図1に示すSAWフィルター、水晶デバイス、高周波デバイス、加速度センサー等を挙げることができる。
【0069】
これら中空型デバイスに本発明の封止用エポキシ樹脂組成物シートを適用する方法としては、例えば、本発明の、シート状樹脂層(A層)単独で成型した封止用エポキシ樹脂組成物シートの場合には、基板上にマトリックス状に配列搭載した中空型デバイス上に、エポキシ樹脂組成物塗布面を下にして1枚または複数枚重ねて覆うように載せ、ラミネーターまたは真空プレスで0.1?1.0MPa、130℃で3分程度密着させる。この際、減圧、真空にして密着できればより好ましい。この状態でオーブンで170?180℃、1時間加熱し、エポキシ樹脂を硬化させて中空型デバイスを封止する。その後ダイシング装置を用いて中空型デバイスとして個片化する方法が挙げられる。」

・「【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<封止用エポキシ樹脂組成物シートの作製>
表1及び表2に示す各成分の所定量(質量%)をメチルエチルケトンに溶解、分散させ、樹脂ワニスを調製した。なお、表2に示す樹脂ワニスは、シート状樹脂層(A層)用とシート状樹脂層(B層)用のものをそれぞれ別々に調整した。
【0073】
表1に示す、実施例1?10及び比較例1?4の封止用エポキシ樹脂組成物シートは、調整した樹脂ワニスをポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に塗布して乾燥炉にて10分間加熱乾燥し、半硬化状態のシート状樹脂層(A層)単独で成形して封止用エポキシ樹脂組成物シートを作製した。
【0074】
表2に示す、実施例11?15及び比較例5?9の封止用エポキシ樹脂組成物シートは、実施例、比較例それぞれの、シート状樹脂層(A層)用とシート状樹脂層(B層)用に調整した樹脂ワニスを、ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に塗布して乾燥炉にて10分間加熱乾燥した後、成形した半硬化状態のシート状樹脂層(A層)と半硬化状態のシート状樹脂層(B層)を、実施例、比較例それぞれの組み合わせで、温度40℃、ロール圧力0.15MPaの条件でロールを用いてラミネートして成形し、封止用エポキシ樹脂組成物シートを作製した。
【0075】
また、実施例11?15及び比較例5?9の封止用エポキシ樹脂組成物シートの厚みについては、樹脂ワニスを塗布する際に塗布量を調整して、表2に示すシート状樹脂層(A層)とシート状樹脂層(B層)の厚みとした。
【0076】
配合成分としては以下のものを用いた。
(1)樹脂
エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂 大日本インキ化学社製 エピクロン840S
エポキシ樹脂2:フェノールビフェニルアラルキルエポキシ樹脂 日本化薬社製 NC3000
(2)硬化剤
硬化剤1:ジシアンジアミド 日本カーバイド社製
硬化剤2:ノボラック型フェノール樹脂 明和化成社製 DL-75
(3)硬化促進剤
2-エチル-4-メチルイミダゾール:四国化成社製 2E4MZ
(4)無機充填材
無機充填材1:球状シリカ(平均粒子径3μm)
無機充填材2:球状シリカ(平均粒子径15μm)
無機充填材3:球状シリカ(平均粒子径0.1μm)
無機充填材4:破砕シリカ(平均粒子径3μm)
無機充填材5:球状アルミナ(平均粒子径3μm)
無機充填材6:球状シリカ(平均粒子径0.2μm)
無機充填材7:球状シリカ(平均粒子径10μm)
(5)エラストマー
ブタジエン系ランダム共重合ゴム:アクリロニトリルブタジエンゴム JSR社製 XERシリーズ(重量平均分子量:20000、300000、1000000)
(6)添加剤
カップリング剤:信越化学工業社製 KBM803
<中空型デバイスの封止>
表1に示す実施例1?10及び比較例1?4の封止用エポキシ樹脂組成物シートを、80mm角のセラミック基板上にマトリックス状に配列搭載したSAWフィルターチップ(チップ厚み200μm、バンプ高さ40μm)上に、エポキシ樹脂組成物塗布面と接して覆うように載せ、真空中で加熱温度120℃、加圧力3MPaで3分間真空プレスした。その後プレス成形品を1750℃のオーブンで90分間アフターキュアを行った。その後ダイシング装置を用いてパッケージを個片化した。
【0077】
また、表2に示す実施例11?15及び比較例5?9の封止用エポキシ樹脂組成物シートを、80mm角のセラミック基板上にマトリックス状に配列搭載したSAWフィルターチップ(チップ厚み200μm、バンプ高さ40μm)上に、シート状樹脂層(A層)が下に、シート状樹脂層(B層)が上になるようにして覆うように載せ、真空中で加熱温度120℃、加圧力3MPaで3分間真空プレスした。その後プレス成形品を1750℃のオーブンで90分間アフターキュアを行った。その後ダイシング装置を用いてパッケージを個片化した。
<評価方法>
(1)チップ下部への樹脂侵入の有無
個片化した各パッケージの断面観察を行い、チップ下部の中空部分への樹脂侵入の有無を確認した。
【0078】
中空部へ樹脂の侵入が50μmを超えるものを×、50μm以下のものを○、更に30μm以下のものを◎とした。その結果を表1及び表2に示す。
(2)耐リフロー性
表1に示す実施例1?10及び比較例1?4の封止用エポキシ樹脂組成物シートを用いて個片化した各パッケージについて、85℃/85%RH/20時間の吸湿処理を行った後、260℃ピークのリフローテスト処理を行い、樹脂のセラミック基板からの剥離の有無を超音波探査装置により行った。
【0079】
剥離が生じたものを×、生じなかったものを○とした。その結果を表1に示す。
(3)20?300μm厚シートの作製
表1に示す実施例1?10及び比較例1?4の封止用エポキシ樹脂組成物シートについて、キャリア材表面に樹脂ワニスを塗布する際に、塗工装置の塗布量を調製して20?300μm厚シートを作製した。
【0080】
評価はシート表面のかすれ、すじムラ、厚みムラの有無を目視にて行った。良を○、不良を×とした。その結果を表1に示す。
(4)外観確認
表2に示す実施例11?15及び比較例5?9の封止用エポキシ樹脂組成物シートを用いて個片化した各パッケージについて、外観の状態を目視により確認した。
【0081】
個片化したパッケージを側面から観察したときに、パッケージの上面がフラットになっているものを○、フラットになっていないものを×とした。その結果を表2に示す。
・・・(略)・・・
【0082】
実施例1?10では、チップ下部への樹脂侵入がなく、耐リフロー性も良好な20?300μm厚のシートが作製可能であることが確認された。特に、エラストマー(重量平均分子量300000)と無機充填材を併用した実施例6は、さらにチップ下部への樹脂侵入が抑えられることが確認された。」

・「【図1】



(4)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、「エポキシ樹脂組成物」に関して、次の記載がある(以下、まとめて、「甲第4号証の記載事項」という。)。

・「【0005】また、金属やセラミックは本質的に非透湿であるのに対して、プラスチックは各種固有の水分拡散係数を持っており、加湿条件に曝されるとこの拡散係数に応じて吸水し、透湿していく。それ故、腕時計、電卓等の精密機械や半導体パッケージ等の電子部品、特に固体撮像素子(CCD)封止用中空パッケージ等の防水性や気密性が要求される用途にプラスチックを利用する場合は、プラスチックの透湿性が問題になることが多い。例えば直接水に接触しなくても高温多湿の環境に長時間曝された場合、プラスチック製のCCD封止用中空パッケージは、徐々に吸水、透湿し、更に気密性を保持した空間に飽和水蒸気圧から求められた飽和水蒸気量を超えた水分が存在すると、水分の凝集により結露が発生し、その装置は使用不能となってしまう。
【0006】従って、エポキシ樹脂組成物においては、透湿性の改善が課題となっている。
【0007】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、低透湿性に優れた高品質の硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂、硬化剤、無機質充填剤を主成分とし、硬化物の水分拡散係数が85℃,85%RHの加湿条件で硬化物厚みが3mmのとき1×10^(-4)cm^(2)/hr以下であるエポキシ樹脂組成物に無機系吸水剤を少なくと1重量%以上添加することにより、低透湿性で高品質の硬化物を与え、プレモールド型中空パッケージ用材料として好適なエポキシ樹脂組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
・・・(略)・・・
【0011】上記関係から、飽和吸水率及び拡散係数の少なくとも一方を低下させることにより、上記硬化物の透湿率を低下させ得ること、それにはまず、例えば前にも記したように低吸水性エポキシ樹脂、例えばナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂と低吸水性硬化剤、例えばナフタレン骨格含有フェノール樹脂、アラルキル骨格含有フェノール樹脂を使用することなどが有効であると言える。
【0012】次に、エポキシ樹脂組成物の構成成分としては、エポキシ樹脂、硬化剤の他に無機質充填剤が不可欠であるが、無機質充填剤は、硬化物の膨張係数を下げて低応力化を図ることが主な役割であるものの、基本的に吸水性がほぼゼロと考えられるため、その添加量が増えるに従って相対的に有機成分は減ることになり、吸水率も低下させ得る。よって、無機質充填剤の添加量の調製も必要と言える。」

・「【0079】
【表1】



・「【0083】表1,2の結果より、85℃,85%RH加湿雰囲気下、厚さ3mmの硬化物の水分拡散係数が1×10^(-4)cm^(2)/hr以下の硬化性エポキシ樹脂組成物に無機系吸水剤を添加したもの(実施例1?3)は、低透湿性に優れていること、更に、無機質充填剤である溶融球状シリカ含有量が増大したり(実施例4)、無機系吸水剤添加量が増大する(実施例5)と、低透湿性がさらに向上することがわかった。また、無機系吸水剤2種の併用(実施例6)も加湿雰囲気条件又はパッケージ形状によって有効であり、シリコーン系低応力剤は無添加(実施例7)の場合のほうが低透湿性が良いこと、無機系吸水剤表面を親水性シランカップリング剤で処理したものを添加する(実施例8)と、より効果的であることもわかった。」

2 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2-1発明を対比する。

(ア)甲2-1発明における「実装基板1」は、本件特許発明1における「被着体」に相当し、以下、同様に、「電子部品2」は「半導体チップ」に、「封止用シート3」は「電子部品封止用樹脂シート」に、それぞれ、相当する。

(イ)甲2-1発明における「実装基板1上に電気的に連結した電子部品2の封止に使用される封止用シート3」は、本件特許発明1における「樹脂封止型半導体装置の製造に使用され、被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを、半導体チップと被着体との間の空隙を残しつつ埋め込むための電子部品封止用樹脂シート」と、「電子部品装置の製造に使用され、被着体上に接続された半導体チップを埋め込むための電子部品封止用樹脂シート」という限りにおいて一致する。

(ウ)甲2-1発明における「ビフェニルアラルキル骨格を有するフェノール樹脂(明和化成社製、MEH7851SS、水酸基当量203g/eq.軟化点67℃)」は、本件特許発明1における「フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、及び、ビフェニルアラルキル樹脂の群から選ばれる1または2以上のフェノール樹脂」に相当し、以下、同様に「球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB-9454、平均粒子径20μm)」は「無機充填剤」に、「ポリスチレン-ポリイソブチレン系共重合体」は「エラストマー」に、それぞれ相当する。

(エ)甲2-1発明における「球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB-9454、平均粒子径20μm)88.0質量%」は、本件特許発明1における「無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70?93重量%含み」に相当する。

(オ)したがって、両者は、次の点で一致する。
「電子部品装置の製造に使用され、被着体上に接続された半導体チップを埋め込むための電子部品封止用樹脂シートであって、
無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70?93重量%含み、
さらに、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、及び、ビフェニルアラルキル樹脂の群から選ばれる1または2以上のフェノール樹脂と、エラストマーとを含む電子部品封止用樹脂シート。」

(カ)そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点1-1>
「電子部品装置の製造に使用され、被着体上に接続された半導体チップを埋め込むための電子部品封止用樹脂シート」に関して、本件特許発明1においては、「樹脂封止型半導体装置の製造に使用され、被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを、半導体チップと被着体との間の空隙を残しつつ埋め込むための電子部品封止用樹脂シート」であるのに対し、甲2-1発明においては、「実装基板1上に電気的に連結した電子部品2の封止に使用される封止用シート3」である点。

<相違点1-2>
本件特許発明1においては、「混練押出により製造されており」であるのに対し、甲2-1発明においては、「溶融混練して得られる混練物を、平板プレス法により形成した」である点。

<相違点1-3>
本件特許発明1においては、「厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m^(2)・24時間以下」であるのに対し、甲2-1発明においては、そのような特定はされていない点。

<相違点1-4>
本件特許発明1においては、「(ただし、下記の一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物を含む場合を除く。)
m(M_(a)O_(b))・n(Q_(d)O_(e))・cH_(2)O ・・・(1)
〔上記式(1)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは、周期律表のIVa,Va,VIa,VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属元素である。また、m,n,a,b,c,d,eは正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。〕」であるのに対し、甲2-1発明においては、そのような特定はされていない点。

イ 判断
(ア)相違点1-1について
甲第1号証の記載事項及び甲第3号証の記載事項からみて、「エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エラストマー、無機質充填剤及び硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物製の封止用シート」を、「被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを、半導体チップと被着体との間の空隙を残しつつ埋め込むための電子部品封止用樹脂シート」として用いることは周知(以下、「周知技術1」という。)である。
そして、甲2-1発明における「実装基板1上に電気的に連結した電子部品2の封止に使用される封止用シート3」は、その形成材料である混練物の組成から、「エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エラストマー、無機質充填剤及び硬化促進剤を含有するエポキシ樹脂組成物製の封止用シート」であることは明らかである。
したがって、甲2-1発明において、周知技術1を適用し、「被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを、半導体チップと被着体との間の空隙を残しつつ埋め込むための電子部品封止用樹脂シート」に用いるようにして、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点1-2について
a 甲第2号証に「このような混練物は、塑性加工されることにより封止用シートとして調製される。具体的には、溶融混練後の混練物を冷却することなく高温状態のままで、塑性加工することで、封止用シートが調製される。」(【0083】)及び「このような塑性加工方法としては、特に制限されず、平板プレス法、Tダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、インフレーション押出法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。」(【0084】)と記載されているように、甲第2号証には、溶剤を使用しない方法である「Tダイ押出法」、「ロール圧延法」、「ロール混練法」、「共押出法」及び「カレンダー成形法」が、「平板プレス法」と並んで記載されている。
ところで、本件特許発明1の「混練押出」について、本件特許明細書の【0051】に「具体的には、溶融混練後の混練物を冷却することなく高温状態のままで、押出成形することで、電子部品封止用樹脂シート2を形成することができる。このような押出方法としては、特に制限されず、Tダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。」と例示されており、本件特許発明1の「混練押出」には、「Tダイ押出法」、「ロール圧延法」、「ロール混練法」、「共押出法」及び「カレンダー成形法」が含まれる(なお、このことは、特許権者の平成31年3月6日提出の回答書における主張とも符合する。)。
そうすると、甲2-1発明において、甲第2号証の上記記載事項を適用し、「溶融混練して得られる混練物を、平板プレス法により形成」することに代えて、「混練押出により製造」するようにして、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

b 特許権者は、平成30年8月21日提出の意見書において、「甲第2号証の段落[0084]には、塑性加工方法が単に例示列挙されているだけであり、例示列挙されている方法のうち、どの方法が好ましいかの記載はない。特に押出法が好ましいといった記載もない。そして、実施例では、平板プレス法が記載されているところ、実施例の平板プレス法に代えて、特に好ましい理由のない押出法を採用する理由はない。」旨主張し(以下、「主張1」という。)、また、平成31年3月6日提出の回答書において、「甲2には、実施例として、「得られた混練物を、平板プレス法により、シート状に形成」しか記載されていない(段落[0107]?段落[0108])。
甲2の段落[0084]には、「このような塑性加工方法としては、特に制限されず、平板プレス法、Tダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、インフレーション押出法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。」と記載されているが、この記載は、充填剤の含有量が多い場合には採用できないような方法(例えば、インフレーション押出法)も区別することなく同等に採用可能な成形方法として記載されている。従って、あえて、実施例により実施可能であることが示されていない方法以外、すなわち、「得られた混練物を、平板プレス法により、シート状に形成」する方法以外を採用する動機付けはないと言わざるを得ない。」旨主張する(以下、「主張2」という。)。
そこで、主張1及び2について検討する。
仮に、「インフレーション押出法」が充填剤の含有量が多い場合には採用できないような方法であったとしても、甲第2号証の【0084】の「このような塑性加工方法としては、特に制限されず、平板プレス法、Tダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、インフレーション押出法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。」という記載からみて、「Tダイ押出法」、「ロール圧延法」、「ロール混練法」、「共押出法」及び「カレンダー成形法」が、「平板プレス法」と同等に採用可能な成形方法として提示されていることは明らかであり、「平板プレス法」に代えて、「平板プレス法」と同様に溶剤を使用しない方法である「Tダイ押出法」、「ロール圧延法」、「ロール混練法」、「共押出法」及び「カレンダー成形法」を採用する動機付けはあるというべきである。
したがって、特許権者の主張1及び2は採用できない。

c 特許権者は、平成30年11月13日付け(受理日:同年同月15日)の意見書において、「Tダイ押出法は、溶融樹脂をTダイのT字下側からT字状に広げてシート状に押し出す方法であるが、高粘度の溶融樹脂の場合は、Tダイの狭いT字下側部分から押し入れることはできない。そのため、平板プレス法に代えて、Tダイ押出法を採用することができない。
また、インフレーション押出法はリングダイから筒状に溶融樹脂を押し出し、冷却しながら連続的に巻き取ることにより筒状のシートとする方法であり、筒状の内部に吹き込む空気の量を調整して直径を決めるものであるが、空気の量で直径が調整できる程度の粘度の低い樹脂にのみ採用できる方法であり、高粘度の溶融樹脂の場合は、平板プレス法に代えて、インフレーション押出法を採用できない。
このように、甲第2号証の封止用シートのように、球状溶融シリカ粉末を88質量%含む場合において、「Tダイ押出法」や「インフレーション押出法」を「平板プレス法」の代替手段とすることができないのは、技術常識である。
従って、『甲第2号証には、溶剤を使用しない方法である「Tダイ押出法」や「インフレーション押出法」が、「平板プレス法」と並んで記載されていること』をもって、『「平板プレス法」に代えて、「平板プレス法」と同様に溶剤を使用しない方法である「Tダイ押出法」や「インフレーション押出法」を採用する動機付けはある』との論理付けには誤りがあると言わざるを得ない。」旨主張する(以下、「主張3」という。)。
そこで、主張3について検討する。
上記aで指摘したとおり、「Tダイ押出法」、「ロール圧延法」、「ロール混練法」、「共押出法」及び「カレンダー成形法」は、本件特許発明1における「混練押出」として例示されたものであること並びに特開2006-297701号公報(平成31年1月24日に特許異議申立人が提出した回答書に参考資料3として添付された文献である。記載内容は下記参照。)には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及び硬化促進剤に無機充填剤として球状溶融シリカを大量(【0026】によると「90重量%」である。)に混合させて作成した混合物を圧延ロールから押し出してシート状に圧延する「ロール圧延法」が記載されていることからみて、「インフレーション押出法」はともかく、「Tダイ押出法」、「ロール圧延法」、「ロール混練法」、「共押出法」及び「カレンダー成形法」を「平板プレス法」の代替手段とすることはできるといえる。
なお、特許権者は、平成31年3月6日提出の回答書において、「特開2006-297701号公報(参考資料3)は、封止用シートの製造において、混練物を圧延ロールから押し出してシート状に圧延する方法が技術常識であることを示すものではない。
参考資料3は、請求項1に記されているように、混練物を圧延ロールでシート状に圧延して、圧延物とし、これをシートという製品として提供するものではなく、その後さらに、前記圧延物を粉砕機にて粉砕して粉砕品として、前記粉砕品を圧縮成形するものである。」旨主張するが、特開2006-297701号公報の【0024】及び【0025】には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及び硬化促進剤に無機充填剤として球状溶融シリカを大量に混合させて作製した混練物を圧延ロールから押し出してシート状に圧延することが明確に記載されていることから、最終的にシートという製品として提供するものではないとしても、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及び硬化促進剤に無機充填剤として球状溶融シリカを大量に混合させて作製した混練物を圧延ロールから押し出してシート状に圧延することが可能であることは技術常識であるといえる。
したがって、特許権者の主張3は採用できない。

<特開2006-297701号公報の記載(下線は当審で付したものである。)>
・「【0024】
以下、本発明の好適な実施例について図1を用い説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
エポキシ樹脂としてエポキシ当量186、融点75℃のビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄化学株式会社製商品名ESLV-80XY)を85重量部、及びエポキシ当量375、軟化点80℃、臭素含量48重量%のビスフェノールA型ブロム化エポキシ樹脂(住友化学工業株式会社製商品名ESB-400T)を15重量部、硬化剤として水酸基当量199、軟化点80℃のビフェニル型フェノール樹脂(明和化成株式会社製商品名MEH-7851)を99重量部、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンとp-ベンゾキノンとの付加物を3.5重量部、無機充填剤として平均粒径17.5μm、比表面積3.8m^(2)/gの球状溶融シリカを1983重量部、カップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン)を4.5重量部、その他の添加剤として三酸化アンチモンを6.0重量部、カルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)を2.0重量部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA-100)を3.5重量部、それぞれを含む原材料をミキサーで混合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件で混練装置11である同方向回転二軸押出機で混練を行い、混練物16を作製した。
【0025】
前記混練物16を、温度10℃に調整した圧延ロール12でシート状に圧延して、厚み2mmの圧延物18を作製した。圧延ロール12から押し出された前記圧延物18を、メッシュ状の冷却コンベア13にて搬送し、冷風生成循環装置14で温度10℃の低温空気を生成し、冷風ダクト15を通じて風速30m/秒で冷風(空気)を前記圧延物18の上方から吹き付け、圧延物18を12℃まで冷却した。
【0026】
前記圧延物18を、粗粉砕機19などにより、比較的粗く粉砕し、さらに得られた比較的粗く粉砕された物を、搬送装置30により、搬送し、粉砕機31に投入した。比較的粗く粉砕された物を、更に温度0℃、露点温度-10℃の低温度低露点の空気中の粉砕機31にて、粉砕し、粉砕品を作製した。前記粉砕品を圧縮成形し、半導体封止用エポキシ樹脂組成物である直径14mm長さ20mmの円柱状の封止材タブレットを作製した。なお製造された半導体封止用エポキシ樹脂組成物(封止材タブレット)中の無機充填剤の含有量は、90重量%であった。」

(ウ)相違点1-3について
甲第4号証の記載事項(特に【0079】の【表1】の実施例4の欄及び【0083】)によると、エポキシ樹脂組成物中の溶融球状シリカの含有量が増大すると、エポキシ樹脂組成物の低透湿性が向上するといえる。
そして、甲2-1発明は、「球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB-9454、平均粒子径20μm)」(本件特許明細書の【0077】に記載された球状シリカと同様のものである。)を88.0質量%(本件特許明細書の【0077】に記載された球状シリカの量88部と同じ程度である。)と大量に含むものであり、また、製造方法は平板プレス法という溶剤を使用しない方法であるから、低透湿性は向上しているものといえ、本件特許発明1の透湿度の条件を満たしている蓋然性は高い。
したがって、相違点1-3は実質的な相違点であるとはいえない。

仮に、相違点1-3が実質的な相違点であるとしても、甲第4号証の記載事項によると、甲第4号証には、半導体パッケージ等の電子部品、特に固体撮像素子(CCD)封止用中空パッケージ等の防水性や気密性が要求される用途にプラスチックを利用する場合に透湿度を低くするという技術的課題があり、その解決手段として無機質充填剤である溶融球状シリカ含有量を増大させることが記載されているから、甲2-1発明において、甲第4号証の記載事項を適用して、透湿度を低くするように、溶融球状シリカの含有量を増大させて、相違点1-3に係る本件特許発明1の透湿度の条件を満たすようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)相違点1-4について
甲2-1発明が、一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物を含んでいないことは、甲第2号証の記載事項から明らかである。
したがって、相違点1-4は実質的な相違点であるとはいえない。

(オ)効果について
a 本件特許明細書の【0006】の「本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、樹脂封止型半導体装置の信頼性を向上させることが可能な電子部品封止用樹脂シート、及び、信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を提供することにある。」及び【0010】の「前記構成によれば、無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70?93重量%含んでおり、厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m^(2)・24時間以下であるため、外部から電子部品にまで水が到達しにくい。その結果、樹脂封止型半導体装置の信頼性を向上させることができる。」という記載によると、本件特許発明1の奏する効果は、「樹脂封止型半導体装置の信頼性を向上させることができる」ことである。なお、本件特許明細書の【0011】ないし【0019】の記載によると、本件特許発明2ないし5に係る発明の効果も同様である。
そして、甲第4号証の記載事項(【0005】、【0012】及び【0083】)によると、溶融球状シリカの含有量が増大すると、吸水率が低下し、低透湿性が向上することで、半導体パッケージ等の電子部品、特に固体撮像素子(CCD)封止用中空パッケージ等の防水性や気密性が要求される用途にプラスチックを利用する場合に、徐々に吸水、透湿し、更に気密性を保持した空間に飽和水蒸気圧から求められた飽和水蒸気量を超えた水分が存在すると、水分の凝集により結露が発生し、その装置は使用不能となってしまうことが改善されるものである。すなわち、溶融球状シリカの含有量が増大すると、信頼性が向上するといえる。
したがって、本件特許発明1の奏する効果は、甲2-1発明、甲第1ないし4号証の記載事項及び周知技術1から当業者が予測可能なものであり、格別顕著なものとはいえない。

b 特許権者は、平成30年8月21日提出の意見書において、「本件特許発明1は、混練押出により製造されているため、ボイド(気泡)等の少ない均一なシートとすることができ、かつ、低透湿性を実現することが可能となるという、甲2-1発明にはない有利な効果を奏する(本件特許明細書の段落[0012])。」旨主張する(以下、「主張4」という。)。
そこで、主張4について検討する。
本件特許明細書において、混練押出により製造されていない参考例1と比べて、低透湿性を実現していることを確認した実施例1ないし6は、いずれも、混練押出の後に真空プレスを行うものであり(本件特許明細書の【0078】、【0086】及び【0087】を参照。)、混練押出だけで、ボイド(気泡)等の少ない均一なシートとすることができること及び低透湿性を実現できることは確認されていない。
また、他に、混練押出だけで、ボイド(気泡)等の少ない均一なシートとすることができること及び低透湿性を実現することができることを確認した実施例もない。
さらに、ベント孔のような材料中の揮発分やホッパーから巻き込まれた空気を除去する機構を使用しない一般的な混練押出だけで、ボイド(気泡)等を少なくすることができるという技術常識もない。
したがって、「ボイド(気泡)等の少ない均一なシートとすることができ、かつ、低透湿性を実現することが可能となる」という効果は、混練押出の後に真空プレスを行うことが特定されていない本件特許発明1の効果であるとはいえない。
よって、特許権者の主張4は採用できない。

(カ)まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲2-1発明、甲第1ないし4号証の記載事項及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件特許発明2について
請求項2において、本件特許発明1に追加された発明特定事項は、上記(1)イ(ウ)で検討したことと同様に、甲2-1発明が有している蓋然性が高い。
仮に、そうでないとしても、甲2-1発明において、甲第4号証の記載事項を適用して、透湿度を低くするように、溶融球状シリカの含有量を増大させて、本件特許発明2の透湿度の条件を満たすようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、本件特許発明2の奏する効果も格別顕著なものとはいえない。

したがって、本件特許発明2は、甲2-1発明、甲第1ないし4号証の記載事項及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件特許発明3について
ア 対比
本件特許発明3と甲2-2発明を対比する。

(ア)まず、本件特許発明3と甲2-2発明との間には、本件特許発明1と甲2-1発明との間と同様の相当関係が成り立つ。

(イ)また、甲2-2発明における「電子部品装置5」は、本件特許発明3における「樹脂封止型半導体装置」に相当する。

(ウ)したがって、両者は、次の点で一致する。
「被着体と、
前記被着体に接続された半導体チップと、
前記半導体チップを封止する電子部品封止用樹脂シートと
を備え、
前記電子部品封止用樹脂シートは、
無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70?93重量%含み、さらに、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、及び、ビフェニルアラルキル樹脂の群から選ばれる1または2以上のフェノール樹脂と、エラストマーとを含む樹脂封止型半導体装置。」

(エ)そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点3-1>
「前記被着体に接続された半導体チップ」に関して、本件特許発明3においては、「前記被着体にフリップチップ接続された半導体チップ」であり、「前記被着体と前記半導体チップとの間には、空隙が形成されている」のに対し、甲2-2発明においては、「前記実装基板1に電気的に連結した電子部品2」である点。

<相違点3-2>
本件特許発明3においては、「電子部品封止用樹脂シート」が「混練押出により製造され」たものであるのに対し、甲2-2発明においては、「封止用シート3」が「溶融混練して得られる混練物を、平板プレス法により形成した」ものである点。

<相違点3-3>
本件特許発明3においては、「電子部品封止用樹脂シート」の「厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m^(2)・24時間以下」であるのに対し、甲2-2発明においては、そのような特定はされていない点。

<相違点3-4>
本件特許発明3においては、「(ただし、前記電子部品封止用樹脂シートは、下記の一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物を含む場合を除く。)
m(M_(a)O_(b))・n(Q_(d)O_(e))・cH_(2)O ・・・(1)
〔上記式(1)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは、周期律表のIVa,Va,VIa,VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属元素である。また、m,n,a,b,c,d,eは正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。〕」であるのに対し、甲2-2発明においては、そのような特定はされていない点。

イ 判断
(ア)相違点3-1について
甲第1号証の記載事項及び甲第3号証の記載事項からみて、「被着体と半導体チップとの間には、空隙が形成されている」構造の「被着体にフリップチップ接続された半導体チップ」は周知(以下、「周知技術2」という。)であるから、甲2-2発明において、周知技術2を適用し、「電子部品2」を「被着体と半導体チップとの間には、空隙が形成されている」構造の「被着体にフリップチップ接続された半導体チップ」として、相違点3-1に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点3-2ないし3-4について
相違点3-2ないし3-4は、相違点1-2ないし1-4と実質的に同じ相違点であるから、上記(1)イ(イ)ないし(エ)と同様である。

(ウ)効果について
本件特許発明3の奏する効果は、上記(1)イ(オ)と同様に、甲2-2発明、甲第1ないし4号証の記載事項及び周知技術2から当業者が予測可能なものであり、格別顕著なものとはいえない。

(エ)まとめ
したがって、本件特許発明3は、甲2-2発明、甲第1ないし4号証の記載事項及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1又は2を有する樹脂封止型半導体装置に関する発明であるが、本件特許発明1を有する樹脂封止型半導体装置の発明は、実質的には、本件特許発明3と同じものであり、本件特許発明2を有する樹脂封止型半導体装置の発明は、実質的には、本件特許発明3に請求項2に記載された事項を追加したものである。
したがって、本件特許発明4のうち、本件特許発明1を有する樹脂封止型半導体装置の発明は、本件特許発明3と同様に、甲2-2発明、甲第1ないし4号証の記載事項及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件特許発明4のうち、本件特許発明2を有する樹脂封止型半導体装置の発明は、請求項2に記載された事項を甲2-2発明が有している蓋然性が高いことから、甲2-2発明、甲第1ないし4号証の記載事項及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
仮に、請求項2に記載された事項を甲2-2発明が有していないとしても、甲2-2発明において、甲第4号証の記載事項を適用して、透湿度を低くするように、溶融球状シリカの含有量を増大させて、本件特許発明2の透湿度の条件を満たすようにすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、本件特許発明4の奏する効果も格別顕著なものとはいえないから、甲2-2発明、甲第1ないし4号証の記載事項及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件特許発明5について
ア 対比
本件特許発明5と甲2-3発明を対比する。

(ア)まず、本件特許発明5と甲2-3発明との間には、本件特許発明1と甲2-1発明との間と同様の相当関係が成り立つ。

(イ)また、本件特許発明5と甲2-3発明との間には、本件特許発明3と甲2-2発明との間と同様の相当関係も成り立つ。

(ウ)したがって、両者は、次の点で一致する。
「樹脂封止型半導体装置の製造方法であって、
被着体上に接続された半導体チップを覆うように、半導体チップ側から電子部品封止用樹脂シートを積層する工程であって、半導体チップを埋め込む工程を具備し、
前記電子部品封止用樹脂シートは、
無機充填剤を電子部品封止用樹脂シート全体に対して、70?93重量%含み、さらに、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、及び、ビフェニルアラルキル樹脂の群から選ばれる1または2以上のフェノール樹脂と、エラストマーとを含む樹脂封止型半導体装置の製造方法。」

(エ)そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点5-1>
「被着体上に接続された半導体チップを覆うように、半導体チップ側から電子部品封止用樹脂シートを積層する工程であって、半導体チップを埋め込む工程を具備し」に関して、本件特許発明5においては、「被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを覆うように、半導体チップ側から電子部品封止用樹脂シートを積層する工程であって、半導体チップと被着体との間の空隙を残しつつ埋め込む工程を具備し」であるのに対し、甲2-3発明においては、「実装基板1上に電気的に連結した電子部品2を覆うように、電子部品2側から封止用シート3を積層する工程であって、電子部品2を埋め込む工程を具備し」である点。

<相違点5-2>
本件特許発明5においては、「電子部品封止用樹脂シート」が「混練押出により製造され」たものであるのに対し、甲2-3発明においては、「封止用シート3」が「溶融混練して得られる混練物を、平板プレス法により形成」されたものである点。

<相違点5-3>
本件特許発明5においては、「電子部品封止用樹脂シート」の「厚さ250μmにした際の熱硬化後の透湿度が、温度85℃、湿度85%、168時間の条件下において、300g/m^(2)・24時間以下」であるのに対し、甲2-3発明においては、そのような特定はされていない点。

<相違点5-4>
本件特許発明5においては、「(ただし、前記電子部品封止用樹脂シートは、下記の一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物を含む場合を除く。)
m(M_(a)O_(b))・n(Q_(d)O_(e))・cH_(2)O ・・・(1)
〔上記式(1)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは、周期律表のIVa,Va,VIa,VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属元素である。また、m,n,a,b,c,d,eは正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。〕」であるのに対し、甲2-3発明においては、そのような特定はされていない点。

イ 判断
(ア)相違点5-1について
甲第1号証の記載事項及び甲第3号証の記載事項からみて、「被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを覆うように、半導体チップ側から電子部品封止用樹脂シートを積層する工程であって、半導体チップと被着体との間の空隙を残しつつ埋め込む工程」は周知(以下、「周知技術3」という。)であるから、甲2-3発明において、周知技術3を適用し、「実装基板1上に電気的に連結した電子部品2を覆うように、電子部品2側から封止用シート3を積層する工程であって、電子部品2を埋め込む工程」を「被着体上にフリップチップ接続された半導体チップを覆うように、半導体チップ側から電子部品封止用樹脂シートを積層する工程であって、半導体チップと被着体との間の空隙を残しつつ埋め込む工程」として、相違点5-1に係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点5-2ないし5-4について
相違点5-2ないし5-4は、相違点1-2ないし1-4と実質的に同じ相違点であるから、上記(1)イ(イ)ないし(エ)と同様である。

(ウ)効果について
本件特許発明5の奏する効果は、上記(1)イ(オ)と同様に、甲2-3発明、甲第1ないし4号証の記載事項及び周知技術3から当業者が予測可能なものであり、格別顕著なものとはいえない。

(エ)まとめ
したがって、本件特許発明5は、甲2-3発明、甲第1ないし4号証の記載事項及び周知技術3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 当審の判断のむすび
したがって、本件特許発明1ないし5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は同法第113条第2号に該当する。
よって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、取り消すべきものである。

第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-04-24 
出願番号 特願2013-26935(P2013-26935)
審決分類 P 1 651・ 121- Z (C08J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 福井 弘子平井 裕彰加賀 直人芦原 ゆりか  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 加藤 友也
渕野 留香
登録日 2017-10-20 
登録番号 特許第6228734号(P6228734)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 電子部品封止用樹脂シート、樹脂封止型半導体装置、及び、樹脂封止型半導体装置の製造方法  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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