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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
管理番号 1353214
異議申立番号 異議2019-700330  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-23 
確定日 2019-07-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第6410199号発明「対象体選別装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6410199号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6410199号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成30年5月11日に出願され、平成30年10月5日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成31年4月23日に特許異議申立人蓑さくらは、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6410199号の請求項1?5の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
可視光を発する第1の光源部と、赤外光を発する第2の光源部と、紫外光を発する第3の光源部と、を有し、移動中の対象体に向かって可視光と赤外光と紫外光とのうちの少なくとも1種類の光を照射する光源手段と、
前記第1の光源部から発せられ前記対象体に照射された可視光を検出する第1の検出部と、前記第2の光源部から発せられ前記対象体に照射された赤外光を検出する第2の検出部と、前記第3の光源部から発せられた紫外光に基づいて前記対象体から発せられる蛍光を検出する第3の検出部と、を有する検出手段と、
前記第1の検出部の検出結果に基づいて前記対象体の透過率又は反射率が適切であるか否かを判定する第1適否判定部と、前記第2の検出部の検出結果に基づいて前記対象体が異物であるか否かを判定する第2適否判定部と、前記第3の検出部の検出結果に基づいて前記対象体に菌が発生しているか否かを判定する第3適否判定部と、を有し、前記第1適否判定部、前記第2適否判定部及び前記第3適否判定部の判定結果のうちの少なくとも1つの判定結果に基づいて、前記移動中の対象体の良否を決定する良否決定手段と、
不良であると決定された前記対象体の移動方向を変更する移動方向変更手段と、
前記第1の光源部と前記第2の光源部と前記第3の光源部とのうちの少なくとも1つの光源部を選択し、選択された光源部の点灯、消灯、発光強度を制御する発光制御手段と、を備える対象体選別装置。
【請求項2】
可視光を発する第1の光源部と、赤外光を発する第2の光源部と、紫外光を発する第3の光源部と、を有し、移動中の対象体に向かって可視光と赤外光と紫外光とのうちの少なくとも1種類の光を照射する光源手段と、
前記第1の光源部から発せられ前記対象体に照射された可視光を検出する第1の検出部と、前記第2の光源部から発せられ前記対象体に照射された赤外光を検出する第2の検出部と、前記第3の光源部から発せられた紫外光に基づいて前記対象体から発せられる蛍光を検出する第3の検出部と、を有する検出手段と、
前記第1の検出部の検出結果に基づいて前記対象体の透過率又は反射率が適切であるか否かを判定する第1適否判定部と、前記第2の検出部の検出結果に基づいて前記対象体が異物であるか否かを判定する第2適否判定部と、前記第3の検出部の検出結果に基づいて前記対象体に菌が発生しているか否かを判定する第3適否判定部と、を有し、前記第1適否判定部、前記第2適否判定部及び前記第3適否判定部の判定結果のうちの少なくとも1つの判定結果に基づいて、前記移動中の対象体の良否を決定する良否決定手段と、
不良であると決定された前記対象体の移動方向を変更する移動方向変更手段と、を備え
前記移動方向変更手段は、
移動する対象体に向かって流体を排出する流体排出装置と、
前記第1適否判定部の判定結果、前記第2適否判定部の判定結果及び前記第3適否判定部の判定結果の少なくとも1つの判定結果に応じて、前記流体排出装置からの流体の排出のタイミングを決定する排出タイミング決定部と、を有する対象体選別装置。
【請求項3】
前記第1の光源部は、独立に発光を制御可能な複数の色の光源により構成される白色光源であり、
前記発光制御手段は、前記複数の色の光源の点灯、消灯、発光強度を互いに独立に制御する請求項1に記載の対象体選別装置。
【請求項4】
前記複数の色は、赤色、青色、緑色である請求項3に記載の対象体選別装置。
【請求項5】
前記第3の検出部は、前記第1の光源部から発せられ前記対象体に照射された可視光を検出し、
前記良否決定手段は、前記第3の検出部による可視光の検出結果に基づいて、前記対象体の反射率又は透過率が適切であるか否かを判定する第4適否判定部と、を有する請求項1又は2に記載の対象体選別装置。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人蓑さくらは、以下の甲1?12号証を提出して、以下の様に主張する。
請求項1に係る発明は、甲1号証に記載された発明に甲2号証又は甲3及び4号証に記載された技術事項を適用して、甲10?12号証に記載された発明に甲2号証又は甲3及び4号証に記載された技術事項を適用して、甲9号証に記載された発明に甲2号証又は甲3及び4号証に記載された技術事項を適用して、当業者が容易に想到できたものである。
請求項2に係る発明は、甲1号証に記載された発明であるか、甲1号証に記載された発明に甲7又は8号証に記載された技術事項を適用して、甲10?12号証に記載された発明に甲1、7又は8号証に記載された技術事項を適用して、甲9号証に記載された発明に甲1、7又は8号証に記載された技術事項を適用して、当業者が容易に想到できたものである。
請求項3及び4に係る発明は、甲1号証に記載された発明に甲2及び3号証に記載された技術事項又は甲3及び4号証に記載された技術事項を適用して、甲10?12号証に記載された発明に甲1?3号証に記載された技術事項又は甲3及び4号証に記載された技術事項を適用して、当業者が容易に想到できたものである。
請求項5に係る発明は、甲1号証に記載された発明に甲2、3及び9号証に記載された技術事項を適用して、甲4号証に記載された発明に甲9号証に記載された技術事項を適用して、甲10?12号証に記載された発明に甲2、3及び9号証に記載された技術事項を適用して、当業者が容易に想到できたものである。
よって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、請求項1?5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?5に係る特許を取り消すべきものである。

甲1号証:登録実用新案第3058196号公報
甲2号証:金子農機AK-G7200取扱説明書(2011年8月1日発行)
甲3号証:特開平10-323630号公報
甲4号証:特開2008-302314号公報
甲5号証:特開平11-337495号公報
甲6号証:特開2009-240876号公報
甲7号証:特許第3079932号公報
甲8号証:特開平11-179292号公報
甲9号証:特開2017-189749号公報
甲10号証:特開2002-286647号公報
甲11号証:特開平04-296978号公報
甲12号証:特開2013-164338号公報

第4 各甲号証の記載
1 甲1号証
(1)甲1号証に記載された事項
甲1号証には、以下の点が記載されている。(下線は、当審にて付した。以下同様。)

(甲1a)「 【0009】
【実施例】
図2は、本考案の選別装置の光電選別部の概略構成図である。選別装置の光電選別部以外の構成すなわちシュートによる被選別物を供給するための構成及び異物検出信号を受けて空気銃によって排除する構成等は、従来の装置と変わらないので、説明を簡素化して明確化すべく省略している。
【0010】
本考案においては、選別対象物(精米)1を照射するように、2つの光源2,2’及び3,3’が選別対象物の通路の左右に設けられている。光源2,2’は、1450nm付近のいわゆる近赤外光を射出する光源であり、光源3,3’は、360nm付近の紫外光を射出するブラックライト等の光源である。
【0011】
一方、選別対象物の通路の背後には、従来の選別装置と同様にバックグラウンド4が設けられている。更に、バックグラウンドに400nmないし500nmの波長域の光を照射するための蛍光灯等の光源5及びバックグラウンドに近赤外光を照射するための電球等の光源6が設けられている。光源5及び6の光度は、バックグラウンドによる400nm?500nmの光及び近赤外光の反射率が良品である精米による蛍光光量及び近赤外光の反射率と等しくなるように予め設定される。
【0012】
選別対象物及びバックグラウンドによって反射された光は蛍光光用検出素子7及び近赤外光用8によって検知される。蛍光光用検出素子7は蛍光光を検知するように成されている。すなわち、蛍光光用検出素子7の前方には集光レンズ9及び400nmないし500nmの波長のみを透過するフィルタ10が配設されており、従って、400nmないし500nmの波長域の光のみが蛍光光用検出素子7に到達する。蛍光光用検出素子7は、この波長域に感度を有する素子である。一方、近赤外光用検出素子8は近赤外光を検知するように成されている。すなわち、近赤外光用検出素子8の前方には集光レンズ11及び近赤外光(例えば、1450nm)の波長のみを透過するフィルタ12が配設されており、従って、近赤外の波長域の光のみが近赤外光用検出素子8に到達する。近赤外光用検出素
子8は、この波長域に感度を有する素子である。
【0013】
蛍光光用検出素子7の出力は比較器13に供給され、予め設定された基準レベル1と比較されて、HighかLowの信号を出力する。一方、近赤外光用検出素子8の出力は比較器14に供給され、予め設定された基準レベル2と比較されて、HighかLowの信号を出力する。
【0014】
以上のような構成において、良品である精米が投下された場合には、検出素子7及び8は異常を検知しない。これに対して、精米と同色のプラスチックや石等の異物が投下されると、これらは近赤外波長域において精米と異なる波長特性を有するので、近赤外光用素子8によって異常が検知される。近赤外光用素子8によって異常が検知されると、異物検知信号が発せられ、この異物検知信号に応じて空気銃が作動せしめられてこれらの異物がはじき飛ばされて選別排除される。
【0015】
一方、精米と同色のシリカゲルや磁器等の異物が投下されると、これらは近赤外波長域において精米とほぼ等しい波長特性を有するので、近赤外光用素子8によっては異常が検知されない。しかしながら、360nm近辺の紫外光が照射された場合に、精米は蛍光反応を示して400nmないし500nmの光を発するのに対して、シリカゲルや磁器はこのような蛍光反応を示さない。従って、シリカゲルや磁器等の異物が投下されると、蛍光光用素子7によって異常が検知される。蛍光光用素子7によって異常が検知されると、異物検知信号が発せられ、この異物検知信号に応じて空気銃が作動せしめられてこれらの異物がはじき飛ばされて選別排除される。
【0016】
上記以外のゴミ等の一般的な異物は、当然に近赤外光波長特性も蛍光光波長特性も精米とは異なるため、蛍光光用検出素子7及び赤外光用検出素子8のいずれの検出素子によっても異常が検知され、選別排除される。
【0017】
【考案の効果】
以上に述べたように、本考案の選別装置によれば、選別対象物と色差がある通常の異物はもちろんのこと、透明なガラスやプラスチック等の如き色差がないものが選別排除できる他、シリカゲルや磁器のように色差がなく且つ赤外域での分光特性が似通った異物も選別排除することができ、ほぼ全ての異物の排除が可能となり、極めて精度の高い選別を行うことができる。」

(2)甲1号証に記載された発明
ア 上記(甲1a)において、「蛍光光用検出素子7」、「蛍光光用素子7」と、また、「近赤外光用検出素子8」、「近赤外光用8」、「近赤外光用素子8」などと記載されているが、それぞれ、同一の構成を表すものであると認められるから、「蛍光光用検出素子7」及び「近赤外光用検出素子8」と記載を統一する。

イ すると、上記(甲1a)より、甲1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

「選別装置は、選別対象物(精米)1を照射するように、2つの光源2,2’及び3,3’が選別対象物の通路の左右に設けられ、
光源2,2’は、1450nm付近のいわゆる近赤外光を射出する光源であり、
光源3,3’は、360nm付近の紫外光を射出するブラックライト等の光源であり、
選別対象物の通路の背後には、バックグラウンド4が設けられ、
バックグラウンドに400nmないし500nmの波長域の光を照射するための蛍光灯等の光源5が設けられ、
選別対象物によって反射された光は蛍光光用検出素子7及び近赤外光用検出素子8によって検知され、
蛍光光用検出素子7の出力は比較器13に供給され、予め設定された基準レベル1と比較されて、HighかLowの信号を出力し、
近赤外光用検出素子8の出力は比較器14に供給され、予め設定された基準レベル2と比較されて、HighかLowの信号を出力し、
精米と同色のプラスチックや石等の異物が投下されると、これらは近赤外波長域において精米と異なる波長特性を有するので、近赤外光用検出素子8によって異常が検知され、
近赤外光用検出素子8によって異常が検知されると、異物検知信号が発せられ、この異物検知信号に応じて空気銃が作動せしめられてこれらの異物がはじき飛ばされて選別排除され、
精米と同色のシリカゲルや磁器等の異物が投下されると、
360nm近辺の紫外光が照射された場合に、精米は蛍光反応を示して400nmないし500nmの光を発するのに対して、シリカゲルや磁器はこのような蛍光反応を示さないことから、蛍光光用検出素子7によって異常が検知され、
蛍光光用検出素子7によって異常が検知されると、異物検知信号が発せられ、この異物検知信号に応じて空気銃が作動せしめられてこれらの異物がはじき飛ばされて選別排除される
選別装置」

2 甲2号証に記載された事項
甲2号証には、以下の事項が記載されている。

(甲2a)「操作パネル内部
前側LED照明
選別室を前側から照らすLED照明です。
※Dタイプの場合、タッチパネルでの切り替えにより、青色LEDと緑色LEDを切り替えて使うことができます。通常、白米の選別では青色LEDを、玄米の選別では緑色LEDを使用します。Tタイプの場合は、それに加えて異物除去用に赤外LED照明も備わっており、タッチパネルでの切り替えより、【青色LED+赤外LED】又は【緑色LED+赤外LED】のいずれかの組み合わせでの使用となります。
※選別モードにより、前側の青色LED(緑色LED)は消灯して使用する場合(シラタモード、ウルチモード)や、後側の照明より暗くして使用する場合(ハイパーモード)があります。」(13頁1-10行)

3 甲3号証に記載された事項
甲3号証には以下の事項が記載されている。

(甲3a)「【0001】
【発明の属する技術分野】被選別物に特定波長のレ-ザ-光を照射して得られる反射又は透過信号により被選別物を区分けする色彩選別機に関する。」

(甲3b)「【0013】受光センサ-が複数の光源の波長に対応できるもの、例えば可視光域全体に感度領域をもつ受光センサ-と赤外光域全体に感度領域を持つ受光センサ-の2種が備えてあれば、制御手段では、異なる波長の複数の光源(例えば可視光:赤色、緑色、青色 赤外光:近赤外光の各光源)を順番にその点灯を切り換えて被選別物に照射する。また受光センサ-側は、可視光と近赤外光においては2種の受光センサ-を切り換えると共に、受光センサ-の出力を各光源の切換に対応して、例えば赤色光源を照射した時に得られた一方の受光センサ-の受光信号であると認識する、あるいは近赤外光を照射した時に得られた他方の受光センサ-の受光信号であると認識することにより、2種の受光センサ-で各色光源を照射して得られる受光信号を区別して認識し、あるいは近赤外光を照射して得られる受光信号を区別して認識して、被選別物を可視光域で三色による選別と近赤外光による選別が可能となり、多くの受光センサ-やフィルタ-を必要としない。この場合の光源は、それぞれの波長域が極めて小さいか、光源の波長域に重複域が無いものである。この構成であると、従来のように光源の強さによって検出位置を分離するような構成とすることはなく、光源を順次点灯して切り換えて使用するので、異なる光量の光源が他の受光センサ-の邪魔をするようなことがなく、しかも同じ視点で観察できるので検出に誤差を生じることもない。」

(甲3c)「【0018】流下する穀物のうち良品の穀物は選別装置11のエジェクタ-10に噴射されないので、良品口12を介して搬送装置13により機外に送りだされる。また流下する穀物のうち不良品は、前述のように制御装置により信号が出力されエジェクタ-10が作動して、穀物の不良品は良品口12には入らず搬送装置14により機外に送り出されるか、あるいは再度選別のためタンク部3に投入される。」

4 甲4号証に記載された事項
甲4号証には以下の事項が記載されている。

(甲4a)「【0001】
本発明は、原料(精白米)に混入する不良品(不良米粒)や異物を光学的手段によって選別し、除去する米粒選別機に関する。」

(甲4b)「【0025】
なお、本発明において前記第1波長の光照射部9aと第2波長の光照射部9bとは、前述のように異なる色の光(異なる波長領域)を照射できるようにすればよく、上記実施例のように緑色光と赤色光の組合せ以外に、420nm?520nmの青色光と組み合わせるようにしてもよい。前記第1波長の光照射部9aと第2波長の光照射部9bの光量調整については、後述する。」

(甲4c)「【0030】
前記各電磁弁は前記エジェクタバルブ駆動回路25(図5)と接続し、該エジェクタバルブ駆動回路25からの噴風信号を受けて瞬間的に弁の開閉を行う。これにより、空気銃のような高圧エアーが瞬間的に噴風されて不良粒が落下軌跡Gから除去されて選別される。
図1,2において符号25aは背景板であり、CCDカメラ8の光軸11上で落下軌跡に対しCCDカメラ8と反対側に対向してそれぞれ配置され、その表面は原料米粒K中の良品と同程度の反射率を備える。」

(甲4d)「【0042】
なお、前記第1波長の光照射部9aと第2波長の光照射部9bの光量は、前記図11に示したように引き算処理により、第1の米粒画像と第2の米粒画像の間で、胚芽部分の画像、肌ずれ部分の画像及び米粒輪郭が互いに打ち消されてできるだけ画像に残らないようにして、亀裂画像だけが残るように予め調整しておく必要がある。万一、胚芽部分の画像、肌ずれ部分の画像及び米粒輪郭の画像が薄っすら残った場合には、例えば、亀裂画像の光量と区別する閾値によって2値化処理を行い、亀裂画像だけを明確にする。」

5 甲5号証に記載された事項
甲5号証には以下の事項が記載されている。

(甲5a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流下させる穀粒から着色粒、小石、ガラス片などの異物の選別・除去と、精品と乳白色粒(いわゆる「しらた米」)との選別・除去を同時に行うことのできる穀粒色彩選別方法及びその装置に関する。」

(甲5b)「【0017】光学検出部1は、選別精度を向上するために複数個設けることが望ましく、本実施形態では、流下軌跡Lを挟んで2個の光学検出部1a,1bを設置している。光学検出部1a,1bには、レンズ筒を備えた受光センサー4a,4bと、受光センサー4a,4bから流下軌跡Lを挟んだ対向位置に設けたバックグランド5a,5bと、所定の検出範囲の穀粒を照明する照明手段6a?6fとを備えている。そして、この照明手段6は、分光エネルギー分布が可視光域と近赤外域とを有する複数個の光源が用いられる。例えば、本実施形態では光学検出部1a側に設ける照明手段として、可視光域を有する蛍光管6a,6bと、近赤外域を有するハロゲン電球6cとを設け、蛍光管6bは穀粒とバックグランドとの照射を兼用とするため、バックグランド5b近傍に設けるとよい。照光学検出部1b側に設ける照明手段として、可視光域を有する蛍光管6d,6eと、近赤外域を有するハロゲン電球6fとを設け、蛍光管6eは穀粒とバックグランドとの照射を兼用とするため、バックグランド5a近傍に設けるとよい。」

(甲5c)「【0025】次に、上記実施形態における作用を説明する。操作パネル等に設けたしらた米除去ボタン19を押さない場合、しらた米設定回路16は作動せず、着色粒や小石の選別除去及び良品と同色もしくは透明な異物を選別除去が行われる。例えば、光学検出手段1a,1bの流下軌跡L上を着色粒や小石など色彩の異なる異物が流下すると、可視光域に高い感度を有する受光素子が異物を感知して、選別・除去判別回路17に信号が送られる。選別・除去判別回路17では、記憶手段18からの任意のしきい値と比較され、異物と判断されると、エジェクタードライブ23に除去信号が送られる。エジェクター手段3から高圧空気が噴射されると、着色粒や小石が受樋15外に吹き飛ばされて除去される。
【0026】同様に良品と同色若しくは透明の異物(例えば、ガラス片)が流下すると、近赤外域に高い感度を有する受光素子が異物を感知して、選別・除去判別回路17に信号が送られる。そして、異物と判断されると、受樋15外に除去されることになる。
【0027】穀粒中から着色粒や小石の選別除去及び良品と同色もしくは透明な異物を選別除去を行い、更にしらた米を選別除去する場合は、操作パネル等に設けたしらた米除去ボタン19を押す。これにより、しらた米設定回路16が作動し、照明手段6及び遮蔽手段11はしらた米選別のために設定変更が行われる。すなわち、全て点灯していた照明手段6a?6fのうち、流下軌跡L上方の蛍光管6aだけが消灯されるのである。そして、しらた米除去用の遮蔽手段11が作動して、流下軌跡L上方で点灯している蛍光管6bをカバー体12により覆い、流下軌跡Lへの照射が遮断され、バックグランド5bに可視光が照射されることになる。」

(甲5d)「【0029】そして、照明手段6d?6fが点灯し、バックグランド5bが照明されていることから、着色粒や小石が流下軌跡L上を流下すると、受光センサー4bの可視光域に高い感度を有する受光素子が異物を感知して流下軌跡Lから除去される。また、良品と同色もしくは透明な異物が流下軌跡L上を流下すると、受光センサー4a,4bの近赤外域に高い感度を有する受光素子が異物を感知して流下軌跡Lから除去される。
【0030】なお、異物の混入しない精白米からしらた米だけを選別することも可能で、このときは、照明手段6a?6fのうち、光学検出部1a,1bのいづれか一方側にある蛍光管(図1では蛍光管6a,6b)を消灯するようにすればよい。」

6 甲6号証に記載された事項
甲6号証には以下の事項が記載されている。

(甲6a)「【0001】
本発明は、玄米や精白米などの原料米粒中に含まれる不良品(着色粒や胴割粒など)及び異物を光学検出手段で判別し、選別する米粒選別機に関するものである。」

(甲6b)「【0030】
さらに、前記CPU21には、前記第1照射部10(照射LED10a,10b)の点灯と前記第2照射部11(照射LED11a)の点灯とを交互点灯切り換えするために信号を出力するタイミング発生回路27(光源点灯切換手段)を接続し、該タイミング発生回路27は、I/O28を介して前記第1照射部10及び第2照射部11の各LED電源回路29,30に接続してある。また、前記CPU21は、I/O28を介し、前記近赤外光照射部12(照射LED12a)及び照射LED17のLED電源回路31に接続し、前記高圧空気噴風手段19における各電磁弁(図示せず)に対して選別信号(弁を開閉させる信号)を出力するエジェクタバルブ駆動回路32に接続してある。」

7 甲7号証に記載された事項
甲7号証には以下の事項が記載されている。

(甲7a)「【0001】
【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は、穀類、豆類等に混入する異物又は不良品を光学的手段を用いて選別除去する穀粒色彩選別装置に関する。」

(甲7b)「【0037】穀粒の流下速度は前記粒検出回路37及び速度検出回路35により上述の処理により算出される。そして、この穀粒の流下速度は通常一定値であるが、穀粒流下路に連続して被選別物が供給されて、穀粒案内手段の摩擦抵抗又は空気抵抗等により穀粒の流下速度に変化が生じる場合がある。この時、速度検出回路35は駆動遅れ時間変更回路39に出力して、該駆動遅れ時間変更回路39が穀粒の流下速度に適したエジェクターの駆動遅れ時間を演算する。そして、この駆動遅れ時間はエジェクター作動回路36に入力される。」

8 甲8号証に記載された事項
甲8号証には以下の事項が記載されている。

(甲8a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、米や麦、その他の穀粒中の不良品(着色粒子や、ガラスや石などの異物)を選別する粒状物色彩選別機に関するものである。」

(甲8b)「【0025】図3に、可視光センサ-12a,12bが検出した光量に対応する各検出信号(電圧値)S1,S2,S3を示している。前記検出信号判定部16は、これらS1,S2,S3の検出信号がしきい値よりも大きいため、これらを不良品(着色粒子)と判定し、N1,N2,N3の不良品信号を出力する。そして、不良品と判定された検出信号の大きさとして前記検出信号S1,S2,S3の各幅L1,L2,L3を判定し、該各幅L1,L2,L3の値を前記噴射時間制御部19及び噴射遅延制御部18にそれぞれ出力する。前記噴射時間制御部19及び噴射遅延制御部18には、前記検出信号の幅の値に応じた噴射時間及び噴射遅延時間とがそれぞれ記憶設定されている。そして、前記噴射時間制御部19及び噴射遅延制御部18は前記検出信号判定部16から送られた検出信号の幅の値に応じた噴射時間と噴射遅延時間とを自動選択し、噴射ノズル手段を作動させるドライブ回路(図示せず)に信号(T1,T2,T3,F1,F2,F3)を出力する。そして、噴射ノズル手段4は、前記信号を受けて所定の噴射遅延時間と噴射時間とで作動する。」

9 甲9号証
(1)甲9号証に記載された事項
甲9号証には以下の事項が記載されている。

(甲9a)「【0001】
本発明は物品選別装置に関し、詳しくは判定手段が判断した品質および位置に基づいて搬送手段から所要の物品を排出する排出手段を備えた物品選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果菜等の物品を搬送する搬送手段と、搬送手段上の物品を撮影する撮影手段と、上記撮影手段が撮影した画像に基づいて物品の品質および位置を認識する判定手段と、上記判定手段が判断した品質および位置に基づいて上記搬送手段から所要の物品を排出する排出手段とを備えた物品選別装置が知られている(特許文献1)。
この特許文献1の物品選別装置では、上記判定手段が撮影された画像から物品の外形を認識してその等級を判定するとともに、認識した外形から当該物品を取り上げるための取り上げ位置(ピックポイント)を認識するようになっている。」

(甲9b)「【0011】
上記撮影手段5は上記搬送手段4の上方に設けられており、従来公知のCCDカメラを用いることができる。また上記撮影手段5に隣接して可視波長領域の光を照射する白色LED15と、紫外波長領域の光を照射する紫外線LED16とが設けられている。
上記撮影手段5は図2に示すように搬送手段4によって搬送される果実1を撮影する撮影範囲を有しており、搬送方向に直交する方向おいては上記搬送手段4の幅全体を撮影し、搬送方向においては上記ブレーキ板14の設けられた回転区間Aおよび、その下流側に隣接した非回転区間Bの一部を撮影するようになっている。
上記白色LED15および紫外線LED16は例えば100msecの間隔で交互に発光し、撮影手段5はこの可視光が照射された果実1の画像と、紫外光が照射された果実1の画像とを交互に撮影して、撮影した画像を判定手段6に送信するようになっている。
これにより上記搬送手段4を搬送される果実1は、上記撮影手段5の撮影範囲を搬送される間に、可視光および紫外光のそれぞれが照射された状態で複数回撮影され、上記回転区間Aでは回転することによりその全周が撮影され、一方上記非回転区間Bでは回転しない状態で撮影されるようになっている。
なお、上記撮影手段5としてはCMOSカメラを用いることも可能であり、また紫外線LED16については、これに代えて近赤外線LEDと白色LEDとを組み合わせたり、紫外線LED、近赤外線LED、白色LEDを組み合わせて用いることも可能である。」

(甲9b)「【0013】
次に判定手段6は、上記白色LED15が照射されて撮影された果実1の画像から、果実1における傷の有無や発色具合を判定するとともに、当該果実1が格外果であるか否かを判定する。
上記果実1の傷の有無については従来公知の判定方法を用いることが可能であり、果実1が回転区間Aを搬送される間に当該果実1の全周が撮影手段5によって撮影されることから、判定手段6は各果実1について傷の有無や発色の程度を確実に認識することができる。
格外果であるか否かについては、果実1の平面視画像における直径に基づいて認識することができ、果実1が回転することで各方向からの直径が測定されるため、そのうちの一枚でもその直径が所要の寸法に満たないもしくは超えた場合には、当該果実1を格外果として判定する。
また格外果であるか否かについては、その他にも、果実1に形成された傷の大きさや個数、白斑などの色抜けの程度に基づいて判定することができ、果実1が回転することで各方向からこれらの判定を行うことができる。
【0014】
次に判定手段6は、上記紫外線LED16を照射して撮影された果実1の画像から、果実1における腐敗部分の有無を判定する。
紫外光を照射して果実1の腐敗の有無を認識することについては、従来公知であるため詳細な説明は省略するが、果実1が回転区間Aを搬送されることで当該果実1の全周が撮影手段5によって撮影されることから、判定手段6は各果実1について腐敗の有無を確実に認識することが可能となっている。
そして判定手段6は、上記可視光の照射された果実1にかかる傷の有無と、上記紫外光の照射された果実1にかかる腐敗の有無とについて、傷もしくは腐敗のいずれか一方でも認識された場合には、これを不良果として判定する。
【0015】
上記第1、第2ロボット7、8は、従来公知の所謂パラレルリンク型ロボットとなっており、上部に設けられた基部より突出する複数のアーム7a、8aと、複数のアーム7a、8aの先端に設けられた吸着部7b、8bとから構成され、これら第1、第2ロボット7、8の作業範囲内にはそれぞれ回収ボックス17、18が設けられている。
そして、上流側の第1ロボット7は搬送手段4を搬送される果実1のうち、上記傷や腐敗部分のある不良果を上記回収ボックス17に排出し、下流側の第2ロボット8は上記格外果を回収ボックス18に排出するようになっている。
上記吸着部7b、8bは図示しない負圧発生手段に接続されており、上記果実1を上方から吸着保持するようになっており、このとき果実1の中心位置の上面を吸着保持することで、これを安定して保持することができる。
上記第1、第2ロボット7、8の作業範囲は上記撮影手段5による撮影範囲の下流側に設けられており、また第1、第2ロボット7、8の作業範囲を通過する搬送手段4は上記ブレーキ板14の設けられていない非回転区間Bとなっている。
このような構成により、上記第1、第2ロボット7、8の作業範囲では果実1が回転しない状態で搬送され、上記吸着部7b、8bによって回転しない状態の果実1を保持することが可能であり、その際上記判定手段6が認識した果実1の中心位置で吸着保持することから、これを安定して保持することができる。
なお上記第1、第2ロボット7、8については、パラレルリンク型ロボットの他、スカラー型ロボットや多関節型ロボットを用いることが可能であり、また上記吸着部7b、8bを用いて果実1を吸着保持する構成の他、例えば吸引ノズルによって対象とする果実1を吸引する構成とし、吸引した果実1を吸引ノズルに連続して設けたパイプを介して上記回収ボックス17、18に回収するようにしてもよい。」

(2)甲9号証に記載された発明
上記(甲9a)及び(甲9b)より、甲9号証には、以下の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されている。

「 判定手段が判断した品質および位置に基づいて搬送手段から所要の果菜等の物品を排出する排出手段を備えた物品選別装置であって、
撮影手段5は上記搬送手段4の上方に設けられ、
上記撮影手段5に隣接して可視波長領域の光を照射する白色LED15と、紫外波長領域の光を照射する紫外線LED16とが設けられ、
上記白色LED15および紫外線LED16は例えば100msecの間隔で交互に発光し、撮影手段5はこの可視光が照射された果実1の画像と、紫外光が照射された果実1の画像とを交互に撮影して、撮影した画像を判定手段6に送信するようになっており、
判定手段6は、上記白色LED15が照射されて撮影された果実1の画像から、果実1における傷の有無や発色具合を判定し、
判定手段6は、上記紫外線LED16を照射して撮影された果実1の画像から、果実1における腐敗部分の有無を判定し、
判定手段6は、上記可視光の照射された果実1にかかる傷の有無と、上記紫外光の照射された果実1にかかる腐敗の有無とについて、傷もしくは腐敗のいずれか一方でも認識された場合には、これを不良果として判定し、
第1ロボット7は搬送手段4を搬送される果実1のうち、上記傷や腐敗部分のある不良果を上記回収ボックス17に排出する
物品選別装置。」

10 甲10号証
(1)甲10号証に記載された事項
甲10号証には以下の事項が記載されている。

(甲10a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は農作物を搬送しつつ、この農作物の傷み具合を判定する農作物の搬送処理装置に関する。」

(甲10b)「【0008】表皮の油包から滲出したエッセンシャルオイルに対して紫外線が照射されると蛍光を発する。またエッセンシャルオイルのみでなく表皮の腐り部分に繁殖するカビなどに紫外線が照射されると、フラボノイドやフェノール化合物が蛍光を発する。したがって上記の構成とすることで、農作物の等級毎の仕分けと同時に傷や腐りが生じた農作物を自動的に選別することができる。」

(甲10c)「【0016】紫外線照射ランプ5は、暗箱3上部に配置されており、ベルトコンベヤ2の上に置かれた判定対象となる農作物に対して紫外線を照射する。一方、CCDカメラを備えた蛍光受光部6は紫外線照射ランプ5近傍に設置されている。この蛍光受光部6は、所定の視野を備え、紫外線が照射された農作物の表皮の腐った部分あるいは傷の部分が発する蛍光を検出し、これを画像処理することで不良品を選別する。」

(甲10d)「【0021】画像処理の結果、蛍光の量が多い場合には、暗箱3の吊り戸3bを押し上げながら出てきた農作物を、プッシャー7などがベルトコンベア2上から取り除く。また、蛍光の量が少ない場合には農作物は傷んでいないので良品として良品箱内に入れる。」

(2)甲10号証に記載された発明
上記(甲10a)?(甲10d)より、甲10号証には、以下の発明(以下、「甲10発明」という。)が記載されている。

「表皮の腐り部分に繁殖するカビなどに紫外線が照射されると、フラボノイドやフェノール化合物が蛍光を発することから、
紫外線照射ランプ5は、暗箱3上部に配置されており、ベルトコンベヤ2の上に置かれた判定対象となる農作物に対して紫外線を照射し、
CCDカメラを備えた蛍光受光部6を紫外線照射ランプ5近傍に設置し、
蛍光受光部6は、所定の視野を備え、
紫外線が照射された農作物の表皮の腐った部分あるいは傷の部分が発する蛍光を検出し、
これを画像処理することで不良品を選別し
画像処理の結果、蛍光の量が多い場合には、暗箱3の吊り戸3bを押し上げながら出てきた農作物を、プッシャー7などがベルトコンベア2上から取り除き、
また、蛍光の量が少ない場合には農作物は傷んでいないので良品として良品箱内に入れる農作物の搬送処理装置。」

11 甲11号証
(1)甲11号証に記載された事項
甲11号証には以下の事項が記載されている。

(甲11a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、選果施設において青果物の形状や表面色を光学的方法により検出し、これに基づいて青果物の熟度、形状、傷等の程度を自動的に判定して等級別に選別する選果装置に関するものである。」

(甲11b)「【0012】しかしてカップ1に青果物A,A…を一個ずつ載置し、無端ベルトの回動により移送しつつ、蛍光管6,7によりカップ1左右から青果物Aを照射し、カメラ3により上面像を撮影する。電圧信号処理回路4はカメラ3の映像から青果物A表面の色の波長を電圧値に変換して出力し、CPU5はこの電圧値に適宜の演算を加え、演算結果により各青果物を予め設定した基準に従って分類し、この分類に応じて仕分け部8,9,10,11のいずれかにおいてカップ転動ソレノイド信号を発してカップ1を転動させ青果物A,A…を排出することにより仕分けする。」

(2)甲11に記載された発明
上記(甲11a)及び(甲11b)より、甲11号証には、以下の発明(以下、「甲11発明」という。)が記載されている。

「青果物の形状や表面色を光学的方法により検出し、これに基づいて青果物の熟度、形状、傷等の程度を自動的に判定して等級別に選別する選果装置において、
蛍光管6,7によりカップ1左右から青果物Aを照射し、
カメラ3により上面像を撮影し、
電圧信号処理回路4はカメラ3の映像から青果物A表面の色の波長を電圧値に変換して出力し、
CPU5はこの電圧値に適宜の演算を加え、
演算結果により各青果物を予め設定した基準に従って分類し、
この分類に応じて仕分け部8,9,10,11のいずれかにおいてカップ転動ソレノイド信号を発してカップ1を転動させ青果物Aを排出することにより仕分けする
選果装置」

12 甲12号証に記載された事項
甲12号証には以下の事項が記載されている。

(甲12a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、植物または植物加工品の異物検出方法に関する。」

(甲12b)「【0015】
照射手段10は、一定の波長帯域を有する測定光を、ベルトコンベア2上における所定の照射領域A1へ向けて照射する。照射手段10が照射する測定光の波長範囲は、検査対象物3や、検出対象となる検査対象物3に付着した異物に応じて適宜選択される。測定光としては、波長範囲が1000nm?2500nmの光を含む近赤外光が好適に用いられ、この波長範囲に含まれて波長が互いに異なる複数の光が測定に用いられる。なお、本実施形態では、ハロゲンランプ11を含む照射手段10について説明する。」

第5 当審の判断
1 請求項1に係る発明について
(1)甲1発明との対比・判断
ア 対比
請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「選別装置」は、本件発明の「対象体選別装置」に相当する。

(イ)甲1発明の「1450nm付近のいわゆる近赤外光を射出する」「光源2,2’」及び「360nm付近の紫外光を射出するブラックライト等の」「光源3,3’」は、それぞれ、本件発明の「赤外光を発する第2の光源部」及び「紫外光を発する第3の光源部」に相当する。また、甲1発明の「400nmないし500nmの波長域の光を照射するための蛍光灯等の光源5」は、本件発明の「可視光を発する第1の光源部」に相当する。

(ウ)甲1発明の「選別対象物によって反射された光」を「検知」する「蛍光光用検出素子7及び近赤外光用検出素子8」のうち「近赤外光用検出素子8」は、「近赤外波長域」における「異常」を「検知」するものであり、また、「蛍光光用検出素子7」は、「360nm近辺の紫外光が照射された場合に、精米は蛍光反応を示して」「発する」「400nmないし500nmの光」における「異常」を「検知」するものであるから、甲1発明の「近赤外波長域」における「異常」を「検知」する「近赤外光用検出素子8」及び「360nm近辺の紫外光が照射された場合に、精米は蛍光反応を示して」「発する」「400nmないし500nmの光」における「異常」を「検知」する「蛍光光用検出素子7」は、それぞれ、本件発明の「前記第2の光源部から発せられ前記対象体に照射された赤外光を検出する第2の検出部」及び「前記第3の光源部から発せられた紫外光に基づいて前記対象体から発せられる蛍光を検出する第3の検出部」に相当する。そして、甲1発明の「選別装置」と、本件発明の「対象体選別装置」とは、「前記第2の光源部から発せられ前記対象体に照射された赤外光を検出する第2の検出部と、前記第3の光源部から発せられた紫外光に基づいて前記対象体から発せられる蛍光を検出する第3の検出部と、を有する検出手段」を備えている点で共通する。

(エ)甲1発明の「近赤外光用検出素子8の出力」は、本件発明の「前記第2の検出部の検出結果」に相当する。そして、甲1発明は、「精米と同色のプラスチックや石等の異物が投下されると、これらは近赤外波長域において精米と異なる波長特性を有するので、近赤外光用素子8によって異常が検知され」るから、「比較器14に供給され」た「近赤外光用検出素子8の出力」と、「予め設定された基準レベル2と比較されて」「出力」される「HighかLowの信号」は、「選別対象物」が「精米と同色のプラスチックや石等の異物」か否かを判定した結果の信号であるといえるから、甲1発明の「比較器14」は、本件発明の「前記第2の検出部の検出結果に基づいて前記対象体が異物であるか否かを判定する第2適否判定部と」に相当する。

(オ)甲1発明の「蛍光光用検出素子7の出力」は、本件発明の「前記第3の検出部の検出結果」に相当する。そして、甲1発明は、「精米と同色のシリカゲルや磁器等の異物が投下されると、360nm近辺の紫外光が照射された場合に、精米は蛍光反応を示して400nmないし500nmの光を発するのに対して、シリカゲルや磁器はこのような蛍光反応を示さないことから、蛍光光用素子7によって異常が検知され」るから、「比較器13に供給された」「蛍光光用検出素子7の出力」と、「予め設定された基準レベル1と比較されて」「出力」される「HighかLowの信号」は、「選別対象物」が「精米と同色のシリカゲルや磁器等の異物」か否かを判定した結果の信号であるといえる。
すると、甲1発明の「比較器13」と、本件発明の「第3適否判定部」とは、「前記第3の検出部の検出結果に基づいて前記対象体を判定する」点で共通する。

(カ)甲1発明は、「近赤外光用検出素子8によって異常が検知される」場合及び「蛍光光用素子7によって異常が検知される」場合のいずれの場合においても、「異物検知信号が発せられ、この異物検知信号に応じて空気銃が作動せしめられてこれらの異物がはじき飛ばされて選別排除され」るから、甲1発明の「選別装置」と、本件発明の「対象体選別装置」とは、「前記第2適否判定部及び前記第3適否判定部の判定結果のうちの少なくとも1つの判定結果に基づいて、前記移動中の対象体の良否を決定する良否決定手段と、不良であると決定された前記対象体の移動方向を変更する移動方向変更手段と」を備えている点で共通する。

(キ)以上、(ア)?(カ)より、本件発明と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。

(一致点)「可視光を発する第1の光源部と、赤外光を発する第2の光源部と、紫外光を発する第3の光源部と、を有し、移動中の対象体に向かって可視光と赤外光と紫外光とのうちの少なくとも1種類の光を照射する光源手段と、
前記第2の光源部から発せられ前記対象体に照射された赤外光を検出する第2の検出部と、前記第3の光源部から発せられた紫外光に基づいて前記対象体から発せられる蛍光を検出する第3の検出部と、を有する検出手段と、
前記第2の検出部の検出結果に基づいて前記対象体が異物であるか否かを判定する第2適否判定部と、前記第3の検出部の検出結果に基づいて前記対象体を判定する第3適否判定部と、を有し、前記第2適否判定部及び前記第3適否判定部の判定結果のうちの少なくとも1つの判定結果に基づいて、前記移動中の対象体の良否を決定する良否決定手段と、
不良であると決定された前記対象体の移動方向を変更する移動方向変更手段と、
を備える対象体選別装置。」

(相違点1)前記第3の検出部の検出結果に基づいて前記対象体を判定する第3適否判定部が、本件発明は、前記対象体に菌が発生しているか否かを判定するものであるのに対し、甲1発明は、「選別対象物」が「精米と同色のシリカゲルや磁器等の異物」か否かを判定するものである点。

(相違点2)「検出手段」及び「良否決定手段」が、本件発明は、「検出手段」に「前記第1の光源部から発せられ前記対象体に照射された可視光を検出する第1の検出部」を有し、「良否決定手段」に「前記第1の検出部の検出結果に基づいて前記対象体の透過率又は反射率が適切であるか否かを判定する第1適否判定部」を有し、「良否決定手段」は、良否決定に使用する判定結果の一つとして、「前記第1適否判定部」の判定結果も有しているのに対し、甲1発明の「400nmないし500nmの波長域の光を照射するための蛍光灯等の光源5」から発せられた光は、「選別対象物」に照射されておらず、結果として、「光源5」から発せられ「選別対象物」に照射された光はないから、その光を検出する検出部及び検出結果を良否判定に使用する判定部は有していない点。

(相違点3)本件発明は「前記第1の光源部と前記第2の光源部と前記第3の光源部とのうちの少なくとも1つの光源部を選択し、選択された光源部の点灯、消灯、発光強度を制御する発光制御手段」を有しているのに対し、甲1発明はそのような特定がなされていない点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
対象体に紫外光を照射し検出された蛍光光の検出結果により対象体に菌が発生しているか否かを判定する点は、甲2?8、11及び12号証には記載されていないが、甲9号証には、「次に判定手段6は、上記紫外線LED16を照射して撮影された果実1の画像から、果実1における腐敗部分の有無を判定する」((甲9b)参照)旨記載され、甲10号証には、「表皮の腐り部分に繁殖するカビなどに紫外線が照射されると、フラボノイドやフェノール化合物が蛍光を発する」((甲10b)参照)旨記載されている。
まず、甲9号証に記載されている事項について検討する。甲9号証は紫外線で腐敗部分の有無を判定するものであって、菌が発生しているか否かを判定するものではない。仮に、腐敗部分の有無の判定が、菌が発生しているか否かを判定するものであるといえたとしても、甲1発明の「選別対象体」は精米であって、甲9号証は果実であるところ、精米は果実と同じように腐敗するものではないから、果実において紫外線の照射により菌が発生しているか否かが検出できたとしても、精米においても同様に検出できるとはいえないから、甲9号証の「上記紫外線LED16を照射して撮影された果実1の画像から、果実1における腐敗部分の有無を判定する」「判定手段6」を、精米を選別対象物とする甲1発明に適用することはできない。
次に、甲10号証に記載されている事項について検討する。甲10号証には、紫外線を照射することにより、「表皮の腐り部分に繁殖するカビなど」を検出できる旨記載されているが、甲10号証も甲9号証と同じく、選別対象物が、表皮を有する果実などの農作物であるから、上記甲9号証と同様の理由により、精米を選別対象物とする甲1発明に適用することはできない。
すると、本件発明は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2?12に記載された技術事項から当業者が容易に想到し得るものではない。

(2)甲10?12号証に記載された発明との対比・判断
本件発明と、甲10、11発明及び甲12号証に記載された発明とを対比する。
ア 対比
(ア)甲10発明の「紫外線照射ランプ5」、「判定対象となる農作物」及び「CCDカメラを備えた蛍光受光部6」は、それぞれ、本件発明の「紫外光を発する第3の光源部」、「対象物」及び「前記第3の光源部から発せられた紫外光に基づいて前記対象体から発せられる蛍光を検出する第3の検出部」「を有する検出手段」に相当する。

(イ)甲10発明は、「表皮の腐り部分に繁殖するカビなどに紫外線が照射されると、フラボノイドやフェノール化合物が蛍光を発することから」、「紫外線が照射された農作物の表皮の腐った部分あるいは傷の部分が発する蛍光を検出し、これを画像処理することで不良品を選別し」ているから、甲10発明の「搬送処理装置」は、本件発明の「対象体選別装置」に相当し、甲10発明の「搬送処理装置」と、本件発明の「対象体選別装置」とは、「前記第3の検出部の検出結果に基づいて前記対象体に菌が発生しているか否かを判定する第3適否判定部」「を有し」、「前記第3適否判定部の判定結果」「に基づいて、前記移動中の対象体の良否を決定する良否決定手段」を有している点で一致する。

(ウ)甲10発明は、「画像処理の結果、蛍光の量が多い場合には、暗箱3の吊り戸3bを押し上げながら出てきた農作物を、プッシャー7などがベルトコンベア2上から取り除き、また、蛍光の量が少ない場合には農作物は傷んでいないので良品として良品箱内に入れる」から、甲10発明の「搬送処理装置」と、本件発明の「対象体選別装置」とは、「不良であると決定された前記対象体の移動方向を変更する移動方向変更手段」を備えている点で一致する。

(エ)甲11発明の「青果物」、「蛍光管6,7」及び「カメラ3」は、それぞれ、本件発明の「対象体」、「可視光を発する第1の光源部」及び「前記第1の光源部から発せられ前記対象体に照射された可視光を検出する第1の検出部」「を有する検出手段」に相当する。

(オ)甲11発明は、「電圧信号処理回路4はカメラ3の映像から青果物A表面の色の波長を電圧値に変換して出力し、CPU5はこの電圧値に適宜の演算を加え、演算結果により各青果物を予め設定した基準に従って分類」するから、甲11発明の「CPU5」は、本件発明の「第1適否判定部」に相当し、両者は、「前記第1の検出部の検出結果に基づいて前記対象体が適切であるか否かを判定する」点で共通する。そして、甲11発明は、「この分類に応じて仕分け部8,9,10,11のいずれかにおいてカップ転動ソレノイド信号を発してカップ1を転動させ青果物Aを排出することにより仕分けする」ものであり、「この分類に応じて」「仕分けする」ことは、「青果物A」の良否を決定しているといえるから、甲11発明と本件発明とは「前記第1適否判定部」「の判定結果に基づいて、前記移動中の対象体の良否を決定する良否決定手段」及び「不良であると決定された前記対象体の移動方向を変更する移動方向変更手段」を備えている点で一致する。

(カ)甲12号証に記載された発明の「検査対象物3」は.本件発明の「対象体」に相当する。甲12号証に記載された発明の「照射手段10」は、「波長範囲が1000nm?2500nmの光を含む近赤外光」を用いているからを、本件発明の「前記第2の光源部から発せられ前記対象体に照射された赤外光を検出する第2の検出部」に相当する。

(キ)甲12号証に記載された発明は、「照射手段10は、一定の波長帯域を有する測定光を、ベルトコンベア2上における所定の照射領域A1へ向けて照射する。照射手段10が照射する測定光の波長範囲は、検査対象物3や、検出対象となる検査対象物3に付着した異物に応じて適宜選択される」から、甲12号証に記載された発明は、「照射手段10」により、照射された光を検出する検出部、及び、「検出対象となる検査対象物3に付着した異物」があるか否かを判定する判定部を備えていることは明らかであるから、甲12号証に記載された発明と、本件発明とは、前記第2の光源部から発せられ前記対象体に照射された赤外光を検出する第2の検出部」を備えている点で一致し、「前記第2の検出部の検出結果に基づいて前記対象体を判定する第2適否判定部」を備えている点で共通する。

(ク)以上、(ア)?(キ)より、甲10発明、甲11発明及び甲12号証に記載された発明を組み合わせられるとして、これらの発明から想到される発明(以下、「甲10-12発明」という。)と、本件発明との間には、以下の一致点及び相違点がある。

(一致点)「可視光を発する第1の光源部と、赤外光を発する第2の光源部と、紫外光を発する第3の光源部と、を有し、移動中の対象体に向かって可視光と赤外光と紫外光とのうちの少なくとも1種類の光を照射する光源手段と、
前記第1の光源部から発せられ前記対象体に照射された可視光を検出する第1の検出部と、前記第2の光源部から発せられ前記対象体に照射された赤外光を検出する第2の検出部と、前記第3の光源部から発せられた紫外光に基づいて前記対象体から発せられる蛍光を検出する第3の検出部と、を有する検出手段と、
前記第1の検出部の検出結果に基づいて前記対象体が適切であるか否かを判定する第1適否判定部と、前記第2の検出部の検出結果に基づいて前記対象体を判定する第2適否判定部と、前記第3の検出部の検出結果に基づいて前記対象体に菌が発生しているか否かを判定する第3適否判定部と、を有し、前記第1適否判定部、前記第2適否判定部及び前記第3適否判定部の判定結果のうちの少なくとも1つの判定結果に基づいて、前記移動中の対象体の良否を決定する良否決定手段と、
不良であると決定された前記対象体の移動方向を変更する移動方向変更手段と
を備える対象体選別装置。」

(相違点4)前記第1の検出部の検出結果に基づいて前記対象体が適切であるか否かを判定する第1適否判定部が、本件発明は、「前記対象体の透過率又は反射率が適切であるか否かを判定する」ものであるのに対し、甲10-12発明は、「電圧信号処理回路4はカメラ3の映像から青果物A表面の色の波長を電圧値に変換して出力し、CPU5はこの電圧値に適宜の演算を加え、演算結果により各青果物を予め設定した基準に従って分類し」ているものであって、「青果物A」の透過率又は反射率を見ているものではない点。

(相違点5)前記第2の検出部の検出結果に基づいて前記対象体を判定する第2適否判定部が、本件発明は「前記対象体が異物であるか否かを判定」しているのに対し、甲10-12発明は、「検出対象となる検査対象物3に付着した異物」があるか否かを判定している点。

(相違点6)本件発明は「前記第1の光源部と前記第2の光源部と前記第3の光源部とのうちの少なくとも1つの光源部を選択し、選択された光源部の点灯、消灯、発光強度を制御する発光制御手段」を有しているのに対し、甲10-12発明には、そのような特定がなされていない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点5について検討する。
甲10-12発明は、そもそも「野菜や果物等の植物又は植物加工品である」「検出対象となる検査対象物3に付着した異物」があるか否かを判定するものであるから、甲10-12発明を「検出対象となる検査対象物3」が異物であるか否かを判定する構成とする動機付けはない。
すると、本件発明は、他の相違点について検討するまでもなく、甲10-12発明より、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

(3)甲9発明との対比・判断
本件発明と甲9発明とを対比する。
上記(1)イで検討したとおり、甲9号証は紫外線で腐敗部分の有無を判定するものであって、菌が発生しているか否かを判定するものではない。
仮に、腐敗部分の有無の判定が、菌が発生しているか否かを判定するものであるして検討すると、甲9発明は、「白色LED15および紫外線LED16」により「可視波長領域の光」と、「紫外波長領域の光」を照射し、「判定手段6」は、「上記白色LED15が照射されて撮影された果実1の画像から、果実1における傷の有無や発色具合を判定し」、「上記紫外線LED16を照射して撮影された果実1の画像から、果実1における腐敗部分の有無を判定し」、「上記可視光の照射された果実1にかかる傷の有無と、上記紫外光の照射された果実1にかかる腐敗の有無とについて、傷もしくは腐敗のいずれか一方でも認識された場合には、これを不良果として判定し」、「第1ロボット7は搬送手段4を搬送される果実1のうち、上記傷や腐敗部分のある不良果を上記回収ボックス17に排出する」ものであるから、甲9発明には、本件発明の「赤外光を発する第2の光源部と」、「前記第2の光源部から発せられ前記対象体に照射された赤外光を検出する第2の検出部と」、「前記第2の検出部の検出結果に基づいて前記対象体が異物であるか否かを判定する第2適否判定部」が特定されていない。そして、甲9発明の選別される物品は「果実1」であって、甲9発明の選別される物品が異物となることはないから、甲9発明の「判定手段6」が、選別される物品が異物であるか否かを判定する構成とする動機付けはない。
すると、本件発明は、他の相違点について検討するまでもなく、甲9発明より、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

(4)特許異議申立人蓑さくらの主張について
特許異議申立人蓑さくらは、「(紫外光に基づいて)対象体に菌が発生しているか否かを判定する」点については、甲10号証に記載されている如く、当業者には周知技術であるから、「(紫外光に基づいて)対象体に菌が発生しているか否かを判定する」点については甲1号証に実質的に記載されている旨主張する。しかしながら、甲1発明は、近赤外波長域の光を照射することによっても区別できない異物を検出するために紫外波長域の光を使用しているものであって、菌の発生を検出をするものではないから、かかる主張には理由がない。

2 請求項2?5に係る発明について
請求項2に係る発明は、本件発明の「前記第1の光源部と前記第2の光源部と前記第3の光源部とのうちの少なくとも1つの光源部を選択し、選択された光源部の点灯、消灯、発光強度を制御する発光制御手段」を備えるという技術的事項を削除し、さらに「前記移動方向変更手段は、移動する対象体に向かって流体を排出する流体排出装置と、前記第1適否判定部の判定結果、前記第2適否判定部の判定結果及び前記第3適否判定部の判定結果の少なくとも1つの判定結果に応じて、前記流体排出装置からの流体の排出のタイミングを決定する排出タイミング決定部と、を有する」という技術的事項を追加したものである。また、請求項3に係る発明は、本件発明に対して、さらに「前記第1の光源部は、独立に発光を制御可能な複数の色の光源により構成される白色光源であり、前記発光制御手段は、前記複数の色の光源の点灯、消灯、発光強度を互いに独立に制御する」という技術的事項を、請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明に対して、さらに「前記複数の色は、赤色、青色、緑色である」という技術的事項を、そして、請求項5に係る発明は、本件発明又は請求項2係る発明に対して、さらに「前記第3の検出部は、前記第1の光源部から発せられ前記対象体に照射された可視光を検出し、前記良否決定手段は、前記第3の検出部による可視光の検出結果に基づいて、前記対象体の反射率又は透過率が適切であるか否かを判定する第4適否判定部と、を有する」という技術的事項を、それぞれ追加したものである。
よって、請求項2に係る発明と甲1発明との間には上記1(1)アに示したとおりの相違点があるから、請求項2に係る発明は、甲1号証に記載された発明であるとはいえず、また、上記1(1)イに示した理由と同様の理由により、甲1号証に記載された発明に甲7又は8号証に記載された技術事項を適用して、甲10?12号証に記載された発明に甲1、7又は8号証に記載された技術事項を適用して、甲9号証に記載された発明に甲1、7又は8号証に記載された技術事項を適用して、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。
そして、請求項3及び4に係る発明は、甲1号証に記載された発明に甲2及び3号証に記載された技術事項又は甲3及び4号証に記載された技術事項を適用して、甲10?12号証に記載された発明に甲1?3号証に記載された技術事項又は甲3及び4号証に記載された技術事項を適用して、当業者が容易に想到できたものであるはいえず、また、請求項5に係る発明は、甲1号証に記載された発明に甲2、3及び9号証に記載された技術事項を適用して、甲4号証に記載された発明に甲9号証に記載された技術事項を適用して、甲10?12号証に記載された発明に甲2、3及び9号証に記載された技術事項を適用して、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

3 小括
以上のとおり、請求項2に係る発明は、甲1発明であるとはいえず、また、請求項1?5に係る発明は、甲1発明、甲10?12号証に記載された発明、甲9発明及び甲2?8に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項1?5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるともいえない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-07-05 
出願番号 特願2018-92162(P2018-92162)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01N)
P 1 651・ 113- Y (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 越柴 洋哉  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 渡戸 正義
福島 浩司
登録日 2018-10-05 
登録番号 特許第6410199号(P6410199)
権利者 アクティブ販売株式会社
発明の名称 対象体選別装置  

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