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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1353448
審判番号 不服2018-11997  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-07 
確定日 2019-07-30 
事件の表示 特願2014- 89755号「部品実装方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月24日出願公開、特開2015-211055号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成26年4月24日の出願であって、平成29年12月15日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年6月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月7日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1及び2」という。)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は次のとおりのものである。
「【請求項1】
部品を収納したポケットが形成されたキャリアテープをテープフィーダによってピッチ送りし、部品取り出し位置にピッチ送りされた前記部品を整定時間後に吸着ノズルによって吸着保持して基板に実装する部品実装方法であって、
前記吸着ノズルが部品を正常に吸着保持していない吸着ミスが1回若しくは所定回数以上連続して検出された場合に実行される吸着ミス対処処理を実行する吸着ミス対処工程を備え、
前記吸着ミス対処工程は、
前記キャリアテープをピッチ送りするとともに、ピッチ送り後に前記整定時間が経過した前記ポケットを前記部品取り出し位置に移動させた撮像手段で撮像する第1の撮像工程と、
前記第1の撮像工程後、再度、前記ポケットを前記撮像手段で撮像する第2の撮像工程と、
前記第1の撮像工程で撮像した画像を認識処理して第1のポケット位置を検出し、前記第2の撮像工程で撮像した画像を認識処理して第2のポケット位置を検出するポケット位置検出工程と、
前記検出された第1のポケット位置と第2のポケット位置の差であるポケット位置ずれ量が予め設定された許容範囲内に収まるか否かを判定する位置ずれ判定工程とを含み、
前記位置ずれ判定工程において前記ポケット位置ずれ量が許容範囲内に収まらない場合は、前記整定時間を延長して、前記ポケット位置ずれ量が前記許容範囲内に収まるまで前記第1の撮像工程と前記第2の撮像工程と前記ポケット位置検出工程と前記位置ずれ判定工程を順次反復実行し、
前記位置ずれ判定工程において前記ポケット位置ずれ量が許容範囲内に収まる場合は、前記ポケット位置ずれ量が許容範囲内に収まった時点における整定時間を新たな整定時間として更新することを特徴とする部品実装方法。」

なお、本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。

3.原査定の概要
原査定は、本願発明1及び2は、その出願前に日本国内において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1.特開2007-227685号公報
引用文献2.特開2007-35946号公報

4.引用文献に記載された事項及び引用発明
(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。以下同様である。

「【0017】
図1(a) は、実施例1におけるテープフィーダを使用する部品搭載装置の外観斜視図であり、同図(b) は、その上下の保護カバーを取り除いて内部の構成を模式的に示す斜視図である。
・・・(省略)・・・
【0022】
この部品搭載装置1内には、常時2枚の基板8が搬入され、位置決めされて、電子部品の搭載が終了するまで固定されている。
基台6の前後には、それぞれ部品供給ステージ9が形成されている(・・・(省略)・・・)。
【0023】
部品供給ステージ9には、テープフィーダ11が、50個?70個と多数配置される。テープフィーダ11には、その後端部に、部品を収容したテープを捲着したテープリール12が着脱自在に装着されている。
【0024】
また、基台6の上方には本体フレームの左右(X軸方向)に分かれて固定された二本のY軸レール13と、これら二本のY軸レール13にそれぞれ摺動自在に支持される二本(装置全体で合計四本)のX軸レール14が配置されている。
【0025】
X軸レール14は、Y軸レール13に沿ってY軸方向に摺動でき、これらのX軸レール14には、それぞれ1台(装置全体で合計4台)の作業ヘッド15(15-1、15-2及び15-3、15-4)がX軸レール14に沿ってX軸方向に摺動自在に懸架されている。
【0026】
そして、これらの各作業ヘッド15には、同図(b) に示す例では2個の搭載ヘッド16が配設されている。つまり、この部品搭載装置1には合計8個の搭載ヘッド16が配設されている。各搭載ヘッド16の先端には吸着ノズル10が着脱自在に装着されている。
【0027】
・・・(省略)・・・
【0028】
作業ヘッド15は、これらの信号コードを介して中央制御部からは電力及び制御信号を供給され、中央制御部へは基板の位置決め用マークや部品の搭載位置の情報を示す画像データを送信する。」

「【0064】
そこで、例えば、2mmの送り量の部品テープを、上記のテープフィーダ11の構成で実行するとする。
先ず、第1の処理として、ステッピングモータ64の原点復帰を行う。この場合も微小移動用のパルス数でステッピングモータ64を駆動して、スプロケット61のジョグ送り(戻り動作)を行いながら透光型光学センサ63の検知領域内にスプロケット61の歯62が入ったところでステッピングモータ64を停止させる。
【0065】
また、この場合も、スプロケット61の歯62が検知領域を通過後に更に細かいパルス、又は再度ジョグ送りをかけて、正確な位置を求めるという方法をとる場合もあることは上記の場合と同様である。
【0066】
次に、第2の処理として、部品搭載装置1本体の或る動作を基点にして、テープフィーダ11に部品テープ送り(スプロケット61の歯62の配設ピッチの半分)の指示がコネクタ57を介して送信される。
【0067】
しかし、この場合はスプロケット61の歯62が4mmピッチの配置間隔であるため、歯62が透光型光学センサ63の検知領域を通過できず、部品テープが所定の位置に動いたことを確認することができない。
【0068】
したがって、第3の処理として、部品テープの送り指示を出した後に、テープフィーダ11が確実に送りの動作を完了できる待ち時間を設定する。
そして、その待ち時間の間はZ軸の降下指示を出さずに、搭載ヘッド16を待機状態に維持する。
【0069】
テープフィーダ11が部品を供給口59に送り出すよりも、搭載ヘッド16がピック点(供給口59)に降下する方が早いと、吸着エラーになるから、上記の待機時間には、ある程度多めの許容範囲を持たせる必要があり、実際に搬送可能な時間よりも長めに待機することになる。
【0070】
その後、第4の処理として、部品搭載装置1本体側で、Z軸に降下の指示が出され、搭載ヘッド16が部品吸着ポイント(部品供給口59)まで降下移動し、テープフィーダ11が部品供給口59まで搬送済みの部品31を、ノズル10で吸着する。
【0071】
このように、所定の部品搬送動作が終了しているかどうかを確認できないため、待機時間を長く取る必要がある。このように部品の吸着ごとに待機時間を長く取るのでは、基板1枚ごとに対する全部品を搭載する処理時間が長くなって作業能率が大幅に低下する。また、吸着ミスの発生も多くなる。」

以上の記載事項及び【図1】の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「部品を収容したテープをテープフィーダ11によって送り、供給口59に搬送された部品31を、テープフィーダ11のスプロケット61の歯62の配設ピッチの半分だけ確実に送りの動作を完了できる待ち時間後に、ノズル10で吸着保持して基板8に搭載する部品搭載方法。」

(2)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、電子部品実装装置、特にカメラによる画像認識に要する時間を短縮することができる電子部品実装装置に関する。」

「【0011】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、画像認識用のカメラにより、所定位置に位置決めされている基板上のマーク、又は、吸着ノズルに保持されている部品を、画像認識する際の所要時間を短縮することができる電子部品実装装置を提供することを課題とする。」

「【0027】
図3には、本実施形態の電子部品実装装置の制御系の概要を示す。
【0028】
この制御系には、制御装置30に制御される、前記X軸フレーム12を駆動するXモータ32と、前記Y軸フレーム14を駆動するYモータ34と、吸着した部品の回転角を補正するために前記吸着ノズル10Aを軸を中心に回転駆動するθモータ36と共に、前記基板認識カメラ18と部品認識カメラ22とが含まれている。
【0029】
そして、制御装置30は、上記Xモータ32、Yモータ34及びθモータ36にそれぞれ駆動信号を出力するXモータドライバ38、Yモータドライバ40、θモータドライバ42と共に、前記基板認識カメラ18及び部品認識カメラ22からの撮像データをそれぞれ画像処理する基板映像処理部44及び部品映像処理部46を有しており、これら各ドライバ及び画像処理部は、メモリ48に保存されている制御プログラムにより各種演算を実行するCPU50により管理されている。
【0030】
又、Xモータ32及びYモータ34により駆動される前記X軸フレーム12及びY軸フレーム14の移動量は、それぞれXモータドライバ38、Yモータドライバ40が有するエンコーダカウンタから出力されるカウント値を元に上記CPU50により演算されるようになっている。
【0031】
本実施形態においては、電子部品実装装置の所定位置に基板Sが搬入され、位置決め固定されると、前記Xモータ32及びYモータ34により前記X軸フレーム12及びY軸フレーム14をそれぞれ駆動して初期位置の装着ヘッド10を、該ヘッド10に搭載されている基板認識カメラ18により撮像する際の基準とする指令座標に一致させるべく、X・Y平面方向に移動させ、後に詳述する所定条件が整ったタイミングで、該カメラ18により基板S上のマークを撮像した画像に基づいて基板の位置補正演算を行なう。
【0032】
この基板Sの位置補正演算が完了し、基板S上の部品装着位置が確定すると、X軸フレーム12、Y軸フレーム14により装着ヘッド10を部品供給装置20のピックアップ位置(初期位置)へ移動させ、吸着ノズル10Aにより部品を吸着する。その後、部品を吸着しているノズル10Aが、部品認識カメラ22の撮像中心に一致させるべく、該ヘッド10を部品認識カメラ22の上方に設定されている指令位置に速やかに移動させ、同様に後述する所定条件が整ったタイミングで撮像した画像に基づいて、例えばノズル中心からの部品の吸着ずれを補正する補正演算を行なう。」

「【0039】
本実施形態では、次に説明する整定みなし時間を待った後に撮像するが、その場合のカメラが本来到達するべき指令座標(XCOM,YCOM)と撮像前後の実際のカメラ位置を表わすエンコーダ値の関係を図5に示す。この図で、(X1,Y1)は整定みなし時間が経過した撮像前のXYエンコーダ座標、(X2,Y2)は撮像完了後のXYエンコーダ座標であり、その中間に示されている(X0,Y0)は、撮像時(露光中)の基板認識カメラ18のXY推定座標である。なお、この図には前記図3に示したX軸フレーム12、Y軸フレーム14による送り偏差(DX,DY)も矢印で示してある。
【0040】
次に、以上の画像認識を行なう際の撮像タイミングとして設定する最適な整定みなし時間の決定方法を、図6のフローチャートに従って説明する。なお、図ではX軸フレーム、Y軸フレーム、又はその駆動系を、“XY軸”と略記している。
【0041】
基板認識カメラ18を基板マーク上に移動させるために、装着ヘッド10を指令座標へ移動させる指令信号を、前記制御装置30からXモータ32、Yモータ34に出力し、X軸フレーム12、Y軸フレーム14を駆動させる(ステップ1)。
【0042】
装着ヘッド10の指令座標への到達完了を待ち(ステップ2)、到達時点から所定の整定予定時間(dt0)の待ち合わせを行なう(ステップ3)。この整定予定時間が終了した時点で、撮像直前のXYエンコーダ座標(X1,Y1)をX、Yの各モータドライバ38、40から読み出してメモリ48に記憶する(ステップ4)と共に、基板マークの撮像を実行する(ステップ5)。
【0043】
次いで、撮像直後のXYエンコーダ座標(X2,Y2)を、同様にモータドライバ38、40から読み出して記憶する(ステップ6)。
【0044】
撮像前後のモータエンコーダ値のX方向、Y方向の差の絶対値が、実績から得られている所定の閾値dist以下の場合(ステップ7とステップ8でいずれもNO)、前記整定予定時間待った後の装着ヘッドは十分に整定している(実質的に停止している)ものとして、該整定予定時間(dt0)を整定みなし時間(dt)に決定して処理を終了する。
【0045】
一方、撮像前後でモータエンコーダ値の差の絶対値が、所定の閾値distより大きい場合(ステップ7又はステップ8でYES)、整定予定時間後の装着ヘッドが十分に整定していないと判断し、最初の整定予定時間が十分に短かい設定であった場合には、それを僅かに延長して再設定し(ステップ9)、X軸フレーム12、Y軸フレーム14により装着ヘッド10を初期位置(座標)に移動して(ステップ10)、前記ステップ1?ステップ10の処理を繰返し、最適な整定予定時間を求め、それを実際の撮像に使用する整定みなし時間(dt)に決定する。」

「【0054】
なお、以上には基板認識の場合を説明したが、基板認識カメラ18を吸着ノズル10Aに、基板を部品認識カメラ22に、基板マークを部品に変更することにより、実質上同一の処理で部品認識を行なうこともできる。」

【図6】として次の図面が記載されている。


5.対比・判断
(1)本願発明1
本願発明1と引用発明とを対比する。
後者の「部品を収容したテープ」は、部品がテープのポケットに収容されていることは技術常識といえるので、前者の「部品を収納したポケットが形成されたキャリアテープ」に相当する。
後者の「テープをテープフィーダ11によって送」ることは、前者の「キャリアテープをテープフィーダによってピッチ送り」することと、「キャリアテープをテープフィーダによって送」る限りにおいて一致する。
後者の「供給口59」は、前者の「部品取り出し位置」に相当し、同様に、後者の「ノズル10」は、前者の「吸着ノズル」に、後者の「基板8」は、前者の「基板」に、それぞれ相当する。
後者の「テープフィーダ11のスプロケット61の歯62の配設ピッチの半分だけ確実に送りの動作を完了できる待ち時間」は、前者の「整定時間」と、「所定の待ち時間」である限りにおいて一致する。
後者の「搭載」は、その技術的意義からみて、前者の「実装」に相当する。

そうすると、両者は、
「部品を収納したポケットが形成されたキャリアテープをテープフィーダによって送り、部品取り出し位置に送られた前記部品を所定の待ち時間後に吸着ノズルによって吸着保持して基板に実装する部品実装方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点1〕
本願発明1は、キャリアテープをテープフィーダによって「ピッチ送り」するものであるのに対して、引用発明は、テープフィーダ11による送りが「ピッチ送り」とは特定されていない点。
〔相違点2〕
本願発明1は、「整定時間」後に吸着ノズルによって部品を吸着保持するものであるのに対して、引用発明は、テープフィーダ11のスプロケット61の歯62の配設ピッチの半分だけ確実に送りの動作を完了できる待ち時間後にノズル10で部品31を吸着保持するものである点。
〔相違点3〕
本願発明1は、「前記吸着ノズルが部品を正常に吸着保持していない吸着ミスが1回若しくは所定回数以上連続して検出された場合に実行される吸着ミス対処処理を実行する吸着ミス対処工程を備え、前記吸着ミス対処工程は、前記キャリアテープをピッチ送りするとともに、ピッチ送り後に前記整定時間が経過した前記ポケットを前記部品取り出し位置に移動させた撮像手段で撮像する第1の撮像工程と、前記第1の撮像工程後、再度、前記ポケットを前記撮像手段で撮像する第2の撮像工程と、前記第1の撮像工程で撮像した画像を認識処理して第1のポケット位置を検出し、前記第2の撮像工程で撮像した画像を認識処理して第2のポケット位置を検出するポケット位置検出工程と、前記検出された第1のポケット位置と第2のポケット位置の差であるポケット位置ずれ量が予め設定された許容範囲内に収まるか否かを判定する位置ずれ判定工程とを含み、前記位置ずれ判定工程において前記ポケット位置ずれ量が許容範囲内に収まらない場合は、前記整定時間を延長して、前記ポケット位置ずれ量が前記許容範囲内に収まるまで前記第1の撮像工程と前記第2の撮像工程と前記ポケット位置検出工程と前記位置ずれ判定工程を順次反復実行し、前記位置ずれ判定工程において前記ポケット位置ずれ量が許容範囲内に収まる場合は、前記ポケット位置ずれ量が許容範囲内に収まった時点における整定時間を新たな整定時間として更新する」ものであるのに対して、引用発明は、そのような工程を備えていない点。

事案に鑑み、相違点3について以下検討する。
本願の明細書には次の記載がある。
「【0005】
しかしながら上述の特許文献例を含め、従来技術においては以下に述べるようなキャリアテープのテープ送り時における停止過程の挙動の不安定さに起因して、吸着ミスの発生を抑制することが困難であるという課題があった。すなわちキャリアテープのピッチ送り時は、カバーテープをテープ送り方向と反対方向に巻き取りながら剥離するため、キャリアテープにはテープ送り方向の力が加わる。そのため、吸着ノズルが下降して部品に当接するタイミングにおいてキャリアテープが停止しておらず、部品取り出し位置が安定せず、正常に吸着保持することができない吸着ミスが発生する場合がある。このように従来の部品実装方法には、キャリアテープのピッチ送りにおける停止過程の挙動が不安定となることに起因して、吸着ミスが発生するという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、キャリアテープの停止過程の挙動の不安定さに拘わらず、吸着ミスの発生を抑制することができる部品実装方法を提供することを目的とする。」
「【0046】
上記のように、部品実装作業の際には、キャリアテープのテープ送り時における停止過程の挙動の不安定さに起因して、整定時間TSが不十分となり吸着ミスが発生する場合がある。本発明の一実施の形態の部品実装方法では、吸着ミスが連続して検出された場合に、ピッチ送り後に整定時間TSが経過したポケットを撮像して得た第1のポケット位置C1と、再度ポケットを撮像して得た第2のポケット位置C2の差であるポケット位置ずれ量Dが予め設定された許容範囲R内に収まるまで整定時間TSの延長を繰り返し、許容範囲R内に収まった整定時間TSを新たな整定時間TSとして更新することで、吸着ミスの発生を抑制することができる。」
上記記載によれば、本願発明1は、カバーテープの剥離によるキャリアテープのピッチ送り時における停止過程の挙動の不安定さに起因して、吸着ミスが発生することを課題とし、「部品取り出し位置にピッチ送りされた部品を整定時間後に吸着ノズルによって吸着保持して基板に実装する部品実装方法」にあって、上記相違点3に係る本願発明1の構成を備えていると認められる。

対して、引用文献2には、
ア 装着ヘッド10を指令座標に移動させ、装着ヘッド10に搭載されている基板認識カメラ18により基板マークを撮像するか、あるいは、装着ヘッド10を指令位置に移動させ、部品認識カメラ22で装着ヘッド10の先端のノズル10Aで吸着している部品を撮像するものにおいて(上記4.(2)ウの段落【0031】、【0032】を参照)、
イ 整定みなし時間が経過した後に撮像を行い(上記4.(2)エの段落【0039】を参照)、
ウ 整定みなし時間は、
(ア)装着ヘッド10の指令座標への到達時点から所定の整定予定時間(dt0)が終了した時点で、撮像直前のXYエンコーダ座標(X1,Y1)をX、Yの各モータドライバ38、40から読み出すとともに、基板マークの撮像を実行し(上記4.(2)エの段落【0042】を参照)、
(イ)撮像直後のXYエンコーダ座標(X2,Y2)をモータドライバ38、40から読み出し(上記4.(2)エの段落【0043】を参照)、
(ウ)撮像前後のモータエンコーダ値のX方向、Y方向の差の絶対値が、所定の閾値distより大きい場合、整定予定時間(dt0)後の装着ヘッドが十分に整定していない(実質的に停止していない)と判断し、整定予定時間を僅かに延長して再設定(dt0=dt0+δt)し、上述の処理を繰り返し、撮像前後でモータエンコーダ値の差の絶対値が、所定の閾値dist以下となったとき、装着ヘッド10は十分に整定している(実質的に停止している)ものとして、その時の整定予定時間(dt0)を整定みなし時間(dt)に決定する(上記4.(2)エの段落【0044】、【0045】を参照)、
ことが記載されている。

しかしながら、引用文献2には、少なくとも、整定みなし時間を決定する方法に関して、キャリアテープのポケットを部品取り出し位置に移動させた撮像手段で撮像する「第1の撮像工程」と、第1の撮像工程後、再度、ポケットを撮像手段で撮像する「第2の撮像工程」と、第1の撮像工程及び第2の撮像工程で撮像した画像を認識処理して第1のポケット位置及び第2のポケット位置を検出する「ポケット位置検出工程」は記載も示唆もされていない。
また、引用文献2のカメラによる撮像前後の位置の取得を、さらに撮像する工程を追加することで、画像処理によりそれぞれの位置を取得する構成とする動機付けもない。
そうすると、引用発明に、引用文献2に記載の事項を適用しても、相違点3に係る本願発明1の構成とすることはできない。
また、他に相違点3に係る本願発明1の構成を示唆する証拠もない。
よって、相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2
本願発明2は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

6.まとめ
以上のとおり、本願発明1及び2は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-16 
出願番号 特願2014-89755(P2014-89755)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川上 佳小金井 匠  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 平田 信勝
藤田 和英
発明の名称 部品実装方法  
代理人 野村 幸一  
代理人 鎌田 健司  

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