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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J
管理番号 1353480
審判番号 不服2018-11352  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-22 
確定日 2019-07-11 
事件の表示 特願2014-253519号「内釜および炊飯器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年6月23日出願公開、特開2016-112214号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月15日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年10月31日付け: 拒絶理由通知書
同年12月26日 : 意見書、手続補正書の提出
平成30年 5月24日付け: 拒絶査定
同年 8月22日 : 審判請求書の提出

第2 本願発明について
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成29年12月26日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
内釜収容部を有する炊飯器本体と、前記炊飯器本体の上方を覆う外蓋および前記外蓋の下面側に装着された内蓋を有する蓋体と、を備えた炊飯器に設置される、内釜であって、
底部と、
前記底部の上方で当該内釜の開口端部まで延びる筒部と、を有し、
前記筒部は、
前記内釜収容部に収容される被収容筒部と、
前記内釜収容部から上方に突出し前記開口端部まで延びる突出筒部と、
前記突出筒部の下端部の外周面から外方に突出し、前記内釜収容部の上端に当接する鍔部と、を含み、
前記突出筒部は、
前記鍔部よりも上方に位置する部分を有し、前記内釜が前記炊飯器本体に設置されたときに、前記炊飯器本体の少なくとも側方において、前記炊飯器本体から上方に突出し、内周面が、下方から上方の前記開口端部にいくに従って、径方向に徐々に窄められている、
内釜。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、請求項1について、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1、2及び3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1 特開2002-65456号公報
引用文献2 特開平8-150068号公報
引用文献3 特開2011-110340号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【0012】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の炊飯器の断面図、図2は要部の断面拡大図である。
【0013】図中、1は本体、2は内釜、3はヒンジ部、4は蓋体、5は保護枠、6は主加熱部、7は鍔部加熱部、8は制御部、9は鍔部である。
【0014】その構成の詳細は、本体1内に内釜2が着脱自在に挿入されている。また、本体1の後部上端部にはヒンジ部3が設けられ、このヒンジ部3には蓋体4が開閉自在に取り付けられている。
【0015】本体1内には内釜2を挿入する保護枠5が設けられ、保護枠5の底部には主加熱部6が設けられ、内釜2の底部を加熱するように構成されている。
【0016】本実施例では、主加熱部6は電磁誘導加熱用のコイルで構成され、内釜2の底部を電磁誘導によって加熱するものである。この加熱量は後記制御部8によって0?1000Wで任意に可変できる。
【0017】保護枠5の上方には鍔部加熱部7が設けられている。本実施例では抵抗線ヒーター7aを一体的に組み合わせて鍔部加熱部7が構成されており、その加熱量は300Wと主加熱部6より低く設定されている。
【0018】本体1内には制御部8が設けられ、これに主加熱部6及び鍔部加熱部7が接続され、炊飯、保温などの動作工程に応じて適宜通電が制御される。
【0019】前記内釜2は、その上端から少し下方の外周側面部に鍔部9が設けられ、羽釜形状をなしている。鍔部9は内釜2に最大炊飯量時の適量の米と水を入れた時の水面となる高さの近傍に設定されている。
【0020】また、内釜2は本体1内に挿入したとき、その鍔部9が鍔部加熱部7に当接して高さ位置が定まり、固定される。」



(2)上記記載を総合すると、引用文献1には次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。
「本体1内には内釜2を挿入する保護枠5が設けられ、本体1の後部上端部に設けられたヒンジ部3には蓋体4が取り付けられた炊飯器の本体1内に着脱自在に挿入される、内釜2であって、
内釜2は、底部を有し、上端から少し下方の外周側面部に鍔部9が設けられ、羽釜形状をなしており、
前記保護枠5の上方には鍔部加熱部7が設けられ、内釜2は本体1内に挿入したとき、その鍔部9が鍔部加熱部7に当接して高さ位置が定まり固定される、
内釜。」

2 引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0015】21は内釜で、この内釜21は、アルミニウムダイカストなどにより有底筒状に形成されており、米や水などの被炊飯物が内部に収容されるとともに、前記外釜2内に上から挿脱自在に収容されるものである。そして、内釜21の側部外面には、その上端と下端とのほぼ中間部に全周にわたって突部22が一体に形成されている。この突部22の下面は、水平になっており、前記外釜2の段差部8上に載るものである。これにより、内釜21を外釜2内に収容した状態で、突部22の下方に位置して内釜21と外釜2との間に、前記電熱ヒータ11に通じる加熱空間23が形成されるようになっている。
・・・
【0016】31は蓋体で、この蓋体31は、前記器枠1の上側に開閉自在に設けられている。そして、蓋体31は、合成樹脂などからなる外蓋32の下側周辺部に合成樹脂などからなる環状の裏板33が固定されており、この裏板33の内側にアルミニウムなどからなる内蓋34が固定されている。前記外蓋32は、前記外筒3の上部後側にヒンジ35により軸着されているとともに、このヒンジ35に設けられたスプリング36により開く方向に付勢されている。」
「【0022】逆に、内釜21や外釜2の上部付近については、突部22によって過度に高温になることが防止される。したがって、内釜21や外釜2の上部の近くにある外筒3や裏板33などの合成樹脂製の部品が熱により変形することを防止できる。」




3 引用文献3
引用文献3には次の事項が記載されている。
「【0014】
(内釜)
内釜10は、コークスの粉粒物を主体とするカーボン原料を焼結処理して炭素95%?100%の凝結体とした基材から切削加工により切り出して構成されている。本実施の形態1では、図1に示すように、内釜10の底面の中央部が周辺部より若干厚くなるよう構成している。このようにすることで、内釜10の中央部分の温度を外周部の温度よりも高温状態となるようにして、被加熱物の対流を十分に行うことができるようにしてある。また、調理面に相当する内釜10の内面には、フッ素樹脂を塗装してある。
内釜10の側面部11の内壁面には、炊飯する米の量に応じた水位を示す水位目盛18が印刷あるいは刻印などの方法により設けられている。なお、本実施の形態1では、最大炊飯容量が10合であるものとして説明する。
【0015】
内釜10は、側面部11を有し、内釜10の上端部外周には屈曲部13を介してフランジ部12が設けられている。また、側面部11から底面部14へと続く円弧状のコーナ部15を備えている。
内釜10は、ほぼ有底円筒状に形成されているが、図1に示すように、側面部11の上部の内径Aが底部の内径Bよりも小さくなるようにして、内釜10の上部に肉厚部Tを形成した点に特徴を有する。以下、詳細に説明する。
【0016】
側面部11の外壁面は、コーナ部15の外壁面から屈曲部13の外壁面に至るまで、ほぼ垂直に形成されている。
一方、側面部11の内壁面は、内釜10の高さの約2/3程度の位置まではほぼ垂直に形成されているが、内釜10の高さの約2/3程度の位置からは内釜10の中央方向に向かって緩やかに曲がり、屈曲部13の内壁面へと連なっている。すなわち、内釜10の上部の内径Aが、底部の内径Bより小さくなるように形成されている。このようにすることで、肉厚部Tが形成されている。
肉厚部Tの最大の厚みCは、例えば、側面部11の下部(肉厚部T以外の部分)の厚みDの120%?150%とすることができる。
【0017】
上記のように構成した内釜10は、肉厚部Tを設けたことにより、側面部11の上部及び屈曲部13の厚み(断面積)が増加している。このため、当該部分の強度を増加させることができる。肉厚部Tを設けない場合の内釜と強度を比較する実験を行ったところ、肉厚部Tの厚みCを厚みDの120%で構成した場合、約20%の強度の増加が見られた。
なお、肉厚部Tの厚みCを特に限定するものではないが、厚みCを増すほどにその強度を向上させることができる。一方で、厚みCを増加させすぎると、内釜10の内部を斜め上方からのぞき込むユーザの視線を肉厚部Tが遮ることとなってしまい、また、清掃性も低下する。このため、内釜10の直径や高さなどのサイズを考慮し、視認性と清掃性を確保可能な範囲で肉厚部Tの厚みCを設けるのが好ましい。
【0018】
・・・
炊飯器100で炊飯を行う前に、ユーザは、研いだ米と適量の水を内釜10に入れ、そしてこの内釜を炊飯器本体1の炊飯器収容部に収容する。この際、例えばシンク等で水を張った状態の内釜10を炊飯器100のところまで持ち運ぶこととなるが、内釜10の側面の上部に内釜10の中央方向に張り出す肉厚部Tが庇の役割を果たすので、水がこぼれにくくなる。」



上記記載の特に【0016】及び【0018】から、引用文献3には次の技術(以下、「引用技術」という。)が記載されていると認められる。
「内釜の内壁面を中央方向に向かって緩やかに曲げて、内釜上部の内径Aを底部の内径Bより小さく形成することにより、持ち運びの際に水をこぼれにくくする技術。」

第5 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 引用発明の「保護枠5」及び「鍔部加熱部7」は、その形状、構造又は技術的意義からみて、本願発明の「内釜収容部」に相当し、以下同様に、「本体1」は「炊飯器本体」に、「本体1内に着脱自在に挿入される、内釜2」は「炊飯器に設置される、内釜」に、それぞれ相当する。

イ 引用発明の「本体1の後部上端部に設けられたヒンジ部3に」「取り付けられ」た「蓋体4」が、炊飯器本体の上方を覆う「蓋体4」であることは明らかである。
そうすると、引用発明の「本体1の後部上端部に設けられたヒンジ部3には蓋体4が取り付けられた」と本願発明の「前記炊飯器本体の上方を覆う外蓋および前記外蓋の下面側に装着された内蓋を有する蓋体」とは、「炊飯器本体の上方を覆う蓋体」という限りにおいて一致する。

ウ 引用発明の「内釜2は、底部を有し、上端から少し下方の外周側面部に鍔部9が設けられ、羽釜形状をなして」いる形状について検討すると、当該内釜が、底部の上方に内釜の開口端部まで延びる筒形の形状部、すなわち筒部を備えるものであることは自明である。
そして、引用発明の「保護枠5の上方には鍔部加熱部7が設けられ、内釜2は本体1内に挿入したとき、その鍔部9が鍔部加熱部7に当接して高さ位置が定まり固定される」態様からみて、当該「内釜」が、上記筒部において「保護枠5」及び「鍔部加熱部7」の内釜収容部に収容される被収容筒部と、内釜収容部から上方に突出し、内釜の開口端部まで延びる突出筒部を備えるものであることは明らかである。
その上、引用発明の上記態様の「内釜」の「鍔部9」についてみると、該「鍔部9」が上記した突出筒部の下端部の外周面から外方に突出するものであること、及び、「鍔部9」が内釜収容部の上端に当接するものであること、のそれぞれについても明らかであるといえる。

エ 上記アないしウで検討した事項を踏まえ、引用文献1の図1を参照すると、炊飯器の断面図の紙面右側におけるヒンジ部3から上方に少し延びて水平方向に曲がる蓋体の態様に加え、同図紙面左側の蓋体4における水平方向から下方に向けて曲がる態様のそれぞれが看取でき、当該蓋体4が、内釜の開口端部を覆うものであることが理解できる。
そして、同図紙面左側の蓋体4の下方に向けて曲がった先端部に対して、本体1(本体1の下方から延びて右方向へ水平に曲がった最上端部)は、下方に離れて配置されている。
その上、同図紙面左側の本体1の下方から延びて右方向へ水平に曲がった最上端部の細部形状に対し、同図紙面右側のヒンジ部3下部には左方向に突出する部分が看取でき、その突出する部分は、上記右方向へ水平に曲がった最上端部に向かい合う形状となっている。
そうすると、引用発明における炊飯器の蓋体を除く本体の高さは、一般の炊飯器と同様に全周において同一の高さであると理解することが合理的であり、同断面図が炊飯器の本体の前後の高さを示すとすると、炊飯器の側方においても本体の高さは同等であるといえる。
したがって、引用発明の「鍔部9」よりも上方に位置する部分を有する「内釜」の突出筒部は、「内釜」が炊飯器の本体に設置されたときに、本体の少なくとも側方において、本体から上方に突出するものであるといえる。
この点、本体1に連なる鍔部加熱部7を考慮しても同様である。

(2)以上から、両者における一致点及び相違点は次のとおりである。
ア 一致点
「内釜収容部を有する炊飯器本体と、前記炊飯器本体の上方を覆う蓋体と、を備えた炊飯器に設置される、内釜であって、
底部と、
前記底部の上方で当該内釜の開口端部まで延びる筒部と、を有し、
前記筒部は、
前記内釜収容部に収容される被収容筒部と、
前記内釜収容部から上方に突出し前記開口端部まで延びる突出筒部と、
前記突出筒部の下端部の外周面から外方に突出し、前記内釜収容部の上端に当接する鍔部と、を含み、
前記突出筒部は、
前記鍔部よりも上方に位置する部分を有し、前記内釜が前記炊飯器本体に設置されたときに、前記炊飯器本体の少なくとも側方において、前記炊飯器本体から上方に突出する、
内釜。」

イ 相違点
(ア)相違点1
本願発明が「外蓋および前記外蓋の下面側に装着された内蓋を有する」蓋体であるのに対し、引用発明の蓋体は、その構成を有しない点。
(イ)相違点2
本願発明においては、突出筒部を含む内釜の内周面の形状について、「内周面が、下方から上方の前記開口端部にいくに従って、径方向に徐々に窄められている」のに対し、引用発明においては、当該構成を有しない点。

2 判断
(1)相違点1について
炊飯器において、蓋体を外蓋及び内蓋によるものとすることは慣用技術であるから(例として、引用文献2の【0016】参照。)、引用発明の蓋体を、外蓋および外蓋の下面側に装着された内蓋を有するものとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮である。

(2)相違点2について
引用技術は、「内釜の内壁面を中央方向に向かって緩やかに曲げて、内釜上部の内径Aを底部の内径Bより小さく形成することにより、持ち運びの際に水をこぼれにくくする技術。」であり、上記内壁面の形状についてみると、その緩やかに曲げて上部の内径を底部の内径より小さくする態様とは、本願発明の「内周面が、下方から上方の前記開口端部にいくに従って、径方向に徐々に窄められている」態様と同等の形状であるといえる。
そして、引用発明及び引用技術は共に炊飯器の内釜に係る技術であり、引用発明の内釜の内壁面に、引用技術の内壁面形状を採用して、相違点2に係る本願発明の構成に想到することは、当業者であれば格別の創意工夫なしになし得たことである。
特に、引用発明の「内釜」は「鍔部9」を設けた「羽釜形状」をなすものであるところ、古くから羽釜の内周面形状は、上方にいくに従い徐々に窄められるように形成されるものであり(例として、実公昭4-10387号公報の図面参照。)、引用発明の羽釜形状を従来からありふれた形状とすること、すなわち引用発明に上記引用技術の内壁面形状を採用することに困難性はないといえる。

(3)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用技術及び慣用技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(4)したがって、本願発明は、引用発明、引用技術及び慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-07 
結審通知日 2019-05-14 
審決日 2019-05-28 
出願番号 特願2014-253519(P2014-253519)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 藤原 直欣
槙原 進
発明の名称 内釜および炊飯器  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

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