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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K |
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管理番号 | 1353569 |
審判番号 | 不服2018-5675 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-24 |
確定日 | 2019-07-30 |
事件の表示 | 特願2015- 51702「睫用化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月23日出願公開、特開2016-169194、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成27年3月16日の出願であって、平成29年9月19日付けで拒絶理由が通知され、同年11月15日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月28日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年4月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成31年4月12日付けで当審より拒絶理由が通知され、令和元年5月27日に意見書及び手続補正書が、同月29日(受付日)に手続補足書が、それぞれ提出されたものである。 第2 本願発明 本願請求項1?3に係る発明は、令和元年5月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 次の成分(A)及び(B): (A)高重合度ポリエチレングリコール (B)ヘクトライト を含有し、前記成分(A)の粘度平均分子量が60万?110万であり、 睫用化粧料の全体に対する前記成分(A)の配合量が0.1?10質量%であり、睫用化粧料の全体に対する前記成分(B)の配合量が0.05?5質量%であることを特徴とする水中油型睫用化粧料。 【請求項2】 油性成分として、ステアリン酸、ミツロウ、及びカルナウバワックスを含有し、 睫用化粧料の全体に対する前記油性成分の配合量が5?50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型睫用化粧料。 【請求項3】 アクリル酸アルキル共重合体エマルションを含有し、 睫用化粧料の全体に対する前記アクリル酸アルキル共重合体エマルションの配合量が1?30質量%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水中油型睫用化粧料。」 以下、本願請求項1、2及び3に係る発明をそれぞれ「本願発明1」、「本願発明2」及び「本願発明3」という。 第3 原査定について 1.原査定の概要 原査定(平成30年2月28日付け拒絶査定)の理由は、本願発明1?3は、引用文献2(特開平11-79940号公報)及び引用文献3(特開平11-106313号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 2.引用文献の記載事項及び引用発明 (1)引用文献2の記載事項 原査定で引用された引用文献2には以下の事項が記載されている。 (ア)記載事項2-1 「高重合度ポリエチレングリコールを含有するマスカラ組成物。」(特許請求の範囲) (イ)記載事項2-2 「本発明者等は上記課題を解決するため鋭意研究の結果、高重合度ポリエチレングリコールをマスカラ組成物に含有させることにより、睫にボリュームを付与し、かつ長く見せる効果に優れるマスカラ組成物を得ることができることを見いだし、本発明を完成した。」(【0007】) (ウ)記載事項2-3 「本発明で用いられる高重合度ポリエチレングリコールは、・・・ボリューム感の点から分子量10000以上のポリエチレングリコールが好ましく用いられる。」(【0009】) (エ)記載事項2-4 「さらに、本発明のマスカラ組成物には、その他目的に応じて本発明の効果を損なわない量的,質的範囲内で、マスカラ組成物に一般的に用いられる・・・粘土鉱物・・・などを配合することができる。」(【0012】) (オ)記載事項2-5 「[実施例2]樹脂分散乳化型マスカラ (1)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5(重量%) (2)パラオキシ安息香酸メチル 0.2 (3)グリセリン 1.0 (4)高重合度ポリエチレングリコール (平均分子量150万) 0.7 (5)精製水 52.6 (6)黒酸化鉄 3.0 (7)トリエタノールアミン 3.0 (8)ステアリン酸 5.0 (9)ミツロウ 9.0 (10)パラフィンワックス 5.0 (11)アクリル酸アルキル共重合体エマルション 20.0 法:(1)?(5)を混合し75℃に加熱して溶解,均一化する。(6)の顔料を添加し、コロイドミルを通して均一に分散させる。さらに(7)の成分を混合,溶解し80℃に加熱し、加熱溶解均一化した(8)?(10)の成分を添加して乳化後、冷却し、(11)の成分を添加する。」(【0015】) (カ)記載事項2-6 「上記実施例1?3を用いて、ボリュームの付与、及び睫を長く見せる効果について官能評価を行った。同時に高重合度ポリエチレングリコールをポリエチレングリコール(平均分子量500)に代替した比較例1?3を調製し、比較例を標準とした比較評価を行った。評価は女性10名を一群として行い、結果は各評価をつけたパネラーの数で表1に示した。 【表1】 表1に示したように、マスカラ組成物に高重合度ポリエチレングリコールを配合することにより、睫にボリューム感を付与し、更に長く見せる効果を有することが示された。」(【0017】?【0019】) (2)引用発明 上記の記載事項2-1?2-3、2-5、2-6、特に記載事項2-1、2-5の記載からみて、引用文献2には、 「(1)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5(重量%) (2)パラオキシ安息香酸メチル 0.2 (3)グリセリン 1.0 (4)高重合度ポリエチレングリコール (平均分子量150万) 0.7 (5)精製水 52.6 (6)黒酸化鉄 3.0 (7)トリエタノールアミン 3.0 (8)ステアリン酸 5.0 (9)ミツロウ 9.0 (10)パラフィンワックス 5.0 (11)アクリル酸アルキル共重合体エマルション 20.0 を含む樹脂分散乳化型マスカラ」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3)引用文献3の記載事項 原査定で引用された引用文献3には以下の事項が記載されている。 (ア)記載事項3-1 「油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステルと、水分散性ないし水溶性の低置換度ショ糖脂肪酸エステルを配合してなる、まつ毛用化粧料。」(特許請求の範囲の請求項1) (イ)記載事項3-2 「本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、まつ毛への塗布時の塗布のしやすさ、乾きやすさ等の使用性に優れるとともに、仕上がりの均一性、ボリューム感、およびカール効果に優れたまつ毛用化粧料を提供することを目的とする。 ・・・本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステルと、水分散性ないし水溶性の低置換度ショ糖脂肪酸エステルとを併用することにより、カール効果に優れ、仕上がり等を損なうことなく、ボリューム感を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。」(【0007】、【0008】) (ウ)記載事項3-3 「本発明のまつ毛用化粧料には、さらにボリューム感をより一層高めるために水溶性粘土鉱物を配合することができる。水溶性粘土鉱物としては、ベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト等が挙げられる。これら水溶性粘土鉱物は1種または2種以上を用いることができる。 水溶性粘土鉱物の配合量は、本発明まつ毛化粧料全量中に0.1?1.5重量%が好ましく、より好ましくは0.2?1重量%である。0.1重量%未満では水溶性粘度鉱物添加の効果を十分に得ることができず、一方、1.5重量%超ではボリューム感のより一層の向上を得るのが難しく、かえって使用性の低下を招くおそれがある。」(【0020】、【0021】) (エ)記載事項3-4 「本発明まつ毛用化粧料には、さらに、目的に応じて、本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内で、メーキャップ化粧料に通常配合し得る成分を添加してもよい。このような成分としては、例えば・・・粘土鉱物、・・・などが挙げられる。」(【0026】) (オ)記載事項3-5 「次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は重量%である。 実施例に先立ち、本発明の効果試験方法および評価方法を示す。 [ボリューム感]専門パネル20名により、まつ毛に各試料(マスカラ)を10回塗布し、その状態を肉眼にて下記基準により評価した。 評価 ◎: 20名中、16名以上がボリューム感があると回答 ○: 20名中、9?15名がボリューム感があると回答 △: 20名中、5?8名がボリューム感があると回答 ×: 20名中、4名以下がボリューム感があると回答」(【0027】?【0029】) (カ)記載事項3-6 「実施例1?5、比較例1?4:下記表1、2に示す組成のまつ毛用化粧料(マスカラ)を調製し、上記評価基準によりボリューム感、仕上がり、カール効果、使用性を評価した。結果を表1、2に示す。 ・・・ 【表1】 【表2】 (製法)(1)、(3)、(5)を90℃に加熱溶解し、これを(2)、(6)、(7)、(9)?(11)を85℃に加熱、分散した中へ添加後、ホモミキサーにて分散処理し、さらに(4)、(8)を添加した後、40℃まで撹拌冷却してまつ毛用化粧料(マスカラ)を得た。 (評価)表1、2の結果から明らかなように、比較例1は油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステル、水分散性ないし水溶性の低置換度ショ糖脂肪酸エステルのいずれをも含まず、ワックスを多配合した処方であるが、ボリューム感、カール効果、仕上がり、使用性のいずれをも満足するものでなかった。比較例2は、低置換度のショ糖脂肪酸エステルを含まず、油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステルを配合した処方であるが、カール効果は改善されているが、ボリューム感は変わらない。比較例3は、油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステルを含まず、低置換度のショ糖脂肪酸エステルを配合した処方であるが、仕上がりは良好になるものの、ボリューム感に劣り、カール効果も満足し得るものでなかった。比較例4は、油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステルを含まず、低置換度のショ糖脂肪酸エステルを配合し、合成樹脂エマルジョンを多配合した処方であるが、ボリューム感は改善されたものの飛躍的な向上はなく、かえって仕上がりや使用性の低下を招いている。 一方、実施例1?5はボリューム感、仕上がり、カール効果、使用性のいずれも十分に満足し得る効果を得ており、油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステルと、低置換度ショ糖脂肪酸エステルを組み合わせて配合することがこれらの特性の向上に非常に有効であることがわかる。」(【0033】?【0038】) (キ)記載事項3-7 「実施例7:水系マスカラ (1)ショ糖テトラパルミチルテトラブチレート 12 (2)ショ糖ステアリン酸エステル 4 (置換度1.2、モノエステル含有量60重量%) (3)カルナバロウ 4 (4)ポリアクリル酸エステルエマルジョン(40%) 20 (5)POE(20)ソルビタンモノステアレート 1 (6)フェノキシエタノール 1 (7)ヘクトライト 0.2 (8)黒酸化鉄 8 (9)エチルパラベン 0.3 (10)イオン交換水 49.5 (11)香料 適 量 (製法)(1)、(3)を90℃に加熱溶解し、これを(2)、(5)、(7)?(10)を85℃に加熱、分散した中へ添加後、ホモミキサーにて分散処理し、さらに(4)、(6)、(11)を添加した後、40℃まで撹拌冷却してまつ毛用化粧料(マスカラ)を得た。 これを上記評価基準によりボリューム感、重ね付けのしやすさ、仕上がり、使用性について評価したところ、ボリューム感:◎、仕上がり:◎、カール効果:◎、使用性:◎であった。」(【0041】、【0042】) (4)その他の引用文献 原査定において周知技術を示すものとして引用された下記の文献には、概略、以下のことが記載されている。 (ア)特開2011-126810号公報 所定の成分からなる水中油型乳化皮膚化粧料にヘクトライト等の無機系増粘剤を少量配合することでその保存安定性がさらに向上する旨が記載され(特許請求の範囲、【0023】)、保存安定性評価として、所定条件で保持後の外観(分離若しくは結晶の析出の有無)を確認したことが記載されている(【0037】) (イ)特開2008-266252号公報 (A)水膨潤性粘土鉱、(B)アミノ酸系界面活性剤、(C)増粘性高分子および(D)ポリオキシエチレン脂肪酸および/又は(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルを含有してなる乳液状皮膚化粧料において、(A)成分の水膨潤性粘土鉱物としては、保存安定性の観点および延展時の使用感に優れる観点から、ベントナイト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトを用いるのが好ましい旨が記載され(特許請求の範囲、【0011】、【0013】)、保存安定性の評価として所定条件で保管後の凝集による増粘の有無を確認したことが記載されている(【0031】、【0032】)。 (ウ)特開平9-175924号公報 多糖類で分散した無機顔料と粘土鉱物と水溶性有機溶剤と水とから少なくともなる液状化粧料において、粘土鉱物は、液状化粧料の粘度調整、および液状化粧料の経時安定性向上のために添加するものであって、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト等が使用できる旨が記載され(特許請求の範囲、【0010】)、経時安定性として、所定条件で処理後の液状化粧料の液面への排液現象の有無及び無機顔料の沈降状況を確認したことが記載されている(【0033】)。 3.当審の判断 (1)本願発明1と引用発明の一致点及び相違点 本願発明1と引用発明を対比する。 引用発明の「(4)高重合度ポリエチレングリコール(平均分子量150万) 」は、「高重合度ポリエチレングリコール」であるとの点に限り、本願発明1の「(A)高重合度ポリエチレングリコール」に相当し、その配合量について、引用発明の「0.7重量%」は、本願発明1の「0.1?10質量%」と重複する。また、引用発明の「樹脂分散乳化型マスカラ」は、本願発明1の「水中油型睫用化粧料」に相当する。 そうすると、本願発明1と引用発明とは、 「次の成分(A): (A)高重合度ポリエチレングリコール を含有し、 睫用化粧料の全体に対する前記成分(A)の配合量が0.1?10質量%である水中油型睫用化粧料」の点において一致し、 (相違点1) 本願発明1は「(B)ヘクトライト」が睫用化粧料の全体に対して0.05?5質量%配合されるのに対し、引用発明は「ヘクトライト」が配合されない点において相違し、また、 (相違点2) 本願発明1における「(A)高重合度ポリエチレングリコール」は粘度平均分子量が60万?110万のものであるのに対し、引用発明における「(4)高重合度ポリエチレングリコール」は平均分子量150万のものである点において相違し、さらに (相違点3) 引用発明は上記(1)?(3)、(6)?(11)の各成分が配合されたものであるのに対し、本願発明1はそのような成分が配合されることが規定されていない点においても、一応相違する。 (2)相違点1について 引用文献3の【0020】には、引用文献3に記載のまつげ用化粧料、すなわち油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステルと水分散性ないし水溶性の低置換度ショ糖脂肪酸エステルを配合したまつ毛用化粧料において、ボリューム感をより一層高めるために水溶性粘土鉱物を0.1?1.5重量%の割合で配合することができる旨記載され(記載事項3-1?3-3)、実施例7には、ショ糖テトラパルミチルテトラブチレート(油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステル)とショ糖ステアリン酸エステル(水分散性ないし水溶性の低置換度ショ糖脂肪酸エステル)とヘクトライト(水溶性粘土鉱物)を配合した水系マスカラのボリューム感が「◎」(専門パネル20名中16名以上がボリューム感あると回答)であったことが記載されている(記載事項3-5、3-7)。 しかしながら、上記【0020】の記載は、「本発明のまつ毛用化粧料には」とあるとおり、油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステルと水分散性ないし水溶性の低置換度ショ糖脂肪酸エステルが配合された引用文献3に記載のまつ毛用化粧料についての記述であって、水系のまつ毛用化粧料全般について述べたものではないし、また、表2に記載の比較例1?3において、油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステルと水分散性ないし水溶性の低置換度ショ糖脂肪酸エステルが併用されていないまつ毛用化粧料(マスカラ)では、満足し得るボリューム感が得られないことからすれば(記載事項3-5、3-6)、水溶性粘土鉱物自体で、水系のまつ毛用化粧料全般において十分なボリューム感が発揮されるものとも認められない。 一方、引用文献2に記載のマスカラ組成物は、高重合度ポリエチレングリコールを配合することによって睫にボリューム感を付与するものであり(記載事項2-2、2-3)、実際、高重合度ポリエチレングリコール(平均分子量150万)を配合した引用発明が睫にかなり優れたボリューム感を付与することが記載されている(記載事項2-5、2-6)。 そうすると、当業者は、引用文献2及び3を見たとしても、油溶性高置換度ショ糖脂肪酸エステルも水分散性ないし水溶性の低置換度ショ糖脂肪酸エステルも含まず、かつ、高重合度ポリエチレングリコールの配合によって優れた睫のボリューム感が付与されている引用発明に、ボリューム感の向上に寄与するか否かが明らかでないヘクトライトを更に配合することなど想到しない。 したがって、相違点1は、引用文献3から当業者が容易に想到し得るものではない。 なお、引用文献2及び3には、マスカラ組成物に粘土鉱物を配合し得ることが記載されているが(記載事項2-4、3-4)、そこには、いかなる目的でいかなる粘土鉱物を配合するのかについて何も記載されていないから、これらの記載は上記の判断を左右するものではない。 (3)本願発明1の効果について 本願明細書の表1には、粘度平均分子量60万?110万の高重合ポリエチレングリコールとヘクトライトの両方を含有する睫用化粧料(実施例1?4、10?13)は、粘度平均分子量60万?110万の高重合ポリエチレングリコールを含有しヘクトライトを含有しない睫用化粧料(比較例2)に比べ、「ロングラッシュ効果」は同程度であるものの、「液伸び効果の持続性」の点でパネラー10名による評価が高いこと、すなわち、ヘクトライトを配合することによって「液伸び効果の持続性」が向上することが示されている。 一方、引用文献2及び3にはヘクトライトを配合することによって液伸び効果の持続性が向上することについて記載も示唆もないから、上記の「液伸び効果の持続性」なる効果は、引用文献2又は3から予測できるものではない。 したがって、本願発明1は、引用文献2又は3の記載からは当業者にも予測し得ない顕著な効果を奏するものである。 なお、この点について、原査定では、 「高重合度ポリエチレングリコールがロングラッシュ効果を高める作用を有することはよく知られたものであり(必要であれば、引用文献2の[0008]、[0009]、特開2008-231069号公報の[0017]、参照)、ヘクトライトが化粧料の保存安定性を高める作用があることもよく知られたものであるから(必要であれば、特開2011-126810号公報の[0023]、特開2008-266252号公報の[0011]、特開平9-175924号公報の[0010]、参照)、当業者であれば、高重合度ポリエチレングリコールとヘクトライトを配合した睫用化粧料が「ロングラッシュ効果」を有することや、ヘクトライトによって保存安定性が高まり、長期保存後も「ロングラッシュ効果」を有する、すなわち、「液伸び効果の持続性」を有することは、予測しうるものであり、本願発明の効果が予測しえない程度の格別顕著な効果であるとは認められない。」(下線は当審による)とされているが、本願明細書の表1に示される「液伸び効果の持続性」は上記周知例に示される「化粧料の保存安定性を高める作用」とは異なる効果であるし、本願明細書の実施例(特に実施例2)と比較例2の「液伸び効果の持続性」の違いが、「化粧料の保存安定性を高める作用」の有無によるものと認めるべき根拠もないから(なお、このことは、令和元年5月29日(受付日)付け手続補足書の内容を参酌すれば一層明らかである。)、上記のとおり、本願発明1が奏する「液伸び効果の持続性」なる効果は顕著な効果というべきものである。 (4)小括 以上のとおりであるから、相違点2、3について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本願発明2及び3について 本願発明2は、本願発明1の水中油型睫用化粧料がステアリン酸等の油性成分を5?50質量%の配合量で含有することを更に特定するものであり、本願発明3は、本願発明1の水中油型睫用化粧料がアクリル酸アルキル共重合体を1?30質量%の配合量で含有することを更に特定するものであって、いずれの発明も本願発明1の発明特定事項の全てを具備するものである。 したがって、本願発明1について説示したのと同様の理由から、本願発明2及び3は、引用文献2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第4 当審が通知した拒絶理由について 平成31年4月12日付けで当審が通知した拒絶理由は、要するに、令和元年5月27日付け手続補正前の請求項1の「前記ヘクトライトによる液伸び持続性を有する」なる記載に不備があるため本願特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさない、というものであるが、同手続補正により当該記載は削除されたので、この拒絶理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審が通知した理由によって本願を拒絶することはできない。 また、他に拒絶理由の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-07-18 |
出願番号 | 特願2015-51702(P2015-51702) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(A61K)
P 1 8・ 121- WY (A61K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 片山 真紀 |
特許庁審判長 |
岡崎 美穂 |
特許庁審判官 |
關 政立 吉田 知美 |
発明の名称 | 睫用化粧料 |
代理人 | 特許業務法人前田特許事務所 |