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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65H
管理番号 1353586
審判番号 不服2018-2425  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-21 
確定日 2019-07-18 
事件の表示 特願2013-162037「シート処理装置及びこれを備えた画像形成システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月16日出願公開、特開2015- 30592〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成25年8月5日の出願であって、平成28年5月27日に手続補正がされ、平成29年4月3日付けで拒絶理由が通知され、同年6月9日に手続補正がされ、同年11月17日付け(発送日:同年11月24日)で拒絶の査定(以下「原査定」という。)がされ、平成30年2月21日に拒絶査定に対する審判の請求がされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年6月9日に補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであり、その記載は次のとおりである。

「シート束を綴じるシート処理装置であって、
シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送方向に搬送されたシートを集積する集積手段と、
前記装置の外部からのシート束がセットされる手差し部と、
前記集積手段に集積されたシート束を綴じる第一の位置と、前記手差し部にセットされたシート束を綴じる第二の位置と、に移動可能に構成される綴じ手段と、
制御手段と、
を有し、
前記第二の位置は、前記搬送方向と直交する方向に関して、第1モードにおいて前記集積手段にシートが搬入される際の搬入エリアの外側に設定され、
前記制御手段は、前記搬送手段によりシートを搬送する前記第1モードと、前記手差し部にセットされたシート束を前記綴じ手段により綴じさせる第2モードと、を実行可能であって、前記第1モードを実行する場合で且つ前記綴じ手段により綴じ処理を実行させない場合、前記綴じ手段を、前記搬入エリアの外側であって、前記第二の位置側に位置させることを特徴とするシート処理装置。」

3.引用文献に記載された事項

(1)原査定の拒絶理由おいてに引用した特開2013-126911号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、強調のために当審で付与した。以下同じ。)

ア.「【0001】
本発明は、シート処理装置及び画像形成システムに係り、特に用紙、転写紙、シートなどのシート状記録媒体(以下、本明細書では、特許請求の範囲を含め「シート」と称する。)に対してオンライン綴じとマニュアル綴じを実行することができる綴じ処理機能を有するシート処理装置、及びこのシート処理装置と、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらのうち少なくとも2つの機能を複合して有するデジタル複合機などの画像形成装置を備えた画像形成システムに関する。」

イ.「【0014】
図2は図1におけるシート後処理装置201の平面図、図3は正面図である。同図において、シート後処理装置201は、シート搬送路240に沿って入口側から入口センサ202、入口ローラ203、分岐爪204、綴じ具210及び排紙ローラ205を備えている。入口センサ202は、画像形成装置101の排紙ローラ102から排紙され、シート後処理装置201に搬入されたシートの先端、後端及びシートの有無を検知する。入口センサ202としては、例えば反射型の光センサが使用される。なお、反射型の光センサに代えて透過型の光センサを使用することもできる。入口ローラ203は、シート後処理装置201の入口に位置し、画像形成装置101の排紙ローラ102によって排紙されるシートを受け取り、ステープル装置202内に搬入する機能を有する。また、後述するが、停止、回転、搬送量を制御可能な駆動源(駆動モータ)と、この駆動源を制御するCPU201aも備えている。入口ローラ203は対となるローラとのニップに画像形成装置101側から搬送されてきたシートの先端部を突き当て、スキュー補正も行う。
【0015】
入口ローラ203の後段には分岐爪204が配置されている。分岐爪204はシート後端を分岐路241に導くために設けられている。この場合には、シート後端が分岐爪241を越えた後、分岐爪241は図示時計回り方向に回転し、シートを搬入方向と逆の方向に搬送する。これにより、シート後端側は分岐路241側に導かれる。分岐爪241は後述するが、ソレノイドによって駆動され、揺動動作を行う。なお、ソレノイドに代えてモータとすることもできる。分岐爪241は図示反時計回り方向に駆動され、回転したとき、分岐路241の搬送面にシートあるいはシート束を押圧することが可能である。これにより分岐爪241はシートあるいはシート束を分岐路241で固定することができる。
【0016】
排紙ローラ205はシート後処理装置201の搬送路240の最後段の出口直前に位置し、シートの搬送、シフト、排出を行う機能を有する。また、入口ローラ203と同様に排紙ローラ205の停止、回転、搬送量を制御可能な駆動源(駆動モータ)を備え、この駆動源は前記CPU201aによって制御される。排紙ローラ205のシフトはシフト機構205Mによって行われる。シフト機構205Mは、シフトリンク206、シフトカム207、シフトカムスタッド208及びシフトホームポジションセンサ209からなる。」

ウ.「【0020】
シート端検知センサ220はシートの側端を検出するセンサで、シートを揃えるときに、このセンサ検知位置を基準に揃える。綴じ具ホームポジションセンサ221はシート幅方向に移動可能な綴じ具の位置を検出するセンサで、最大サイズのシートが搬送されても邪魔にならない位置に綴じ具210が位置するポジションをホームポジションとし、その位置を検出する。ガイドレール230は綴じ具210がシート幅方向に安定して移動可能なように、その綴じ具210の移動をガイドするレールである。ガイドレール230は、綴じ具210がホームポジションからシート後処理装置201の搬送路240のシート搬送方向に直交する全幅を超えて、歯型261がシート後処理装置210の正面の外装面270から突出した綴じ位置まで移動可能なように設置されている(図18参照)。なお、綴じ具210は図示しない駆動モータを含む移動機構によってガイドレール230に沿って移動する。
【0021】
搬送路240は受け入れたシートを搬送し、排出する搬送経路であって、シート後処理装置201の入口側から出口側まで貫通している。分岐路241はシートのスイッチバックにより後端側から搬入される搬送路であり、搬送240から分岐している。分岐路241はシートを重ね合わせて整合するために設けられ、集積手段として機能する。突き当て面242は、分岐路241の末端に設けられ、シート後端を突き当て整合する基準面である。歯型261は、本実施例では一対の凹凸が噛み合うような形状の加圧挟持材であり、シート束を挟み込んで加圧することにより、前記圧着綴じ機能を有する。」

エ.「【0028】
図8ないし図16はシート後処理装置201の綴じ具210によるオンライン綴じの綴じ動作を示す動作説明図である。なお、各図において(a)は平面図、(b)は正面図である。また、本実施形態でオンライン綴じとは、図1に示すように画像形成装置101の排紙口にシート後処理装置201を設置し、画像形成装置101で画像形成されたシートをシート後処理装置201に連続的に受け入れて整合し、綴じ処理を行うことを言う。これに対して後述のマニュアル綴じとは、画像形成装置201若しくは別途印字出力されたシートをシート後処理装置201の綴じ具210で綴じるものである。マニュアル綴じは画像形成装置201の排紙から一連の動作で綴じるものでないので、オフライン綴じということになる。
【0029】
図8はオンライン綴じ動作のイニシャル動作完了時の状態を示す図である。画像形成装置101から画像形成されたシートの出力が開始されると、各部はホームポジションに移動し、イニシャルを完了する。図8はこのときの状態を示す。
【0030】
図9は画像形成装置101から1枚目のシートP1が排紙され、シート後処理装置201に搬入された直後の状態を示す図である。画像形成装置101からシートP1が後処理装置201に搬入される前に、シート後処理装置201のCPU201aは画像形成装置101のCPUから用紙処理の制御モードに関するモード情報とシート情報を受け取り、その情報に基づき、受け入れ待機状態になる。
【0031】
制御モードには、ストレートモード、シフトモード及び綴じモードの3つのモードが設定されている。ストレートモードにおいては、受け入れ待機状態で入口ローラ203及び排紙ローラ205はシート搬送方向に回転を開始し、シートP1,・・・,Pnが順次搬送され、排出されて最終紙Pnが排出された後、入口ローラ208及び排紙ローラ205は停止する。なお、nは2以上の正の整数である。
【0032】
シフトモードにおいては、受け入れ待機状態で入口ローラ203及び排紙ローラ205は搬送方向に回転を開始する。シフト排紙動作は、シートP1を受け入れて搬送し、シートP1の後端が入口ローラ203を抜けたところで、シフトカム207が一定量回転し排紙ローラ205が軸方向に移動する。このときシートP1も排紙ローラ205の移動と共に移動する。また、シートP1が排出されると、シフトカム207が回転してホームポジションに復帰し、次のシートP2の搬入に備える。この排紙ローラ205のシフト動作を同じ部のシートPnの排出が完了するまで繰り返す。これにより、一部(一冊)分のシート束PBが一方にシフトした状態で排紙され、積層される。次の部の1枚目のシート1Pが搬入された場合、シフトカム207は前の部とは逆方向に回転し、シートP1は前の部とは逆側に移動し、排出される。
【0033】
綴じモードにおいては、受け入れ待機状態で入口ローラ203は停止しており、排紙ローラ205が搬送方向に回転を開始する。また、綴じ具210はシート幅より一定量退避した待機位置に移動して待機する。この場合、入口ローラ203はレジストローラとしても機能する。すなわち、1枚目のシートP1がシート後処理装置201に搬入され、シート先端を入口センサ202が検知すると、シート先端が入口ローラ203のニップに突き当たる。そして、一定量の撓みを生じさせる距離だけ画像形成装置101の排紙ローラ102によってシートP1は搬送される。前記距離搬送された後、入口ローラ203の回転が開始される。これによりシートP1のスキュー補正が行われる。図9(a)及び(b)はこのときの状態を示す。
【0034】
図10はシート後端が入口ローラ203のニップから離脱して分岐路241を超えたときの状態を示す図である。シートP1は、シート後端の入口センサ202による検知情報から搬送量がカウントされ、シート搬送位置の位置情報はCPU201aによって把握されている。シート後端が入口ローラ203のニップを通過したら、入口ローラ203は次のシートP2の受け入れのために回転を停止する。それと同じタイミングでシフトカム207が図10の矢印R4方向(図示時計回り方向)に回転し、シートP1をニップした状態で排紙ローラ205は軸方向に移動を開始する。これによりシートP1は図10において矢印D1方向に斜行しながら搬送される。その後、綴じ具210に併設又は組み込まれたシート端検知センサ220がシートPを検知すると、シフトカム207は停止し、次いで逆転し、シート端検知センサ220がシートPの非検知状態でシフトカム207は停止する。そして、前記動作が完了し、シート後端が分岐爪204先端を通過した所定の位置で排紙ローラ205は停止する。
【0035】
図11はシートP1をスイッチバックしてシートP1の搬送方向を整合するときの状態を示す図である。図10の状態から分岐爪204を図示矢印R5方向に回転させ、搬送経路を分岐路241に切り換えた後、排紙ローラ250を逆回転させる。これによりシートP1は矢印D2方向にスイッチバックされ、シート後端が分岐路241に搬入され、さらに、突き当て面242に突き当てられる。このシート後端の突き当てによりシート後端は突き当て面242を基準に揃えられる。シートP1が揃えられると、排紙ローラ205は停止する。このとき、排紙ローラ205はシートP1が突き当て面242に突き当たるとスリップし、搬送力が付与されないようになっている。すなわち、シートP1がスイッチバックして突き当て面242に突き当たり、シート後端が突き当て面242を基準に揃えられると、それ以上、搬送されてシートが座屈しないように設定されている。
【0036】
図12は分岐路241に1枚目のシートP1を待機させ、次の2枚目のシートP2を搬入するときの状態を示す図である。先行の1枚目のシートP1が突き当て面242を基準に揃えられた後、分岐爪204を図示矢印R6方向に回転させる。これにより分岐路241に位置しているシート後端を分岐爪204の下面である接触面204cが分岐路241の表面に強力に押さえ付け、動かない状態にして待機する。後行の2枚目のシートP2が画像形成装置101から搬入されてくると、先行のシートP1と同様に入口ローラ203でスキュー補正を行う。次いで、入口ローラ203の回転が開始するのと同時に排紙ローラ205も搬送方向に回転を開始する。
【0037】
図13は2枚目のシートP2が搬入されてきたときの状態を示す図である。図12の状態から2枚目のシートP2、さらに3枚目以降のシートP3,・・・,Pnが搬送されてきたときも、図10及び図11に示した動作を実行し、順次、画像形成装置101から搬送されてくるシートを予め設定した位置に移動させて重ね合わせ、整合状態のシート束PBを搬送路240内にスタック(集積)する。
【0038】
図14は最終紙Pnを整合してシート束PBを形成したときの状態を示す図である。最終紙Pnを整合状態のシート束PBとして動作完了したら、排紙ローラ204を一定量搬送方向に回転させ停止する。この動作でシート後端を突き当て面242に突き当てたときに発生した撓みを解消させる。その後、分岐爪204を図示矢印R5方向に回転させ、接触面204cを分岐路241から離間させることによりシート束PBへの加圧力を開放する。これによりシート束PBは分岐爪204による拘束力が解除され、排紙ローラ205による搬送が可能となる。
【0039】
図15は綴じ動作時の状態を示す図である。図14の状態から排紙ローラ205を搬送方向に回転させ、綴じ具210の歯型261の位置とシート束PBの綴じ位置が一致する距離分シート束PBを搬送し、その位置で停止させる。これによりシート束PBの搬送方向の加工位置が歯型261の搬送方向の位置と合致する。そして、綴じ具210を綴じ具210の歯型261の位置とシートの加工位置が一致する距離分だけ図示矢印D3方向に移動させ、停止する。これによりシート束PBの幅方向の加工位置が歯型261の位置と搬送方向及び幅方向で合致することになる。このとき、分岐爪204は図示矢印R6方向に回転し、シート受け入れ状態に復帰する。その後、綴じ具駆動モータ265をONし、歯型261によってシート束PBを加圧し、絞りことによって圧着綴じを行う。なお、本実施例では、圧着綴じを行う綴じ具210を使用した例を例示しているが、半抜き加工、切曲げ、切り曲げてさらに穴に通すなどの綴じ方の綴じ具を使用しても良いことは言うまでもない。
【0040】
図16はシート束PBを排紙するときの状態を示す図である。図15に示したようにして綴じられたシート束PBは、排紙ローラ205の回転により排出される。シート束PBが排出され後、シフトカム207を矢印R7方向に回転させ、ホームポジション(図8の位置)に復帰させる。これと並行して綴じ具201を図示矢印D4方向に移動させ、ホームポジション(図8の位置)に復帰させる。これにより、一部(一冊)のシート束PBの整合動作を綴じ動作が完了する。次の部がある場合には、図8から図16の動作を繰り返し、同様にして圧着綴じされた一部のシート束PBを作成する。
【0041】
図17及び図18は綴じ具の移動範囲を示す説明図である。図17は綴じ具210がホームポジションに位置し、図18はマニュアル操作で綴じる綴じ位置に位置した状態をそれぞれ示す。図18の位置が本実施例で言うマニュアル綴じが実行できる位置である。マニュアル綴じは、画像形成装置101から連続してシート処理を行うわけではないので、オフライン綴じである。そのため、綴じるシートは利用者が任意に選択し、あるは異なるロットのシート若しくはシート束を重ね、まとめて綴じることもできる。」

オ.「【0047】
マニュアル綴じモードが選択されると、綴じ具210は図17に示すホームポジションから図18に示すマニュアル綴じモードの位置、すなわち、歯型261が開口部271に突出した位置にガイドレール230に沿って移動する。移動機構はここでは図示していないが、図示しない駆動モータと例えばタイミングベルトを使用した駆動力伝達機構によって移動する。利用者は、綴じ処理を実施したいシート束PBの綴じ位置を図21あるいは図22に示したように開口部271へ差し込む。この差し込み動作に応じて、後述のようにして綴じ具210が駆動され、綴じ処理が行われる。」

カ.【図14】

キ.【図18】

ク.図14及び図18をみると、「綴じ具210がマニュアル操作で綴じる位置」(図18において綴じ具210が位置している位置。上記段落【0041】参照。)は、画像形成装置101から搬送されてくるシートを予め設定した位置に移動させて重ね合わせたシート束PBを形成した位置より、前記移動させる方向と直交する方向において外側であって、ホームポジション(図14、18において「綴じ具ホームポジションセンサ221」がある位置。)の反対側にある」といえる。

ケ.上記「【0029】図8はオンライン綴じ動作のイニシャル動作完了時の状態を示す図である。画像形成装置101から画像形成されたシートの出力が開始されると、各部はホームポジションに移動し、」の「各部」には、「綴じ具210」が含まれると解される。

前記の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。

「シート後処理装置201は、シート搬送路240に沿って入口側から入口センサ202、入口ローラ203、分岐爪204、綴じ具210及び排紙ローラ205を備え、入口ローラ203は、画像形成装置101の排紙ローラ102によって排紙されるシートを受け取り、ステープル装置202内に搬入し、排紙ローラ205は、シートの搬送、シフト、排出を行う機能を有するものであり、
搬送路240は受け入れたシートを搬送し、排出する搬送経路であり、
分岐路241は搬送240から分岐したシートのスイッチバックにより後端側から搬入される搬送路であり、シートを重ね合わせて整合するために設けられた集積手段として機能するものであり、
綴じ処理として、オンライン綴じとマニュアル綴じが実行されるものであり、オンライン綴じは、画像形成装置101で画像形成されたシートをシート後処理装置201に連続的に受け入れて整合し、綴じ処理を行うものであり、マニュアル綴じは、画像形成装置201若しくは別途印字出力されたシートをシート後処理装置201の綴じ具210で綴じるものであり、
綴じ具210が位置するホームポジションは、最大サイズのシートが搬送されても邪魔にならない位置であり、
画像形成装置101から画像形成されたシートの出力が開始されると、綴じ具210は、ホームポジションに移動し、シートP1が後処理装置201に搬入される前に、シート後処理装置201のCPU201aは画像形成装置101のCPUから用紙処理の制御モードに関するモード情報とシート情報を受け取り、受け入れ待機状態になり、制御モードには、ストレートモード、シフトモード及び綴じモードの3つのモードが設定され、
ストレートモードは、シートP1,・・・,Pnが順次搬送され、排出されるものであり、シフトモードは、一部(一冊)分のシート束PBが一方にシフトした状態で排紙され、積層され、排出されるものであり、綴じモードは、画像形成装置101から搬送されてくるシートを予め設定した位置に移動させて重ね合わせ、整合状態のシート束PBを搬送路240内に集積し、綴じ具210を綴じ具210の歯型261の位置とシートの加工位置が一致する距離分だけ移動させ、停止して圧着綴じを行ったシート束PBを排紙するものであり、マニュアル綴じモードは、綴じ具210を、ホームポジションからマニュアル綴じモードの位置に移動し、利用者は、綴じ処理を実施したいシート束PBの綴じ位置を開口部271へ差し込み、この差し込み動作に応じて綴じ具210が駆動され、綴じ処理が行われるものであり、綴じ具210がマニュアル操作で綴じる綴じ位置は、画像形成装置101から搬送されてくるシートを予め設定した位置に移動させて重ね合わせたシート束PBを形成した位置より、前記移動させる方向と直交する方向において外側であって、ホームポジションの反対側にあるシート処理装置。」

(2)原査定に引用された特表2008-512330号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.「【0001】
本発明は、プリンターやコピー機などの画像形成装置から排出された用紙をホチキス留めして後処理するマルチステープル装置(multiple stapling apparatus)に関するものであり、より詳しくは、マルチステープルできるように用紙の基準面を支持するコンパイルトレイ(compile tray)を具備するマルチステープル装置に関するものである。」

イ.「【0040】
用紙(80)は、搬送ローラ(72)によって図2において矢印で示す方向に供給され、コンパイルトレイ(70)上に積み重ねられる。コンパイルトレイ上に積み重ねられた用紙の端部(end)は、第1ガイド(50)の第1基壁(51)によって支持される。この状態では、用紙(80)は、揃えられるだけであり、ホチキス留めはされず、その後、外部のスタッカ(図示せず)に直接的に排出される。或いは、図12に示すように、ステープラ(75)が回転して、用紙(80)の隅部(edge)をホチキス留めした後、ストッカに排出する。
【0041】
コンパイルトレイ(70)の上に積み重ねられた用紙をマルチステープルするために、ステープラ(75)が第1ガイド(50)の方に移動すると、図5に示すように、第1ガイド(50)の突起(53)がステープラ(75)の上面と隣接する。このことにより、第1ガイド(50)がクランプシャフト(65)を中心にして回転して持ち上げられる。その結果、第1基壁(51)が開く。第1基壁(51)が開かれると、正確にホチキス留めするために、コンパイルトレイ(70)の上に揃えられた用紙(80)は、ステープラの両端側に位置する第2ガイド(60a),(60b)の第2基壁(61a),(61b)によって支持される。
【0042】
図6乃至図9に示すように、用紙(80)は、ステープラ(75)の位置に従って、ホチキス留めされる。
【0043】
図6は、ステープラ(75)のホームポジション(94)において、用紙(80)が手動でホチキス留めされる場合を示している。この状態では、第2ガイド(60a)はステープラ(75)の一方の側(図6では左側)と係合し、第2ガイド(60b)は第1ガイド(50)のクランプ(52b)と係合する。したがって、第2ガイドは、ステープラから一定の距離だけ離れる。」

前記の記載を総合すると、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2記載の技術」という。)が開示されていると認められる。

「プリンターやコピー機などの画像形成装置から排出された用紙をホチキス留めして後処理するマルチステープル装置において、用紙(80)は、搬送ローラ(72)によって供給され、コンパイルトレイ(70)上に積み重ねられ、コンパイルトレイ(70)の上に積み重ねられた用紙をマルチステープルするために、ステープラ(75)が移動し、用紙(80)は、ステープラ(75)の位置に従って、ホチキス留めされ、ステープラ(75)のホームポジション(94)において、用紙(80)が手動でホチキス留めされるマルチステープル装置。」

4.対比

本願発明と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1の「シート後処理装置201」は本願発明の「シート処理装置」に相当し、以下同様に、「入口ローラ203」及び「排紙ローラ205」は「シートを搬送する搬送手段」に、「綴じ具210」は「綴じ手段」に、「シート」は「シート」に、「シート束PB」は「シート束」に、「CPU201a」は「制御手段」にそれぞれ相当する。

(2)引用発明1の「シート後処理装置201」は、「綴じモード」及び「マニュアル綴じモード」において、「シート束PB」を綴じるものであるから、本願発明の「シート束を綴じるシート処理装置」に相当する。

(3)引用発明1の「分岐路241は搬送路240から分岐したシートのスイッチバックにより後端側から搬入される搬送路であり、シートを重ね合わせて整合するために設けられた集積手段として機能」するから、引用発明1の「分岐路241」は、本願発明の「集積手段」に相当する。

(4)引用発明1は、「入口ローラ203は、シート後処理装置201の入口に位置し、画像形成装置101の排紙ローラ102によって排紙されるシートを受け取り、ステープル装置202内に搬入し、「搬送路240は受け入れたシートを搬送し、排出する搬送経路であって、分岐路241」はシートのスイッチバックにより後端側から搬入される搬送路」であり、上記「入口ローラ203」、「分岐路241」それぞれは、本願発明の「搬送手段」、「集積手段」に相当する(それぞれ上記(1)、(3)参照。」)から、引用発明1と本願発明は、「搬送手段により搬送方向に搬送されたシートを集積する」ものであることで一致する。

(5)引用発明1の「マニュアル綴じモード」において、「利用者は、綴じ処理を実施したいシート束PBの綴じ位置を開口部271へ差し込み、この差し込み動作に応じて綴じ具210が駆動され、綴じ処理が行われる」から、上記「利用者」によって「開口部271へ差し込」まれる「シート束PB」は、本願発明の「装置の外部からのシート束」に相当し、引用発明1の上記「開口部271」は、本願発明のシート束がセットされる「手差し部」に相当する。

(6)引用発明1は、「綴じモード」においては、「画像形成装置101から搬送されてくるシートを予め設定した位置に移動させて重ね合わせ、整合状態のシート束PBを搬送路240内に集積し」、「綴じ具210を綴じ具210の歯型261の位置とシートの加工位置が一致する距離分だけ移動させ、停止して圧着綴じを行」うものであり、上記「綴じ具210を」「一致する距離分だけ移動させ、停止して圧着綴じを行」う位置は、本願発明の「集積手段に集積されたシート束を綴じる第一の位置」に相当する。
引用発明1の「綴じ具210がマニュアル操作で綴じる綴じ位置」は、本願発明の「手差し部にセットされたシート束を綴じる第二の位置」に相当する。
また、引用発明1において、「綴じ具210」が、「圧着綴じを行」う位置と「マニュアル操作で綴じる綴じ位置」は、異なる位置であるから、「綴じ具210」は、上記両位置の間を移動するものである。
よって、本願発明1と引用発明1は、集積手段に集積されたシート束を綴じる第一の位置と、前記手差し部にセットされたシート束を綴じる第二の位置と、に移動可能に構成される綴じ手段を備えることで一致する。

(7)引用発明1は、「画像形成装置101から画像形成されたシートの出力が開始されると、」「シートP1が後処理装置201に搬入される前に、」「シート後処理装置201のCPU201aは画像形成装置101のCPUから用紙処理の制御モードに関するモード情報」「を受け取り、」「制御モードには、ストレートモード、シフトモード及び綴じモードの3つのモードが設定され」るものであるから、前記「ストレートモード」、「シフトモード」、「綴じモード」は、本願発明の「搬送手段によりシートを搬送する前記第1モード」に相当する。

(8)引用発明1において、「マニュアル綴じモード」は、「利用者は、綴じ処理を実施したいシート束PBの綴じ位置を開口部271へ差し込み、この差し込み動作に応じて綴じ具210が駆動され、綴じ処理が行われる」ものであり、上記(5)の検討のとおり、引用文献1の「開口部271」は、本願発明の「手差し部」に相当するから、引用発明1の上記「マニュアル綴じモード」は、本願発明の「手差し部にセットされたシート束を前記綴じ手段により綴じさせる第2モード」に相当する。

(9)引用発明1は、「綴じ具210がマニュアル操作で綴じる綴じ位置は、画像形成装置101から搬送されてくるシートを予め設定した位置に移動させて重ね合わせたシート束PBを形成した位置より、前記移動させる方向と直交する方向において外側にあ」るものであり、上記「マニュアル操作で綴じる綴じ位置」は本願発明1の「第二の位置」に相当し、上記「画像形成装置101から搬送されてくるシートを予め設定した位置に移動させて重ね合わせたシート束PBを形成した位置」は本願発明の「第1モードにおいて前記集積手段にシートが搬入される際の搬入エリア」に相当するから、本願発明と引用発明1は「前記第二の位置は、前記搬送方向と直交する方向に関して、第1モードにおいて前記集積手段にシートが搬入される際の搬入エリアの外側に設定され」る点で一致する。

(10)上記(7)で検討したとおり、引用発明1の「ストレートモード」及び「シフトモード」は、本願発明の「搬送手段によりシートを搬送する前記第1モード」に相当し、上記「ストレートモード」、「シフトモード」は「シートを綴じるモード」ではない。
よって、引用発明1の「ストレートモード」及び「シフトモード」は、本願発明の「第1モードを実行する場合で且つ前記綴じ手段により綴じ処理を実行させない場合」に相当する。

(11)引用発明1は、「画像形成装置101から画像形成されたシートの出力が開始されると、綴じ具210は、ホームポジションに移動」するものであり、上記(10)で検討したとおり「シートを綴じるモード」ではない「ストレートモード」及び「シフトモード」の場合、「綴じ具210」は「最大サイズのシートが搬送されても邪魔にならない位置」である「ホームポジション」に位置したままであると解される。
また引用発明1の「ホームポジション」とは「最大サイズのシートが搬送されても邪魔にならない位置に綴じ具210が位置するポジション」であるので、本願発明の「搬入エリアの外側」に相当する。
よって、本願発明と引用発明1は、「第1モードを実行する場合で且つ前記綴じ手段により綴じ処理を実行させない場合、前記綴じ手段を、前記搬入エリアの外側に位置させる」点で一致する。

以上のことより、両者は、

〈一致点〉

「シート束を綴じるシート処理装置であって、
シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送方向に搬送されたシートを集積する集積手段と、
前記装置の外部からのシート束がセットされる手差し部と、
前記集積手段に集積されたシート束を綴じる第一の位置と、前記手差し部にセットされたシート束を綴じる第二の位置と、に移動可能に構成される綴じ手段と、
制御手段と、
を有し、
前記第二の位置は、前記搬送方向と直交する方向に関して、第1モードにおいて前記集積手段にシートが搬入される際の搬入エリアの外側に設定され、
前記制御手段は、前記搬送手段によりシートを搬送する前記第1モードと、前記手差し部にセットされたシート束を前記綴じ手段により綴じさせる第2モードと、を実行可能であって、前記第1モードを実行する場合で且つ前記綴じ手段により綴じ処理を実行させない場合、前記綴じ手段を、前記搬入エリアの外側に位置させることを特徴とするシート処理装置。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>

相違点:本願発明の「前記第1モードを実行する場合で且つ前記綴じ手段により綴じ処理を実行させない場合」に「綴じ手段」を位置させる位置が「第二の位置側」であり、「第二の位置」とは、「手差し部にセットされたシート束を綴じる」位置のことであるのに対して、引用発明1において「ストレートモード」及び「シフトモード」(本願発明の「第1モードを実行する場合で且つ前記綴じ手段により綴じ処理を実行させない場合」に相当。上記(10)参照。)の場合は、「ホームポジション」に位置していると解され(上記(11)参照。)、「ホームポジション」とは、「綴じ具210がマニュアル操作で綴じる綴じ位置」「の反対側にある」点で相違している。

5.判断

相違点について検討する。
引用発明1において、「ストレートモード」及び「シフトモード」(本願発明の「第1モードを実行する場合で且つ前記綴じ手段により綴じ処理を実行させない」)の場合に「綴じ手段」をシートの搬入エリアの外側にさえ位置させれば、綴じ手段がシートの搬入に邪魔になることはなく、その際に搬入エリアの外側の一方側か他方側のいずれかに綴じ手段を位置させるかを設定することは、それぞれの得失を勘案したうえで二者択一をする程度のことであり、引用発明1において、当業者が上記得失の勘案の結果、「ストレートモード」及び「シフトモード」(本願発明の「第1モードを実行する場合で且つ前記綴じ手段により綴じ処理を実行させない」)の場合に「綴じ手段」を綴じ具210がマニュアル操作で綴じる綴じ位置の反対側においていたのを、綴じ具210がマニュアル操作で綴じる綴じ位置側に変更することは格別困難なことではないし、上記引用文献2記載の技術において「ステープラ(75)(本願発明の「綴じ手段」に相当)のホームポジション(94)において、用紙(80)が手動でホチキス留めされる」のように「用紙(80)が手動でホチキス留めされる」位置とホームポジションが同じである技術も存在する。
本願出願人は平成29年6月9日提出の意見書において「このうち、本発明に係るシート処理装置の特に主要な構成は、「制御手段」が、「前記搬送手段によりシートを搬送する前記第1モードと、前記手差し部にセットされたシート束を前記綴じ手段により綴じさせる第2モードと、を実行可能であって、前記第1モードを実行する場合で且つ前記綴じ手段により綴じ処理を実行させない場合、前記綴じ手段を、前記搬入エリアの外側であって、前記第二の位置側に位置させる」点にあります。
これにより、本発明は、手差し部にセットされたシート束を綴じる処理を迅速に行うことができるという特有の効果を奏します。」と主張しているが、引用発明1においても、「綴じ具210がマニュアル操作で綴じる綴じ位置」と「ホームポジション」の位置を搬入エリアの外側の同じ側に設定すれば、上記両位置の距離か短縮され、上記両位置間の「綴じ具210」の移動を迅速にする効果を奏するであろうとの予想をし、上記のように、「ストレートモード」及び「シフトモード」(本願発明の「第1モードを実行する場合で且つ前記綴じ手段により綴じ処理を実行させない」)の場合に「綴じ手段」を綴じ具210がマニュアル操作の綴じ位置の反対側においていたのを、綴じ具210がマニュアル操作の綴じ位置側に変更することは当業者にとって格別困難なことではない。

したがって、本願発明は、引用発明1、引用文献2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用文献2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2019-05-22 
結審通知日 2019-05-23 
審決日 2019-06-04 
出願番号 特願2013-162037(P2013-162037)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (B65H)
P 1 8・ 121- WZ (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 笹木 俊男  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 畑井 順一
吉村 尚
発明の名称 シート処理装置及びこれを備えた画像形成システム  
代理人 西山 善章  

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