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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1353590
審判番号 不服2018-7080  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-24 
確定日 2019-07-18 
事件の表示 特願2014- 17296「積層体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月23日出願公開、特開2015- 79230〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成26年1月31日(優先権主張 平成25年9月10日)を出願日とする出願であって、平成29年7月25日付けで拒絶理由が通知され、同年9月28日付けで意見書が提出されるとともに手続補正書が提出され、平成30年2月26日付けで拒絶査定がなされ、同年5月24日付けで本件拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成30年5月24日付けの手続補正書による手続補正についての補正却下の決定

[結論]
平成30年5月24日付けの手続補正書(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前、すなわち、平成29年9月28日付けの手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項3の記載は、次のとおりである。

「偏光層、λ/2層、λ/4層、転写接着層及びポジティブC層をこの順に含む積層体の製造方法であって、
λ/2層およびλ/4層をそれぞれ、重合性液晶を含む位相差層形成用組成物を基材上に塗布して乾燥させ、配向させた後に重合することにより形成する工程を含み、
接着体が、転写接着層、ポジティブC層及び基材をこの順に含む積層体であり、
被着体が、λ/4層を含む被着体、
λ/4層及びλ/2層をこの順に含む積層体、
又は、
λ/4層、λ/2層及び偏光層をこの順に含む積層体であり、
接着体の転写接着層側の面と、被着体のλ/4層側の面とを、転写接着層を介して貼合し、基材を剥離する工程を含む前記積層体の製造方法。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項3の記載は、次のとおり補正された。なお、下線は当合議体が付したものであり、補正箇所を示す。

「偏光層、λ/2層、λ/4層、転写接着層及びポジティブC層をこの順に含み、前記λ/2層、λ/4層及びポジティブC層の厚さがそれぞれ0.2μm?5μmである反射防止のための円偏光板の製造方法であって、
λ/2層およびλ/4層をそれぞれ、重合性液晶を含む位相差層形成用組成物を基材上に塗布して乾燥させ、配向させた後に重合することにより形成する工程を含み、
接着体が、転写接着層、ポジティブC層及び基材をこの順に含む積層体であり、
被着体が、λ/4層を含む被着体、
λ/4層及びλ/2層をこの順に含む積層体、
又は、
λ/4層、λ/2層及び偏光層をこの順に含む積層体であり、
接着体の転写接着層側の面と、被着体のλ/4層側の面とを、転写接着層を介して貼合し、基材を剥離する工程を含む前記円偏光板の製造方法。」

2 補正の適否
請求項3についてした本件補正は、本件補正前の請求項3に記載された発明を特定する事項である「偏光層、λ/2層、λ/4層、転写接着層及びポジティブC層をこの順に含む積層体」を、「偏光層、λ/2層、λ/4層、転写接着層及びポジティブC層をこの順に含み、前記λ/2層、λ/4層及びポジティブC層の厚さがそれぞれ0.2μm?5μmである反射防止のための円偏光板」に限定するものである。
また、本件補正前の請求項3に係る発明と本件補正後の請求項3に係る発明の、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、請求項3についてした本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。

3 新規事項の追加の有無について
請求項3についてした本件補正は、本件出願の願書に最初に添付した明細書の段落【0009】、【0092】及び【0233】に記載に基づくものである。
したがって、請求項3についてした本件補正は、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。

4 独立特許要件について
前記2で述べたとおりであるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項3に係る発明(以下、「本件補正後発明」という。)について、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正後発明
本件補正後発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2) 引用例及び引用発明
ア 引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本件出願の優先権主張の日(以下、「本件優先日」という。)前に頒布された刊行物である特開2006-163343号公報(以下、「引用例1」という。)には次の記載がある(なお、下線は、当合議体が付したものである。)。

(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、楕円偏光板およびそれを用いた画像表示装置に関する。より詳細には、本発明は、斜め方向についても優れた特性を有する、広帯域かつ広視野角の楕円偏光板およびそれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の各種画像表示装置には、一般に、光学的な補償を行うために、偏光フィルムと位相差板とを組み合わせた様々な光学フィルムが使用されている。
・・・略・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、斜め方向についても優れた特性を有する、広帯域かつ広視野角の楕円偏光板およびそれを用いた画像表示装置を提供することにある。」

(イ) 「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、楕円偏光板の特性について鋭意検討した結果、λ/4板とλ/2板に加えて、特定の光学特性を有する複屈折層をさらに積層することにより、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の楕円偏光板は、偏光子と;該偏光子の片側に形成された保護層と;λ/2板として機能する第1の複屈折層と;λ/4板として機能する第2の複屈折層と;nz>nx=nyの屈折率分布を有する第3の複屈折層とを有し、該保護層の厚み方向の位相差の絶対値Rthpと該第3の複屈折層の厚み方向の位相差の絶対値Rth_(3)との比Rth_(3)/Rthpが、1.1?4の範囲である。
・・・略・・・
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、nz>nx=nyの屈折率分布を有する第3の複屈折層であって、保護層の厚み方向の位相差の絶対値Rthpと当該第3の複屈折層の厚み方向の位相差の絶対値Rth_(3)との比Rth_(3)/Rthpが、1.1?4の範囲であるような第3の複屈折層を、λ/4板およびλ/2板と組み合わせて用いることにより、斜め方向についても優れた特性を有する、広帯域かつ広視野角の楕円偏光板およびそれを用いた画像表示装置が得られる。」

(ウ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
A.楕円偏光板
A-1.楕円偏光板の全体構成
本発明の楕円偏光板は、偏光子と保護層と第1の複屈折層と第2の複屈折層と第3の複屈折層とが積層されてなる。各層の積層順序としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な積層順序が採用され得る。例えば、図1(a)に示すように、楕円偏光板10は、偏光子11と保護層12と第1の複屈折層13と第2の複屈折層14と第3の複屈折層15とを、この順に有し得る。このような構成によれば、斜めから見たときの各層の光軸のズレや保護層の位相差に起因する偏光状態のズレを良好に補償できるので、広視野角での偏光板としての機能を確保し得る。
・・・略・・・
【0019】
上記第1の複屈折層13は、いわゆるλ/2板として機能し得る。本明細書において、λ/2板とは、ある特定の振動方向を有する直線偏光を、当該直線偏光の振動方向とは直交する振動方向を有する直線偏光に変換したり、右円偏光を左円偏光に(または、左円偏光を右円偏光に)変換したりする機能を有するものをいう。上記第2の複屈折層14は、いわゆるλ/4板として機能し得る。本明細書において、λ/4板とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有するものをいう。上記第3の複屈折層15は、nz>nx=nyの屈折率分布を有する。さらに、保護層12の厚み方向の位相差の絶対値Rthpと第3の複屈折層15の厚み方向の位相差の絶対値Rth_(3)との比Rth_(3)/Rthpは1.1?4.0の範囲、好ましくは1.5?3.0の範囲である。保護層12と第3の複屈折層15の厚み方向の位相差がこのような関係を有することにより、保護層の位相差を良好に補償することが可能となり、結果として、きわめて優れた斜め方向の特性を有する楕円偏光板が得られ得る。ここで、nxは面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、nyは面内で遅相軸に垂直な方向の屈折率であり、nzは厚み方向の屈折率である。厚み方向の位相差Rthは、23℃における波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。厚み方向の位相差Rthは、d(nm)をフィルム(層)の厚みとしたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。nx、nzは上記の通りである。Rthは、通常、波長590nmにおいて測定される。また、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。本明細書において「実質的に等しい」とは、楕円偏光板の全体的な偏光特性に実用上の影響を与えない範囲でnxとnyが異なる場合も包含する趣旨である。
【0020】
図2は、本発明の好ましい実施形態による楕円偏光板を構成する各層の光軸を説明する分解斜視図である。(なお、図2においては、見易くするために第2の保護層16を省略している。)上記第1の複屈折層13は、その遅相軸Bが偏光子11の吸収軸Aに対して所定の角度αを規定するようにして積層されている。角度αは、好ましくは+8°?+38°または-8°?-38°であり、・・・略・・・最も好ましくは+23°?+24°または-23°?-24°である。第1の複屈折層と偏光子とがこのような角度αをなすようにして積層されることにより、非常に優れた円偏光特性を有する偏光板が得られ得る。さらに、図2に示すように、上記第2の複屈折層14は、その遅相軸Cが偏光子11の吸収軸Aに対して実質的に直交するようにして積層されている。本明細書において、「実質的に直交」とは、・・・略・・さらに好ましくは90°±0.5°である。
【0021】
本発明の楕円偏光板の全体厚みは、好ましくは80?250μmであり、さらに好ましくは110?220μmであり、最も好ましくは140?190μmである。本発明の楕円偏光板の製造方法(後述)によれば、第1の複屈折層(および、場合によっては第3の複屈折層)を接着剤を用いることなく積層することができるので、従来の楕円偏光板に比べて、全体厚みが最小で4分の1程度にまで薄くすることができる。結果として、本発明の楕円偏光板は、画像表示装置の薄型化に大きく貢献し得る。以下、本発明の楕円偏光板を構成する各層の詳細について説明する。
【0022】
A-2.第1の複屈折層
上記のように、第1の複屈折層13は、いわゆるλ/2板として機能し得る。第1の複屈折層がλ/2板として機能することにより、λ/4板として機能する第2の複屈折層の波長分散特性(特に、位相差がλ/4を外れる波長範囲)について、位相差が適切に調節され得る。このような第1の複屈折層の面内位相差(Δnd)は、波長590nmにおいて、好ましくは180?300nmであり、さらに好ましくは210?280nmであり、最も好ましくは230?240nmである。なお、面内位相差(Δnd)は、式Δnd=(nx-ny)×dから求められる。ここで、nxおよびnyは上記の通りであり、dは第1の複屈折層の厚さである。さらに、上記第1の複屈折層13は、nx>ny=nzの屈折率分布を有することが好ましい。本明細書において、「ny=nz」は、nyとnzが厳密に等しい場合のみならず、nyとnzが実質的に等しい場合も包含する。
【0023】
上記第1の複屈折層の厚みは、λ/2板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは0.5?5μmであり、さらに好ましくは1?4μmであり、最も好ましくは1.5?3μmである。
【0024】
上記第1の複屈折層を形成する材料としては、上記のような特性が得られる限りにおいて任意の適切な材料が採用され得る。液晶材料が好ましく、液晶相がネマチック相である液晶材料(ネマチック液晶)がさらに好ましい。液晶材料を用いることにより、得られる複屈折層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができる。その結果、所望の面内位相差を得るための複屈折層の厚みを格段に小さくすることができる。このような液晶材料としては、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶材料の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。また、液晶の配向状態は、ホモジニアス配向であることが好ましい。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。
【0025】
上記液晶材料が液晶性モノマーである場合、例えば、重合性モノマーおよび架橋性モノマーであることが好ましい。これは、後述するように、液晶性モノマーを重合または架橋させることによって、液晶性モノマーの配向状態を固定できるためである。液晶性モノマーを配向させた後に、例えば、液晶性モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された第1の複屈折層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、第1の複屈折層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた複屈折層となる。
【0026】
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。
【0027】
上記液晶モノマーとしては、例えば、ネマチック性液晶モノマーが好ましく、具体的には、下記式(1)で表されるモノマーが挙げられる。これらの液晶モノマーは、単独で、または2つ以上を組み合わせて用いられ得る。
【0028】
【化1】

【0029】
上記式(1)において、A^(1)およびA^(2)は、それぞれ重合性基を表し、同一でも異なっていてもよい。また、A^(1)およびA^(2)はいずれか一方が水素であってもよい。Xは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-C=N-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-CO-NR-、-NR-CO-、-NR-、-O-CO-NR-、-NR-CO-O-、-CH_(2)-O-または-NR-CO-NRを表し、Rは、HまたはC_(1)?C_(4)アルキルを表し、Mはメソゲン基を表す。
【0030】
上記式(1)において、Xは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0031】
上記式(1)のモノマーの中でも、A^(2)は、それぞれ、A^(1)に対してオルト位に配置されていることが好ましい。
【0032】
さらに、上記A^(1)およびA^(2)は、それぞれ独立して、下記式
Z-X-(Sp)_(n) ・・・(2)
で表されることが好ましく、A^(1)およびA^(2)は同じ基であることが好ましい。
【0033】
上記式(2)において、Zは架橋性基を表し、Xは上記式(1)で定義した通りであり、Spは、1?30個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の置換または非置換のアルキル基からなるスペーサーを表し、nは、0または1を表す。上記Spにおける炭素鎖は、例えば、エーテル官能基中の酸素、チオエーテル官能基中の硫黄、非隣接イミノ基またはC_(1)?C_(4)のアルキルイミノ基等により割り込まれていてもよい。
【0034】
上記式(2)において、Zは、下記式で表される原子団のいずれかであることが好ましい。下記式において、Rとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル等の基が挙げられる。
また、上記式(2)において、Spは、下記式で表される原子団のいずれかであることが好ましく、下記式において、mは1?3、pは1?12であることが好ましい。
【0035】
【化2】

【0036】
また、上記式(2)において、Spは、下記式で表される原子団のいずれかであることが好ましく、下記式において、mは1?3、pは1?12であることが好ましい。
【0037】
【化3】


【0038】
上記式(1)において、Mは、下記式(3)で表されることが好ましい。下記式(3)において、Xは、上記式(1)において定義したのと同様である。Qは、例えば、置換または非置換の直鎖もしくは分枝鎖アルキレンもしくは芳香族炭化水素原子団を表す。Qは、例えば、置換または非置換の直鎖もしくは分枝鎖C_(1)?C_(12)アルキレン等であり得る。
【0039】
【化4】

【0040】
上記Qが芳香族炭化水素原子団である場合、例えば、下記式に表されるような原子団や、それらの置換類似体が好ましい。
【0041】
【化5】

【0042】
上記式で表される芳香族炭化水素原子団の置換類似体としては、例えば、芳香族環1個につき1?4個の置換基を有してもよく、また、芳香族環または基1個につき、1または2個の置換基を有してもよい。上記置換基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。上記置換基としては、例えば、C_(1)?C_(4)アルキル、ニトロ、F、Cl、Br、I等のハロゲン、フェニル、C_(1)?C_(4)アルコキシ等が挙げられる。
【0043】
上記液晶モノマーの具体例としては、例えば、下記式(4)?(19)で表されるモノマーが挙げられる。
【0044】
【化6】

【0045】
上記液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40?120℃であり、さらに好ましくは50?100℃であり、最も好ましくは60?90℃である。
【0046】
A-3.第2の複屈折層
上記のように、第2の複屈折層14は、いわゆるλ/4板として機能し得る。本発明によれば、λ/4板として機能する第2の複屈折層の波長分散特性を、上記λ/2板として機能する第1の複屈折層の光学特性によって補正することによって、広い波長範囲での円偏光機能を発揮することができる。このような第2の複屈折層の面内位相差(Δnd)は、波長550nmにおいて、好ましくは90?180nmであり、さらに好ましくは90?150nmであり、最も好ましくは105?135nmである。第2の複屈折層のNz係数(=(nx-nz)/(nx-ny))は、好ましくは1.0?2.2であり、さらに好ましくは1.2?2.0であり、最も好ましくは1.4?1.8である。さらに、上記第2の複屈折層14は、nx>ny>nzの屈折率分布を有することが好ましい。
【0047】
上記第2の複屈折層の厚みは、λ/4板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは10?100μmであり、さらに好ましくは20?80μmであり、最も好ましくは40?70μmである。
・・・略・・・
【0050】
あるいは、第2の複屈折層は、重合性液晶とカイラル剤とを含む樹脂組成物から形成されたフィルムから構成される。重合性液晶およびカイラル剤は、特開2003-287623号公報に記載されており、その開示は本明細書に参考として援用される。例えば、任意の適切な基材に当該樹脂組成物を塗工し、重合性液晶が液晶状態を呈する温度に加熱すると、重合性液晶がカイラル剤によってねじられた状態で(より具体的には、コレステリック構造を形成して)配向する。この状態で、重合性液晶を重合すると、当該コレステリック構造が固定されて配向されたフィルムが得られる。組成物中のカイラル剤の含有量を調整することにより、コレステリック構造のねじれ度を変化させることが可能となり、その結果、形成される第2の複屈折層の遅相軸の方向を制御することができる。このようなフィルムによれば、遅相軸の方向を偏光子の吸収軸に対して平行または直交以外の角度に設定できるので、非常に好ましい。
【0051】
A-4.第3の複屈折層
上記のように、第3の複屈折層15は、nz>nx=nyの屈折率分布を有し、いわゆるポジティブCプレートとして機能し得る。さらに、上記のように、第3の複屈折層の厚み方向の位相差の絶対値Rth_(3)は、保護層の厚み方向の位相差の絶対値Rthpに対して特定の比率を有する。このような光学特性を有する第3の複屈折層を設けることにより、保護層の厚み方向の位相差を良好に補償することができる。その結果、斜め方向についても非常に優れた特性を有する楕円偏光板が得られ得る。
【0052】
上記のように、第3の複屈折層の厚み方向の位相差の絶対値Rth_(3)は、保護層の厚み方向の位相差の絶対値Rthpに応じて最適化され得る。例えば、第3の複屈折層の厚み方向の位相差の絶対値Rth_(3)は、好ましくは50?200nmであり、さらに好ましくは75?150nmであり、最も好ましくは90?120nmである。このような絶対値が得られ得る第3の複屈折層の厚みは、使用される材料等に応じて変化し得る。例えば、第3の複屈折層の厚みは、好ましくは0.5?10μmであり、さらに好ましくは0.5?8μmであり、最も好ましくは0.5?5μmである。
【0053】
上記第3の複屈折層は、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。代表的な液晶化合物としては、例えば、ネマチック液晶化合物が挙げられる。このような液晶化合物の配向技術に関する概説は、例えば、化学総説44(表面の改質、日本化学会編、156?163頁)に記載されている。
【0054】
また、ホメオトロピック配向を形成し得る液晶材料としては、例えば、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)と非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)とを含有する側鎖型液晶ポリマーが挙げられる。このような側鎖型液晶ポリマーは、垂直配向剤も垂直配向膜も用いずにホメオトロピック配向を実現することができる。当該側鎖型液晶ポリマーは、通常の側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)に加えて、アルキル鎖等を有する非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)を有する。この非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)の作用により、垂直配向剤や垂直配向膜を用いなくても、例えば熱処理により液晶状態(例えば、ネマチック液晶相)を発現させることができ、ホメオトロピック配向を実現することができると推察される。
・・・略・・・
【0078】
A-5.偏光子
上記偏光子11としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。・・・略・・・これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1?80μm程度である。
・・・略・・・
【0081】
A-6.保護層
保護層12および第2の保護層16は、偏光板の保護フィルムとして使用できる任意の適切なフィルムからなる。このようなフィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂・・・略・・・等の透明樹脂等が挙げられる。・・・略・・・TAC、ポリイミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ガラス質系ポリマーが好ましく、TACがさらに好ましい。上記第3の複屈折層と組み合わせて用いることにより、斜め方向の円偏光特性の改善が著しいからである。
【0082】
上記保護層は、透明で、色付きが無いことが好ましい。具体的には、厚み方向の位相差値が、好ましくは-90nm?+90nmであり、さらに好ましくは-80nm?+80nmであり、最も好ましくは-70nm?+70nmである。
【0083】
上記保護層の厚みとしては、上記の好ましい厚み方向の位相差が得られる限りにおいて、任意の適切な厚みが採用され得る。具体的には、保護層の厚みは、好ましくは1?100μmであり、さらに好ましくは5?80μmであり、最も好ましくは10?50μmである。
【0084】
B.楕円偏光板の製造方法
本発明の1つの実施形態における楕円偏光板の製造方法は、透明保護フィルム(最終的に保護層12となる)の表面に配向処理を施す工程と;当該配向処理を施した透明保護フィルム表面に第1の複屈折層を形成する工程と;当該保護フィルムの配向処理を施していない表面に偏光子を積層する工程と;第1の複屈折層の表面に第2の複屈折層を形成する工程と;第2の複屈折層の表面に第3の複屈折層を形成する工程とを含む。このような製造方法によれば、例えば、図1(a)に示すような楕円偏光板が得られる。
・・・略・・・
【0085】
上記の各工程の順序および/または配向処理が施されるフィルムは、目的とする楕円偏光板の積層構造に応じて適宜変更され得る。例えば、偏光子の積層工程は、いずれの複屈折層の形成工程または積層工程の後に行ってもよい。また例えば、配向処理は透明保護フィルムに施されてもよく、任意の適切な基材に施してもよい。基材に配向処理を施す場合には、当該基材上に形成されたフィルム(具体的には、第1の複屈折層)は、楕円偏光板の所望の積層構造に応じて適切な順序で転写(積層)され得る。以下、各工程の詳細について説明する。簡単のため、図1(a)および(b)に示すような楕円偏光板の製造手順のみを説明する。さらに、図1(a)に示すような楕円偏光板の製造手順について詳細に説明し、図1(b)に示すような楕円偏光板の製造手順はその特徴的な部分のみを説明する。
【0086】
B-1.透明保護フィルムの配向処理
透明保護フィルム(最終的に保護層12となる)の表面に配向処理を施し、当該表面に所定の液晶材料を含む塗工液を塗工することにより、図2に示すように、偏光子11の吸収軸に対して角度αをなすような遅相軸を有する第1の複屈折層13を形成することができる(第1の複屈折層の形成工程は後述する)。
・・・略・・・
【0088】
上記配向処理の配向方向は、透明保護フィルムと偏光子を積層した場合に偏光子の吸収軸と所定の角度をなすような方向である。この配向方向は、後述するように、形成される第1の複屈折層13の遅相軸の方向と実質的に同一である。したがって、上記所定の角度は、好ましくは+8°?+38°または-8°?-38°であり、・・・略・・・最も好ましくは+23°?+24°または-23°?-24°である。
・・・略・・・
【0091】
B-2.第1の複屈折層を形成する液晶材料の塗工工程
次に、上記配向処理を施した透明保護フィルム表面に上記A-2項で説明したような液晶材料を含有する塗工液を塗工し、次いで当該液晶材料を配向させて第1の複屈折層を形成する。具体的には、液晶材料を適切な溶媒に溶解または分散した塗工液を調製し、この塗工液を、上記配向処理を施した透明保護フィルム表面に塗工すればよい。液晶材料の配向工程は後述のB-3項で説明する。
【0092】
上記溶媒としては、上記液晶材料を溶解または分散し得る任意の適切な溶媒が採用され得る。使用される溶媒の種類は、液晶材料の種類等に応じて適宜選択され得る。溶媒の具体例としては、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、フェノール、p-クロロフェノール、o-クロロフェノール、m-クレゾール、o-クレゾール、p-クレゾールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン・・・略・・・メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン・・・略・・・酢酸エチル、酢酸ブチル・・・略・・・などのエステル系溶媒・・・略・・・エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ等が挙げられる。好ましくは、トルエン、キシレン、メシチレン、MEK、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸エチルセロソルブである。これらの溶媒は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いられ得る。
【0093】
上記塗工液における液晶材料の含有量は、液晶材料の種類や目的とする層の厚み等に応じて適宜設定され得る。具体的には、液晶材料の含有量は、好ましくは5?50重量%であり、さらに好ましくは10?40重量%であり、最も好ましくは15?30重量%である。
【0094】
上記塗工液は、必要に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、重合開始剤や架橋剤が挙げられる。これらは、液晶材料として液晶モノマーを用いる場合に特に好適に用いられる。
・・・略・・・
【0097】
B-3.第1の複屈折層を形成する液晶材料の配向工程
次いで、上記透明保護フィルム表面の配向方向に応じて、第1の複屈折層を形成する液晶材料を配向させる。当該液晶材料の配向は、使用した液晶材料の種類に応じて、液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶材料が液晶状態をとり、上記透明保護フィルム表面の配向方向に応じて当該液晶材料が配向する。これによって、塗工により形成された層に複屈折が生じ、第1の複屈折層が形成される。
【0098】
上記のように処理温度は、液晶材料の種類に応じて適宜決定され得る。具体的には、処理温度は、好ましくは40?120℃であり、さらに好ましくは50?100℃であり、最も好ましくは60?90℃である。また、処理時間は、好ましくは30秒以上であり、さらに好ましくは1分以上であり、特に好ましくは2分以上、最も好ましくは4分以上である。処理時間が30秒未満である場合には、液晶材料が十分に液晶状態をとらない場合がある。一方、処理時間は、好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは8分以下であり、最も好ましくは7分以下である。処理時間が10分を超えると、添加剤が昇華するおそれがある。
【0099】
また、液晶材料として上記A-2項に記載のような液晶モノマーを用いる場合には、上記塗工により形成された層に、さらに重合処理または架橋処理を施すことが好ましい。重合処理を行うことにより、上記液晶モノマーが重合し、液晶モノマーがポリマー分子の繰り返し単位として固定される。また、架橋処理を行うことにより、上記液晶モノマーが3次元の網目構造を形成し、液晶モノマーが架橋構造の一部として固定される。結果として、液晶材料の配向状態が固定される。なお、液晶モノマーが重合または架橋して形成されるポリマーまたは3次元網目構造は「非液晶性」であり、したがって、形成された第1の複屈折層は、例えば、液晶分子に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。
【0100】
上記重合処理または架橋処理の具体的手順は、使用する重合開始剤や架橋剤の種類によって適宜選択され得る。例えば、光重合開始剤または光架橋剤を使用する場合には光照射を行えばよく、紫外線重合開始剤または紫外線架橋剤を使用する場合には紫外線照射を行えばよい。光または紫外線の照射時間、照射強度、合計の照射量等は、液晶材料の種類、透明保護フィルムの種類および配向処理の種類、第1の複屈折層に所望される特性等に応じて適宜設定され得る。
【0101】
上記のような配向処理を行うことにより、上記透明保護フィルムの配向方向に応じて液晶材料が配向するので、形成された第1の複屈折層の遅相軸は、上記透明保護フィルムの配向方向と実質的に同一となる。したがって、第1の複屈折層の遅相軸の方向は、透明保護フィルムの長手方向に対して、好ましくは+8°?+38°または-8°?-38°・・・略・・・最も好ましくは+23°?+24°または-23°?-24°となる。
【0102】
B-4.偏光子の積層工程
さらに、偏光子を、上記透明保護フィルムの配向処理を施した表面とは反対側の表面上に積層する。上記のように、偏光子の積層は、本発明の製造方法における任意の適切な時点で行われ得る。例えば、偏光子を予め透明保護フィルムに積層しておいてもよく、第1の複屈折層を形成した後に積層してもよく、第2の複屈折層を形成した後に積層してもよい。
【0103】
上記透明保護フィルムと偏光子との積層方法としては、任意の適切な積層方法(例えば、接着)が採用され得る。接着は、任意の適切な接着剤または粘着剤を用いて行われ得る。接着剤または粘着剤の種類は、被着体(すなわち、透明保護フィルムおよび偏光子)の種類に応じて適宜選択され得る。・・・略・・・
【0104】
上記接着剤または粘着剤の厚みは、特に制限されないが、好ましくは10?200nmであり、さらに好ましくは30?180nmであり、最も好ましくは50?150nmである。
・・・略・・・
【0107】
B-5.第2の複屈折層の形成工程
さらに、第2の複屈折層を上記第1の複屈折層の表面上に形成する。代表的には、第2の複屈折層は、上記A-3項に記載のポリマーフィルムを第1の複屈折層の表面に積層することにより形成される。好ましくは、ポリマーフィルムは延伸フィルムである。・・・略・・・積層方法は特に限定されず、任意の適切な接着剤または粘着剤(例えば、上記B-4項に記載の接着剤または粘着剤)を用いて行われる。
【0108】
あるいは、上記A-3項に記載のように、重合性液晶とカイラル剤とを含む樹脂組成物を任意の適切な基材に塗工し、重合性液晶が液晶状態を呈する温度に加熱し、重合性液晶をカイラル剤によってねじられた状態で(より具体的には、コレステリック構造を形成して)配向させる。この状態で、重合性液晶を重合することにより、当該コレステリック構造が固定されて配向されたフィルムが得られる。このフィルムを基材から第1の複屈折層の表面に転写することにより、第2の複屈折層14が形成される。
【0109】
B-6.第3の複屈折層の形成工程
さらに、第3の複屈折層を上記第2の複屈折層の表面上に形成する。代表的には、第3の複屈折層は、上記A-4項に記載のホメオトロピック配向に固体(当合議体注:「ホメオトロピック配向に固体」は「ホメオトロピック配向に固定」の誤記である。以下同じ。)された液晶材料を含むフィルムを第2の複屈折層の表面に積層することにより形成される。ホメオトロピック配向に固体された液晶材料を含むフィルムは、上記A-4項に記載の液晶材料(液晶モノマーまたは液晶ポリマー)および液晶性組成物を基板上に塗工し、これらが液晶相を呈する状態においてホメオトロピック配向させ、その配向を維持した状態で固定化することにより形成される。以下、当該フィルムの詳細な作製手順について説明する。
【0110】
上記基板としては、任意の適切な基板が採用され得る。・・・略・・・。基板の厚みは、通常、10?1000μm程度である。
・・・略・・・
【0113】
上記液晶材料(液晶モノマーまたは液晶ポリマー)あるいは液晶性組成物を基板上に塗工する方法としては、当該液晶材料または液晶性組成物を溶媒に溶解した溶液を用いる溶液塗工方法、あるいは当該液晶材料または液晶性組成物を溶融して溶融塗工する方法が挙げられる。溶液塗工方法が好ましい。ホメオトロピック配向が精密かつ容易に実現され得るからである。
【0114】
上記溶液塗工の溶液を調製する際に用いられる溶媒としては、上記液晶材料または液晶性組成物を溶解し得る任意の適切な溶媒が採用され得る。具体例としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2-ジメトキベンゼンなどの芳香族炭化水素類、その他、アセトン、酢酸エチル、tert-ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレンブリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素、シクロヘキサノンなどが挙げられる。溶液の濃度は、用いる液晶材料等の種類(溶解性)や目的とする厚み等に応じて変化し得る。具体的には、溶液の濃度は、好ましくは3?50重量%であり、さらに好ましくは7?30重量%である。
【0115】
上記の溶液を基板(アンカーコート層)に塗工する方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法などが挙げられる。グラビアコート法、バーコート法が好ましい。大面積を均一に塗工しやすいからである。塗工後、溶媒を除去し、基板上に液晶材料層または液晶性組成物層を形成させる。溶媒の除去条件は、特に限定されず、溶媒を実質的に除去でき、液晶材料層または液晶性組成物層が流動したり、流れ落ちたりさえしなければよい。通常、室温での乾燥、乾燥炉での乾燥、ホットプレート上での加熱などを利用して溶媒を除去する。
【0116】
次いで、基板上に形成された液晶材料層または液晶性組成物層を液晶状態とし、ホメオトロピック配向させる。例えば、上記液晶ポリマーまたは液晶性組成物が液晶状態を呈する温度になるように熱処理を行い、液晶状態においてホメオトロピック配向させる。熱処理方法としては、上記の乾燥方法と同様の方法で行うことができる。熱処理温度は、使用する液晶材料または液晶性組成物ならびに基板の種類に応じて変化し得る。具体的には、熱処理温度は、好ましくは60?300℃であり、さらに好ましくは70?200℃であり、最も好ましくは80?150℃である。熱処理時間もまた、使用する液晶材料または液晶性組成物ならびに基板の種類に応じて変化し得る。具体的には、熱処理時間は、好ましくは10秒?2時間であり、さらに好ましくは20秒?30分であり、最も好ましくは30秒?10分である。熱処理時間が10秒より短い場合、ホメオトロピック配向形成が十分に進行しないおそれがある。熱処理時間が2時間より長くても、ホメオトロピック配向形成がそれ以上進行しない場合が多いので、作業性および量産性の点で好ましくない。
【0117】
熱処理終了後、冷却操作を行う。・・・略・・・上記ホメオトロピック配向液晶フィルムは、液晶材料のガラス転移温度以下に冷却することにより配向が固定化される。
【0118】
液晶性組成物を用いる場合には、上記のように固定化されたホメオトロピック液晶配向フィルムに対して光照射または紫外線照射を行うことにより、光重合性液晶化合物を重合または架橋させて光重合性液晶化合物を固定化して、耐久性をさらに向上させることができる。・・・略・・・なお、紫外線照射時における液晶層の表面温度が液晶状態を呈する温度範囲になるように、温度調節を行うことが好ましい。
・・・略・・・
【0119】
このようにして液晶材料または液晶性組成物の薄膜を形成し、そのホメオトロピック配向を維持したまま固定化することにより、ホメオトロピック配向した液晶フィルムが得られる。このフィルムを(第3の複屈折層となる)を(当合議体注:「このフィルムを(第3の複屈折層となる)を」は、「このフィルム(第3の複屈折層となる)を」の誤記である。)、接着剤または粘着剤を介して上記第2の複屈折層表面に積層することにより、本発明の楕円偏光板が得られる。
【0120】
B-7.第1の複屈折層が透明保護フィルム以外の表面に形成される場合
例えば上記図1(b)を参照して説明したとおり、第1の複屈折層は透明保護フィルム以外の表面に形成される場合がある(図1(b)の例では、第3の複屈折層の表面に形成される)。このような場合には、第1の複屈折層は、例えば以下のような方法で形成され得る。第1の方法としては、上記透明保護フィルムと同じサイズのポリマーフィルム(代表的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)を別途用意し、当該フィルムに上記B-1項に記載した配向処理を施す。当該配向処理を施したポリマーフィルムに上記B-2項に記載した液晶材料を塗工・乾燥し、液晶材料層を形成する。この液晶材料層をポリマーフィルムから剥離し、第3の複屈折層の表面に任意の適切な接着剤を介して積層することにより第1の複屈折層を形成する。
・・・略・・・
【0121】
B-8.具体的な製造手順
図3?図7を参照して、本発明の製造方法の具体的手順の一例について説明する。簡単のため、第1の複屈折層を透明保護フィルム表面に形成する場合のみについて説明する。なお、図3?図7において、符号111、112、113、114、115および116は、各層を形成するフィルムおよび/または積層体を捲回するロールである。
【0122】
まず、偏光子の原料となる長尺のポリマーフィルムを準備し、上記A-5項に記載のようにして染色、延伸等を行う。延伸は、長尺のポリマーフィルムについて、その長手方向に連続的に行う。これによって、図3の斜視図に示すように、長手方向(延伸方向:矢印A方向)に吸収軸を有する長尺の偏光子11が得られる。
【0123】
一方、図4(a)の斜視図に示すように、長尺の透明保護フィルム(最終的には保護層)12を準備し、その一方の表面にラビングロール120によりラビング処理を行う。・・・略・・・次いで、図4(b)の斜視図に示すように、上記ラビング処理を施した透明保護フィルム12上に、上記B-2およびB-3項に記載のようにして第1の複屈折層13を形成する。この第1の複屈折層13は、ラビング方向に沿って液晶材料が配向するため、その遅相軸方向は、透明保護フィルム12のラビング方向と実質的に同一方向(矢印B方向)となる。
【0124】
次いで、図5の模式図に示すように、偏光子11と、透明保護フィルム(第2の保護層となる)16と偏光子11と、透明保護フィルム(保護層となる)12および第1の複屈折層13の積層体121とを、矢印方向に送り出し、それぞれの長手方向を揃えた状態で接着剤等(図示せず)によって貼り合わせる。なお、図5において、符号122は、フィルム同士を貼り合わせるためのガイドロールを示す(図6においても同様)。
【0125】
さらに、図6の模式図に示すように、長尺の第2の複屈折層14を準備し、これと積層体123(第2の保護層16、偏光子11、偏光子11、第1の複屈折層13)とを、矢印方向に送り出し、それぞれの長手方向を揃えた状態で接着剤等(図示せず)によって貼り合わせる。
・・・略・・・
【0126】
さらに、図7(a)の模式図に示すように、積層体125(基材26に第3の複屈折層15が塗工形成されたもの)を準備し、これと積層体124(第2の保護層16、偏光子11、保護層12、第1の複屈折層13、第2の複屈折層14)とを、矢印方向に送り出し、それぞれの長手方向を揃えた状態で接着剤等(図示せず)によって貼り合わせる。最後に、貼り合わせた積層体から、図7(b)のようにして基材26を剥離する。
【0127】
以上のようにして、本発明の楕円偏光板10が得られる。
【0128】
B-9.楕円偏光板のその他の構成要素
本発明の楕円偏光板は、さらに他の光学層を備えていてもよい。このような他の光学層としては、目的や画像表示装置の種類に応じて任意の適切な光学層が採用され得る。具体例としては、複屈折層(位相差フィルム)、液晶フィルム、光散乱フィルム、回折フィルム等が挙げられる。
【0129】
また、上記のように、本発明の楕円偏光板は、上記偏光子11の保護層12が形成されていない表面に別の保護層16を有し得る。
・・・略・・・
【0133】
C.楕円偏光板の用途
本発明の楕円偏光板は、各種画像表示装置(例えば、液晶表示装置、自発光型表示装置)に好適に使用され得る。適用可能な画像表示装置の具体例としては、液晶表示装置、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)が挙げられる。本発明の楕円偏光板を液晶表示装置に用いる場合には、例えば、視野角補償に有用である。本発明の楕円偏光板は、例えば、円偏光モードの液晶表示装置に用いられ、ホモジニアス配向型TN液晶表示装置、水平電極型(IPS)型液晶表示装置、垂直配向(VA)型液晶表示装置等に特に有用である。また、本発明の楕円偏光板をELディスプレイに用いる場合には、例えば、電極反射防止に有用である。」

(エ) 「【0135】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における各特性の測定方法は以下の通りである。
【0136】
・・・略・・・
(4)コントラスト比の測定
同じ楕円偏光板同士を重ねてバックライトで照らし、白画像(偏光子の吸収軸が平行)および黒画像(偏光子の吸収軸が直交)を表示させ、ELDIM社製 商品名「EZ Contrast160D」により、視認側の偏光子の吸収軸に対して45°-135°方向に、かつ、法線に対して-60°?60°までスキャンさせた。そして、白画像におけるY値(YW)と、黒画像におけるY値(YB)とから、斜め方向のコントラスト比「YW/YB」を算出した。
・・・略・・・
【実施例1】
【0137】
I.図1(a)に示すような楕円偏光板の作製
I-a.透明保護フィルムの配向処理(配向基材の作製)
透明保護フィルムに配向処理を施して配向基材(最終的には保護層となる)を作製した。
基材(1)?(8): TACフィルム(厚み40μm)の表面にPVA膜(厚み0.1μm)を形成した後、ラビング布を用いて、下記表に示すラビング角度で当該PVA膜表面をラビングし、配向基材を作成した。
・・・略・・・
【0139】
I-b.第1の複屈折層の作製
まず、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶塗工液を調製した。そして、上記のように作製した配向基材上に、当該液晶塗工液をバーコーターにより塗工した後、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に、メタルハライドランプを用いて1mJ/cm^(2)の光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、第1の複屈折層(1)?(5)を形成した。下記表2に、形成した第1の複屈折層の厚みならびに面内位相差値(nm)を示す。
【0140】
【表2】

【0141】
I-c.第2の複屈折層の作製
ポリカーボネートフィルム(厚み60μm)またはノルボルネン系フィルム(JSR社製:商品名Arton:厚み60μm)を所定温度で一軸延伸することによって、第2の複屈折層用フィルムを作製した。
・・・略・・・
【0143】
I-d.第3の複屈折層の作製
下記化学式(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して、液晶塗工液を調製した。そして、基材フィルム(ノルボルネン系樹脂フィルム:日本ゼオン社製、商品名ゼオノア)に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、100℃で10分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、基材上に第3の複屈折層用フィルムC1?C4を形成した。この第3の複屈折層用フィルムの面内位相差は実質的にゼロであった。この第3の複屈折層用フィルムの厚み方向の位相差は下記表4の通りであった。
【0144】
【化12】

【0145】
【表4】

【0146】
I-e.楕円偏光板の作製
ポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素を含む水溶液中で染色した後、ホウ酸を含む水溶液中で速比の異なるロール間にて6倍に一軸延伸して偏光子を得た。下記表5に示すような組み合わせで、保護層、第1の複屈折層、第2の複屈折層および第3の複屈折層を用いた。これらの偏光子、保護層、第1の複屈折層および第2の複屈折層を、図3?図7に示す製造手順によって積層し、図1(a)に示すような楕円偏光板A01?A18を得た。
【0147】
【表5】

・・・略・・・
【実施例4】
【0158】
楕円偏光板A01を重ね合わせてコントラスト比を測定した。表5から明らかなように、この楕円偏光板におけるRth_(3)/Rthpは1.1であった。この楕円偏光板によれば、コントラスト10の角度が全方位において最小40度、最大50度、最大最小の差が10度であった。コントラスト10の角度が全方位において最小40度というのは実用上好ましいレベルであった。さらに、最小最大の差が10度と小さいので、視覚特性上バランスがよく、こちらも実用上非常に好ましいレベルであった。
・・・略・・・
【0188】
上記の実施例および比較例の結果から明らかなように、本発明の「実施例によれば、第3の複屈折層を形成することにより、コントラスト10の角度が全方位において最小40度とすることができ、実用上好ましいレベルを確保できた。特に、実施例4、5、12、13、20および21によれば、最大最小の差を10度と小さくすることができた。この値は、視覚特性上非常にバランスがよく、実用上非常に好ましいレベルであった。一方、比較例によれば、コントラスト10の角度が全方位において30度であり、実用に供し得ないレベルであった。
・・・略・・・
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明の楕円偏光板は、各種画像表示装置(例えば、液晶表示装置、自発光型表示装置)に好適に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明の好ましい実施形態による楕円偏光板の概略断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による楕円偏光板の分解斜視図である。
【図3】本発明の楕円偏光板の製造方法の一例における一つの工程の概略を示す斜視図である。
【図4】本発明の楕円偏光板の製造方法の一例における別の工程の概略を示す斜視図である。
【図5】本発明の楕円偏光板の製造方法の一例におけるさらに別の工程の概略を示す模式図である。
【図6】本発明の楕円偏光板の製造方法の一例におけるさらに別の工程の概略を示す模式図である。
【図7】本発明の楕円偏光板の製造方法の一例におけるさらに別の工程の概略を示す模式図である。
・・・略・・・
【符号の説明】
【0192】
10 楕円偏光板
11 偏光子
12 保護層
13 第1の複屈折層
14 第2の複屈折層
15 第3の複屈折層
20 液晶セル
100 液晶パネル」

(オ) 「【図1】



(カ) 「【図2】



(キ) 「【図3】



(ク) 「【図4】



(ケ) 「【図5】



(コ) 「【図6】



(サ) 「【図7】



イ 引用発明
(ア) 引用例1の段落【0084】?【0119】には、段落【0018】及び【0019】に記載され、図1(a)に示す積層順序からなる楕円偏光板が開示されている。
また、引用例1の段落【0133】には、楕円偏光板が、ELディスプレイの電極反射防止に有用であることが記載されている。

(イ) そうしてみると、引用例1には、次の「楕円偏光板の製造方法」の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明」という。)。

「 偏光子11と保護層12と第1の複屈折層13と第2の複屈折層14と第3の複屈折層15とをこの順に有し、
第1の複屈折層13はλ/2板として機能し、第2の複屈折層14はλ/4板として機能し、第3の複屈折層15はnz>nx=nyの屈折率分布を有し、
保護層12の厚み方向の位相差の絶対値Rthpと第3の複屈折層15の厚み方向の位相差の絶対値Rth_(3)との比Rth_(3)/Rthpは1.1?4.0の範囲である楕円偏光板の製造方法であって、
透明保護フィルムの表面に配向処理を施す工程(B-1)、
配向処理を施した透明保護フィルム表面に液晶材料を含有する塗工液を塗工する工程(B-2)、
液晶材料を配向させ、第1の複屈折層を形成する工程(B-3)、
偏光子を、上記透明保護フィルムの配向処理を施した表面とは反対側の表面上に積層する工程(B-4)、
重合性液晶とカイラル剤とを含む樹脂組成物を基材に塗工し、配向させ、この状態で、重合性液晶を重合することにより得たフィルムを基材から第1の複屈折層の表面に転写することにより、第2の複屈折層14を形成する工程(B-5)、
第3の複屈折層を上記第2の複屈折層の表面上に形成する工程であって、液晶性組成物を基板上に塗工し、ホメオトロピック配向させ、固定化して液晶フィルムを得、このフィルムを接着剤又は粘着剤を介して上記第2の複屈折層表面に積層する工程(B-6)からなり、
ELディスプレイの電極反射防止に有用である、
楕円偏光板の製造方法。」

(3) 対比
ア 本件補正後発明と引用発明とを対比する。
(ア) 引用発明の「楕円偏光板」は、「ELディスプレイの電極反射防止に有用である」。
ここで、「ELディスプレイの電極反射防止に有用である」「楕円偏光板」が、円偏光板であることは技術常識であるから、当業者ならば、引用発明の「楕円偏光板」を「円偏光板」として理解することができる。
したがって、引用発明の「楕円偏光板」は、本件補正後発明の「円偏光板」に相当する。
また、引用発明の「楕円偏光板」は、「ELディスプレイの電極反射防止に有用である」から、反射防止のためのものということができる。

(イ) 引用発明の「偏光子11」は、技術的にみて、本件補正後発明の「偏光層」に相当する。

(ウ) 引用発明の「第1の複屈折層13」は、「λ/2板として機能」する。
したがって、引用発明の「第1の複屈折層13」は、本件補正後発明の「λ/2層」に相当する。

(エ) 引用発明の「第2の複屈折層14」は、「λ/4板として機能」する。
したがって、引用発明の「第2の複屈折層14」は、本件補正後発明の「λ/4層」に相当する。

(オ) 引用発明の「第3の複屈折層15」は、「nz>nx=nyの屈折率分布を有」する。
また、引用発明の「工程(B-6)」の内容からみて、「第3の複屈折層」は、「液晶性組成物を」「ホメオトロピック配向させ、固定化して」「得」られた「液晶フィルム」である。
ここで、「nz>nx=nyの屈折率分布を有」する「複屈折層」は、ポジティブC層と呼ばれることは技術常識である。
したがって、引用発明の「第3の複屈折層15」(「液晶フィルム」)は、本件補正後発明の「ポジティブC層」に相当する。

(カ) 引用発明の「第3の複屈折層を上記第2の複屈折層の表面上に形成する工程」は、「液晶性組成物を基板上に塗工し、ホメオトロピック配向させ、固定化して」「得」られた「液晶フィルム」「を接着剤又は粘着剤を介して上記第2の複屈折層表面に積層する工程」である。
また、引用発明の「楕円偏光板」は、「偏光子11と保護層12と第1の複屈折層13と第2の複屈折層14と第3の複屈折層15とをこの順に有し」ている。
そうすると、引用発明の「楕円偏光板」は、「偏光子11と保護層12と第1の複屈折層13と第2の複屈折層14と」「接着剤又は粘着剤」と「第3の複屈折層15とをこの順に有し」ているということができる。

(キ) また、引用発明の「接着剤又は粘着剤」は、「液晶フィルム」「を接着剤又は粘着剤を介して上記第2の複屈折層表面に積層する」ものである。
そうすると、引用発明の「接着剤又は粘着剤」も、層形状をなしていることは明らかである。
一方、本件出願明細書の段落【0190】の記載によれば、本件補正後発明の「転写接着層」は、「基材として剥離フィルムを用い、基材又は基材上に設けた層の上に接着剤又は粘着剤を塗布して接着層を形成し、得られる接着層」であるから、本件補正後発明の「接着層」は、「接着剤又は粘着剤」の層である。
そうしてみると、引用発明の(層形状をなす)「接着剤又は粘着剤」と、本件補正後発明の「転写接着層」とは、「接着層」である点で共通する。

(ク) 上記(ア)?(キ)より、本件発明の「楕円偏光板」と、本件補正後発明の「円偏光板」は、「偏光層、λ/2層、λ/4層、接着層及びポジティブC層をこの順に含む、反射防止のための円偏光板」である点で共通する。

(ケ) 引用発明の「工程(B-2)」及び「工程(B-3)」は、「配向処理を施した透明保護フィルム表面に液晶材料を含有する塗工液を塗工」し、「液晶材料を配向させ、第1の複屈折層を形成する工程」である。
そうすると、引用発明は、「第1の複屈折層」を、「液晶」「を含」む「塗工液」を「配向処理を施した透明保護フィルム」上に塗布し、「配向させ」ることにより形成する工程を含むものである。
ここで、引用発明の「液晶材料を含」む「塗工液」は、組成物ということができる。
また、引用発明の「液晶材料を含」む「塗工液」は、「λ/2板として機能」する「第1の複屈折層を形成する」ためのものである。
さらに、「λ/2板として機能」する「第1の複屈折層」は、位相差層ということができる。
してみると、引用発明の「液晶」「を含」む「塗工液」は、位相差層形成用組成物ということができる。
したがって、引用発明は、「第1の複屈折層13」を、「液晶」「を含」む位相差層形成用組成物を「配向処理を施した透明保護フィルム」上に塗布し、「配向させ」ることにより形成する工程を含むということができる。

(コ) 引用発明の「第2の複屈折層14を形成する工程(B-5)」は、「重合性液晶とカイラル剤とを含む樹脂組成物を基材に塗工し、配向させ、この状態で、重合性液晶を重合することにより得たフィルムを基材から第1の複屈折層の表面に転写することにより、第2の複屈折層14を形成する工程」である。
そうすると、引用発明は、「第2の複屈折層14」を、「液晶」「を含む」「組成物」を「基材」上に塗布し、「配向させ」る「ことにより」「形成する工程」を含むものである。
ここで、引用発明の「液晶」「を含む」「組成物」は、「λ/4板として機能」する「第2の複屈折層14を形成する」ためのものである。
また、「λ/4板として機能」する「第2の複屈折層14」は、位相差層ということができる。
してみると、引用発明の「液晶」「を含む」「組成物」は、位相差層形成用「組成物」ということができる。
したがって、引用発明は、「第2の複屈折層14」を、「液晶」「を含」む位相差形成用「組成物」を「基材」上に塗布し、「配向させ」ることにより形成する工程を含むということができる。

(サ) 引用発明の「工程(B-2)」における「配向処理を施した透明保護フィルム」は、技術的にみて、本件補正後発明の「基材」に相当する。
同様に、引用発明の「工程(B-5)」における「基材」は、本件補正後発明の「基材」に相当する。
そうすると、上記(ケ)、(コ)及び上記(ウ)、(エ)より、引用発明と、本件補正後発明は、「λ/2層およびλ/4層をそれぞれ、液晶を含む位相差層形成用組成物を基材上に塗布し、配向させることにより形成する工程を含む」点で共通する。

(シ) 上記(ア)?(サ)より、引用発明の「楕円偏光板」の「製造方法」は、本件補正後発明の「円偏光板」の「製造方法」に相当する。

イ 上記ア(ア)?(シ)の対比結果を踏まえると、本件補正後発明と、引用発明とは、
「偏光層、λ/2層、λ/4層、接着層及びポジティブC層をこの順に含む、反射防止のための円偏光板の製造方法であって、
λ/2層およびλ/4層をそれぞれ、液晶を含む位相差層形成用組成物を基材上に塗布して、配向させることにより形成する工程を含む前記円偏光板の製造方法。」である点において一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「λ/2層およびλ/4層を」「形成する工程」が、
本件補正後発明は、「λ/2層およびλ/4層をそれぞれ、重合性液晶を含む位相差層形成用組成物を基材上に塗布して乾燥させ、配向させた後に重合することにより形成する工程」であるのに対して、
引用発明は、上記下線を付した構成が、(一応、)特定されていない点。

(相違点2)
「接着層」が、
本件補正後発明は「転写接着層」であり、また、本件補正後発明は、「接着体が、転写接着層、ポジティブC層及び基材をこの順に含む積層体であり」、「被着体が、λ/4層を含む被着体」、「λ/4層及びλ/2層をこの順に含む積層体」、「又は」、「λ/4層、λ/2層及び偏光層をこの順に含む積層体であり」、「接着体の転写接着層側の面と、被着体のλ/4層側の面とを、転写接着層を介して貼合し、基材を剥離する工程」を具備するのに対して、
引用発明は、このように特定されたものではない点。

(相違点3)
「前記λ/2層、λ/4層及びポジティブC層の厚さが」、
本件補正後発明は、「それぞれ0.2μm?5μmである」のに対して、
引用発明は、(一応、)これが特定されていない点。

(4) 判断
ア 相違点1について
(ア) 第1の複屈折層を形成する工程について
a 引用発明の「工程(B-2)」の「液晶材料を含有する塗工液」に関し、引用例1の段落【0091】には、「具体的には、液晶材料を適切な溶媒に溶解または分散した塗工液を調製し、この塗工液を、上記配向処理を施した透明保護フィルム表面に塗工すればよい。」と記載されている。
また、引用発明の「工程(B-2)」の「液晶材料」に関し、引用例1の段落【0024】には、「液晶材料としては、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。」と記載され、【0099】には、「液晶材料として・・・略・・・液晶モノマーを用いる場合には、上記塗工により形成された層に、さらに重合処理または架橋処理を施すことが好ましい。重合処理を行うことにより、上記液晶モノマーが重合し、液晶モノマーがポリマー分子の繰り返し単位として固定される。また、架橋処理を行うことにより、上記液晶モノマーが3次元の網目構造を形成し、液晶モノマーが架橋構造の一部として固定される。結果として、液晶材料の配向状態が固定される。」と記載されている。

b また、引用発明の「第1の複屈折層を形成する工程(B-3)」の「液晶材料」の「配向」に関し、引用例1の段落【0097】には、「当該液晶材料の配向は、使用した液晶材料の種類に応じて、液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶材料が液晶状態をとり、上記透明保護フィルム表面の配向方向に応じて当該液晶材料が配向する。これによって、塗工により形成された層に複屈折が生じ、第1の複屈折層が形成される。」、【0098】には、「上記のように処理温度は、液晶材料の種類に応じて適宜決定され得る。具体的には、処理温度は、好ましくは40?120℃であり、さらに好ましくは50?100℃であり、最も好ましくは60?90℃である。また、処理時間は、好ましくは30秒以上であり、さらに好ましくは1分以上であり、特に好ましくは2分以上、最も好ましくは4分以上である。処理時間が30秒未満である場合には、液晶材料が十分に液晶状態をとらない場合がある。一方、処理時間は、好ましくは10分以下であり、さらに好ましくは8分以下であり、最も好ましくは7分以下である。処理時間が10分を超えると、添加剤が昇華するおそれがある。」と記載されている。

c さらに、引用例1には、【実施例1】の「I-b.第1の複屈折層の作製」として、段落【0139】に、「ネマチック液晶相を示す重合性液晶・・・略・・・10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤・・・略・・・3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶塗工液を調製した。そして、上記のように作製した配向基材上に、当該液晶塗工液をバーコーターにより塗工した後、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に、メタルハライドランプを用いて1mJ/cm^(2)の光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、第1の複屈折層(1)?(5)を形成した。」と記載されている。
ここで、上記a,bの引用例1の記載及び「重合性液晶」、「光重合開始剤」及び「トルエン」からなる塗工液の組成からみて、引用例1の【実施例1】の「I-b.第1の複屈折層の作製」における「90℃で2分間の加熱乾燥」は、重合性液晶を配向させるためだけでなく、「液晶塗工液」からの溶媒(トルエン)の乾燥除去のためのものであることは当業者に明らかなことである。

d そうしてみると、上記cあるいは上記a?cの引用例1の各記載に基づき、引用発明の「工程(B-2)」及び「工程(B-3)」を、「第1の複屈折層13」(「λ/2層」)を、重合性「液晶」と溶媒とを含む「塗工液」(「重合性液晶を含む位相差層形成用組成物」)を「透明保護フィルム」(「基材」)上に塗布して(加熱)乾燥させ、配向させた後に重合することにより形成する工程を含むものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

e あるいは、上記a記載の「溶媒」は、液晶材料の溶解又は分散のため、塗工液の調製のために含有されるものであって、塗工後の液晶材料層の形成や液晶材料の配向には必要ないものであるところ、当該不要な溶媒の(加熱)乾燥による除去は、引用発明の塗工液を溶媒を含有させてものとして具体化した当業者が当然に考慮する技術的事項である。
例えば、引用例1には、「第1の複屈折層13」と同様に液晶材料からなる「第3の複屈折層15」の形成工程に関して、【0115】には、「塗工後、溶媒を除去し、基板上に液晶材料層または液晶性組成物層を形成させる。溶媒の除去条件は、特に限定されず、溶媒を実質的に除去でき、液晶材料層または液晶性組成物層が流動したり、流れ落ちたりさえしなければよい。通常、室温での乾燥、乾燥炉での乾燥、ホットプレート上での加熱などを利用して溶媒を除去する。」と記載されている。
そうしてみると、引用発明の「工程(B-2)」及び「工程(B-3)」において、「塗工液」を、重合性「液晶」と溶媒とを含む「塗工液」とするとともに、液晶材料を配向させる前に(加熱)乾燥させて溶媒を除去する構成、あるいは、液晶材料を配向させるための温度処理(例えば、60?90℃)を利用して同時に乾燥させて溶媒を除去する構成として、「第1の複屈折層13」(「λ/2層」)を、重合性「液晶」と溶媒とを含む「塗工液」(「重合性液晶」を含む「位相差層形成用組成物」)を「透明保護フィルム」(「基材」)上に塗布して(加熱)乾燥させ、配向させた後に重合することにより形成する工程を備えたものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(イ) 第2の複屈折層14を形成する工程について
a 引用発明の「第2の複屈折層14を形成する工程(B-5)」においては、「重合性液晶とカイラル剤とを含む樹脂組成物」が溶媒を含むもののとなっていないものの、「重合性液晶とカイラル剤とを含む樹脂組成物を基材に塗工」する際、重合性液晶及びカイラル剤の溶解又は分散あるいは樹脂組成物の調製のために溶媒を用いてもよいことは、当業者にとって技術的に明らかなことである。
例えば、引用例1において「第2の複屈折層14」を形成する「重合性液晶およびカイラル剤」に関して参考として援用されている、特開2003-287623号公報(以下、「引用例2」という。)の段落【0058】には、「前記塗工液は、例えば、前記液晶モノマー等を、適当な溶媒に溶解・分散することによって調製できる。」ことが記載されている。同引用例2の段落【0124】?【0128】においても、(実施例1)?(実施例5)として、複屈折層を形成する混合物を、重合性液晶、カイラル剤及びメチルエチルケトンを混合したものとすることが開示されている。
あるいは、同引用例2の段落【0035】?【0047】に重合性液晶材料として例示された重合性液晶モノマーは、「第1の複屈折層13」を形成する重合性液晶モノマーとして引用例1の段落【0027】?【0045】に例示されている液晶材料と同じ材料であることからも、引用発明の「第2の複屈折層14」を形成する「重合性液晶およびカイラル剤を含む樹脂組成物」の塗工に際しても、上記(ア)aと同様に、重合性液晶等の溶解又は分散あるいは塗工液の調製のために溶媒を用いることができると理解できる。

b また、引用発明の「第2の複屈折層14を形成する工程(B-5)」に関し、引用例1の段落【0108】には、「重合性液晶とカイラル剤とを含む樹脂組成物を任意の適切な基材に塗工し、重合性液晶が液晶状態を呈する温度に加熱し、重合性液晶をカイラル剤によってねじられた状態で(より具体的には、コレステリック構造を形成して)配向させる。」と記載されている。
加えて、「重合性液晶とカイラル剤とを含む樹脂組成物」を塗工した後の配向及び重合性液晶の重合に関し、引用例1において参考として援用されている同引用例2の段落【0065】に、「前記塗工液を、配向基板上に塗布して展開層を形成する。」、【0068】に「続いて、前記展開層に加熱処理を施すことによって、液晶状態で前記液晶モノマーを配向させる。前記展開層には、前記液晶モノマーと共にカイラル剤が含まれているため、液晶相(液晶状態)となった液晶モノマーが、前記カイラル剤によってねじりを付与された状態で配向する。」、【0069】に「前記加熱処理の温度条件は、例えば、前記液晶モノマーの種類、具体的には前記液晶モノマーが液晶性を示す温度に応じて適宜決定できるが、通常、40?120℃の範囲であり、好ましくは50?100℃の範囲であり、より好ましくは60?90℃の範囲である。前記温度が40℃以上であれば、通常、十分に液晶モノマーを配向することができ、前記温度が120℃以下であれば、例えば、耐熱性の面において前述のような各種配向基材の選択性も広い。」と記載されている。

c そして、上記(ア)eで述べたとおり塗布後の不要な溶媒の(加熱)乾燥による除去は、当業者が当然に考慮する技術的事項であるところ、引用発明において、上記a,bの引用例1,2の記載に基づき、「第2の複屈折層14を形成する工程(B-5)」の「樹脂組成物」を、「重合性液晶とカイラル剤」と溶媒とを含む「樹脂組成物」とするとともに、重合性液晶を配向させる前に(加熱)乾燥させて溶媒を除去する構成、あるいは、重合性液晶を配向させる加熱処理(例えば、60?90℃)を利用して同時に乾燥させて溶媒を除去する構成として、「第2の複屈折層14」(「λ/4層」)を、「重合性液晶とカイラル剤」と溶媒とを含む「組成物」(「重合性液晶を含む位相差層形成用組成物」)を「基材」(「基材」)上に塗布して(加熱)乾燥させ、配向させた後に重合することにより形成する工程を備えたものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

d あるいは、上記a?cのとおりでないとしても、複屈折層、位相差層等を形成するために、重合性液晶とカイラル剤と溶媒とを含む樹脂組成物を塗布して加熱乾燥して重合性液晶を配向させることは、本件優先日前に周知の技術である。
例えば、特開2006-201746号公報(以下、「引用例3」という。)の段落【0139】?【0141】(例えば、段落【0139】の「ネマチック液晶相を示す重合性液晶(液晶モノマー)・・・略・・・9.9964gと、カイラル剤・・・略・・・0.0036gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤・・・略・・・3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶塗工液を調製した。以下の手順は上記IIと同様にして、第2の複屈折層(21)を形成した。」との記載参照。)及び【0136】(特に、「II.第1の複屈折層の作製」についての「当該液晶塗工液をバーコーターにより塗工した後、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。」との記載参照。)、
特開2006-268006号公報(以下、「引用例4」という。)の【0124】(特に、「この基材フィルムに上記液晶塗工液をバーコーターにより塗工した後、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。」との記載参照。)、
引用例2の【0124】?【0128】(例えば、【0124】の「ネマチック液晶モノマー90重量部、・・・略・・・重合性カイラル剤10重量部、・・・略・・・およびメチルエチルケトン300重量部を混合し、この混合物を・・・略・・・配向基板・・・略・・・上に塗布し・・・略・・・これを70℃で3分間加熱処理することによって、前記モノマーを配向させた後、紫外線照射によって前記モノマーを重合させ、その配向を固定した。」との記載参照。)等参照。
そうすると、引用発明の「第2の屈折層14を形成する工程(B-5)」において、上記の周知の技術に基づき、「第2の複屈折層14」(「λ/4層」)を、重合性液晶とカイラル剤と溶媒とを含む樹脂組成物(「重合性液晶」を含む「位相差層形成用組成物」)を「基材」(「基材」)上に塗布して(加熱)乾燥させ、配向させた後に重合することにより形成する工程を備えたものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(ウ) 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正後発明の構成とすることは、引用発明、引用例1、2に記載された技術、あるいは引用発明及び引用例1、2に記載された技術及び本件優先日前に周知の技術に基づき、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
(ア) 引用例1の段落【0126】及び図7(a),(b)には、楕円偏光板の具体的な製造手順の一例として、「基材26」に「第3の複屈折層15」が塗工形成された「積層体125」の「第3の複屈折層15」と、「第2の保護層16」、「偏光子11」、「保護層12」、「第1の複屈折層13」及び「第2の複屈折層14」とをこの順で含む「積層体124」の「第2の複屈折層14」とを、「接着剤」によって貼り合わせ、最後に、貼り合わせた積層体から「基材26」を剥離する製造方法が記載されている。

(イ) また、光学要素同士を粘接着(剤)層を介して貼合する方法として、貼合する面に粘接着剤の溶液を直接塗布(流延、展開、敷設等)して粘接着剤層を形成する方法、セパレーター(剥離フィルム・シート等)上に粘接着剤層を形成し、貼合する面に貼着・転写することにより粘接着剤を形成する方法は、いずれも置換可能に普通に用いられるものであることは当業者の技術常識である。
例えば、特開2004-133002号公報の段落【0045】、特開2004-251691号公報の段落【0053】、特開2009-8859号公報の段落【0093】、特開2012-68674号公報の段落【0025】、特開2009-244486号公報の段落【0041】、【0042】、特開2013-122530号公報の段落【0047】、特開2011-247967号公報の段落【0079】等を参照。

(ウ) 加えて、引用例1には、第2の複屈折層14の形成に関し、段落【0108】には、「フィルムを基材から第1の複屈折層の表面に転写することにより、第2の複屈折層14が形成される。」と記載されている。
また、引用例1の段落【0126】及び図7(a)、図7(b)には、基材26に第3の複屈折層15が塗工形成された積層体125を、積層体124の第2の複屈折層14に接着剤等によって貼り合わせ、貼り合わせた積層体から基材26を剥離して、第3の複屈折層15を第2の複屈折層14上に転写することが記載されている。
同様に、引用例1の段落【0120】には、フィルム上に形成した第1の複屈折層13を、フィルムから第3の複屈折層15の表面に転写することが記載されている。
そうすると、引用例1の上記各記載からみて、引用例1には、層・フィルムの形成・積層を、予め形成した層・フィルムを転写することにより行うことが記載・示唆されているといえる。

(エ) 引用発明において、「工程(B-6)」の「液晶フィルムを」「上記第2の複屈折層表面に積層する」ための「接着剤又は粘着剤」は、「液晶フィルム」あるいは「第2の複屈折層」のいずれかに設ければよいことは当業者にとって明らかなことであるところ、引用発明において、「工程B-6」を、「基板」上に「第3の複屈折層15」が形成された積層体の「第3の複屈折層15」と、「第2の複屈折層14」とを、「第3の複屈折層15」に設けられた「接着剤又は粘着剤」によって貼合し、「基板」を剥離する工程を備えたものとするとともに、「接着剤又は粘着剤」を、セパレーター上に形成された「接着剤層又は粘着剤層」を転写することにより形成された粘接着剤層とすることは、上記(ア)?(ウ)の引用例1の記載・示唆及び当業者の技術常識に基づいて、当業者が容易になし得たことである。
そして、引用発明において上記構成としたものは、「接着剤又は粘着剤」として、セパレーター上に形成された「接着剤層又は粘着剤層」を転写することにより形成された粘接着剤層、すなわち「転写接着層」を備えたものとなる。
また、引用発明において上記構成としたものは、セパレーター上に形成された「接着剤層又は粘着剤層」を転写することにより形成された粘接着剤層(「転写接着層」)、「第3の複屈折層15」(「ポジティブC層」)及び「基材」(「基材」)をこの順に含む積層体からなる「接着体」と、「第2の複屈折層14」(「λ/4層」)を含む「被着体」を備えたものとなり、「接着体」の「転写接着層」側の面と、「被着体」の「第2の複屈折層14」(「λ/4層」)側の面とを、「転写接着層」を介して貼合し、「基材」(「基材」)を剥離する工程を具備したものとなる。

(オ) 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点2に係る本件補正後発明の構成とすることは、引用発明、引用例1に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

ウ 相違点3について
(ア) 「第1の複屈折層13」について
a 引用発明の「λ/2板として機能」する「第1の複屈折層13」(「λ/2層」)の「面内位相差(Δnd)」及び「厚み」に関し、引用例1の段落【0022】及び【0023】には、それぞれ「第1の複屈折層の面内位相差(Δnd)は、波長590nmにおいて、好ましくは180?300nmであり、さらに好ましくは210?280nmであり、最も好ましくは230?240nmである。」及び「上記第1の複屈折層の厚みは、λ/2板として最も適切に機能し得るように設定され得る。言い換えれば、厚みは、所望の面内位相差が得られるように設定され得る。具体的には、厚みは、好ましくは0.5?5μmであり、さらに好ましくは1?4μmであり、最も好ましくは1.5?3μmである。」と記載されている。

b また、引用発明の「第1の複屈折層13」に関連して、引用例1の段落【0139】及び【0140】【表2】に、上記aの「好まし」い「180?300nm」の「面内位相差(Δnd)」を持つ「第1の複屈折層」として、厚みを「2.2μm(位相差「180nm」)」?「2.6μm(位相差「300nm」)」としたものが【実施例1】として開示されている。

c そうしてみると、引用発明において、上記aの引用例1の記載(あるいは、上記bの引用例1の【実施例1】の記載)に基づき、「λ/2板として機能」する「第1の複屈折層13」の厚みを0.5?5μm(あるいは、2.2?2.6μm)とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(イ) 「第3の複屈折層15」について
a 「nz>nx=nyの屈折率分布を有」する「第3の複屈折層15」(「ポジティブC層」)の「厚み方向の位相差の絶対値Rth_(3)」及び「厚み」に関し、引用例1の段落【0052】には、「例えば、第3の複屈折層の厚み方向の位相差の絶対値Rth_(3)は、好ましくは50?200nmであり、さらに好ましくは75?150nmであり、最も好ましくは90?120nmである。」及び「例えば、第3の複屈折層の厚みは、好ましくは0.5?10μmであり、さらに好ましくは0.5?8μmであり、最も好ましくは0.5?5μmである。」と記載されている。

b また、引用発明の「第3の複屈折層15」に関連して、引用例1の段落【0143】?【0145】【表4】には、上記「好まし」い「50?200nm」の「厚み方向」「位相差」の「絶対値Rth_(3)」を持つ「第3の複屈折層」として、厚みを「0.7μm(厚み方向位相差「-68nm」)」?「1.8μm(厚み方向位相差「-183nm」)」としたものが【実施例1】として開示されている。

c そうしてみると、引用発明において、上記aの引用例1の記載(あるいは、上記bの引用例1の【実施例1】の記載)に基づき、「nz>nx=nyの屈折率分布を有」する「第3の複屈折層15」の厚みを、0.5?5μm(あるいは、0.7?1.8μm)のものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(ウ) 「第2の複屈折層14」について
a 引用発明の「λ/4板として機能」する「第2の複屈折層14」について、引用例1の段落【0050】には、「重合性液晶およびカイラル剤は、特開2003-287623号公報に記載されており、その開示は本明細書に参考として援用される。」との記載がある。
そして、引用例1において参考として援用された特開2003-287623号公報(引用例2)の段落【0031】には、重合性液晶およびカイラル剤を含む脂組成物を塗布し、重合性液晶を重合することにより得られた(重合性液晶がカイラル剤によってねじられた)コレステリック構造の光学フィルムを位相差フィルムとして使用する場合、配向の乱れや透過率低下の防止、選択反射性、着色防止、生産性等の点から、光学フィルムの厚みは0.1?10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5?8μm、特に好ましくは1?5μmの範囲であることが記載されている。

b ここで、引用例1の段落【0021】に「従来の楕円偏光板に比べて、全体厚みが最小で4分の1程度にまで薄くすることができる。」、「結果として、本発明の楕円偏光板は、画像表示装置の薄型化に大きく貢献し得る。」と記載されているとおり、引用発明において、楕円偏光板あるいは画像表示装置の薄型化は好ましいことである。
そうしてみると、引用発明において、楕円偏光板・画像表示装置の薄型化を考慮して、「λ/4板として機能」する「第2の複屈折層14」の厚みを1?5μmとすることは、上記aの引用例1、2の記載に基づき、当業者が容易になし得たことである。

c あるいは、重合性液晶とカイラル剤とを含む樹脂組成物を塗布し、重合性液晶を重合することにより形成されたλ/4板の厚みを0.8?2μm程度とすることは、本件優先日前に周知の技術である。
例えば、引用例3の段落【0047】、【0048】、【0138】?【0142】【表3】(「第2の複屈折層」「No.(21)」?「No.(23)」の厚みは「1.2μm」である。)、引用例4の段落【0045】、【0049】、【0124】、【0125】、【0127】【表5】(楕円偏光板「A19」?「A21」の全体厚み「122μm」から「第2の複屈折用フィルム」「C1」?「C3」の厚みが2μm程度であると把握される。)等参照。
そうすると、引用発明において、楕円偏光板の薄型化を考慮して、「λ/4板として機能」する「第2の複屈折層14」の厚みを0.8?2μmとすることは、当業者が容易になし得たことである。

(エ) なお、引用例1の段落【0021】に、「本発明の楕円偏光板の全体厚みは、好ましくは80?250μmであり、さらに好ましくは110?220μmであり、最も好ましくは140?190μmである。本発明の楕円偏光板の製造方法(後述)によれば、第1の複屈折層(および、場合によっては第3の複屈折層)を接着剤を用いることなく積層することができるので、従来の楕円偏光板に比べて、全体厚みが最小で4分の1程度にまで薄くすることができる。」との記載があるところ、上記(ア)?(ウ)のとおり、「第1の複屈折層13」、「第3の複屈折層15」及び「第2の複屈折層14」をサブμm?数μmの厚みのものとし、第1の複屈折層(および、場合によっては第3の複屈折層)を接着剤を用いることなく積層したものとしても、偏光子11、保護層12あるいは保護層16や他の粘接着層等の構成を含む「楕円偏光板」全体の厚みを好ましい「80?250μm」の範囲内のものとできることは明らかである。

(オ) 本件補正後発明の作用・効果について
a 請求人は、平成30年5月24日付けの審判請求書において、「各位相差層(λ/2層およびλ/4層)はそれぞれ重合性液晶を含む位相差層形成用組成物を基材上に塗布して乾燥させ、配向させた後に重合することにより形成されるので、その厚みは薄く、このため、反射防止特性、即ち黒表示時の光漏れを正面視野だけでなく、斜め視野でも防止する円偏光板を得ることができます。」と主張している。
しかしながら、引用発明において、上記(ア)?(ウ)で述べたように、「第1の複屈折層13」(「λ/2層」)の厚みを0.5?5μm(あるいは、2.2?2.6μm)とし、「第3の複屈折層15」(「ポジティブC層」)の厚みを0.5?5μm(あるいは、0.7?1.8μm)とし、「第2の複屈折板14」(「λ/4層」)の厚みを1?5μm(あるいは0.8?2μm)と薄いものとした場合には、斜め方向に入射して電極によって反射される光が受ける、厚み方向の位相差による影響(偏光状態の乱れ)もλ/2層及びλ/4層等これら各層の薄さに応じた小さいものとなる結果、当該斜め方向の光に対する円偏光板の黒表示時の遮光機能の低下・劣化も小さいものとなることは、当業者であれば予測可能なことであり、格別顕著なこととは認められない。

b さらに、本件出願の明細書段落【0092】に記載された「位相差層の厚さは、その用途により調節でき、0.1μm?10μmが好ましく、光弾性を小さくする点で0.2μm?5μmがより好ましい。」との作用・効果についても、重合性液晶から形成された位相差板において、光弾性効果を小さくする点で厚さを0.5?3μmあるいは0.2?5μmとすることが好ましいことは、本件優先日前に周知の事項(例えば、特開2011-256304号公報の段落【0260】、あるいは特開2013-147607号公報の段落【0239】?【0241】、特開2013-147606号公報の段落【0069】、【0070】、特開2013-129690号公報の段落【0055】、【0056】等参照。)であるから、格別顕著なこととは認められない。

(カ) 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点3に係る本件補正後発明の構成とすることは、引用発明、引用例1、2に記載された技術、あるいは引用発明、引用例1、2に記載された技術及び本件優先日前に周知の技術に基づき、当業者が容易になし得たことである。

エ したがって、本件補正後発明は、引用発明、引用例1に記載された技術、引用例1において参考として援用された引用例2に記載された技術及び本件優先日前に周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は却下されたので、本件出願の請求項3に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その請求項3に記載された事項により特定される、前記「第2」[理由]「1(1)」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の「理由2(進歩性)」は、本件出願の請求項1?6に係る発明は、本件優先日前に日本国内において頒布された刊行物である下記の引用例1に記載された発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用例1:特開2006-163343号公報

3 引用例1とその記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由の「理由2(進歩性)」で引用された引用例1とその記載事項及び引用発明は、前記「第2」[理由]「4(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本件発明は、前記「第2」[理由]「4」で検討した本件補正後発明から「前記ポジティブC層、λ/2層及びλ/4層の厚さがそれぞれ0.2μm?5μmである反射防止のための円偏光板」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を限定したものに相当する本件補正後発明が、前記「第2」[理由]4(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、引用例1に記載された技術、引用例1において参考として援用された引用例2に記載された技術及び本件優先日前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、前記「第2」[理由]4(3)、(4)に記載した理由と同じ理由により、引用発明、引用例1に記載された技術、引用例1において参考として援用された引用例2に記載された技術、あるいは引用発明、引用例1に記載された技術、引用例1において参考として援用された引用例2に記載された技術及び本件優先日前に周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-17 
結審通知日 2019-05-21 
審決日 2019-06-04 
出願番号 特願2014-17296(P2014-17296)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 河原 正
関根 洋之
発明の名称 積層体の製造方法  
代理人 坂元 徹  
代理人 中山 亨  
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