• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24H
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24H
管理番号 1353601
審判番号 不服2018-9767  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-17 
確定日 2019-07-18 
事件の表示 特願2013-148129号「浴槽用給湯口アダプタ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 2日出願公開、特開2015- 21638号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月17日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 3月21日付け:拒絶理由通知書
平成29年 5月26日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 9月14日付け:拒絶理由通知書
平成29年11月17日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 4月10日付け:拒絶査定
平成30年 7月17日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年7月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年7月17日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成30年7月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成29年11月17日提出の手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1を下記の(2)に示す請求項1に補正するものである。(下線は、補正箇所を示す。)

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「浴槽の側壁に貫通状態に取り付けられ、外管を介して浴槽内に湯水を供給する浴槽用給湯口アダプタであって、
浴槽の側壁外面に配置される槽外取付部材と、その槽外取付部材に連結され、かつ外管が接続されるジョイント管とを備え、
前記槽外取付部材および前記ジョイント管の互いの連結部のうちいずれか一方が、雌側管部として構成されるとともに、残り一方が、前記雌側管部に挿入する雄側管部として構成され、
前記雄側管部の先端部外周面にシール部材収容溝が周方向に沿って形成されるとともに、前記雄側管部の基端側に先端部よりも径寸法が大きい案内部が形成され、
前記雌側管部の管孔の奥部は、その径寸法が前記雄側管部の先端部を挿入し得る大きさに形成された小径孔部として構成されるとともに、前記雌側管部の管孔の開口縁部は、その径寸法が前記案内部を適合状態に嵌合し得る大きさに形成された大径孔部として構成され、
前記雄側管部の先端部および案内部が前記雌側管部の小径孔部および大径孔部にそれぞれ配置される態様に、前記雄側管部が前記雌側管部に挿入された状態で、前記雄側管部および前記雌側管部が抜け止め状態に連結されるとともに、
前記雄側管部のシール部材収容溝に収容されたシール部材によって、前記雄側管部および前記雌側管部間の水密が図られるように構成され、
前記雄側管部の外周面における前記シール部材収容溝よりも基端側に、ピン収容部が形成され、
前記雌側管部に、前記ピン収容部に対応してピン挿通部が形成され、
外部から前記雌側管部のピン挿通部に挿脱自在に挿通された固定ピンが前記ピン収容部に収容されて、その固定ピンが前記ピン収容部の内周面および前記ピン挿通部の内周面に係合することによって前記雄側管部および前記雌側管部が抜け止め状態に連結されるように構成され、
前記固定ピンの中間部には、前記ピン収容部に対応して外側に湾曲形成された抱持部が設けられ、
前記槽外取付部材の連結部に、前記ジョイント管の連結部が回転自在に連結され、
前記槽外取付部材および前記ジョイント管が硬質合成樹脂によって構成されていることを特徴とする浴槽用給湯口アダプタ。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「浴槽の側壁に貫通状態に取り付けられ、外管を介して浴槽内に湯水を供給する浴槽用給湯口アダプタであって、
浴槽の側壁外面に配置される槽外取付部材と、その槽外取付部材に連結され、かつ外管が接続されるジョイント管とを備え、
前記槽外取付部材および前記ジョイント管の互いの連結部のうちいずれか一方が、雌側管部として構成されるとともに、残り一方が、前記雌側管部に挿入する雄側管部として構成され、
前記雄側管部の先端部外周面にシール部材収容溝が周方向に沿って形成されるとともに、前記雄側管部の基端側に先端部よりも径寸法が大きい案内部が形成され、
前記雌側管部の管孔の奥部は、その径寸法が前記雄側管部の先端部を挿入し得る大きさに形成された小径孔部として構成されるとともに、前記雌側管部の管孔の開口縁部は、その径寸法が前記案内部を適合状態に嵌合し得る大きさに形成された大径孔部として構成され、
前記雄側管部の先端部および案内部が前記雌側管部の小径孔部および大径孔部にそれぞれ配置される態様に、前記雄側管部が前記雌側管部に挿入された状態で、前記雄側管部および前記雌側管部が抜け止め状態に連結されるとともに、
前記雄側管部のシール部材収容溝に収容されたシール部材によって、前記雄側管部および前記雌側管部間の水密が図られるように構成され、
前記雄側管部の外周面における前記シール部材収容溝よりも基端側に、ピン収容部が形成され、
前記雌側管部に、前記ピン収容部に対応してピン挿通部が形成され、
外部から前記雌側管部のピン挿通部に挿脱自在に挿通された固定ピンが前記ピン収容部に収容されて、その固定ピンが前記ピン収容部の内周面および前記ピン挿通部の内周面に係合することによって前記雄側管部および前記雌側管部が抜け止め状態に連結されるように構成され、
前記固定ピンの中間部には、前記ピン収容部に対応して外側に湾曲形成された抱持部が設けられ、
前記槽外取付部材の連結部に、前記ジョイント管の連結部が回転自在に連結され、
前記槽外取付部材および前記ジョイント管が硬質合成樹脂によって構成され、
前記ジョイント管が一体成形品によって構成されていることを特徴とする浴槽用給湯口アダプタ。」

2 本件補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ジョイント管」について「一体成形品によって構成されている」という限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下、検討する。

3 独立特許要件の判断
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-341717号公報(以下「引用文献1」という。)には、「浴槽用接続具」に関して、図面とともに次の記載がある。(下線は理解の一助のために当審にて付したものである。以下同様。)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、循環流路の配管の浴槽本体からの取出方向にかかわらず、1種類の接続具で対応可能な浴槽用接続具に関するものである。」
「【0020】浴湯循環流路Dは、吸込配管D1と吐出配管D2とからなり、吸込配管D1の始端を浴槽用接続具Aを介して浴槽本体1に接続すると共に、終端を浴槽水浄化循環装置10と接続し、吐出配管D2の始端を浴槽水浄化循環装置10に接続すると共に、終端を浴槽用接続具Aを介して浴槽本体1に接続している。」
「【0025】図2及び図3に示すように、浴槽用接続具Aは、接続具本体11と、配管接続継手12とからなり、一端を浴槽本体1に取付けた接続具本体11の他端に、内部に屈曲流路26を有する配管接続継手12を首振り自在に取付けて構成している。
【0026】本実施例において、接続具本体11は一端を浴槽本体1に取付けると共に、他端に接続口13を開口した筒体14と、同筒体14に螺着する連結筒体15とから構成し、浴槽本体1に取付ける場合は、図3に示すように、同筒体14の先端と連結筒体15とで浴槽本体1の側壁Wを挟み込むようにして固定している。」
「【0033】即ち、図5に示すように、配管接続継手12の基端12a を接続口13に回動自在に嵌合すると共に、接続口13の周縁に設けたフランジ部27と、配管接続継手12の基端12a からやや間隔をあけて設けたフランジ部28とを密着させ、かかる両フランジ部27,28 を抱き込むようにしてクイックファスナー30を取付け、配管接続継手12が抜けることを防止している。」
「【0042】なお、図5において、35はOリング、36は配管接続継手12の先端12a に形成した配管接続部であり、浴湯循環流路Dの吸込配管D1の一端、あるいは、吐出配管D2の一端に接続する。」
「【0047】このように、接続具本体11を浴槽本体1に対する取付け角度を変更自在とすることにより、配管接続継手12の接続具本体11からの立上がり方向を筒体14の軸線回りで自在に変更できることになり、同配管接続継手12と浴湯循環流路Dの各配管D1,D2 との接続方向を2倍に増加させることができ、施工時の対応が容易となる。」
「【0051】また、配管接続継手をL字状に形成すると共に、同配管接続継手の基端を、接続具本体の浴槽本体外側に突出する筒体の周面に設けた接続口に首振り自在に取付けたことにより、浴槽本体から循環流路をなす吸込配管、吐出配管の取出方向が、例えば、平面視で前方であったり、あるいは、左右方向となっても、配管接続継手の首振り角度を変更することができ、容易に対応可能となる。」

(イ)上記(ア)及び図2、3、5の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1に記載された技術は、循環流路の配管の浴槽本体からの取出方向にかかわらず、1種類の接続具で対応可能な浴槽用接続具に関するものである(【0001】)。
b 浴槽用接続具Aは、接続具本体11と配管接続継手12とからなり(【0025】)、浴湯循環流路Dの吸込配管D1及び吐出配管D2を浴槽本体1に接続するものである(【0020】)。
c 接続具本体11は、一端を浴槽本体1に取付けると共に他端に接続口13を開口し、浴槽本体1外側に突出する筒体14と、同筒体14に螺着する連結筒体15とから構成され、浴槽本体1に取付ける場合は、同筒体14の先端と連結筒体15とで浴槽本体1の側壁Wを挟み込むようにして固定されるものである(【0026】、【0051】)。
d 配管接続継手12は、その基端12aが筒体14の接続口13の内側に回動自在に嵌合されるものであり(【0033】、図3、図5)、配管接続継手12の配管接続部には浴湯循環流路Dの吸込配管D1の一端又は吐出配管D2の一端が接続される(【0042】)。
e 配管接続継手12の基端12aには、Oリング35が配置される(【0042】、図5)。
f 接続口13の周縁に設けたフランジ部27と、配管接続継手12の基端12aからやや間隔をあけて設けたフランジ部28とを密着させ、かかる両フランジ部27,28を抱き込むようにしてクイックファスナー30を取付けることにより、配管接続継手12が抜けることが防止される(【0033】)。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「循環流路の配管の浴槽本体1からの取出方向にかかわらず、1種類の接続具で対応可能な浴槽用接続具であって、
浴槽用接続具は、接続具本体11と配管接続継手12とからなり、浴湯循環流路Dの吸込配管D1及び吐出配管D2を浴槽本体1に接続するものであり、
接続具本体11は、一端を浴槽本体1に取付けると共に他端に接続口13を開口し、浴槽本体1外側に突出する筒体14と、同筒体14に螺着する連結筒体15とから構成され、浴槽本体1に取付ける場合は、同筒体14の先端と連結筒体15とで浴槽本体1の側壁Wを挟み込むようにして固定され、
配管接続継手12は、その基端12aが筒体14の接続口13の内側に回動自在に嵌合されるものであり、配管接続継手12の配管接続部には浴湯循環流路Dの吸込配管D1の一端又は吐出配管D2の一端が接続され、
配管接続継手12の基端12aには、Oリング35が配置され、
接続口13の周縁に設けたフランジ部27と、配管接続継手12の基端12aからやや間隔をあけて設けたフランジ部28とを密着させ、かかる両フランジ部27,28を抱き込むようにしてクイックファスナー30を取付けることにより、配管接続継手12が抜けることが防止される、浴槽用接続具。」

イ 引用文献2
(ア)同じく原査定の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-269425号公報(以下「引用文献2」という。)には、「流体機器本体と嵌合部材との連結装置」に関して、図面とともに次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体機器本体(例えば制御弁、マニホールドレギュレータ、アクチュエータ)のポート(接続口)に嵌合された嵌合部材(例えばワンタッチ管継手、ポートプラグ)の抜け出しが防止される流体機器本体と嵌合部材との連結装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図3は、本発明の流体機器本体と嵌合部材との連結装置の第1従来例を示す。図3(d) に示すように、流体機器本体2の長手方向に段付のポート4が形成され、ポート4には外側から順に大径部4A及び中径部4Bがあり、中径部4Bは小径の流体通路10に接続されている。流体機器本体2にはポート4の中心線に対して垂直な縦長のクリップ挿入溝5が形成され(図3(c) 参照)、クリップ挿入溝5は正面視でコ字状であり、縦長の左溝5A及び右溝5Cは所定の横幅を有し、横長の上溝5Bは所定の縦幅を有している。クリップ挿入溝5の左溝5A及び右溝5Cの先端(図3(d) では下端)は盲穴であり、クリップ挿入溝5の上溝5Bの上端は開口6(図3(a) 参照)となっている。また、図3(a) に示すように、開口6は所定の左右幅及び所定の前後幅を有しており、開口6の前後幅の大きさはクリップ1の直径の約2倍である。なお、クリップ挿入溝5の上溝5B、左溝5A及び右溝5Cの前後幅は開口6の前後幅に等しい。なお、図3には流体機器本体2の一部のみが示されており、実際の流体機器本体の形状は図示のものとは異なっている。
【0003】図3(d) に示すように、嵌合部材3の外面には大径部3A及び小径部3Bが形成され、嵌合部材3が流体機器本体2のポート4に嵌合されたとき、嵌合部材3の大径部3A及び小径部3Bはポート4の大径部4A及び中径部4Bに接触する。大径部3Aの外周には係合溝7が形成され、係合溝7の深さは、〔(係合溝7の外径)-(係合溝7の内径)〕/2であり、クリップ挿入溝5の左溝5A及び右溝5Cの横幅の長さと同一である。また、係合溝7の前後幅の長さはクリップ挿入溝5の各溝5A?5Cの前後幅の長さと同一である。嵌合部材3の小径部3Bには不図示の環状溝が形成され、この環状溝にはOリング8が装着されており、Oリング8はポート4と嵌合部材3との間をシールする。嵌合部材3がワンタッチ管継手の場合には、ワンタッチ管継手の内部にパイプを装着するための不図示の装着孔及び連通孔が形成され、嵌合部材3がポートプラグの場合にはポートプラグの内部は中実である。
【0004】図3(e) に示すように、弾性線材製のクリップ1は、正面視で折曲部1A、中央部1B及び折曲部1Cからなる略コ字状であり、折曲部1A,1Cの略中央位置に外側に膨らんだ湾曲部が形成されている。また、図3(f) に示すように、クリップ1 は側面視で数字の1字状である。
【0005】流体機器本体2に嵌合部材3を連結する場合には、流体機器本体2のポート4に嵌合部材3を嵌合させる。図3(c),(d) に示すように、嵌合した状態では嵌合部材3の係合溝7の左右の部分が流体機器本体2のクリップ挿入溝5の左溝5A・右溝5Bの中央部分と合致(同一空間を共有して)している。従って、クリップ1を流体機器本体2の開口6に挿通しクリップ挿入溝5に挿入すると、クリップ1の折曲部1A・1Cの先端部及び上端部はクリップ挿入溝5の前後壁と係合可能であり、クリップ1の折曲部1A・1Cの湾曲部とその近傍は嵌合部材3の係合溝7の前後壁と係合可能である。嵌合部材3を外側に引っ張ると、クリップ1の折曲部1A・1Cの先端部及び上端部はクリップ挿入溝5の前側壁と係合し、クリップ1の折曲部1A・1Cの湾曲部とその近傍は嵌合部材3の係合溝7の後側壁と係合して、嵌合部材3の抜け出しが防止される。また、クリップ1の2個の折曲部1A,1Cに内側方向の弾発力が発生して、折曲部1A・1Cの湾曲部が嵌合部材3の係合溝7の内径部を挟持し、振動・衝撃によるクリップ1の脱落が防止される。」

(イ)上記(ア)及び図3の記載から、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2技術」という。)が記載されていると認められる。

「嵌合部材3の外面に大径部3A及び小径部3Bを形成するとともに、流体機器本体2に長手方向に外側から順に大径部4A及び中径部4Bがある段付のポート4を形成して、嵌合部材3が流体機器本体2のポート4に嵌合されたときに、嵌合部材3の大径部3A及び小径部3Bがポート4の大径部4A及び中径部4Bに接触するように構成し、
嵌合部材3の小径部3BにはOリング8が装着される環状溝を形成するとともに、嵌合部材3の大径部3Aの外周には係合溝7を形成し、また、流体機器本体2にはクリップ挿入溝5を形成することで、流体機器本体2のポート4と嵌合部材3との間をシールしつつ、クリップ1をクリップ挿入溝5に挿入したときに、嵌合部材3を外側に引っ張ると、クリップ1が流体機器本体2のクリップ挿入溝5の前側壁及び嵌合部材3の係合溝7の後側壁と係合して、嵌合部材3の抜け出しを防止するよう構成し、
クリップ1の折曲部1A、1Cの略中央位置に外側に膨らんだ湾曲部を形成する技術。」

(3)本願補正発明と引用発明との対比・判断
引用発明における「浴槽用接続具」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「浴槽用給湯アダプタ」に相当し、以下同様に、「浴槽本体1」は「浴槽」に、「側壁W」は「側壁」に、「浴湯循環流路Dの吸込配管D1及び吐出配管D2」は「外管」に、それぞれ相当する。
引用発明における「浴槽用接続具」は、「接続具本体11と配管接続継手12とからなり」、「接続具本体11は、一端を浴槽本体1に取付けると共に他端に接続口13を開口し、浴槽本体1外側に突出する筒体14と、同筒体14に螺着する連結筒体15とから構成され、浴槽本体1に取付ける場合は、同筒体14の先端と連結筒体15とで浴槽本体1の側壁Wを挟み込むようにして固定され(る)」ものであり、図3も参酌すれば、連結筒体15が浴槽本体1の側壁Wを貫通していることが明らかであるから、「浴槽の側壁に貫通状態に取り付けられ(る)」ものである点で、本願補正発明における「浴槽用給湯口アダプタ」と一致する。
引用発明における「浴槽用接続具」は、「浴湯循環流路Dの吸込配管D1及び吐出配管D2を浴槽本体1に接続するものであ(る)」から、「外管を介して浴槽内に湯水を供給する」点で、本願補正発明における「浴槽用給湯口アダプタ」と一致する。
引用発明における「筒体14」は、「浴槽本体1外側に突出する」ものであり、図3も参酌すれば、側壁Wの外面側に配置されるものであることが明らかであるから、本願補正発明の「浴槽の側壁外面に配置される槽外取付部材」に相当する。
引用発明における「配管接続継手12」は、「その基端12aが筒体14の接続口13の内側に回動自在に嵌合されるものであり、配管接続継手12の配管接続部には浴湯循環流路Dの吸込配管D1の一端又は吐出配管D2の一端が接続され(る)」から、本願補正発明における「槽外取付部材に連結され、かつ外管が接続されるジョイント管」に相当する。
引用発明において、「配管接続継手12は、その基端12aが筒体14の接続口13の内側に回動自在に嵌合され(る)」ものであり、図3も参酌すれば、配管接続継手12が雄側の管部、筒体14が雌側の管部であることが明らかであるから、引用発明は、「槽外取付部材およびジョイント管の互いの連結部のうちいずれか一方が、雌側管部として構成されるとともに、残り一方が、雌側管部に挿入する雄側管部として構成され(る)」点で、本願補正発明と一致する。
引用発明において、「配管接続継手12の基端12aには、Oリング35が配置」されており、図3及び図5も参酌すれば、基端12aの外周面に周方向に溝が形成され、該溝にOリング35が収容されかつOリング35は筒体14の接続口13の内面に配置されるものであることは明らかであり、また、該Oリング35が配管接続継手12と筒体14との間の水密を図るものであることは技術的に明らかである。
したがって、引用発明は、「雄側管部の先端部外周面にシール部材収容溝が周方向に沿って形成され」、「雄側管部のシール部材収容溝に収容されたシール部材によって、雄側管部および雌側管部間の水密が図られるように構成され(る)」点で、本願補正発明と一致する。
引用発明において、「接続口13の周縁に設けたフランジ部27と、配管接続継手12の基端12aからやや間隔をあけて設けたフランジ部28とを密着させ、かかる両フランジ部27,28を抱き込むようにしてクイックファスナー30を取付けることにより、配管接続継手12が抜けることが防止される」から、引用発明は、「雄側管部が雌側管部に挿入された状態で、雄側管部および雌側管部が抜け止め状態に連結される」点で、本願補正発明と一致する。
引用発明において、「配管接続継手12は、その基端12aが筒体14の接続口13の内側に回動自在に嵌合され(る)」から、引用発明は、「槽外取付部材の連結部に、ジョイント管の連結部が回転自在に連結され(る)」点で、本願補正発明と一致する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「浴槽の側壁に貫通状態に取り付けられ、外管を介して浴槽内に湯水を供給する浴槽用給湯口アダプタであって、
浴槽の側壁外面に配置される槽外取付部材と、その槽外取付部材に連結され、かつ外管が接続されるジョイント管とを備え、
前記槽外取付部材および前記ジョイント管の互いの連結部のうちいずれか一方が、雌側管部として構成されるとともに、残り一方が、前記雌側管部に挿入する雄側管部として構成され、
前記雄側管部の先端部外周面にシール部材収容溝が周方向に沿って形成され、
前記雄側管部が前記雌側管部に挿入された状態で、前記雄側管部および前記雌側管部が抜け止め状態に連結されるとともに、
前記雄側管部のシール部材収容溝に収容されたシール部材によって、前記雄側管部および前記雌側管部間の水密が図られるように構成され、
前記槽外取付部材の連結部に、前記ジョイント管の連結部が回転自在に連結される浴槽用給湯口アダプタ。」

[相違点1]
「雄側管部が雌側管部に挿入された状態で、前記雄側管部および前記雌側管部が抜け止め状態に連結されるとともに、前記雄側管部のシール部材収容溝に収容されたシール部材によって、前記雄側管部および前記雌側管部間の水密が図られるように構成され(る)」にあたって、本願補正発明においては、「前記雄側管部の基端側に先端部よりも径寸法が大きい案内部が形成され、前記雌側管部の管孔の奥部は、その径寸法が前記雄側管部の先端部を挿入し得る大きさに形成された小径孔部として構成されるとともに、前記雌側管部の管孔の開口縁部は、その径寸法が前記案内部を適合状態に嵌合し得る大きさに形成された大径孔部として構成され、前記雄側管部の先端部および案内部が前記雌側管部の小径孔部および大径孔部にそれぞれ配置される態様」とするとともに、「前記雄側管部の外周面における前記シール部材収容溝よりも基端側に、ピン収容部が形成され、前記雌側管部に、前記ピン収容部に対応してピン挿通部が形成され、外部から前記雌側管部のピン挿通部に挿脱自在に挿通された固定ピンが前記ピン収容部に収容されて、その固定ピンが前記ピン収容部の内周面および前記ピン挿通部の内周面に係合することによって前記雄側管部および前記雌側管部が抜け止め状態に連結されるように構成され、前記固定ピンの中間部には、前記ピン収容部に対応して外側に湾曲形成された抱持部が設けられ(る)」のに対して、引用発明においては、「配管接続継手12は、その基端12aが筒体14の接続口13の内側に回動自在に嵌合されるものであり」、「配管接続継手12の基端12aには、Oリング35が配置され」、「接続口13の周縁に設けたフランジ部27と、配管接続継手12の基端12aからやや間隔をあけて設けたフランジ部28とを密着させ、かかる両フランジ部27,28を抱き込むようにしてクイックファスナー30を取付けることにより、配管接続継手12が抜けることが防止される」ものである点(以下「相違点1」という。)。

[相違点2]
本願補正発明においては、「槽外取付部材およびジョイント管が硬質合成樹脂によって構成され(る)」のに対して、引用発明においては、筒体14及び配管接続継手12を構成する材料が特定されていない点(以下「相違点2」という。)。

[相違点3]
本願補正発明においては、「ジョイント管が一体成形品によって構成されている」のに対して、引用発明においては、配管接続継手12が一体成形品であるか明らかでない点(以下「相違点3」という。)。

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
引用文献2技術は、嵌合部材3(雄側管部。括弧内は本願補正発明における対応する事項を表す。以下同様。)の外面に大径部3A(案内部)及び小径部3B(先端部)を形成するとともに、流体機器本体2(雌側管部)に長手方向に外側から順に大径部4A(大径孔部)及び中径部4B(小径孔部)がある段付のポート4を形成して、嵌合部材3(雄側管部)が流体機器本体2(雌側管部)のポート4に嵌合されたときに、嵌合部材3(雄側管部)の大径部3A(案内部)及び小径部3B(先端部)がポート4の大径部4A(大径孔部)及び中径部4B(小径孔部)に接触するように構成し、
嵌合部材3(雄側管部)の小径部3B(先端部)にはOリング8(シール部材)が装着される環状溝(シール部材収容溝)を形成するとともに、嵌合部材3(雄側管部)の大径部3A(案内部)の外周には係合溝7(ピン収容部)を形成し、また、流体機器本体2(雌側管部)にはクリップ挿入溝5(ピン挿通部)を形成することで、流体機器本体2(雌側管部)のポート4と嵌合部材3(雄側管部)との間をシールしつつ、クリップ1(固定ピン)をクリップ挿入溝5(ピン挿通部)に挿入したときに、嵌合部材3(雄側管部)を外側に引っ張ると、クリップ1(固定ピン)が流体機器本体2(雌側管部)のクリップ挿入溝5(ピン挿通部)の前側壁及び嵌合部材3(雄側管部)の係合溝7(ピン収容部)の後側壁と係合して、嵌合部材3(雄側管部)の抜け出しを防止するよう構成し、
クリップ1(固定ピン)の折曲部1A、1Cの略中央位置に外側に膨らんだ湾曲部(抱持部)を形成するというものである。
すなわち、引用文献2技術は、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項に相当するものといえる。
そして、引用発明及び引用文献2技術は、いずれも流体機器の接続部において部材間のシールを図りつつ部材の抜け出しを防止する機能を有するものである点で共通するものであり、また、引用発明において、配管接続継手12と筒体14との間のシールを図りつつ配管接続継手12の抜け出しを防止するための具体的な構成として引用発明において特定されたもの以外のものを採用することを妨げる特段の事情はなく、具体的な構成として如何なるものを採用するかは、シール及び抜け出し防止の性能の他、コスト等を勘案して決定する選択事項であるといえるから、引用発明において、配管接続継手12と筒体14との間のシールを図りつつ配管接続継手12の抜け出しを防止するための具体的な構成として引用文献2技術を採用することにより、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

[相違点2、3について]
給湯器に使用する配管、接続具等を硬質合成樹脂から構成するとともに、該硬質合成樹脂から構成される配管、接続具等を一体成形品によって構成することは、例えば、特開2007-10281号公報(特に段落【0040】の記載を参照。)、特開2007-120794号公報(特に段落【0024】の記載を参照。)、特開2012-167882号公報(特に段落【0022】及び【0031】の記載を参照。)及び特開2010-133653号公報(特に段落【0029】、【0055】及び【0056】の記載を参照。)等に示されるように、周知技術である。
引用発明においては、配管接続継手12及び筒体14の材料を特定するものではなく、また、給湯器の配管及び接続具の材料を、機械的強度、耐久性等の給湯器の配管及び接続具として要求される性能を考慮して公知の材料から選択することは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。さらに、引用文献1の図3に示される断面図を参酌すれば、配管接続継手12が一体の部品によって構成されるものであることが示唆されている。
そうすると、引用発明において、上記周知技術を適用することにより、配管接続継手12及び筒体14を構成する材料として硬質合成樹脂を採用するとともに、配管接続継手12を一体成形品によって構成し、上記相違点2、3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願補正発明は、全体としてみても引用発明、引用文献2技術及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
なお、審判請求人は、効果について、審判請求書において、「本願発明の浴槽用給湯口アダプタは、構成M,Nを備えるため、槽外取付部材およびジョイント管は、一般的に給湯口アダプタの構成材料として用いられる金属に比べて摩擦抵抗が小さくなり、槽外取付部材に対しジョイント管の回転操作を抵抗なくスムーズに行うことができる。」と主張するが、明細書等においてそのような効果は記載されていない。
そして、仮に本願補正発明がそのような効果を有するものであるとしても、配管や接続具における周知の材料を選択したことに基づく効果にすぎず、引用発明、引用文献2技術及び周知技術から予測される以上の効果を奏するものではない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面並びに平成29年11月17日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲からみて、上記第2[理由]1(1)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1ないし3に係る発明は、以下の引用文献1ないし2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:特開平6-341717号公報
引用文献2:特開2003-269425号公報

3 引用文献
原査定の理由に引用された引用文献1ないし2の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、第2[理由]3において検討した本願補正発明から、「ジョイント管」に対しての「一体成形品によって構成されている」という限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記第2[理由]3(3)に記載したとおり、引用発明、引用文献2技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
前記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-15 
結審通知日 2019-05-21 
審決日 2019-06-03 
出願番号 特願2013-148129(P2013-148129)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F24H)
P 1 8・ 121- Z (F24H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉山 豊博柳本 幸雄  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 紀本 孝
大屋 静男
発明の名称 浴槽用給湯口アダプタ  
代理人 清水 久義  
代理人 高田 健市  
代理人 清水 義仁  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ