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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1353603
審判番号 不服2018-15389  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-20 
確定日 2019-07-18 
事件の表示 特願2016- 8807号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日出願公開、特開2016- 83430号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月30日に出願した特願2014-112341号の一部を平成28年1月20日に新たな特許出願(特願2016-8807号)としたものであって、同年1月27日に手続補正書が提出され、平成30年1月4日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月19日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月9日付け(送達日:同年8月21日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年11月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
本件補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の概要
(1)本件補正は、
平成30年3月19日付け手続補正によって補正された本件補正前の請求項1に、
「遊技者が操作可能な操作手段と、
遊技者に有利な特定遊技を実行する特定遊技制御手段と、
前記特定遊技を実行するか否かを抽選に基づいて判定する判定手段と、
所定の演出を実行する演出制御手段と、
前記操作手段を用いた操作演出を実行する操作演出実行手段と
を備えた遊技機において、
通常態様から特定態様に変化可能な可動体と、
前記可動体に備えた発光手段とを有し、
前記特定遊技の開始前の前記操作演出の実行中に、前記可動体を前記通常態様から前記特定態様に変化させると共に、前記発光手段による発光演出を実行し、
前記可動体を前記特定態様に維持した状態で前記特定遊技を開始する
ことを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「遊技者が操作可能な操作手段と、
遊技者に有利な特定遊技を実行する特定遊技制御手段と、
前記特定遊技を実行するか否かを抽選に基づいて判定する判定手段と、
所定の演出を実行する演出制御手段と、
前記操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設けた操作演出を実行する操作演出実行手段と
を備えた遊技機において、
通常態様から特定態様に変化可能な可動体と、
前記可動体に備えた発光手段とを有し、
前記特定遊技の開始前の前記操作演出の実行中に、前記可動体を前記通常態様から前記特定態様に変化させると共に、前記発光手段による発光演出を実行し、
前記可動体を前記特定態様に維持した状態で前記特定遊技を開始する
ことを特徴とする遊技機。」
と補正するものである(下線は、補正前後の箇所を明示するために合議体が付した)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「操作演出」を、「前記操作手段を用いた」ものから、「前記操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設けた」ものとする補正。

2 本件補正の目的
(1)上記1(2)の補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の【0117】、図23等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「操作演出」が、「前記操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設けた」ものであることを限定するものである。

(2)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしJは、分説するため合議体が付した。

「A 遊技者が操作可能な操作手段と、
B 遊技者に有利な特定遊技を実行する特定遊技制御手段と、
C 前記特定遊技を実行するか否かを抽選に基づいて判定する判定手段と、
D 所定の演出を実行する演出制御手段と、
E 前記操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設けた操作演出を実行する操作演出実行手段と
F を備えた遊技機において、
G 通常態様から特定態様に変化可能な可動体と、
H 前記可動体に備えた発光手段とを有し、
I 前記特定遊技の開始前の前記操作演出の実行中に、前記可動体を前記通常態様から前記特定態様に変化させると共に、前記発光手段による発光演出を実行し、
J 前記可動体を前記特定態様に維持した状態で前記特定遊技を開始する
F ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の遡及日前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-8183号公報(平成26年1月20日出願公開、以下「引用例」という。)には、遊技機に関し、次の事項が図面とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機などの遊技機に関する。
・・・略・・・
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについて重複する説明は省略する。
【0014】
図1および図2は、本実施形態における遊技機1の外観構成を示す斜視図である。この遊技機1は、遊技者の指示操作によって打ち出される遊技球が各種入賞口に入球すると賞球を払い出すように構成された弾球式の遊技機である。この遊技機1には、図1および図2に示すように、遊技の進行に伴い、それぞれ第1位置と第2位置との間で移動することにより、遊技の進行を演出する複数の可動装置15が設けられる。図1には、それら複数の可動装置15が第1位置で待機している待機状態(通常状態)を示しており、図2には、それら複数の可動装置15が第1位置から第2位置へ移動した動作状態を示している。
・・・略・・・
【0017】
また球受け部5の上面には、遊技者が演出を楽しむために操作する演出ボタン6が設けられる。この演出ボタン6は、例えば遊技機1において所定の演出パターンに基づく演出が行われるとき、遊技者が予め定められたタイミングで演出ボタン6を操作すると、それに連動して特別な演出を行うためのボタンである。これに対し、遊技者が予め定められたタイミングで演出ボタン6を操作しない場合には、特別な演出は行われない。つまり、遊技機1は、所定の演出パターンに基づく演出を行うとき、その所定の演出パターンに定められたタイミングで演出ボタン6が操作されるか否かに応じて演出内容を異なる内容に切り替える構成である。
【0018】
また演出ボタン6は、遊技機1における可動装置15の1つとして設けられる。この演出ボタン6は、通常、図1に示すように球受け部5の上面から僅かに突出した状態となる第1位置で待機した状態となっている。そして遊技機1において演出ボタン6を動作させる演出が行われるときには、図2に示すように演出ボタン6が上昇駆動され、球受け部5の上面からの突出長さが長くなって第2位置まで上昇移動することにより動作状態となる。図1および図2のいずれの状態においても、演出ボタン6は、遊技者による操作を検知可能である。特に、図2に示すように演出ボタン6が球受け部5の上面から所定長さ突出した動作状態で遊技者による操作が行われると、演出ボタン6は図1に示す元の待機状態に戻る。尚、図2に示すように演出ボタン6が上昇駆動されることによって球受け部5から所定長さ突出する演出は、遊技者に演出ボタン6を操作させる演出の中でも出現頻度の低い演出となっている。
・・・略・・・
【0021】
また前枠扉3は、透明ガラス板4の上部および球受け部5の下部に可動ランプ9,9を備えている。これらの可動ランプ9,9もまた、遊技機1で実行される演出パターンに基づいて点灯することにより、透明ガラス板4の上下両側において電飾演出を行うものである。また可動ランプ9,9は、光の照射方向を変化させることができるように動作可能であり、遊技機1における可動装置15の1つとして設けられる。すなわち、可動ランプ9,9は、通常、図1に示すように遊技機1の正面側を向いた状態の略水平な角度位置(第1位置)で点灯しない静止状態にある。そして遊技機1において可動ランプ9,9を動作させる演出が行われるときには、図2に示すように可動ランプ9,9が俯仰方向に回転駆動されて点灯する。図2の例では、透明ガラス板4の上部に設けられた可動ランプ9が所定の俯角位置(第2位置)へ回転移動する一方、球受け部5の下部に設けられた可動ランプ9が所定の仰角位置(第2位置)へ回転移動する。そして、それらが同時に点灯することによって、遊技機1の前方位置にある遊技者に対してスポットライトを照射するような態様で電飾演出を行う。尚、このように可動ランプ9,9が動作する演出は、遊技機1において行われる各種演出の中でも出現頻度は比較的低く、例えば大当たりが確定したことを報知するための演出の1つとして実行される。
・・・略・・・
【0026】
この図柄変動演出では、画像表示器12において例えば1?9などの数字を付した3つの装飾図柄を上下方向又は左右方向に変動させながら表示する演出が所定時間行われ、所定時間経過後に3つの装飾図柄を停止させることによって大当たりの抽選結果を表示する。このとき、3つの装飾図柄が例えば「7,7,7」などの揃った図柄で停止すれば、大当たりとなり、遊技機1は通常の遊技状態から大当たり遊技を行うための特別遊技状態へと移行する。遊技機1が特別遊技状態へと移行すると、遊技機1においては特別遊技演出が行われるようになり、特別遊技状態が終了するまで特別遊技演出が継続して行われる。
・・・略・・・
【0039】
演出制御基板40は、メイン制御基板20による遊技の進行に伴って実行すべき演出パターンを決定し、その決定した演出パターンに基づいて様々な遊技演出の実行を制御する。また演出制御基板40は、メイン制御基板20の制御によって進行していく遊技の遊技状態に基づいて演出モードを通常演出モードと特殊演出モードとの間で移行させ、その演出モードに応じた演出を行うように構成される。この演出制御基板40は、CPU41と、ROM42と、RAM43とを備えており、その下流側に設けられる画像制御基板50およびランプ制御基板60を制御することによって遊技機1における各種遊技演出の実行を制御する。
【0040】
例えば、演出制御基板40がメイン制御基板20から変動開始コマンドを受信すると、演出制御基板40は、その変動開始コマンドに基づき、複数の演出パターンの中から、メイン制御基板20で設定される変動時間に対応する一の演出パターンを決定する。このとき決定される一の演出パターンにより、遊技機1において行われる図柄変動演出の内容が決定される。そして演出制御基板40は、その一の演出パターンに基づいて画像制御基板50およびランプ制御基板60を制御することにより、その一の演出パターンに対応する図柄変動演出の実行を制御する。
【0041】
また演出制御基板40には、演出ボタン6が接続されている。そして演出制御基板40は、メイン制御基板20からの変動開始コマンドに基づいて決定した一の演出パターンが演出ボタン6の操作に連動して特別な演出を行うパターンである場合、その演出パターンに定められたタイミングにおいて遊技者が演出ボタン6を操作したことを検知すると、それに連動して特別な演出を行うように制御する。
【0042】
さらに演出制御基板40は、メイン制御基板20による制御によって特別遊技が開始されると、メイン制御基板20から受信するコマンドに基づいて複数の演出パターンの中から一の演出パターンを決定し、その一の演出パターンに対応する特別遊技演出の実行を制御する。
【0043】
ただし、演出制御基板40は、演出モードが通常演出モードである場合と、特殊演出モードである場合とで、遊技機1において行う演出が異なる演出となるように制御する。これについては後に詳しく説明する。
・・・略・・・
【0047】
次にメイン制御基板20および演出制御基板40の具体的な構成および動作について説明する。図4は、メイン制御基板20および演出制御基板40における具体的な機能構成の一例を示すブロック図である。まず図4に示すように、メイン制御基板20は、特別遊技判定部21aと、特別遊技実行部21bとを備えている。特別遊技判定部21aは、第1始動口又は第2始動口への入賞に伴う始動条件の成立により、上述した大当たり乱数を取得してその大当たり乱数の判定(大当たり抽選)を行う処理部である。つまり、この判定により、遊技者にとって有利な特別遊技状態へ移行するか否かが決定される。そして、特別遊技判定部21aは、その判定結果に基づいて図柄変動演出の変動時間を設定し、変動開始コマンドC1を演出制御基板40へ出力する。また特別遊技判定部21aは、上記判定の結果、大当たりに当選して特別遊技状態へ移行させる場合、図柄変動演出の変動時間が経過した後に、特別遊技実行部21bを機能させる。
【0048】
特別遊技実行部21bは、特別遊技状態において大入賞口ソレノイド29を開閉駆動することにより、遊技者にとって有利な特別遊技(大当たり遊技)を進行させる処理部である。この特別遊技実行部21bは、特別遊技を開始する際、演出制御基板40に対して特別遊技開始コマンドC2を出力する。
【0049】
一方、演出制御基板40は、図4に示すように、CPU41が第1演出制御部44、演出モード設定部45および第2演出制御部46として機能する。またROM42には、予め複数の演出パターン42aが記憶されており、RAM43には遊技の進行に基づいて更新される遊技情報43aが記憶されている。尚、ROM42に記憶される複数の演出パターン42aには、図柄変動演出用の演出パターンと、特別遊技演出用の演出パターンとが含まれる。
【0050】
第1演出制御部44は、特別遊技判定部21aから変動開始コマンドC1を受信した場合、その変動開始コマンドC1に基づいて複数の演出パターン42aの中から一の演出パターンを決定し、その一の演出パターンに対応する図柄変動演出を実行する。同様に、第1演出制御部44は、特別遊技実行部21bから特別遊技開始コマンドC2を受信した場合、その特別遊技開始コマンドC2に基づいて複数の演出パターン42aに中から一の演出パターンを決定し、その一の演出パターンに対応する特別遊技演出を実行する。尚、図柄変動演出および特別遊技演出は、いずれも遊技機1において行われる遊技演出の1つである。
【0051】
また第1演出制御部44は、変動開始コマンドC1や特別遊技開始コマンドC2に対応する図柄変動演出および特別遊技演出の実行を終了すると、それに伴い、RAM43に記憶されている遊技情報43aを更新する。
・・・略・・・
【0062】
図6は、遊技機1における演出モードの移行と、各演出モードにおいて行われる演出の概念を示す図である。通常、遊技者は、通常演出モードで遊技を行っていく。この状態では、移動演出制御部47が機能し、特別遊技判定部21aの判定結果に基づいて決定される一の演出パターンに、可動装置15を特定のタイミングで動作させる演出が含まれていれば、可動装置15がその特定のタイミングで動作する特定移動演出が行われる。ただし、特別遊技判定部21aの判定結果に基づいて決定される一の演出パターンに、そのような演出が含まれていない場合には、可動装置15が動作する演出は行われない。
【0063】
その後、例えば遊技機1において連続大当たり回数N2が10回目となる特別遊技が開始され、その特別遊技中に特定の遊技演出が行われると、演出モードのモード移行条件が成立し、演出モード設定部45は、演出モードを特殊演出モードに設定する。またこの他にも、演出モード設定部45は、上述したような他のモード移行条件が成立した場合に、演出モードを特殊演出モードに設定する。
【0064】
特殊演出モードが設定された状態では、保持演出制御部48が機能し、特別遊技判定部21aの判定結果に関わらず、例えば図2に示したように、可動装置15は第1位置から第2位置へ移動した状態のまま保持される。この状態は、遊技機1において解除条件が成立するまで継続する。そのため、特殊演出モードにおいて複数回の図柄変動演出が連続的に行われる場合には、それら複数回の図柄変動演出に跨って可動装置15が第2位置へ移動した状態の保持演出が継続的に行われる。また特殊演出モードでは、第1演出制御部44が特別遊技判定部21aの判定結果に基づいて決定する一の演出パターンに、仮に、可動装置15を特定のタイミングで動作させる演出が含まれている場合であっても、そのような特定のタイミングで可動装置15を移動させる演出は行われない。
【0065】
このように演出モードが特殊演出モードにある場合には、可動装置15が動作した状態のままで遊技が進行していくようになるため、遊技者に対して一種の達成感を付与することができるようになる。すなわち、遊技者が通常演出モードで長時間に亘って遊技を行ってきた場合でも、特殊演出モードに移行すると、可動装置15が動作したままの状態となり、それまでとは全く異なる演出状態で遊技を進行させることができるという一種の達成感により、それまで蓄積していた疲労感が緩和され、再び遊技への集中力を取り戻すことができるようになる。
【0066】
そして遊技機1において解除条件が成立すると、演出モード設定部45は、演出モードを再び通常演出モードに設定する。このとき、可動装置15は、第2位置から第1位置へと戻る。そして可動装置15は、再び、特別遊技判定部21aの判定結果に基づいて決定される一の演出パターンに定義された特定のタイミングで動作するようになる。
【0067】
図7は、通常演出モードにおいて実行される遊技演出の一例を示すタイミングチャートである。図7では、6回の図柄変動演出が行われた後、6回目の図柄変動演出が大当たりとなって特別遊技演出が開始される例を示している。1回目から6回目の図柄変動演出は、それぞれ演出パターンPA1,PA2,PA3,PA4,PA5,PA6に基づいて行われる。またタイミングT6から開始される特別遊技演出は、演出パターンPB1に基づいて行われる。
【0068】
ここで、図7の例では、3回目の演出パターンPA3に、特定のタイミングTaで演出ボタン6を移動させる特定移動演出が含まれており、演出ボタン6の動作に連動して行うエフェクト演出も含まれている。エフェクト演出とは、例えば可動装置15の動作に連動して画像表示器12に特定の演出画像を表示したり、スピーカー10から特定の演出音を出力したりする演出である。したがって、演出パターンPA3に対応する3回目の図柄変動演出が実行されているときには、特定のタイミングTaにおいて演出ボタン6が移動する特定移動演出が行われると共に、その特定移動演出に連動して、エフェクト演出が実行される。
【0069】
また6回目の演出パターンPA6には、特定のタイミングTbで演出ボタン6、可動役物14および可動ランプ9を移動させる特定移動演出が含まれており、それら可動装置15の動作に連動して行うエフェクト演出も含まれている。したがって、演出パターンPA6に対応する6回目の図柄変動演出が実行されているときには、特定のタイミングTbにおいて演出ボタン6、可動役物14および可動ランプ9の全てが移動する特定移動演出が行われると共に、その特定移動演出に連動して、エフェクト演出が実行される。
【0070】
さらに特別遊技演出の演出パターンPB1にも、特定のタイミングTcで演出ボタン6、可動役物14および可動ランプ9を移動させる特定移動演出が含まれており、それら可動装置15の動作に連動して行うエフェクト演出も含まれている。したがって、演出パターンPB1に対応する特別遊技演出が実行されているときには、特定のタイミングTcにおいて演出ボタン6、可動役物14および可動ランプ9の全てが移動する特定移動演出が行われると共に、その特定移動演出に連動して、エフェクト演出が実行される。
【0071】
このように通常演出モードでは、第1演出制御部44が特別遊技判定部21aの判定結果に基づいて決定する演出パターンに、演出ボタン6、可動役物14および可動ランプ9のそれぞれを移動させる特定移動演出が含まれていれば、その演出パターンに基づいて特定移動演出が実行される。
【0072】
これに対し、図8は、特殊演出モードにおいて実行される遊技演出の一例を示すタイミングチャートである。この図8においても、図7と同様、6回の図柄変動演出が行われた後、6回目の図柄変動演出が大当たりとなって特別遊技演出が開始される例を示している。また、1回目から6回目の図柄変動演出の演出パターンPA1,PA2,PA3,PA4,PA5,PA6、および、タイミングT6から開始される特別遊技演出の演出パターンPB1についても、図7と同様である。
【0073】
図8に示すように、特殊演出モードでは、演出ボタン6、可動役物14および可動ランプ9の全てが第2位置へ移動したままの動作状態となって保持される。そのため、3回目の演出パターンPA3に基づく図柄変動演出が実行されている場合でも、特定のタイミングTaにおいて演出ボタン6を移動させる特定移動演出は実行されず、その特定移動演出に連動して行うエフェクト演出も実行されない。また6回目の演出パターンPA3に基づく図柄変動演出が実行されている場合も同様であり、特定のタイミングTbにおいて演出ボタン6、可動役物14および可動ランプ9の全てを移動させる特定移動演出は実行されず、その特定移動演出に連動して行うエフェクト演出も実行されない。さらに、タイミングT6で開始される演出パターンPB1に基づく特別遊技演出が実行されている場合においても同様であり、特定のタイミングTcで演出ボタン6、可動役物14および可動ランプ9の全てを移動させる特定移動演出は実行されず、その特定移動演出に連動して行うエフェクト演出も実行されない。
【0074】
また特殊演出モードでは、演出ボタン6が遊技者によって押し込み操作されると、第2位置から一旦第1位置へと戻るが、その後、保持演出制御部48が再びボタン駆動部16を駆動することにより、演出ボタン6を上昇させて第2位置へ移動させる。つまり、特殊演出モードでは、遊技者が演出ボタン6を繰り返し操作したとしても、演出ボタン6は、その都度、第2位置へ復帰して動作状態を継続する。
【0075】
このような特殊演出モードにおける保持演出は、解除条件が成立するまで、特別遊技判定部21aにおける判定結果に関わらず継続する。そのため、遊技者にとっては通常演出モードでは発生し得ない保持演出が行われたままで遊技を進行させることができる。その結果、遊技者は、一種の達成感を得た状態のまま、遊技を継続することができる。
【0076】
また演出モードが特殊演出モードであるときには、上述したように、仮に第1演出制御部44において決定された演出パターンに、可動装置15を特定のタイミングで動作させる演出が含まれている場合であっても、第2演出制御部46は、特定のタイミングでは可動装置15を動作させないように制御する。このとき、エフェクト演出も実行しないように制御する。したがって、特殊演出モードにおいて仮に可動装置15が動作する演出パターンが実行対象として決定されたときでも、遊技機1において行われる演出が、不自然な演出となってしまうことを防止することができるようになる。」
イ 「【0084】
次に図11は、第2演出制御部46によって行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理もまた、遊技機1に電源が投入されることに伴って開始される処理である。第2演出制御部46は、この処理を開始すると、まず第1演出制御部44による図柄変動演出の実行中であるか否かを判断する(ステップS40)。図柄変動演出の実行中である場合(ステップS40でYES)、第2演出制御部46は、可動装置15を動作させる特定のタイミングとなったか否かを判断し(ステップS41)、特定のタイミングになると、可動装置15を駆動して第1位置から第2位置へ移動させると共に、再び第1位置へと戻すことにより、可動装置15による特定移動演出を実行させる(ステップS42)。このとき、第2演出制御部46は、必要に応じて、可動装置15による特定移動演出に連動させて行うエフェクト演出の実行を制御する。尚、図柄変動演出の実行中でない場合(ステップS40でNO)、又は、図柄変動演出の実行中であっても可動装置15を動作させる特定のタイミングになっていない場合(ステップS41でNO)には、ステップS42の処理は行われない。また、第1演出制御部44によって実行される図柄変動演出の演出パターンに可動装置15を動作させる演出が含まれていない場合にも、ステップS42の処理は行われない。
【0085】
次に第2演出制御部46は、第1演出制御部44による特別遊技演出の実行中であるか否かを判断する(ステップS43)。特別遊技演出の実行中である場合(ステップS43でYES)、第2演出制御部46は、可動装置15を動作させる特定のタイミングとなったか否かを判断し(ステップS44)、特定のタイミングになると、可動装置15を駆動して第1位置から第2位置へ移動させると共に、再び第1位置へと戻すことにより、可動装置15による特定移動演出を実行させる(ステップS45)。このときもまた、第2演出制御部46は、必要に応じて、可動装置15による特定移動演出に連動させて行うエフェクト演出の実行を制御する。尚、特別遊技演出の実行中でない場合(ステップS43でNO)、又は、特別遊技演出の実行中であっても可動装置15を動作させる特定のタイミングになっていない場合(ステップS44でNO)には、ステップS42の処理は行われない。また、第1演出制御部44によって実行される特別遊技演出の演出パターンに可動装置15を動作させる演出が含まれていない場合にも、ステップS42の処理は行われない。
【0086】
そして第2演出制御部46は、演出モードが特殊演出モードに切り替えられたか否かを判断し(ステップS46)、特殊演出モードへの切り替えが行われていない場合(ステップS46でNO)には、ステップS40に戻って上述した処理を繰り返す。つまり、ステップS40?S46の処理は、第2演出制御部46において移動演出制御部47が機能することによって行われる処理である。
【0087】
これに対し、特殊演出モードへの切り替えが行われた場合(ステップS46でYES)、第2演出制御部46は、可動装置15が第2位置へ移動したままの動作状態となっているか否かを判断し(ステップS47)、動作状態となっていない場合(ステップS47でNO)には、可動装置15を駆動して第1位置から第2位置へと移動させることにより動作状態とする(ステップS48)。一方、可動装置15が動作状態となっていれば(ステップS47でYES)、その動作状態をそのまま継続させて保持する。
【0088】
そして第2演出制御部46は、演出モードが通常演出モードに切り替えられたか否かを判断し(ステップS49)、通常演出モードへの切り替えが行われていない場合(ステップS49でNO)には、ステップS47に戻って上述した処理を繰り返す。これにより、特殊演出モードにおいて、例えば演出ボタン6が第2位置へ上昇しているときに遊技者による押し込み操作が行われた場合であっても、演出ボタン6はその度に繰り返し上昇駆動され、第2位置へ上昇した状態を保持する。
【0089】
一方、通常演出モードへの切り替えが行われた場合(ステップS49でYES)、第2演出制御部46は、可動装置15を第2位置から第1位置へ戻すべく、可動装置15を駆動して元の待機状態へと戻す(ステップS50)。これにより、特殊演出モードにおいて可動装置15の動作状態が継続する保持演出が終了する。上記ステップS47?S50の処理は、第2演出制御部46において保持演出制御部48が機能することによって行われる処理である。その後、第2演出制御部46による処理は、ステップS40へと戻り、上述した処理が繰り返し行われる。」
ウ 「【図1】


エ 「【図2】


オ 「【図8】


カ 【0072】及び【0073】の記載及び特殊演出モードにおいて実行される遊技演出のタイミングチャートを示した図8(上記オ)の記載からみて、1回目の図柄変動演出の開始時からであって、特別遊技演出が開始される前に、可動ランプ9が第2位置へ移動したままの動作状態となって保持されていることが看取できる。そして、上記イの【0087】には、演出モードが特殊演出モードに切り替えられた時、演出ボタン6や可動ランプ9等の可動装置15が第1位置にある場合には、それらの可動装置15を第2位置へと移動させて動作状態にする旨が記載されている。そうすると、その記載事項と図8の記載とからみて、演出モードが特殊演出モードに切り替えられた時に、演出ボタン6や可動ランプ9等の可動装置15が第1位置にある場合には、その直後に実行される1回目の図柄変動演出の開始時に、それらの可動装置15を第2位置へと移動させて動作状態にすることは、当業者にとって自明であるといえる。
キ 上記アの【0076】には、演出モードが特殊演出モードであるときに実行する演出パターンとして、可動装置15を特定のタイミングで動作させる演出、すなわち、操作演出、を含む旨が記載されている。そうすると、その記載事項と図8の記載とからみて、特殊演出モードにおいて、1回目の図柄変動演出の演出パターンとして操作演出を含むことは、当業者にとって自明である。
ク 上記アないしオ及びカの記載内容からみて、引用例には、実施形態として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、aないしjについては本願補正発明のAないしJに対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 遊技者が操作する演出ボタン6と(【0017】)、
b 遊技者にとって有利な特別遊技(大当たり遊技)を進行させる処理部である特別遊技実行部21bと(【0048】)、
c 大当たり乱数の判定(大当たり抽選)を行う処理部である特別遊技判定部21aと(【0047】)、
d 遊技の進行に伴って実行すべき演出パターンを決定し、その決定した演出パターンに基づいて様々な遊技演出の実行を制御する演出制御基板40であって(【0039】)、
e 前記演出ボタン6の操作に連動して特別な演出を行う演出パターンである場合、その演出パターンに定められたタイミングにおいて遊技者が演出ボタン6を操作したことを検知すると、それに連動して特別な演出を行うように制御する演出制御基板40と(【0041】)、
f を備えた遊技機1において(【0014】)、
g 正面側を向いた状態の略水平な角度位置(第1位置)から俯角位置(第2位置)に回転移動する可動ランプ9を有し(【0021】、図1、図2)、
h 前記可動ランプ9は、実行される演出パターンに基づいて点灯し(【0021】)、
i、j 特殊演出モードにおいて実行される遊技演出の一例であって、6回の図柄変動演出が行われた後、6回目の図柄変動演出が大当たりとなって特別遊技演出が開始される例において、その特別遊技演出が開始される前に、前記可動ランプ9が前記第2位置へ移動したままの動作状態になって保持され(【0072】ないし【0073】、図8、上記カ)、可動ランプ9は、通常、第1位置にあり、また、可動ランプ9が動作状態である第2位置で動作する演出は、大当たりが確定したことを報知するための演出の1つとして実行されるものであり(【0021】)、大当たり遊技を行うための特別遊技状態に移行すると、特別遊技演出が行われる(【0026】)、
f 遊技機1(【0014】)。」

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(j)は、本願補正発明のAないしJに対応させている。

(a)引用発明における「演出ボタン6」は、遊技者が操作するものであり、本願補正発明における「操作手段」に相当するといえるから、引用発明の特定事項aは、本願補正発明の特定事項Aに相当する。

(b)引用発明における「特別遊技実行部21b」は、遊技者にとって有利な特別遊技を進行させるものであり、本願補正発明における「特定遊技制御手段」に相当するといえるから、引用発明の特定事項bは、本願補正発明の特定事項Bに相当する。

(c)引用発明における「特別遊技判定部21a」は、大当たり抽選を行うものであり、本願補正発明における「判定手段」に相当するといえるから、引用発明の特定事項cは、本願補正発明の特定事項Cに相当する。

(d)引用発明における「演出制御基板40」は、様々な遊技演出の実行を制御するものであるから、本願補正発明における「演出制御手段」に相当するといえる。そうすると、引用発明の特定事項dは、本願補正発明の特定事項Dに相当する。

(e)引用発明における「前記演出ボタン6の操作に連動して特別な演出」を行うことは、本願補正発明における「操作手段」を用いた「操作演出」を行うことに相当するといえるから、引用発明における「その演出パターンに定められたタイミングにおいて遊技者が演出ボタン6を操作したことを検知すると、それに連動して特別な演出を行うように制御する演出制御基板40」は、本願補正発明における「操作演出を実行する操作演出実行手段」に相当するといえる。そうすると、引用発明の特定事項eと、本願補正発明の特定事項Eとは、「E’前記操作手段を用いた操作演出を実行する操作演出実行手段」である点で共通する。

(f)引用発明における「遊技機1」は、本願補正発明における「遊技機」に相当するといえるから、引用発明の特定事項fは、本願補正発明の特定事項Fに相当する。

(g)引用発明における「遊技機1の正面側を向いた状態の略水平な角度位置(第1位置)」及び「俯角位置(第2位置)」が、それぞれ、本願補正発明における「通常態様」及び「特定態様」に相当するといえるから、引用発明における、第1位置から第2位置に回転移動する「可動ランプ9」が、本願補正発明における「可動体」に相当する。そうすると、引用発明の特定事項gは、本願補正発明の特定事項Gに相当する

(h)引用発明における「可動ランプ9」は、遊技機1で実行される演出パターンに基づいて点灯するものであるから、本願補正発明における「発光手段」にも相当するといえる。そうすると、引用発明の特定事項hは、本願補正発明の特定事項Hに相当する。

(i)引用発明は、「可動ランプ9は、通常、第1位置にあ」る一方で、特殊演出モードにおいては、「特別遊技演出が開始される前に、前記可動ランプ9が前記第2位置へ移動したままの動作状態になって保持され」るものであるから、本願補正発明における「前記特定遊技の開始前」に「前記可動体を前記通常態様から前記特定態様に変化させる」ことを具備しているといえる。また、引用発明の特定事項i、jより、「大当たり」時に行われる演出を「特別遊技演出」と呼称していることは明らかであるから、引用発明における「可動ランプ9が動作状態である第2位置で動作する演出」を「大当たりが確定したことを報知するための演出の1つとして実行」することは、本願補正発明における「前記特定遊技の開始前」に「前記発光手段による発光演出を実行」することに相当するといえる。そうすると、引用発明の特定事項i、jと、本願補正発明の特定事項Iとは、「I’前記特定遊技の開始前に、前記可動体を前記通常態様から前記特定態様に変化させると共に、前記発光手段による発光演出を実行」する点で共通する。

(j)引用発明の特定事項i、jより、「前記可動ランプ9が前記第2位置へ移動したままの動作状態になって保持され」た状態で「特別遊技演出が開始される」ことは明らかであるから、引用発明は、本願補正発明における「前記可動体を前記特定態様に維持した状態で前記特定遊技を開始する」ことを具備しているといえる。そうすると、引用発明の特定事項i,jは、本願補正発明の特定事項Jに相当する。

イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技者が操作可能な操作手段と、
B 遊技者に有利な特定遊技を実行する特定遊技制御手段と、
C 前記特定遊技を実行するか否かを抽選に基づいて判定する判定手段と、
D 所定の演出を実行する演出制御手段と、
E’前記操作手段を用いた操作演出を実行する操作演出実行手段と
F を備えた遊技機において、
G 通常態様から特定態様に変化可能な可動体と、
H 前記可動体に備えた発光手段とを有し、
I’前記特定遊技の開始前に、前記可動体を前記通常態様から前記特定態様に変化させると共に、前記発光手段による発光演出を実行し、
J 前記可動体を前記特定態様に維持した状態で前記特定遊技を開始する
F ことを特徴とする遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(特定事項E)
「操作演出」に関し、
本願補正発明では、「前記操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設けた操作演出」を実行するのに対し、
引用発明では、特別な演出(操作演出)が、演出ボタン6(操作手段)の操作が有効となる操作有効期間を設けたものであるか否かが明らかでない点。

・相違点2(特定事項I)
「前記可動体を前記通常態様から前記特定態様に変化させると共に、前記発光手段による発光演出を実行」するタイミングが、
本願補正発明では、「前記特定遊技の開始前の前記操作演出の実行中」であるのに対して、
引用発明では、特別遊技演出(特定遊技)の開始前ではあるものの、特別な演出(操作演出)の実行中であるといえるか否かが明らかでない点。

(4)判断
ア 相違点1について検討する。
(ア)遊技機において、操作演出に、遊技者による操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設けることは、本願の出願前に周知(以下「周知技術」という。例.特開2014-23655号公報(【0001】、【0198】)、特開2014-4248号公報(【0001】、【0127】)、特開2012-120922号公報(【0001】、【0021】))である。

(イ)ここで、引用発明は、遊技者が操作する演出ボタン6を備えるものであるところ、その演出ボタン6は、特別な演出(操作演出)において、遊技者が予め定められたタイミングで操作されるものである(上記(2)の【0017】、【0041】)から、上記(ア)で示した周知技術に照らせば、引用発明において、特別な演出(操作演出)が「操作有効期間」を設けたものであることは、引用例に記載されているに等しい事項であると認められる。
したがって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。また、仮に相違点であったとしても、引用発明において、上記周知技術を採用して、特別な演出(操作演出)に、遊技者による演出ボタン6(操作手段)の操作が有効となる操作有効期間を設けることは、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏することではなく、具体化のための設計事項の範囲内である。

イ 相違点2について検討する。
(ア)上記(2)カで示したとおり、引用発明において、演出モードが特殊演出モードに切り替えられた時に、演出ボタン6や可動ランプ9等の可動装置15が第1位置にある場合には、その直後に実行される1回目の図柄変動演出の開始時に、それらの可動装置15を第2位置へと移動させて動作状態にすることは、当業者にとって自明である。さらに、上記(2)キで示したとおり、特殊演出モードにおいて、1回目の図柄変動演出の演出パターンとして操作演出を含むことも明らかである。そうすると、引用発明において、操作演出の実行開始時に、演出ボタン6を第1位置から第2位置に移動させることは、引用例に記載されているに等しい事項であるか、仮にそうでないとしても、当業者が適宜なし得たことである。ここで、本願補正発明における「前記操作演出の実行中」は、文言上、「前記操作演出の実行開始時」を含むものであるから、上記相違点2は実質的な相違点ではないか、または、仮に相違点であったとしても、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)また、仮に、本願補正発明における「前記操作演出の実行中」の意味するところを、本願の明細書及び図面の記載に基づいて解釈したとしても、本願の明細書及び図面には、操作演出を開始するタイミングについては明記がないものの、操作有効期間を設けた操作演出において、操作有効期間の開始時に回転体82の態様を変化させることが明記されている(【0117】、図23等)ことを鑑みると、その操作有効期間の開始時が操作演出の開始時であると解することができるため、この場合においても、本願補正発明における「前記操作演出の実行中」には、「前記操作演出の実行開始時」を含むものと認められる。
してみると、上記(ア)と同様に、上記相違点2は実質的な相違点ではないか、または、仮に相違点であったとしても、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは、当業者が容易になし得たことであるといえる。

ウ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明と同一であり、引用例に記載された発明である。
仮に、相違点1、2が実質的な相違点であるとしても、引用発明において、それら相違点に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは、当業者が引用例の記載事項と周知技術とに基づいて容易に想到し得たことである。

エ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び引用例の記載事項の奏する効果から予測することができた程度のものである。

(5)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、審判請求書において、概略以下の通り主張している。
「ハ)本願発明と引用文献1に記載の発明との対比
a)本願発明は、上記(3)ロ)Eに示すように、操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設けた操作演出を実行する操作演出実行手段を備えており、上記(3)ロ)I,Jに示すように、特定遊技の開始前の操作演出の実行中に、可動体を通常態様から特定態様に変化させると共に、発光手段による発光演出を実行し、可動体を特定態様に維持した状態で特定遊技を開始するように構成されております。このように本願発明では、操作演出の実行中に通常態様から特定態様に変化させた可動体を、続く特定遊技まで特定態様のまま維持することにより、その可動体が操作演出から特定遊技への架け橋となって一体的で途切れのない演出表現を行うことができるという格別の効果を奏するものです。
b)これに対し、引用文献1には、可動ランプ9を第1位置から第2位置へ移動させ、また点灯させる点について記載されておりますが、それらを特定遊技の開始前の操作演出の実行中に行う点については開示も示唆もされておりません。即ち、本願発明の「操作演出」は、操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設けたもの(上記(3)ロ)E)、即ち遊技者に操作手段を操作させるものであるのに対し、引用文献1には、上記のような可動ランプ9の移動・点灯を、「操作演出」の実行中でしかも特定遊技の開始前に実行する旨の記載はありません。
c)このように、本願発明は引用文献1に記載のない上記(3)ロ)Iの構成を具備することによって上述したような格別の効果を奏するものでありますから、如何に当業者といえども、引用文献1に記載の発明に基づいて本願発明に容易に想到し得たものとは解し得ません。」

イ しかしながら、上記(4)で示したとおり、「操作演出」が操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設けたものである点(本願補正発明の特定事項E)と、可動ランプ9の移動・点灯を、「操作演出」の実行中でしかも特定遊技の開始前に実行する点(本願補正発明の特定事項I)とは、いずれも引用例に記載されているといえるか、または、仮にそうでなくても、前者の点については、引用例の記載事項と周知技術とに基づいて、後者の点については、引用例の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるといえるから、審判請求人の主張を採用することはできない。

(6)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例に記載された発明である。
仮に、本願補正発明が引用例に記載された発明に対して相違点を見出すことができるとしても、本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に想到することができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は、同法同条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
(1)本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年3月19日付けで補正された、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

(2)ここで、本願発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしD、E-2、及びFないしJは、分説するため合議体が付した。

「A 遊技者が操作可能な操作手段と、
B 遊技者に有利な特定遊技を実行する特定遊技制御手段と、
C 前記特定遊技を実行するか否かを抽選に基づいて判定する判定手段と、
D 所定の演出を実行する演出制御手段と、
E-2 前記操作手段を用いた操作演出を実行する操作演出実行手段と
F を備えた遊技機において、
G 通常態様から特定態様に変化可能な可動体と、
H 前記可動体に備えた発光手段とを有し、
I 前記特定遊技の開始前の前記操作演出の実行中に、前記可動体を前記通常態様から前記特定態様に変化させると共に、前記発光手段による発光演出を実行し、
J 前記可動体を前記特定態様に維持した状態で前記特定遊技を開始する
F ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の理由の概略
原査定の拒絶の理由は、この出願の平成30年3月19日に提出された手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、または、この出願の平成30年3月19日に提出された手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1.特開2014-8183号公報

3 引用文献
引用文献1(引用例)の記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
ア 本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明のAないしD及びFないしJについては、上記第2〔理由〕3(3)の(a)ないし(d)及び(f)ないし(j)で示したように、本願発明と引用発明との対比結果のとおりであって、本願発明のE-2については、以下の見出し(e-2)に示すとおりである。

(e-2)引用発明における「前記演出ボタン6の操作に連動して特別な演出」を行うことは、本願発明における「操作手段」を用いた「操作演出」を行うことに相当するといえるから、引用発明における「その演出パターンに定められたタイミングにおいて遊技者が演出ボタン6を操作したことを検知すると、それに連動して特別な演出を行うように制御する演出制御基板40」は、本願発明における「操作演出を実行する操作演出実行手段」に相当するといえる。そうすると、引用発明の特定事項e-2は、本願発明の特定事項E-2に相当する。

イ 上記アからみて、本願発明と引用発明とは、
「A 遊技者が操作可能な操作手段と、
B 遊技者に有利な特定遊技を実行する特定遊技制御手段と、
C 前記特定遊技を実行するか否かを抽選に基づいて判定する判定手段と、
D 所定の演出を実行する演出制御手段と、
E-2 前記操作手段を用いた操作演出を実行する操作演出実行手段と
F を備えた遊技機において、
G 通常態様から特定態様に変化可能な可動体と、
H 前記可動体に備えた発光手段とを有し、
I’前記特定遊技の開始前に、前記可動体を前記通常態様から前記特定態様に変化させ、前記発光手段による発光演出を実行し、
J 前記可動体を前記特定態様に維持した状態で前記特定遊技を開始する
F ことを特徴とする遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点3(特定事項I)
「前記可動体を前記通常態様から前記特定態様に変化させると共に、前記発光手段による発光演出を実行」するタイミングが、
本願発明では、「前記特定遊技の開始前の前記操作演出の実行中」であるのに対して、
引用発明では、特別遊技演出(特定遊技)の開始前ではあるものの、特別な演出(操作演出)の実行中であるといえるか否かが明らかでない点。

ウ 相違点3について検討する。
当該相違点3は、上記第2〔理由〕3(3)のイで示した相違点2と同じであるから、上記第2〔理由〕3(4)のイで検討したとおり、上記相違点3は実質的な相違点ではないか、または、仮に相違点であったとしても、引用発明において、上記相違点3に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは、当業者が容易になし得たことである。

エ そうすると、本願発明は、引用発明と同一であり、引用例に記載された発明であるか、仮に、本願発明が引用発明に対して相違点を見出すことができるとしても、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に想到することができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-17 
結審通知日 2019-05-21 
審決日 2019-06-03 
出願番号 特願2016-8807(P2016-8807)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 知  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 島田 英昭
松川 直樹
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人谷藤特許事務所  

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