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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60L
管理番号 1353660
審判番号 不服2018-2107  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-15 
確定日 2019-07-16 
事件の表示 特願2017-185620「電気自動車」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月11日出願公開、特開2018- 7559〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年10月19日 :手続補正書
平成29年10月30日付け:拒絶理由通知
平成29年11月 5日 :意見書、手続補正書
平成30年 1月24日付け:拒絶査定
平成30年 2月15日 :審判請求
平成30年 2月15日 :手続補正書
平成30年11月29日付け:拒絶理由通知
平成30年12月16日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、本件補正による補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

「電気自動車として一日の平均走行距離走行に必要・充分な電力量を蓄積できる容量(例えば小型電気自動車としては10kwh程度)を有する大容量二次電池(以下二次電池という)を搭載し、走行途中における電気自動車への電力補給は、バッテリーステーションにおいて、前記搭載されている二次電池と同一容量・形状・仕様の充電済の二次電池をレンタルして交換・搭載する方法を可能とする、ことを特徴とする電気自動車。」

第3 拒絶の理由
平成30年11月29日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、次のとおりのものである。
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2001-57711号公報
引用文献2:特開2009-137366号公報
引用文献3:特開2004-262357号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

(1)「【請求項1】 バッテリを駆動源として電気モータを駆動させることにより走行する電気車両、当該電気車両に着脱自在に装着されるカセット状のバッテリ、当該電気車両の走行路の近傍に設けられている当該カセット状バッテリのバッテリ集積所とから構成された電気車両のエネルギー供給システムであって、当該電気車両の所有者若しくは使用者が、当該電気車両に装着したカセット状のバッテリを交換する必要が発生した場合に、当該バッテリを当該バッテリ集積所に返還し、充電処理済みの別のカセット状のバッテリを当該バッテリ集積所から入手して当該電気車両に装着する様に構成されている事を特徴とする電気車両用エネルギー供給システム。
【請求項2】 当該電気車両の所有者若しくは使用者は、当該バッテリ集積所を介して、販売され又はレンタル若しくはリース型式で流通するカセット状のバッテリに貯えられた電気エネルギーを有償で購入する様に構成されている事を特徴とする請求項1記載の電気車両用エネルギー供給システム。」

(2)「【請求項15】 所定の形状を有するカセット型バッテリを予め定められた所定の部位に着脱自在に搭載してなる電気車両と、当該所定の形状を有する満充電状態にある未使用の、若しくは再充電処理された、カセット型バッテリを複数個常時保有したカセット型バッテリ販売スタンドとから構成されており、当該電気車両の所有者若しくは使用者が必要により自己の電気車両に搭載されている当該カセット型バッテリと当該スタンドに保管されているカセット型バッテリとを交換する様に構成されている電気車両用エネルギー供給システム。」

(3)「【請求項17】 所定の形状を有するカセット化されたバッテリを予め定められた所定の部位に着脱自在に搭載してなる電気車両と、当該所定の形状を有するカセット化されたバッテリを、複数個常時保有し、且つ当該バッテリ群に対して個別に充電処理操作を実行し、満充電状態となった当該バッテリ群を保管する機能を有するエネルギー供給ステーションとから構成されており、当該電気車両が、当該エネルギー供給ステーションに立ち寄った際には、当該電気車両が現在搭載している当該1個若しくは所定の数のバッテリ群の一部若しくは全て取外し、当該ステーションに於いて保管されている同等の数の、既に満充電状態となっている当該バッテリ若しくはバッテリ群と差替えし、当該電気車両から取り外した当該1つ若しくは複数個のバッテリ群に充電処理操作を実行し、当該電気車両は、次のエネルギー供給ステーションに向かい、当該エネルギー供給ステーションでは、別の電気車両が立ち寄る迄待機する様に構成されている事を特徴とする電気車両用エネルギー供給システム。」

(4)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気車両に於ける電気車両用エネルギー供給システムに関するものであり、更に詳しくは、電気車両に対して、従来のガソリン車並の便利さでエネルギーを供給する事が可能な電気車両用エネルギー供給システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電気車両の実用化に向けた多くの研究開発が行われており、自然環境の保護と地球に優しい理想的な自動車として注目を集めている。然しながら、現在の段階では、当該電気車両の駆動源として使用する電気エネルギーを如何に供給し、如何に長時間に亘って充電状態を保持し、電気車両を如何に長距離の走行に耐える様にするかが最大の問題であり、その第1の問題は、蓄電池等のバッテリの蓄電能力が十分でなく、大きく然も極めて重量のあるバッテリを使用する必要があり、車体の設計に大きな制約を課するのみではなく、車体そのものの重量が重くなる事による負荷の増加が必須となるので、長期間、或いは長距離の走行には全く適していないのが実情である。然も、係る従来のバッテリでは、充電に3時間から10時間若しくはそれ以上の時間を要することから、容易に且つ効率的に電気車両に対するエネルギー供給を実行する事が不可能であり、従って、ガソリン、ディーゼル、天然ガス等の従来公知のエネルギー供給システムに比べて、全く機能性に劣り、実用化を阻害している大きな要因の一つである。」

(5)「【0003】又、バッテリを改良する方向の一つとして最近注目されているものに燃料電池を利用したバッテリを使用する方法が考えられている。然しながら、係る燃料電池は水素を原料として使用するものであり、例えば、従来のガソリンスタンドの様なエネルギステーションに於ては、危険度が大きく、到底実用的な電気車両用エネルギー供給システムを構築する事は不可能であるとされていたが、近年の技術開発により、燃料電池と雖も、カセット化された装着自在型のバッテリとして使用可能となってきており、従って、本発明に於て使用しうる対象となる二次電池としては、鉛蓄電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-亜鉛電池、ニッケルメタル湿式電池、三極鉛コバルト電池、ソジウム硫黄電池、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池及び燃料電池等が可能である。従って、従来に於ける当該電気車両の実用化に必要な条件は、軽量で、自動車の設計に大きな負担をかける事がなく、取扱が容易で、然も、短時間で充電操作が完了出来るバッテリと、且つ当該バッテリを、確実に満充電状態若しくはこれに近い状態にしかも短時間で充電処理しえる充電システムとが実現し、それらが、有機的にマッチッングする事が望まれている。
【0004】処で、上記した様に、若し、現在のガソリン・ステーション的なエネルギー供給先が主要都市並びに地方に於て普及した場合、ガソリン供給時間と同じ位の時間で、電気エネルギー、つまり充電処理操作を電気車両が即時に受け、満充電完了後、料金を決済して直ちに当該エネルギー供給ステーションを離れる様にし、次に待機している他の電気車両に同様に充電処理操作を行い、満充電完了後に出発させる事は、現在利用出来るあらゆるバッテリを使用しても又現在利用出来るあらゆる充電方法を使用しても実現は不可能である。」

(6)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を改良し、電気車両に対して、従来のガソリン車並の便利さでエネルギーを供給する事が可能な電気車両用エネルギー供給システムを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記した目的を達成する為、以下に示す様な基本的な技術構成を採用するものである。即ち、本発明に係る電気車両用エネルギー供給システムの第1の態様としては、バッテリを駆動源として電気モータを駆動させることにより走行する電気車両、当該電気車両に着脱自在に装着されるカセット状のバッテリ、当該電気車両の走行路の近傍に設けられている当該カセット状バッテリのバッテリ集積所とから構成された電気車両のエネルギー供給システムであって、当該電気車両の所有者若しくは使用者が、当該電気車両に装着したカセット状のバッテリを交換する必要が発生した場合に、当該バッテリを当該バッテリ集積所に返還し、充電処理済みの別のカセット状のバッテリを当該バッテリ集積所から又は当該充電完了したカセット型電気車両用バッテリを当該バッテリ集積所のブランチとして街角に設けられた一種の自動販売装置(ベンディングマシン)等より容易に有償で入手して当該電気車両に装着する様に構成されている電気車両用エネルギー供給システムであり、又、本発明に係る第2の態様としては、所定の形状を有するカセット化されたバッテリを予め定められた所定の部位に着脱自在に搭載してなる電気車両と、当該所定の形状を有するカセット化されたバッテリを、複数個常時保有し、且つ当該バッテリ群に対して個別に充電処理操作を実行し、満充電状態となった当該バッテリ群を保管する機能を有するエネルギー供給ステーションとから構成されており、当該電気車両が、当該エネルギー供給ステーションに立ち寄った際には、当該電気車両が現在搭載している当該1個若しくは所定の数のバッテリ群の一部若しくは全て取外し、当該ステーションに於いて保管されている同等の数の、既に満充電状態となっている当該バッテリ若しくはバッテリ群と差替えし、当該電気車両から取り外した当該1つ若しくは複数個のバッテリ群に充電処理操作を実行し、当該電気車両は、次のエネルギー供給ステーションに向かい、当該エネルギー供給ステーションでは、別の電気車両が立ち寄る迄待機する様に構成されている電気車両用エネルギー供給システムである。」

(7)「【0009】
【発明の実施の形態】本発明に係る当該電気車両とは、バッテリを駆動源として電気モータを駆動させることにより走行する電気車両全般であって、一般の乗用車、トラック、バスを含む事は当然のことながら、更に、電気自転車、電気オートバイ、フォークリフトその他の空港、工場、各種の展示会場、その他危険な環境下で所定の作業を実行する作業車、ゴルフカート、身障者用のホイールチェア、玩具用車両、遊園地の各種乗物、電気軌道車等を含むものである。つまり、本発明に係る当該電気車両用エネルギー供給システムは、従来の電気車両に於いては、当該電気車両に対して固定されて取り付けられているバッテリを、当該電気車両に対して着脱自在のカセット式バッテリに変更し、当該電気車両が、エネルギー供給ステーションに立ち寄って、当該カセット式バッテリを、当該エネルギー供給ステーションに用意されている、充電処理が完了している同一形式のカセット式バッテリと差し替える事によって当該電気車両に対するエネルギー供給操作を完了させ、一方当該電気車両から取り外した当該カセット形式のバッテリに充電処理操作を施し、次に来る同種の電気車両の為に常に満充電状態で保管しておくものである。
【0010】つまり、本発明に於いては、従来電気車両の一部分であったバッテリ部分を統一規格の下で構成されたカセット式バッテリに置き換え、当該カセット式バッテリはリース形式若しくはレンタル型式で、或いは個別的に販売方式を介して、多数の電気車両と多数のエネルギー供給ステーション、バッテリ集積所或いは自動販売機等の間を流通する様にし、電気車両の所有者若しくは使用者は、当該カセット形式のバッテリに充電された電気量に対してエネルギー代を支払う事により決済が完了する様に構成されたシステムである。
【0011】又、本発明に於いては、当該カセット式バッテリのそれぞれに、当該バッテリの情報の他、当該バッテリに対する充電状態に関する歴史を記録し保持せしめておき、少なくとも当該バッテリを充電処理する前後に、当該各バッテリの充電記録をモニターする事によって、当該バッテリの特性を判断し、劣化したと判断されるバッテリは、当該電気車両用エネルギー供給システムのルートから除外する様にするものである。つまり、上記した公知例は異なり、本発明は、自転車とは格段に行動半径のだいなる車両をも対象に含めると共に、然も自転車のレンタルシステムに於ける同一の貸出場所で、同一の自転車に対して一個のバッテリを借り出し、使用終了後同一の場所に同一の自転車と同一のバッテリを返却するものとは実質的に異なるものであって、基本的には、当該車両の所有者は個人(勿論レンタル会社であっても良い)であるのに対し、カセット型バッテリは、グローバルな統一規格とし、日本中はおろか、世界の何処にいても、何時でも、ガソリンスタンド的な機能を有する所定のスポット或いはステーションから、電気エネルギーを簡単に有料で、当該規格化カセット型バッテリを介して購入して使用する事が出来、更には、電気を使いきってしまったか、或いは残留容量が所定の基準値以下になった当該バッテリは、環境問題も配慮して当該所定のスポット或いはステーションに戻し、充電処理され、再利用に供される様にシステム化したものである。つまり、本発明に於ける特徴的な事は、当該規格化カセット型バッテリの所有権は、レンタル方式或いはリース方式に於ける電気車両の所有者に属する必要は無い。レンタル方式或いはリース方式の定義に於いては、当該使用済みのカセット状のバッテリが取り外されたり或いは満充電のカセット状のバッテリを搭載する時のその場所にあるエネルギーステーションに設けられた、カセット型バッテリホルダー(バッテリ保管棚)の所有者から、特定の形状で特定の容量を持ったカセット型バッテリがレンタルされるかリースされ、そしてその場所に返却されるべきものである。この様な関係から、本発明は従来のレンタル方式或いはリース方式とは明らかに異なるものである。又、交換可能なカセット型バッテリの所有権は、当該電気車両の所有者が、ある事業者から、使用した電気エネルギーに対する価格に付いて、ガソリンを使用た場合と同様に、請求書を受けると言うシステムを前提にするならば、当該事業者に所属されるべきである。係る方式に関する比較例としては、例えば、商品を運び、それを指定された者に届ける航海コンテナがある。この航海コンテナシステムでは、当該商品の出荷者は当該コンテナそのものを所有する事はない。」

(8)「【0012】
【実施例】以下に、本発明に係る電気車両用エネルギー供給システムの一具体例の構成を電気自動車を例にとって、図面を参照しながら詳細に説明する。即ち、図1(A)及び図1(B)は、本発明にかかる当該電気自動車用エネルギー供給システムの一具体例の構成の概略を説明する図であり、図中、所定の形状を有するカセット化された所定の数のバッテリ2を予め定められた所定の部位に着脱自在に搭載してなる電気自動車1と、当該所定の形状を有するカセット化されたバッテリ2を、複数個常時保有し、当該電気自動車1台分に必要とされる数の当該バッテリの内の一部若しくは当該電気自動車1台分に必要とされる数の当該バッテリを一ユニット5として、当該バッテリ群に対して個別に充電処理操作を実行し、満充電状態となった当該バッテリ群を保管する機能4を有するエネルギー供給ステーション3とから構成されており、当該電気自動車1が、当該エネルギー供給ステーション3に立ち寄った際には、当該電気自動車1が現在搭載している当該所定の数のバッテリ群2の一部若しくは全て取外し、当該ステーション3に於いて保管されている同等の数の、既に満充電状態となっている当該バッテリ群2’と差替えし、当該電気自動車1から取り外した当該1つ若しくは複数個のバッテリ群2に充電処理操作を実行し、当該電気自動車1は、次のエネルギー供給ステーション3’に向かい、当該エネルギー供給ステーション3では、別の電気自動車が立ち寄る迄待機する様に構成されている電気自動車用エネルギー供給システム100が示されている。」

(9)「【0016】図3(A)?図3(C)は、本発明に使用されるカセット化されたバッテリ2を着脱自在に搭載した電気自動車1の一具体例の構造を示したものである。又、本発明に於いては、当該電気自動車1は、当該カセット化された複数個のバッテリ郡2を平面状の一段状態で搭載する様にしてもよいが、望ましくは、図4に示す様に、当該バッテリ2は、1段若しくは多段に積層された状態で当該電気自動車に搭載されるものである。又、図3(D)は、本発明に係る当該カセット形式のバッテリ2を、水平面に対して所定の角度を持たせる様に立体的に配置して、その状態の複数個の当該カセット形式のバッテリ2を互いに並列に配置して使用する事も可能である。図3(D)は、当該カセット形式のバッテリ2、2’、2”を略水平面に対して直角に縦置きしてユニット化した例を示すものである。本発明に於ける1台の電気自動車1が搭載する当該バッテリ2の搭載位置は、予め定めておく事が望ましい。
【0017】更に、本発明に於いては、1台の電気自動車1が搭載するカセット化されたバッテリ2の搭載個数は、特に限定はされないが、好ましくは、特定の数に限定しておく事が必要である。従って、例えば、当該電気自動車1を大型、中型、小型の3種に特定し、各車種に搭載すべき当該カセット化されたバッテリ2の数はそれぞれ予め定めておくことが望ましい。」

(10)「【0037】又、図8(A)に於いて、棚部Bは、前回、棚部Aと同様に第2の状態に有ったものが、当該カセット化されたバッテリ2に対して充電処理操作が終了し、当該カセット化されたバッテリ2の放電を防止する為に、当該カセット化されたバッテリ2に対して、トリクル充電処理の様な、充電状態維持操作を実行している第3の状態になっている。電気自動車1の立ち寄りにより、当該電気自動車1から積卸したカセット化されたバッテリ2を格納した後、当該カセット化されたバッテリ2に対して充電処理操作を実行している第2の状態になっている。
【0038】従って、図8の状態にある、エネルギー供給ステーション3に、ある電気自動車1が充電を受ける為に立ち寄った場合には、先ず当該電気自動車1から当該カセット化されたバッテリ2を適宜の搬送手段、搬送ロボット手段等を利用して、積卸しした後、当該カセット化されたバッテリ2を当該保管手段4の棚部C内に挿入し、当該棚部Cを第2の状態に変化させて、当該カセット化されたバッテリ2に対して充電処理操作を開始すると共に、当該棚部Bに格納されている充電状態に維持された別のカセット化されたバッテリ2を適宜の搬送手段、搬送ロボット手段等を利用して、取り出して、当該電気自動車1の所定の部位に搭載する様にしたものである。」

(11)上記(9)の記載からみて、引用文献1には、電気自動車1を大型、中型、小型の3種に特定し、各車種に搭載すべき当該カセット化されたバッテリ2の数はそれぞれ予め定めておくことが記載されているから、引用文献1に記載された電気自動車1は、予め定められた数のカセット化されたバッテリ2を搭載できる。上記(7)の記載より、カセット化されたバッテリ2は、特定の容量を有していることがわかる。また、上記(8)の記載より、カセット化されたバッテリ2は、エネルギー供給ステーション3において充電処理操作されることから、カセット化されたバッテリ2は充電可能であるといえる。
以上のことから、引用文献1に記載された電気自動車1は、特定の容量を有する充電可能なカセット化されたバッテリ2を搭載している。

(12)上記(7)の記載より、電気車両は、エネルギー供給ステーションに立ち寄って、充電処理が完了している同一形式のカセット式バッテリと差し替える事によって当該電気車両に対するエネルギー供給操作を完了させていることがわかるから、引用文献1には、エネルギー供給ステーション3における電気車両へのエネルギー供給を、電気車両に搭載されているカセット式バッテリと同一形式の充電処理が完了しているカセット式バッテリと差し替えることにより行えることが記載されている。また、引用文献1には、上記(7)の記載より、このカセット式バッテリは、統一規格の下で構成されていることも記載されている。
そして、この電気車両には、上記(11)でいう電気自動車1が含まれ、カセット式バッテリは、上記(11)でいうカセット化されたバッテリ2であるとともに、このカセット化されたバッテリ2は、上記(7)の記載より、レンタルしているものといえる。
以上のことから、引用文献1には、エネルギー供給ステーション3における電気自動車1へのエネルギー供給は、エネルギー供給ステーション3において、電気自動車1に搭載されているカセット化されたバッテリ2と統一規格の下で構成された同一形式の充電処理が完了しているカセット式バッテリをレンタルして差し替えることにより行えることが記載されている。

2 引用発明
上記1からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「電気自動車1として特定の容量を有する充電可能なカセット化されたバッテリ2を搭載し、エネルギー供給ステーション3における電気自動車1へのエネルギー供給は、エネルギー供給ステーション3において、電気自動車1に搭載されているカセット化されたバッテリ2と統一規格の下で構成された同一形式の充電処理が完了しているカセット化されたバッテリをレンタルして差し替えることにより行える電気自動車1。」

3 引用文献2について
引用文献2は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定する「電気自動車本体部は、……大容量二次電池部の電気自動車本体部への交換・搭載を簡易にかつ安全に可能とする構造を有する」という事項に対応して提示された文献であったが、この事項は、本件補正により本願発明の発明特定事項ではなくなり、後述の「第6 判断」において用いられていないため、その記載内容の摘記は省略する。

4 引用文献3の記載
引用文献3には、以下の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】
搭載バッテリ総容量を固定部と増減部に分けて設置し、増減部は車体シャシーより上部にかつ少なくとも1箇所以上配設され、各増減部は少なくとも電池モジュール1個を着脱できる空間を含んでいることを特徴とする電気自動車。」

(2)「【0004】
そこで、自動車業界の大勢は、現状のインフラをほとんどそのまま利用できるとともに内燃機関自動車と同様に、1回の燃料補給で200Km以上の走行距離を確保でき、短時間で燃料補給ができるという使用形態を維持することを絶対的な前提条件とし、当面は内燃機関とバッテリを併用して排気の低減を図ったハイブリッド自動車を提供しつつ、ゼロ排気自動車である燃料電池自動車を開発する方向にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、現在の自動車が有している機能や性能と多くの自動車の実際の使用・運行形態との間には大きな乖離が存在し、過剰で無駄な機能や性能が多い。すなわち、現状ではすべての自動車について、どのような使われ方をしても不自由を感じることがないように設計されており、そのことがバッテリ自動車を非常に高価なものにするとともに、大掛かりなインフラ整備無しでは運行できないという致命的な問題にしており、電気自動車の普及を阻害している。
【0006】
例えば、1回の充電によってガソリン自動車と同様に200Kmの走行が可能であることが、絶対的に必要な条件であるように前提されることで、バッテリに要するコストが高くなり、ガソリン自動車に比べて非常に高価なものとなり、また車両重量が大きくなるため走行性能を低下させ、それに対応するためにさらに大きなバッテリ容量が必要になるという問題がある。また、ガソリンスタンドと同様に、必要時に何時でも何処でも短時間で充電又はバッテリ交換が可能であることが求められることからそのインフラ整備が必要となるが、現状では需要が小さいためインフラ整備は極めて困難であり、かつインフラ整備がされていないために需要を伸ばすことができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、自動車の種々の使用形態の内、多くの自動車が該当する使用形態に焦点を合わせることで、コスト低下を図った自動車と、使用時に不便を感じることがない電気自動車の継続運行保証システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気自動車は、中距離専用で、1日の走行距離による自動車の台数分布において合計台数が80%以下の任意の割合に達する走行距離を1回充電で走行可能な容量のバッテリを搭載する。この走行距離はほぼ70Kmであるが、短くすればするほどバッテリ容量が少なくて済み、価格を低減できる。一般に、大多数の人々は規則正しい日常生活を1日ごとに繰り返し、仕事か用務に自家用車を計画的に使用する場合には1日当たり70Km以上の走行距離を必要とせず、また毎日眠るので寝ているあいだに電気自動車を規則正しく再充電できる。
【0009】
そこで、本発明の電気自動車では、搭載するバッテリを固定部と増減部の2箇所に分けて設置し、総容量で上記走行距離の70Kmを達成し、電気自動車の販売時点において、増減部に収納された電池モジュールを任意数除去することにより、個別使用者によって異なる走行距離需要に対し、バッテリ容量をより細かく合わせるようにしている。これにより、価格もより一層低減できる。」

(3)「【0021】
【表1】

表1から、1日走行距離は意外と短く、30km未満のものが略80万台で3%、以下40kmまでのものが11%、50kmまでのものが31%、60kmまでのものが66%、70kmまでのものが78%であり、80%近い自動車は1日の走行距離がほぼ70km程度以下であることが分かる。これは、終日走り続ける営業車を除けば、自家用車は毎日の仕事と用務の遂行の補助にのみ使用され、特に法人自家用車は普通遠出もしない現実を反映している。
【0022】
一方、5人乗りで車両総重量1815kgの電気自動車に搭載されている12V、95Ahの24個のバッテリモジュールによれば、1回充電で走行距離が215kmとされていることから概略計算して1個のバッテリモジュール2によって略9kmの走行が可能であることになり、必要な搭載モジュール数は、表1の右欄に示すように、1日の走行距離が40kmで5個、50kmで6個、60kmで7個、70kmで8個となり、バッテリにかかるコストは100万円ないし160万円となる。一方、1日の走行距離が120km以上の場合には15個以上、300万円以上を必要とする。しかも日常の仕事ないし用務を遂行するために120Kmを走行する例はまれである。かくして、1日走行距離が70km未満である80%程度の自動車使用実例を対象とすることによって、搭載すべきバッテリに要するコストを、格段に低下できることが分かる。
【0023】
さらに、本実施形態のように、モジュール5個を固定部バッテリ3として固定的に設置し、モジュール3個は各別に容易に着脱できるように増減部空間に設置することによって、個々の電気自動車使用者について、それぞれ異なる1日ごとの使用形態に対して過剰なバッテリ容量を削除することで大幅にコスト低下を図ることができる。
【0024】
すなわち、表2に示すように、製造標準としてはモジュール8個を搭載して出荷し、営業所において、1日当たりの計画的需要走行距離が63km未満の顧客の場合にはモジュール1個を除去して総計7個とし、54km未満の顧客の場合には2個を除去して6個とし、45km未満の顧客の場合には増減部3個をすべて除去し、モジュール5個から成る固定部バッテリ3のみとすることで、搭載するバッテリに要するコスト及び重量を160万円、152kgから100万円、95kgにまで低減することができる
【0025】
【表2】



第5 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
引用発明の「特定の容量を有する」は、本願発明の「一日の平均走行距離走行に必要・充分な電力量を蓄積できる容量(例えば小型電気自動車としては10kwh程度)を有する」と、「走行に必要な電気量を蓄積できる容量を有する」点で共通する。
また、引用発明の「充電可能なカセット化されたバッテリ2」は、本願発明の「大容量二次電池」及び「二次電池」に相当する。
引用文献1には、「電気自動車1が、当該エネルギー供給ステーション3に立ち寄った際には、当該電気自動車1が現在搭載している当該所定の数のバッテリ群2の一部若しくは全て取外し、当該ステーション3に於いて保管されている同等の数の、既に満充電状態となっている当該バッテリ群2’と差替えし……、当該電気自動車1は、次のエネルギー供給ステーション3’に向か」うことが記載(上記「第4 引用文献の記載及び引用発明」、「1 引用文献1の記載」、「(8)」参照。)されているから、引用発明の「エネルギー供給ステーション3における電気自動車1」は、次のエネルギー供給ステーション3’への走行途中におけるものと解される。したがって、引用発明の「エネルギー供給ステーション3における電気自動車1」は、本願発明の「走行途中における電気自動車」に相当し、前者の「エネルギー供給」は、後者の「電力補給」に相当する。
引用発明の「エネルギー供給ステーション3」は、本願発明の「バッテリーステーション」に相当する。
また、引用発明の「電気自動車1に搭載されているカセット化されたバッテリ2」は、本願発明の「前記搭載されている二次電池」に相当し、前者の「充電処理が完了している」は、後者の「充電済の」に相当するから、引用発明の「電気自動車1に搭載されているカセット化されたバッテリ2と統一規格の下で構成された同一形式の充電処理が完了しているカセット化されたバッテリ」は、本願発明の「前記搭載されている二次電池と同一容量・形状・仕様の充電済の二次電池」と、「前記搭載されている二次電池と統一規格の下で構成された同一形式の充電済の二次電池」である点で共通する。
引用発明の「レンタルして差し替えることにより行える」は、本願発明の「レンタルして交換・搭載する方法を可能とする、」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の[一致点]で一致し、[相違点1]及び[相違点2]の点で相違する。

[一致点]
電気自動車として走行に必要な電気量を蓄積できる容量を有する大容量二次電池(以下二次電池という)を搭載し、走行途中における電気自動車への電力補給は、バッテリーステーションにおいて、前記搭載されている二次電池と統一規格の下で構成された同一形式の充電済の二次電池をレンタルして交換・搭載する方法を可能とする、ことを特徴とする電気自動車。

[相違点1]
電気自動車に搭載する二次電池の容量について、本願発明は、「一日の平均走行距離走行に必要・充分な電力量を蓄積できる容量(例えば小型電気自動車としては10kwh程度)」であるのに対し、引用発明は、特定の容量であるものの、一日の平均走行距離を走行するのに必要・充分な容量であることまでは、特定されていない点。

[相違点2]
電気自動車に搭載されている二次電池と、レンタルして交換、搭載される二次電池について、本願発明は、「同一容量・形状・仕様」の二次電池であるのに対し、引用発明は、統一規格の下で構成された同一形式であるものの、同一容量・形状・仕様であるとまでは、特定されていない点。

第6 判断
上記相違点について、判断する。
1 [相違点1]について
引用文献1には、電気車両に搭載されるバッテリとして、軽量で、取扱いが容易である事が望まれていることが記載(「第4 引用文献の記載及び引用発明」、「1 引用文献1の記載」、(5)参照。)されており、引用発明の電気自動車1に搭載されるカセット化されたバッテリ2においても軽量で取扱いが容易であることが求められているといえる。
また、充電可能なバッテリは、重量と容量との間に相関関係があり、軽量なものほど容量が小さくなることは技術常識であって、引用発明の電気自動車1に搭載されるカセット化されたバッテリを軽量なものとすれば、走行できる距離は短くなり、これが電気自動車の使用者にとって好ましくないことは明らかである。
したがって、引用発明の電気自動車1において、搭載するカセット化されたバッテリ2の容量を、従来より小さいものとしつつ、必要な交換回数が少なくなるようにすることは、当業者であれば当然考慮する事項である。
そして、電気自動車に搭載するバッテリの容量について、引用文献3には、80%近い自動車は1日の走行距離がほぼ70km程度以下であることを踏まえ(表1)、1回の充電によってガソリン自動車と同様に200Km走行を確保できることに代えて、1日の走行距離70kmを確保できるように、8個の小容量のバッテリモジュールを電気自動車に搭載することも記載されている。すなわち、引用文献3には、多くの電気自動車が1日に走行する距離を想定し、この距離を走行するのに必要、充分な容量のバッテリを搭載することが示されているといえる。ここで、1日に走行する距離を想定するにあたり、80%近い自動車の1日の走行距離を採用するか、電気自動車として1日の平均走行距離を採用するかは、当業者が適宜定める設計事項であるといえる。なお、表1の記載内容からみて、80%近い自動車の走行距離である70kmを走行できる8個のバッテリの総容量は、電気自動車の平均走行距離を走行するのに充分な容量と考えられる。
上記のように引用発明も引用文献3に記載された電気自動車も、バッテリを交換可能なものとし、その容量を小さくしようとする点で共通するから、引用発明のバッテリの容量を定めるに際して、引用文献3に記載された事項により、電気自動車が1日に走行する距離を想定し、この距離を走行するために必要・充分な電力量を蓄積できる容量とすることは、当業者が容易になし得た事項であり、この想定される1日に走行する距離を、電気自動車として1日の平均走行距離とすることは、当業者が適宜定める設計事項であって、その結果、特定の大きさの電気自動車に搭載する二次電池の容量が10kWh程度となることもまた、当業者が適宜定める設計事項であるといえる。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に引用文献3に記載された事項を適用して当業者が容易になし得たことである。

2 [相違点2]について
引用発明の、電気自動車1に搭載されているカセット化されたバッテリ2と統一規格の下で構成された同一形式のカセット化されたバッテリは、電気自動車1に差し替えて搭載し、使用できるものであるから、容量や形状、仕様は、差し替え可能になるように統一されていると解され、これは、実質的に電気自動車1に搭載されているカセット化されたバッテリ2と同一容量・形状・仕様の二次電池であるといえるから、相違点2は、実質的な相違点ではない。
また、仮に実質的な相違点であったとしても、引用発明のカセット化されたバッテリ2は、電気自動車に差し替えて搭載し、使用できる必要があり、一方、同一の容量で形状と仕様も同一のものであれば、差し替えて使用できるバッテリであることは、明らかである。したがって、引用発明の統一規格の下で構成された同一形式のカセット化されたバッテリを同一の容量で形状と仕様も同一のものとすることは、当業者が容易になし得た設計事項である。

3 本願発明の作用効果について
上記[相違点1]及び[相違点2]を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

4 請求人の主張について
請求人は、平成30年12月16日提出の意見書において、「本願発明のポイントは、一日の平均走行距離走行に必要十分な電気エネルギー蓄積容量を有する二次電池を搭載し、前記二次電池への電力エネルギーの補給は、バッテリーステーションにおいて、電気自動車に搭載されている二次電池と同一仕様の満充電された二次電池との交換・搭載をもって、可能とする(但し、搭載されている二次電池への直接充電も可能とする:明細書コラム0006)電気自動車に関するものである。」と主張している。
ここで、請求人の主張における「二次電池への電力エネルギーの補給」とは、本願発明の発明特定事項からみて、「電気自動車への電力補給」のことを意味すると解される。
そして、電気自動車に搭載する二次電池の容量を、一日の平均走行距離走行に必要十分な電気エネルギー蓄積容量とすることは、上記[相違点1]についての判断で示したように、引用文献3に記載された事項から、当業者が容易になし得た事項であり、引用発明は、本願発明の二次電池に相当するカセット化されたバッテリ2を満充電されたものと交換して搭載することで、電気自動車への電力補給とする電気自動車に関するものであるから、請求人が主張する本願発明のポイントは、引用文献1に記載されているか、引用文献3に記載された事項から当業者が容易になし得たものであるから、上記事項が本願発明のポイントであったとしても、本願発明は、上記のように引用発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである点にかわりはない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-22 
結審通知日 2019-05-23 
審決日 2019-06-04 
出願番号 特願2017-185620(P2017-185620)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 敏行  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 長馬 望
窪田 治彦
発明の名称 電気自動車  
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