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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01R
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01R
管理番号 1353666
審判番号 不服2018-3168  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-05 
確定日 2019-07-19 
事件の表示 特願2015-212105「衝撃電流検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月28日出願公開、特開2016- 14689〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月27日の出願である特願2011-164091号の一部を、平成27年10月28日に新たな特許出願としたものであって、平成29年4月18日付けの拒絶理由通知に対して平成29年6日26日付けで意見書が提出されたが、平成29年11月29日付けで拒絶査定がなされ(謄本発送日 平成29年12月5日)、これに対し、平成30年3月5日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、当審における平成31年1月15日付けの拒絶理由通知に対して、平成31年3月25日付けで手続補正がなされ、同日付けで意見書の提出がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成31年3月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
ロゴスキーコイルとともに内部積分回路を構成して当該内部積分回路の低域カット周波数が第一の周波数になるように選定された抵抗体を前記ロゴスキーコイルの両端に接続して得た信号と、低域カット周波数が第二の周波数であり且つ前記内部積分回路の前記第一の周波数から前記第二の周波数までの領域の垂下特性と相反する前記第二の周波数から前記第一の周波数までの領域の垂下特性を有して前記第二の周波数から前記第一の周波数までの領域において平坦化した信号を出力する外部積分回路で前記ロゴスキーコイルからの信号を積分した信号とを加算回路によって加算し、前記加算回路から前記第二の周波数以上の領域において平坦化した信号が出力される衝撃電流検出装置。」

第3 当審の拒絶理由の概要
当審において平成31年1月15日付けで通知した拒絶理由のうち理由2、3は、次のとおりのものである。
2.本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3.本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1、引用文献2及び引用文献3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2006-153646号公報
引用文献2.特開昭64-67017号公報
引用文献3.浅川 聡、外5名、広帯域ロゴスキーコイルの開発と冬季雷における電荷量の評価-仁賀保高原風力発電設備における2005年度冬季雷観測結果-、電力中央研究所報告、日本、2008.08.発行

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付したものである。以下同じ)。
「【0006】
このような課題を達成するために本発明は、ロゴスキーコイルに積分回路を接続して前記積分回路からの出力を検出する衝撃電流検出装置において、前記ロゴスキーコイルからの出力と、前記ロゴスキーコイルからの出力を積分回路により積分した出力とを加算手段により加算して出力するように構成されている。」

「【0008】
図1は、本発明の衝撃電流検出装置の一実施例を示すものであって、ロゴスキーコイル1は、電気抵抗の小さい絶縁被覆線、例えばエナメル被覆の銅線を巻回したコイル2を、一部が切り欠かれて略円形を保持するように癖付けられた保護筒3に収容するとともに、好ましくは保護筒3に積分用内部抵抗4を収容してコイル2を短絡するとともに、端部からリード線5により信号を取り出すように外部に引き出されて構成されている。」

「【0010】
図2は、上述の衝撃電流検出装置のロゴスキーコイルの電気的特性を模式的に表すとともに、検出回路部の具体例を示すもので、この実施例のロゴスキーコイル1の諸特性は、
コイルのインダクタンス分:500μH
コイルの直流抵抗分と内部積分用抵抗4との合計抵抗:1Ω
であり、また検出抵抗6は、2Ωで、図3(a)に示したように積分用内部抵抗4を含めたロゴスキーコイルの低域カットオフ周波数は1kHz程度ある。
【0011】
一方、積分回路7は、図3(b)に示したように高域カット周波数が1kHz程度となるように、つまりロゴスキーコイルの自己積分回路の低域カットオフ周波数とほぼ同一となるように調整されている。
【0012】
この実施例においてロゴスキーコイル1を弾性変形させて既設の構築物に装着する。この状態で構築物に落雷が生じて衝撃電流が流れると、衝撃電流の波頭部は、周波数が高いため、ロゴスキーコイル1自体のインダクタンス分とコイルの直流抵抗とにより形成される内部積分回路により周波数に依存せず、かつ波頭部の高周波衝撃電流値に比例した電圧として出力される。
【0013】
一方、上述したように波頭部の周波数が高いため、積分回路7は、検出抵抗6からの電圧に対してはカットオフ領域で機能することになる。
【0014】
したがって、加算器9からは衝撃電流の波頭部の電流値に比例した電圧信号が出力される。
【0015】
時間が経過して衝撃電流の波頭部が過ぎて衝撃電流の波尾部にさしかかると、波尾部は、波頭部に比較すると周波数が極めて低く、直流的であるため、ロゴスキーコイル1自体のインダクタンス分Lとコイルの直流抵抗分Rとにより形成される内部積分回路の低域カットオフ領域での変化となる。
【0016】
一方、波尾部の周波数が低いため、積分回路7は、その積分機能を十分に発揮して周波数に関わりなく衝撃電流の波尾部の電流値に比例した電圧信号を出力する。
【0017】
したがって、図3(c)に示したようにたとえ波尾部の継続時間が長い衝撃電流が発生しても、波頭部、及び波尾部、つまり0.1Hz乃至1MHzの周波数特性(ダイナミックレンジ7桁)を有する衝撃電流全体を正確に測定、検出することができる。」

「【0021】
・・・
【図3】図(a)乃至(c)は、それぞれロゴスキーコイル自体の周波数特性、積分回路の周波数特性、及び加算器から出力される信号を示す線図である。・・・」


図3(b)及び【0021】の記載より、積分回路7の周波数特性は、相対出力が、0.1Hz付近から1kHz程度まで周波数に対して平坦な特性であることが見て取れる。

図3(c)及び【0021】の記載より、加算器9から、周波数が0.1Hz付近以上の領域で周波数に対して平坦な特性の信号が出力されることが見て取れる。

したがって、上記引用文献1に記載された事項、図面の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所である)。
「ロゴスキーコイルに積分回路を接続して前記積分回路からの出力を検出する衝撃電流検出装置において、前記ロゴスキーコイルからの出力と、前記ロゴスキーコイルからの出力を積分回路により積分した出力とを加算手段により加算して出力するように構成され(【0006】)、
ロゴスキーコイル1は、保護筒3に積分用内部抵抗4を収容してコイル2を短絡するとともに、端部から信号を取り出すように構成され(【0008】)、積分用内部抵抗4を含めたロゴスキーコイルの低域カットオフ周波数は1kHz程度であり(【0010】)、
積分回路7は、高域カット周波数が1kHz程度と、ロゴスキーコイルの自己積分回路の低域カットオフ周波数とほぼ同一となるように調整され(【0011】)、
ロゴスキーコイル1を構築物に装着し、落雷が生じて衝撃電流が流れると、
衝撃電流の波頭部は、周波数が高いため、ロゴスキーコイル1自体のインダクタンス分とコイルの直流抵抗とにより形成される内部積分回路により周波数に依存せず、かつ波頭部の高周波衝撃電流値に比例した電圧として出力され(【0012】)、
波頭部の周波数が高いため、積分回路7は、検出抵抗6からの電圧に対してはカットオフ領域で機能し(【0013】)、
加算器9からは衝撃電流の波頭部の電流値に比例した電圧信号が出力され(【0014】)、
波尾部は、周波数が極めて低く、ロゴスキーコイル1自体のインダクタンス分Lとコイルの直流抵抗分Rとにより形成される内部積分回路の低域カットオフ領域での変化となり(【0015】)、
波尾部の周波数が低いため、積分回路7は、その積分機能を十分に発揮して周波数に関わりなく衝撃電流の波尾部の電流値に比例した電圧信号を出力し(【0016】)、
波頭部、及び波尾部、つまり0.1Hz乃至1MHzの周波数特性(ダイナミックレンジ7桁)を有する衝撃電流全体を正確に測定、検出することができ(【0017】)、
積分回路7の周波数特性は、相対出力が、0.1Hz付近から1kHz程度まで周波数に対して平坦な特性であり(図3(b)、【0021】)、
加算器9から、周波数が0.1Hz付近以上の領域で周波数に対して平坦な特性の信号が出力される(図3(c)、【0021】)
衝撃電流検出装置。」

2 引用文献2の記載
引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「第1図は本発明の実施例のサーボ回路のループ・フィルタの回路図であり、第2図はその周波数特性の折線近似図である。」(第2頁左下欄第12-14行)」


3 引用文献3の記載
引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「広帯域ロゴスキーコイルの等価回路は第5.3図のとおりであり、従来型ロゴスキーコイルの出力に積分回路と加算器を追加した構造となっている。
従来型ロゴスキーコイルの周波数特性は、カットオフ周波数以下の帯域で微分領域となっており、周波数が低くなるほど出力も小さくなっている(同図(a))。この微分領域に対して同図(b)に示す周波数特性を持つ積分回路で周波数積分を行うことにより、積分回路の出力の周波数特性は同図(c)のようになる。これにより、カットオフ周波数以下の微分領域が積分され、周波数に対して平坦な特性が得られる。この積分回路の出力をもとの従来型ロゴスキーコイルの出力に加算器をとおして加えることにより、同図(d)に示す周波数特性が得られ、低周波からの安定した周波数特性が得られるものである。」(第5頁左欄第16行-右欄第5行)


第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 引用発明の「ロゴスキーコイル1」は、「保護筒3に積分用内部抵抗4を収容してコイル2を短絡」しているので、「積分用内部抵抗4」は、「コイル2」とともに「内部積分回路」を構成している。
そして、「積分用内部抵抗4を含めたロゴスキーコイルの低域カットオフ周波数は1kHz程度であ」るので、「積分用内部抵抗4」は、「内部積分回路」の「低域カットオフ周波数」が、「1kHz程度」になるように選定されているといえる。
また、「積分用内部抵抗4」は、「コイル2を短絡」しているので、「積分用内部抵抗4」は、「コイル2」の両端に接続しているといえる。
そうすると、引用発明の「コイル2」、「ロゴスキーコイル1」、及び「積分用内部抵抗4」は、それぞれ、本願発明の「ロゴスキーコイル」、「内部積分回路」、及び「抵抗体」に相当し、また引用発明の「1kHz程度」の「低域カットオフ周波数」が、本願発明の「第一の周波数」に相当するといえる。したがって、引用発明の「ロゴスキーコイル1」において「保護筒3に積分用内部抵抗4を収容してコイル2を短絡」し、「端部から」「取り出」した「信号」は、本願発明の「ロゴスキーコイルとともに内部積分回路を構成して当該内部積分回路の低域カット周波数が第一の周波数になるように選定された抵抗体を前記ロゴスキーコイルの両端に接続して得た信号」に相当する。

2 引用発明は「波尾部の周波数が低いため、積分回路7は、その積分機能を十分に発揮して周波数に関わりなく衝撃電流の波尾部の電流値に比例した電圧信号を出力し」ているので、引用発明の「積分回路7」は、周波数が低いときに、「周波数に関わりなく」「電流値に比例した電圧信号を出力し」ており(即ち、周波数に対して平坦な特性の電圧信号を出力している)、「積分回路7の周波数特性は、相対出力が、0.1Hz付近から1kHz程度まで周波数に対して平坦な特性であ」ることは、「積分回路7」が、「0.1Hz付近から1kHz程度まで周波数に対して平坦な特性であ」る信号を出力していることであるといえる。
そうすると、引用発明の「0.1Hz付近」及び「積分回路7」は、それぞれ、本願発明の「第二の周波数」及び「外部積分回路」に相当し、引用発明の「前記ロゴスキーコイルからの出力を積分回路により積分した出力」と、本願発明の「低域カット周波数が第二の周波数であり且つ前記内部積分回路の前記第一の周波数から前記第二の周波数までの領域の垂下特性と相反する前記第二の周波数から前記第一の周波数までの領域の垂下特性を有して前記第二の周波数から前記第一の周波数までの領域において平坦化した信号を出力する外部積分回路で前記ロゴスキーコイルからの信号を積分した信号」とは、「第二の周波数から前記第一の周波数までの領域において平坦化した信号を出力する外部積分回路で前記ロゴスキーコイルからの信号を積分した信号」である点で共通する。

3 引用発明は、「加算器9から、周波数が0.1Hz付近以上の領域で周波数に対して平坦な特性の信号が出力される」のであり、上記1及び2を踏まえると、引用発明の「前記ロゴスキーコイルからの出力」であるところの、「保護筒3に積分用内部抵抗4を収容してコイル2を短絡」し、「端部から」「取り出」した「信号」と、「前記ロゴスキーコイルからの出力を積分回路により積分した出力とを加算手段により加算して出力する」ことと、本願発明において、2つの信号を「加算回路によって加算し、前記加算回路から前記第二の周波数以上の領域において平坦化した信号が出力される」こととは、「加算回路によって加算し、前記加算回路から前記第二の周波数以上の領域において平坦化した信号が出力される」ことである点で共通する。

すると本願発明と引用発明とは、次の(一致点)及び(相違点)を有する。
(一致点)
「ロゴスキーコイルとともに内部積分回路を構成して当該内部積分回路の低域カット周波数が第一の周波数になるように選定された抵抗体を前記ロゴスキーコイルの両端に接続して得た信号と、第二の周波数から前記第一の周波数までの領域において平坦化した信号を出力する外部積分回路で前記ロゴスキーコイルからの信号を積分した信号とを加算回路によって加算し、前記加算回路から前記第二の周波数以上の領域において平坦化した信号が出力される衝撃電流検出装置。」

(相違点1)
本願発明は、外部積分回路の「低域カット周波数」が「第二の周波数である」のに対し、引用発明では、「積分回路7」における低域の周波数特性がどのような特性であるか、明記されてない点。
(相違点2)
本願発明は、外部積分回路が、「内部積分回路の前記第一の周波数から前記第二の周波数までの領域の垂下特性と相反する前記第二の周波数から前記第一の周波数までの領域の垂下特性を有する」のに対し、引用発明では、「積分回路7の周波数特性は、相対出力が、0.1Hz付近から1kHz程度まで周波数に対して平坦な特性であ」るが、「積分回路7」が、「0.1Hz付近から1kHz程度まで」、「内部積分回路」の垂下特性と相反する垂下特性を有することの特定がない点。

第6 判断
事案に鑑み、上記相違点1、2についてまとめて検討する。
上記「第5 2」で検討したように、図3(b)に示された積分回路7の周波数特性は、積分回路7自体の入出力間の周波数特性ではなく、ロゴスキーコイルからの出力を積分した積分回路7の出力の周波数特性であるといえる。
そして、積分回路7は、ロゴスキーコイルからの出力を積分するものであるので、図3(b)の0.1Hz付近から1kHz程度までの周波数に対して平坦な特性の部分は、ロゴスキーコイル自体の周波数特性(段落【0021】)である図3(a)の0.1Hz付近から1kHz程度までの垂下特性を積分し、打ち消して出力したものである。
ここで、引用発明の積分回路7と同様の回路である、引用文献2のサーボ回路のループ・フィルタ(第1図)の周波数特性(第2図)、及び、引用文献3に広帯域ロゴスキーコイルの構成(第5.3図)として示された、低周波積分回路の周波数特性(同図中の(b)積分回路の周波数特性)の記載に鑑みると、
引用発明の積分回路7の入出力間の周波数特性は、低域カット周波数(引用文献2の第2図では、f2)よりも高い周波数では、周波数の上昇と共に、ゲインが低下する特性(つまり、垂下特性)となるはずであり、上述のように、積分回路7による図3(b)の0.1Hz付近から1kHz程度までの周波数に対して平坦な特性の部分は、ロゴスキーコイル自体の周波数特性である図3(a)の0.1Hz付近から1kHz程度までの垂下特性を積分し、打ち消して出力したものであるので、引用発明の積分回路7は、低域カット周波数を0.1Hz付近に設定し、0.1Hz付近より高い周波数に、垂下特性を持たせ、ロゴスキーコイル自体の周波数特性である図3(a)の0.1Hz付近から1kH程度までの垂下特性を打ち消して出力したものである。
したがって、引用発明の積分回路7は、積分用内部抵抗4を含めたロゴスキーコイルの0.1Hz付近から1kHz程度までの垂下特性と相反する0.1Hz付近から1kHz付近までの垂下特性を有しているといえ、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。
また、上記のように、引用発明の積分回路7は、低域カット周波数を0.1Hz付近に設定したものであり、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。

よって、上記相違点1,2は実質的な相違点ではないので、本願発明は、引用発明と同一であるといえる。また、本願発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 請求人の主張について
1 平成31年3月25日付け意見書における請求人の主な主張は、以下の通りである。
(1)引用文献1の図3(b)は、当該引用文献1中の図3(b)の説明の記載に従い、積分回路7(本願発明における「外部積分回路」に対応する)の周波数特性を示す線図であると理解され、「積分回路7の出力の周波数特性」と解釈することは妥当性に欠ける。(「【意見の内容】 (5)引用文献1に関する認定について」「iii)」「iv)」」)

(2)引用文献1には、積分回路の「垂下特性」に関する具体的な言及/説明は無いと共に、加算器からの出力が「平坦」であることに関する具体的な言及/説明も無く、つまり積分回路の「垂下特性」や加算器からの出力が「平坦」であることについて明細書における具体的な記載の担保がない。(「【意見の内容】 (5)引用文献1に関する認定について v)」)

2 上記主張について検討する。
(1)主張(1)について
図3(b)の0.1Hz付近から1kHz程度までの周波数に対して平坦な特性の部分が、積分回路7で、ロゴスキーコイル自体の周波数特性である図3(a)の0.1Hz付近から1kHz程度までの垂下特性を積分し、打ち消して出力したものであることは、上記「第6」で示したとおりなので、引用文献1の図3(b)は、「積分回路7の出力の周波数特性」であり、上記主張を採用することができない。

(2)主張(2)について
ア 積分回路の「垂下特性」について
引用発明の積分回路7が、積分用内部抵抗4を含めたロゴスキーコイルの0.1Hz付近から1kHz程度までの垂下特性と相反する0.1Hz付近から1kHz付近までの垂下特性を有していることは、上記「第6」で示したとおりである。

イ 加算器からの出力が「平坦」であることについて
引用文献1の記載を再掲載すると、
「【0012】
この実施例においてロゴスキーコイル1を弾性変形させて既設の構築物に装着する。この状態で構築物に落雷が生じて衝撃電流が流れると、衝撃電流の波頭部は、周波数が高いため、ロゴスキーコイル1自体のインダクタンス分とコイルの直流抵抗とにより形成される内部積分回路により周波数に依存せず、かつ波頭部の高周波衝撃電流値に比例した電圧として出力される。
【0013】
一方、上述したように波頭部の周波数が高いため、積分回路7は、検出抵抗6からの電圧に対してはカットオフ領域で機能することになる。
【0014】
したがって、加算器9からは衝撃電流の波頭部の電流値に比例した電圧信号が出力される。
【0015】
時間が経過して衝撃電流の波頭部が過ぎて衝撃電流の波尾部にさしかかると、波尾部は、波頭部に比較すると周波数が極めて低く、直流的であるため、ロゴスキーコイル1自体のインダクタンス分Lとコイルの直流抵抗分Rとにより形成される内部積分回路の低域カットオフ領域での変化となる。
【0016】
一方、波尾部の周波数が低いため、積分回路7は、その積分機能を十分に発揮して周波数に関わりなく衝撃電流の波尾部の電流値に比例した電圧信号を出力する。
【0017】
したがって、図3(c)に示したようにたとえ波尾部の継続時間が長い衝撃電流が発生しても、波頭部、及び波尾部、つまり0.1Hz乃至1MHzの周波数特性(ダイナミックレンジ7桁)を有する衝撃電流全体を正確に測定、検出することができる。」と記載されている。
ここで、積分回路7及び内部積分回路のカットオフ領域での出力は低いので、「加算器9」からの出力は、高い周波数では、ロゴスキーコイル1自体のインダクタンス分とコイルの直流抵抗とにより形成される内部積分回路により周波数に依存しない出力であり、低い周波数では、積分回路7が、積分機能を十分に発揮した、周波数に関わりなく電流値に比例した電圧信号となる。そして、このことは、図3(c)記載の、加算器からの出力が「平坦」であることを裏付けるものである。
よって、上記主張を採用することができない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-14 
結審通知日 2019-05-21 
審決日 2019-06-03 
出願番号 特願2015-212105(P2015-212105)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (G01R)
P 1 8・ 121- WZ (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 洋平荒井 誠川瀬 正巳  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 須原 宏光
櫻井 健太
発明の名称 衝撃電流検出装置  
代理人 村瀬 一美  
代理人 村瀬 一美  

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