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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07K
管理番号 1353726
審判番号 不服2017-9955  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-05 
確定日 2019-07-24 
事件の表示 特願2013-514284「システイン操作抗体及びコンジュゲート」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月15日国際公開、WO2011/156328、平成25年 9月 5日国内公表、特表2013-534520〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成23年6月7日(パリ条約による優先権主張 平成22年6月8日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成30年5月17日付けで当審より拒絶理由が通知され、これに対して同年9月21日に意見書および手続補正書が提出され、同年10月9日付けで当審より拒絶理由が通知され、これに対して平成31年2月14日に意見書が提出されでたものである。
この出願の請求項1?30に係る発明は、平成30年9月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?30に記載されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1に記載される以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
式Iを有する抗体-薬剤コンジュゲート(ADC)であって、
Ab-(L-D)p I
Lはリンカーであり、Dは薬剤部分であり、pは1、2、3、又は4であり、Abが操作された遊離システインアミノ酸、及びLC-K149C AKVQWCVDNAL(配列番号:133)である軽鎖における配列を含むシステイン操作抗体であって、該配列の中央におけるシステインが該操作された遊離システインアミノ酸であり、抗体は、該操作された遊離システインアミノ酸を介してリンカー部分(L)によってDに付着されており、
単離された場合にシステイン操作抗体は0.8以上のチオール反応性値を有する、抗体-薬剤コンジュゲート。」


第2 平成30年5月17日付けの当審拒絶理由
平成30年5月17日付け当審拒絶理由は、この出願の請求項1?30に係る発明は、その出願前に頒布された引用例1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。


第3 当審の判断
1.引用例1
この出願の優先日前に頒布された特表2008-516896号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.6?1.0の範囲のチオール反応性値を有する、一つ以上の遊離システインアミノ酸を含むシステイン操作抗体であって、該システイン操作抗体は、親抗体の一つ以上のアミノ酸残基をシステインによって置換する工程を包含するプロセスにより調製される、システイン操作抗体。
・・・・
【請求項4】
前記一つ以上の遊離システインアミノ酸残基が軽鎖に位置する、請求項1に記載のシステイン操作抗体。
【請求項5】
前記一つ以上の遊離システインアミノ酸残基が、L-10?L-20、L-38?L-48、L-105?L-115、L-139?L-149およびL-163?L-173から選択される範囲において前記軽鎖に位置する、請求項4に記載のシステイン操作抗体。
・・・・
【請求項9】
前記一つ以上の遊離システインアミノ酸残基が重鎖に位置する、請求項1に記載のシステイン操作抗体。
【請求項10】
前記一つ以上の遊離システインアミノ酸残基が、H-35?H-45、H-83?H-93、H-114?H-127、およびH-170?H-184から選択される範囲において重鎖に位置する、請求項9に記載のシステイン操作抗体。
・・・・
【請求項39】
前記抗体が、薬物部分に共有結合している、請求項1に記載のシステイン操作抗体。
・・・・
【請求項57】
システイン操作抗体(Ab)および薬物部分(D)を含む抗体-薬物結合体化合物であって、該システイン操作抗体は、リンカー部分(L)によって一つ以上の遊離システインアミノ酸を通してDへと結合しており;該化合物は、式I:
Ab-(L-D)p I
を有し、ここで、pは1、2、3、または4であり;該システイン操作抗体は、親抗体の一つ以上のアミノ酸残基を一つ以上の遊離システインアミノ酸によって置換する工程を包含するプロセスにより調製される、抗体-薬物結合体化合物。」

イ 「【0142】
hu4D5Fabv7中のあらゆるアミノ酸についての表面アクセシビリティー率は、結晶構造情報(Eigenbrotら(1993)J Mol Biol.229:969-995)を使用して算出された。hu4D5Fabv7の軽鎖および重鎖のアミノ酸についての表面アクセシビリティー率値を、表1に降順で示す。
【0143】

【0144】

【0145】
【表1ー3】(表は省略)
【0146】
【表1ー4】(表は省略)
以下の2つの基準を適用して、操作してCys残基で置換され得るhu4D5Fabv8の残基を同定した:
1.完全に埋め込まれる(すなわち、10%未満の表面アクセシビリティー率の)アミノ酸残基は除去される。表1は、10%よりも高くアクセス可能である(表面アクセシビリティー率の)、hu4D5Fabv8の134残基(軽鎖)および151残基(重鎖)が存在することを示す。上位10個の最もアクセス可能なSer残基、Ala残基およびVal残基を、新しく操作されたCysによって抗体に最小の構造制約しか導入しない、他のアミノ酸よりもCysへのそれらの構造的類似性の近さに起因して選択した。他のシステイン置換部位もまたスクリーニングされ得、そして結合体化に有用であり得る。
【0147】
2.残基は、Fabの機能的相互作用および構造的相互作用におけるそれらの役割に基づいて選別される。抗原相互作用に関与しておらず、かつ既存のジスルフィド結合から離れた残基をさらに選択した。新しく操作されたCys残基は、抗原結合とは別であるべきであり、かつ抗原結合を妨害しないべきであり、しかも、ジスルフィド結合形成に関与するシステインと誤った対を形成しないべきである。
【0148】
hu4D5Fabv8の以下の残基は、上記の基準を有しており、そしてCysで置換されるように選択された:L-V15、L-A43、L-V110、L-A144、L-S168、H-A88、H-A121、H-S122、H-A175およびH-S179(図1に示される)。
【0149】
チオール反応性は、反応性システインアミノ酸でのアミノ酸の置換が以下でなされ得る任意の抗体に一般化され得る:L-10?L-20;L-38?L-48;L-105?L-115;L-139?L-149;L-163?L-173から選択される軽鎖の範囲内;H-35?H-45;H-83?H-93;H-114?H-127;およびH-170?H-184から選択される重鎖の範囲内:H-268?H-291;H-319?H-344;H-370?H-380;およびH-395?H-405から選択される範囲内のFc領域。
【0150】
チオール反応性はまた、抗体の特定のドメイン(例えば、軽鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3))に一般化され得る。0.6以上のチオール反応性値をもたらすシステイン置換は、以下のそれぞれのインタクトな抗体の重鎖定常ドメインα、δ、ε、γおよびμにおいてなされ得る:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM(IgGサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2を含む)。
【0151】
選択された10個のCys変異体が抗原結合部位(例えば、この場合、HER2との界面)からはるかに離れていることは、結晶構造データから明白である。これらの変異体は、機能的な相互作用に対する間接効果について実験的に試験され得る。全てのCys Fab改変体のチオール反応性を測定し、そして実施例1および2にて記載したように算出し、そして表2に提示した。残基L-V15C、L-V110C、H-A88CおよびH-A121Cは、反応性チオール基および安定チオール基(図3Aおよび3B)を有する。変異体V15C、V110C、A144C、S168Cは、軽鎖Cys改変体である。変異体A88C、A121C、A175C、S179Cは、重鎖Cys改変体である。PHESELECTORアッセイにより算出したところ、高い表面アクセシビリティー率を有する部位が最も高いチオール反応性を有したのではないことは、驚くべきことであり、かつ予想外であった(表2)。換言すれば、表面アクセシビリティー率(表1、2)は、チオール反応性(表2)と相関しなかった。事実、20%?80%という中程度の表面アクセシビリティーを有する部位(図4A、表1)または(Ala残基またはVal残基のような)部分的に露出した部位で操作されたCys残基は、Ser残基に導入されたCysよりも良好なチオール反応性(すなわち>0.6)(図3B、表2)を示した。このように、結晶構造情報は単独では、これらの部位を選択するのに十分ではないので、チオール反応部位のスクリーニングにおけるPHESELECTORアッセイの使用を必要とした(図3Bおよび4A)。」

2.引用発明
上記1.アより、引用例1には、
「システイン操作抗体(Ab)および薬物部分(D)を含む抗体-薬物結合体化合物であって、
該化合物は、式I: Ab-(L-D)p
を有し、ここで、pは1、2、3、または4であり、
該システイン操作抗体は、リンカー部分(L)によって一つ以上の遊離システインアミノ酸を通してDへと結合しており、
該システイン操作抗体は、0.6?1.0の範囲のチオール反応性値を有する、一つ以上の遊離システインアミノ酸を含み、
該システイン操作抗体は、親抗体の一つ以上のアミノ酸残基を遊離システインによって置換する工程を包含するプロセスにより調製され、
前記一つ以上の遊離システインアミノ酸残基が軽鎖のL-10?L-20、L-38?L-48、L-105?L-115、L-139?L-149およびL-163?L-173から選択される範囲、または、重鎖のH-35?H-45、H-83?H-93、H-114?H-127、およびH-170?H-184から選択される範囲に位置する、抗体-薬物結合体化合物。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明を対比する。
引用発明の「式I: Ab-(L-D)p」を有する「システイン操作抗体(Ab)および薬物部分(D)を含む抗体-薬物結合体化合物」は、本願発明の「式I (Ab-(L-D)p)を有する抗体-薬剤コンジュゲート(ADC)」に相当すると認められる。また、引用発明の「0.6?1.0の範囲のチオール反応性値」は、本願発明の「0.8以上のチオール反応性値」と重複する。

したがって、両者は、
「式Iを有する抗体-薬剤コンジュゲート(ADC)であって、
式I: Ab-(L-D)p
Lはリンカーであり、Dは薬剤部分であり、pは1、2、3、又は4であり、Abが操作された遊離システインアミノ酸を含むシステイン操作抗体であって、抗体は、該操作された遊離システインアミノ酸を介してリンカー部分(L)によってDに付着されており、単離された場合にシステイン操作抗体は0.8以上のチオール反応性値を有する、抗体-薬剤コンジュゲート。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。

(相違点)
システイン操作抗体の操作された遊離システインアミノ酸について、本願発明では「LC-K149C AKVQWCVDNAL(配列番号:133)である軽鎖における配列を含むシステイン操作抗体であって、該配列の中央におけるシステインが該操作された遊離システインアミノ酸であり」と特定されており、つまり、システイン置換を導入するアミノ酸残基が「LC(軽鎖)-K149C」に特定されているのに対して、引用発明では「軽鎖のL-10?L-20、L-38?L-48、L-105?L-115、L-139?L-149およびL-163?L-173から選択される範囲、または、重鎖のH-35?H-45、H-83?H-93、H-114?H-127、およびH-170?H-184から選択される範囲」である点。

4.判断
上記相違点について検討する。
上記1.イのとおり、引用例1には、システイン置換を導入できるアミノ酸残基について2つの基準が示されている。
一つ目の基準は「1.完全に埋め込まれる(すなわち、10%未満の表面アクセシビリティー率の)アミノ酸残基は除去される。」ことである。引用例1には抗体の軽鎖および重鎖のあらゆるアミノ酸残基の表面アクセシビリティー率が示されており(表1)、抗体中に完全に埋没しているアミノ酸残基は、システイン置換できないが、表面アクセシビリティー率が10%以上のアミノ酸残基はシステイン置換の候補とできることが理解される。
二つ目の基準は「2.残基は、Fabの機能的相互作用および構造的相互作用におけるそれらの役割に基づいて選別される。抗原相互作用に関与しておらず、かつ既存のジスルフィド結合から離れた残基をさらに選択した。新しく操作されたCys残基は、抗原結合とは別であるべきであり、かつ抗原結合を妨害しないべきであり、しかも、ジスルフィド結合形成に関与するシステインと誤った対を形成しないべきである。」ことである。本願優先日当時の技術常識も考慮すれば、上記二つ目の基準は、システイン置換を導入するアミノ酸残基は、抗原に結合する可変ドメインではなく、むしろ定常ドメインに存在するものが適していることが示されていると認められる。
そして、本願発明に特定される「LC-K149C」に該当する表1ー2の「LYS A 149」(軽鎖「K149」)の表面アクセシビリティー率値は15.510%である。この値は、軽鎖の他のアミノ酸残基と比較してそれほど高い値ではないが、引用例1には、高い表面アクセシビリティー率を有する部位が必ずしも高いチオール反応性を有する訳ではなく、表面アクセシビリティー率とチオール反応性は相関しないことが教示されているから、表面アクセシビリティー率値がそれほど高値ではないことが「K149」をシステイン操作位置とすることを妨げるとはいえない。
また、軽鎖「K149」は軽鎖定常ドメインに存在するアミノ酸残基である。
そうすると、引用発明において、システイン置換を導入するアミノ酸残基を上記基準に基づいて特定することは当業者が容易になし得ることであり、引用発明におけるシステイン置換を導入するアミノ酸残基の選択肢の一つである「L-139?L-149」の範囲にある軽鎖「K149」(「LC-K149C」)を特定することに格別の困難性があるとは認められない。

本願発明の効果について検討すると、本願明細書、特に段落【0166】?【0168】には、表3、表4に列挙される多数のhu4D5抗体の変異体がHER2結合性と約0.8以上のチオール反応性値を示したことが記載されているものの、それぞれの抗体変異体の具体的な反応性値などは示されていない。本願明細書には、表3、4に示される位置でのシステイン置換変異体のいずれについても、HER2結合性と約0.8以上のチオール反応性値という一般化された機能しか示されていないから、本願明細書において「LC-K149C」変異体は他の位置に置換を有する変異体と同等のものとして記載されているに過ぎず、「LC-K149C」変異体が他のアミノ酸残基での変異体、例えば引用例1の記載から当業者が容易に想到できる各種変異体(抗体の定常ドメインの残基であってアクセシビリティー率が10%以上の各種残基にシステイン置換を有する変異体)と比較して、特に優れているとは認められない。
また、引用例1の表1には、hu4D5抗体のアクセス可能(表面アクセシビリティー率が10%以上)なシステイン置換候補アミノ酸残基として軽鎖の134個の残基および重鎖の151個の残基が示されているが、本願明細書の表1の記載(HER2結合性と約0.8以上のチオール反応性値を与えるhu4D5抗体変異体として49個の重鎖変異体(表3)および49個の軽鎖変異体(表4)が示されている。)から、引用例1に示される候補アミノ酸残基のうちのおよそ三分の一における変異体がHER2結合性と約0.8以上のチオール反応性値という機能を与えることが読み取れる。そして、引用発明のシステイン操作抗体は元々0.6?1.0のチオール反応性値を有するものであるのから、約0.8以上のチオール反応性値が格別のものであるとは認められない。
さらに、上記のとおり、軽鎖「K149C」は軽鎖定常ドメイン(CL)に存在するから、軽鎖「K149C」にシステイン置換を持つシステイン操作抗体がHER2結合性を示すことは引用例1の記載から当業者が予測し得ることである。
そして、本願明細書には「LC-K149C」システイン操作抗体と薬剤とのコンジュゲート(ADC)を実際に治療等に用いたことに関する具体的な記載もないことから、「LC-K149C」システイン操作抗体を含むADCが格別の効果を有するとは認められない。
したがって、本願発明において引用例1の記載から予期できない効果が奏されたとは認められない。
よって、本願発明は引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.審判請求人の主張について
平成30年9月21日の意見書において、審判請求人は以下の点を主張している。
「本願出願後の下記エビデンスは、K149C操作システインが、活性な抗体-薬剤コンジュゲートを作成するための高度に効果的な部位であることを確認しています。

国際公開第2016/040724号において、第169頁から始まる実施例Vは、薬剤部分の付着のために該K149C操作システインを使用する、B7-H4に特異的な抗体部分を有する二重エピトープ性ADCを議論しています。続く実施例は、該ADCのB7-H4を発現する腫瘍細胞に対する効力を示しています(段落020、050-053、0338及び0633-0642等を参照)。

国際公開第2016/044396号において、実施例3は、薬剤部分の付着のために該K149C操作システインを使用する、抗Her2ADCの有効性を議論しています(段落0019、0240、0243及び0389、実施例3(段落0397-0400)及び実施例4(段落0401-0405)等を参照)。

国際公開第2016/040723号もまた、薬剤部分の付着のために該K149C操作システインを使用する、抗Her2ADCの有効性を議論しています(段落0019、0257、0260及び0522、実施例3(段落0524-0526)及び実施例4(段落0527-0529)等を参照)。」

そこで検討すると、本願明細書には、以下の事項が記載されている。
「【0003】
抗体薬剤コンジュゲート(ADC)は、抗原を発現する腫瘍細胞に強力な細胞傷害剤を向け、それによりそれらの抗腫瘍活性を増強することによって、抗体及び細胞傷害剤双方の理想的な特性を組み合わせるため、魅力的な標的化学治療用分子である。任意の標的抗原に対するADC開発の成功は、抗体選択の最適化、リンカーの安定性、細胞傷害剤の効力及び抗体へのリンカー-薬剤コンジュゲーションの方法に依存する。」
「【0015】
・・・・抗体は、完全長免疫グロブリン分子又は完全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、つまり、対象の標的の抗原又はその一部に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を含み、かかる標的は、限定しないが、癌細胞又は自己免疫疾患に関連する自己免疫抗体を産生する細胞を含む。」
上記記載より、本願発明の「抗体-薬剤コンジュゲート(ADC)」とは、特定の抗原に特異的に結合する「抗体」と、細胞傷害剤のような「薬剤」とをコンジュゲートすることによって、抗原を発現する腫瘍細胞等に「薬剤」を特異的に送達し、「薬剤」の抗腫瘍活性等を増強しようとするものであることが理解される。
そして、本願明細書には、「LC-K149C」位置を含む数多くのアミノ酸残基位置においてシステインに置換したhu4D5のシステイン操作抗体(重鎖変異体、軽鎖変異体)がHER2結合性と約0.8以上のチオール反応性値を示したことは示されている(段落【0166】?【0168】)ものの、「LC-K149C」システイン操作抗体を含むADCが実際に細胞上の抗原に特異的に結合して、ADCが含む「薬剤」が抗原を発現する細胞に特異的に送達できたことや、腫瘍を治療できたことなどといった、ADCが具体的な有効性を有することに関しては記載されていない。
審判請求人が示した上記3つの文献は、いずれも本願の出願後の文献であり、上記のとおり、本願明細書には「LC-K149C」システイン操作抗体を使用したADCの有効性に関して記載されていないから、上記3つの文献に記載されたADCの有効性に関する事項は本願明細書に記載された事項の範囲内であるとはいえず、上記3つの文献に記載された事項を本願発明の効果として参酌することはできない。


第4 むすび
以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-22 
結審通知日 2019-02-26 
審決日 2019-03-11 
出願番号 特願2013-514284(P2013-514284)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉岡 沙織植原 克典  
特許庁審判長 大宅 郁治
特許庁審判官 中島 庸子
小暮 道明
発明の名称 システイン操作抗体及びコンジュゲート  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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