• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1353733
審判番号 不服2017-19547  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-28 
確定日 2019-07-23 
事件の表示 特願2014-560858「無線通信システムでサービスを制御するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月12日国際公開、WO2013/133663、平成27年 5月14日国内公表、特表2015-513864〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)3月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年3月8日 米国、 2012年3月19日 米国、 2012年3月22日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年12月15日付け 拒絶理由通知書
平成29年 3月27日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 4月19日付け 拒絶理由通知書(最後の拒絶理由)
平成29年 8月 8日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 8月21日付け 平成29年8月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定
平成29年12月28日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
平成30年 5月30日 上申書の提出

第2 平成29年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年12月28日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項5の記載は、次のとおり補正された。(以下、「本願補正発明」という。)(下線部は、補正箇所である。)
「移動通信システムで信号を送受信するMME(mobility management entity)における方法であって、
端末からCS(circuit switched)サービスを識別するための識別子を含む対象端末に対するCSサービスと関連したサービスリクエストを受信する段階と、
前記対象端末がSMS(short message service) only識別子に対応し、前記CSサービスを識別するための識別子に従って前記サービスリクエストが音声コール(voice call)と関連した場合、前記端末に前記サービスリクエストに対する拒絶メッセージを送信する段階と、
前記対象端末がSMS only識別子に対応し、前記CSサービスを識別するための識別子に従って前記サービスリクエストがSMSと関連した場合、前記MMEのCSサービスへの転換なしに前記サービスリクエストメッセージに基づいて前記対象端末にページング(paging)メッセージを送信する段階とを含む方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年3月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項5の記載は次のとおりである。
「移動通信システムにおいて、信号を送受信するMME(mobility management entity)における方法であって、
端末から対象端末に対するCS(circuit switched)サービスに関するサービスリクエストを受信する段階と、
前記対象端末がSMS(short message service) only識別子に対応し、前記サービスリクエストが音声コール(voice call)に関わる場合、前記端末で前記サービスリクエストに対する拒絶メッセージを送信する段階と、
前記対象端末がSMS only識別子に対応し、前記サービスリクエストがSMSに関わる場合、前記サービスリクエストメッセージに基づき、前記対象端末にページング(paging)メッセージを送信する段階を含む方法。」

2 補正の適否
請求項5についての上記補正は、本件補正前の請求項5に記載された「移動通信システムにおいて」を「移動通信システムで」に、本件補正前の請求項5に記載された「前記端末で前記サービスリクエストに対する拒絶メッセージを送信する」を「前記端末に前記サービスリクエストに対する拒絶メッセージを送信する」に、本件補正前の請求項5に記載された「前記サービスリクエストメッセージに基づき」を「前記サービスリクエストメッセージに基づいて」に、本件補正前の請求項5に記載された「段階を含む」を「段階とを含む」に補正することを含み、当該補正は、特許法第17条の2第5項第3号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
上述した点に加えて、請求項5についての上記補正は、本件補正前の請求項5に記載された発明を特定するために必要な事項である「CS(circuit switched)サービスに関するサービスリクエスト」の内容について、「CS(circuit switched)サービスを識別するための識別子を含む」との限定を付加することで、本件補正前の請求項5に記載された発明を特定するために必要な事項である「端末から対象端末に対するCS(circuit switched)サービスに関するサービスリクエストを受信する段階」を「端末からCS(circuit switched)サービスを識別するための識別子を含む対象端末に対するCSサービスと関連したサービスリクエストを受信する段階」と限定し、これに伴い、本件補正前の請求項5に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記サービスリクエストが音声コール(voice call)に関わる場合」「前記サービスリクエストがSMSに関わる場合」について、それぞれ「前記CSサービスを識別するための識別子に従って前記サービスリクエストが音声コール(voice call)と関連した場合」「前記CSサービスを識別するための識別子に従って前記サービスリクエストがSMSと関連した場合」と限定することを含む。さらに、本件補正前の請求項5に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記対象端末にページング(paging)メッセージを送信する段階」について、「前記MMEのCSサービスへの転換なしに」との限定を付加することも含む。そして、補正前の請求項5に記載された発明と補正後の請求項5に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、当該補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、同法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本願補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1 本件補正について」の「(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」に記載したとおりのものと認める。

(2)引用発明、公知技術、周知事項
ア 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用されたSamsung, Filtering CS paging without SMS indicator for SMS only UE([当審仮訳]:SMS only UEのためのSMSインジケーターのないCSページングのフィルタリング), 3GPP TSG-SA WG2 Meeting #75 S2-095346, 2009年8月25日アップロード, URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_sa/WG2_Arch/TSGS2_75_Kyoto/Docs/S2-095346.zip(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(ア)「Reason for change:
The CR that allows CSFB for SMS only was approved at SA2 #74 meeting. According to the approved CR, if the network supports SGs for SMS only, the nework shall perform the IMSI attach for SMS but not for CSFB and the MME shall indicate in the combined EPS/IMSI Attach/ combined TA/LA update Accept. Regardless of the existence of “SMS only” indicator in the combined EPS/IMSI Attach/ combined TA/LA update Request, the network performs the above operations, and the UE “may” reject the paging message towards the MME and the MME sends CS paging Reject toward MSC to stop CS paging procedure.

However, if UE includes an "SMS-only" indication in in the combined EPS/IMSI Attach/ combined TA/LA update Request, the UE-based-CS-paging-reject-procedure causes necessary signalling and power consumption at the UE side. Hence, the MME already knows that the UE does not want to use CSFB for voice service and the paging from the MSC does not include SMS indicator, the MME sends CS paging reject for the UE toward the MSC and the CSFB procedure stops.

Summary of change:
The MME rejects the paging message with “cn-domain” set to CS by sending CS Paging Reject toward MSC for the UE that does not want CSFB for CS voice service.

Consequences if not approved:
The UE, the eNB and the MME perform unnecessary service request to transmit the state of the UE and let the UE reject CS paging.」(1葉目21?40行)

([当審仮訳]:
変更の理由:
SMS onlyのためのCSFBを可能にするCRがSA2 #74会合で承認された。承認されたCRによれば、ネットワークがSMS onlyのためのSGsをサポートする場合、ネットワークはSMSに対してIMSIアタッチを実行するがCSFBに対しては実行せず、MMEは結合されたEPS/IMSIアタッチ/結合されたTA/LA更新受諾において示す。結合されたEPS/IMSIアタッチ/結合されたTA/LA更新リクエストにおける“SMS only”インジケーターの存在にも関わらず、ネットワークは上述の動作を実行し、UEはMMEに対するページングメッセージを拒絶する“かもしれない”、そしてMMEはCSページング拒絶をMSCに対して送信しCSページング手順を停止する。
しかしながら、UEが結合されたEPS/IMSIアタッチ/結合されたTA/LA更新リクエストにおいて“SMS only”インジケーターを含める場合、UEによるCSページング拒絶手順はUE側において必要なシグナリングと電力消費を引き起こす。したがって、MMEはUEが音声サービスのためにCSFBを使用したくないことを既に知っており、MSCからのページングがSMSインジケーターを含んでいないと、MMEはUEのために、CSページング拒絶をMSCに対して送信し、CSFB手順は停止する。

変更の要約:
MMEは、CS音声サービスのためのCSFBを望まないUEのために、MSCに対してCSページング拒絶を送信することによって、CSに設定された"cn-domain"を有するページングメッセージを拒絶する。

承認されなかった場合の結果:
UEとeNBとMMEは、UEの状態を送信するために不必要なサービスリクエストを実行し、UEがCSページングを拒絶するようにする。)

(イ)「7.3 Mobile Terminating call in Active Mode - PS HO supported


1a. The MSC receives an incoming voice call and responds by sending a CS Page (IMSI or TMSI, optional Caller Line Identification and Connection Management information, CS call indicator) to the MME over a SGs interface. In active mode the MME has an established S1 connection and the MME reuses the existing connection to relay the CS Page to the UE. The MSC only sends a CS Page for an UE that provides location update information using the SGs interface.

If the UE indicated ‘SMS-only’ during the Mobility Management procedures and the paging from the MSC does not include the SMS indicator, the MME sends the CS Paging Reject towards the MSC to stop the CS Paging procedure and then the CSFB procedure stops

(中略)
1c. Upon receiving the Extended Service request (CSFB, Reject), the MME sends CS Paging Reject towards MSC to stop CS Paging procedure and this CSFB procedure stops.
(後略)」(4葉目13行?5葉目13行)

([当審仮訳]:
7.3 アクティブモードにおける移動体着信呼‐PS HOがサポートされる

(図7.3-1は省略)
図7.3-1: E-UTRANにおけるCSページ、GERAN/UTRANにおける呼-準備フェーズ

1a. MSCは着信音声呼を受信し、CSページ(IMSI又はTMSI、随意の発信者回線識別およびコネクション管理情報、CS呼インジケーター)をSGsインタフェースを介してMMEへ送信することによって応答する。アクティブモードにおいてMMEは確立されたS1コネクションを有し、MMEはCSページをUEへ中継するために既存のコネクションを再利用する。MSCは、SGsインタフェースを用いて位置更新情報を提供するUEにだけCSページを送信する。
UEがモビリティ管理手順の間に‘SMS only’を示し、MSCからのページングがSMSインジケーターを含まない場合、MMEはCSページング手順を停止するためにMSCに対してCSページング拒絶を送信しCSFB手順は停止する
(中略)
1c. 拡張サービスリクエスト(CSFB、拒絶)を受信すると、MMEはCSページング手続きを停止するためにCSページング拒絶をMSCに対して送信しこのCSFB手順は停止する。
(後略))

上記(ア)?(イ)の各記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、
a 上記(イ)の図7.3-1に記載のシステムが移動通信システムであることは明らかであり、図7.3-1の1a及び1cの記載によれば、MMEは信号を送受信していることから、引用例1には「移動通信システムで信号を送受信するMMEにおける方法」が記載されている。

b 上記(イ)の1a.及び図7.3-1の1aの記載によれば、MMEは、MSCからSGsインタフェースを介してCS呼インジケーターを含むCSページングを受信する。また、「SMS only UEのためのSMSインジケーターのないCSページングのフィルタリング」とのタイトル及び上記(イ)の1a.の「MSCからのページングがSMSインジケーターを含まない場合」との記載から、MMEは、MSCからSMSインジケーターを含むページングも受信することは明らかである。そして、上記(イ)の図7.3-1の1aより、MMEがCSページングを受信すると、MMEはUEにCSページングを送信するから、MMEが受信するページングは、UEに対するページングである。
よって、引用例1には、MMEは「MSCからSGsインタフェースを介してCS呼インジケーター又はSMSインジケーターを含むUEに対するページングを受信する」ことが記載されている。

c 上記(イ)の1a.の記載によれば、UEがモビリティ管理手順の間に‘SMS only’を示し、MSCからのページングがSMSインジケーターを含まない場合、MMEはMSCに対してCSページング拒絶を送信する。ここで、上記(ア)より、UEはEPS/IMSIアタッチやTA/LA更新リクエストにおいて“SMS only”インジケーターを含める。
よって、上記(イ)の1a.に記載された、UEがモビリティ管理手順の間に‘SMS only’を示すとは、UEがモビリティ管理手順の間にSMS onlyインジケーターを含めてSMS onlyであることを示すといえるから、「UEがSMS onlyインジケーターに対応」するといえる。
また、上記(イ)の1a.に記載された、MSCからのページングがSMSインジケーターを含まない場合とは、上記(イ)の1a.でCS呼インジケーターを含むページングが例示されていることから、「MSCからのページングにSMSインジケーターではなくCS呼インジケーターが含まれている場合」を含むといえる。
そして、上記(イ)の1a.に記載された、MMEがMSCに対してCSページング拒絶を送信することは、図7.3-1の1a及び1cより、MMEがMSCに対してCSページングに対するCSページング拒絶を送信することであるから、MMEが「MSCに対してページングに対するページング拒絶を送信する」ことといえる。
よって、引用例1には、MMEは「UEがSMS onlyインジケーターに対応し、MSCからのページングにSMSインジケーターではなくCS呼インジケーターが含まれている場合、MSCに対してページングに対するページング拒絶を送信する」ことが記載されている。

以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「移動通信システムで信号を送受信するMMEにおける方法であって、
MSCからSGsインタフェースを介してCS呼インジケーター又はSMSインジケーターを含むUEに対するページングを受信する段階と、
前記UEがSMS onlyインジケーターに対応し、前記MSCからの前記ページングに前記SMSインジケーターではなく前記CS呼インジケーターが含まれている場合、前記MSCに対して前記ページングに対するページング拒絶を送信する段階を含む方法。」

イ 公知技術
同じく原査定の拒絶の理由で引用されたAlcatel-Lucent, Originating & Terminating network Information Flows([当審仮訳]:発信及び着信ネットワーク情報フロー), 3GPP TSG-CT WG4 Meeting #54bis C4-112274, 2011年10月14日アップロード, URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ct/WG4_protocollars_ex-CN4/TSGCT4_54bis_Hyderabad/Docs/C4-112274.zip(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(ア)「8.2.4.2 Terminating Network Information flow
The information flow for rejection of an anonymous MT call is shown in figure 8.2.4.2.1. (中略)


1. Upon receipt of an incoming call, the GMSC sends a MAP Send Routing Information request to the HLR.(中略)

2. Upon receipt of the MAP Send Routing Information request, an HLR that supports the ACR supplementary service shall return an SRI negative response with a cause indicating Anonymous Call Rejection if the mobile subscriber has activated ACR for the corresponding basic service group and the calling line identity is marked as "presentation restricted" according to the CLIR supplementary service.

The HLR shall determine whether the calling line identity is marked as "presentation restricted" using the 'Address presentation restricted indicator' of the Calling Party Number IE if received in the Additional Signal Info IE.

3. Upon receipt of a SRI negative response with the cause indicating Anonymous Call Rejection, the GMSC shall signal to originating network that in-band information is available due to anonymous call rejection and play a specific in-band announcement towards the calling user to signal that the call has been rejected due to the application of the ACR supplementary service.
(後略)」(3葉目13行?4葉目11行)

([当審仮訳]:
8.2.4.2 着信ネットワーク情報フロー
匿名のMT呼の拒絶のための情報フローが図8.2.4.2.1に示される。(中略)
(図8.2.4.2.1は省略)
図8.2.4.2.1:匿名のMT呼を拒絶するための情報フロー

1. 着信呼を受信すると、GMSCはMAP送信ルーティング情報リクエストをHLRに送信する。(中略)
2. MAP送信ルーティング情報リクエストを受信すると、モバイル加入者が、対応する基本サービスグループのためのACRを起動しており、かつ、発呼者回線アイデンティティがCLIR補助サービスに従って“提示制限”としてマークされている場合、ACR補足サービスをサポートするHLRは、匿名(Anonymous)呼(Call)拒絶(Rejection)を示す理由と共にSRI否定応答を返す。
HLRは、追加シグナル情報IEにおいて受信された場合、発呼者番号IEの中の“アドレス提示制限インジケーター”を使用して、発呼者回線アイデンティティが“提示制限”としてマークされているかどうかを決定する。
3. 匿名(Anonymous)呼(Call)拒絶(Rejection)を示す理由と共にSRI否定応答を受信すると、GMSCは、発信側のネットワークに、匿名呼拒絶により帯域内情報が利用可能であることを信号で通知し、ACR補助サービスの適用によって呼が拒絶されたことを、発呼ユーザに対して信号で通知するための特定の帯域内アナウンスメントを行う。
(後略))

上記(ア)の記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、発呼ユーザからの呼がネットワークから拒絶された場合、ネットワークから発呼ユーザへ呼が拒絶されたことを信号で通知する。ここで、発呼ユーザへ呼が拒絶されたことを信号で通知することは、発呼ユーザの端末に対して通知することであることは明らかである。

したがって、引用例2には、次の公知技術が記載されていると認める。
「発呼ユーザからの呼がネットワークから拒絶された場合、ネットワークから発呼ユーザの端末へ呼が拒絶されたことを信号で通知する。」

ウ 周知事項1
本願優先日前に公知となった3GPP TS 23.018 V11.1.0, 2011年12月19日アップロード, URL:http://www.3gpp.org/FTP/Specs/archive/23_series/23.018/23018-b10.zip(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(ア)「4.1 Architecture for an MO call
A basic mobile originated call involves signalling between the MS and its VMSC via the BSS, between the VMSC and the VLR and between the VMSC and the destination exchange, as indicated in figure 1.
(中略)


In figure 1 and throughout the present document, the term ISUP is used to denote the telephony signalling system used between exchanges. In a given network, any telephony signalling system may be used.

When the user of an MS wishes to originate a call, the MS establishes communication with the network using radio interface signalling, and sends a message containing the address of the called party. VMSCA requests information to handle the outgoing call (SIFOC) from VLRA, over an internal interface of the MSC/VLR. If VLRA determines that the outgoing call is allowed, it responds with a Complete Call. VMSCA:
- establishes a traffic channel to the MS; and
- constructs an ISUP IAM using the called party address and sends it to the destination exchange.」(11ページ32行?12ページ8行)

([当審仮訳]:
4.1 MO呼のためのアーキテクチャ
基本的な移動体発信呼は、図1に示すように、BSSを経由したMSとVMSCとの間、VMSCとVLRとの間、およびVMSCと宛先交換機との間のシグナリング含む。
(中略)
(図1は省略)
図1:基本的な移動体発信呼のためのアーキテクチャ

図1及び本ドキュメント全体を通じて、ISUPという用語は交換機間で使用される電話シグナリングシステムを示すために使用される。所与のネットワークにおいて、任意の電話シグナリングシステムが使用され得る。
MSのユーザが呼を発信することを望む場合、MSは無線インタフェースシグナリングを用いてネットワークと通信を確立し、被呼者のアドレスを含むメッセージを送信する。VMSCAはMSC/VLRの内部インタフェースを介してVLRAから発信呼(SIFOC)を処理するための情報を要求する。発信呼が許可されるとVLRAが判断した場合、VLRAが完了呼で応答する。VMSCAは:
‐MSとトラフィックチャネルを確立し;そして
‐被呼者アドレスを使用してISUP IAMを構築し、宛先交換局へ送信する。)

(イ)「4.2 Architecture for an MT call
A basic mobile terminated call involves signalling as indicated in figure 2. Communication between VMSCB and the MS is via the BSS, as for the mobile originated case.
(中略)


When GMSCB receives an ISUP IAM, it requests routeing information from HLRB using the MAP protocol. (中略)GMSCB uses the roaming number to construct an ISUP IAM, which it sends to VMSCB. When VMSCB receives the IAM, it requests information to handle the incoming call (SIFIC) from VLRB, over an internal interface of the MSC/VLR. If VLRB determines that the incoming call is allowed, it requests VMSCB to page the MS. VMSCB pages the MS using radio interface signalling. When the MS responds, VMSCB informs VLRB in the Page ack message. VLRB instructs VMSCB to connect the call in the Complete call, and VMSCB establishes a traffic channel to the MS.」(12ページ9行?13ページ8行)

([当審仮訳]:
4.2 MT呼のためのアーキテクチャ
基本的な移動体着信呼は図2に示されるシグナリングを含む。移動体発信の場合のように、VMSCBとMSとの間の通信はBSSを介して行われる。
(中略)
(図2は省略)
図2:基本的な移動体着信呼のためのアーキテクチャ

GMSCBはISUP IAMを受信すると、MAPプロトコルを用いてHLRBからルーティング情報を要求する。(中略)GMSCBはローミング番号を使用してISUP IAMを構築し、VMSCBへ送信する。VMSCBはIAMを受信すると、MSC/VLRの内部インタフェースを介して、VLRBから着信呼(SIFIC)を処理するための情報を要求する。VLRBは、着信呼が許可されると判断すると、VMSCBにMSをページするよう要求する。VMSCBは無線インタフェースシグナリングを用いてMSをページする。MSが応答すると、VMSCBはVLRBにページackメッセージで知らせる。VLRBは完了呼において呼を接続するようにVMSCBに命令し、VMSCBはMSに対するトラフィックチャネルを確立する。)

(ウ)「5.1 Information flow for an MO call
An example information flow for an MO call is shown in figure 3; many variations are possible. (中略)


When the user wishes to originate a call, MSA establishes a signalling connection with BSSA, and sends a Connection Management (CM) service request to BSSA, which relays it to VMSCA. VMSCA sends a Process Access Request to VLRA.
(中略)

If VLRA determines that MSA is allowed service, it sends a Process Access Request ack to VMSCA. (中略) VMSCA sends a CM Service Accept message towards BSSA.

(中略)
When the traffic channel assignment process is complete (indicated by the Allocation complete message from BSSA to VMSCA), VMSCA constructs an ISUP IAM using the B subscriber address, and sends it to the destination exchange.」(14ページ12行?16ページ30行)

([当審仮訳]:
5.1 MO呼のための情報フロー

MO呼の例示的な情報フローが図3に示されており、多くの変形例が可能である。(中略)
(図3は省略)
図3:基本的な移動体発信呼のための情報フロー

ユーザが呼を発信したい場合、MSAはBSSAとシグナリングコネクションを確立し、コネクション管理(CM)サービスリクエストをBSSAに送信し、VMSCAへ転送される。VMSCAはプロセスアクセスリクエストをVLRAへ送信する。(中略)

VLRAがMSAはサービスを許可されていると判断する場合、プロセスアクセスリクエストackをVMSCAへ送信する。(中略)VMSCAはCMサービス受諾メッセージをBSSAに送信する。(中略)

トラフィックチャネル割り当てプロセスが完了すると(BSSAからVMSCAに対する割り当て完了メッセージによって示される)、VMSCAはB加入者アドレスを用いてISUP IAMを構築し、宛先交換局へ送信する。(後略))

上記(ア)?(ウ)の各記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、
上記(ア)?(イ)及び図1?図2の記載によれば、呼の発信を望むユーザのMS(発信側端末)は、被呼者のアドレスを含むメッセージをVMSCAへ送信し、VMSCAはIAMを構築してGMSCBへ送信し、IAMを受信したGMSCBはIAMを構築してVMSCBへ送信し、IAMを受信したVMSCBはMS(着信側端末)をページする。ここで、VMSCBがMS(着信側端末)をページする際にページングを送信することは明らかである。
また、上記(ウ)及び図3の記載によれば、呼の発信を望むユーザのMSA(発信側端末)はCMサービスリクエストをVMSCAへ送信し、CMサービスリクエストを受信したVMSCAはIAMを構築して宛先交換局へ送信する。
よって、上記(ア)?(イ)及び図1?図2における、呼の発信を望むユーザのMS(発信側端末)が送信するメッセージとして、サービスリクエストが採用できることは明らかである。
したがって、MS(着信側端末)の属するVMSCBからMS(着信側端末)へ送信されるページングは、MS(発信側端末)がサービスリクエストを送信することによって送信されるといえる。

以上を総合すると、3GPPの標準規格書である周知例1には、次の技術(以下、「周知技術1」という。)が記載されていると認められ、当該技術は標準規格であるから、技術常識ともいえる周知技術である。
「着信側端末の属するMSCから着信側端末へ送信されるページングは、発信側端末がサービスリクエストを送信することによって送信される。」

エ 周知事項2
本願優先日前に公知となった3GPP TS 24.008 V11.1.2, 2012年1月5日アップロード, URL:http://www.3gpp.org/FTP/Specs/archive/24_series/24.008/24008-b12.zip (以下、「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(ア)「- RR connection: A RR connection is a dedicated physical circuit switched domain connection used by the two RR or RRC peer entities to support the upper layers' exchange of information flows. 」(39ページ39?40行)

([当審仮訳]:
- RRコネクション:RRコネクションは、上位レイヤでの情報フローの交換をサポートするための2つのRR又はRRCピアエンティティによって用いられる、個別の物理回線交換ドメインのコネクションである。)

(イ)「4.5.1.1 MM connection establishment initiated by the mobile station
(中略)
In order to establish an MM connection, the mobile station proceeds as follows:

a) If no RR connection exists, the MM sublayer requests the RR sublayer to establish an RR connection and enters MM sublayer state WAIT FOR RR CONNECTION (MM CONNECTION). This request contains an establishment cause and a CM SERVICE REQUEST message. (中略)

b) If an RR connection is available, the MM sublayer of the mobile station sends a CM SERVICE REQUEST message to the network, (中略)

In case a, b and d, the CM SERVICE REQUEST message contains the:
(中略)
- CM service type identifying the requested type of transaction (e.g. mobile originating call establishment, emergency call establishment, short message service, supplementary service activation, location services).」(104ページ24行?105ページ45行)

([当審仮訳]:
4.5.1.1 移動局によって開始されたMMコネクション確立
(中略)
MMコネクションを確立するために、移動局は以下を実行する:

a) RRコネクションが存在しない場合、MMサブレイヤーはRRサブレイヤーにRRコネクションを確立するよう要求し、MMサブレイヤーの状態をRRコネクションの待機(MMコネクション)とする。この要求は、確立の理由とCMサービスリクエストメッセージを含む。
(中略)
b) RRコネクションが利用可能である場合、移動局のMMサブレイヤはCMサービスリクエストメッセージをネットワークに送信する、(中略)
a、b及びdの場合、CMサービスリクエストメッセージは以下を含む:
(中略)
- 要求されたトランザクションのタイプを識別するCMサービスタイプ(例えば、移動体発信呼確立、緊急呼確立、ショートメッセージサービス、補助サービスの起動、ロケーションサービス)。)

(ウ)「If the service request cannot be accepted, the network returns a CM SERVICE REJECT message to the mobile station.

The reject cause information element (see subclause 10.5.3.6 and annex G) indicates the reason for rejection. (後略)」(106ページ28?29行)

([当審仮訳]:
サービスリクエストを受け入れることができない場合、ネットワークはCMサービス拒絶メッセージを移動局に返す。
拒絶の理由の情報要素(第10.5.3.6節及び付録Gを参照)は拒絶の理由を示す。)

上記(ア)?(ウ)の各記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、
上記(イ)の記載によれば、移動局がネットワークに送信するCMサービスリクエストメッセージは、トランザクションのタイプ(移動体発信呼確立やショートメッセージサービス)を識別するためのCMサービスタイプを含む。ここで、移動局は端末といえる。
ここで、上記(ア)の記載によればRRコネクションは回線交換(CS)ドメインのコネクションであるところ、上記(イ)の記載によれば、RRコネクションを利用して、移動局はCMサービスリクエストメッセージを送信する。よって、CMサービスリクエストメッセージに含まれる、CMサービスタイプによって識別されるトランザクションのタイプ(移動体発信呼確立やショートメッセージサービス)はいずれも、CSドメインのコネクションであるRRコネクションを利用してサービスされるものであるから、CMサービスタイプはCSサービス(移動体発信呼確立やショートメッセージサービス)を識別するための識別子といえる。

以上を総合すると、3GPPの標準規格書である周知例2には、次の技術(以下、「周知技術2」という。)が記載されていると認められ、当該技術は標準規格であるから、技術常識ともいえる周知技術である。
「端末が送信するサービスリクエストは、CSサービス(移動体発信呼確立やショートメッセージサービス)を識別するための識別子を含む。」


オ 周知事項3
本願優先日前に公知となった3GPP TS 29.118 V11.1.0, 2011年12月20日アップロード, URL:http://www.3gpp.org/FTP/Specs/archive/29_series/29.118/29118-b10.zip (以下、「周知例3」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(ア)「4.1 General
(中略)
NOTE: Within this specification, the term VLR refers to MSC/VLR or MSC Server/VLR.
The SGs interface connects the databases in the VLR and the MME. (後略)」(11ページ5?10行)

([当審仮訳]:
注: この文書において、VLRという用語は、MSC/VLR又はMSCサーバ/VLRを表す。
SGsインタフェースはVLRにおけるデータベースとMMEとを接続する。)

(イ)「5.1.2 Procedures in the VLR
5.1.2.1 General
The VLR shall handle the timers, queuing and retransmission for sending the SGsAP-PAGING-REQUEST message on the SGs interface in the same way that it handles the sending of a PAGING message on the A or Iu interface.
(中略)
5.1.3 Procedures in the MME
5.1.3.1 General
(中略)
When a MME receives a SGsAP-PAGING-REQUEST message from a VLR, the MME shall first check if the UE is known by the MME.
(中略)
If the Service indicator information element in the SGsAP-PAGING-REQUEST message indicates "CS call indicator", the MME shall handle the paging request as follows:
a) If the UE is known:
- if the UE is considered to be IMSI attached for EPS services and "SMS only", the MME shall return an SGsAP-PAGING-REJECT message to the VLR indicating in the SGs cause information element "Mobile terminating CS fallback call rejected by the user";
(中略)
If the Service indicator information element in the SGsAP-PAGING-REQUEST message indicates "SMS indicator", the MME shall handle the paging request as follows:
a) If the UE is known:
- if the UE is considered to be IMSI attached for EPS and non-EPS services or IMSI attached for EPS services and "SMS only", the MME shall page the UE based on the location information stored in the MME. 」(13ページ14行?17ページ7行)

([当審仮訳]:
5.1.2 VLRにおける手順
5.1.2.1 一般
VLRは、A又はIuインタフェースを介してページングメッセージを送信する処理と同じように、SGsインタフェースを介してSGsAP-PAGING-REQUESTメッセージを送信するために、タイマー、キューイング及び再送を処理する。
5.1.3 MMEにおける手順
5.1.3.1 一般
(中略)
MMEがVLRからSGsAP-PAGING-REQUESTメッセージを受信すると、MMEは初めにUEがMMEによって知られているかをチェックする。
(中略)
SGsAP-PAGING-REQUEST メッセージにおけるサービスインジケーター情報要素が“CS呼インジケーター”を示す場合、MMEは次のようにページングリクエストを処理する:
a) UEが既知である場合:
- UEがEPSサービス及び“SMS only”のためにIMSIアタッチされていると見なされた場合、MMEはSGs理由情報要素において“ユーザによって拒絶された移動体着信CSフォールバック呼”を示すSGsAP-PAGING-REJECT メッセージをVLRへ返す:
(中略)
SGsAP-PAGING-REQUESTメッセージにおけるサービスインジケーター情報要素が“SMSインジケーター”を示す場合、MMEは次のようにページングリクエストを扱う:
a) UEが既知である場合:
- UEがEPS及び非EPSサービスのためにIMSIアタッチされている、又は、EPSサービス及び“SMS only”のためにIMSIアタッチされていると見なされた場合、MMEはMMEに格納された位置情報に基づいてUEをページする。)

上記(ア)?(イ)の各記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、
上記(イ)の記載によれば、MMEがSGsインタフェースを介してVLRから受信したページングリクエスト(SGsAP-PAGING-REQUEST)メッセージには、CS呼サービスかSMSサービスかを識別するためのサービスインジケーターが含まれる。そして、サービスインジケーターがSMSインジケーターを示し、UEが“SMS only”のためにIMSIアタッチされていると、MMEはUEをページする。よって、周知例3には、UEが“SMS only”のためにIMSIアタッチされており、「MMEがSGsインタフェースを介して受信したページングリクエストメッセージに含まれる、CS呼サービスかSMSサービスかを識別するためのサービスインジケーターがSMSインジケーターである場合」、MMEはUEをページすることが記載されている。
ここで、上記(イ)に記載された、UEが“SMS only”のためにIMSIアタッチされているとは、UEが“SMS only”に対応するものといえ、“SMS only”はUEの利用するサービスを識別するための識別子といえるから、「UEがSMS only識別子に対応」するといえる。
そして、MMEは、SGsインタフェースを介して受信したページングリクエスト(SGsAP-PAGING-REQUEST)メッセージに基づいてUEをページングするといえるから、「MMEは、SGsインタフェースを介して受信したページングリクエストメッセージに基づいて、UEをページングする」といえる。

以上を総合すると、3GPPの標準規格書である周知例3には、次の技術(以下、「周知技術3」という。)が記載されていると認められ、当該技術は標準規格であるから、技術常識ともいえる周知技術である。
「UEがSMS only識別子に対応し、MMEがSGsインタフェースを介して受信したページングリクエストメッセージに含まれる、CS呼サービスかSMSサービスかを識別するためのサービスインジケーターがSMSインジケーターである場合、MMEは、SGsインタフェースを介して受信したページングリクエストメッセージに基づいて、UEをページングする。」

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「移動通信システムで信号を送受信するMMEにおける方法」は、「移動通信システムで信号を送受信するMME(mobility management entity)における方法」といえる。

(イ)本願補正発明では、サービスリクエストに含まれる「CS(circuit switch)サービスを識別するための識別子」に従って、サービスリクエストが音声コール(voice call)と関連するかSMSと関連するかを識別しており、「CS(circuit switch)サービスを識別するための」との事項から、本願補正発明の「CS(circuit switch)サービスを識別するための識別子」には、CS音声コール(voice call)サービスなのかSMSサービスなのかを識別するための識別子が含まれるといえる。
そして、引用発明のページングに含まれる「CS呼インジケーター」と「SMSインジケーター」のいずれも、CS呼サービスすなわちCS音声コール(voice call)サービスなのか、SMSサービスなのかを識別するための識別子といえるから、本願補正発明の「CS(circuit switch)サービスを識別するための識別子」に含まれる。
また、本願補正発明の「CSサービスと関連したサービスリクエスト」は、音声コール(voice call)と関連し、SMSとも関連するサービスリクエストであるから、CS音声コール(voice call)サービスと関連しSMSサービスとも関連するサービスリクエストである。
引用発明の「ページング」も、CS呼サービスすなわちCS音声コール(voice call)サービスと関連し、SMSサービスとも関連するページングであるから、「CSサービスと関連したページング」ということができる。
そして、引用発明の「ページング」はSGsインタフェースを介してMMEが受信する信号であり、本願補正発明の「サービスリクエスト」も端末からのサービスリクエストとしてMMEが受信する信号であるから、引用発明の「ページング」と本願補正発明の「サービスリクエスト」は、MMEが受信する「信号」である点で共通する。
よって、引用発明の「ページング」と本願補正発明の「CSサービスと関連したサービスリクエスト」は、「CSサービスと関連した信号」である点で共通する。
また、引用発明の「UE」は、ページングを送る対象の端末であるから、本願補正発明の「対象端末」に相当する。
よって、引用発明の「MSCからSGsインタフェースを介してCS呼インジケーター又はSMSインジケーターを含むUEに対するページングを受信する段階」と、本願補正発明の「端末からCS(circuit switched)サービスを識別するための識別子を含む対象端末に対するCSサービスと関連したサービスリクエストを受信する段階」とは、「CS(circuit switched)サービスを識別するための識別子を含む対象端末に対するCSサービスと関連した信号を受信する段階」といえる点で共通する。

(ウ)引用発明の「前記UEがSMS onlyインジケーターに対応し」は、本件補正発明の「前記対象端末がSMS(short message service) only識別子に対応し」に相当する。
上記(イ)より、引用発明の「CS呼インジケーター」は、本件補正発明の「CS(circuit switch)サービスを識別するための識別子」に含まれ、引用発明の「ページング」と本件補正発明の「サービスリクエスト」とはいずれも「信号」である点で共通する。
そして、引用発明の「前記MSCからの前記ページングに前記SMSインジケーターではなく前記CS呼インジケーターが含まれている場合」とは、ページングに含まれるCS呼インジケーターに従った判断結果といえ、「CS(circuit switch)サービスを識別するための識別子に従っ」た判断結果といえるし、引用発明の、ページングにCS呼インジケーターが含まれている場合は、ページングが音声コール(voice call)と関連した場合であることは明らかである。
よって、引用発明の「前記MSCからの前記ページングに前記SMSインジケーターではなく前記CS呼インジケーターが含まれている場合」と、本願補正発明の「前記CSサービスを識別するための識別子に従って前記サービスリクエストが音声コール(voice call)と関連した場合」とは、「前記CSサービスを識別するための識別子に従って前記信号が音声コール(voice call)と関連した場合」といえる点で共通する。
そして、引用発明の「ページング拒絶」を「拒絶メッセージ」と称することは任意である。
したがって、引用発明の「前記UEがSMS onlyインジケーターに対応し、前記MSCからの前記ページングに前記SMSインジケーターではなく前記CS呼インジケーターが含まれている場合、前記MCSに前記ページングに対するページング拒絶を送信する段階」と、本願補正発明の「前記対象端末がSMS(short message service) only識別子に対応し、前記CSサービスを識別するための識別子に従って前記サービスリクエストが音声コール(voice call)と関連した場合、前記端末に前記サービスリクエストに対する拒絶メッセージを送信する段階」とは、「前記対象端末がSMS(short message service) only識別子に対応し、前記CSサービスを識別するための識別子に従って前記信号が音声コール(voice call)と関連した場合、前記信号に対する拒絶メッセージを送信する段階」といえる点で共通する。

イ 以上のことから、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
移動通信システムで信号を送受信するMME(mobility management entity)における方法であって、
CS(circuit switched)サービスを識別するための識別子を含む対象端末に対するCSサービスと関連した信号を受信する段階と、
前記対象端末がSMS(short message service) only識別子に対応し、前記CSサービスを識別するための識別子に従って前記信号が音声コール(voice call)と関連した場合、前記信号に対する拒絶メッセージを送信する段階とを含む方法。

(相違点1)
一致点のMMEが受信する「CS(circuit switched)サービスを識別するための識別子を含む」「信号」が、本願補正発明では「端末から」受信する「CS(circuit switched)サービスを識別するための識別子を含む」「サービスリクエスト」であるのに対し、引用発明では「MSCから」SGsインタフェースを介して受信する「CS(circuit switched)サービスを識別するための識別子を含む」「ページング」である点。

(相違点2)
本願補正発明では、拒絶メッセージを送信する送信先が「端末」であるのに対して、引用発明では「MSC」である点。

(相違点3)
本願補正発明は、「前記対象端末がSMS only識別子に対応し、前記CSサービスを識別するための識別子に従って前記サービスリクエストがSMSと関連した場合、前記MMEのCSサービスへの転換なしに前記サービスリクエストメッセージに基づいて前記対象端末にページング(paging)メッセージを送信する段階」を備えるのに対して、引用発明には、MMEが「MSCからSGsインタフェースを介してSMSインジケーターを含むページングを受信」することしか特定されていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
(相違点1について)
上記「(2)引用発明、公知技術、周知事項」「ウ 周知事項1」のとおり、「着信側端末の属するMSCから着信側端末へ送信されるページングは、発信側端末がサービスリクエストを送信することによって送信される。」ことは、本願優先日の前に技術常識ともいえる周知技術(周知技術1)である。
また、「(2)引用発明、公知技術、周知事項」「エ 周知事項2」のとおり、「端末が送信するサービスリクエストは、CSサービス(移動体発信呼確立やショートメッセージサービス)を識別するための識別子を含む。」ことも、本願優先日の前に技術常識ともいえる周知技術(周知技術2)である。
したがって、引用発明において、上記周知技術1及び周知技術2を適用し、引用発明のMMEがMSCからSGsインタフェースを介して受信するページングを、発信側端末がサービスリクエストを送信することによって送信されたページングとし、当該サービスリクエストをCSサービス(移動体発信呼確立やショートメッセージサービス)を識別するための識別子を含むサービスリクエストとすることで、MMEが、(発信側)端末からCS(circuit switched)サービスを識別するための識別子を含むサービスリクエストを受信する構成とすることは当業者にとって格別困難なことではなく適宜成し得た事項である。

(相違点2について)
上記「(2)引用発明、公知技術、周知事項」「イ 公知技術」のとおり、「発呼ユーザからの呼がネットワークから拒絶された場合、ネットワークから発呼ユーザの端末へ呼が拒絶されたことを信号で通知する。」ことは、公知技術である。
したがって、引用発明において、上記公知技術を適用し、拒絶メッセージを(発呼ユーザの)端末へ送信することは、当業者が容易に想到しうるものである。

(相違点3について)
上記「(2)引用発明、公知技術、周知事項」「オ 周知事項3」のとおり、「UEがSMS only識別子に対応し、MMEがSGsインタフェースを介して受信したページングリクエストメッセージに含まれる、CS呼サービスかSMSサービスかを識別するためのサービスインジケーターがSMSインジケーターである場合、MMEは、SGsインタフェースを介して受信したページングリクエストメッセージに基づいて、UEをページングする。」ことは、本願優先日の前に技術常識ともいえる周知技術(周知技術3)である。
ここで、本願補正発明の「前記MMEのCSサービスへの転換なしに…ページング(paging)メッセージを送信する」との記載に関し、本願明細書には、段落[0053]に「段落435で、MME402はもしUE1(401)へ向けるサービスがSMSであればサービスを進行することができる。」と記載されているだけで、「前記MMEのCSサービスへの転換なしに…ページング(paging)メッセージを送信する」を具体的に特定する記載はないから、「前記MMEのCSサービスへの転換なしに…ページング(paging)メッセージを送信する」ことは、MMEによる通常のSMSサービスの進行にすぎず、周知技術3のMMEが通常のSMSサービスの進行としてUEをページングすることと格別な差異はない。
よって、引用発明のMMEが「MSCからSGsインタフェースを介してSMSインジケーターを含むページングを受信」した場合の処理として、上記周知技術3を適用し、その際、「MSCから」SGsインタフェースを介して受信する「SMSインジケーターを含むページング」については、上記(相違点1について)で検討したとおり、「端末から」受信する「CSサービスを識別するための識別子を含むサービスリクエスト」とすることで、対象端末がSMS only識別子に対応し、CSサービスを識別するための識別子に従ってサービスリクエストがSMSと関連した場合、前記MMEのCSサービスへの転換なしに前記サービスリクエストメッセージに基づいて前記対象端末にページング(paging)メッセージを送信する段階を含むようにすることは、当業者が容易に想到しうるものである。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用例2及び周知例1?3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2及び周知例1?3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、平成30年5月30日に提出された上申書に提示された補正案は、「前記CSサービスと関連した拒絶理由を含む前記端末に前記サービスリクエストに対する拒絶メッセージを送信する」との事項を備えるが、周知例3の(イ)に、“SMS only”のためにIMSIアタッチされているUEに対するCS呼を受信したMMEが、ページング拒絶メッセージにおいて、“ユーザによって拒絶された移動体着信CSフォールバック呼”との理由を示すことが記載され、“ユーザによって拒絶された移動体着信CSフォールバック呼”との理由は、CSサービスと関連した拒絶理由といえる。したがって、CSサービスと関連した拒絶理由を含む拒絶メッセージを送信することは、周知例3から周知技術といえるから、上申書に提示された補正案も、引用発明、引用例2及び周知例1?3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?16に係る発明は、平成29年3月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるところ、その請求項5は、上記「第2 平成29年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「1 本件補正について」の「(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載」に記載のとおりである(再掲)。

「移動通信システムにおいて、信号を送受信するMME(mobility management entity)における方法であって、
端末から対象端末に対するCS(circuit switched)サービスに関するサービスリクエストを受信する段階と、
前記対象端末がSMS(short message service) only識別子に対応し、前記サービスリクエストが音声コール(voice call)に関わる場合、前記端末で前記サービスリクエストに対する拒絶メッセージを送信する段階と、
前記対象端末がSMS only識別子に対応し、前記サービスリクエストがSMSに関わる場合、前記サービスリクエストメッセージに基づき、前記対象端末にページング(paging)メッセージを送信する段階を含む方法。」

ここで、上記「第2 平成29年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「2 補正の適否」で述べたとおり、「移動通信システムにおいて」は「移動通信システムで」の誤記であり、「前記端末で前記サービスリクエストに対する拒絶メッセージを送信する段階」は「前記端末に前記サービスリクエストに対する拒絶メッセージを送信する段階」の誤記であり、「前記サービスリクエストメッセージに基づき」は「前記サービスリクエストメッセージに基づいて」の誤記であり、「段階を含む」は「段階とを含む」の誤記であるから、特許請求の範囲の請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりであると認める。(下線は当審が付与。)

「移動通信システムで、信号を送受信するMME(mobility management entity)における方法であって、
端末から対象端末に対するCS(circuit switched)サービスに関するサービスリクエストを受信する段階と、
前記対象端末がSMS(short message service) only識別子に対応し、前記サービスリクエストが音声コール(voice call)に関わる場合、前記端末に前記サービスリクエストに対する拒絶メッセージを送信する段階と、
前記対象端末がSMS only識別子に対応し、前記サービスリクエストがSMSに関わる場合、前記サービスリクエストメッセージに基づいて、前記対象端末にページング(paging)メッセージを送信する段階とを含む方法。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、本件補正前の請求項5に対して、引用例1、2が引用されている。

引用例1:Samsung, Filtering CS paging without SMS indicator for SMS only UE, 3GPP TSG-SA WG2 Meeting #75 S2-095346, 2009年8月25日アップロード, URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_sa/WG2_Arch/TSGS2_75_Kyoto/Docs/S2-095346.zip
引用例2:Alcatel-Lucent, Originating & Terminating network Information Flows, 3GPP TSG-CT WG4 Meeting #54bis C4-112274, 2011年10月14日アップロード, URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ct/WG4_protocollars_ex-CN4/TSGCT4_54bis_Hyderabad/Docs/C4-112274.zip

3 引用例に記載された事項及び引用発明
引用例に記載された事項と引用発明は、上記「第2 平成29年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「2 補正の適否」の「(2)引用例に記載された事項及び引用発明、周知事項」の「ア 引用例1に記載された事項及び引用発明」及び「イ 引用例2に記載された事項」のとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2 平成29年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「2 補正の適否」の「(1)本願補正発明」で検討した上記本願補正発明から、「CSサービスと関連したサービスリクエスト」の内容についての「CS(circuit switched)サービスを識別するための識別子を含む」に係る限定事項を削除し、さらに、上記本願補正発明の「前記MMEのCSサービスへの転換なしに」に係る限定事項を削除するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成29年5月31日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「2 補正の適否」の「(3)対比」「(4)判断」の項で検討したとおり、引用発明、引用例2及び周知例1?3に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-22 
結審通知日 2019-02-25 
審決日 2019-03-12 
出願番号 特願2014-560858(P2014-560858)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久慈 渉本橋 史帆青木 健  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 羽岡 さやか
脇岡 剛
発明の名称 無線通信システムでサービスを制御するための方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 木内 敬二  
代理人 崔 允辰  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ