ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L |
---|---|
管理番号 | 1353753 |
審判番号 | 不服2018-2480 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-21 |
確定日 | 2019-07-25 |
事件の表示 | 特願2014- 69513「芳香族ポリカーボネート樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 2日出願公開、特開2015-189906〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)3月28日を出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年10月11日付け:拒絶理由通知 同年12月14日 :意見書、手続補正書の提出 同年12月20日付け:拒絶査定 平成30年 2月21日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年 4月 9日付け:拒絶理由通知(前置) 同年 6月13日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 1月22日付け:拒絶理由通知(当審) 同年 3月27日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1?6に係る発明は、平成31年3月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 下記一般式(I)で表される構造単位を有し、重量平均分子量が40,000?100,000の範囲内である芳香族ポリカーボネート樹脂と、無機充填剤と、下記一般式(IIa)で表される環状カーボネートとを含み、 前記芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が1000ppm以下であり、前記芳香族ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(III)で表される構造単位を含み、その含有率が、前記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂中に2000ppm未満であり、 無機充填剤が、ガラス繊維、ガラスビーズ及びガラスフレークからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、無機充填剤の含有量が、下記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して3?200質量部であり、かつ下記一般式(IIa)で表される環状カーボネート含有率が、下記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に対して0.1ppm以上3000ppm以下である、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。 【化1】 (式中、p及びqは、0を表し、Xは、下記(Ia)の群から選択される基を表す) 【化2】 (ここで、R_(3)及びR_(4)は、メチル基を表す) 【化3】 (式中、Raは、エチル基を表し、Rbは、ブチル基を表す) 【化5】 (式中、Xは、一般式(I)におけるXと同義である)。」 第3 当審が通知した拒絶理由の概要 平成31年1月22日付けで当審が通知した拒絶理由は、以下のものを含むものである。 この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項、又は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:国際公開第2012/157766号 引用文献2:特開2001-329161号公報 引用文献3:特開2013-1801号公報 引用文献4:特開2014-55255号公報 なお、本願発明1は、当審が通知した拒絶理由の対象となった平成30年6月13日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4に係る発明のうち請求項2を引用する発明に、さらに一般式(I)中の「X」を 「 」 と限定した上で、R_(3)及びR_(4)の選択肢をメチル基に限定し、一般式(IIa)中のRaの選択肢をエチルに、Rbの選択肢をブチル基に限定した発明である。 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 「[請求項16] 芳香族ポリカーボネートと、下記一般式(g1)で表される脂肪族ジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化する高分子量化工程を含むことを特徴とする、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。 [化9] (一般式(g1)中、Ra及びRbは各々独立して水素原子、炭素数1?12の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はフェニル基を表す。mは1?30の整数を表す。) ・・・ [請求項18] 前記一般式(g1)で表される脂肪族ジオール化合物が、下記一般式(g2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項16記載の製造方法。 [化10] (一般式(g2)中、Ra及びRbは各々独立して水素原子、炭素数1?12の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はフェニル基を表す。nは1?28の整数を表す。) ・・・ [請求項20] 前記一般式(g2)で表される脂肪族ジオール化合物が、下記一般式(g3)で表される化合物であることを特徴とする、請求項18記載の製造方法。 [化11] (一般式(g3)中、Ra及びRbは各々独立して水素原子、炭素数1?12の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はフェニル基を表す。) ・・・ [請求項22] 前記一般式(g3)中、Ra及びRbはそれぞれ独立して炭素数1?4の直鎖又は分岐のアルキル基を表すことを特徴とする、請求項20記載の製造方法。 [請求項23] 前記脂肪族ジオール化合物が、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジイソブチルプロパン-1,3-ジオール、2-エチル-2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジエチルプロパン-1,3-ジオール、及び2-メチル-2-プロピルプロパン-1,3-ジオールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項22記載の高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。 ・・・ [請求項26] 芳香族ポリカーボネートと脂肪族ジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化する高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含むことを特徴とする、請求項16又は24記載の製造方法。 [請求項27] 前記環状カーボネートが下記一般式(h1)で表される化合物である、請求項26記載の製造方法。 [化14] (一般式(h1)中、Ra及びRbは各々独立して水素原子、炭素数1?12の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はフェニル基を表す。mは1?30の整数を表す。) ・・・ [請求項29] 前記一般式(h1)で表される環状カーボネートが、下記一般式(h2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項27記載の製造方法。 [化15] (一般式(h2)中、Ra及びRbは各々独立して水素原子、炭素数1?12の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はフェニル基を表す。nは1?28の整数を表す。) ・・・ [請求項31] 前記一般式(h2)で表される環状カーボネートが、下記一般式(h3)で表される化合物であることを特徴とする、請求項29記載の製造方法。 [化16] (一般式(h3)中、Ra及びRbは各々独立して水素原子、炭素数1?12の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はフェニル基を表す。) ・・・ [請求項39] 請求項16又は24記載の製造方法で得られる高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とし、下記一般式(h1)で表される環状カーボネートを3000ppm以下含むことを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物。 [化17] (一般式(h1)中、Ra及びRbは各々独立して水素原子、炭素数1?12の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はフェニル基を表す。mは1?30の整数を表す。) ・・・ [請求項41] 前記一般式(h1)で表される環状カーボネートが、下記一般式(h2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項39記載のポリカーボネート樹脂組成物。 [化18] (一般式(h2)中、Ra及びRbは各々独立して水素原子、炭素数1?12の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はフェニル基を表す。nは1?28の整数を表す。) ・・・ [請求項43] 前記一般式(h2)で表される環状カーボネートが、下記一般式(h3)で表される化合物であることを特徴とする、請求項41記載のポリカーボネート樹脂組成物。 [化19] (一般式(h3)中、Ra及びRbは各々独立して水素原子、炭素数1?12の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はフェニル基を表す。) [請求項44] 前記一般式(h3)中、Ra及びRbはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?5の直鎖アルキル基を表すことを特徴とする、請求項43記載のポリカーボネート樹脂組成物。 [請求項45] 前記高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の、下記数式(1)で表されるN値(構造粘性指数)が1.25以下であることを特徴とする、請求項39記載のポリカーボネート樹脂組成物。 [数4] N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160-log10)・・・(1)」 「[0004] ポリカーボネートは耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れるため、近年、多くの分野において幅広く用いられている。 ・・・」 「[0020] 流動性を改良するためには、ポリカーボネートの重量平均分子量を下げる方法が挙げられる。しかしこの方法で得たポリカーボネートは、耐衝撃性、耐ストレスクラッキング性が大巾に低下し、そのうえ耐溶剤性が悪くなるという欠点を有していた。一方、分子量の異なるポリカーボネートを混合して分子量分布を広くすることにより、流動性を改良しようとする方法が提供されている(特許文献14;米国特許第3166606号明細書、特許文献15;特開昭56-45945号公報)。」 「[0025] しかしながら、上記いずれの技術でも高流動化は可能かも知れないが、同時にポリカーボネート樹脂本来の物性が損なわれる、混練操作等の工程が追加され製造工程が煩雑となる、離型性等の流動性以外の成形性が悪化する、使用対象が限定される、毒性が強くなる可能性がある等の欠点がある。よって、芳香族ポリカーボネートの有用な物性である耐衝撃性をはじめとする機械強度や耐熱性を保持したまま、高い流動性を有するポリカーボネート樹脂を得ることは容易ではなかった。」 「[0033] 本発明が解決しようとする課題は、他の樹脂や添加剤等を用いることなくポリカーボネート本来の良好な品質を保持しつつ、高分子量でありながら高流動性を有する新規なポリカーボネート共重合体を提供することである。 また、本発明が解決しようとする課題は、芳香族ポリカーボネート樹脂の良好な品質を保持し、かつ十分な高分子量化を達成しうる、改良された高分子量芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することである。 また、本発明が解決しようとする課題は、脂肪族ジオール化合物を用いた高分子量ポリカーボネートの製造に適したプレポリマーとしての芳香族ポリカーボネート化合物を提供することである。」 「[0120] このように、本発明のポリカーボネート共重合体は、添加剤を用いることなく芳香族ポリカーボネートの有用な物性である耐衝撃性、耐摩耗性、耐ストレスクラッキング性等の機械強度や、良好な色相、光学的特性、低平衡吸水率、耐熱性、寸法安定性、透明性、耐候性、耐加水分解性、難燃性といった物性を保持したまま、高分子量で且つ高流動性を達成し得たポリカーボネート樹脂である。さらに、高分子量で且つ高流動性であるだけでなく、分岐構造や異種構造の少ない(N値の小さい)ポリカーボネート樹脂である。 [0121] また、本発明の新規な製造方法によれば、芳香族ポリカーボネート(プレポリマー)と特定構造の脂肪族ジオール化合物との反応により、芳香族ポリカーボネートが高分子量化されるとともに、副生する環状カーボネートが反応系外へ除去され、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の主鎖中に脂肪族ジオール化合物はほとんど取り込まれない。そのため、得られる高分子量芳香族ポリカーボネート樹脂は、連結部位が鎖中にほとんど残らず、構造上は従来の界面法又は溶融法で得られるポリカーボネートとほぼ同じとなる。例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールA(BPA)を用いた芳香族ポリカーボネートプレポリマーからは、通常のビスフェノールA由来のポリカーボネート樹脂(BPA-PC)とほぼ同じ化学構造を有するポリマーが得られる。このようにして得られるポリカーボネート樹脂は、従来の界面法によるポリカーボネートと同等の物性を有する上に、脂肪族ジオール化合物を連結剤に用いて高速に高分子量化したものであるから、分岐度が小さい、異種構造が少ないなどの品質上の利点を有するだけでなく、脂肪族ジオール化合物からなる連結剤由来の骨格が含まれないため、高温下での熱安定性(耐熱性)が大幅に改善されたものとなる。」 「[0200] (2)一般式(II)で表される構造単位 本発明のポリカーボネート共重合体の芳香族ポリカーボネート形成単位は、一般式(II)で表される構造単位である。 [0201] [化57] [0202] 一般式(II)中、R_(1)及びR_(2)は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルコキシル基、炭素数6?20のシクロアルキル基、炭素数6?20のアリール基、炭素数6?20のシクロアルコキシル基、又は炭素数6?20のアリールオキシ基を表す。p及びqは、0?4の整数を表す。Xは単なる結合又は下記一般式(II’)で表される二価の有機基群から選択される基を表す。 [0203] [化58] [0204] 一般式(II’)中、R_(3)及びR_(4)は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1?10のアルキル基、または炭素数6?10のアリール基を表し、R_(3)及びR_(4)とが結合して脂肪族環を形成していても良い。 [0205] 上記一般式(II)で表される構造単位を誘導する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(II’)で表される化合物が挙げられる。 [0206] [化59] [0207] 上記一般式(II’)中、R_(1)?R_(2)、p、q、及びXは、各々上記一般式(II)におけるのと同様である。 [0208] このような芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的にはビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。 [0209] 中でも2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンがモノマーとしての安定性、更にはそれに含まれる不純物の量が少ないものの入手が容易である点等の理由により好ましいものとして挙げられる。」 「[0252] 本発明のように末端封止された芳香族ポリカーボネートプレポリマーに脂肪族ジオール化合物をエステル交換触媒存在下、減圧条件にて作用させる方法で得られたポリカーボネート共重合体は、高分子量でありながら高いQ値を示し、さらに好ましくは低いN値を示し、また本発明において必ずしも好ましくない作用効果をもたらす可能性のある異種構造を有するユニットの割合が極めて少ない。ここで、異種構造を有するユニットとは、従来の溶融法で得られるポリカーボネートに多く含まれる分岐点ユニットなどを言う。異種構造を有するユニットとしては、例えば以下に示す構造を有するユニットが挙げられるが、これらに限られない。なお、下記式中の(R1)p、(R2)q、及びXは、上記一般式(II)において示したものと同様である。Yは、水素原子、フェニル基、メチル基、一般式(II)などが結合していることを示す。 [0253] [化61] 」 「[0302](2)芳香族ポリカーボネート 本発明の高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法で用いられる芳香族ポリカーボネートは、上記ポリカーボネート共重合体の製造に用いられるのと同様に、前記一般式(II)で示される構造を主たる繰り返し単位とする重縮合ポリマー(芳香族ポリカーボネートプレポリマー)である。本発明の製造方法は、かかる芳香族ポリカーボネートプレポリマーと、前記一般式(g1)?(g4)で示される構造を有する脂肪族ジオール化合物とを、減圧下でエステル交換反応させる工程を含む。これによって、耐衝撃性等のポリカーボネート樹脂本来の特性を維持しつつ、高分子量でありながら高流動性を与える連結高分子量化されたポリカーボネートの利点を有し、しかも耐熱性が格段に向上した芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる。 ・・・ [0309] また、Ti複合体による分光測定によって末端水酸基濃度を測定することが可能である。同評価による末端水酸基濃度としては1,500ppm以下が好ましく、さらに好ましくは1,000ppm以下が好適である。この範囲を超える水酸基末端或いはこの範囲未満の封止末端量では脂肪族ジオール化合物とのエステル交換反応によって十分な高分子量化の効果が得られないおそれがある。」 「[0332] しかしながら、本発明の前記一般式(g1)?(g4)で示される構造を有する脂肪族ジオール化合物を用いた製造方法では、高分子量化反応の進行とともに、特定構造の環状カーボネートが副生する。そして、副生する環状カーボネートを反応系外へ除去した後には、ほぼホモポリカーボネート樹脂と同じ骨格を有する高分子量ポリカーボネート樹脂が得られる。副生する環状カーボネートは使用する脂肪族ジオール化合物に対応する構造を有しており、脂肪族ジオール化合物由来の環状体であると考えられるが、このような高分子量化とともに環状カーボネートが副生される反応機構は、必ずしも明らかではない。 [0333] 例えば以下のスキーム(1)又は(2)に示すメカニズムが考えられるが、必ずしも明確ではない。本発明の前記一般式(g1)?(g4)で示される構造を有する脂肪族ジオール化合物を用いた製造方法は、芳香族ポリカーボネートプレポリマーに特定構造の脂肪族ジオール化合物を反応させ、そこで副生する脂肪族ジオール化合物の構造に対応する構造の環状カーボネートを除去するものであり、いかなる反応機構に限定されるものでもない。 [0334] スキーム(I) [化73] [0335] スキーム(II) [化74] [0336] 本発明の前記一般式(g1)?(g4)で示される構造を有する脂肪族ジオール化合物を用いた製造方法によって得られる高分子量ポリカーボネート樹脂は、連結剤を用いた連結高分子量化方法によって得られる高分子量ポリカーボネート共重合体と異なり、連結剤由来の共重合成分はほとんど含まれず、樹脂の骨格はホモポリカーボネート樹脂とほぼ同じである。 [0337] このため、他の連結高分子量化方法によって得られる高分子量ポリカーボネート樹脂と比べ、連結剤である脂肪族ジオール化合物由来の共重合成分が骨格に含まれないか、含まれるとしても極めて少量であることから、熱安定性が極めて高く耐熱性に優れている。一方で、従来のホモポリカーボネート樹脂と同じ骨格を有しながら、他の連結高分子量化方法によって得られる高分子量ポリカーボネート樹脂と共通する利点としてN値が低い、異種構造を有するユニットの割合が少ない、色調に優れている、などの優れた品質を備えることができる。ここで、異種構造を有するユニットとは、従来の溶融法で得られるポリカーボネートに多く含まれる分岐点ユニットなどを言う。異種構造を有するユニットの具体例としては、上記のポリカーボネート共重合体に関して言及した異種構造を有するユニットと同様のユニットが挙げられるが、これらに限られない。」 「[0355] (iii)環状カーボネート除去工程 本発明の方法では、上記高分子量化反応によって芳香族ポリカーボネートプレポリマーが高分子量化されると同時に、該反応で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する。副生する環状カーボネートを反応系外へ除去することによって芳香族ポリカーボネートプレポリマーの高分子量化反応が進行する。 [0356] 環状カーボネートの除去方法としては、例えば同じく副生するフェノール及び未反応の脂肪族ジオール化合物などとともに反応系より留去する方法が挙げられる。反応系より留去する場合の温度は260?320℃である。 [0357] 環状カーボネートの除去については、副生する環状カーボネートの少なくとも一部について行う。副生する環状カーボネートの全てを除去するのが最も好ましいが、完全に除去するのは一般に難しい。完全に除去できない場合に製品化したポリカーボネート樹脂中に環状カーボネートが残存していることは許容される。製品中の残存量の好ましい上限は3000ppmである。すなわち、本発明の前記一般式(g1)?(g4)で示される構造を有する脂肪族ジオール化合物を用いた製造方法では、後述するように、環状カーボネートが3000ppm以下含まれるポリカーボネート樹脂組成物が得られる。」 「[0364] さらに本発明に於いて、上記熱安定化剤、加水分解安定化剤の他に、酸化防止剤、顔料、染料、強化剤や充填剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良材、帯電防止剤等を添加することができる。」 「[0367] (4)高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂 本発明の前記一般式(g1)?(g4)で示される構造を有する脂肪族ジオール化合物を用いた製造方法により得られる高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は30,000?100,000、好ましくは30,000?80,000、より好ましくは35,000?75,000であり、高分子量でありながら、高い流動性を併せ持つ。重量平均分子量が低すぎると、ブロー成形、押出成形等の用途に用いた場合、溶融張力が低くなり、ドローダウンを生じやすく満足な成形品が得られなくなる。また、射出成形等の用途に用いた場合、糸引き等により満足な成形品が得られなくなる。さらに得られる成形品の機械的物性、耐熱性等の物性が低下する。また、オリゴマー領域が増大し、耐有機溶剤性等の物性も低下する。重量平均分子量が高すぎると、精密部品や薄物の射出成形が困難となり、成形サイクル時間が長時間となり生産コストへ悪影響を及ぼす。そのため、成形温度を上げる等の措置が必要となるが、高温下では、ゲル化、異種構造の出現、N値の増大などの可能性が生じる。 [0368] また、本発明の高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂においては、下記数式(1)で表されるN値(構造粘性指数)が、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.28以下、特に好ましくは1.25以下である。 [数7] N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160-log10) ・・・(1)」 「[0370] 構造粘性指数「N値」は、芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度の指標とされる。本発明のポリカーボネート共重合体におけるN値は低く、分岐構造の含有割合が少なく直鎖構造の割合が高い。ポリカーボネート樹脂は一般に、同じMwに於いては分岐構造の割合を多くしても流動性が高くなる(Q値が高くなる)傾向にあるが、本発明のポリカーボネート共重合体は、N値を低く保ったまま高い流動性(高いQ値)を達成している。」 「[0378] 上記環状カーボネートの具体例としては、以下に示す構造の化合物が挙げられる。 [化78] [0379] 本発明のポリカーボネート樹脂組成物中における上記一般式(h1)で表される環状カーボネートの含有量は3000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、特に好ましくは300ppm以下である。環状ポリカーボネートの含有量の下限は特に制限されない。理想的には0%であり、通常は検出限界値となるが、好ましくは0.0005ppm以上である。環状カーボネートの含有量が高すぎると、樹脂強度の低下等のデメリットがある場合がある。」 「[0444] 以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は、以下の方法あるいは装置を用いて測定した。 ・・・ [0451] 7)流動性(Q値):Q値は溶融樹脂の流出量(ml/sec)であり、高化式フローテスターCFT-500D(島津製作所(株)製)を用いて、130℃で5時間乾燥後、280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積により評価した。 [0452] 8)N値:高化式フローテスターCFT-500D(島津製作所(株)製)を用いて、130℃で5時間乾燥した芳香族ポリカーボネート(試料)について、280℃、荷重160kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積をQ160値とし、同様に280℃、荷重10kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積をQ10値として、これらを用いて下式(1)により求めた。 [0453] [数10] N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160-log10) ・・・(1)」 「[0488] <プレポリマーの製造例4;PP-D> 2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン10,000.6g(43.81モル)、ジフェニルカーボネート10,560.0g(49.30モル)及び触媒として炭酸セシウムを0.5μmol/mol(触媒は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対してのモル数として計算)とを攪拌機及び留出装置付の50LのSUS製反応器に入れ、系内を窒素雰囲気下に置換した。減圧度を27kPaA(200torr)に調整し、200℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌した。 [0489] その後、4時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を0.13kPaA(1torr)以下とし、さらに1時間保持した。重量平均分子量(Mw);22,000のポリカーボネートプレポリマー(以下、「PP-D」と略すことがある)を得た。 得られたポリカーボネートプレポリマーのOH濃度(ppm)及びフェニル末端濃度(Ph末端濃度;mol%)等を表5に示す。なお表5中、OH濃度は、NMRより算出した値であり、全ポリマー中に含まれるOH基濃度を示す。また、Ph末端濃度は、NMRより算出した値であり、全フェニレン基及びフェニル末端中のフェニル基(水酸基で置換されたフェニル基を含む)末端濃度を示す。・・・」 「[0498] [表5] 」 「[0503] <実施例20> 上記プレポリマーの製造例4で得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー「PP-D」30.13gを、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、280℃にて加熱溶融させた。続いて、脂肪族ジオール化合物として2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール(BEPD)0.34gをジャケット温度280℃にて、常圧で添加し3分間攪拌混練した。 [0504] 引き続きジャケット温度280℃、圧力0.04kPaA(0.3torr)で70分間攪拌混練して、エステル交換反応を行った。触媒は、芳香族ポリカーボネートプレポリマー重合時の重合触媒をそのまま使用した。 [0505] 反応系より留出するフェノール、環状カーボネート(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン)及び未反応の2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール(BEPD)を冷却管にて凝集し、反応系より除去して重量平均分子量(Mw)=56,400、N値=1.19、環状カーボネート(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン)を154ppm含有するポリカーボネート樹脂を得た。 [0506] 得られた樹脂1gを試験管に入れ、窒素で置換されたグローブボックス(酸素濃度0.0%)内にて、120℃に設定したブロックヒーターで2時間乾燥した。引き続き同グローブボックス内にて、360℃に設定したブロックヒーターで50分間加熱滞留した。 その結果、滞留試験前後の分子量(Mw)保持率(%)は98%、YI値の変化量は+5.0であった。 [0507] BEPDの添加・攪拌終了時の混合物の^(1)H-NMRチャートを図5に、及び最終的に得られたポリカーボネート樹脂の^(1)H-NMRチャートを図6に示す。図5では、芳香族ポリカーボネートプレポリマーと反応したBEPD由来のピークが未反応のBEPDモノマーのピークとは別に認められる。一方、図6では、反応したBEPD由来のピーク及び未反応のBEPDモノマーのピークは消失している。 [0508] このことから、ここで得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、脂肪族ジオール化合物由来の構造単位を有しないホモポリカーボネートであり、添加した脂肪族ジオールがいったんは芳香族ポリカーボネートプレポリマーと反応した後環状カーボネートとして反応系外へ除去されたことがわかる。 [0509] <実施例21?26> 芳香族ポリカーボネートプレポリマーの仕込み量及び使用した脂肪族ジオール化合物並びにその仕込み量を表7に示すように変えた以外は、実施例20と同様に行い、ポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂の各種物性を表7に示す。 [0510] <比較例6> 実施例20と同じ芳香族ポリカーボネートプレポリマーを用い、脂肪族ジオール化合物を添加しなかった以外は実施例20と同様に短時間で反応を行ったところ、Mwは22000のままで分子量は上がらなかった。 [0511] [表7] [0512] 実施例20?26で示したように、最終的に得られた樹脂中の脂肪族ジオール化合物由来の構造単位の割合(モル数)は、脂肪族ジオール化合物の添加・混練終了時における同割合(モル数)に対して著しく減少する。本発明の前記一般式(g1)?(g4)で示される構造を有する脂肪族ジオール化合物を用いた製造方法によれば、最終的に得られる樹脂中の脂肪族ジオール化合物由来の構造単位の割合(モル数)は、脂肪族ジオール化合物の添加・混練終了時における同割合(モル数)に対して50%以下、好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下となる。 [0513] 本発明の前記一般式(g1)?(g4)で示される構造を有する脂肪族ジオール化合物を用いた製造方法で得られるホモポリカーボネート樹脂に近い高分子量ポリカーボネート樹脂は高い熱安定性を有し、360℃-50分という極めて過酷な熱滞留試験の前後で分子量(Mw)保持率が高くYI値変化量が低いことが、上記実施例20?26の結果からわかる。」 2 引用文献1に記載された発明 (1)引用発明1a 引用文献1には、特許請求の範囲の請求項1?15にあるように、「高流動性ポリカーボネート共重合体」と、同請求項16?45にあるように、「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」と、同請求項46?51にあるように、「芳香族ポリカーボネート化合物」の発明がそれぞれ記載されている。そして、「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」に関しては、同請求項16に、「芳香族ポリカーボネートと、」「一般式(g1)で表される脂肪族ジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化する高分子量化工程を含むことを特徴とする、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。」が記載され、この請求項16と請求項18、20、22を順に引用する請求項23には、「2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール」が、「前記脂肪族ジオール化合物」の選択肢の1つとして記載される該製造方法が記載されている。また、段落[0367]には、「一般式(g1)」「で示される脂肪族ジオール化合物を用いた製造方法により得られる高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂」の一般記載がされており、同[0503]?[0508]の実施例20には、該「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂」の具体例として、製造例4で製造された芳香族ポリカーボネートプレポリマーを、該「芳香族ポリカーボネート」として用い、これに、該「脂肪族ジオール化合物」として2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオールを反応させて得られる「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂」が記載されている。 そうすると、引用文献1には、製造例4を書き下した実施例20として、 「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン10,000.6g(43.81モル)、ジフェニルカーボネート10,560.0g(49.30モル)及び触媒として炭酸セシウムを0.5μmol/mol(触媒は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに対してのモル数として計算)とを攪拌機及び留出装置付の50LのSUS製反応器に入れ、系内を窒素雰囲気下に置換し、減圧度を27kPaA(200torr)に調整し、200℃にて原料を加熱溶融し、30分間攪拌し、その後、4時間かけて、反応系より留出するフェノールを冷却管にて凝集、除去しつつエステル交換反応を行ない、系内を260℃、減圧度を0.13kPaA(1torr)以下とし、さらに1時間保持し、重量平均分子量(Mw);22,000、OH濃度(ppm)が60ppmのポリカーボネートプレポリマー(以下、「PP-D」と略すことがある)を得て、得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー「PP-D」30.13gを、攪拌機及び留出装置付の300cc四つ口フラスコに入れ、280℃にて加熱溶融させ、続いて、脂肪族ジオール化合物として2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール(BEPD)0.34gをジャケット温度280℃にて、常圧で添加し3分間攪拌混練し、引き続きジャケット温度280℃、圧力0.04kPaA(0.3torr)で70分間攪拌混練して、エステル交換反応を行い、触媒は、芳香族ポリカーボネートプレポリマー重合時の重合触媒をそのまま使用し、反応系より留出するフェノール、環状カーボネート(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン)及び未反応の2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール(BEPD)を冷却管にて凝集し、反応系より除去して得られる重量平均分子量(Mw)=56,400、N値=1.19、環状カーボネート(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン)を154ppm含有する芳香族ポリカーボネート樹脂。」の発明(以下、「引用発明1a」という。)が記載されているものと認められる。 (2)引用発明1b 引用文献1の特許請求の範囲の請求項16には、「芳香族ポリカーボネートと、」「一般式(g1)で表される脂肪族ジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化する高分子量化工程を含むことを特徴とする、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。」が記載され、この請求項16を引用する請求項26には、「芳香族ポリカーボネートと脂肪族ジオール化合物とを、エステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化する高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含むことを特徴とする、」該製造方法が記載され、この請求項26を引用する請求項27には、「前記環状カーボネートが」「一般式(h1)で表される化合物である」該製造方法が記載されている。 また、この請求項16を引用する請求項39には、該「製造方法で得られる高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とし、」「一般式(h1)で表される環状カーボネートを3000ppm以下含むことを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物」が記載され、この請求項39と請求項41、43を順に引用する請求項45には、「前記高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の、下記数式(1)で表されるN値(構造粘性指数)が1.25以下であることを特徴とする」「ポリカーボネート樹脂組成物。 [数4] N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160-log10) ・・・(1)」が記載されている。 ここで、同[0332]?[0336]には、上記(1)で示した「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」に関する反応機構が記載されているところ、この反応機構から、「副生する環状カーボネート」は、「脂肪族ジオール化合物」に由来するものであって、同[0355]-[0357]の記載によれば、該環状カーボネートを除去することにより、該環状カーボネートの含有量の好ましい上限は3000ppmである「ポリカーボネート樹脂組成物」が得られるから、請求項16を引用する請求項26において、「一般式(g1)で表される脂肪族ジオール化合物」を反応させたときに「副生する環状カーボネート」は、請求項27の「一般式(h1)で表される化合物」であり、それを除去することにより、請求項39の「一般式(h1)で表される環状カーボネートを3000ppm以下含む」「ポリカーボネート樹脂組成物」が得られるものと認められる。 また、副生する環状カーボネートの前駆体とされる「脂肪族ジオール化合物」としては、請求項16と請求項18、20、22を順に引用する請求項23に、「2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール」が選択肢の1つとして記載され、「副生する環状カーボネート」である請求項27の「一般式(h1)で表される化合物」としては、段落[0378]?[0379]に 「 」(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン) が具体例の1つとして記載されている。 そして、段落[0503]?[0508]の実施例20には、該「製造方法で得られる、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂」の具体例として、製造例4で製造された芳香族ポリカーボネートプレポリマーを、該「芳香族ポリカーボネート」として用い、これに、該「脂肪族ジオール化合物」として2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオールを反応させて、副生する環状カーボネートである「5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン」を除去して得られる「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂」が記載されており、この実施例20で得られたものは、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とし、環状カーボネートとして「5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン」を3000ppm以下である154ppm含むものであるから、実施例20には、該脂肪族ジオール化合物が2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオールであり、該環状カーボネートが5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オンである該「ポリカーボネート樹脂組成物」が記載されているものと認められる。 そうすると、引用文献1には、「芳香族ポリカーボネートと、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオールとを、エステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化する高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とをを含む高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法で得られる高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とし、5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オンを3000ppm以下含むポリカーボネート樹脂組成物であって、 前記高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の、下記数式(1)で表されるN値(構造粘性指数)が1.25以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。 [数4] N値=(log(Q160値)-log(Q10値))/(log160-log10) ・・・(1)」の発明(以下、「引用発明1b」という。)が記載されているものと認められる。 3 引用文献2の記載 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸結合を導入し得る化合物との反応により製造される、粘度平均分子量12000?40000のポリカーボネートであって、式(I)で表される環状オリゴマーの含有量が1000ppm以下であり、かつ、式(I)、式(II)及び式(III)で表されるオリゴマーの総量に対する割合が関係式(1)を満たす芳香族ポリカーボネート100重量部に、無機充填材1?300重量部配合することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。・・・(略)・・・ 【請求項2】 無機充填材が、ガラス、もしくは炭素の繊維状、粉状、もしくはフレーク状の無機充填材から選ばれる少なくとも1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項3】 芳香族ポリカーボネートが、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応により製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項4】 芳香族ポリカーボネートが、末端水酸基の含有量が100?1000ppmであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。」 「【0002】 【従来の技術】 ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、透明性等に優れた樹脂として多くの分野で幅広く用いられているが、携帯端末機器のハウジングやカバー類等の成形品の薄肉化にともない、更に強度や剛性に優れた材料が求められている。これらの強度や剛性向上の要求には、一般的には、樹脂の補強効果を発揮するガラス繊維や炭素繊維等の無機充填材を配合することで対応している。しかし、これらの無機充填材の配合は、一般的には、ポリカーボネート樹脂組成物の流動性を低下させ、結果的に、ポリカーボネート樹脂組成物を290?380℃という高温で混練、成形しなければならず、混練時および成形時に着色し易いこと、さらには高温の使用条件下でも着色し易い等の問題を有していた。これらの問題に対して、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンを反応させて重合を行う界面法で製造されたポリカーボネートでは、溶媒として使用される塩化メチレン量の低減、ホスゲン由来の塩素成分量の低減等により耐熱性の改良が試みられたり、また芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とを加熱減圧下反応させるエステル交換法においては、原料である炭酸ジエステル等の含有量の低減、触媒の失活等による改良(特開平7ー126374号公報)が試みられているが、十分な熱安定性は得られていなかった。一方、ポリカーボネートに亜リン酸エステル等のリン系酸化防止剤や、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤を添加し、耐熱性を付与する試みは既に行われているが、高温時の着色を十分に抑制できなかった。また、ポリカーボネートベースレジンの低分子量化、カーボネートオリゴマー等の流動性改質剤の配合、ABS等他樹脂とのアロイ化による流動性の改質等も行われているが、これらの手法では、ポリカーボネート本来の衝撃強度や耐熱性を犠牲にする等の問題があった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、色調、耐熱性等に優れるポリカーボネート組成物を提供するものであり、特に、無機充填材で補強された色調、耐熱性等に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供するものである。」 「【0028】 本発明において使用される無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸カルシウム粉体、石膏、石膏ウィスカー、硫酸バリウム、タルク、マイカ、珪酸カルシウム、カーボンブラック、グラファイト、鉄粉、銅粉、二硫化モリブデン、炭化ケイ素、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素、窒化ケイ素繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、チタン酸カリウム繊維あるいはウィスカー、芳香族ポリアミド繊維などで、好ましくは、ガラス、もしくは炭素の繊維状、粉状、もしくはフレーク状の充填材で、より好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク等が挙げられる。無機充填材の配合量は、本発明の芳香族ポリカーボネート100重量部に対して、1?300重量部である。無機充填材の配合量が1重量部未満では、補強効果が少なく、300重量部を越えると外観が悪くなりやすい。好ましい配合量は、3?50重量部である。本発明で使用されるガラス繊維及びガラスミルドファイバーとしては、通常熱可塑性樹脂に使用されているものであればいずれも使用できるが、無アルカリガラス(Eガラス)が好ましい。ガラス繊維の直径は、好ましくは6?20μmであり、より好ましくは9?14μmである。繊維径が6μm未満では補強効果が不充分となり易く、20μmを越えると、製品外観に悪影響を与えやすい。ガラス繊維としては、好ましくは、長さ1?6mmにカットされたチョップドストランド、ガラスミルドファイバーとしては、好ましくは、長さ0.01?0.5mmに粉砕されて市販されているものを用いても良く、両者を混合して用いてもよい。本発明で使用されるガラス繊維は、樹脂との密着性を向上させる目的で、アミノシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤などによる表面処理、あるいは取扱い性を向上させる目的で、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂などによる集束処理を施して使用してもよい。 【0029】 本発明で使用されるガラスビーズとしては、通常熱可塑性樹脂に使用されているものであればいずれも使用できるが、無アルカリガラス(Eガラス)が好ましい。ガラスビーズの形状は球状で、粒径は10?50μmであるのが好ましい。本発明で使用されるガラスフレークとしては、鱗片状のガラスフレークが挙げられ、一般的には樹脂配合後の最大径が1000μm以下、好ましくは1?500μmであり、且つアスペクト比(最大径と厚み途の比)が5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは30以上である。本発明で使用される炭素繊維としては、一般にアクリル繊維、石油又は炭素系特殊ピッチ、セルロース繊維、リグニン、等を原料として焼成によって製造されたものであり、耐炎質、炭素質または、黒鉛質等の種々のタイプのものがあるが、特に基材を問わない。炭素繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)の平均は、好ましくは、10以上である。アスペクト比の平均が10未満であると導電性と強度、剛性が低下する。炭素繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)の平均は、より好ましくは50以上である。一般に炭素繊維の径は3?15μmにあるため、このようなアスペクト比に調整するためには、チョップドストランド、ロービングストランド、ミルドファイバー等のいずれの形状のものも使用でき、1種または2種以上混合して用いることもできる。」 4 引用文献3の記載 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 「【実施例】 【0091】 以下に実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、評価としては以下の項目について実施した。 ・・・ 【0093】 (ii)耐衝撃性(シャルピー衝撃強度の測定) 評価は射出成形により衝撃試験片を作成し、ISO 179に準じてノッチ付きシャルピー衝撃強度の測定を行った。 ・・・ 【0096】 原料としては、以下のものを用いた。 (A成分) A-1:ビスフェノールAおよび末端停止剤としてp-tert-ブチルフェノール、並びにホスゲンから界面重縮合法で合成した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL-1225WS(商品名)、粘度平均分子量20,900) ・・・ 【0099】 (D成分) D-1:ガラスファイバー(直径13μm、カット長3mm)[日本電気硝子(株)製ECS?03T-511(商品名)] D-2:ガラスミルドファイバー(直径9μm、数平均繊維長30μm)[日東紡(株)製PEF-301S(商品名)] D-3:タルク(板状、平均粒子径2μm)[林化成工業(株)製Upn HS-T0.8(商品名)] D-4:扁平断面ガラスファイバー(長径28μm、短径7μm、カット長3mm)[日東紡績(株)製CSG 3PA-830(商品名)] ・・・ 【0102】 [実施例1?55、比較例1?10] (ポリカーボネート樹脂組成物の製造) ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造されたポリカーボネート樹脂パウダーに、表1?表6記載の各種添加剤を各配合量で配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー))を用いて溶融混練しペレットを得た。添加剤はそれぞれ配合量の10倍の濃度で予めポリカーボネート樹脂パウダーとの予備混合物をヘンシェルミキサーを用いて作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。押出条件は吐出量20kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第1供給口からダイス部分まで260℃とした。 次に得られたペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥し、乾燥後、射出成形機(住友重機械工業(株)SG-150U)によりシリンダー温度280℃、金型温度70℃で各種評価用の試験片を成形した。これらの成形品を用いて各特性を測定した。それらの結果を表1?表6に示す。」 「【0105】 【表3】 【0106】 【表4】 」 5 引用文献4の記載 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 「【0158】 [耐衝撃性] 上述の方法で得られたISO多目的試験片(3mmt)を用い、ISO179に準拠してノッチ付シャルピー(単位:kJ/m2)を測定し評価した。なお、表3?4中、「耐衝撃性」と表記する。」 「【0159】 【表2】 【0160】 【表3】 」 6 引用文献5の記載 当審が、本願出願日時点の技術常識を示す文献として新たに引用する引用文献5には、以下の事項が記載されている。 引用文献5:本間 精一 編、ポリカーボネート樹脂ハンドブック、日本、1992年、p.82,106-108 (1) 「4.5.1 ガラス繊維強化グレード 強度、剛性、寸法安定性などを向上させる目的でガラス繊維を10?30%程度充填したグレードが一般的である。」(第82頁第12-14行) (2) 「5.2 複合強化グレード ポリカ-ボネート樹脂は、その透明性と耐衝撃性を利点として広く用いられているが、一方さらに高い機械的強さや耐熱性、寸法安定性を要求される場合には、強化材料との複合化が盛んに行われている。特に、寸法安定性を求められる精密部品用途では、非結晶性樹脂であるポリカーボネートは、ポリアミド(PA)やポリオキシメチレン(POM)等の結晶性樹脂に比べると成形収縮率が小さく、有利である。この特長を活かし、金属に近い剛性や線膨張係数の小さい材料をえるため、ポリカーボネートにガラス繊維やカーボン繊維をはじめとする無機材料を配合してなるグレードが数多く市販されている。またポリカーボネートの欠点である耐薬品性、低温衝撃性、流動性等の性質を改良するために、他の樹脂とのアロイ化を行い、さらにこのアロイに強化材料を配合することも盛んに検討されている。」(第106頁第8-20行) (3) 「5.2.1 複合化の目的と強化材料 複合化の目的は、 (a)補強効果;機械的特性や耐熱性の向上をはかる (b)増量効果;高価なベース材料を使うとき強化材料を加えることによりコストダウンをはかる (c)寸法安定性;強化材を加えることにより線膨張係数、吸水性が減少し、材料の寸法安定性が向上する (d)特殊機能の付与;(a)の補強効果の他にベースポリマーが本来有していない導電性、磁性、難燃性などの特殊機能を付与する (e)その他;遮蔽効果、流下防止、制振、耐侯性、印刷性、接着性の改善などがある。 これらの目的のために、表5.4に示したような強化材料が用いられるが、ポリカーボネートの場合、強化材料が塩基性または強酸性の場合は、溶融混練時にポリマーが分解され、分子量低下を引き起こすために、その使用についてはきわめて慎重な処方をとる必要がある。 最も代表的な強化材料は、ガラス繊維(以下GF)とカーボン繊維(以下CF)であり、タルク、マイカ、クレー、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー等の強化材料との配合については、現在開発中である。 」(第106頁下から第2行-第108頁第1行) (4) 「繊維の形状としては、集束剤によりまとめられドラムに巻取られたロービングや、これを数mmの長さにカットしたチョップドストランド(以下CS)ガラス繊維を破砕し数10μmにした粉末状のミルドファイバー(以下MF)、さらにガラス片のフレーク、球状を中心とするビーズ等がある。」(第108頁第5-8行) 第5 本願発明1と引用発明1aとの対比及び判断 1 対比 本願発明1と引用発明1aを対比する。 引用発明1aの「芳香族ポリカーボネート樹脂」は、「2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン10,000.6g(43.81モル)、ジフェニルカーボネート10,560.0g(49.30モル)」から「得られた芳香族ポリカーボネートプレポリマー「PP-D」30.13g」と、「脂肪族ジオール化合物として2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール(BEPD)0.34g」とをエステル交換反応を行って得られるものであり、「重量平均分子量(Mw)=56,400」であるから、本願発明1の「下記一般式(I)で表される構造単位を有し、重量平均分子量が40,000?100,000の範囲内である芳香族ポリカーボネート樹脂」 「【化1】 (式中、p及びqは、0を表し、Xは、下記(Ia)の群から選択される基を表す) 【化2】 (ここで、R_(3)及びR_(4)は、メチル基を表す)」に相当する。 また、引用発明1aの「環状カーボネート(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン)」は、本願発明1の「下記一般式(IIa)で表される環状カーボネート」 「【化3】 (式中、Raは、エチル基を表し、Rbは、ブチル基を表す)。」に相当する。そして、引用発明1aの「芳香族ポリカーボネート樹脂」は、「環状カーボネート(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン)」を「154ppm含有する」ものであるから、本願発明1の「一般式(IIa)で表される環状カーボネート」を含有し、その含有量は、本願発明1の「0.1ppm以上3000ppm以下」と重複一致する。 また、引用発明1aの「芳香族ポリカーボネート樹脂」と、本願発明1の「芳香族ポリカーボネート樹脂組成物」は、「芳香族ポリカーボネート樹脂」の限りで一致する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「下記一般式(I)で表される構造単位を有し、重量平均分子量が40,000?100,000の範囲内である芳香族ポリカーボネート樹脂と、下記一般式(IIa)で表される環状カーボネートとを含み、下記一般式(IIa)で表される環状カーボネート含有率が、下記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に対して0.1ppm以上3000ppm以下である、芳香族ポリカーボネート樹脂: 【化1】 (式中、p及びqは、0を表し、Xは、下記(Ia)の群から選択される基を表す) 【化2】 (ここで、R_(3)及びR_(4)は、メチル基を表す) 【化3】 (式中、Raは、エチル基を表し、Rbは、ブチル基を表す)」 そして、次の点で相違する。 <相違点1> 本願発明1は、「前記芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が1000ppm以下であ」ると特定されているのに対し、引用発明1aは、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が明らかでない点。 <相違点2> 本願発明1は、「前記芳香族ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(III)で表される構造単位を含み、その含有率が、前記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂中に2000ppm未満である」 「【化5】 (式中、Xは、一般式(I)におけるXと同義である。)」と特定されているのに対し、引用発明1aは、そのような特定がない点。 <相違点3> 本願発明1は、「無機充填剤」を含み、「無機充填剤が、ガラス繊維、ガラスビーズ及びガラスフレークからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、無機充填剤の含有量が、下記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して3?200質量部であ」る芳香族ポリカーボネート「樹脂組成物」であるのに対し、引用発明1aは、無機充填剤を含むことが特定されておらず、芳香族ポリカーボネート「樹脂」である点。 2 判断 (1)相違点1について 引用発明1aの芳香族ポリカーボネート樹脂は、「芳香族ポリカーボネートプレポリマー「PP-D」30.13g」と、「脂肪族ジオール化合物として2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール(BEPD)0.34g」との「エステル交換反応を行い、触媒は、芳香族ポリカーボネートプレポリマー重合時の重合触媒をそのまま使用し、反応系より留出するフェノール、環状カーボネート(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン)及び未反応の2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール(BEPD)」を「反応系より除去して得られる」ものであり、芳香族ポリカーボネートプレポリマーのOH濃度は、60ppmである。ここで、引用文献1の段落[0332]?[0336]には、上記第4の2(1)で示した「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」に関する反応機構が記載され、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂は、連結剤としての脂肪族ジオール化合物由来の構造単位が極めて少なく、樹脂の骨格はホモポリカーボネート樹脂とほぼ同じとなることが記載されており、この反応機構からみて、芳香族ポリカーボネートプレポリマーを脂肪族ジオール化合物で高分子量化した当該「芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」により得られた「芳香族ポリカーボネート樹脂」の末端水酸基濃度は、原料である芳香族ポリカーボネートプレポリマーの末端水酸基濃度より少なくなるものと理解できる。そして、引用文献1の[表7]には、実施例20について、「得られた樹脂中の脂肪族ジオール化合物由来の構造単位の割合」が0.00%であることが記載されていることからも、実施例20における反応は、上記反応機構に従っているものといえるので、引用発明1aの芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は、プレポリマー「PP-D」の60ppmより少ないものであることは、明らかである。 したがって、引用発明1aの芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は、1000ppm以下であるものといえる。 よって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。 (2)相違点2について 引用発明1aは、N値が1.19である芳香族ポリカーボネート樹脂である。このN値について、引用文献1の段落[0370]には、「構造粘性指数「N値」は、芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度の指標とされる」こと、「本発明のポリカーボネート共重合体(合議体注:「芳香族ポリカーボネート樹脂」の誤記であると認められる。)におけるN値は低く、分岐構造の含有割合が少なく直鎖構造の割合が高い」ことが記載されている。ここで、この分岐構造の含有割合が少ないことに関する記載として、同[0337]には、連結剤を用いて高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂が、N値が低い、異種構造を有するユニットの割合が少ないなどの利点を有する旨記載され、この異種構造を有するユニットとは、分岐ユニットを言うことが記載され、当該「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂」に含まれる「異種構造を有するユニットの具体例としては、上記のポリカーボネート共重合体に関して言及した異種構造を有するユニットと同様のユニットが挙げられる」旨記載されている。そして、この「ポリカーボネート共重合体に関して言及した異種構造」として、同[0252]?[0253]には、 「 」が例示され、例示された構造には、本願発明1の「一般式(III)で表される構造が含まれている。 してみると、引用発明1aの芳香族ポリカーボネート樹脂には、上記の例示された異種構造を有するユニットが含まれるものと解され、該ユニットは、本願発明1の「下記一般式(III)で表される構造単位を含」む 「【化5】 (式中、Xは、一般式(I)におけるXと同義である。)」に相当する。また、該「異種構造を有するユニット」は、「分岐構造」であるといえ、引用文献1には、上述のとおり、分岐構造の割合が少ないことが記載されていることから、引用発明1aの芳香族ポリカーボネート樹脂は、該「異種構造を有するユニット」の含有量が少ないものであるといえる。 ここで、本願明細書の段落【0054】には、「異種構造の割合が少ない芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、後述する特定構造のジオール化合物を含む連結剤を用いて芳香族ポリカーボネートプレポリマーを高分子量化する工程を含む方法によって製造することができる。」と記載され、同【0111】には、「好ましい芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、芳香族ポリカーボネートプレポリマーと下記一般式(IV)で表されるジオール化合物とをエステル交換触媒の存在下に反応させて、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を得る高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含む製造方法である。」と記載され、該ジオール化合物について、同【0121】には、「特に好ましいものは、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール・・・からなる群から選択されるジオール化合物である」と記載されている。また、同【0063】には、「構造粘性指数「N値」は、芳香族ポリカーボネート樹脂の分岐化度の指標とされる。芳香族ポリカーボネート樹脂においては、N値は低く、分岐構造の含有割合が少なく直鎖構造の割合が高いことが好ましい。」と記載され、同【表1】には、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物「PC-1」のN値が1.19、異種構造量が500ppm、同「PC-2」のN値が1.29、異種構造量が2000ppmであることが記載されている。これらの記載から、N値がより低いものは異種構造量が少ないことが理解でき、少なくとも、「芳香族ポリカーボネートプレポリマーと特定のジオール化合物とをエステル交換触媒の存在下に反応させて、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を得る高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含む」方法によって製造され、N値が1.29より小さい値である「芳香族ポリカーボネート樹脂」の異種構造量は2000ppm未満であるものといえる。 そして、引用発明1aの「芳香族ポリカーボネートプレポリマー「PP-D」」と、「脂肪族ジオール化合物として2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオール(BEPD)」との「エステル交換反応を行い、触媒は、芳香族ポリカーボネートプレポリマー重合時の重合触媒をそのまま使用し、反応系より留出するフェノール、環状カーボネート(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン)、未反応のBEPD)」を「反応系より除去」するという方法は、上記の「芳香族ポリカーボネートプレポリマーと特定のジオール化合物とをエステル交換触媒の存在下に反応させて、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を得る高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含む」方法に相当し、引用発明1aのN値は1.19であるから、上記の「異種構造を有するユニット」の濃度は、2000ppm未満であるといえる。 してみると、引用発明1aの芳香族ポリカーボネート樹脂は、「下記一般式(III)で表される構造単位を含み、その含有率が、前記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂中に2000ppm未満である 【化5】 (式中、Xは、一般式(I)におけるXと同義である。)」ものといえる。 したがって、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。 なお、引用文献1の[表7]には、実施例20において得られる「芳香族ポリカーボネート樹脂」のN値が1.21である旨記載されているが、仮に引用発明1aのN値が1.21であったとしても、上記の「異種構造を有するユニット」の濃度は、2000ppm未満であるといえるので、上記相違点2は、実質的な相違点とはならない。 (3)相違点3について 引用文献1の段落[0121]には、上記第4の2(1)で示した「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」について、「高温下での熱安定性(耐熱性)が大幅に改善された」芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる旨記載され、同[0302]には、「耐衝撃性等のポリカーボネート樹脂本来の特性を維持しつつ、高分子量でありながら高流動性を与える連結高分子量化されたポリカーボネートの利点を有し、しかも耐熱性が格段に向上した芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる」旨記載されており、同[表7]には、実施例20で得られた樹脂について、高温における滞留試験の前後におけるMw保持率及びYI値変化量が少ないことが、具体的なデータとともに示されていることから、実施例20で得られた引用発明1aの芳香族ポリカーボネート樹脂は、高温下での熱安定性(耐熱性)に優れ、耐衝撃性を保持しながら流動性が向上した樹脂であるといえる。また、同[0020]及び[0025]にも記載されるとおり、ポリカーボネート樹脂の技術分野において一般に、流動性を改良しようとすると耐衝撃性等が低下する、つまり、流動性と耐衝撃性とはいわゆるトレードオフの関係にあるといえる。一方、同[0004]にはポリカーボネート樹脂が耐熱性、耐衝撃性に優れることが記載されており、また、本願出願日時点の技術常識を示す文献として引用した引用文献5の摘記6(2)にも記載されるとおり、ポリカーボネート樹脂が耐衝撃性を利点としていることや、さらに高い機械的強さや耐熱性を要求される場合には、強化材料の複合化が盛んに行われていることが当業者の技術常識であったといえる。そうすると、引用発明1aにおいて、ポリカーボネート樹脂の流動性の向上にともなって低下する耐衝撃性を補うことや、更に耐熱性、機械的強度を改善するという課題は、当業者ならば認識するといえる。 ここで、引用文献1の段落[0364]には、上記第4の2(1)で示した「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」について、「さらに本発明に於いて、上記熱安定化剤、加水分解安定化剤の他に、酸化防止剤、顔料、染料、強化剤や充填剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良材、帯電防止剤等を添加することができる。」と記載され、この記載から、引用文献1には、実施例20で得られた引用発明1aに対しても強化剤や充填剤を配合することが示唆されているといえる。 そして、引用文献5の摘記6(1)?(4)に記載されるとおり、ポリカーボネート樹脂に対し、補強効果を付与し、機械的特性を向上させることを目的として、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク等を10?30%程度の配合比で配合することは、当業者における技術常識である。また、引用文献5の表5.4(摘記6(3))には、引張り特性、衝撃特性、耐熱性を付与するためにガラス繊維を用いることが記載され、引用文献2の段落【0002】にも記載されるとおり、強度等を向上させるため、樹脂の補強効果を発揮するガラス繊維等の無機充填材を配合することは、当業者における技術常識であり、同文献の請求項1?2、段落【0028】?【0029】には、補強効果を発揮する無機充填材として、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク等が記載され、その配合量を、芳香族ポリカーボネート100重量部に、無機充填材1?300重量部とすることも記載されている。これらの記載から、ポリカーボネート樹脂の技術分野において、引張り特性、衝撃特性、耐熱性等を向上させるため、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク等の無機充填材を含有させ、その含有量を、ポリカーボネート100重量部に対して1?300重量部程度とすることは、本願出願時、周知の技術事項であったといえる。 してみると、引用発明1aの芳香族ポリカーボネート樹脂において、衝撃特性、耐熱性、引張り特性等をさらに向上させるため、配合することが示唆された充填剤として、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク等の無機充填剤を含有させ、その含有量を、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して3?200重量部とし、樹脂「組成物」とすることは、単に周知技術を付加したものであって、引用文献5及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことである。 (4)本願発明1の効果について まず、本願発明1が引用発明1aと比較して有利な効果を奏するか否かについて検討するが、本願発明1と引用発明1aとを比較すると、上記1、2(1)及び(2)で述べたように、両者は、「ガラス繊維、ガラスビーズ及びガラスフレークからなる群から選ばれる少なくとも1種であ」る「無機充填剤」を特定量含有するか否かにおいて実質的に相違するので、この相違点による有利な効果について検討する。 本願明細書の段落【0009】には、「特に特定の環状カーボネートが所定量以下で含むポリカーボネート樹脂と、各種無機充填剤とを配合することで、実用上充分なシャルピー衝撃強度及び耐湿熱性を有するポリカーボネート樹脂組成物を構成し得ることを見出し、本発明に到達した。」と記載され、同【0029】には、「本発明によれば、シャルピー衝撃強度及び耐湿熱性に優れる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。」と記載されていることから、本願発明1の効果は、「シャルピー衝撃強度及び耐湿熱性に優れる」ことであると把握でき、本願明細書の【0217】?【0218】に、実施例1?2及び比較例1?2のシャルピー衝撃強度、耐湿熱性の試験におけるデータが示されている。 一方、引用文献1には、ポリカーボネート樹脂が耐熱性、耐衝撃性に優れることが記載され、引用文献2,5には、引張り特性、衝撃特性、耐熱性を付与するためにガラス繊維等の無機充填材を用いることが記載されていることからすれば、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維等を配合することにより、引張り特性、耐衝撃性、耐熱性等が改善することは、一定の予測がされるといえる。 ここで、本願明細書の実施例1?2及び比較例1?2に基づいて当該効果をより詳細に検討する。 芳香族ポリカーボネート樹脂として実施例1、2はPC-1、比較例1、2はPC-2を用いるものであり、本願明細書の段落【0179】?【0215】の記載及び表1を参照するに、当該PC-1は、芳香族ポリカーボネートプレポリマーと脂肪族ジオールを用いてエステル交換触媒の存在下に反応させる高分子量化工程と前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程を経た芳香族ポリカーボネート樹脂であって、重量平均分子量が47200、Mw/Mnが2.3、末端水酸基濃度が400ppm、環状カーボネート量が7ppm、異種構造量が500ppm、N値1.19であるのに対し、当該PC-2は、芳香族ポリカーボネートプレポリマーを単に高分子量化反応させた芳香族ポリカーボネート樹脂であって、重量平均分子量が48000、Mw/Mnが2.6、末端水酸基濃度が1100ppm、環状カーボネート量がなく、異種構造量が2000ppm、N値が1.29である。つまり、PC-2は、末端水酸基濃度、環状カーボネート量及び異種構造量の点が本願発明1を満足しない芳香族ポリカーボネート樹脂であると認識できる。 また、これらの樹脂を用いて調製した樹脂組成物の評価結果は、機械的強度を評価するシャルピー衝撃試験(4mm、ノッチ有)(kJ/m^(2))については、当該PC-1を含む実施例1が15、実施例2が10であり、当該PC-2を含む比較例1は9、比較例2は5、同様に機械的強度を評価するシャルピー衝撃試験(4mm、ノッチ無)(kJ/m^(2))については、当該PC-1を含む実施例1が62、実施例2が50であり、当該PC-2を含む比較例1は55、比較例2は30であり、湿熱性を評価する湿熱試験のΔQについては、当該PC-1を含む実施例1が3、実施例2が10であり、当該PC-2を含む比較例1が5、比較例2が20である。 そして、ポリカーボネート樹脂以外の配合処方が同一である実施例1と比較例1、実施例2と比較例2をそれぞれ比較してみると、PC-2を含む比較例1よりも、PC-1を含む実施例1が、シャルピー衝撃試験の値が大きく、ΔQの値が小さく、また、PC-2を含む比較例2よりも、PC-1を含む実施例2が、シャルピー衝撃試験の値が大きく、ΔQの値が小さくなっている。これらのことから、PC-1を含む実施例1、2がPC-2を含む比較例1、2よりも、シャルピー衝撃強度、耐湿熱性が改善されたとの効果を奏することが具体的なデータとともに示されているといえるところ、実施例1と比較例1、及び、実施例2と比較例2のそれぞれの配合処方の異なる点は、芳香族ポリカーボネート樹脂のみであるから、当該効果は、特定の製造方法により得られた、特定の芳香族ポリカーボネート樹脂を用いた組成物により奏されるものと認識できる。しかしながら、当該効果が、特定の無機充填剤を配合したことにより奏されるものであるとは認識できない。 してみると、引用発明1aにおいて、「ガラス繊維、ガラスビーズ及びガラスフレークからなる群から選ばれる少なくとも1種であ」る「無機充填剤」を特定量配合したことにより奏される効果が、格別であるとはいえない。 次に、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物全体の効果として検討したとしても、引用文献5の表5.4(摘記6(3))にも記載されるとおり、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維を配合することにより、衝撃特性が向上することは、当業者に周知の技術事項であり、ガラス繊維などの無機充填剤を芳香族ポリカーボネート樹脂に配合した樹脂組成物の機械的強度を測定するために、シャルピー衝撃試験を行うことは、よく知られていることである(この点について、必要であれば、引用文献3の段落【0091】?【0106】、表3、4、引用文献4の段落【0158】、表3等参照。)ので、本願発明1の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のシャルピー衝撃試験に基づく機械的強度については、当業者が予測できないほど格別なものであるとはいえない。さらに、引用文献1の段落[0120]にも記載されるとおり、芳香族ポリカーボネート樹脂は、低平衡吸水率、耐熱性、耐加水分解性といった物性に優れることが、当業者に周知の技術事項であって、低平衡吸水率、耐熱性、耐加水分解性といった物性は、高温、高湿環境下における耐性と関係するものと理解できるし、上記(3)で述べたとおり、引用発明1aのポリカーボネート樹脂は、耐熱性に優れるものであり、引用文献5の表5.4(摘記6(3))にも記載されるとおり、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維を配合することにより、耐熱性が向上することは、当業者に周知の技術事項であるから、本願発明1が耐湿熱性に優れるという効果が、予測できないほど顕著なものであるとはいえない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1a、周知技術及び引用文献2,5に記載された事項、又は、引用発明1a、周知技術及び引用文献2?5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 本願発明1と引用発明1bとの対比及び判断 1 対比 本願発明1と引用発明1bを対比する。 引用発明1bの「5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン」は、本願発明1の「「下記一般式(IIa)で表される環状カーボネート」 「【化3】 (式中、Raは、エチル基を表し、Rbは、ブチル基を表す)。」に相当する。 引用発明1bの「3000ppm以下含む」は、本願発明1の「0.1ppm以上3000ppm以下である」と重複一致する。 引用発明1bの「ポリカーボネート樹脂組成物」は、本願発明1の「芳香族ポリカーボネート樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「芳香族ポリカーボネート樹脂と、下記一般式(IIa)で表される環状カーボネートとを含み、下記一般式(IIa)で表される環状カーボネートが、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して0.1ppm以上3000ppm以下である、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。 【化3】 (式中、Raは、エチル基を表し、Rbは、ブチル基を表す)。」 そして、次の相違点4?7で相違する。 <相違点4> 芳香族ポリカーボネート樹脂に関し、本願発明1は、「下記一般式(I)で表される構造単位を有し、重量平均分子量が40,000?100,000の範囲内である」及び 「【化1】 (式中、p及びqは、0を表し、Xは、下記(Ia)の群から選択される基を表す) 【化2】 (ここで、R_(3)及びR_(4)は、メチル基を表す)」と特定されているのに対し、引用発明1bは、構造単位及び重量平均分子量が特定されていない点。 <相違点5> 本願発明1は、「芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が1000ppm以下であ」るのに対し、引用発明1bは、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度が特定されていない点。 <相違点6> 本願発明1は、「前記芳香族ポリカーボネート樹脂が、下記一般式(III)で表される構造単位を含み、その含有率が、前記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂中に2000ppm未満である」 「【化5】 (式中、Xは、一般式(I)におけるXと同義である。)」と特定されているのに対し、引用発明1bは、そのような特定がない点。 <相違点7> 本願発明1は、「無機充填剤が、ガラス繊維、ガラスビーズ及びガラスフレークからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、無機充填剤の含有量が、下記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂100質量部に対して3?200質量部であ」ると特定するのに対し、引用発明1bは、無機充填剤を含むことが特定されていない点。 2 判断 (1)相違点4について 引用文献1の段落[0302]には、上記第4の2(1)で示した「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」において、「用いられる芳香族ポリカーボネートは、上記ポリカーボネート共重合体の製造に用いられるのと同様に、前記一般式(II)で示される構造を主たる繰り返し単位とする重縮合ポリマー(芳香族ポリカーボネートプレポリマー)である。」と記載され、同[0200]?[0204]には一般式(II)が記載され、同[0205]?[0209]には、「上記一般式(II)で表される構造単位を誘導する芳香族ジヒドロキシ化合物として」、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが記載されている。そして、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンは、引用文献1の実施例20においても使用されている。 ここで、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導された一般式(II)で示される構造は、同式における「p及びq」が0であり、「X」が (ここで、R_(3)及びR_(4)は、メチル基を表す) なる構造である。 そうすると、引用発明1bにおいて、「芳香族ポリカーボネート」として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導された一般式(II)で示される構造を主たる繰り返し単位とする重縮合ポリマー(芳香族ポリカーボネートプレポリマー)を用いることは、当業者が容易に想到し得たことであり、それを高分子量化したものは、「一般式(II)で示される構造」を有するものといえるから、得られた「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂」は、本願発明1の「下記一般式(I)で表される構造単位」及び 「【化1】 (式中、p及びqは、0を表し、Xは、下記(Ia)の群から選択される基を表す) 【化2】 (ここで、R_(3)及びR_(4)は、メチル基を表す)」との構成を備えることとなる。 また、引用文献1の段落[0367]には、上記第4の2(1)で示した「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」により得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)が30,000?100,000であることが記載されている。 そうすると、引用発明1bの「芳香族ポリカーボネート樹脂」の重量平均分子量(Mw)は30,000?100,000であるといえ、本願発明1の「重量平均分子量が40,000?100,000の範囲内」と重複一致する。 (3)相違点5について 引用文献1の段落[0309]には、上記第4の2(1)で示した「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」で用いられる芳香族ポリカーボネートプレポリマーについて、末端水酸基濃度が「1500ppm以下が好ましく、さらに好ましくは1000ppm以下が好適であ」り、「この範囲を超える水酸基末端」「では脂肪族ジオール化合物とのエステル交換反応によって十分な高分子量化の効果が得られないおそれがある」旨記載されている。そうすると、引用発明1bの「芳香族ポリカーボネート」は、上記「高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」に用いるプレポリマーであるから、末端水酸基濃度が1000ppm以下であるといえる。そして、上記第5の2(1)で述べたとおり、芳香族ポリカーボネートプレポリマーを脂肪族ジオール化合物で高分子量化した「芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」により得られた「芳香族ポリカーボネート樹脂」の末端水酸基濃度は、原料である芳香族ポリカーボネートプレポリマーの末端水酸基濃度より少なくなることが明らかであるから、引用発明1bの「芳香族ポリカーボネート樹脂」の末端水酸基濃度は、1000ppm以下であるということができる。 したがって、上記相違点5は、実質的な相違点ではない。 仮に、この点で相違するとしても、脂肪族ジオール化合物とのエステル交換反応によって十分に高分子量化するために、反応前の芳香族ポリカーボネートプレポリマーの末端水酸基を少なくし、引用発明1bの「芳香族ポリカーボネート樹脂」の「末端水酸基濃度」を1000ppm以下とすることは、引用文献1に記載された事項に基づき、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点6について 上記第5の2(2)で述べたのと同様に、引用発明1bの芳香族ポリカーボネート樹脂には、引用文献1の段落[0252]?[0253]に例示された異種構造を有するユニットが含まれるものと解され、該ユニットは、本願発明1の「下記一般式(III)で表される構造単位を含」む 「【化5】 (式中、Xは、一般式(I)におけるXと同義である。)」に相当する。また、上記第5の2(2)で述べたのと同様に、引用発明1bの芳香族ポリカーボネート樹脂は、該「異種構造を有するユニット」の含有量が少ないものであるといえる。 そして、上記第5の2(2)で述べたとおり、本願明細書の段落【0054】、【0063】、【0111】、【0121】、【表1】の記載から、N値がより低いものは異種構造量が少ないことが理解でき、少なくとも、「芳香族ポリカーボネートプレポリマーと特定のジオール化合物とをエステル交換触媒の存在下に反応させて、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を得る高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含む」方法によって製造され、N値が1.29より小さい値であれば、得られる「芳香族ポリカーボネート樹脂」の異種構造量は2000ppm未満であるものといえる。 そうしてみると、引用発明1bの「芳香族ポリカーボネートと、2-ブチル-2-エチルプロパン-1,3-ジオールとを、エステル交換触媒の存在下に反応させて高分子量化する高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とをを含む高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法」は、上記の「芳香族ポリカーボネートプレポリマーと特定のジオール化合物とをエステル交換触媒の存在下に反応させて、高分子量化された芳香族ポリカーボネート樹脂を得る高分子量化工程と、前記高分子量化工程で副生する環状カーボネートの少なくとも一部を反応系外へ除去する環状カーボネート除去工程とを含む」方法に相当し、引用発明1bのN値は1.25以下であるから、上記の「異種構造を有するユニット」の濃度は、2000ppm未満であるといえる。 してみると、引用発明1bの芳香族ポリカーボネート樹脂は、「下記一般式(III)で表される構造単位を含み、その含有率が、前記一般式(I)で表される構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂中に2000ppm未満である 【化5】 (式中、Xは、一般式(I)におけるXと同義である。)」ものといえる。 したがって、上記相違点6は、実質的な相違点ではない。 (4)相違点7について 上記第5の2(3)と同様に、引用発明1bの芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、衝撃特性、耐熱性、引張り特性等を向上させるため、配合することが示唆された充填剤としてガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク等の無機充填剤を含有させ、その含有量を、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して3?200重量部とすることは、単に周知技術を付加したものであって、引用文献5及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことである。 (5)本願発明1の効果について 上記第5の2(4)と同様の判断である。 (6)まとめ したがって、本願発明1は、引用発明1b、周知技術及び引用文献2,5に記載された事項、又は、引用発明1b、周知技術及び引用文献2?5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 審判請求人の主張について 1 審判請求人(以下「請求人」という。)の主張 請求人は、平成31年3月27日提出の意見書において、以下の点を主張する。 <主張1>「引用文献2に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐熱老化性や滞留安定性に優れることが開示されているが(段落[0037]乃至[0040]参照)、本発明に係る効果、すなわち無機充填剤の添加による、耐衝撃性および耐湿熱性の改善については何ら示されていない。すなわち、引用文献2からは、無機充填剤によって、芳香族ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性および耐湿熱性を改善するという動機付けは得られない。」ことから、引用発明1a及び1bにおいて、引用文献2の記載を参酌して、特定の無機充填剤を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に係る発明を容易になし得るとはいえない。 <主張2>「実施例1と2の対比、および比較例1と2の対比から、難燃剤、離型剤等の添加剤の添加によりシャルピー衝撃強度および耐湿熱性の低下が認められるが、特定の環状カーボネート(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン)を含むビスフェノールA由来の構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(PC-1)と無機充填剤を含む樹脂組成物における低下の程度が、特定の環状カーボネート(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン)を含まないビスフェノールA由来の構造単位を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(PC-2)と無機充填剤を含む樹脂組成物に比べると、抑制されていることもわかる。 本発明の樹脂組成物のこのような効果は、これらの添加剤について言及の無い引用文献1や、耐衝撃性および耐湿熱性の改善については何ら裏付けられていない引用文献2に記載の発明から、予想できない優れたものである。」 2 請求人の主張の検討 (1)主張1について 引用文献2には、無機充填剤を配合することによって、芳香族ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性および耐湿熱性を改善することは、直接的には記載されていないが、上記第5の2(3)及び第6の2(4)で示したとおり、ポリカーボネート樹脂の技術分野において、耐衝撃性等の機械的特性や耐熱性を向上させるために、樹脂の補強効果を有するガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ等の無機充填剤を配合することは、本願出願日時点において、当業者に周知の技術事項であったので、引用発明1a又は1bにおいて、当該無機充填剤を配合することは、動機付けがあるものであり、当業者が容易になし得ることである。また、上記第5の2(4)でも述べたとおり、本願発明1の耐衝撃性および耐湿熱性を改善するという効果が、芳香族ポリカーボネート樹脂に無機充填剤を配合したことにより奏される効果であるとはいえない。 よって、請求人の上記主張1は、採用しない。 (2)主張2について 請求人は、実施例1と2の対比、および比較例1と2の対比から、本願発明1に係る特定の特定の環状カーボネート(5-ブチル-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(PC-1)と無機充填剤を含む樹脂組成物が、特定の環状カーボネートを含まない芳香族ポリカーボネート樹脂(PC-2)と無機充填剤を含む樹脂組成物と比較して、難燃剤、離型剤等の添加剤を添加したときの耐衝撃性および耐湿熱性の低下が抑制されていることから、本願発明1の効果を主張しているが、この「耐衝撃性および耐湿熱性の低下が抑制され」るという効果は、上記実施例1,2及び比較例1,2で示される特定の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC-1)と特定の無機充填剤にさらに、難燃剤、離型剤等の添加剤が配合された樹脂組成物が奏する効果であって、特定の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC-1)と特定の無機充填剤のみが配合された樹脂組成物が奏する効果ではない。してみると、「耐衝撃性および耐湿熱性の低下が抑制され」るという効果が、本願発明1が奏する効果であると認識することはできない。 したがって、上記第5の2(4)及び第6の2(5)で述べたとおり、引用発明1a又は1bにおいて、無機充填剤を配合したことによる効果が格別であるとはいえない。 なお、上述のとおり、請求人の主張は、本願発明1の効果を述べたものとはいえないが、念のため請求人の主張を検討したとしても、以下のとおり、当該効果が顕著であるとはいえない。 上記主張2における、耐衝撃性および耐湿熱性の低下が抑制されるという効果は、実施例1、2の差と比較例1、2の差とを比較して示されるものであって、実施例1,2と比較例1,2の配合処方において異なる点は、芳香族ポリカーボネート樹脂のみであるから、当該効果は、特定の芳香族ポリカーボネート樹脂を用いた組成物により奏されるものと認識できる。 ここで、引用文献1の段落[0302]には、引用発明1a及び1bの「芳香族ポリカーボネート樹脂」が、「耐衝撃性等のポリカーボネート樹脂本来の特性を維持」している旨記載されており、上記第5の(4)で述べたとおり、芳香族ポリカーボネート樹脂が高温、高湿環境下における耐性を有することも、引用文献1に示唆されている(同[0120])ことから、引用発明1a及び1bの「芳香族ポリカーボネート樹脂」は、耐衝撃性や耐湿熱性に優れる樹脂であるといえる。 そして、上記第5の(4)で述べたとおり、ポリカーボネート樹脂のガラス繊維を配合することにより、衝撃特性や耐熱性が向上することは、当業者に周知の技術事項であるし、ポリカーボネート樹脂とガラス繊維とを含有する組成物においては、両者は単に混合されているものであって、相互作用を生じるものとは認識できないから、それらを混合することにより予測できない相乗効果が奏されるものとも認識できない。 そうしてみると、特定の芳香族ポリカーボネート樹脂を用いた組成物とすることにより、耐衝撃性および耐湿熱性の低下が抑制されるという効果は、引用発明1a又は1bの芳香族ポリカーボネート樹脂自体が、耐衝撃性、耐湿熱性に優れるものであることに包含される効果であるといえ、引用文献1の記載から予測できないほど顕著なものであるとはいえない。 以上のとおりであるから、請求人の上記主張2は、採用しない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用発明1a、周知技術及び引用文献2,5に記載された事項、引用発明1a、周知技術及び引用文献2?5に記載された事項、引用発明1b、周知技術及び引用文献2,5に記載された事項、又は、引用発明1b、周知技術及び引用文献2?5に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-05-24 |
結審通知日 | 2019-05-28 |
審決日 | 2019-06-11 |
出願番号 | 特願2014-69513(P2014-69513) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C08L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 三原 健治、岡▲崎▼ 忠 |
特許庁審判長 |
近野 光知 |
特許庁審判官 |
佐藤 健史 武貞 亜弓 |
発明の名称 | 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 |
代理人 | 特許業務法人 津国 |