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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1353757 |
審判番号 | 不服2018-4253 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-03-29 |
確定日 | 2019-07-25 |
事件の表示 | 特願2017- 2377「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月30日出願公開、特開2017- 62514〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年6月23日(優先権主張平成25年8月10日)に出願した特願2014-128148号の一部を平成27年12月22日に新たな出願とした特願2015-249605号の一部を平成29年1月11日に新たな出願としたものであって、同年11月7日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月21日付けで手続補正がなされ、平成30年2月8日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年3月29日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成30年3月29日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の【請求項1】を、下記(2)に示す本件補正後の【請求項1】へと補正することを含むものである。 (1)本件補正前の【請求項1】 「記録材を収容する記録材収容部と、 前記記録材収容部から搬送された記録材にトナー像を形成する画像形成部と、 前記画像形成部により記録材に形成されたトナー像を熱定着する定着部と、 前記記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報を格納する格納部と、 画像形成装置の近傍の所定の位置に操作者が存在することを検出する検出部と、 画像形成命令を受ける前に前記検出部が操作者の存在を検出したことに伴い前記定着部の立上げ処理を開始させるとともに、前記格納部に格納された情報に応じて前記定着部の立上げ処理に要する時間が最長となる記録材のための立上げ処理を実行させる実行部と、を有し、 前記実行部は、前記定着部の立上げ処理中に画像形成命令を受けたことに伴い記録材の種類が判明した場合、判明した記録材の種類に応じた立上げ処理を実行させることを特徴とする画像形成装置。」 (2)本件補正後の【請求項1】 「記録材を収容する複数の記録材収容部と、 前記記録材収容部から搬送された記録材にトナー像を形成する画像形成部と、 前記画像形成部により記録材に形成されたトナー像を熱定着する定着部と、 前記複数の記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報を格納する格納部と、 画像形成装置の近傍の所定の位置に操作者が存在することを検出する検出部と、 画像形成命令を受ける前に前記検出部が操作者の存在を検出したことに伴い前記定着部の立上げ処理を開始させるとともに、前記格納部に格納された情報に応じて前記定着部の立上げ処理に要する時間が最長となる記録材のための立上げ処理を実行させる実行部と、を有し、 前記実行部は、前記定着部の立上げ処理中に画像形成命令を受けたことに伴い記録材の種類が判明した場合、判明した記録材の種類に応じた立上げ処理を実行させることを特徴とする画像形成装置。」(下線は当審で付した。以下同じ。) 2 補正目的について 本件補正により、本件補正前の請求項1に、「複数の」記録材収容部と補正する事項(以下「補正事項」という。)が追加されたものである。 上記補正事項は、本件補正前の請求項1の「画像形成装置」における「記録材収容部」を、複数の記録材収容部、と具体的に特定したものであるから、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、上記補正事項は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、平成30年3月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の【請求項1】」に記載したとおりのものと認める。 (2)引用刊行物 ア 刊行物1 本願の優先日前の平成21年2月19日に頒布された特開2009-37208号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 画像形成装置において、 加熱されることによりトナー画像を媒体に定着させる定着手段と、 前記画像形成装置に対する所定の操作を検知する検知手段と、 前記定着手段の動作を制御するエンジン制御手段と、 前記エンジン制御手段との間で所定の開通処理を行うことにより使用可能となる通信線と、前記通信線と別個に設けられた専用線とを介して前記エンジン制御手段と接続された通信制御手段と、を備え、 前記通信制御手段は、前記検知手段から、前記操作を検知したことを示す検知信号を受信し、前記検知信号を受信した場合に、ユーザによる前記画像形成装置の操作を検知したことを示すユーザ操作信号を、前記開通処理の完了前に前記専用線を介して前記エンジン制御手段に送出し、 前記エンジン制御手段は、前記ユーザ操作信号を受信したか否かを判断し、前記ユーザ操作信号を受信したと判断した場合に前記定着手段を加熱するように制御すること、 を特徴とする画像形成装置。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、画像形成装置、および定着加熱制御方法に関する。」 (ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、電源投入時や省エネモード復帰時に定着部が所定の温度以下であると判断されると、画像形成を行わない場合であっても定着部を加熱するため、無駄な電力を消費してしまうという問題点があった。 【0006】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電源投入時や省エネモード復帰時において迅速に画像形成することができるとともに、無駄な定着部の加熱を行うことがない画像形成装置、および定着加熱制御方法を提供することを目的とする。」 (エ)「【0010】 本実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態は、画像形成装置であるコピー機能、ファクシミリ(FAX)機能、プリント機能、スキャナ機能および入力画像(スキャナ機能により読取られた原稿画像や、プリンタあるいはFAX機能により入力された画像)を配信する機能等を複合したいわゆる複合機(MFP:MultiFunction Peripheral)に本発明を適用した例である。 … 【0012】 本実施の形態にかかる複合機100は、省エネ解除スイッチ101と、圧板開閉センサ102と、原稿セットセンサ103と、主電源スイッチ104と、コントローラ部110と、エンジン制御部120と、定着部130とを備えている。コントローラ部110と、エンジン制御部120は、汎用PCIバス140および専用線150で接続されている。」 (オ)「【0020】 通信制御部111は、省エネ解除スイッチ101、圧板開閉センサ102、原稿セットセンサ103、主電源スイッチ104等に接続される。また、通信制御部111は、これらのスイッチやセンサから検知信号を受信した場合に、受信した検知信号に応じた値を省エネ復帰要因信号および復帰判別信号に設定する。そして、通信制御部111は、省エネ復帰要因信号および復帰判別信号を専用線150を介してエンジン制御部120に送出する。 【0021】 ここで、省エネ復帰要因信号とは、ユーザが複合機100自体を操作することによって省エネモードから復帰したか否かを示す情報である。上述した省エネ解除スイッチ101、圧板開閉センサ102、原稿セットセンサ103から検知信号を受信した場合は、通信制御部111は、省エネ復帰要因信号に“0(Low)”を設定する。省エネ復帰要因信号に“0(Low)”が設定された場合とは、複合機100の周辺にユーザが存在することを意味する。また、省エネ解除スイッチ101、圧板開閉センサ102、原稿セットセンサ103から検知信号を受信しない場合は、通信制御部111は、省エネ復帰要因信号に“1(High)”を設定する。省エネ復帰要因信号に“1(High)”が設定された場合とは、ネットワークからデータが送信された場合等のように、複合機100の周辺にユーザが存在しないことを意味する。また、本発明にかかるユーザ操作信号は、省エネ復帰要因信号に“0(Low)”が設定されている場合、すなわちユーザ操作によって省エネモードから復帰した場合を示している。なお、省エネ復帰要因信号に“0”を設定する場合は、上述した場合のみに限らず、複合機100の近辺に存在するユーザによって操作される他のスイッチまたはセンサなどからの検知信号を受信した場合に設定するようにしてもよい。」 (カ)「【0045】 省エネ復帰要因信号に“0”が設定されていると判断した場合は(ステップS303:Yes)、定着制御部122は、通信制御部121によって受信された経過時間信号に“1”が設定されているか否かを判断する(ステップS304)。経過時間信号=“1”は、前回の作像調整から所定時間が経過したことを意味する。また、経過時間信号=“0”は、前回の作像調整から所定時間が経過していないことを意味する。経過時間信号に“1”が設定されていないと判断した場合は(ステップS304:No)、定着制御部122は定着部立上げ処理のみを行う(ステップS305)。定着部立上げ処理の詳細は後述する。なお、定着制御部122は、主電源スイッチ104から立ち上がった場合も(ステップS302:No)、定着部立上げ処理のみを実行する。これは、主電源スイッチ104から立ち上がった場合にはコントローラ部110にも電力が供給されていないため、コントローラ部110のタイマ部112で前回作像調整してからの経過時間を計時することができず、作像調整の要不要が判断できないためである。この場合は、定着制御部122は定着部立上げ処理のみを実行し、汎用PCIバス140が開通した後に必要であれば作像調整処理を実行する。 … 【0049】 このように、コントローラ部110とエンジン制御部120との間での汎用PCIバス140の開通処理が完了することを待たずに、コントローラ部110から専用線150を介して送出された省エネ復帰要因信号、復帰判別信号、経過時間信号に基づいてエンジン制御部120が定着部130を加熱するか否かを判断した上で定着部130への加熱を開始することができるため、印刷可能となるまでの待ち時間を短縮できる。また、エンジン制御部120で定着部130への加熱が必要か否かを判断し、不要な場合には定着部130への加熱を行わず、必要な場合のみ定着部130への加熱を行うため、無駄な電力を消費することがなく、電力を節約することができる。」 (キ)「【0064】 複合機100は、コピー原稿(画像)を読み込むスキャナボード(SBU)511と、画像データを画像形成ドラム上に書き込むLDBボード512と、複合機100の負荷および各制御部に電源を供給する安定化電源回路514と、定着部130の定着加熱部への電力供給回路519、ゼロクロス検出回路を含むAC制御回路518等で構成されている。」 (ク)上記(ア)、(エ)及び(キ)より、画像形成装置は、トナー画像を媒体に定着させることから、媒体を収容する収容部と、媒体が収容部から画像形成部に搬送されること、及び収容部から搬送される媒体にトナー画像を形成する手段を備えることは、自明な事項である。 (ケ)上記(ア)及び(オ)より、ユーザによる画像形成装置の操作を検知したことを示すユーザ操作信号は、画像形成装置の周辺にユーザが存在することを意味するといえる。 そうすると、上記(ア)乃至(ケ)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「画像形成装置において、 媒体を収容する収容部と、 収容部から搬送される媒体にトナー画像を形成する手段と、 加熱されることによりトナー画像を媒体に定着させる定着手段と、 前記画像形成装置に対する所定の操作を検知する検知手段と、 前記定着手段の動作を制御するエンジン制御手段と、 前記エンジン制御手段との間で所定の開通処理を行うことにより使用可能となる通信線と、前記通信線と別個に設けられた専用線とを介して前記エンジン制御手段と接続された通信制御手段と、を備え、 前記通信制御手段は、前記検知手段から、前記操作を検知したことを示す検知信号を受信し、前記検知信号を受信した場合に、ユーザによる前記画像形成装置の操作を検知したことを示すものであって、画像形成装置の周辺にユーザが存在することを意味するユーザ操作信号を、前記開通処理の完了前に前記専用線を介して前記エンジン制御手段に送出し、 前記エンジン制御手段は、前記ユーザ操作信号を受信したか否かを判断し、前記ユーザ操作信号を受信したと判断した場合に、前記定着手段を加熱するように制御する、画像形成装置。」 イ 刊行物2 本願の優先日前の平成18年2月2日に頒布された特開2006-30823号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 印刷命令を受け付ける受付手段と、 複数の給紙カセットと、各給紙カセットに収納される用紙の種類を対応付けて記憶する記憶手段と、 給紙カセットが指定されると、指定された給紙カセットと対応付けて記憶された用紙の種類に基いて、上記受付手段が印刷命令を受け付けるまでの間、定着ローラが保持されるデフォルト定着温度を決定する温度決定手段と、 上記受付手段が印刷命令を受け付けるまで、デフォルト定着温度で定着ローラを保持する温度制御手段とを備えたこと特徴とする画像形成装置。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、トナー画像を定着ローラで用紙に定着させる機構を備えた画像形成装置に関する。」 (ウ)「【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の画像形成装置は、複数の給紙カセットと各給紙カセットに収納された用紙の種類が対応付けられた情報を使用して、印刷が実行できない時間を無くす。 【0009】 本発明の画像形成装置は、複数の給紙カセットと各給紙カセットに収納される用紙の種類を対応付けて記憶する記憶手段を備える。 【0010】 さらに、画像形成装置は、印刷命令を受け付ける受付手段と、給紙カセットが指定されると、指定された給紙カセットと対応付けて記憶された用紙の種類に基いて、上記受付手段が印刷命令を受け付けるまでの間、定着ローラが保持されるデフォルト定着温度を決定する温度決定手段を備える。 【0011】 従って、頻繁に使用する用紙が収納される給紙カセットを指定しておくと、その用紙に対応する定着温度がデフォルト定着温度として決定される。 【0012】 画像形成装置は、上記受付手段が印刷命令を受け付けるまで、デフォルト定着温度で定着ローラを保持する温度制御手段を備える。 【0013】 よって、予め頻繁に使用する用紙が収納される給紙カセットを指定しておくと、印刷命令が受け付けられるまでの間、頻繁に使用する用紙の定着温度で定着ローラが保持される。」 (エ)「【0020】 記憶手段306には、図4に示すように、給紙カセットA、B、Cと、各給紙カセットA、B、Cに収納される用紙の種類が対応付けて記憶されている。給紙カセットA、B、Cと、各給紙カセットA、B、Cに収納される用紙の種類の記憶手段306への登録は、ユーザやサービスマンが事前に行ったものである。」 (オ)「【0025】 上記のように薄紙の定着温度で定着ローラ208が保持されているときに、ユーザが、操作パネル105で用紙の種類を指定して、図1に示すスタートキー106を押下したとする。スタートキー106が押下されると、受付手段305は、スタートキー106が押下させるときに操作パネル105にて指定された用紙の種類を温度決定手段303に通知すると共に、印刷手段307に印刷命令があった旨を通知する。 … 【0027】 上記のように、ここでは薄紙の定着温度がデフォルト定着温度であるので、ユーザが薄紙を指定してスタートキー106を押下した場合、温度決定手段303は、通知された用紙の種類の定着温度が現在のデフォルト定着温度であると判断する。 【0028】 このように判断した場合、温度決定手段303は、印刷の許可を印刷手段307に通知する。印刷手段307は、受付手段305から印刷命令を受け、温度決定手段303から印刷の許可を受けると、図2に示す印刷部103を駆動して印刷を実行する。 【0029】 よって、スタートキー106が押下される前から定着ローラ208は薄紙の定着温度となっているので、薄紙を指定した場合は、直ぐに印刷を実行できる。 【0030】 一方、ユーザが普通紙や厚紙を指定してスタートキー106を押下した場合、温度決定手段303は、通知された用紙の種類の定着温度は現在のデフォルト定着温度でないと判断する。 【0031】 このように判断した場合、温度決定手段303は、ユーザが指定した用紙の定着温度を温度制御手段301に通知する。温度制御手段301は、温度決定手段303からユーザが指定した用紙の定着温度が通知されると、定着ローラ208が通知された温度となるようにヒータ302を制御する。温度制御手段301は、定着ローラ208が通知された温度となると、印刷手段307に印刷を許可する。 【0032】 印刷手段307は、受付手段305から印刷命令を受け、温度制御手段301から印刷の許可を受けると、図2に示す印刷部103を駆動して印刷を実行する。 【0033】 よって、薄紙以外の用紙を指定した場合、定着ローラ208が指定した用紙の定着温度になってから印刷が実行される。」 (カ)上記(オ)【0027】、【0029】及び【0030】より、薄紙の定着温度がデフォルト定着温度であるとき、ユーザが普通紙や厚紙を指定した場合、温度決定手段は、普通紙や厚紙の定着温度はデフォルト定着温度でないと判断するから、ユーザが用紙の種類を指定してスタートキーを押下し、ユーザが指定した用紙の種類と、デフォルト定着温度の決定に指定された用紙の種類とが異なる場合、温度決定手段は、通知された用紙の種類の定着温度は現在のデフォルト定着温度でないと判断するといえる。 そうすると、上記(ア)乃至(カ)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「印刷命令を受け付ける受付手段と、 複数の給紙カセットと、各給紙カセットに収納される用紙の種類を対応付けて記憶する記憶手段と、 頻繁に使用する用紙が収納される給紙カセットが指定されると、指定された給紙カセットと対応付けて記憶された用紙の種類に基いて、上記受付手段が印刷命令を受け付けるまでの間、定着ローラが保持されるデフォルト定着温度を決定する温度決定手段と、 上記受付手段が印刷命令を受け付けるまで、デフォルト定着温度で定着ローラを保持する温度制御手段とを備え、 ユーザが用紙の種類を指定してスタートキーを押下し、ユーザが指定した用紙の種類と、デフォルト定着温度の決定に指定された用紙の種類とが異なる場合、温度決定手段は、通知された用紙の種類の定着温度は現在のデフォルト定着温度でないと判断し、ユーザが指定した用紙の定着温度を温度制御手段に通知し、温度制御手段は、温度決定手段からユーザが指定した用紙の定着温度が通知されると、定着ローラが通知された温度となるようにヒータを制御する、画像形成装置。」 ウ 刊行物3 本願の優先日前の平成25年6月6日に頒布された特開2013-109292号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 記録材上の画像を読み取る画像読み取り手段と、 前記画像読み取り手段により読み取られた画像に基づき記録材に画像を形成する画像形成手段と、 前記画像形成手段が画像の形成を行う記録材のサイズの選択がユーザによりなされる際にユーザにより操作される操作部と、 前記画像読み取り手段により画像が読み取られる前記記録材に予め定められた像が形成されている場合に、予め定められたサイズの選択が前記操作部にてできないようにする操作部制御手段と、 を備える画像形成装置。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、画像形成装置およびプログラムに関する。」 (ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の目的は、予め定められたサイズの記録材への意図しない画像の形成を抑制することにある。」 (エ)「【0066】 また、上記では説明を省略したが、画像形成装置1には、図1に示すように、画像形成装置1を操作するユーザを検知する検知センサSEを設けることが好ましい。このように検知センサSEを設けた場合、省エネモードから復帰してから一枚目の用紙Pが排出されるまでの時間をより短くすることができるようになる。ここで本実施形態では、モニタ18等に対する操作が予め定められた時間なされかった場合に、省エネモードに設定され、各部に対する給電が停止される。そして、検知センサSEによりユーザが検知された場合、通常モードに復帰し定着部200など各部への給電が再開される。 【0067】 ここで、省エネモードを解除するためのボタンを設けておき、このボタンがユーザにより押圧された際に省エネモードを解除する構成とすることもできるが、この場合、ボタンの押圧があった時点を開始点として各部への給電を再開する。一方で、本実施形態では、ユーザが画像形成装置1の前に立った時点でユーザが検知センサSEにより検知されて各部への給電が再開される。このため、本実施形態では、ボタン操作によって省エネモードが解除される場合に比べ、省エネモードからの復帰がより短い時間で行われるようになる。 【0068】 なお、コンビニエンスストアなどでは人の出入りが多く、検知センサSEにて単にユーザを検知する構成であると、省エネモードから復帰処理が頻繁になされてしまうおそれがある。付言すると、画像形成装置1が使用されないにも関わらず、画像形成装置1の前を単に人が通過することによって省エネモードからの復帰処理がなされてしまうおそれがある。 【0069】 このため、本実施形態では、まず、検知センサSEからユーザまでの距離が30cm以内である場合に検知センサSEによるユーザの検知がなされるようにしている。なお、上記30cmという値は、モニタ18へユーザが手を伸ばした際の画像形成装置1からユーザまでの距離を考慮して決定したものである。また、本実施形態では、予め定められた時間以上、検知センサSEによる検知がなされたときに、省エネモードからの復帰処理を行うようにしている。これにより、画像形成装置1が使用されないにも関わらず省エネモードからの復帰がなされることが抑制される。」 そうすると、上記(ア)乃至(エ)の記載事項から、刊行物3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「ユーザが画像形成装置の前であって、30cm以内に立った時点でユーザを検知する検知センサを設けた画像形成装置。」 エ 刊行物4 本願の優先日前の昭和60年8月24日に頒布された特開昭60-162276号公報(以下「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「3. 発明の詳細な説明 〔技術分野〕 本発明は、静電写真式画像記録装置、特に記録材である紙葉体の各搬送路に対応して定着温度を制御する画像記録装置に関する。 〔従来技術〕 従来、この種の静電式画像記録装置の現像済み顕画像の熱定着装置の定着温度は、使用可能な紙葉体のうち、最も高い温度で定着する必要のある紙葉体の種類に合わせて温度を設定していた。」(1頁右欄1?10行) そして、上記(ア)より、 「定着温度を、使用可能な記録材のうち、最も高い温度で定着する必要のある記録材の種類に合わせて温度を設定した画像形成装置。」 は、周知の技術手段といえる。(以下「周知の技術手段」という。) (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、 ア 後者の「媒体を収容する収容部」、「収容部から搬送される媒体にトナー画像を形成する手段」、「トナー画像を媒体に定着させる定着手段」、「ユーザ」及び「画像形成装置」は、それぞれ、前者の「記録材を収容する記録材収容部」、「記録材収容部から搬送された記録材にトナー像を形成する画像形成部」、「画像形成部により記録材に形成されたトナー像を熱定着する定着部」、「操作者」及び「画像形成装置」に相当する。 イ 後者の「エンジン制御手段」が「(ユーザによる前記画像形成装置の操作を検知したことを示す)ユーザ操作信号」を「受信したと判断した場合に画像形成装置の周辺にユーザが存在することを意味」するのであるから、後者の「エンジン制御手段」は、「画像形成装置の周辺にユーザが存在することを意味する」「ユーザ操作信号」を受信するものである。 他方、後者の「通信制御手段」は、検知手段から、操作を検知したことを示す検知信号を受信した場合に、「ユーザによる画像形成装置の操作を検知したことを示すユーザ操作信号」を、エンジン制御手段に送出するものである。 以上のことから、後者の「ユーザによる画像形成装置の操作を検知したこと」とは、「画像形成装置の周辺にユーザが存在することを意味する」ものといえる。 そして、後者の「通信制御手段」は、「検知手段から、(ユーザによる画像形成装置の)操作を検知したことを示す検知信号を受信」するものであることから、後者の「検知手段」は、「(ユーザによる前記画像形成装置の)操作を検知したことを示す検知信号」を送出するものであって、「(ユーザによる前記画像形成装置の)操作を検知」するものといえる。 そして、上記のとおり、後者の「ユーザによる画像形成装置の操作を検知したこと」とは、「画像形成装置の周辺にユーザが存在することを意味する」のであるから、後者の「検知手段」は、「画像形成装置の周辺にユーザが存在すること」を検出するといえる。 そして、後者の「画像形成装置の周辺」は、前者の「画像形成装置の近傍」に相当するから、前者の「検知部」と、後者の「検出部」とは、「画像形成装置の近傍に操作者が存在することを検出する」ものである点で共通する。 ウ 後者の「エンジン制御手段」は、「(検知手段から、)ユーザ操作信号を受信したか否かを判断し、前記ユーザ操作信号を受信したと判断した場合に」「定着手段を加熱するように制御する」ものであるところ、「(検知手段から、ユーザ操作信号を受信したと判断した)場合に定着手段を加熱するように制御する」とは、(検知手段から、ユーザ操作信号を受信したと判断した)場合に定着手段を加熱するよう立ち上げるものといえるから、後者の「『検知手段から、』『ユーザ操作信号を受信したか否かを判断し、前記ユーザ操作信号を受信したと判断した場合に前記定着手段を加熱するように制御する』『エンジン制御手段』」と前者の「画像形成命令を受ける前に前記検出部が操作者の存在を検出したことに伴い前記定着部の立上げ処理を開始させる実行部」とは、「(操作者が画像形成装置の近傍に存在することを検出する)検出部が操作者の存在を検出したことに伴い定着部の立上げ処理を開始させる実行部」との概念で共通する。 エ 引用文献1の【0056】?【0059】並びに【図5-1】及び【図5-2】を参酌すると、ユーザ操作信号は、バスが開通する前にコントローラ部からエンジン制御部へ送信されるものであるところ、引用発明1において、バスが開通するまでは印刷信号を送信できないものであることからすれば、後者の「ユーザ操作信号を受信したか否かを判断し、前記ユーザ操作信号を受信したと判断した場合」は、「画像形成命令を受ける前」であることは、技術常識に照らして明らかといえる。 してみると、前者の「検出部が操作者の存在を検出したこと」と後者の「ユーザ操作信号を受信した」こととは「画像形成命令を受ける前」である点で共通する。 したがって、両者は、 「記録材を収容する記録材収容部と、 前記記録材収容部から搬送された記録材にトナー像を形成する画像形成部と、 前記画像形成部により記録材に形成されたトナー像を熱定着する定着部と、 画像形成装置の近傍に操作者が存在することを検出する検出部と、 画像形成命令を受ける前に前記検出部が操作者の存在を検出したことに伴い前記定着部の立上げ処理を開始させる実行部と、を有する画像形成装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明が、記録材を収容する「複数の」記録材収容部と、「複数の記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報を格納する格納部」を有するのに対し、引用発明1は、その点が明らかでない点。 [相違点2] 検出部が、本願補正発明では、画像形成装置の近傍の「所定の位置」に操作者が存在することを検出するものであるのに対し、引用発明1は、操作者の位置を検出するものではない点。 [相違点3] 実行部が、本願補正発明では、「格納部に格納された情報に応じて定着部の立上げ処理に要する時間が最長となる記録材のための立上げ処理を実行させ」、「定着部の立上げ処理中に画像形成命令を受けたことに伴い記録材の種類が判明した場合、判明した記録材の種類に応じた立上げ処理を実行させる」ものであるのに対し、引用発明1は、単に、定着手段を加熱するよう制御するものである点。 (4)判断 上記各相違点について以下検討する。 ア [相違点1]及び[相違点3]について 引用発明2の「複数の給紙カセット」、「各給紙カセットに収納される用紙の種類を対応付けて記憶する記憶手段」は、それぞれ、本願補正発明の「複数の記録材収容部」、「複数の記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報を格納する格納部」に相当する。 そうすると、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明2に示されているといえる。 また、上記「(2)エ」に示したように、「定着温度を、使用可能な記録材のうち、最も高い温度で定着する必要のある記録材の種類に合わせて温度を設定した画像形成装置」は、周知の技術手段といえる。 一般に、記録材の坪量に対して、定着部の加熱時間及び加熱温度が比例関係にあることは技術的に自明な事項である。そうすると、記録材の定着温度が高ければ高いほど、立上げ処理に要する時間も長くなる。 してみると、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項における「立上げ処理に要する時間が最長となる記録材に合わせて立上げ処理を実行させる」ことも周知の技術手段といえる。 また、引用発明2の「温度制御手段」は、「受付手段が印刷命令を受け付けるまで」、「デフォルト定着温度で定着ローラを保持する」ものであるから、「受付手段が印刷命令を受け付けるまで」の期間及び「デフォルト定着温度で定着ローラを保持する」期間は、「定着部の立上げ処理中」といえる。 そして、引用発明2の受付手段が「印刷命令を受け付ける」ことは、本願補正発明の「画像形成命令を受けたこと」に相当し、引用発明2の「ユーザが用紙の種類を指定してスタートキーを押下」することは、「画像形成命令」を発することに相当することは、技術常識に照らして明らかといえる。 そして、引用発明2の「ユーザが用紙の種類を指定してスタートキーを押下し、ユーザが指定した用紙の種類と、デフォルト定着温度の決定に指定された用紙の種類とが異なる場合」、「ユーザが指定した用紙の定着温度を温度制御手段に通知」されるのであるから、「画像形成命令を受けたことに伴い記録材の種類が判明した場合」といえる。 そして、引用発明2は、「ユーザが用紙の種類を指定してスタートキーを押下し、ユーザが指定した用紙の種類と、デフォルト定着温度の決定に指定された用紙の種類とが異なる場合」、「温度制御手段は、温度決定手段からユーザが指定した用紙の定着温度が通知されると、定着ローラが通知された温度となるようにヒータを制御する」ものであるから、「判明した記録材の種類に応じた立上げ処理を実行させる」ものといえる。 そうすると、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項における「定着部の立上げ処理中に画像形成命令を受けたことに伴い記録材の種類が判明した場合、判明した記録材の種類に応じた立上げ処理を実行させる」ことは、引用発明2に示されているといえる。 そして、引用発明1、引用発明2及び上記周知の技術手段のいずれも、画像形成装置である点で技術分野が共通し、引用発明1は「迅速に画像形成すること」を課題とし、引用発明2は、「印刷ができない時間を無く」すことを課題とする点で、両者は課題を共通し、画像形成装置において、迅速に画像形成することは自明の課題であって、上記周知の技術手段においても内在するものといえるから、引用発明1、引用発明2及び上記周知の技術手段のいずれも、課題を共通するものといえるから、引用発明1に、引用発明2及び上記周知の技術手段を適用し、記録材を収容する「複数の」記録材収容部と、「複数の記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報を格納する格納部」を有し、「格納部に格納された情報に応じて定着部の立上げ処理に要する時間が最長となる記録材のための立上げ処理を実行させ」、「定着部の立上げ処理中に画像形成命令を受けたことに伴い記録材の種類が判明した場合、判明した記録材の種類に応じた立上げ処理を実行させる」ものとすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 イ [相違点2]について 引用発明3の「画像形成装置の前」とは、「画像形成装置の近傍の所定の位置」といえるから、引用発明3の「ユーザが画像形成装置の前に立った時点でユーザを検知する検知センサ」は、上記相違点2に係る本願補正発明の「画像形成装置の近傍の所定の位置に操作者が存在することを検出する」ものに相当する。 そうすると、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明3に示されているといえる。 そして、引用発明1も引用発明3も、画像形成装置である点で技術分野が共通し、上記「(2)ア(ウ)」に示すように、引用発明1は、「電源投入時や省エネモード復帰時に定着部が所定の温度以下であると判断されると、画像形成を行わない場合であっても定着部を加熱するため、無駄な電力を消費してしまう」という課題を解決するもので、上記「(2)ウ(エ)」に示すように、引用発明3は、「画像形成装置1が使用されないにも関わらず省エネモードからの復帰がなされることを抑制」することを課題とするものであって、両者は、無駄な電力消費を抑制することを課題としている点で共通するものといえる。 よって、引用発明1に、引用発明3を適用し、「画像形成装置の近傍の所定の位置に操作者が存在することを検出する」ものとすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 エ 請求人の主張について (ア)「引用文献1におけるこの定着部立上げ処理の開始時点(パス開通前)に対し、画像形成命令を受ける時点は、図5-1,図5-2におけるエンジン起動t14,t24あるいはソフト準備t15、t25の期間内となる場合が考えられ、この場合、本願発明と異なり画像形成命令を受け取った後に定着部立上げ処理が開始されることとなります。」(審判請求書6頁下から3行?7頁2行)について 上記「(3)オ」で述べたように、一般に、印刷を実行するには、コントローラ部からエンジン制御部へ印刷信号を送信する必要があり、バス開通後でなければ、コントローラ部からエンジン制御部に印刷信号は送信できない。してみると、画像形成命令は、バス開通後のt16期間内にコントローラ部からエンジン制御部に送信されるものであって、定着部の立上げ処理が開始された後であることは、技術的に明らかなことである。 よって、上記請求人の主張は採用できない。 (イ)「引用文献2に記載のものは、最初から記録材の種類に応じた立上げ処理を行えば良いものであって、定着部の立上げ処理中における立上げ処理の変化を前提とする本願発明の構成b)と全く異なるもの」(審判請求書7頁3?5行)について 引用発明2は、「用紙に応じた定着温度になるまでの印刷が実行できない時間を無くし、印刷効率の低下を抑えた画像形成装置を提供すること」(【0007】)を課題とし、頻繁に使用する用紙が収納される給紙カセットを指定し、その用紙に対応する定着温度がデフォルト定着温度として決定することにより、前記課題を解決するものであるから、請求人が主張するように、最初から頻繁に使用する記録材とは異なる記録材の種類に応じた立上げ処理を行うことは、引用発明2の課題を解決するものとはならないから、そのような手段を採用することはできない。 (ウ)「そもそも、引用文献2(段落0012、0013)のようにスタンバイ温調(プリント終了後、次のプリント命令が届くまでずっと定着器を暖めておく)する装置(スタンバイ中もずっと加熱する定着装置)を、引用文献1のようにスタンバイ温調しない装置(スタンバイ中は加熱されないオンデマンド定着装置)に適用することは、互いに異質な定着装置を組み合わせることとなり、適用すること自体が不適切であると思料致します」(審判請求書7頁6?11行)について 本願補正発明も引用発明1も引用発明2も、画像形成命令を受ける前(受付手段が印刷命令を受け付けるまで)及び画像形成命令を受けたことに伴う定着部の処理に関する点で何ら相違するものではないから、上記請求人の主張は採用できない。 (エ)「引用文献3に記載のものは、本願発明の構成a)に関し引用文献1における課題(画像形成を行わない場合であっても定着部を加熱することで無駄な電力を消費してしまう)の解決と整合しない(引用文献3に記載のものは、ユーザ操作信号に依らないため、操作者が画像命令を指示しないで(コピーボタンを押さず)立ち去ってしまうようなケースにおいて、電力消費が発生する)こととなるため、引用文献1に適用すること自体が不適切であると思料されるものであり」(審判請求書7頁12?17行)について 上記イで述べたように、引用発明1と引用発明3とは、画像形成装置である点で技術分野が共通し、無駄な電力消費を抑制することを課題としている点で共通するものといえる。 また、引用発明1は、課題解決手段として、画像形成装置に対する所定の操作を検知する検知手段を採用し、また、引用発明3は、30cm以内に立った時点でユーザを検知する検知センサを採用している点で、両者は、画像形成装置に対する操作要因を検出する手段を設けている点でも共通するものである。 してみると、引用発明1に引用発明3を適用することは、何ら不適切ではなく、上記請求人の主張は採用できない。 (オ)「そもそも本願明細書の表1を含む段落0071乃至0073に記載されるように、記録材の種類として最も厚い厚紙が最も長い予備加熱時間を必要とするものではなく、定着部の立上げ処理に要する時間が最長となる記録材のための設定とすることは、定着温度が最も高い記録材厚さ設定に対する定着温度設定にすることと、何の関連性もなく、審査官による周知例の開示内容に関連する認定に誤りがあると言わざるを得ないものと思料致します。」(審判請求書7頁25行?8頁1行)について 上記ウで述べたように、「立上げ処理に要する時間が最長となる記録材に合わせて立上げ処理をおこなうこと」は周知の技術手段といえる。 よって、上記請求人の主張は採用できない。 (5)むすび 以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年12月21日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「記録材を収容する記録材収容部と、 前記記録材収容部から搬送された記録材にトナー像を形成する画像形成部と、 前記画像形成部により記録材に形成されたトナー像を熱定着する定着部と、 前記記録材収容部に収容された記録材の種類に対応する情報を格納する格納部と、 画像形成装置の近傍の所定の位置に操作者が存在することを検出する検出部と、 画像形成命令を受ける前に前記検出部が操作者の存在を検出したことに伴い前記定着部の立上げ処理を開始させるとともに、前記格納部に格納された情報に応じて前記定着部の立上げ処理に要する時間が最長となる記録材のための立上げ処理を実行させる実行部と、を有し、 前記実行部は、前記定着部の立上げ処理中に画像形成命令を受けたことに伴い記録材の種類が判明した場合、判明した記録材の種類に応じた立上げ処理を実行させることを特徴とする画像形成装置。」(以下「本願発明」という。) 2 引用刊行物 平成30年2月8日付けの拒絶査定に引用された刊行物、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用刊行物」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、上記「第2 3 (1)本願補正発明」で検討した本願補正発明の「複数の」記録材収容部との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明と引用発明1とを対比した場合の相違点は、実質的に、上記「第2 3 (3)対比」で挙げた相違点となるから、上記「第2 3 (4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明1、引用発明2、引用発明3及び上記周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、引用発明2、引用発明3及び上記周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-05-21 |
結審通知日 | 2019-05-28 |
審決日 | 2019-06-10 |
出願番号 | 特願2017-2377(P2017-2377) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 三橋 健二 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
森次 顕 藤本 義仁 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 近島 一夫 |
代理人 | 大田 隆史 |