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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1353765
審判番号 不服2018-7798  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-06 
確定日 2019-07-25 
事件の表示 特願2014- 9679「荷電粒子ビーム装置および加工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月30日出願公開、特開2015-138666〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年1月22日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成29年 6月26日付け:拒絶理由通知書
平成29年 9月 1日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 2月27日付け:拒絶査定(原査定、同年3月6日送達)
平成30年 6月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年6月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年6月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は、次のとおり補正された。

「 【請求項1】
荷電粒子ビームを試料に照射する荷電粒子ビーム鏡筒と、
前記荷電粒子ビームにより前記試料から発生する二次電子と、前記荷電粒子ビームを走査させる信号とに基づいて、前記荷電粒子ビームの照射結果を示す画像を取得する像形成部と、
第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔よりも、前記第1の領域に含まれる第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔が短くなるように前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行う際に参照する補正マークが含まれる前記第2の領域の画像を取得する際に、前記第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔よりも、前記第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔を短くすることによって前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御して、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行い、
前記像形成部は、前記制御部による前記荷電粒子ビーム鏡筒に対する制御により、前記第2の領域が前記第1の領域よりも拡大された画像を取得することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御し、ビットマップで指定されたピクセル領域毎に前記荷電粒子ビームを一回照射する照射処理を、各前記ピクセル領域内で照射位置が異なるように前記照射位置を移動させて複数回行う
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ビットマップのピクセルピッチよりも小さいピクセルピッチでドリフト補正領域のスキャンを行い、当該スキャンで得た情報に基づいてドリフト補正量を算出し、当該ドリフト補正量を前記ビットマップのピクセルピッチでのドリフト補正量に変換してドリフト補正を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記ビットマップの視野がFOV_Aであり、前記照射位置を移動させる量とピクセルサイズが同一の視野をFOV_Bとする場合、前記制御部は前記照射処理を(FOV_A/FOV_B)×(FOV_A/FOV_B)回行う
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
荷電粒子ビームにより試料から発生する二次電子と、前記荷電粒子ビームを走査させる信号とに基づいて、前記荷電粒子ビームの照射結果を示す画像を取得する像形成ステップと、
第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔よりも、前記第1の領域に含まれる第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔が短くなるように、前記荷電粒子ビームを前記試料に照射する荷電粒子ビーム鏡筒を制御する制御ステップと、
を含み、
前記制御ステップにおいて、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行う際に参照する補正マークが含まれる前記第2の領域の画像を取得する際に、前記第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔よりも、前記第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔を短くすることによって前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御して、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行い、
前記像形成ステップにおいて、前記制御ステップによる前記荷電粒子ビーム鏡筒に対する制御により、前記第2の領域が前記第1の領域よりも拡大された画像を取得することを特徴とする加工方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年9月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
荷電粒子ビームを試料に照射する荷電粒子ビーム鏡筒と、
前記荷電粒子ビームにより前記試料から発生する二次電子と、前記荷電粒子ビームを走査させる信号とに基づいて、前記荷電粒子ビームの照射結果を示す画像を取得する像形成部と、
第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔よりも、前記第1の領域に含まれる第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔が短くなるように前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行う際に参照する補正マークが含まれる前記第2の領域の画像を取得する際に、前記第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔よりも、前記第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔を短くすることによって前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御して、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行うことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御し、ビットマップで指定されたピクセル領域毎に前記荷電粒子ビームを一回照射する照射処理を、各前記ピクセル領域内で照射位置が異なるように前記照射位置を移動させて複数回行う
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ビットマップのピクセルピッチよりも小さいピクセルピッチでドリフト補正領域のスキャンを行い、当該スキャンで得た情報に基づいてドリフト補正量を算出し、当該ドリフト補正量を前記ビットマップのピクセルピッチでのドリフト補正量に変換してドリフト補正を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記ビットマップの視野がFOV_Aであり、前記照射位置を移動させる量とピクセルサイズが同一の視野をFOV_Bとする場合、前記制御部は前記照射処理を(FOV_A/FOV_B)×(FOV_A/FOV_B)回行う
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
荷電粒子ビームにより試料から発生する二次電子と、前記荷電粒子ビームを走査させる信号とに基づいて、前記荷電粒子ビームの照射結果を示す画像を取得する像形成ステップ
と、
第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔よりも、前記第1の領域に含まれる第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔が短くなるように、前記荷電粒子ビームを前記試料に照射する荷電粒子ビーム鏡筒を制御する制御ステップと、
を含み、
前記制御ステップにおいて、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行う際に参照する補正マークが含まれる前記第2の領域の画像を取得する際に、前記第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔よりも、前記第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔を短くすることによって前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御して、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行うことを特徴とする加工方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1ないし4に記載された発明を特定するために必要な事項である「像形成部」について、「前記像形成部は、前記制御部による前記荷電粒子ビーム鏡筒に対する制御により、前記第2の領域が前記第1の領域よりも拡大された画像を取得する」と限定し、本件補正前の請求項5に記載された発明を特定するために必要な事項である「像形成ステップ」について、「前記像形成ステップにおいて、前記制御ステップによる前記荷電粒子ビーム鏡筒に対する制御により、前記第2の領域が前記第1の領域よりも拡大された画像を取得する」と限定するものであって、本件補正前の請求項1ないし5に記載された発明と本件補正後の請求項1ないし5に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である国際公開第2012/155267号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様。)。

(ア)「ABSTRACT: Generally, the present disclosure provides a method and system for improving imaging efficiency for CPB systems while maintaining or improving imaging accuracy over prior CPB systems. A large field of view image of a sample is acquired at a low resolution and thus, at high speed. The low resolution level is selected to be sufficient for an operator to visually identify structures or areas of interest on the low resolution image. The operator can select one or more small areas of arbitrary shape and size on the low resolution image, referred to as an exact region of interest (XROI). The outline of the XROI is mapped to an x-y coordinate system of the image, and the CPB system is then controlled to acquire a high resolution image of only the XROI identified on the low resolution image. For 3D imaging, once the XROI is identified, each section of the sample can be iteratively imaged in the previously described manner, with the operator having the option to redefine the XROI later.」
(要約:一般に、本開示は、従来のCPBシステムに比べ、描画精度を維持または向上させつつ、CPBシステムのための画像形成効率を向上させるための方法およびシステムを提供する。試料の広い視野画像は、低解像度で、高速に取得される。低解像度のレベルは、操作者が低解像度画像上の関心のある構造若しくは領域を視覚的に識別するのに十分であるように選択される。操作者は、低解像度の画像上の、関心の正確な領域(XROI)に任意の形状及びサイズの1つまたは複数の小領域を選択することができる。XROIの輪郭は、画像のx-y座標系にマッピングされ、そして、CPBシステムは、低解像度画像上で識別されたXROIのみの高解像度画像を取得するように制御される。3D画像化のために、XROIが識別されると、試料の各部分は、上述した方法で繰り返し画像化されるとともに、後でXROIを再定義するために操作者が選択肢を有する。(当審訳、以下同様。))

(イ)「 [0005] Figure 1 is a schematic of a typical CPB system 10. This CPB system 10, also referred to as a dual beam or cross beam system, includes a vertically mounted SEM column and a focused ion beam (FIB) column mounted at an angle from vertical (although alternate geometric configurations also exist). A scanning electron microscope 41 , along with power supply and control unit 45, is provided with the dual beam system 10. An electron beam 43 is emitted from a cathode 52 by applying voltage between cathode 52 and an anode 54. Electron beam 43 is focused to a fine spot by means of a condensing lens 56 and an objective lens 58. Electron beam 43 is scanned two- dimensionally on the sample by means of a deflection coil 60. Operation of condensing lens 56, objective lens 58, and deflection coil 60 is controlled by power supply and control unit 45. Electron beam 43 can be focused onto sample 22, which is on movable stage 25 within lower chamber 26. When the electrons in the electron beam strike sample 22, various types of electrons are emitted. These electrons may be detected by various detectors within the electron column or they may detected by one or more electron detectors 40 external to the column.

([0005] 図1は、代表的なCPBシステム10の概略図である。CPBシステム10は、デュアルビーム又はクロスビームシステムとも呼ばれ、垂直に取り付けられたSEM鏡筒と、垂直(別の幾何学的構成も存在するが)からの角度で取り付けられた集束イオンビーム(FIB)鏡筒とを備えている。走査電子顕微鏡41は、電源及び制御ユニット45と共に、デュアルビームシステム10を備えている。電子ビーム43は、カソード52とアノード54との間に電圧を印加することによって、カソード52から放出される。電子ビーム43は、集光レンズ56及び対物レンズ58によって微細な場所に集束される。電子ビーム43は、偏向コイル60によって、試料上を2次元的に走査される。集光レンズ56と、対物レンズ58と、偏向コイル60の動作は、電源及び制御ユニット45によって制御される。電子ビーム43は、下部チャンバ26内の可動ステージ25上にある試料22に、集束させることができる。電子ビーム中の電子が試料22に衝突すると、様々な種類の電子が放出される。これらの電子は、電子カラム内の種々の検出器によって検出されても良いし、カラムの外部にある1つまたは複数の電子検出器40によって検出される。)

(ウ)「[0011] A charged particle detector 240 used for detecting secondary ion or electron emission is connected to a video circuit 42 that supplies drive signals to video monitor 44 and receiving deflection signals from controller 19. The location of charged particle detector 40 within lower chamber 26 can vary in different configurations. For example, a charged particle detector 40 can be coaxial with the ion beam and include a hole for allowing the ion beam to pass. In other configurations, secondary particles can be collected through a final lens and then diverted off axis for collection. 」
(二次イオンまたは電子の放出を検出するために使用される荷電粒子検出器240は、ビデオモニタ44に駆動信号を供給し、制御装置19からの偏向信号を受信するビデオ回路42に接続される。下部チャンバ26内の荷電粒子検出器40の位置は、異なる構成に変えることができる。例えば、荷電粒子検出器40はイオンビームと同軸であり、イオンビームを通過させるための穴を含むことができる。他の構成では、二次粒子は、最終レンズを通して収集し、次に、収集するために軸外にそらすことができる。)

(エ)「[0014] A system controller 19 controls the operations of the various parts of dual beam system 10. Through system controller 19, an operator can control ion beam 18 or electron beam 43 to be scanned in a desired manner through commands entered into a conventional user interface (not shown). 」
(システム制御装置19は、デュアルビームシステム10のさまざまな部分の動作を制御する。システム制御装置19によって、オペレータは、従来のユーザインタフェース(図示せず)に入力されたコマンドを通じて所望の方式で走査されるイオンビーム18または電子ビーム43を、制御することができる。)

(オ)「[00140] The change in distance between the notches is twice the change in z of the cross-section position. This means that under these conditions, with a precision of 2 nm when measuring the distance between the notches, the position of the cross-section can be determined to within 1 nm. According to the present embodiments, the method of Figure 7 can include this calculation as frequently as is determined to be necessary by the calculated drift model, or as desired by the user, this calculation being performed based on high resolution XROI imaging of the expected location of the notches (iteratively if necessary, with expansion and/or repositioning of the notch imaging XROI if the first XROI image pass does not find the notch where it was expected to be). From these notch XROI images, the notches can be automatically identified by the system and a determination is made from the previous notch position the approximate depth the current cross-section image relative to the previous low resolution cross section image (key frame). From this calculation, if the current cross-section depth is thicker than desired, then the milling rate is decreased. Otherwise, if the current cross-section depth is thinner than desired, then the milling rate is increased. This rate of increase or decrease of the milling rate of the FIB can be calculated by the CPB workstation 100, which in turn controls the FIB accordingly. Figure 23 is a flow chart illustrating a sub-process for controlling the FIB sectioning rate, which can be used in combination with the method of Figure 7.」
([00140] ノッチ間の距離の変化は、断面位置のzの変化より2倍である。これは、これらの条件下では、ノッチの間の間隔を測定する場合に2nmの精度で、断面の位置を1nm以内で決定することができることを意味する。本実施形態によれば、図7の方法は、計算されたドリフトモデルによって必要であると判断されたのと同じ頻度で、またユーザによって希望される頻度で、この計算を含むことができ、この計算は、ノッチの予想される位置について高解像度XROI画像に基づいて行われる(必要に応じて反復的に、最初のXROI画像が、予測されるノッチを見つけられなかった場合、ノッチXROI画像の拡張/再配置して)。これらノッチXROI画像から、ノッチは、システムによって自動的に識別されることができ、決定は、前の低解像度の断面画像(キーフレーム)に対する現在の断面画像のおおよその深さの前のノッチの位置からおこなわれる。この計算から、現在の断面深さが所望より厚い場合は、ミリング速度が減少する。そうでなければ、現在の断面深さが望みの厚さより薄い場合、ミリング速度を増加させる。このFIBのミリング速度の増加または減少の速度は、CPBワークステーション100により計算することができ、これは、それに応じてFIBを制御する。図23は、FIB断面を制御するための処理を示すフローチャートで、図7の方法と組み合わせて使用することができる。)

(カ)「[00143] In other application of the notches, the position of the sample surface in the X and Y plane (cross-section imaging position) can be determined. By calculating shifts in the image based on the notches, it is possible to determine the amount of drift of the sample relative to the imaging beam. The source of this drift is unimportant, it simply relates to the actual versus estimated position of the milling beam relative to the sample. A suitable model can be used to project future drift based on observed values and preemptively moderate the imaging beam position to minimize any drift that may occur during the image acquisition. 」
([00143] ノッチの他の適用では、X及びY平面(断面画像位置)において試料表面の位置を決定することができる。ノッチに基づいて画像中の変化を計算することによって、撮像ビームに対して試料のドリフトの量を決定することが可能である。このドリフトの原因は重要でなく、それは、単に、サンプルに対するミリングビームの実際の位置と推定位置に関するものである。適切なモデルは、観察された値に基づいて将来のドリフトを予測し、撮像中に起こりえるドリフトを最小化するよう撮像ビームの位置を先制して調節するために使用することができる。)

(キ)図1、図2の記載から、CPBシステム10は、ビデオ回路42と、システム制御装置19を備えること、及び、走査型電子顕微鏡(SEM)41内の偏向コイル60が見て取れる。

(ク)図5の記載から、低解像度画像202のXROI輪郭206に対応する高解像度画像212が見て取れる。

イ 上記アから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「SEM鏡筒と、集束イオンビーム(FIB)鏡筒とを備えているデュアルビームシステム10であって、
電子ビームは、SEMの偏向コイル60によって、試料上を2次元的に走査され、電子ビーム中の電子が試料22に衝突すると、様々な種類の電子が放出され、電子検出器40によって検出され、
電子の放出を検出するために使用される電子検出器40に接続され、ビデオモニタ44に駆動信号を供給し、システム制御装置19からの偏向信号を受信するビデオ回路42と、
システム制御装置19と、
を備え、
システム制御装置19は、デュアルビームシステム10のさまざまな部分の動作を制御し、
低解像度画像上で識別されたXROIのみの高解像度画像を取得するように制御し、
ノッチの予想される位置について高解像度XROI画像に基づいて行い、
ノッチは、X及びY平面において試料表面の位置を決定することができ、ノッチに基づいて画像中の変化を計算することによって、撮像ビームに対して試料のドリフトの量を決定し、
適切なモデルは、観察された値に基づいて将来のドリフトを予測し、撮像中に起こりえるドリフトを最小化するよう撮像ビームの位置を先制して調節する、
デュアルビームシステム。」

(3)引用発明との対比・判断
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)荷電粒子には、一般に電子やイオンなどが含まれ、本願においても明細書【0060】に「荷電粒子ビームとして、電子ビームを用いてもよい。」と記載されている。そうすると、引用発明の「電子ビーム」は、本件補正発明の「荷電粒子ビーム」に相当する。

(イ)引用発明の「SEM鏡筒」は、本件補正発明の「荷電粒子ビームを試料に照射する荷電粒子ビーム鏡筒」に、引用発明の「『電子ビーム中の電子が試料22に衝突すると、』『放出され』る『様々な種類の電子』」は、本件補正発明の「前記荷電粒子ビームにより前記試料から発生する二次電子」に、引用発明の「電子の放出を検出するために使用される電子検出器40に接続され、ビデオモニタ44に駆動信号を供給し、システム制御装置19からの偏向信号を受信するビデオ回路42」は、本件補正発明の「前記荷電粒子ビームにより前記試料から発生する二次電子と、前記荷電粒子ビームを走査させる信号とに基づいて、前記荷電粒子ビームの照射結果を示す画像を取得する像形成部」に、引用発明の「『低解像度画像』に対応する領域」は、本件補正発明の「第1の領域」に、引用発明の「『高解像度画像』に対応する領域」は、本件補正発明の「第2の領域」に、引用発明の「『デュアルビームシステム10のさまざまな部分の動作を制御』する『システム制御装置19』」は、本件補正発明の「制御部」に、引用発明の「ノッチの予想される位置について高解像度XROI画像」は、本件補正発明の「補正マークが含まれる前記第2の領域の画像」に、引用発明の「デュアルビームシステム」は、本件補正発明の「荷電粒子ビーム装置」に、それぞれ相当する。

(ウ)ある一定の領域を、高解像度で撮像を行う場合には、低解像度で撮像を行う場合より、電子ビームのピクセル間隔は短くなっている。そうすると、引用発明の「『電子ビームは、SEMの偏向コイル60によって、試料上を2次元的に走査され、』『低解像度画像上で識別されたXROIのみの高解像度画像を取得するように制御し』」は、本件補正発明の「第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔よりも、前記第1の領域に含まれる第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔が短くなるように前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御する」、「前記第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔よりも、前記第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔を短くすることによって前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御して」に相当する。

(エ)引用発明では「ノッチは、X及びY平面において試料表面の位置を決定することができ」ることから、ノッチは、X及びY平面において試料表面の位置を決定するために用いられている。
そして、引用発明には「電子ビームは、SEMの偏向コイル60によって、試料上を2次元的に走査され、電子ビーム中の電子が試料22に衝突すると、様々な種類の電子が放出され、電子検出器40によって検出され、電子の放出を検出するために使用される電子検出器40に接続され、ビデオモニタ44に駆動信号を供給し、システム制御装置19からの偏向信号を受信するビデオ回路42」と特定されていることから、電子ビームは撮像するために用いられている。そうすると、引用発明の「電子ビーム」と「撮像ビーム」とは、表現は異なるが同じ意味と考えるのが自然である。
そうすると、引用発明の「『電子ビームは、SEMの偏向コイル60によって、試料上を2次元的に走査され、』『システム制御装置19は、』『低解像度画像上で識別されたXROIのみの高解像度画像を取得するように制御し、ノッチの予想される位置について高解像度XROI画像に基づいて行い、ノッチは、X及びY平面において試料表面の位置を決定することができ、ノッチに基づいて画像中の変化を計算することによって、撮像ビームに対して試料のドリフトの量を決定し、」は、本件補正発明の「制御部は、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行う際に参照する補正マークが含まれる前記第2の領域の画像を取得する際に、前記第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔よりも、前記第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔を短くすることによって前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御して、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行い、」に相当する。

(オ)低解像度画像よりも高解像度画像の方が解像度が高いので拡大されているものと言える。また、本件補正発明の「前記像形成部は、前記制御部による前記荷電粒子ビーム鏡筒に対する制御により、前記第2の領域が前記第1の領域よりも拡大された画像を取得する」との特定では、像形成部は、当該画像を表示させるものではなく、単に、当該画像を取得するものである。
そうすると、引用発明の「『システム制御装置19は、デュアルビームシステム10のさまざまな部分の動作を制御し、低解像度画像上で識別されたXROIのみの高解像度画像を取得するように制御し、』『ビデオ回路42』は、『電子の放出を検出するために使用される電子検出器40に接続され、ビデオモニタ44に駆動信号を供給し、システム制御装置19からの偏向信号を受信する』」は、本件補正発明の「前記像形成部は、前記制御部による前記荷電粒子ビーム鏡筒に対する制御により、前記第2の領域が前記第1の領域よりも拡大された画像を取得する」に相当する。

(カ)してみると、本件補正発明と引用発明は、
「荷電粒子ビームを試料に照射する荷電粒子ビーム鏡筒と、
前記荷電粒子ビームにより前記試料から発生する二次電子と、前記荷電粒子ビームを走査させる信号とに基づいて、前記荷電粒子ビームの照射結果を示す画像を取得する像形成部と、
第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔よりも、前記第1の領域に含まれる第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射するピクセル間隔が短くなるように前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行う際に参照する補正マークが含まれる前記第2の領域の画像を取得する際に、前記第1の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔よりも、前記第2の領域に前記荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔を短くすることによって前記荷電粒子ビーム鏡筒を制御して、前記荷電粒子ビームのドリフト補正を行い、
前記像形成部は、前記制御部による前記荷電粒子ビーム鏡筒に対する制御により、前記第2の領域が前記第1の領域よりも拡大された画像を取得することを特徴とする荷電粒子ビーム装置。」
である点で一致するものであり、両者の間に相違点はない。

イ 上記ア(オ)の対比において、仮に、本件補正発明の「前記第2の領域が前記第1の領域よりも拡大された画像を取得する」が、「前記第2の領域が前記第1の領域よりも拡大された画像を表示させる」という意味であるとすると、本件補正発明と引用発明とは、本件補正発明が「第2の領域が前記第1の領域よりも拡大された画像を表示させる」であるのに対し、引用発明が「高解像度画像」が「低解像度画像」よりも拡大させた画像を表示させるのか明らかでない点で相違することになる。
しかしながら、高解像度の画像のほうが低解像度の画像より拡大しても画質を落とさず表示できること、また、上記2(2)ア(ク)に摘記したように、引用文献1図5の記載から、低解像度画像202のXROI輪郭206に対応する高解像度画像212が見て取れ、引用文献1図5においても、高解像度画像が低解像度画像よりも拡大された画像とすることが示唆されていることから、引用発明において、高解像度の画像を低解像度の画像よりも拡大させて表示させることは、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

ウ したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるか、あるいは、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)請求人の主張について
ア 本件請求人は、平成30年6月6日付けで提出された審判請求書において、
(ア)「引用発明1及び引用発明2では、本願発明1のように、ドリフト補正を行う際に参照する補正マークが含まれる第2の領域の画像を取得する際に、第1の領域に荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔よりも、第2の領域に荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔を短くする制御により、第2の領域が第1の領域よりも拡大された画像を取得しない。」、

(イ)「本願発明1は、相違点に係る構成4及び5を備えることによって、本願明細書の段落0041に記載の通り、『ドリフト補正時に、補正マーク401付近(ドリフト補正領域502)の画像を取得する際には、スキャン時のピクセル間隔を短くする。これにより、補正マーク401の位置を精度良く捉えることができる。従って、より精度良くドリフト補正を行うことができる。』との効果を奏する。よって、本願明細書の段落0004および段落0006に記載の通り、『精度良く加工するために、視野倍率を上げると、加工領域が1つの視野(FOV、field of view)内に入りきらない』場合であっても、『1つの画面内に加工領域を全て表示しつつ、より精度良く加工することができる』との効果を奏する。」、

(ウ)「また、引用文献1には、断面(XY面)を撮像する際にZ方向の位置認識としてノッチをアライメントマークとして使用すること(引用文献1の段落[0137])、ノッチ(the notches)の予測位置について高解像度XROI撮像(XY面)を行うこと(引用文献1の段落[0140])、ノッチによってドリフト量を決定すること(引用文献1の段落[0143]等)が記載されているが、この高解像度XROI撮像は断面(XY面)におけるノッチ(the notches)間の距離に基づき計算するために行うものである。そのため、断面(XY面)での高解像度の撮像であり、加工を実施する表面(XZ面)とは異なる断面(XY面)内での撮像に関するものである。一方、本願発明1では、第1の領域に含まれる第2の領域に照射するピクセル間隔を短くするものであり、引用文献1とは異なる。」、

(エ)「また、引用文献1には、本願発明1のようにドリフト補正を行う際に参照する補正マークが含まれる第2の領域の画像を取得する際に、第1の領域に荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔よりも、第2の領域に荷電粒子ビームを照射する際のピクセル間隔を短くする制御により、第2の領域が第1の領域よりも拡大された画像を取得するといった構成についての記載や示唆は無い。このように、引用文献1には、本願発明1のような技術的思想は無い。」と、
主張している。

イ 上記主張について以下検討する。
(ア)上記ア(ア)について
上記(3)ア(オ)にも記載したように、引用発明において、ノッチの予想される位置についての高解像度画像が低解像度画像よりも拡大された画像を取得しないとはいえない。

(イ)上記ア(イ)、ア(ウ)について
請求人は、本願の請求項1に係る発明において「補正マーク401の位置を精度良く捉えることができる。従って、より精度良くドリフト補正を行うことができる。」との効果を奏すると主張しているが、上記引用発明においても「ノッチの予想される位置について高解像度XROI画像に基づいて行い、ノッチは、X及びY平面において試料表面の位置を決定することができ、ノッチに基づいて画像中の変化を計算することによって、撮像ビームに対して試料のドリフトの量を決定し」ていることから、ノッチの予想される位置についての高解像度XROI画像に基づいて、精度良く撮像ビームに対する試料のドリフト補正が行うという効果を奏している。

また、本願の請求項1には、加工を実施する表面についての特定がなく、そもそも加工することの特定がない。したがって、加工することの特定がない、本願の請求項1に係る発明において、「1つの画面内に加工領域を全て表示しつつ、より精度良く加工することができる」との効果までも奏するとはいえない。

(ウ)上記ア(エ)について
上記(3)ア(ウ)にも記載したように、ある一定の領域を、高解像度で撮像を行う場合には、低解像度で撮像を行う場合より、電子ビームのピクセル間隔は短くなっている。
また、上記(3)ア(オ)に記載したように、引用発明において、ノッチの予想される位置についての高解像度画像が低解像度画像よりも拡大された画像を取得しないとはいえない。

してみれば、請求人の上記主張は、採用することができない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年6月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年9月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
理由3.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
理由4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由3及び理由4について
・請求項1、2、4、5
・引用文献等1

・請求項1、5
・引用文献等2

●理由4について
・請求項3
・引用文献等1

・請求項2、4
・引用文献等1、2、4

<引用文献等一覧>
引用文献1:国際公開第2012/155267号
引用文献2:特開2010-009987号公報
引用文献4:特開平04-017248号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明の「像形成部」について、「前記像形成部は、前記制御部による前記荷電粒子ビーム鏡筒に対する制御により、前記第2の領域が前記第1の領域よりも拡大された画像を取得する」の限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明に該当する、あるいは、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に該当するものであり、あるいは、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-22 
結審通知日 2019-05-28 
審決日 2019-06-10 
出願番号 特願2014-9679(P2014-9679)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01J)
P 1 8・ 575- Z (H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉田 翠  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 野村 伸雄
山村 浩
発明の名称 荷電粒子ビーム装置および加工方法  
代理人 小林 淳一  
代理人 西澤 和純  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 鈴木 慎吾  

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