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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65G
管理番号 1353811
審判番号 不服2017-17295  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-22 
確定日 2019-07-31 
事件の表示 特願2014-550303「商品を輸送する輸送処理システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月11日国際公開、WO2013/103457、平成27年 4月 9日国内公表、特表2015-510478〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)11月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年1月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成28年 4月12日付け:拒絶理由通知書
同年 7月15日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月26日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月 4日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月20日付け:拒絶査定
同年11月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年10月26日付け:拒絶理由通知書
平成31年 1月28日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?10に係る発明は、平成31年1月28日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
商品を輸送ネットワークに沿って自動的に搬送するために使用される輸送管理システムであって、前記輸送ネットワークは、複数の場所の間に延びる複数の所定の走行路を含み、前記輸送管理システムはプロセッサを備え、前記プロセッサは、
前記輸送ネットワークに沿って商品を搬送するリクエストを受信し、
前記輸送ネットワークに沿って前記商品を搬送する輸送ビークルを指定し、
前記商品を受け取る配送元地点、及び前記商品を荷降ろしする配送先地点を含む、前記輸送ネットワークに沿ったビークル進路軌跡を、前記輸送ネットワークに沿った前記指定輸送ビークルの場所に少なくとも部分的に基づいて計算し、
前記指定輸送ビークルを、前記計算されたビークル進路軌跡に沿って搬送し、
前記輸送ネットワークに沿って設定される走行方向を有する複数のモータ機構を選択的に動作させて、前記指定輸送ビークルを前記輸送ネットワークに沿って搬送し、
そして、前記計算されたビークル進路軌跡が実際のビークル進路軌跡と相違するとき、ユーザ入力装置に通知を送信するように構成され、
各モータ機構は制動システムを含み、各モータ機構は、供給される電源が遮断されている間磁界を発生させ、該磁界を前記輸送ビークルの移動方向とは反対の方向に移動させるように構成され、該磁界が、前記輸送ビークルに作用して、その速度を低下させ、前記輸送ビークルに対する制動を行い、前記プロセッサは更に、
前記輸送ネットワークに沿って、前記商品を配送先場所に配送するリクエストを受信し、
前記輸送ネットワークに沿って、リクエストされた前記商品の場所を決定し、そして 決定された前記商品の場所に関連する配送元地点、及び前記配送先場所に関連する配送先地点を含む前記ビークル進路軌跡を計算するように構成され、
各輸送ビークルが固有ビークル識別子を含み、前記固有ビークル識別子を前記輸送管理システムが使用して、前記輸送ビークルを識別することにより、前記輸送ネットワークに沿った前記輸送ビークルの場所を確認し、かつ、各商品が固有商品識別子を含み、前記固有商品識別子を前記輸送管理システムが使用して、該商品を識別することにより、前記輸送ネットワークに沿った該商品の位置を確認する、輸送管理システム。」

第3 拒絶の理由
平成30年10月26日付けの当審が通知した拒絶理由は、この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2003-233422号公報
引用文献2:特開平5-119832号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:実願昭61-61934号(実開昭62-175307号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開平11-127505号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開平11-205911号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開2003-131715号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7:特開2009-166978号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1
(1)本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1には、図面と共に、次の記載がある。(下線は当審で付した。以下同様。)
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工場や倉庫において物品の搬送をおこなう搬送システムに関し、とくに搬送車が床面や天井に設けた軌道上を走行して物品を搬送する搬送システムに関する。」

イ 「【0023】工場内に複数の倉庫(保管棚)1(1a,1b,・・・)が配置されており、これらを巡回する軌道2が設置されている。軌道2はたとえば時計回りの一方通行であり、搬送車6が軌道2上を周回し、倉庫から倉庫へと物品の搬送を行なう。軌道2上には、各倉庫ごとにステーション3(3a,3b,・・・)が設けられており、搬送車6はこのステーション3に停車して物品の積み込みや荷下ろしをおこなう。
【0024】なお、通常、軌道2には、分岐と合流とによって複線部分が形成されており、ステーション3はこの複線の部分に設けられる。したがって、積み込みや荷下ろし中の搬送車によって、後続の搬送車の走行が妨げられることがない。また、この複線部分には、待機のためのステーション4(4a,4b,・・・)も設けられている。搬送システムの負荷にくらべて搬送車の台数が多すぎる場合、余剰の搬送車を、この待機ステーション4に停車して待機させることができる。さらに、軌道2上にはメンテナンスステーション5が設けられており、搬送車6はここで点検や修理などのメンテナンスを受けることができる。」

ウ 「【0027】さらに、搬送車の現在位置を把握したり、軌道上で搬送車を一時停止させたりするために、軌道上にチェックポイント(CP)が配置されている。図1に示したレイアウトの搬送システムについて、チェックポイントの配置例を図2に示す。図2の例では、軌道2上に12のチェックポイント(CP1?CP12)が配置されている。各チェックポイントはそれぞれ搬送車の通過検出手段を備えており、搬送車の通過あるいは到着を検知して、後述の搬送制御コントローラへと信号を送信する。通過検出手段としては、マイクロスイッチや赤外線センサ、磁気センサなどを用いることができる。また、搬送車に発信器を設けて微弱な電磁波を発信させ、これをチェックポイントで受信するようにしてもよい。
【0028】搬送車6の運行およびステーション3での物品の積み込み/荷下ろしを制御するために、本発明の搬送システムは、搬送制御コントローラ12を備えている。搬送制御コントローラ12は、搬送の指示を与え報告を受ける制御装置、たとえば上位コンピュータ10に制御される。搬送制御コントローラ12の概略を図3に示す。搬送制御コントローラ12は、中央演算装置14および搬送システムとの通信制御インターフェース16を備え、さらに搬送システムの構成や現在の搬送の状況、各搬送車の状態などを記憶した各種のテーブル20?28を有している。
【0029】これらテーブルの詳細を、図4?8を参照して説明する。
【0030】図4に示すように、搬送指示テーブル20には、搬送の出発地である搬送元ステーションと搬送の目的地である搬送先ステーションが、搬送を担当する搬送車の番号および現在の進行状況(ステータス)とともに記憶されている。上位のコンピュータ(たとえば工場の生産ライン全体を統括するコンピュータ)10から搬送指示が出されると、まず、その出発地(搬送元ステーション)と目的地(搬送先ステーション)とが搬送指示テーブル20に記憶される。その後、搬送制御コントローラ12が担当する搬送車を決定し、搬送が開始される。搬送車が搬送先ステーションに到着し荷下ろしが完了すると、その搬送指示は搬送指示テーブル20から抹消される。あるいは、搬送が終了したことをあらわすフラグが付加される。したがって、搬送指示テーブル20を参照することにより、現在実行中の搬送および予定されている搬送のすべてを割り出すことが可能である。」

エ 「【0032】図6に示すように、搬送車状態テーブル24には、各搬送車の累積の走行距離、現在の状況(ステータス)および所在地が記憶されている。なお、搬送車の現在の状況(ステータス)には、メンテナンスステーション5で「メンテナンス中」の状態、待機ステーション4にて「待機中」の状態、および「稼動中」の状態の3種類があり、さらに「稼動中」については、物品を積載している「実車」の状態、搬送元ステーションに物品を受け取りに向かっている「予約」の状態、指示待ちで軌道上を巡回している「空車」の状態の3種類がある。
【0033】図7に示すように、チェックポイント(CP)間距離テーブル26には、チェックポイント間の距離が記憶されている。搬送車がチェックポイントを通過、あるいはチェックポイントに到着すると、そのチェックポイントの番号および搬送車の番号が、搬送制御コントローラ12へと送信される。搬送制御コントローラ12は、搬送車状態テーブル24における搬送車の所在地を、受信したチェックポイントの番号へと書き換えるとともに、CP間距離テーブル26を参照して、このチェックポイントと1つ前のチェックポイントとのあいだの距離を求め、搬送車状態テーブル24における搬送車の累積走行距離に加算する。このようにして、搬送車の所在および累積走行距離の管理をおこなうことができる。」

オ 「【0035】これらのテーブル20?28の情報にもとづき、中央演算装置14が搬送車6やステーション3への指示を作成する。作成した指示は、通信制御インターフェース16を経由して搬送車6やステーション3へと伝達され、搬送車6およびステーション3はこの指示に従って動作する。指示された動作、すなわち目的地への移動や積み込み/荷下ろしなどを終えると、搬送車6やステーション3、4、5から搬送制御コントローラ12へと、到着や積み込み完了/荷下ろし完了の報告が送信される。」

(2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 引用文献1に記載された技術は、物品を軌道2に沿って自動的に搬送するために使用される搬送システムに関するものである(段落【0001】、【0023】、【0028】、【0030】)。

イ 軌道2は、複数の倉庫1(1a,1b,・・・)の間に伸びる複数の所定の走行路を含んでいる(段落【0023】、【0024】、図1)。そして、物品の保管場所である倉庫1と関連した位置に、搬送車6が物品の積み込みや荷下ろしを行うためのステーション3(3a,3b,・・・)が設けられている(段落【0023】)。

ウ 搬送システムは、搬送の指示を与え報告を受ける制御装置である上位コンピュータ10に制御される搬送制御コントローラ12を備え、該搬送制御コントローラ12は、搬送指示を受信すると、物品を積み込む搬送元ステーション、及び物品を荷下ろしする搬送先ステーションを搬送指示テーブル20に記憶し、物品を搬送する搬送車6を決定する(段落【0030】)。また、搬送制御コントローラ12は、軌道2上のチェックポイントの番号及び搬送車の番号を受信することにより、軌道2に沿った搬送車6の所在地を確認し、搬送車状態テーブル24に記憶している(段落【0032】、【0033】)。

エ 搬送制御コントローラ12の中央演算装置14は、搬送指示テーブル20や搬送車状態テーブル24等にもとづき搬送車6やステーション3への指示を作成する。そして、作成された指示に従って、搬送車6を、その所在地から、物品を積み込む搬送元ステーションを経由して、物品を荷下ろしする搬送先ステーションへと、軌道2に沿って搬送させ、搬送元ステーションが設けられた倉庫から搬送先ステーションが設けられた倉庫へと指示された物品を搬送している(段落【0035】及び図1?3)。

(3)上記(1)、(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「物品を軌道2に沿って自動的に搬送するために使用される搬送システムであって、軌道2は、複数の倉庫1の間に伸びる複数の所定の走行路を含み、搬送システムは搬送制御コントローラ12を備え、該搬送制御コントローラ12は、
上位コンピュータ10から搬送指示を受信し、
物品を搬送する搬送車6を決定し、
決定された搬送車6を、その所在地から、物品を積み込む搬送元ステーションを経由して、物品を荷下ろしする搬送先ステーションへと、軌道2に沿って搬送し、
搬送制御コントローラ12は、軌道2上のチェックポイントの番号及び搬送車の番号を受信することにより、軌道2に沿った搬送車6の所在地を確認し、搬送車状態テーブル24に記憶する、搬送システム。」

2 引用文献2
本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2には、図面と共に、次の事項が記載されている。
「【0007】
【実施例】以下本発明を図示の実施例にもとづいて説明する。図1において、Aは工場・倉庫等の床面に予め走行経路に沿って配設されたガイド、BはガイドAに誘導されて走行する無人搬送車である。無人搬送車Bにはガイドと車体の偏倚を検出し、偏倚とガイドの検出状態を出力するガイドセンサ1と、ガイドと車体の偏倚が零となるように操舵指令値を計算するガイド走行装置2と、駆動制御モータ4を制御する走行制御装置3を備える。また駆動モータ4は動力を発生し、ディファレンシャルギヤ13、車軸14を介して駆動輪12を駆動し、また無人搬送車Bに備えた操舵モータ5にて操舵指令に応じて操舵輪18を回動する。
【0008】経路情報記憶装置6は、走行経路の位置と走行速度などの経路情報を記憶する。またガイドの異常や誤分岐の発生を経路情報へ登録する。ガイド異常や誤分岐の情報をディスプレイや通信機、警告灯を使って外部へ報知するとともに、位置計測装置7は無人搬送車の現在位置を計測する。そしてこの位置計測装置7による現在位置が、経路情報の走行経路位置に沿うように操舵指令を計算するガイドレス走行装置8をも備える。
【0009】操舵切換装置9は、ガイドセンサ1から出力されるガイドの検出状態信号によりガイドが正常に検出されているときはガイド走行装置の操舵指令を、またガイドに異常が発生してガイドの検出が不可能な場合にはガイドレス走行装置の操舵指令を切り換えて、操舵モータ5へ出力し操舵輪の回動量を制御する。また、ガイド異常時にはガイド異常登録信号を出力して経路情報記憶装置6にガイド異常の発生を登録する。比較器10は、ガイドに沿って走行中に記憶した経路の位置と車体の位置計測値を比較して、異なる場合には経路誤りと判断し経路情報記憶装置6に登録信号を出力するものである。
【0010】・・・(省略)・・・
【0011】ディスプレイ19は、走行中にガイド異常や経路誤りの発生した経路情報の表示をし、通信機20は同上のデータを他の無人搬送車や管理コンピュータに伝送する。また警告灯21は、異常の発生を操作者に知らせるもので之等は上記無人搬送車Bに備えられる。」

3 引用文献3
本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献3には、図面と共に、次の事項が記載されている。
(1)「地上制御装置10は、自律走行車3の運行ルートやモニタ情報等を表示するCRTディスプレイ16、運行ルートや移載制御等の情報を打ち込むキーボード18、一日の稼動実績データ等を打ち出すプリンタ20等を備え、この自律走行車システム全体の運転を制御するものである。」(明細書10ページ14?19行)

(2)「続いて、オープニングメッセージや現在モニタしようとしている自律走行車3の運行ルート等を、CRTディスプレイ16上に表示するイニシャル表示を行ない(ステップ120)、更に、システム立ち上げ後からの運行回数等の実績データの蓄積・表示やプリントアウト等を行なう(ステップ130)。もとより、初回においては、自律走行車3の運行によるワークWの搬入・搬出共行なわれていないので実績データの内容は零である。
その後、CRTディスプレイ16上に表示した運行ルートにおいて、自律走行車3の位置を表示する処理を行なう(ステップ140)。例えば、後述する第7図(A)に示すように、CRTディスプレイ16の上半分に模式的に示された運行ルートRTに対して、自際の運行ルート上における自律走行車3の存在する位置を反映した部位に、自律走行車3をグラフィックパターンGPとして表示するのである。
この状態で自律走行車3よりモニタデータが送られてくるのを待ち(ステップ150)、データを受信した時には、既述したモニタデータを、マークプレートコードMM,ルートコードRR,エラーコードEEに分離する等の処理を行ない(ステップ160)。マークプレートコードMMに従って、自律走行車3の位置をサーチする処理を行なう(ステップ170)。
・・・(省略)・・・
この処理を繰り返すうちに、Q$=P$が成立する場合が見い出された時には、自律走行車3はプレート番号Nの位置まで走行したとして、通常は運行ルートRT上の自律走行車3の位置SをS+1とする(ステップ177)。一方、プレート番号23まで繰り返しても一致しなかった場合には、自律走行車3が運行ルートをはずれたか通信にエラーが発生して正しいマークプレートコードMMが受信されなかったかであるとして、異常フラグAに1をセットして(ステップ178)、本ルーチンを終了する。
以上説明した手法により、第5図(A)のステップ170で自律走行車3の位置Sをサーチした後、自律走行車3に異常が生じていないかについて判断する(ステップ180)。上述した運行ルートのサーチルーチンにおいてフラグAに1がセットされた時、あるいは自律走行車3から受信したモニタデータのエラーコードEEが00でない場合に、異常発生として「異常」のメッセージと共に、異常の内容に応じた所定の操作メッセージをCRTディスプレイ16上に表示する(ステップ190)。」(明細書19ページ20行?24ページ3行)

4 引用文献4
本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献4には、図面と共に、次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えばステーションなどの所定の区画内において、複数台の走行体を誤動作なく停止させて整列することができるリニアモータ式(以下、「リニア式」という)走行装置における複数走行体の停止方法に関するものである。」

(2)「【0009】
【発明の実施の形態】次に、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態に係るステーション内における複数走行体の停止方法を示す配線図、図2は、リニアモータの原理を示す配線図、図3は、この発明の実施の形態に係る走行体を示す側面図、図4は走行体およびレールを示す正面図、図5はステーションを示す側面図である。図4において、レールは断面図で示されている。
【0010】先ず、この発明の実施の形態に係るリニア軌道および走行体の構造について説明する。本実施の形態では、走行軌道としてレールを、走行体として走行台車を使用する。レール1は、平板状部1aと、その幅方向両側、即ち、上下両側に形成された車輪接触部1bとからなり、平板状部1aを鉛直にして設けられている。車輪接触部1bの一方側には、傾斜面が設けられている(図4参照)。平板状部1aには、レール1の長手方向にわたり、励磁コイル2が所定間隔毎に並列して設けられリニア軌道3を構成している。ここでいう、「所定間隔毎に設けられた」というのは、完全に等間隔に設けられた場合以外に、走行台車4の永久磁石5の長さとの関係で推進力が得られる範囲で、等間隔に設けられたものから一部を間引いた場合も含むものである。更に、励磁コイル2の位置ごとに永久磁石5の位置を検出するための磁気センサ6が設けられている(図2、図4参照)。
【0011】走行台車4は、荷物を収容する荷物ケースを構成する台車本体4aと、台車本体4aのレール側の側面の上下および台車本体4aの前後に設けられた車輪8a?8dとからなっている。7は、車輪8a?8dを軸着するための基部である。走行台車4の前後の上側の車輪8a(2輪)が車輪接触部1bの傾斜面と転接し、車輪8aおよび8bは、レール1の上側の車輪接触部1bを表裏両側から挟んで転動する。走行台車4の前後の下側の車輪8cが車輪接触部1bの傾斜面と転接触し車輪8cおよび8dは、レール1の下側の車輪接触部1bを表裏両側から挟んで転動する。走行台車4の、レール側の側面には、コイルのセンター間隔と同じ幅の複数極の永久磁石5が取り付けられている(図3、図4参照)。また、走行台車4の前後には、衝撃吸収用ダンパ9が設けられている(図5参照)。
【0012】なお、本実施の形態では、走行軌道としてレールを用いるが、本発明は、図3?5に示すような形態に限られず、リニア同期モータを使用するリニア式走行装置全般に適用可能である。例えば、走行軌道としてチューブを使用するリニア式カプセル型走行装置等に適用することもできる。
【0013】次に、リニアモータの原理について説明する。図2に示すように、複数個の励磁コイル2は、複数のセクションに分かれており、各セクションは、多相電力ケーブルの電源ケーブル16に並列に配線されている。励磁コイル2および磁気センサ6は、切替器13を介して各セクションおよび相毎にシリーズに配線されている。磁気センサ6からの信号がOR回路20を経て制御装置にデジタル信号で送られることによって走行台車4の所在セクション位置が検知される。このようにして、走行台車4が磁気センサ6によって検知されると、切替器13に信号が送られて、走行台車4が走行しているセクションの励磁コイル2のみに通電される。従って、走行台車4が走行していない他のセクションの励磁コイル2には通電されない。
【0014】走行台車4の走行は、永久磁石5に対し「フレミングの左手の法則」に従った励磁パターンを付与することにより行なわれる。即ち、走行台車4に取り付けられた永久磁石5が位置センサ6を通過すると該センサ6がこれを検知し、その直後から電流の停止および走行台車4の進行方向前方の励磁コイル2が永久磁石5と異なる極性となるように電流が流れる。これにより、永久磁石5は前記励磁コイル2に吸引され、走行台車4は走行方向へ移動する。次いで、永久磁石5が次の走行方向前方の位置センサ6を通過すると該センサ6がこれを検知し、その直後から前記励磁コイル2に流れる電流が停止および逆転し、前記励磁コイル2の極性が永久磁石5と同じ極性に変換する。これによって、永久磁石5と前記励磁コイル2とが反発し、走行台車4は走行方向へ押し出される。これを、各励磁コイル2毎に順次繰り返して行うことにより、走行台車4は走行方向へ連続して走行する。永久磁石が複数極あると極ごとに繰り返され、推力が平滑化される。このように、励磁コイル2と複数極の永久磁石5との位置を位置センサ6により検知し、一定方向(走行方向)にリニアモータによる推力を付与できるように電流が制御される。」

5 引用文献5
本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献5には、図面と共に、次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、リニアモータを用いたリニア式走行装置の複数の走行体の停止および発進を効率よく行う搬送方法に関するものである。」

(2)「【0012】
【発明の実施の形態】次に、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。まず、リニアモータについて説明する。図6はリニアモータの動作原理を示す斜視図、図7は電流の流し方を説明するグラフである。リニアで駆動する搬送システムで駆動用の同期型のリニアモータは、楕円型のコイル(励磁コイル)2を搬送路に取り付け、コイルごとに位置検知センサ6が取り付けてある。この位置検知センサ6は、1方向性の磁気センサを用いている。コイルの所定幅(3/5P)は、所定ピッチ(P)で取り付け、電流が交互に正方向と反対方向になるように順次変えて、複数相ごとにシリーズ配線している。センサ6は1方向のみ検知する磁気センサで、検知方向を順次替えて取り付け、複数相(例えば3相)ごとに配線している。搬送体(搬送台車)4には、コイル幅と同じで、極を順次替え、コイル方向に磁界が出るように複数極の永久磁石5を取り付けている。推力は磁石5から出た磁束が電流が流れているコイル2を通過する際、「フレミングの左手の法則」に従い、磁束方向に垂直方向に磁力が発生する。このように、電流の流し方で進行方向が正方向にも、逆方向にも容易に発生でき、磁石5を付けた搬送体4はこの反力で走行できる。図6はリニアモータの構成を示している。永久磁石5や励磁コイル2のバックに磁束が飽和しない程度の磁性材のコアを取り付けることで、磁束が増大し、効率アップが出来る。駆動方法は、5極の磁石5に対してセンサ6の検知の仕方で1周期(F)の1/8おきにパターン化できる。これは、センサ6を増やすことで更にパターン数を増やすことができ、微細な制御ができる。このパターンが切り替える位置によって、複数相(例えば3相)のコイル2に対してセンサ6で検知したパターンに対応した電流の流し方を設定できる。電流の流し方は、正に1/4区間、停止1/8区間、逆側に1/4区間、停止1/8区間の順で動作する。図7は駆動方法の1例として、3相の電源に対する5極の磁石を使用した例として、このセンサ6のパターンに対する電流の流し方を示している。
【0013】電源装置は、3相の場合、6個のIGBT等の素子を制御して、センサで検知したパターンに沿ってON・OFFを制御することで、コイルに流す電流をパターン化できる。図7は、5極の永久磁石位置、コイル位置とセンサ位置とセンサの検知パターンおよびコイルへの電流方向を示している。
【0014】図4は、リニア式走行装置の1セクションを示す配線図、図5は、リニア式走行装置の全体の制御を示す配線図である。図4に示すように、複数個の励磁コイル2は、複数のセクション(区間)20に分かれており、複数のセクション(区間)20毎に駆動電源用の多相ケーブル51からパワートランジス等で構成される切替器23を経てケーブル52で並列に配線されている。セクション20内の各励磁コイル2へのケーブル53の配線は、相毎にシリーズ結線し、端末を結ぶ多相スター結線となっている。また、各1方向磁束磁気センサ6も相毎にシリーズでケーブル53により結線し、その出力は増幅器54で増幅して制御装置57へ送られるようになっている。更に、磁気センサ6の出力信号をセクション20毎にORの論理回路55でまとめた信号を切替器23に送るとともに、増幅器54Aで増幅してから信号変換器56でデジタルに変換し、光ファイバ等の信号伝送手段により制御装置57に送り、これによって走行体(搬送台車)がどのセクション20にいるかを知ることができるようになっている。そして、走行体が走行しているセクション20のみ切替器23が作動して繋がり、電流が流れ、当該セクション20から外れると電源が切れるようになっている。」

(3)「【0028】駆動系として、駆動制御装置12から電源ケーブル16を介して各電源切替器13に配線され、各セクションA、B、Cの各励磁コイル2に配線されている。更に、励磁コイルおよび磁気センサ電源がOFFになっているときは、回生ブレーキが働くように、励磁コイル2を短絡するための切替器とからなる回生ブレーキ機構9が動作する。」

6 引用文献6
本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献6には、図面(特に図1?2参照。)と共に、次の事項が記載されている。
(1)「【0031】図2(a)に示すように、製品情報群には、製品名A?Zごとに、それぞれ組立順序を示す工程および部品番号が含まれる。例えば、製品名Aの製品情報には、組立順序を示す工程が1?20まであり、工程ごとに組み付ける部品の部品番号LK01?LK20が関連付けられている。
【0032】また、図2(b)に示すように、保管位置情報には、部品番号およびロケーション情報が含まれる。このロケーション情報には、所定の部品番号の部品を保管する部品保管棚のエリア、部品保管棚番号、段数および左端からのポケット位置が含まれる。保管位置情報は、予めホストコンピュータ1に記憶されている。ロケーション情報の詳細については後述する。
【0033】また、図2(c)に示すように、商品生産指示情報には、製品名、無人搬送車番号、工程、部品番号およびロケーション情報等が含まれる。この商品生産指示情報は、後述するようにホストコンピュータ1において作成される。」

(2)「【0044】まず、作業監督者が、ホストコンピュータ1に生産すべき商品に対する生産指示を送信する。ホストコンピュータ1は、生産すべき商品に対する生産指示を受信する(ステップS71)。ここで、ホストコンピュータ1が受信する生産指示は、図2(a)に示す製品情報群の製品名である。ホストコンピュータ1は、製品情報群から生産指示された製品名の製品情報を抽出する。そして、ホストコンピュータ1は、製品情報に含まれる工程および部品番号と保管位置情報のロケーション情報とを関連付ける(ステップS72)。例えば、ホストコンピュータ1は、受信した生産指示が製品名Aである場合、製品名Aの製品情報に含まれる部品番号LK01?LK20にロケーション情報を関連付ける。例えば、製品名Aの製品情報の部品番号「LK01」に対して、保管位置情報のロケーション情報「01-02-03-02」を関連付ける。続いて、製品名Aの製品情報の部品番号「LK02」に対して、保管位置情報のロケーション情報「01-01-02-02」を関連付ける。以下、製品名Aの製品情報の部品番号「LK03」?「LK20」まで同様に保管位置情報のロケーション情報を関連付ける。そして、生産指示を送信すべき無人搬送車3を決定する。本実施の形態では、生産指示を送信すべき無人搬送車3は、無人搬送車番号「01」の無人搬送車である。
【0045】これにより、ホストコンピュータ1において、図2(c)に示す商品生産指示情報が作成される。
【0046】次いで、ホストコンピュータ1は、商品生産指示情報に基づいて無人搬送車の走行ルートを決定する(ステップS73)。例えば、図2(c)に示す商品生産指示情報の場合、商品の工程1?20の順に、ロケーション情報が関連付けられているため、無人搬送車3の走行ルートは、まず、エリア01の部品保管棚番号02の保管棚、次いで、エリア02の部品保管棚番号03の保管棚、…、エリア50の部品保管棚番号50の保管棚の順に決定される。
【0047】そして、ホストコンピュータ1は、1工程分の商品生産指示情報を無人搬送車3に送信する(ステップS74)。例えば、1工程分の商品生産指示情報とは、図2(c)に示す商品生産指示情報の場合、工程「1」、部品番号「LK01」およびロケーション情報「01-02-03-02」である。
【0048】そして、無人搬送車3の車載コンピュータ31は、ホストコンピュータ1より送信された1工程分の商品生産指示情報に含まれるロケーション情報に基づいて、駆動部33に指示を与える。駆動部33は、ホストコンピュータ1により送信されたロケーション情報の保管棚の位置まで移動する。」

7 引用文献7
本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献7には、図面と共に、次の事項が記載されている。
(1)「【0032】
搬送制御ブロック31では、生産ライン41において製造装置からの仕掛かり在庫の搬送要求が発生した場合に、搬送経路を決定し、決定した搬送経路を、生産ライン41に指定する。すなわち、搬送要求が、製造装置への搬入要求であれば仕掛かり在庫をどの倉庫から搬出してどの搬送経路を通って搬送するか、製造装置からの搬出要求であれば仕掛かり在庫をどの搬送経路を通って搬送しどの倉庫へ搬入するかを決定する。
【0033】
倉庫稼動実績情報収集部(実績情報収集部)32は、生産ライン41における倉庫の稼働状況、つまり、どの倉庫とどの製造装置間でどれだけの搬出、搬入が行なわれたか、といった各倉庫の実績情報を収集する。倉庫稼動実績情報収集部32は、倉庫での搬出・搬入が行なわれた際には、この検出した情報を倉庫稼動実績情報記憶部33へ送り、倉庫稼動実績情報記憶部33は生産ライン41における倉庫の稼働実績を逐次更新する。
【0034】
搬送要求検出部34は、稼働中において、製造装置からの搬送要求(搬出要求あるいは搬入要求)を検出し、検出した搬送要求を倉庫選択制御部35へと送る。
【0035】
倉庫選択制御部35は、搬送要求を受け取ると、倉庫搬入出計画記憶部17内の搬入出計画情報、倉庫稼動実績情報記憶部33内の実績情報とを参照して、該搬入出計画情報を遵守するように、搬送先倉庫または搬送元倉庫を決定する。倉庫選択制御部35は、決定した倉庫情報と、搬送要求を出している製造装置の情報とを搬送経路指示部36へ通知する。また倉庫選択制御部35は、決定した倉庫情報を搬送指示部37へ通知する。
【0036】
搬送経路指示部(経路取得部)36は、製造装置情報と倉庫情報を受け取ると、搬送経路算出部24にこれらの情報を送る。搬送経路算出部24は、搬送元から搬送先への搬送経路を特定し、特定した搬送経路を搬送経路指示部36へ通知する。搬送経路指示部36は、通知された搬送経路の情報を搬送指示部37へと送る。
【0037】
搬送指示部37は、倉庫選択制御部35で決定された倉庫情報と搬送経路指示部36から受け取った搬送経路情報とを、実際の搬送を行なう搬送車を管理する搬送車管理部42へ送る。この後、生産ライン41における搬送車管理部42により実際の搬送がなされ、これにより生産ライン41における搬送制御が実現される。」

(2)「【0121】
実際の搬送制御では、稼働中の生産ライン41において、装置からの搬送要求がなされると、装置への搬入の場合は搬送元倉庫を、装置からの搬出の場合は搬送先倉庫を決定し、決定された倉庫と装置間の搬送経路を算出する。そして生産ライン内の搬送車(図示せず)は、決定された倉庫と装置間で、算出された搬送経路により、ロットを搬送する。以下、搬送要求を受けた後、搬送元あるいは搬送先の倉庫の決定、決定された倉庫と装置間の搬送経路の決定、および実際の搬送実行の動作を説明する。
・・・(省略)・・・
【0128】
(搬送経路の決定方法)
以上に述べたように、搬送先の倉庫sが決定されると、その倉庫を特定できるような情報、つまり倉庫IDのような識別情報が搬送経路指示部36へ送られ、搬送経路指示部36は、製造装置(本例では製造装置1)から、決定された倉庫sへの経路を搬送経路算出部24から教えてもらう。なお、この経路は、搬送経路算出調整部26により調整された経路重みパラメータ(グラフ表現でいえばエッジの重み)が反映されている。
【0129】
この後、倉庫選択制御部35により選択された倉庫情報が搬送指示部37へ送られ、更に搬送経路指示部36により搬送先から搬送元への経路情報が搬送指示部37へと送られる。これらの情報は、搬送指示部37により実際物理的に搬送を実行する搬送車を制御する生産ライン内の搬送車管理部42へと送られて、決定された搬入(出)を行う倉庫と、搬送元から搬送先への搬送経路とに基づき、実際の搬送が実行される。」

第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「物品」は、その意味からみて、本願発明の「商品」に相当し、以下同様に、「軌道2」は「輸送ネットワーク」に、「搬送システム」は「輸送管理システム」に、「倉庫1」は「場所」に、「搬送制御コントローラ12」は「プロセッサ」に、「搬送車6」は「輸送ビークル」にそれぞれ相当する。

(2)引用発明の「搬送指示」は、引用文献1の段落【0030】の記載から、軌道2に沿って設けられた所定の倉庫から別の所定の倉庫へと指示された物品を搬送するための指示であると理解できるから、本願発明の「輸送ネットワークに沿って商品を搬送するリクエスト」及び「輸送ネットワークに沿って、前記商品を配送先場所に配送するリクエスト」に相当し、同様に、「物品を積み込む搬送元ステーション」及び「物品を荷下ろしする搬送先ステーション」は、「商品を受け取る配送元地点」及び「商品を荷降ろしする配送先地点」にそれぞれ相当する。

(3)引用発明の「物品を搬送する搬送車6を決定」することは、軌道2に沿って指示された物品を搬送する搬送車6を決定することを意味するから、本願発明の「輸送ネットワークに沿って前記商品を搬送する輸送ビークルを指定」することに相当する。

(4)引用発明の「決定された搬送車6を、その所在地から、物品を積み込む搬送元ステーションを経由して、物品を荷下ろしする搬送先ステーションへと、軌道2に沿って搬送」することは、搬送車6の所在地、物品を積み込む搬送元ステーション、及び物品を荷下ろしする搬送先ステーションを結ぶ、軌道2上の搬送経路を搬送制御コントローラ12が計算し、当該搬送経路に沿って搬送車6を搬送させることと同義である。
してみると、引用発明は、本願発明の「前記商品を受け取る配送元地点、及び前記商品を荷降ろしする配送先地点を含む、前記輸送ネットワークに沿ったビークル進路軌跡を、前記輸送ネットワークに沿った前記指定輸送ビークルの場所に少なくとも部分的に基づいて計算し、前記指定輸送ビークルを、前記計算されたビークル進路軌跡に沿って搬送」する構成を有しているといえる。

(5)引用発明の「物品を積み込む搬送元ステーションを経由して、物品を荷下ろしする搬送先ステーションへと」搬送車6を「搬送」することは、物品を積み込む搬送元ステーション(商品場所に関連する配送元地点)、及び物品を荷下ろしする搬送先ステーション(配送先場所に関連する配送先地点)を結ぶ搬送経路を搬送制御コントローラ12が計算し、当該搬送経路に沿って搬送車6を搬送させることを意味しているので(上記(4)参照。)、引用発明は、本願発明の「商品の場所に関連する配送元地点、及び配送先場所に関連する配送先地点を含むビークル進路軌跡を計算する」構成を有しているといえる。

(6)引用発明の「搬送車の番号」は、搬送車ごとに割り振られた番号であるから(引用文献1の図6参照。)、本願発明の「固有ビークル識別子」に相当するといえる。そうすると、引用発明の「搬送制御コントローラ12は、軌道2上のチェックポイントの番号及び搬送車の番号を受信することにより、軌道2に沿った搬送車6の所在地を確認し、搬送車状態テーブル24に記憶する」ことは、本願発明の「各輸送ビークルが固有ビークル識別子を含み、前記固有ビークル識別子を前記輸送管理システムが使用して、前記輸送ビークルを識別することにより、前記輸送ネットワークに沿った前記輸送ビークルの場所を確認」することに相当する。

2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「商品を輸送ネットワークに沿って自動的に搬送するために使用される輸送管理システムであって、前記輸送ネットワークは、複数の場所の間に延びる複数の所定の走行路を含み、前記輸送管理システムはプロセッサを備え、前記プロセッサは、
前記輸送ネットワークに沿って商品を搬送するリクエストを受信し、
前記輸送ネットワークに沿って前記商品を搬送する輸送ビークルを指定し、
前記商品を受け取る配送元地点、及び前記商品を荷降ろしする配送先地点を含む、前記輸送ネットワークに沿ったビークル進路軌跡を、前記輸送ネットワークに沿った前記指定輸送ビークルの場所に少なくとも部分的に基づいて計算し、
前記指定輸送ビークルを、前記計算されたビークル進路軌跡に沿って搬送し、
前記プロセッサは更に、
前記輸送ネットワークに沿って、前記商品を配送先場所に配送するリクエストを受信し、
前記商品の場所に関連する配送元地点、及び前記配送先場所に関連する配送先地点を含む前記ビークル進路軌跡を計算するように構成され、
各輸送ビークルが固有ビークル識別子を含み、前記固有ビークル識別子を前記輸送管理システムが使用して、前記輸送ビークルを識別することにより、前記輸送ネットワークに沿った前記輸送ビークルの場所を確認する、輸送管理システム。」

<相違点1>
本願発明は、「計算されたビークル進路軌跡が実際のビークル進路軌跡と相違するとき、ユーザ入力装置に通知を送信するように構成され」ているのに対し、引用発明はそのような構成を具備していない点。

<相違点2>
本願発明は、「輸送ネットワークに沿って設定される走行方向を有する複数のモータ機構を選択的に動作させて、前記指定輸送ビークルを前記輸送ネットワークに沿って搬送し」、「各モータ機構は制動システムを含み、各モータ機構は、供給される電源が遮断されている間磁界を発生させ、該磁界を前記輸送ビークルの移動方向とは反対の方向に移動させるように構成され、該磁界が、前記輸送ビークルに作用して、その速度を低下させ、前記輸送ビークルに対する制動を行」うのに対し、引用発明はそのような構成を具備していない点。

<相違点3>
本願発明は、「プロセッサ」が「輸送ネットワークに沿って、前記商品を配送先場所に配送するリクエストを受信」した後、「輸送ネットワークに沿って、リクエストされた前記商品の場所を決定」し、「配送元地点」を「決定された前記商品の場所」に関連するものとするとともに、「各商品が固有商品識別子を含み、前記固有商品識別子を前記輸送管理システムが使用して、該商品を識別することにより、前記輸送ネットワークに沿った該商品の位置を確認する」構成を具備しているのに対し、引用発明は、搬送制御コントローラ12(プロセッサ)が指示された物品が保管されている倉庫(リクエストされた商品の場所)を決定しているのか否か不明であり、搬送システムが物品固有の識別子を使用して物品の位置を確認しているか否かも不明である点。

第6 当審の判断
1 相違点1について
所定の物品を自動的に搬送するために使用されるシステムにおいて、搬送車の走行経路の誤りが判定された場合に当該システムの管理コンピュータに通知を送信することは、例えば引用文献2、3に記載されているように、本願の優先日前に周知技術であった(上記第4の2及び3の摘記事項を参照。)。特に引用文献3には、管理コンピュータである地上制御装置10がCRTディスプレイ16とキーボード18というユーザ(使用者)のための入出力装置を備え、運行ルートを外れた場合に所定のメッセージがCRTディスプレイ16上に表示される点も記載されている。
そして、引用発明と当該周知技術は、いずれも所定の物品を自動的に搬送するために使用されるシステムに関する技術である点で共通しており、引用発明においても、搬送車の経路誤りが発生し得て、これを判断し通知する必要があるという周知の課題を内在していることに鑑みれば、引用発明において、経路誤りを判断し通知すること、すなわち、搬送制御コントローラ12により決定された搬送車6の進路軌跡が実際の進路軌跡と相違するとき、管理コンピュータである上位コンピュータ10に通知を送信する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明の上位コンピュータ10は、引用文献1の記載によれば、「たとえば工場の生産ライン全体を統括するコンピュータ」(段落【0030】)であるが、そのようなコンピュータが、ユーザのための入出力装置を備え、当該入出力装置によりユーザに警報することも周知である(上記引用文献3の記載を参照。)。
してみると、引用発明を相違点1に係る本願発明の構成とすることは、周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
搬送車のための駆動機構として、搬送経路に沿って設定される走行方向を有する複数のモータ機構を選択的に動作させる機構を採用することは、例えば引用文献4、5に記載されているように、本願の優先日前に周知技術であった(上記第4の4及び5の摘記事項をを参照。)。
また、相違点2における、「各モータ機構は、供給される電源が遮断されている間磁界を発生させ、該磁界を輸送ビークルの移動方向とは反対の方向に移動させるように構成され、該磁界が、輸送ビークルに作用して、その速度を低下させ、輸送ビークルに対する制動を行」う構成は、一般的に「ダイナミックブレーキ」や「回生ブレーキ」と称される制動機構であって、搬送車を駆動するためのリニア方式のモータ機構においてそのような制動機構を設けることも、本願の優先日前に周知であった(引用文献5の段落【0028】参照。)。
そして、引用文献1では、搬送車6を軌道2に沿って搬送させるための駆動機構については特段言及されていないところ、引用発明を実施する上では様々な駆動機構を採用し得たと認められ、搬送車のための駆動機構として周知のリニア方式のモータ機構を採用することに格別の阻害要因も見当たらない。
してみると、引用発明において、搬送車6を軌道2に沿って搬送させるための駆動機構として、上記周知技術に係るモータ機構及び制動機構を採用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

3 相違点3について
引用発明の搬送制御コントローラ12は、上位のコンピュータ10から搬送指示が出されると、「その出発地(搬送元ステーション)と目的地(搬送先ステーション)とが搬送指示テーブル20に記憶される」(段落【0030】)よう構成されているが、出発地(搬送元ステーション)を特定して搬送テーブル20に記憶するためには、少なくとも上位コンピュータ10か搬送制御コントローラ12のいずれかにおいて、搬送指示の対象とされた物品が保管されている倉庫が特定されている必要がある。
他方で、所定の物品を自動的に搬送するために使用されるシステムにおいて、搬送指示の対象とされた物品の保管場所を当該システムの制御装置(コンピュータ)が特定することは、本願の優先日前に周知の技術である上(例えば、引用文献6(上記第4の6)、引用文献7(上記第4の7)に加え、特開2006-225050号公報(以下、「引用文献8」という。)の段落【0009】?【0014】、並びに、特開2007-99451号公報(以下、「引用文献9」という。)の段落【0031】?【0036】、【0045】、【0050】?【0063】の記載も参照。)、当該搬送指示の対象とされた物品の保管場所を各物品に固有の識別子を用いて確認することも、当該分野において従来から用いられている常套手段に過ぎない(引用文献8の「タグID」、引用文献9の「印版ID」を参照。)。
そうすると、引用発明において、上記周知技術にも鑑みれば、上位コンピュータ10又は搬送制御コントローラ12のいずれかにおいて、搬送指示の対象とされた物品が保管されている、軌道2に沿って設けられた倉庫(物品の位置)を、当該物品に固有の識別子を用いて特定する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
その際、(1)上位コンピュータ10において搬送指示の対象とされた物品が保管されている倉庫を特定し、当該倉庫に設けられたステーションを「搬送元ステーション」とした上で、搬送制御コントローラ12に対して搬送指示を出す構成と、(2)上位コンピュータ10からの搬送指示を受けて、搬送制御コントローラ12において搬送指示の対象とされた物品が保管されている倉庫を特定し、当該倉庫に設けられたステーションを「搬送元ステーション」として記憶する構成のいずれかを採用することが考えられるが、どちらの構成を選んでも達成される機能やその効果に差異はないことから、(1)、(2)いずれの構成とするかは当業者が適宜決定し得た選択的事項と認められる。
してみると、引用発明を相違点3に係る本願発明の構成とすることは、周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たことである。

4 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び各周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

5 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-27 
結審通知日 2019-03-05 
審決日 2019-03-18 
出願番号 特願2014-550303(P2014-550303)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森藤 淳志葛原 怜士郎  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 尾崎 和寛
藤田 和英
発明の名称 商品を輸送する輸送処理システム及び方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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