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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B29C 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B29C |
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管理番号 | 1353853 |
審判番号 | 不服2018-12713 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-09-25 |
確定日 | 2019-08-20 |
事件の表示 | 特願2016-189105「電動射出成形機システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月 5日出願公開、特開2018- 51858、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年9月28日の出願であって、平成30年4月20日付けで拒絶理由が通知され、同年6月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年同月28日付けで拒絶査定がされ、同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 平成30年6月28日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は、次のとおりである。 1.(新規性)この出願の請求項1及び4に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1ないし3に記載された発明に基づいてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2012-135913号公報 2.特開2015-70746号公報 3.特開2006-60963号公報 (以下、順に、「引用文献1」のようにいう。) 第3 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本願発明1」のようにいう。)は、平成30年9月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認められる。 「【請求項1】 外部の直流電圧線によって互いに接続されている電動射出成形機と電力供給装置とからなり、 前記電力供給装置は蓄電池を備え、前記電力供給装置から前記外部の直流電圧線を介して前記電動射出成形機に供給される直流電圧は前記蓄電池からの直流電圧のみからなり、該直流電圧が前記電動射出成形機内のモータ駆動用のインバータに供給されるようになっていることを特徴とする電動射出成形機システム。 【請求項2】 請求項1に記載の電動射出成形機システムにおいて、前記蓄電池は複数個からなり、前記電力供給装置において切換え可能に設けられていることを特徴とする電動射出成形機システム。 【請求項3】 請求項1または2に記載の電動射出成形機システムにおいて、前記電力供給装置は複数台設けられ、所定のセレクタを介して前記外部の直流電圧線に切換え接続されるようになっていることを特徴とする電動射出成形機システム。 【請求項4】 請求項1?3に記載の電動射出成形機システムにおいて、前記電動射出成形機システムは上位コントローラを備え、該上位コントローラと前記電動射出成形機と前記電力供給装置は通信手段により互いに情報を送受信するようになっていることを特徴とする電動射出成形機システム。」 第4 引用文献に記載された事項等 1 引用文献1に記載された事項及び引用発明 (1)引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された引用文献1には、「射出成形機」に関して、おおむね次の記載(以下、「引用文献1に記載された事項」という。)がある。なお、下線は他の文献を含め当審で付したものである。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、交流電源の停電発生時に使用可能な電力を蓄電する蓄電装置を備えた射出成形機に関する。」 ・「【発明の効果】 【0010】 上述の手段により、本発明は、停電が発生した場合であっても、蓄電装置における電力により成形動作を継続できるようにする射出成形機を提供することができる。」 ・「【発明を実施するための形態】 【0012】 以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。 【0013】 図1は、本発明の実施例に係る射出成形機に搭載される成形制御システムSYSの構成例を示す概略図であり、図2は、制御部20におけるコントローラ21の構成例を示す機能ブロック図である。 【0014】 成形制御システムSYSは、射出成形機の成形動作を制御するためのシステムであり、主に、交流電源10、制御部20、電力変換部30、電動モータ40、成形機センサ50、周辺機器センサ51、表示装置60、及び音声出力装置61で構成される。 【0015】 交流電源10は、制御部20及び電力変換部30に対して交流電力を供給するための装置であり、例えば、商用の3相交流電源である。」 ・「【0025】 電力変換部30は、交流電力を直流電力に変換し、更にその直流電力を各種負荷に適した交流電力に変換するための装置であり、例えば、射出成形機に搭載されるインバータであって、ダイオードモジュール31と、コンデンサ32と、第二蓄電装置33と、インバータ回路34とを備える。 【0026】 ダイオードモジュール31は、交流電源10の交流電力を直流電力に変換する装置であり、所定電圧の交流電力を所定電圧の直流電力に変換する。 【0027】 コンデンサ32は、ダイオードモジュール31の出力を平滑化するための装置であり、例えば、電解コンデンサである。 【0028】 第二蓄電装置33は、ダイオードモジュール31が出力しコンデンサ32によって平滑化された直流電力を蓄電しながらその直流電力をインバータ回路34に対して供給するための装置であり、例えば、交流電源10からの交流電力の供給が途絶え、ダイオードモジュール31からの直流電力の供給が途絶えた場合であっても、一定期間にわたり所定電圧の直流電力をインバータ回路34に対して継続的に供給できるようにする。 【0029】 また、第二蓄電装置33は、蓄電電圧等の蓄電状態に関する情報をコントローラ21に対して出力し、コントローラ21が第二蓄電装置33の蓄電状態を監視・把握できるようにしてもよい。 【0030】 インバータ回路34は、第二蓄電装置33が出力する直流電力を交流電力に変換するための装置であり、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、IPM(Intelligent Power Module)又はパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のパワースイッチング素子で構成され、制御部20におけるコントローラ21からのタイミング制御信号に応じてパワースイッチング素子のオン/オフを切り換え、直流電力から交流電力への変換を行う。 【0031】 電動モータ40は、交流電力を受けて動作する電気負荷であり、例えば、クローズドループ制御のサーボモータであって、電力変換部30が射出成形機に搭載される場合の射出用モータ、型締用モータ、樹脂計量用モータ、エジェクタ用モータ等である。 【0032】 なお、図1において、成形制御システムSYSは、電力変換部30と電気負荷(電動モータ40)との組み合わせを一つだけ備えるものとして示されているが、別の組み合わせ(例えば、電力変換部30と射出シリンダ用ヒータとの組み合わせ等である。)を追加的に備えるものであってもよい。 【0033】 また、その場合、第二蓄電装置33は、複数の組み合わせのそれぞれにおける電力変換部30に個別に含まれるものであってもよく、複数の電力変換部30によって共用されるものであってもよい。」 ・「【0061】 なお、停電が発生すると(交流電源10からの交流電力の供給が途絶えると)、射出成形機は、交流電力によるコントローラ21の制御動作を第一蓄電装置23に蓄電された電力による制御動作に自動的に切り換えて、第一蓄電装置23に蓄電された電力による制御動作を開始させ、且つ、交流電力による成形動作を第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作に自動的に切り換えて、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を開始させることとなる。」 ・「【0067】 なお、停電が解消すると(例えば、交流電源10又は非常用交流予備電源からの交流電力の供給が再開されると)、射出成形機は、第一蓄電装置23に蓄電された電力によるコントローラ21の制御動作を交流電力による制御動作に自動的に切り換えて、交流電力による制御動作を開始させ、且つ、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を交流電力による成形動作に自動的に切り換えて、交流電力による成形動作を開始させることとなる。また、射出成形機は、その交流電力による第一蓄装置23及び第二蓄電装置33の蓄電を自動的に開始させることとなる。」 ・「【図1】 」 (2)引用発明 引用文献1に記載された装置は、「交流電源10」及び「電力変換部30」等の電力供給手段や「コントローラ21」等の制御手段を備えた「射出成形機」であるから、「射出成形機システム」であるといえる。 したがって、引用文献1に記載された事項を、実施例に関して整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「主に、交流電源10、制御部20、電力変換部30、電動モータ40、成形機センサ50、周辺機器センサ51、表示装置60、及び音声出力装置61で構成される射出成形機の成形動作を制御するための成形制御システムSYSが射出成形機に搭載された射出成形機システムであって、 前記電力変換部30は、射出成形機に搭載されるインバータであって、ダイオードモジュール31と、コンデンサ32と、第二蓄電装置33と、インバータ回路34とを備え、前記電力変換部30から射出成形機に搭載される場合の射出用モータ、型締用モータ、樹脂計量用モータ、エジェクタ用モータ等である前記電動モータ40に、前記インバータ回路34で変換された交流電力を供給するようになっている射出成形機システム。」 2 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された引用文献2には、「制御装置および蓄電システム」に関して、おおむね次の記載(以下、「引用文献2に記載された事項」という。)がある。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、蓄電池を備える電力供給システム及びスレーブ蓄電システムにおける制御装置に関する。」 ・「【発明の効果】 【0010】 本発明によれば、双方向インバータに高電圧が印加されることを抑制する技術を提供することができる。」 ・「【0014】 このように、蓄電池は特定の負荷のバックアップとしての役割と、ピークシフトとしての役割の二つの役割を持つ。実施の形態に係る配電システムは、蓄電池に上述の二つの役割を果たさせるために、商用電源が通電中の通常時には蓄電池に一定の蓄電量を確保しつつピークシフトを実行し、商用電源が停電の場合には、蓄電池を放電して特定の負荷に電力を供給する。 【0015】 図1は、本発明の実施の形態1に係る配電システム50の構成を示す図である。実施の形態1に係る配電システム50は負荷70に電力を供給するためのシステムである。当該配電システム50は、複数の蓄電システム10、第1検出器20、第2検出器30、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、分電盤40を備える。図1に示す例では配電システム50は、複数の蓄電システム10として第1蓄電システム10aおよび第2蓄電システム10bの二つを備える。なお三つ以上の蓄電システム10を備えてもよい。 【0016】 図2は、本発明の実施の形態1に係る配電システム50に含まれる第1蓄電システム10aおよび第2蓄電システム10bの構成を示す図である。以下の説明では第1蓄電システム10aと第2蓄電システム10bは同じ蓄電システムであるとし、第1蓄電システム10aをマスタ、第2蓄電システム10bをスレーブとする。」 ・「【0044】 まずマスタの第1制御部15aを説明する。第1取得部152aは停電時、第1種負荷71に流れる電流の値を第1検出器20から取得する。また第1取得部152aは停電時、第1種負荷71に印加される電圧の値を第1検出器20または第2検出器30から取得する。 【0045】 目標値保持部158aは、停電時に自立運転する際に第1双方向インバータ12aから出力されるべき交流電力の電圧および周波数を保持する。目標値保持部158aは、1周期分の各サンプリングポイントの目標電圧値をテーブルで保持してもよいし、その目標電圧値を算出するための数式を保持してもよい。サンプリングポイントは、例えば15[kHz]ごとに設定される。 【0046】 第1駆動制御部151aは、停電時にて、予め設定された電圧および周波数の交流電力を系統側に供給するよう第1双方向インバータ12aを駆動制御する。この電圧および周波数は目標値保持部158aに保持される。本明細書では200[V]、60[Hz]の交流電圧を、第1双方向インバータ12aの交流側端子から出力するよう駆動制御する。 【0047】 より具体的には、第1駆動制御部151aは、第1双方向インバータ12aを構成する三相交流インバータの各IGBTのゲート端子に印加する駆動電圧のデューティ比を調整する。停電時にて、第1種負荷71に印加される電圧が低下した場合、第1駆動制御部151aは駆動電圧のデューティ比を上げる。反対に第1種負荷71に印加される電圧が上昇した場合、第1駆動制御部151aは駆動電圧のデューティ比を下げる。このようなフィードバック制御により、第1駆動制御部151aは、第1種負荷71に印加される電圧の値が目標電圧値を維持するよう制御する。 【0048】 第1判定部153aは、第1検出器20から取得される電流の値、および目標電圧値をもとに第1双方向インバータ12aの出力容量を算出する。第1判定部153aは、算出した出力容量と第1双方向インバータ12aの定格出力容量を比較し、前者が後者を超えるか否か判定する。 【0049】 本明細書では第1双方向インバータ12aの定格出力容量を10[kVA]、第1種負荷71の容量を15[kVA]とする例を考える。以下、説明を簡単にするため、第1双方向インバータ12aおよび第1種負荷71の力率を無視して考える。このように本明細書では一つの蓄電システム10からの、定格出力容量の範囲内の電力供給では、第1種負荷71の容量を満たさない例を前提としている。したがって複数の蓄電システム10が連携して、第1種負荷71に電力供給する必要がある。 【0050】 第1電流値算出部154aは、算出された第1双方向インバータ12aの出力容量が第1双方向インバータ12aの定格出力容量を超えるとき、第2蓄電システム10bから第1ノードN1へ出力すべき電流の値を算出する。本実施の形態ではマスタの第1蓄電システム10aから第1双方向インバータ12aの定格出力容量の電流を出力し、スレーブの第2蓄電システム10bから不足分の電流を出力する。上述の例では第1蓄電システム10aが10[kVA]を分担し、第2蓄電システム10bが5[kVA]を分担する。 【0051】 なお上述の第1判定部153aによる出力容量の判定処理はスキップしてもよい。即ち第1電流値算出部154aは、停電発生を条件に第2蓄電システム10bから第1ノードN1へ出力すべき電流の値を算出する。この電流の値が負になる場合は、第1蓄電システム10aからの電力供給のみで第1種負荷71の容量を満たすことになる。 【0052】 指示部155aは、第1蓄電池管理部16aおよび第2蓄電池管理部16bを介して第2制御部15bに、第1ノードN1に電流を出力するよう指示する。その際、第2蓄電システム10bが分担すべき電流の値を指示する。 【0053】 次にスレーブの第2制御部15bを説明する。第2取得部152bは停電時、第1種負荷71に印加される電圧の値を第1検出器20または第2検出器30から取得する。また第2双方向インバータ12bから第1ノードA1に流れる電流の値を第2検出器30から取得する。即ち、第2蓄電システム10bの出力電流の値を取得する。 【0054】 第2駆動制御部151bは、停電時にて、第1検出器20または第2検出器30から検出される電圧に同期した交流電圧を出力するよう第2双方向インバータ12bを駆動制御する。具体的には第2検出器30から検出される交流電圧の位相および周波数と同期した位相および周波数の交流電圧を第2双方向インバータ12bに生成させる。当該位相および周波数は、第1検出器20または第2検出器30から検出される電圧を時系列に観測することにより特定できる。例えば、ゼロクロス間の時間をカウントすることにより、第1双方向インバータ12aから出力される交流電圧の位相および周波数を特定できる。 【0055】 指示受領部155bは、指示部155aから電流出力指令を受領する。その際、第2蓄電システム10bが分担すべき電流の値も受領する。その値は実効値で与えられる。目標値算出部158bは、指示受領部155bにより受領された電流の値と、上述の交流電圧の位相および周波数をもとに各時刻の目標電流値を算出する。目標値算出部158bは、1周期分の各サンプリングポイントの目標電流値を算出して、目標電流値テーブルを作成してもよいし、リアルタイムに各サンプリングポイントの目標電流値を算出し続けてもよい。サンプリングポイントは、例えば15[kHz]ごとに設定される。 【0056】 第2駆動制御部151bは、各サンプリングポイントにおいて第2検出器30から検出される電流の値と、目標値算出部158bにより算出される対応するサンプリングポイントの目標電流値とが一致するよう第2双方向インバータ12bを駆動制御する。前者が後者より大きい場合、第2駆動制御部151bは、第2双方向インバータ12bを駆動するための駆動電圧のデューティ比を下げる。反対に前者が後者より小さい場合、第2駆動制御部151bは当該駆動電圧のデューティ比を上げる。このようなフィードバック制御により定電流出力を実現できる。」 3 引用文献3に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された引用文献3には、「無停電電源システム」に関して、おおむね次の記載(以下、「引用文献3に記載された事項」という。)がある。 ・「【0001】 本発明は、無停電電源装置と系統切換装置を用いて構成する改良された無停電電源システムに関する。」 ・「【発明の効果】 【0010】 本発明によれば、自由なシステム構成で無停電電源装置と系統切換装置の配置が可能となり、システム拡張性に優れ、且つ信頼性及び保守性に優れたフレキシブルな無停電電源システムを提供することが可能となる。」 ・「【0030】 このように単一で機能する無停電電源装置2D、2E及び2Fを必要容量分並列接続し、系統切換装置3D、3E及び3Fも必要容量分並列接続すると、既設の無停電電源システムに対し、システム容量を増加させることが容易に可能となる。また、共通の切換制御装置5Bを内蔵した系統切換制御盤7を使用すれば、全ての系統切換装置3D、3E及び3FのUPSラインとバイパスラインの切換えにおけるバイパス側スイッチの開閉制御は切換制御装置5Bのみから行われるため、切換制御部分が単一となり、信頼性を損なうことがない。尚、系統切換装置3D、3E及び3F内の各デバイスの開閉制御動作については、実施例1で説明した動作と基本的に同様である。 【0031】 さらに、系統切換制御盤7に系統切換装置を増設可能な空きスペースを用意しておけば、既設の無停電電源システムに対し、システム容量を増加させることが容易に可能となる。 【0032】 また、システム運用中に系統切換装置を追加するようにすれば、システムを停止させることなく、システム全体の増設を行うことも可能となる。 【実施例4】 【0033】 図4は本発明に係る無停電電源システムの実施例3を示す回路構成図である。 【0034】 この実施例4の各部について図3の実施例3に係る無停電電源システムの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。この実施例4が実施例3と異なる点は、図3の切換制御装置5Bを収納した切換制御盤7を、切換制御装置5Cを収納した切換制御盤7Aに置き換えた点と、無停電電源装置2G、2H及び2Jを並列構成し、この並列出力をバイパスラインと切換えるため、系統切換装置3G、3H及び3J及び切換制御装置5Dから構成される切換制御盤7Bを設け、切換制御盤7Aの出力と切換制御盤7Bの出力を、非常時にお互いに電力を融通可能にするために母線連絡開閉器8で接続可能にした点である。 【0035】 上記構成は、実施例3に示した並列システムを2組用意し、それぞれの切換制御装置7A及び7Bを1台づつ配置した構成である。この切換制御装置7A及び7Bは互いにループ状に接続され、マスタ-スレーブ構成またはトークンパッシング等の手法を用いて制御主体を何れかの1台とし、且つその制御主体を他の1台に変更することも可能な構成としている。尚、系統切換装置3D、3E及び3F並びに系統切換装置3G、3H及び3J内の各デバイスの開閉制御動作については、実施例1で説明した動作と基本的に同様である。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比する。 ア 引用発明における「射出成形機」は、本願発明1における「電動射出成形機」に相当する。 イ 引用発明における「電力変換部30」は、本願発明1における「電力供給装置」に相当し、同様に「第二蓄電装置33」は「蓄電池」に相当する。 ウ 引用発明における「主に、交流電源10、制御部20、電力変換部30、電動モータ40、成形機センサ50、周辺機器センサ51、表示装置60、及び音声出力装置61で構成される射出成形機の成形動作を制御するための成形制御システムSYSが射出成形機に搭載された射出成形機システム」は、本願発明1における「外部の直流電圧線によって互いに接続されている電動射出成形機と電力供給装置とからな」る「電動射出成形機システム」と、「電力供給装置」が「電動射出成形機」を構成するものであるかどうかは別にして、「電動射出成形機と電力供給装置」を有する「電動射出成形機システム」という限りにおいて一致する。 エ したがって、両者は次の点で一致する。 「電動射出成形機と電力供給装置を有し、 前記電力供給装置は蓄電池を備えている電動射出成形機システム。」 オ そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 (ア)相違点1 「電動射出成形機と電力供給装置」を有する「電動射出成形機システム」に関して、本願発明1においては、「外部の直流電圧線によって互いに接続されている電動射出成形機と電力供給装置とからな」る「電動射出成形機システム」であるのに対し、引用発明においては、「主に、交流電源10、制御部20、電力変換部30、電動モータ40、成形機センサ50、周辺機器センサ51、表示装置60、及び音声出力装置61で構成される射出成形機の成形動作を制御するための成形制御システムSYSが射出成形機に搭載された射出成形機システム」である点。 (イ)相違点2 「電力」の供給に関して、本願発明1においては、「前記電力供給装置から前記外部の直流電圧線を介して前記電動射出成形機に供給される直流電圧は前記蓄電池からの直流電圧のみからなり、該直流電圧が前記電動射出成形機内のモータ駆動用のインバータに供給されるようになっている」のに対し、引用発明においては、「前記電力変換部30から射出成形機に搭載される場合の射出用モータ、型締用モータ、樹脂計量用モータ、エジェクタ用モータ等である前記電動モータ40に、前記インバータ回路34で変換された交流電力を供給するようになっている」点。 (2)判断 ア 相違点について そこで、相違点について検討する。 (ア)相違点1について 引用発明における「電力変換部30」及び「電動モータ40」は、「射出成形機」に搭載された「成形制御システムSYS」を構成するものであるから、「射出成形機」を構成するものであるといえ、いずれも「射出成形機」の「内部」にあるといえる。 そうすると、引用発明は、「内部」の「交流電圧線」(引用発明は、「電動モータ40」に「交流電力」を供給するものであるから、「交流電圧線」である。)によって互いに接続されているといえるが、「外部の直流電圧線によって互いに接続されている」とはいえない。 したがって、相違点1は実質的な相違点である。 そして、引用文献1には、「電力変換部30」を「射出成形機」に搭載しないようにして、また、その際、「交流電圧」ではなく「直流電圧」を供給するようにして、「電力変換部30」と「電動モータ40」を「外部の直流電圧線」によって互いに接続することは記載も示唆もされていない。 また、引用文献2及び3は、本願の請求項2及び3に記載された発明特定事項に対して引用されたものであり、これらの文献には、「電力変換部30」を「射出成形機」に搭載しないようにして、また、その際、「電動モータ40」に「交流電力」ではなく「直流電力」を供給するようにして、「電力変換部30」と「電動モータ40」を「外部の直流電圧線」によって互いに接続することは記載も示唆もされていない。 よって、引用発明において、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を想到することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 (イ)相違点2について 引用文献1の「第二蓄電装置33は、ダイオードモジュール31が出力しコンデンサ32によって平滑化された直流電力を蓄電しながらその直流電力をインバータ回路34に対して供給するための装置であり」(【0028】)、「停電が発生すると・・・(略)・・・交流電力による成形動作を第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作に自動的に切り換えて、第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を開始させることとなる。」(【0061】)及び「停電が解消すると・・・(略)・・・第二蓄電装置33に蓄電された電力による成形動作を交流電力による成形動作に自動的に切り換えて、交流電力による成形動作を開始させることとなる。」(【0067】)という記載並びに図1からみて、引用発明における「電力変換部30」は、停電していない時は、「ダイオードモジュール31が出力しコンデンサ32によって平滑化された直流電力」を「インバータ回路34」を介して「電動モータ40」に供給するものであり、「第二蓄電装置33」に「蓄電された電力」のみを「インバータ回路34」を介して「電動モータ40」に供給するものではないから、「前記電動射出成形機に供給される直流電圧は前記蓄電池からの直流電圧のみからなり」となっているとはいえない。 したがって、相違点2は実質的な相違点である。 そして、引用文献1には、「第二蓄電装置33」に「蓄電された電力」のみを「インバータ回路34」を介して「電動モータ40」に供給することは記載も示唆もされていない。 また、引用文献2及び3は、本願の請求項2及び3に記載された発明特定事項に対して引用されたものであり、これらの文献には、「第二蓄電装置33」に「蓄電された電力」のみを「インバータ回路34」を介して「電動モータ40」に供給することは記載も示唆もされていない。 よって、引用発明において、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を想到することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 イ 効果について そして、本願発明1は、相違点1及び2に係る本願発明1の発明特定事項を有することにより、「停電時においても成形サイクルを継続することができ、電力事情が良好でない国や地域においても、安定的に運転することができる。」、「運転可能な成形サイクル数を多くするために蓄電量を増やして蓄電池を大きくしても、電力供給装置が大型化するだけで、電動射出成形機を大型にする必要はない。」及び「蓄電池の交換は電力供給装置においてすればよく、電動射出成形機をメンテナンスする必要がない。つまり他の手段で直流電流を供給するようにすれば電動射出成形機は運転を継続することができる。本発明の電動射出成形機システムは電動射出成形機の運転を継続することができるので生産性が高い。」(本願明細書の【0009】参照。)という引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 (3)まとめ したがって、本願発明1は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 2 本願発明2及び3について 請求項2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本願発明2及び3は、本願発明1をさらに限定したものといえる。 したがって、本願発明2及び3は、本願発明1と同様に、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本願発明4について 請求項4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本願発明4は、本願発明1をさらに限定したものといえる。 したがって、本願発明4は、本願発明1と同様に、引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 第6 原査定について 原査定の拒絶の理由は概略、上記第2のとおりであり、その理由に理由がないのは、上記第3ないし5で検討のとおりである。 したがって、原査定の拒絶の理由を維持することはできない。 第7 むすび したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-08-05 |
出願番号 | 特願2016-189105(P2016-189105) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(B29C)
P 1 8・ 121- WY (B29C) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 関口 貴夫 |
特許庁審判長 |
須藤 康洋 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 植前 充司 |
発明の名称 | 電動射出成形機システム |
代理人 | 杉谷 嘉昭 |
代理人 | 杉谷 裕通 |