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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L |
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管理番号 | 1353888 |
審判番号 | 不服2018-7738 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-05 |
確定日 | 2019-08-01 |
事件の表示 | 特願2013-101818「超高圧ホース用の継手の製造方法および超高圧ホース」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月27日出願公開、特開2014-222090〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年5月14日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 2月 2日付け:拒絶理由通知書 同年 4月10日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月 5日付け:拒絶理由通知書 同年11月10日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 2月27日付け:拒絶査定 同年 6月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年 9月25日 :上申書の提出 第2 平成30年6月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年6月5日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「【請求項1】 管状の芯体および該芯体の一方の端部側で該芯体の外周に配置される外筒体と、 一方の端部に、前記芯体の他方の端部側に形成された挿入部が挿入される挿入孔を備え、該挿入孔とは反対側の端部に、該挿入孔の内径より大きい内径を有する雌ねじ部を備える雌ねじナットと、 前記雌ねじナットの挿入孔の内径より大きく、該雌ねじナットの雌ねじ部の内径より小さく、かつ、該雌ねじナットのナット穴内に実質的に隙間なく嵌まる外径を有し、前記芯体の挿入部に外挿されて固定される環状部材と、を含む超高圧ホース用の継手の製造方法であって、 前記環状部材が筒状を呈し、 前記芯体の前記挿入部と前記雌ねじナットの前記挿入孔との間に実質的に隙間がなく、 前記芯体の前記挿入部を、前記雌ねじナットの前記挿入孔に一方の端部側から挿入した後、該雌ねじナットを、該芯体の長手方向における前記外筒体寄りの位置に移動させることで、該芯体の挿入部の先端が該雌ねじナットのナット穴を貫通して該雌ねじナットの雌ねじ部側から突出した状態として、突出した該芯体の該挿入部に対し、前記環状部材を、他方の端部側である該挿入部の先端側から外挿して固定するにあたり、 前記環状部材の内周面と前記芯体の前記挿入部の外周面とを螺合により固定するとともに、該環状部材の内周面のねじの回転方向と、前記雌ねじ部の回転方向とを逆方向とすることを特徴とする超高圧ホース用の継手の製造方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の平成29年11月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1は次のとおりである。 「【請求項1】 管状の芯体および該芯体の一方の端部側で該芯体の外周に配置される外筒体と、 一方の端部に、前記芯体の他方の端部側に形成された挿入部が挿入される挿入孔を備え、該挿入孔とは反対側の端部に、該挿入孔の内径より大きい内径を有する雌ねじ部を備える雌ねじナットと、 前記雌ねじナットの挿入孔の内径より大きく、該雌ねじナットの雌ねじ部の内径より小さく、かつ、該雌ねじナットのナット穴内に実質的に隙間なく嵌まる外径を有し、前記芯体の挿入部に外挿されて固定される環状部材と、を含む超高圧ホース用の継手の製造方法であって、 前記芯体の前記挿入部と前記雌ねじナットの前記挿入孔との間に実質的に隙間がなく、 前記芯体の前記挿入部を、前記雌ねじナットの前記挿入孔に一方の端部側から挿入した後、該雌ねじナットを、該芯体の長手方向における前記外筒体寄りの位置に移動させることで、該芯体の挿入部の先端が該雌ねじナットのナット穴を貫通して該雌ねじナットの雌ねじ部側から突出した状態として、突出した該芯体の該挿入部に対し、前記環状部材を、他方の端部側である該挿入部の先端側から外挿して固定するにあたり、 前記環状部材の内周面と前記芯体の前記挿入部の外周面とを螺合により固定するとともに、該環状部材の内周面のねじの回転方向と、前記雌ねじ部の回転方向とを逆方向とすることを特徴とする超高圧ホース用の継手の製造方法。」 2 本件補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「環状部材」について、「筒状を呈し」という事項を付加して限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された、特開2009-236200号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 この発明は、高圧ホースの接続用に用いて好適なホース接続用の袋ナット付継手金具に関する。」 「【0028】 次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。 図1において、10はホース(高圧ホース)で、内面ゴム層12と、補強層14と、外面ゴム層16との積層構造を成している。 18は、ホース10を相手部材に接続するための袋ナット付継手金具(以下単に継手金具とする)である。 尚この例において、ホース10は内径が9mmφのもので、継手金具18は、同内径を有するホース10用に構成された継手金具である。 この継手金具18は、金属製のパイプ20と、袋ナット22と、ソケット金具24とを有している。 この例においてホース10,パイプ20,袋ナット22及びソケット金具24は何れも横断面形状が円形状をなしている。 【0029】 パイプ20は、ホース10側の軸線方向の一端側に、ホース10の内部に挿入される挿入部26を有しており、また他端側に径方向外向きに環状に突出したナット掛け用の鍔状の頭部28を有している。 【0030】 ソケット金具24は、スリーブ状のソケット本体30、及び袋ナット22側の軸線方向の端部(図中左端部)で径方向内向きに環状に突出した鍔部32を有しており、その鍔部32の内周端をパイプ20の外周面の環状の係入溝34に係入させる状態に、図中左端部がかしめ部S1で縮径方向にかしめられ、パイプ20に固定されている。 【0031】 ソケット本体30は、挿入部26との間に環状の挿入空間36を形成しており、そこにホース10の端部が挿入されている。 ソケット本体30はその状態でかしめ部S2,S3において縮径方向にかしめられ、パイプ20の挿入部26とでホース10の端部を内外両側から挟持する状態に、挿入部26とともにホース10に固定されている。 【0032】 袋ナット22は金属製で図中下端側に、外形形状が工具掛け用に六角形状とされた厚肉の工具掛け部38を有し、その内周側に相手部材との接続用に雌ねじ部40が設けられている。 また反対側の上端側に、径方向内向きに環状(円環状)に突出した鍔状の係合部42が設けられている。 【0033】 袋ナット22は、六角材の削り出しによって製造されたもので(鍛造によって製造したものであっても良い)、係合部42の内径が組付前後を通じて同一内径である。 即ち袋ナット22を製造した段階で、係合部42の内径が最終組付状態の内径とされており、その内径はパイプ20の外形円形の頭部28の外径よりも小径をなしている。 【0034】 つまり袋ナット22は、パイプ20への組付けのためにかしめ加工されておらず、後述するようにソケット金具24を組み付ける前の段階で(従って当然にホース10も固定されていない)、パイプ20に対し挿入部26側のパイプ端でパイプ20に嵌め合され、その状態でパイプ20に沿って頭部28側に移動せしめられて頭部28の位置に持ち来され、その位置で頭部28に対し非かしめ状態で組み付けられている。 その組付状態で袋ナット22は、係合部42の頭部28に対する係合によって、パイプ20に対し回転可能に且つ抜止状態に嵌合されている。 ・・・ 【0043】 このように本実施形態では、袋ナット22をパイプ20に通して目的とする頭部28の位置に組み付けることができる。 従ってパイプ20を予め曲げ加工し、その後において表面に電気メッキによるメッキ処理を施し、その上で袋ナット22をパイプ20に組み付けることができる。 そしてその後においてソケット金具24をパイプ20に組み付け、更にソケット金具24とパイプ20の挿入部26との間にホース10の端部を挿入し、その後ソケット金具24を縮径方向にかしめることで、ホース10に対して継手金具18を固定することができる。」 「【図1】 」 (イ)上記記載から、引用文献1には次の技術的事項が記載されていると認められる。 a 「【0032】袋ナット22は金属製で図中下端側・・・の内周側に相手部材との接続用に雌ねじ部40が設けられている。・・・反対側の上端側に、径方向内向きに環状(円環状)に突出した鍔状の係合部42が設けられ」ているとの記載、及び、「【0034】・・・パイプ20に対し挿入部26側のパイプ端でパイプ20に嵌め合され、その状態でパイプ20に沿って頭部28側に移動せしめられて頭部28の位置に持ち来され、その位置で頭部28に対し非かしめ状態で組み付けられている。その組付状態で袋ナット22は、係合部42の頭部28に対する係合によって、パイプ20に対し回転可能に且つ抜止状態に嵌合されている。」との記載に、図1に示された部材の大小関係を併せてみると、袋ナット22は、一方の端部(図中上端側)において、環状に突出した鍔状の係合部42により、パイプ20の挿入部26が挿入される挿入孔が形成されており、該挿入孔とは反対側の端部(図中下端側)において、挿入孔の内径より大きい内径を有する雌ねじ部40を備えるものであるといえる。 b 上記aに加え、「【0033】・・・即ち袋ナット22を製造した段階で、係合部42の内径が最終組付状態の内径とされており、その内径はパイプ20の外形円形の頭部28の外径よりも小径をなしている。」との記載から、パイプ20の挿入部26とは反対側の端部に形成された頭部28の外径は、袋ナット22の挿入孔の内径より大きく、袋ナット22の雌ねじ部40の内径より小さく形成されている。 (ウ)上記(ア)及び(イ)並びに図1に示された内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「パイプ20の一方の端部でパイプ20の外周に固定されるソケット金具24と、 一方の端部に、パイプ20の一方の端部側に形成された挿入部26が挿入される挿入孔を備え、挿入孔とは反対側の端部に、挿入孔の内径より大きい内径を有する雌ねじ部40を備える袋ナット22と、 パイプ20の挿入部26とは反対側の端部に形成された頭部28の外径は、袋ナット22の挿入孔の内径より大きく、袋ナット22の雌ねじ部40の内径より小さく形成され、 パイプ20に挿入された袋ナット22は、パイプ20に沿って頭部28側に移動せしめられ頭部28に組み付けられる、 高圧ホース用の継手の製造方法。」 イ 引用文献2 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された、実願昭60-202094号(実開昭62-115137号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「[従来の技術] 従来一般的に使用されている圧力媒体用接続治具1’は第2図のような構造であった。すなわち、受口側の管20が固着される固定板2と、これに接続される接続管24の端部に螺着された固定ナット4に外嵌される筒状の接続ナット5とをそなえ、前記固定板2に固着された受口側の管20の外周部に接続ナット5を螺合させることにより受口側の管20と接続管24とを付き合わせて接合するものである。」(明細書1頁下3行?2頁7行) 「 」 (イ)上記(ア)及び第2図に示された内容を総合すると、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されていると認められる。 「接続ナット5の挿入孔の内径より大きく、接続ナット5の雌ねじ部の内径より小さく、かつ、接続ナット5のナット穴内に嵌まる外径を有し、接続管24の挿入部に外挿されて固定される筒状の固定ナット4を備え、 固定ナット4の内周面と接続管24の挿入部の外周面とを螺合により固定する、圧力媒体用接続治具。」 ウ 引用文献3 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された、特開昭51-56020号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「たとえば、流体導通用の管接合部としては、建築設備用配管類や消防ホースなどの管継手に代表される。・・・本発明の目的は、構造的機能プラス設備(給水とか消火)的機能の両方を兼ね備えた管状部材による構造物の成立条件を満たし得る主部材の継手、換言すれば、構造用ならびに設備的配管機能の双方を充足する流体導通構造用管の接合方法を提供することにある。」(1頁右下欄1?10行) 「図中1と2は接合される一対の構造用管を示している。双方の管端1A、2Aは、ほぼ同じような外径でかつかなりの肉厚をもつて構成されている。 特に図中右側の管2の管端2Aには、ねじカプラ-3が回転可能に取付けられ、他方の管端1Aには、ねじカプラ-3の内面に切られためねじに対応するおねじ4が切られている。 ねじカプラ-3を管2の管端2Aへ回転可能にかつ軸方向には決して離脱しないように取付ける手段として、管端2Aへおねじ5を切り、それへねじ込んだリングナツト6でねじカプラ-右端のフランジ部分7を押し止どめる構成になつている。好ましくは2ケ所のねじ4と5は逆ねじにするべきである。」(2頁左上欄13行?右上欄6行) 「 」 (イ)上記(ア)及び図面に示された内容を総合すると、引用文献3には、次の技術(以下、「引用文献3記載の技術」という。)が記載されていると認められる。 「ねじカプラー3の挿入孔の内径より大きく、ねじカプラー3のめねじ部の内径より小さく、かつ、ねじカプラー3の穴内に嵌まる外径を有し、管端2Aに外挿されて固定される筒状のリングナット6を備え、 リングナット6の内周面と管端2Aの外周面とをねじ固定するとともに、リングナット6の内周面のめねじが螺合される管端2Aのおねじ5と、ねじカプラー3の内周面のめねじが螺合される管端1Aのおねじ4とを逆ねじとする、流体導通構造用管接合部。」 エ 引用文献4 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された、特開平10-169873号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高圧水による切断機、洗浄機、液圧加工機や、高圧の油圧機器等に用いられる高圧流体(1000kgf/cm^(2)を超えるような高圧流体)用分岐管継手に関する。」 「【0010】 【発明の実施の形態】図1は本発明の請求項1に対応する高圧流体用分岐管継手による分岐管の接続構造例を示す一部縦断側面図・・・であり、1は高圧流体用分岐管継手としての継手本体、2は分岐管、3、6は袋ナット、4、7は締付用ワッシャ、5は本管である。」 「【0012】・・・一方、該継手本体1の両端部には前記分岐管の接続構造と同様、流通路1-1の開口部に外方に開口する周面を受圧座面1-5を設け、本管5側の接続頭部5-2のなす押圧座面5-3を本管5側の受圧座面1-5に当接係合せしめ、本管5の先端に螺合した締付用ワッシャ7を介して継手本体1に螺合する袋ナット6を締着して接続構成するものである。5-1は本管15の流通路である。」 「【図1】 」 (イ)上記(ア)の記載並びに図1に示された内容を総合すると、引用文献4には、次の技術(以下、「引用文献4記載の技術」という。)が記載されていると認められる。 「袋ナット6の挿入孔の内径より大きく、袋ナット6の雌ねじ部の内径より小さく、かつ、袋ナット6のナット穴内に嵌まる外径を有し、本管5の挿入部に外挿されて固定される筒状の締付用ワッシャ7を備え、 締付用ワッシャ7の内周面と本管5の挿入部の外周面とを螺合により固定する、高圧流体用分岐管継手。」 (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「パイプ20」は、その作用、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明の「管状の芯体」に相当し、以下同様に、「ソケット金具24」は「外筒体」に、「袋ナット22」は「雌ねじナット」に、それぞれ相当する。 (イ)引用発明の「パイプ20に挿入された袋ナット22は、パイプ20に沿って頭部28側に移動せしめられ頭部28に組み付けられる」態様とは、袋ナット22の挿入孔が、パイプ20の挿入部26とは反対端部側においてもパイプ20に挿入されて組み付けられている態様といえる。 そうすると、引用発明の「一方の端部に、パイプ20の一方の端部側に形成された挿入部26が挿入される挿入孔を備え、挿入孔とは反対側の端部に、挿入孔の内径より大きい内径を有する雌ねじ部40を備える袋ナット22」は、本件補正発明の「一方の端部に、前記芯体の他方の端部側に形成された挿入部が挿入される挿入孔を備え、該挿入孔とは反対側の端部に、該挿入孔の内径より大きい内径を有する雌ねじ部を備える雌ねじナット」に相当する。 (ウ)引用発明の「高圧ホース用の継手の製造方法」と本件補正発明の「超高圧ホース用の継手の製造方法」とは、「高圧ホース用の継手の製造方法」という限りにおいて一致する。 イ 以上から、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「管状の芯体および該芯体の一方の端部側で該芯体の外周に配置される外筒体と、 一方の端部に、前記芯体の他方の端部側に形成された挿入部が挿入される挿入孔を備え、該挿入孔とは反対側の端部に、該挿入孔の内径より大きい内径を有する雌ねじ部を備える雌ねじナットとを含む高圧ホース用の継手の製造方法。」 (相違点) ・相違点1 本件補正発明が、「前記雌ねじナットの挿入孔の内径より大きく、該雌ねじナットの雌ねじ部の内径より小さく、かつ、該雌ねじナットのナット穴内に実質的に隙間なく嵌まる外径を有し、前記芯体の挿入部に外挿されて固定される環状部材と、を含む超高圧ホース用の継手の製造方法であって、 前記環状部材が筒状を呈し、 前記芯体の前記挿入部と前記雌ねじナットの前記挿入孔との間に実質的に隙間がなく、 前記芯体の前記挿入部を、前記雌ねじナットの前記挿入孔に一方の端部側から挿入した後、該雌ねじナットを、該芯体の長手方向における前記外筒体寄りの位置に移動させることで、該芯体の挿入部の先端が該雌ねじナットのナット穴を貫通して該雌ねじナットの雌ねじ部側から突出した状態として、突出した該芯体の該挿入部に対し、前記環状部材を、他方の端部側である該挿入部の先端側から外挿して固定するにあたり、 前記環状部材の内周面と前記芯体の前記挿入部の外周面とを螺合により固定するとともに、該環状部材の内周面のねじの回転方向と、前記雌ねじ部の回転方向とを逆方向とする」のに対し、引用発明は、「パイプ20の挿入部26とは反対側の端部に形成された頭部28の外径は、袋ナット22の挿入孔の内径より大きく、袋ナット22の雌ねじ部40の内径より小さく形成され、パイプ20に挿入された袋ナット22は、パイプ20に沿って頭部28側に移動せしめられ頭部28に組み付けられる」ものであり、環状部材を含め上記構成を有しない点。 ・相違点2 高圧ホース用の継手の製造方法について、本件補正発明は「超高圧ホース用」の継手の製造方法であるのに対し、引用発明は「高圧ホース用」の継手の製造方法である点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について (ア)引用文献2、3及び4記載の技術における「固定ナット4」、「リングナット6」及び「締付用ワッシャ7」のそれぞれは、本件補正発明の「環状部材」に相当するものである。 そうすると、引用文献2ないし4記載の技術によれば、雌ねじナットの挿入孔の内径より大きく、該雌ねじナットの雌ねじ部の内径より小さく、かつ、該雌ねじナットのナット穴内に嵌まる外径を有し、管の挿入部に外挿されて固定される筒状を呈する環状部材を備え、環状部材の内周面と管の挿入部の外周面とを螺合により固定する継手は、管継手の技術分野において周知技術であるといえる(以下、「周知技術」という。)。 そして、引用発明の「袋ナット22」及び「パイプ20の頭部28」の組合せを用いた継手において、同様の継手技術である「雌ねじナット」、「環状部材」及び「管の挿入部」の組み合わせに係る上記周知技術に置換することは、当業者であれば格別の創意工夫を要することなく、なし得たことである。 また、雌ねじナットの雌ねじ部の内径に対する環状部材の外径の寸法関係について、例えば引用文献2ないし4の図面を参照すると、雌ねじナットの内部に環状部材を位置させたまま環状部材を回動させて管の挿入部に螺合させることは不能ないし非効率となることが明らかであるから、環状部材を管の挿入部に螺合させる際には、管の挿入部を雌ねじナットの挿入孔に一方の端部側から挿入した後、雌ねじナットを管の長手方向に移動させ、管の挿入部の先端が、雌ねじナットのナット穴を貫通して更に雌ねじナットの雌ねじ部側から突出した状態とされ、その突出された状態の管の挿入部に対し、環状部材を他方の端部側である挿入部の先端側から外挿して螺合により固定することは、上記周知技術の適用に際して、当業者が通常採用し得る製造方法であるといえる。 (イ)さらに、上記周知技術の製品化等に係る具体化手段について検討すると、環状部材の内周面と管の挿入部の外周面との螺合、及び、雌ねじナットの雌ねじ部による螺合の2箇所の螺合を用いた継手において、引用文献3記載の技術における逆ねじ態様、すなわち環状部材の内周面のねじの回転方向と、雌ねじ部の回転方向とを逆方向とする態様は、緩み防止のために一般に用いられる態様である。 (ウ)また、相違点1に係る本件補正発明の「該雌ねじナットのナット穴内に実質的に隙間なく嵌まる外径を有」する「環状部材」であること、及び、「芯体の前記挿入部と前記雌ねじナットの前記挿入孔との間に実質的に隙間がな」いことについては、2つの部材の間隔を可能な範囲で単に近接させることに等しいから、上記隙間のない構成とすることは当業者の通常の創作能力の発揮であって、単なる設計事項といえるものである。 (エ)以上から、相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用発明、周知技術及び引用文献3記載の技術に基き、当業者が容易に想到し得たものである。 (オ)なお、請求人は審判請求書において、「一端に径の大きい頭部を有する曲がったパイプに対し他端から外挿した袋ナットを、パイプに沿って頭部まで移動させることを前提とする引用文献1は、本願発明とはそもそもパイプに対する袋ナットの挿入方向が逆であることに加え、頭部によりパイプを抜け止めしている引用文献1においては本願発明におけるような環状部材は不要であるといえますので、引用文献1に接した当業者が、あえて引用文献2?4に開示されているような技術を適用しようとするとは考えられません。」との主張をしている。 しかし、引用発明において、周知技術を置換することが容易であることは上記述べたとおりであるし、周知技術の雌ねじナットの管への挿入方向が引用発明とは逆方向であることをもって、上記置換適用に阻害要因があるとはいえない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 イ 相違点2について 超高圧ホースという特定は、例えば耐圧性能などが超高圧に対応したホースであるということであって、引用発明の高圧ホースと対比して高圧の程度の差が生じるとしても、それは実質的な差異とはいえない。 また、仮に、相違点2が実質的な相違点であるとしても、高圧ホース用の継手の製造方法を、超高圧ホース用の継手の製造方法とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮であって、単なる設計変更である。 ウ 作用効果について 上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術及び引用文献3記載の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。 エ したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術及び引用文献3記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年6月5日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年11月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?4、6に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1.特開2009-236200号公報 引用文献2.実願昭60-202094号(実開昭62-115137号) のマイクロフィルム 引用文献3.特開昭51-56020号公報 引用文献4.特開平10-169873号公報 引用文献6.欧州特許出願公開第2565507号明細書 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし4の記載事項は、上記第2[理由]2(2)に記載のとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、上記第2[理由]2に記載した限定する事項である「前記環状部材が筒状を呈し」という構成を省くものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、周知技術及び引用文献3記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、周知技術及び引用文献3記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、請求人は、平成30年9月25日に提出された上申書において、補正案を提示しているが、該補正案を考慮しても上記結論は左右されない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-05-30 |
結審通知日 | 2019-06-04 |
審決日 | 2019-06-17 |
出願番号 | 特願2013-101818(P2013-101818) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 黒石 孝志 |
特許庁審判長 |
紀本 孝 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 大屋 静男 |
発明の名称 | 超高圧ホース用の継手の製造方法および超高圧ホース |
代理人 | 本多 一郎 |