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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F23G |
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管理番号 | 1353893 |
審判番号 | 不服2018-10235 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-26 |
確定日 | 2019-08-01 |
事件の表示 | 特願2016-210104号「放散ブリーダー」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日出願公開、特開2017- 96615号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年10月27日(優先権主張 平成27年11月18日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 3月14日付け:拒絶理由通知書 同年 5月11日 :意見書、手続補正書の提出 同年 6月 1日付け:拒絶査定 同年 7月26日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 平成30年7月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年7月26日にされた手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 平成30年7月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成30年5月11日提出の手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1を下記の(2)に示す請求項1に補正することを含むものである。(下線は、補正箇所を示す。) (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「可燃性ガスを燃焼させて大気中へと放出する放散ブリーダーの燃焼方法であって、 一端部において可燃性ガスの発生部と連通し、内側に可燃性ガスを通すブリーダー管と、 一端部において大気と接し、前記ブリーダー管の他端部を内包する外管とを設けて、 外管の内壁とブリーダー管の外壁との間に形成された間隙に注入管から注入ガスを注入し、 前記注入ガスと前記可燃性ガスとの体積比が1:10?7:10の範囲内になるように前記注入管から前記注入ガスを注入することを特徴とする放散ブリーダーの燃焼方法。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「可燃性ガスを燃焼させて大気中へと放出する放散ブリーダーであって、 一端部において可燃性ガスの発生部と連通し、内側に可燃性ガスを通すブリーダー管と、 一端部において大気と接し、前記ブリーダー管の他端部を内包する外管と、 消費ガスを供給する小口径管と、前記小口径管よりも大きい内径を有する大口径管からなり、小口径管の一部を大口径管の内部に差し込まず、小口径管の先端と大口径管の一端との距離を大口径管の内径以内とする注入管と、からなり、 外管の内壁とブリーダー管の外壁との間に形成された間隙に、前記注入管から、前記小口径管から供給された消費ガス及び該消費ガスに随伴して吸入される吸引ガスを混合した注入ガスを注入し、 前記注入ガスと前記可燃性ガスとの体積比が1:10?7:10の範囲内になるように前記注入管から前記注入ガスを注入することを特徴とする放散ブリーダー。」 2 本件補正の目的について 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「注入管」について「消費ガスを供給する小口径管と、前記小口径管よりも大きい内径を有する大口径管からなり、小口径管の一部を大口径管の内部に差し込まず、小口径管の先端と大口径管の一端との距離を大口径管の内径以内とする」という限定を付加し、「注入ガス」について「前記小口径管から供給された消費ガス及び該消費ガスに随伴して吸入される吸引ガスを混合した」ものであるとの限定を付加するものであり、また、「放散ブリーダーの燃焼方法」という方法の発明から「放散ブリーダー」という物の発明に発明のカテゴリーを変更するものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 したがって、本件補正は、全体として特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか)について、以下、検討する。 3 独立特許要件の判断 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 (ア)原査定の理由に引用された刊行物である特表2002-534653号公報(以下「引用文献1」という。)には、「ガス燃焼のためのバーナー式装置」に関して、図面とともに次の記載がある。(下線は理解の一助のために当審にて付したものである。) 「 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、特に炭化水素を含むガスの最適な燃焼を達成することができる装置および方法に関する。これらの装置および方法は、例えば、製油所のフレアもしくは油およびガス生産分野において、不完全燃焼の炭化水素を排出することなく、残留ガスまたは排出ガスを燃焼するために使用することができる。」 「 【0017】 燃焼装置は、燃焼部位1を含み、燃焼部位1は、燃焼すべきガスの管2から構成されるガス供給管を備える。燃焼用ガス供給管2の末端を取り囲むように、圧力がかけられて駆動流体の複数の取入れ装置3がほぼ環状に配置されている。」 「 【0019】 図2は、装置3の実施例を示す。これは、駆動流体の供給管4を含み、この供給管4の出口には、ベンチュリ管5を形成する本体が配置され、ベンチュリ管5自体は、一般に「収斂部(convergent)」と呼ばれる円錐台下部と、それに続く「カラー」と呼ばれる円筒部7と、さらにそれに続く「末広部」と呼ばれる円錐台上部8とから構成される。 【0020】 供給管13から、各ベンチュリ管5への駆動流体4の供給管は、中央管9から成り、この中央管9は、通常、横断面が円形をしており、ベンチュリ管5の軸AAにほぼ同軸に配置されている。中央管9は、外部から、収斂部6を通過し、ベンチュリ管5内に位置する所定地点、一般には、収斂部6とカラー7との接合部まで延びる。 【0021】 中央管9の周りに、複数の管10を取り付けるのが好ましい。これら管10の配置は、一般に、規則的かつ環状であり、管10は、少なくとも1つの環に沿って配置することができ、その環の中心は、ベンチュリ管を形成する本体の軸AA上に位置する。 【0022】 好ましくは、管10と中央管9は、互いに同じで、横断面がほぼ円形をしており、ベンチュリ管の軸AA上に中心が位置する少なくとも1つの環に沿って、環状に配置されている。 【0023】 管10の数は、燃焼に必要な空気流量およびベンチュリ管本体の内径に応じて算出する。 【0024】 供給管13はすべて、圧力をかけられた同じ駆動流体源に接続されていることが好ましい。 【0025】 好ましくは、少なくとも管10は、ベンチュリ管5の軸AAの周りにほぼ環状に配置され、ベンチュリ管内に駆動流体を噴射するこの軸の最も外側に配置される。駆動流体の噴射は、ベンチュリ管5の軸AAに対して、3℃より大きい、好ましくは、末広部8が軸AAに対して成す角度にほぼ等しい角度αに沿って実施される。管10の下部12は、円筒状で、ベンチュリ管5の軸AAにほぼ平行であるが、図2から明らかなように、それらの上部11は、軸AAに対して角度α傾斜しており、その角度は、同じ軸AAに対する末広部8の傾斜角度にほぼ等しい。 【0026】 図示していないが、本発明の変形例では、管10の軸は、ベンチュリ管5の軸AAに対して、この軸と末広部8が形成する角度にほぼ等しい角度を形成してもよい。 【0027】 管10は、一般的に、すべてが同じ深さまでベンチュリ管5に入り込み、その深さは、中央管9がベンチュリ管5に入り込んでいる深さと同じか、これより浅くてよい。」 「 【0031】 同様に、図3に示す本発明の別の実施例を用いて、例えば、酸化温度が700℃を超える硫化水素等、高い燃焼温度を必要とするガスを燃焼することができる。 【0032】 図3からわかるように、燃焼部位1は、ベンチュリ15を形成する本体により覆われており、ベンチュリ15内に、管2を介して燃焼用ガスが噴射される。このベンチュリ本体により、外部の摂動(perturbation)火炎を保ちながら、温度および滞留時間をこれまでより高く維持することができる。本発明によれば、燃焼用ガス供給管2の末端の周りに、複数の装置が環状に配置され、これにより、複数の装置の各末広部から出る駆動流体が、ベンチュリ15を形成する本体に噴霧されるようにし、このようにして、燃焼用ガスの燃焼が改善される。 【0033】 本発明による方法 本発明によれば、支燃性物質の補給により、ガスの燃焼を改善する目的で、装置3の各々の駆動流体供給管4を介して流体を供給する。 【0034】 駆動流体として、一般に、空気、酸素を豊富に含む空気、それ自体が可燃性のガスまたは水蒸気を使用する。駆動流体の圧力は、通常、0.5?6.10^(5)Pa(0.5?6バール)、好ましくは、1?3.10^(5)Pa(1?3バール)の範囲である。 【0035】 従って、装置3は、単に支燃性物質(空気)の誘導を増加させ、燃料および支燃性物質の混合を促進する乱流を引き起こすことにより、可燃性ガスの燃焼を改善する役割を果たすだけであることから、装置3の内部で燃焼は一切起こらない。 【0036】 本発明による装置(図1参照)が機能する際、可燃性ガスが矢印Gに従って燃焼部位1中に、同軸方向に導入される。燃焼は、燃焼部位1内で起こる。燃焼は、装置3により促進される。装置3は、矢印Hに従って、単独または混合した駆動流体を導入することにより、矢印Iに沿って、ベンチュリ管5を横断して空気を連行する。この連行された空気は、前記装置の末広部8から出て、ガスの燃焼を改善する働きをする。 【0037】 このように、装置3を使用すれば、少量の駆動流体による高い空気の連行により、炭化水素を含有するガス、炭化水素混合物、酸性ガス、もしくは、これらガスの混合物の完全な燃焼を可能にする。このことは、燃焼部の位置まで水蒸気が供給される従来の管により、空気を導入していた従来のフレアと比較して、騒音が減少することを意味する。実際に、騒音は、管内の駆動流体の膨張により発生するため、駆動流体の量を少なくすることによって、騒音を軽減することができる。」 (イ)上記(ア)並びに図1及び図2の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 引用文献1に記載された技術は、例えば製油所のフレア若しくは油及びガス生産分野において、不完全燃焼の炭化水素を排出することなく、残留ガス又は排出ガスを燃焼するために使用することができる燃焼装置に関するものである(【0001】)。 b 燃焼装置は、燃焼部位1を含み、燃焼部位1は、可燃性ガスを導入するガス供給管2を備え、ガス供給管2の末端を取り囲むように、駆動流体の複数の取入れ装置3がほぼ環状に配置される。(【0017】、【0036】、図1)。 c 装置3は、駆動流体の供給管4を含み、この供給管4の出口には、ベンチュリ管5を形成する本体が配置される(【0019】)。 d ベンチュリ管5は、供給管4よりも大きい内径を有するものである(【0019】、【0020】、図2)。 e 駆動流体の供給管4は、中央管9から成り、中央管9の周りに、複数の管10が取り付けられる(【0020】、【0021】)。 f 中央管9及び管10は、その先端側(図2における上端側)の一部がベンチュリ管5に入り込んでおり、基端側(図2における下端側)の一部がベンチュリ管5に入り込んでいないものである(【0027】、図2)。 g 装置3は、駆動流体を導入することによりベンチュリ管5を横断して空気を連行するものであり、連行された空気によりガスの燃焼が改善されるものである(【0036】)。 (ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「例えば製油所のフレア若しくは油及びガス生産分野において、不完全燃焼の炭化水素を排出することなく、残留ガス又は排出ガスを燃焼するために使用することができる燃焼装置であって、 燃焼装置は、燃焼部位1を含み、燃焼部位1は、可燃性ガスを導入するガス供給管2を備え、ガス供給管2の末端を取り囲むように、駆動流体の複数の取入れ装置3がほぼ環状に配置され、 装置3は、駆動流体の供給管4を含み、この供給管4の出口には、供給管4よりも大きい内径を有するベンチュリ管5を形成する本体が配置され、 駆動流体の供給管4は、中央管9から成り、中央管9の周りに、複数の管10が取り付けられ、 中央管9及び管10は、その先端側の一部がベンチュリ管5に入り込んでおり、基端側の一部がベンチュリ管5に入り込んでいないものであり、 装置3は、駆動流体を導入することによりベンチュリ管5を横断して空気を連行するものであり、連行された空気によりガスの燃焼が改善されるものである、燃焼装置。」 (3)本件補正発明と引用発明との対比・判断 引用発明における「燃焼装置」は、「例えば製油所のフレア若しくは油及びガス生産分野において、不完全燃焼の炭化水素を排出することなく、残留ガス又は排出ガスを燃焼するために使用することができる」ものであるから、本件補正発明における「可燃性ガスを燃焼させて大気中へと放出する放散ブリーダー」に相当する。 引用発明における「ガス供給管2」は、「可燃性ガスを導入する」ものであり、可燃性ガスの発生源と連通するものであることは明らかであるから、本件補正発明における「一端部において可燃性ガスの発生部と連通し、内側に可燃性ガスを通すブリーダー管」に相当する。 引用発明における「供給管4」は、「駆動流体」を導入するものであるから、本件補正発明における「消費ガスを供給する小口径管」に相当する。 引用発明における「ベンチュリ管5」は、「供給管4の出口」に配置され、「供給管4よりも大きい内径を有する」ものであるから、本件補正発明における「小口径管よりも大きい内径を有する大口径管」に相当する。 引用発明における「装置3」は、「駆動流体の供給管4を含」むものであり、また「この供給管4の出口には、供給管4よりも大きい内径を有するベンチュリ管5を形成する本体が配置され」るのであるから、供給管4とベンチュリ管5とから構成されるものといえる。したがって、引用発明における「装置3」は、本件補正発明における「小口径管」と「大口径管」からなる「注入管」に相当する。 引用発明における「駆動流体」は、「供給管4」から導入されるものであるから、本件補正発明における「消費ガス」に相当し、引用発明における「空気」は、「駆動流体を導入することにより」「連行」されるものであるから、本件補正発明における「消費ガスに随伴して吸引される」、「吸引ガス」に相当し、また、引用発明における「駆動流体」と「空気」とを混合したガスは、本願発明における「消費ガス」と「吸引ガス」とを混合した「注入ガス」に相当する。したがって、引用発明は、「注入管から、前記小口径管から供給された消費ガス及び該消費ガスに随伴して吸入される吸引ガスを混合した注入ガスを注入」する点で、本件補正発明と一致する。 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「可燃性ガスを燃焼させて大気中へと放出する放散ブリーダーであって、 一端部において可燃性ガスの発生部と連通し、内側に可燃性ガスを通すブリーダー管と、 消費ガスを供給する小口径管と、前記小口径管よりも大きい内径を有する大口径管からなる注入管と、からなり、 前記注入管から、前記小口径管から供給された消費ガス及び該消費ガスに随伴して吸入される吸引ガスを混合した注入ガスを注入する放散ブリーダー。」 [相違点1] 本件補正発明においては、「一端部において大気と接し、前記ブリーダー管の他端部を内包する外管」を備え、「外管の内壁とブリーダー管の外壁との間に形成された間隙に」注入管から注入ガスを注入するのに対して、引用発明においては、そのような構成が特定されていない点(以下「相違点1」という。)。 [相違点2] 本件補正発明においては、「小口径管の一部を大口径管の内部に差し込ま(ない)」のに対して、引用発明においては、中央管9及び管10は、その先端側の一部がベンチュリ管5に入り込んでおり、基端側の一部がベンチュリ管5に入り込んでいないものである点(以下「相違点2」という。)。 [相違点3] 本件補正発明においては、「小口径管の先端と大口径管の一端との距離を大口径管の内径以内とする」のに対して、引用発明においては、供給管4(中央管9及び管10)の先端とベンチュリ管5の一端との距離がベンチュリ管5の内径以内であるか明らかでない点(以下「相違点3」という。)。 [相違点4] 本件補正発明においては、「前記注入ガスと前記可燃性ガスとの体積比が1:10?7:10の範囲内になるように前記注入管から前記注入ガスを注入する」のに対して、引用発明においては、そのような構成が特定されていない点(以下「相違点4」という。)。 上記相違点について検討する。 [相違点1について] 放散ブリーダーにおいて、一端部において大気と接し、ブリーダー管の他端部を内包する外管を設けることは、例えば、米国特許第4643669号明細書(第3欄第6ないし38行及び図1を参照。「deflector 14」が本件補正発明の「外管」に相当。)、特表2004-537702号公報(段落【0034】、【0035】、【0062】、【0063】及び図1ないし5を参照。「シールド50」が本件補正発明の「外管」に相当。)、特表2013-536396号公報(段落【0033】、図1及び図2を参照。「内管4」又は「混合管5」が本件補正発明の「外管」に相当。)及び実願昭47-139797号(実開昭49-93436号)のマイクロフィルム(第2ページ第14行ないし第3ページ第1行及び第1図を参照。「外筒2」が本件補正発明の「外管」に相当。)等に示されるように、周知技術である。 また、引用文献1の図3に示される他の実施例には、燃焼部位1をベンチュリ15(本件補正発明の「外管」に相当。)により覆うことが記載されており、そのような実施態様が想定されているといえる。 したがって、引用発明において、上記周知技術を採用し、一端部において大気と接し、ガス供給管2の他端部を内包する外管を設けることにより、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 [相違点2について] 本件補正発明においては、小口径管の「一部」を大口径管の内部に差し込まないことを特定していているが、当該「一部」が具体的に小口径管のどの部分であるのかを特定するものではなく、また、小口径管の全体が大口径管の内部に差し込まれないことを特定するものでもない。 引用発明においては、中央管9及び管10は、その先端側の一部がベンチュリ管5に入り込んでいるが、基端側の一部についてはベンチュリ管5に入り込んでいない。 そうすると、引用発明は、「小口径管の一部を大口径管の内部に差し込ま(ない)」ものであるといえるから、相違点2は実質的な相違点ではない。 なお、請求人は、審判請求書において、「これに対して、引用文献1には、本願発明の注入管に相当する装置3が記載されていますが、引用文献1の装置3は、複数の管10(本願の小口径管に相当)が中央管9(本願の大口径管に相当)の収斂部6に差し込まれています(引用文献1の[図2])。したがって、引用文献1に記載の構成は、本願発明の注入管の構成とは異なります。」と主張する。 この主張は、本件補正発明において、小口径管の先端側の一部が大口径管の内部に差し込まれない(小口径管の全体が大口径管の内部に差し込まれない)ことを前提としていると考えられるので、本件補正発明をそのように解釈した場合についても、予備的に検討する。 放散ブリーダーにおいて、注入ガスを注入する注入管を、小口径管と大口径管とから構成するとともに、小口径管の先端側の一部を大口径管に差し込まないよう配置することは、例えば、実願昭47-139797号(実開昭49-93436号)のマイクロフィルム(第3ページ第9ないし14行及び第1図を参照。「蒸気噴射ノズル11」、「冷却用気体混合給気管9」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、それぞれ本件補正発明の「小口径管」、「大口径管」に相当する。)及び実願昭48-11100号(実開昭49-115967号)のマイクロフィルム(第4ページ第8ないし10行及び第1図を参照。「ノズル5」、「エジェクタスロート部4」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、それぞれ本件補正発明の「小口径管」、「大口径管」に相当する。)等に示されるように、周知技術である。 そして、小口径管と大口径管とで構成した吸引装置において両者の位置関係により吸引量が調整できることは技術常識であるといえ、また、引用発明において中央管9及び管10の先端側の一部をベンチュリ管5に差し込まないようにすることを妨げる特段の事情も見当たらないから、引用発明において上記周知技術を採用することにより、中央管9及び管10の先端側の一部をベンチュリ管5に差し込まないよう構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。 よって、相違点2は実質的な相違点ではないか、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点3について] 引用文献1の図2においては、供給管4(中央管9及び管10)の先端とベンチュリ管5の一端との距離が、ベンチュリ管5の内径以内であるものが記載されているように見える。 また、上記[相違点2について」の予備的な検討において周知技術を示す文献として挙げた実願昭47-139797号(実開昭49-93436号)のマイクロフィルムの第1図においては、蒸気噴射ノズル11の先端と冷却用気体混合給気管9の一端との距離が、冷却用気体混合給気管9の内径と比べて小さいものが記載されているように見える。 同じく上記[相違点2について」の予備的な検討において上記周知技術を示す文献として挙げた実願昭48-11100号(実開昭49-115967号)のマイクロフィルムの第1図からは、ノズル5の先端とエジェクタスロート部4の一端との距離が近接しているものが看取できる。 また、小口径管と大口径管とで構成した吸引装置においては、所望の吸引作用を得るために、小口径管の先端を大口径管の一端に近づける必要があることは自明であるといえる。 したがって、引用発明において、供給管4(中央管9及び管10)の先端とベンチュリ管5の一端との距離をベンチュリ管5の内径以内とすること、すなわち相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。 [相違点4について] 可燃性ガスの流量と空気の流量との比を適切に調整することにより、不完全燃焼や吹き消えなどを防止することは、技術常識であるといえ、当該比を好適な範囲に調整することは当業者の通常の創作能力の発揮である。 また、引用文献1には、「例えば、硫化水素(H_(2)S)を多く含むガスの不完全燃焼により引き起こされる公害は、一般に、完全燃焼に必要な空気の量が不十分であることに起因する」(【0003】)という課題が記載され、「装置3は、単に支燃性物質(空気)の誘導を増加させ、燃料および支燃性物質の混合を促進する乱流を引き起こすことにより、可燃性ガスの燃焼を改善する役割を果たす」(【0035】)、「装置3を使用すれば、少量の駆動流体による高い空気の連行により、炭化水素を含有するガス、炭化水素混合物、酸性ガス、もしくは、これらガスの混合物の完全な燃焼を可能にする。」(【0037】)という作用が記載されている。 一方、本件補正発明が相違点4に係る発明特定事項を採用したのは、「前記体積比が1:10よりも注入ガスの割合が小さくなると、ガスの攪拌効果が弱く可燃性ガスを完全燃焼できない可能性があ(り)」、「前記体積比が7:10よりも注入ガスの割合が大きいと、開口部から離れた位置で火炎が発生するリフトという現象や、火炎の吹き消えが起こる可能性がある」(本願明細書【0020】)ためであるから、その技術的意義が、上記技術常識や引用発明のものと相違するものではない。 してみると、引用発明において、駆動流体と空気とを混合したガスと、可燃性ガスとの体積比が好適な範囲内になるように装置3から前記混合したガスを注入するよう構成することにより、相違点4に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。 また、本願の明細書等の記載を参酌しても、当該数値範囲の内と外のそれぞれの効果について量的に顕著な差異があるとはいえず、当該数値範囲が臨界的意義を有するものとは認められない。 そして、本件補正発明は、全体としてみても引用発明及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 (4)まとめ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 むすび 以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面並びに平成30年5月11日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲からみて、上記第2[理由]1(1)に記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。 本願の請求項1ないし3に係る発明は、以下の引用文献1ないし3のいずれか1つに記載された発明に基いて、本願の請求項4に係る発明は、以下の引用文献1ないし3のいずれか1つ及び引用文献4に記載された発明に基いて、本願の請求項5及び6に係る発明は、以下の引用文献1ないし3のいずれか1つ及び引用文献4ないし6に記載された発明に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特表2002-534653号公報 2.米国特許第4643669号明細書 3.特表2004-537702号公報 4.特表2013-536396号公報 5.実願昭47-139797号(実開昭49-93436号)のマイクロフィルム 6.実願昭48-11100号(実開昭49-115967号)のマイクロフィルム 3 引用文献 原査定の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、第2[理由]3において検討した本件補正発明から、「注入管」に対しての「消費ガスを供給する小口径管と、前記小口径管よりも大きい内径を有する大口径管からなり、小口径管の一部を大口径管の内部に差し込まず、小口径管の先端と大口径管の一端との距離を大口径管の内径以内とする」という限定及び「注入ガス」に対しての「前記小口径管から供給された消費ガス及び該消費ガスに随伴して吸入される吸引ガスを混合した」ものであるという限定を削除し、「放散ブリーダー」という物の発明から「放散ブリーダーの燃焼方法」という方法の発明に発明のカテゴリーを変更したものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項に対応する発明特定事項を含み、カテゴリーを変更した本件補正発明が、上記第2[理由]3(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 前記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-05-31 |
結審通知日 | 2019-06-04 |
審決日 | 2019-06-17 |
出願番号 | 特願2016-210104(P2016-210104) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F23G)
P 1 8・ 575- Z (F23G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 賢司、岩▲崎▼ 則昌 |
特許庁審判長 |
松下 聡 |
特許庁審判官 |
大屋 静男 紀本 孝 |
発明の名称 | 放散ブリーダー |
代理人 | 熊坂 晃 |
代理人 | 磯村 哲朗 |
代理人 | 坂井 哲也 |