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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1353894
審判番号 不服2018-10334  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-30 
確定日 2019-08-01 
事件の表示 特願2014- 16686「吸水処理材及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 6日出願公開、特開2015-142519〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)1月31日に出願された特願2014-16686号であり、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 2月 9日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月13日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 9月25日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成29年11月29日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 4月13日付け:平成29年11月29日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定(発送日:同年5月1日)
平成30年 7月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成31年 2月 4日 :上申書の提出

第2 平成30年7月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年7月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「塩ビ壁紙分級物又は紙おむつ廃材からなる粒状芯部と、
前記粒状芯部を覆う被覆層部と、
前記被覆層部に含有された吸水性ポリマーと、を備え、
前記吸水性ポリマーの平均粒径は、20μm以下であり、
前記被覆層部の主材料は、オカラであることを特徴とする吸水処理材。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年4月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「粒状芯部と、
前記粒状芯部を覆う被覆層部と、
前記被覆層部に含有された吸水性ポリマーと、を備え、
前記吸水性ポリマーの平均粒径は、20μm以下であり、
前記被覆層部の主材料は、オカラであることを特徴とする吸水処理材。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「粒状芯部」について、上記のとおり「塩ビ壁紙分級物又は紙おむつ廃材からなる」ものに限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2005-102703号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
a「【0001】
本発明は、ラミネート加工紙廃材を原料とする動物用排泄物処理材及びその製造方法に関し、特に、使用後の含水状態で焼却処理可能の動物用排泄物処理材及びその製造方法に関する。また、本発明は、ラミネート加工紙廃材、パンチ屑、屑紙及び紙粉などの紙廃材或いはこれら廃材の二以上の混合物(以下、紙廃材という)を原料とする動物用排泄物処理材及びその製造方法に関し、特に、使用後の含水状態で焼却処理可能の動物用排泄物処理材及びその製造方法に関する。」
b「【0005】
即ち、本発明は、3mm以下の粒度のラミネート加工紙廃材粉を含有して粒状に形成されている芯部と、該芯部を囲み、紙廃材粉と吸水性樹脂粉の混合物を含有する被覆材層とを有し、前記被覆材層の厚さが、前記芯部の半径より小さい厚さであることを特徴とする粒状の動物用排泄物処理材にあり、・・・」
c「【0007】
本発明は、粒状の動物用排泄物処理材を、3mm以下の粒度のラミネート加工紙廃材粉を配合して粒状に形成するので、従来の動物の排泄物処理材に比して、その儘廃棄物として処理されていた使用済みのラミネート加工紙製の紙食器類を有効利用して、紙食器類に付着する食用油の滲みもない粒状の動物用排泄物処理材を製造でき、しかも、プラスチック薄膜を有していても、一般ごみとして焼却処理を可能するものであり、汚れて汚らしい可燃性廃棄物の有効に活用することができる。さらに、原料として使用済みのラミネート加工紙製の紙食器類又は容器類を、汚れた侭でも、3mm以下に粉砕することにより、吸水性及び保水性を有する可燃性粉体となり、粒状の動物用排泄物処理材とすることができ、汚れた廃材を廃棄しないで、廃棄し易い形態に変えて、活用することができる。」
d「【0010】
本発明において、芯部又は被覆部或いは芯部及び被覆部に使用される紙廃材粉は、パンチ屑及び帳簿用紙の裁断屑等の屑紙の屑紙の粉砕物、紙粉、並びに紙おむつ及び紙ナプキン廃材の粉砕物の分級により得られた紙粉、ラミネート加工紙の製造時に発生するラミネート加工紙廃材の粉砕物を包含する。本発明において、アルミニウム箔等を付着するラミネート加工紙は、粉砕機に損傷を与えない程度に少量のものであれば使用することができる。」
e「【0012】
本発明において、高吸水性樹脂は、芯部又は被覆部或いは芯部及び被覆部に使用することができる。粒状の動物用排泄物処理材の粒状芯部に、例えば高吸水性樹脂を配合すると、高吸水性樹脂は、排泄時に粒状芯部の周囲から吸水して、膨潤し、保水するように作用するので、芯部及び被覆部の湿度を調整することができ好ましい。本発明において、高吸水性樹脂は、自重の数十倍から二百倍程度の水を吸収しても、形を保持できる樹脂であり、例えば、ビニルエステルとエチレン系不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体鹸化物、澱粉とアクリル酸のグラフト重合体、ポリアクリル酸の架橋物、ビニルアルコールとアクリル酸の共重合体、ポリアクリロニトリルの部分加水分解物、カルボキシメチルセルロースの架橋物、ポリエチレングリコールの架橋物、キトサンの塩又はプルランのゲルなどがあり、これらは、紙おむつ廃材に単独で又はこれら2種以上を混合して配合物質として使用される。
【0013】
本発明において、吸水性樹脂は、高い吸水性能を有する高吸水性樹脂であることは好ましいが、例えば、吸水倍率が20g/g未満と吸水性能の乏しい、高吸水性樹脂として不良品の樹脂を使用することができる。このような吸水性能の低いポリアクリル酸樹脂の不良品には、粒径が、600μm以上のものと、10μm以下と微細なものがあり、これらの高吸水性樹脂の不良品は、例えばおむつ廃材から分級して得られるか、又はポリアクリル酸樹脂の規格外の製品として入手することができる。粒径が600μm以上の不良品は、粒状芯部に使用するのが好ましく、粒径が10μm以下の微細な不良品は被覆部に使用するのが好ましい。このように、おむつの廃材中には、高吸水性樹脂が含有されているので、紙粉におむつの廃材が配合されるときには、吸水性樹脂の添加量をその分減らすことができる。」
f「【0047】
得られた製品は、粒度5mm以上の粒度の粒状物であり、この粒状物を猫のトイレ用の砂として使用した。
室内において、この猫のトイレ用の砂100gに、水道水1000ミリリットルに食塩10g及びアンモニア水10ミリリットルを溶解した疑似尿を20ミリリットルを加え、疑似尿により固まった部分を取出した。その重量は30.5gであった。したがつて、本例のトイレ用の砂10.5gが吸収した疑似尿の量は20mlであり、本例のトイレ砂、即ち猫砂における吸水性は、20÷10.5(倍)、即ち1.9倍であった。
また、この猫のトイレ用の砂を猫のトイレとして、厚さ70mmの厚さに敷いて使用したが、猫は普段と同様にトイレとして使用しており、トイレの使用の上で何等支障がなかった。本例のトイレ砂は、尿の吸水スピードが早く、70mmの深さまで、即ち底部にまで尿が達することはなかった。
猫が排泄に使用後、この猫のトイレ用の砂の、猫が排泄した部分については、容易に取り出すことができた。しかも、本例の猫のトイレ用の砂は、使用済み紙皿を原材料とするが、表面に油分の滲みもみられず、また、吸水性及び脱臭性を有しており、使用後のアンモニア臭や屋内への不快な臭いの発生を避けることができた。」

(イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「紙廃材粉を含有して粒状に形成されている芯部と、
該芯部を囲み、紙廃材粉と吸水性樹脂粉の混合物を含有する被覆材層とを有し、
紙廃材粉は、パンチ屑及び帳簿用紙の裁断屑等の屑紙の粉砕物、紙粉、並びに紙おむつ及び紙ナプキン廃材の粉砕物の分級により得られた紙粉、ラミネート加工紙廃材の粉砕物を包含し、
吸水性樹脂粉は、ポリアクリル酸樹脂の粒径が10μm以下の微細なものが使用されている、
吸水性及び保水性を有する粒状の動物用排泄物処理材。」

イ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特許第4630963号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
a「【請求項1】
水溶性成分を除いたオカラと、前記オカラより少ない量の殺菌作用を有する物質、又は前記オカラより少ない量の殺菌作用を有する物質及び高吸水性樹脂の混合物、又は前記オカラより少ない量の殺菌作用を有する物質、高吸水性樹脂及び脱臭機能を有する材料の混合物とを含有して、1ミリメートル以上の粒度の粒状に形成されている粒状芯部と、該粒状芯部の表面の少なくとも一部を覆い、0.4mm以下の粒度の水溶性成分を除いたオカラの粉状物又は紙粉及び高吸水性樹脂を含有する被覆層部を備えて、被覆粒状物に形成されていることを特徴とする粒状の排泄物処理材。
・・・
【請求項11】
回収されたオカラを常温より高い温度の水中で分散させ、オカラに含まれる、このオカラの分散物を濾過して水溶性成分を除いたオカラを分離し、この分離されたオカラを5ミリメートル以下の粒度に粉砕して、5ミリメートル以下の粒度の水溶性成分を除いたオカラを製造し、この5ミリメートル以下の粒度の水溶性成分を除いたオカラに、前記オカラより少量の殺菌作用を有する物質、又は前記オカラより少量の殺菌作用を有する物質及び高吸水性樹脂、又は前記オカラより少量の殺菌作用を有する物質、高吸水性樹脂及び脱臭機能を有する材料を混合し、この混合物を造粒して、1ミリメートル以上の粒度の粒状物を形成し、この形成された粒状物を芯部材とし、その芯部材の表面に、前記水溶性成分を除いた0.4ミリメートル以下の粒度のオカラの粉体及び/又は紙粉、及び接着性を有する材料を含有する被覆組成物を付着させて、前記粒状芯部の表面の少なくとも一部を前記被覆組成物により被覆して、被覆層部を有する被覆粒状物を形成し、この形成された被覆粒状物を乾燥して乾燥被覆粒状物を製造することを特徴とする粒状の排泄物処理材の製造方法。」
b「【0001】
本発明は、人用及び/又は動物用の粒状の排泄物処理材の製造方法に関し、特に、豆腐製造工程から回収されたオカラを素材として、人用及び/又は動物用の粒状の排泄物処理材及びその製造方法に関する。」
c「【0005】
・・本発明は、水溶性成分を除いたオカラと、前記オカラより少ない量の殺菌作用を有する物質、又は前記オカラより少ない量の殺菌作用を有する物質及び高吸水性樹脂の混合物、又は前記オカラより少ない量の殺菌作用を有する物質、高吸水性樹脂及び脱臭機能を有する材料の混合物とを含有して、1ミリメートル以上の粒度の粒状に形成されている粒状芯部と、該粒状芯部の表面の少なくとも一部を覆い、0.4mm以下の粒度の水溶性成分を除いたオカラの粉状物又は紙粉及び高吸水性樹脂を含有する被覆層部を備えて、被覆粒状物に形成されていることを特徴とする粒状の排泄物処理材にあり、」
d「【0009】
また、本発明は、生オカラを加熱されて常温より高い温度の水の中で粉砕し、濾過して得られた5ミリメートル以下の粒度の水溶性成分を除いたオカラに、前記水溶性成分を除いたオカラの粉体より少量の殺菌作用を有する物質、又はそれにさらに、高級水性樹脂を混合し、この混合物を造粒して、1ミリメートル以上の粒度の粒状物を形成し、又はさらに、この粒状物を心材として、その表面に、生オカラを加熱されて常温より高い温度の水の中で粉砕し、この粉砕物を濾過し、乾燥し、粉砕して得られた粒度が0.4ミリメートル以下のオカラの粉体及び/又は紙粉、及び接着性を有する材料を含有する被覆組成物を付着させて、前記粒状芯部の表面の少なくとも一部を前記被覆組成物により被覆して、被覆層部を有する被覆粒状物を形成し、この形成された前記粒状物又は被覆粒状物を乾燥して、水分含有率が12重量%以下の乾燥粒状物を製造するので、生オカラを加熱されて常温より高い温度の水の中で粉砕し、濾過して得られた水溶性成分を除いたオカラを原料とする点が異なる以外は、従来と同様の粒状の排泄物処理材の製法で製造でき、廃物とされていたおからを、長期保存可能の粒状の排泄物処理材として活用することができる。」
e「【0031】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の態様の例を説明するが、本発明は、以下の説明及び例示によって何等制限されるものではない。
図1は、本発明の一実施例の粒状の排泄物処理材を製造する工程を示す概略の工程図である。
・・・・・
【0050】
例5
・・・本例においては、円型コーティング装置において、造粒物87重量部(乾燥ベース)に対し、被覆組成物が13重量部(乾燥ベース)となるように被覆組成物を散布した。・・・
本例で作製された猫のトイレ用の砂は、粒状芯部100重量部に0.005重量部の殺菌作用を有する物質が含有されたものである。本例で作製された猫のトイレ用の砂を猫の排泄に使用したが、本例で作製された猫のトイレ用の砂は、排尿後において、従来の猫のトイレ用の砂と同様に結着して固まり、濡れている箇所の識別が容易であった。
本例で作製された猫のトイレ用の砂は、室内において、35℃の温度で20倍に希釈したアンモニア水50mを加えたが、非常に吸水性及び脱臭性が良好であり、室内にアンモニア臭を感じなかった。またこの猫のトイレ用の砂を市販の猫用トイレ(W430×D310×H135)に深さ7cmになるように敷き猫でテストしたが、猫は慣れるにつれて、問題なく排尿及び排便をするようになった。使用後は、尿で濡れた部分を廃棄するのも簡単であり、部屋には尿の臭いが殆ど感じられなかった。
本例において、被覆組成物は、本例において、被覆組成物は、(1) 例1で製造された保存用の乾燥おからを、粉砕機(ターボ工業株式会社製)で0.4mm以下の粒度に粉砕した粉状乾燥オカラ80重量部、(2)接着機能を有する高吸水性樹脂のハイモサブHS-1100〔(商品名)ハイモ株式会社製〕を粉砕機(ターボ工業株式会社製)で40μm以下の粒度に粉砕したもの19重量部及び(3)脱臭剤1重量部を混合して調製された。」

(イ)上記(ア)から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「粒状芯部とその表面を覆う被覆層部を備えた動物用の粒状の排泄物処理材において、被覆層部を形成するために被覆する被覆組成物として、粉状乾燥オカラ80重量部、高吸水性樹脂を19重量部及び脱臭剤1重量部を混合(オカラを主材料として混合)して調製されたものが用いられた点。」

ウ 引用文献3
(ア)平成30年4月13日付けの補正の却下の決定で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2014-43号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
a「【技術分野】
【0001】
本発明は、人又は動物の排泄物等の液体を吸収する吸水処理材、及びその製造方法に関する。」
b「[構成]
【0012】
図1は、本発明による吸水処理材の一実施形態を示す模式図である。吸水処理材1は、猫や犬等の愛玩動物用の排泄物処理材であり、粒状芯部10、及び被覆層部20を備えている。
<粒状芯部10>
【0013】
粒状芯部10は、小塊の形状に形成されていればよく、完全な球形等である必要はない。粒状芯部10の形状としては、例えば、柱状体(細長形)、扁平形等が考えられる。また、粒状芯部10を構成する材料(芯部材料)としては、保水性能を有している保水性材料であればよく、例えば、紙類、繊維類、木材類、植物類、プラスチック類、ゴム類、有機性汚泥材質等を用いることができる。これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
紙類は、パルプを原材料としているものであれば種類は問わない。バージンパルプはもちろん、各種の廃材等を用いることができる。例えば、薄葉紙廃材、衛生用紙廃材、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー廃材、化粧紙廃材、ちり紙廃材、紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、新聞紙屑、雑誌屑、バフ粉(主として印刷会社において、製本の切断時や削り時に発生する微細な紙粉)、機械パルプ廃材、化学パルプ廃材、チタン紙廃材、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ廃材、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、不織布廃材、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉、衛生材料製造時に発生する紙粉、ラミネート紙廃材、ラミネート紙の印刷屑、ラミネート紙の端屑、ダンボール屑、損紙(衛生材メーカーで発生するトリムロス、製紙メーカーで発生する紙屑等)、包装紙、板紙、使用済み切符、パンチ屑等を使用することができる。
・・・・
【0017】
植物類は、種類は問わず、例えば、ササ、竹、落葉、刈草はもちろん、植物性残渣等を使用することもできる。ここで、植物性残渣とは、食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業又は飲食店等において原料として使用した植物の固形状の不要物をいう。例として、ソースかす、しょうゆかす、こうじかす、酒かす、ビールかす、あめかす、海苔かす、でんぷんかす、豆腐かす、おから、あんかす、茶殻、焙煎コーヒー豆の抽出残渣、米・麦粉、大豆かす、果実の皮・種子、野菜くず、薬草かす、油かす等が挙げられる。
【0018】
プラスチック類は、合成高分子化合物の固形状物質(例えば、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニール、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリウレタン(ウレタンフォーム)、生分解性プラスチック等)であれば種類は問わない。プラスチック類として、各種廃材を使用してもよい。例えば、廃プラスチック類、廃ポリウレタン、廃スチロール(発泡スチロールを含む)、廃農業用フィルム、各種合成樹脂系包装材料のくず、廃写真フィルム、廃ポリ容器類、電線の被覆くず、ライニングくず、廃ポリマー、塗料かす、接着剤かす、廃ベークランド(プリント基盤等)等を使用することができる。
【0019】
また、排泄物処理材の廃材のプラスチックに富む分離産物、紙おむつ廃材(衛生材メーカーで発生する規格外品の紙おむつの外装体など)のプラスチックに富む分離産物、生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、乳パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、汗パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、失禁パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用シーツ廃材のプラスチックに富む分離産物、寝具用シーツ廃材のプラスチックに富む分級等による分離産物、マスク廃材のプラスチックに富む分離産物、アイマスク廃材のプラスチックに富む分離産物、座席用ヘッドカバー廃材のプラスチックに富む分離産物、塩化ビニル壁紙廃材、枕カバー廃材のプラスチックに富む分離産物、合成樹脂繊維廃材等を使用することもできる。
【0020】
また、排泄物処理材の廃材、紙おむつ廃材、生理用ナプキン廃材、乳パッド廃材、汗パッド廃材、失禁パッド廃材、動物用シーツ廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、アイマスク廃材、座席用ヘッドカバー廃材、枕カバー廃材等を使用することができる。」

(イ)上記記載から、引用文献3には、次の技術が記載されていると認められる。
「粒状芯部及び被覆層部を備え、動物の排泄物等の液体を吸収する吸水処理材において、粒状芯部を構成する保水性の材料として、ラミネート紙廃材等の紙類、塩化ビニル壁紙廃材、紙おむつ廃材、紙おむつ廃材のプラスチックに富む分離産物等のプラスチック類等を用いること。」

エ 引用文献4
(ア)平成30年4月13日付けの補正の却下の決定で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2013-240310号公報(以下、「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
a「【技術分野】
【0001】
本発明は、人又は動物の排泄物などの液体を吸収するための粒状の吸水処理材(以下、単に「吸水処理材」という。)の製造方法に関する。」
b「【0015】
本吸水処理材は、外部からの水分を吸収するための粒状芯部と、この粒状芯部の表面を被覆する所定厚さの被覆層部とから形成される複層構造を有している粒状体として形成されている。
粒状芯部は、小塊の形状に形成されていればよく、完全な球形等である必要はないものであり、柱状体(細長形)、扁平形等、その形状は問わず、また、保水性能を有している保水性材料であれば、紙類、繊維類、木材類、植物類、プラスチック類、ゴム類、有機性汚泥材質及び動物性廃材等の少なくとも1種類のいずれかの材料(以下、粒状芯部の構成材料を総称して「芯部材料」ということがある。)を用いることができる。
【0016】
上記紙類は、パルプを原材料としているものであるならば種類は問わないものであり、バージンパルプはもちろん、各種の廃材等を用いることができる。例えば、薄葉紙廃材、衛生用紙廃材、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー廃材、化粧紙廃材、ちり紙廃材、紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、新聞紙屑、雑誌屑、バフ粉(主として印刷会社において、製本の切断時や削り時に発生する微細な紙粉)、機械パルプ廃材、化学パルプ廃材、チタン紙廃材、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ廃材、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、不織布廃材、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉若しくは衛生材料製造時に発生する紙粉、ラミネート紙廃材、ラミネート紙の印刷屑、ラミネート紙の端屑、ダンボール屑、損紙(衛生材メーカーから発生するトリムロス、不織布等、製紙メーカーから発生する紙屑全般)、包装紙、板紙、使用済み切符、パンチ屑等を使用することができる。
・・・・
【0019】
植物類も種類は問わないものであり、ササ、竹、落葉、刈草などはもちろん、植物性残渣等を使用することもできる。ここで、植物性残渣とは、食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業又は飲食店等において原料として使用した植物の固形状の不要物をいい、ソースかす、しょうゆかす、こうじかす、酒かす、ビールかす、あめかす、海苔かす、でんぷんかす、豆腐かす、おから、あんかす、茶殻、焙煎コーヒー豆の抽出残渣、米・麦粉、大豆かす、果実の皮・種子、野菜くず、薬草かす、油かす等を使用することができる。
【0020】
プラスチック類も合成高分子化合物の固形状物質(例えば、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニール、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリウレタン(ウレタンフォーム)等の他、生分解性プラスチック等)であれば種類は問わないものであり、各種廃材を使用することができる。すなわち、廃プラスチック類、廃ポリウレタン、廃スチロール(発泡スチロールを含む)、廃農業用フィルム、各種合成樹脂系包装材料のくず、廃写真フィルム、廃ポリ容器類、電線の被覆くず、ライニングくず、廃ポリマー、塗料かす、接着剤かす、廃ベークランド(プリント基盤等)を使用することができる。
【0021】
また、排泄物処理材の廃材のプラスチックに富む分離産物、紙おむつ廃材(衛生材メーカーから発生する規格外品の紙おむつの外装体など)のプラスチックに富む分離産物、生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、紙おむつ廃材のプラスチックに富む分離産物、生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、乳パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、汗パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、失禁パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用シーツ廃材のプラスチックに富む分離産物、寝具用シーツ廃材のプラスチックに富む分級等による分離産物、マスク廃材のプラスチックに富む分離産物、アイマスク廃材のプラスチックに富む分離産物、座席用ヘッドカバー廃材のプラスチックに富む分離産物、塩化ビニル壁紙廃材、枕カバー廃材のプラスチックに富む分離産物若しくは合成樹脂繊維廃材を使用することができる。
【0022】
また、排泄物処理材の廃材、紙おむつ廃材、生理用ナプキン廃材、乳パッド廃材、汗パッド廃材、失禁パッド廃材、動物用シーツ廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、アイマスク廃材、座席用ヘッドカバー廃材、枕カバー廃材等を使用することができる。」

(イ)上記記載から、引用文献4には、次の技術が記載されていると認められる。
「外部からの水分を吸収するための粒状芯部と、この粒状芯部の表面を被覆する被覆層部とから形成され、動物の排泄物などの液体を吸収するための粒状の吸水処理材において、粒状芯部を構成する保水性の材料として、ラミネート紙廃材、ラミネート紙の印刷屑、ラミネート紙の端屑等の紙類、塩化ビニル壁紙廃材、紙おむつ廃材、紙おむつ廃材のプラスチックに富む分離産物等のプラスチック類等を用いること。」

オ 引用文献5
(ア)平成30年4月13日付けの補正の却下の決定で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特許第5377344号公報(以下、「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
a「【技術分野】
【0001】
本発明は、人又は動物の排泄物などの液体を吸収するための粒状の吸水処理材(以下、単に「吸水処理材」という)及びその製造方法に関する。」
b「【0016】
[吸水処理材]
本発明の吸水処理材(以下、「本吸水処理材」という。)は、外部からの水分を吸収するための粒状芯部と、この粒状芯部の表面を被覆する所定厚さの被覆層部とから形成される複層構造を有している。
【0017】
<粒状芯部の構成材料>
粒状芯部は、小塊の形状に形成されていればよく、完全な球形等である必要はないものであり、柱状体(細長形)、扁平形等、その形状は問わない。
また、粒状芯部は吸水性能又は保水性能を有していればその材質等に制限はない。
例えば、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニール、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリウレタン(ウレタンフォーム)等の他、生分解性プラスチックなどのプラスチック材料を使用することもできる。
【0018】
さらに、動物用排泄物処理材の廃材のプラスチックに富む分離産物、紙おむつ廃材のプラスチックに富む分離産物、生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用紙おむつ廃材のプラスチックに富む分離産物、生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、乳パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、汗パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、失禁パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用シーツ廃材のプラスチックに富む分離産物、寝具用シーツ廃材のプラスチックに富む分級等による分離産物、マスク廃材のプラスチックに富む分離産物、アイマスク廃材のプラスチックに富む分離産物、座席用ヘッドカバー廃材のプラスチックに富む分離産物、塩化ビニル壁紙廃材、枕カバー廃材のプラスチックに富む分離産物若しくは合成樹脂繊維廃材(以下、これらの材料を総称して「衛生廃材等」ということがある。)を用いることもできる。
【0019】
また、上記プラスチック材料に加えて、他の有機質廃材を加えることもできる。それらの有機質廃材としては、動物用排泄物処理材の廃材、紙おむつ廃材、動物用紙おむつ廃材(衛生材メーカーから発生する規格外品の紙おむつの外装体など)、生理用ナプキン廃材、動物用生理用ナプキン廃材(衛生材メーカーから発生する規格外品の生理用ナプキンの外装体など)、乳パッド廃材、汗パッド廃材、失禁パッド廃材、動物用シーツ廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、アイマスク廃材、座席用ヘッドカバー廃材、枕カバー廃材、薄葉紙廃材、衛生用紙廃材、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー廃材、化粧紙廃材、ちり紙廃材、紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、新聞紙屑、雑誌屑、バフ粉(主として印刷会社において、製本の切断時や削り時に発生する微細な紙粉)、機械パルプ廃材、化学パルプ廃材、チタン紙廃材、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ廃材、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、不織布廃材、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉若しくは衛生材料製造時に発生する紙粉、ラミネート紙廃材、ラミネート紙の印刷屑、ラミネート紙の端屑、ダンボール屑、損紙(衛生材メーカーから発生するトリムロス、不織布等や、製紙メーカーから発生する紙屑全般)、製紙スラッジ、パルプスラッジ、木材屑、鉋屑、木粉、紙粉、焙煎コーヒー豆の抽出残渣、茶殻、野菜屑、使用済み切符若しくはパンチ屑、又はこれら二以上の材料の混合物の粉砕物(以下、これらの材料を総称して「有機質廃材」ということがある。)を用いることができる。
【0020】
また、粒状芯部には、無機質廃材や、ベントナイト、ゼオライト等の無機質材料等を用いることもできる。
なお、脱臭材料、消臭材料、殺菌作用を有する物質、着色物質、検査用指示薬等、吸水性能を阻害することなく、他の効果を奏することが可能となるような物質を配合すること
もできる。」

(イ)上記記載から、引用文献5には、次の技術が記載されていると認められる。
「外部からの水分を吸収するための粒状芯部と、この粒状芯部の表面を被覆する被覆層部とから形成され、動物の排泄物などの液体を吸収するための粒状の吸水処理材において、粒状芯部を構成する保水性の材料として、ラミネート紙廃材、ラミネート紙の印刷屑、ラミネート紙の端屑等の有機質廃材、塩化ビニル壁紙廃材、紙おむつ廃材、紙おむつ廃材のプラスチックに富む分離産物等を用いること。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「粒状に形成されている芯部」は、本件補正発明の「粒状芯部」に相当する。
(イ)引用発明の「該芯部を囲」む「被覆材層」は、本件補正発明の「前記粒状芯部を覆う被覆層部」に相当する。
(ウ)「ポリアクリル酸樹脂」からなる「吸水性樹脂粉」は「吸水性のポリマー」であることから、引用発明の「被覆材層」に含有される「ポリアクリル酸樹脂」からなる「吸水性樹脂粉」は、本件補正発明の「前記被覆層部に含有された吸水性ポリマー」に相当する。
(エ)「粒径が10μm以下の微細なもの」である「ポリアクリル酸樹脂」からなる「吸水性樹脂粉」は、その平均粒径が20μmであることは明らかであることから、引用発明の「ポリアクリル酸樹脂」からなる「吸水性樹脂粉」の「粒径が10μm以下の微細なもの」であることは、本件補正発明の「前記吸水性ポリマーの平均粒径は、20μm以下であ」ることに相当する。
(オ)引用発明の「吸水性及び保水性を有する粒状の動物用排泄物処理材」は、本願発明の「吸水処理材」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「粒状芯部と、
前記粒状芯部を覆う被覆層部と、
前記被覆層部に含有された吸水性ポリマーと、を備え、
前記吸水性ポリマーの平均粒径は、20μm以下である吸水処理材。」

【相違点1】
粒状芯部の材料について、本件補正発明では、「塩ビ壁紙分級物又は紙おむつ廃材」であるのに対し、引用発明では、「紙廃材粉」であり、「パンチ屑及び帳簿用紙の裁断屑等の屑紙の粉砕物、紙粉、並びに紙おむつ及び紙ナプキン廃材の粉砕物の分級により得られた紙粉、ラミネート加工紙廃材の粉砕物を包含」している点。

【相違点2】
被覆層部の主材料について、本件補正発明では、「オカラ」であるのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

(4)判断
ア 相違点についての検討
(ア)相違点1について
引用文献3?引用文献5に記載されているとおり、粒状芯部の材料として塩化ビニル壁紙廃材及び紙おむつ廃材を用いることは、動物用排泄物処理材及び吸水性処理材の分野において、本願出願前において周知技術である。ところで、引用文献3?引用文献5には、「塩化ビニル壁紙廃材」が、プラスチック類の一例として、各種の分離産物とともに記載されている。そうすると、「塩化ビニル壁紙廃材」は、塩化ビニル壁紙のうちのプラスチックに関係している部分を分離して活用されるもの、すなわち、塩ビ壁紙の分級物であるといえる。
そして、引用発明において、粒状芯部として紙おむつ廃材を含め様々な紙廃材が用いられており、また、引用文献3?5においても、粒状芯部として紙おむつ廃材や塩化ビニル壁紙廃材など様々な廃材が用いられていることが開示されていることを踏まえると、引用発明の粒状芯部の材料として、上記周知の塩ビ壁紙分級物又は紙おむつ廃材を採用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点2について
引用文献2には、粒状芯部とその表面を覆う被覆層部を備えた動物用の粒状の排泄物処理材において、被覆層部を形成するために被覆する被覆組成物として、粉状乾燥オカラ80重量部、高吸水性樹脂を19重量部及び脱臭剤1重量部を混合(オカラを主材料として混合)して調製されたものが用いられた点が記載されている。
そして、引用発明と引用文献2に記載された技術は、いずれも、動物用排泄物処理材及び吸水性処理材の技術分野に属するものであり、また、引用発明の被覆層部に使用される紙廃材粉と、引用文献2に記載された被覆層部に使用されるオカラはいずれも、従前は廃材であったものであり、且つ活用されるという点において共通する。さらに、紙廃材粉とオカラは、いずれも有機質材料である。加えて、被覆層部の材料として、何を選択するかは、引用文献1の段落【0010】、引用文献3の段落【0030】?【0032】、引用文献4の段落【0030】?【0033】、引用文献5の段落【0022】?【0025】に記載され事項を踏まえると、当業者が適宜に決定しうる事項であるといえる。そうすると、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用する動機付けはあるといえる。
以上から、引用発明の被覆層部の材料として、紙廃材粉に代えて、上記引用文献2に記載されたオカラが混合されて調製された被覆組成物、すなわちオカラとすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、その際に、引用文献2に記載された技術のように、オカラを主材料とすることは当業者が適宜なし得たことである。

イ 審判請求人の主張について
(ア)引用発明において芯部が塩ビ壁紙分級物又は紙おむつ廃材からなる場合、芯部の材料としてラミネート加工紙廃材粉を用いることができなくなってしまい、「粒状の動物用排泄物処理材を、3mm以下の粒度のラミネート加工紙廃材粉を配合して粒状に形成するので、従来の動物の排泄物処理材に比して、その儘廃棄物として処理されていた使用済みのラミネート加工紙製の紙食器類を有効利用して、紙食器類に付着する食用油の滲みもない粒状の動物用排泄物処理材を製造でき」るという作用効果(段落【0007】)が妨げられ、引用発明の目的に反するので、引用発明において塩ビ壁紙分級物又は紙おむつ廃材からなる芯部を採用することには、阻害要因がある旨主張する。(審判請求書4頁2-6行)

しかしながら、粒状芯材の材料として、塩ビ壁紙分級物又は紙おむつ廃材を使用することが周知であることを示した上記引用文献3?引用文献5をみると、粒状芯材の材料(保水性を有する材料)として、塩化ビニル壁紙廃材、紙おむつ廃材等と並んで、ラミネート紙廃材、ラミネート紙印刷屑、ラミネートの端屑等が記載されている。このようなことからみて、吸水処理材の技術分野では、本願出願前において、粒状芯材の材料(保水性を有する材料)として、ラミネート紙廃材等と、塩ビ壁紙分級物又は紙おむつ廃材等を選択的に採用することが可能であることが技術常識であったものと理解できる。
また、引用文献1の上記(2)ア(ア)aの記載をみると、動物用排泄物処理材(吸水処理材)の技術分野において、ラミネート加工紙廃材と、パンチ屑、屑紙及び紙粉などの他の紙廃材とを、選択的に採用できる点が示唆されている。つまり、引用文献1自身において、紙廃材として、ラミネート加工紙廃材ではなく、パンチ屑、屑紙及び紙粉など他の廃材を採用すること、すなわち、他の廃材の活用をはかろうとするのであれば当該他の廃材を、動物用排泄物処理材(吸水処理材)の材料として採用しうる点が示唆されているといえる。引用文献1に記載の課題は、ラミネート加工紙製の食器類及び容器類の使用後の処理に係る問題であるが、引用文献1の記載全体をみれば、ラミネート加工紙を用いないもので動物用排泄物処理材(吸水処理材)を構成することも示唆されていると理解することができる。
以上のことから、引用発明において、粒状芯材の材料として、塩ビ壁紙分級物又は紙おむつ廃材を採用することに、阻害要因があるとはいうことはできない。

(イ)引用発明は、使用後の汚れたラミネート加工紙製の食器類等の有効活用を課題とするのに対し、引用文献2に記載された発明は、「オカラが、蛋白質や脂肪を含んで酸敗し易く、長期保存性に欠ける点を解決して、人又は家畜、愛玩動物等の動物用の粒状の排泄物処理材として利用可能にする」(段落【0003】)ことを課題としており、両者の課題は異なっており、主引用発明に副引用発明を適用する動機はない。また、引用発明において被覆材層の主材料とされる紙廃材粉には、ラミネート加工紙廃材の粉砕物が包含される(段落【0010】)ため、被覆材層の主材料が紙廃材粉である場合、当該主材料としてラミネート加工紙廃材粉を用いることが可能であるが、被覆材層の主材料をオカラとした場合、当該主材料としてラミネート加工紙廃材粉を用いることは不可能であるから、引用発明において引用文献2に記載された発明を適用し、被覆材層の主材料として敢えて紙廃材粉に代えてオカラを採用する動機はない旨主張している。(審判請求書5頁3-18行)

しかしながら、上記ア(イ)で説示したように、引用発明において引用文献2に記載された技術を適用し、被覆材層の主材料として紙廃材粉に代えてオカラを採用する動機はあるといえる。
また、上記(ア)で説示したように、引用文献1自身において、紙廃材として、ラミネート加工紙廃材ではなく他の廃材を採用することができる点が示唆されていることをもふまえれば、引用発明の被覆材層の主材料である紙廃材粉に代えて、引用文献2に記載されたオカラを採用することが、当業者にとって、格別困難ということはできない。

(ウ)以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することができない。

ウ まとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年7月30日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、平成29年4月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2005-102703号公報
引用文献2:特許第4630963号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
ア 引用発明の「粒状に形成されている芯部」は、本願発明の「粒状芯部」に相当する。
イ 引用発明の「該芯部を囲」む「被覆材層」は、本願発明の「前記粒状芯部を覆う被覆層部」に相当する。
ウ 「ポリアクリル酸樹脂」からなる「吸水性樹脂粉」は「吸水性のポリマー」であることから、引用発明の「被覆材層」に含有される「ポリアクリル酸樹脂」からなる「吸水性樹脂粉」は、本願発明の「前記被覆層部に含有された吸水性ポリマー」に相当する。
エ 「粒径が10μm以下の微細なもの」である「ポリアクリル酸樹脂」からなる「吸水性樹脂粉」は、その平均粒径が20μmであることは明らかであることから、引用発明の「ポリアクリル酸樹脂」からなる「吸水性樹脂粉」の「粒径が10μm以下の微細なもの」であることは、本願発明の「前記吸水性ポリマーの平均粒径は、20μm以下であ」ることに相当する。
オ 引用発明の「吸水性及び保水性を有する粒状の動物用排泄物処理材」は、本願発明の「吸水処理材」に相当する。
そうすると、一致点及び相違点は、以下のとおりである。

【一致点】
「粒状芯部と、
前記粒状芯部を覆う被覆層部と、
前記被覆層部に含有された吸水性ポリマーと、を備え、
前記吸水性ポリマーの平均粒径は、20μm以下である吸水処理材。」

【相違点A】
被覆層部の主材料について、本願発明では、「オカラ」であるのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

(2)判断
上記【相違点A】は、前記第2の[理由]2(3)イに記載した【相違点2】と同じであるから、その判断についても、同2(4)ア(イ)「相違点2について」に記載したとおりである。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-30 
結審通知日 2019-06-04 
審決日 2019-06-17 
出願番号 特願2014-16686(P2014-16686)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 住田 秀弘
西田 秀彦
発明の名称 吸水処理材及びその製造方法  
代理人 西村 公芳  
代理人 松田 純一  
代理人 大坂 憲正  

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