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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1353972
審判番号 不服2018-1927  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-13 
確定日 2019-08-07 
事件の表示 特願2014-552295「基板を処理する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月18日国際公開、WO2013/106552、平成27年 4月 2日国内公表、特表2015-510260〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年(2013年)1月10日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年1月13日(以下,「本願優先日」という。),米国及び2013年1月9日,米国)とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年11月10日付け 拒絶理由通知
平成29年 2月 9日 意見書・手続補正
平成29年 3月31日付け 拒絶理由通知
平成29年 7月 7日 意見書・手続補正
平成29年 9月29日付け 補正却下決定・拒絶査定
平成30年 2月13日 審判請求・手続補正
平成30年10月30日付け 拒絶理由通知(以下,その理由を「当審拒絶理由」という。)
そして,当審拒絶理由を通知し,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,請求人からは何らの応答もない。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,審判請求と同時に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項で特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
処理チャンバ内に配置された基板を処理する方法であって,
基板を支持するように構成された基板支持リングと前記基板の裏側の最も近くに配置された反射板とを有する処理チャンバ内に配置された前記基板に対して処理を実行するステップと,
前記基板に対して前記処理を実行している間,酸素を含むガスまたは窒素を含むガスのうちの一方のガスを含む第1のガスを,前記反射板内に配置された1つまたは複数の貫通穴を通して前記基板の裏側に供給するステップと,
前記処理チャンバにおいて,前記基板の表側の最も近くを第1の圧力に維持するとともに,前記基板の裏側の最も近くを第2の圧力に維持するステップであって,処理中に前記基板支持リングから前記基板が外れることがないように,前記第1の圧力及び前記第2の圧力を制御するステップと,
前記第1のガスからプラズマを形成するステップと,
前記基板の裏側を前記プラズマによって形成された励起種にさらすことによって,前記基板の裏側にキャッピング層を形成するステップと
を含み,
前記第2の圧力が前記第1の圧力よりも2トル以上は大きくならないように制御し,
さらに,
前記第2の圧力が前記第1の圧力よりも2トル以上は大きくならないという条件を満たすべく,前記1つまたは複数の貫通穴のうちの1つまたは複数の貫通穴に真空を与えて,前記基板の裏側から離れる前記第1のガスの流れを生み出すステップを含む,方法。」

第3 当審拒絶理由
当審拒絶理由は,本願発明は,本願優先日前日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2001-102321号公報
2.特開平08-255800号公報
3.特開平08-333681号公報
4.特開2002-033314号公報

第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献1の記載
(1)引用文献1
当審拒絶理由で引用された引用文献1には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体ウェハ(基板)の加熱を行う半導体製造装置における基板加熱方法及び半導体製造装置に関するものである。」
「【0014】例えば,改質層形成用ガスとしてO_(2)ガスを使用し,改質層として酸化膜を形成する。この場合,基板の裏面には,SiOの昇華を防ぐことが可能な酸化膜であるSiO_(2)が形成される。
【0015】また,改質層形成用ガスとしてNH_(3)ガス,NOガス,N_(2)Oガスのいずれを使用し,改質層として窒化膜または酸窒化膜を形成してもよい。例えば,改質層形成用ガスとしてNH_(3)ガスを使用した場合には,基板の裏面にはSi_(3)N_(4)が形成される。また,好ましくは,第2のガスとして,改質層形成用ガスと第1のガスとを含むガスを使用する。これにより,使用するガスが必要最小限で済み,低コスト化が図れる。」
「【0031】図1は,本発明に係る半導体製造装置として熱処理装置の一部断面を示す斜視図であり,図2は,その熱処理装置の部分拡大断面図である。同図において,熱処理装置1は,シリコンウェハ(基板)Wを温度制御しながら熱処理を行う枚葉式急速加熱熱処理装置であり,ベース部2a,側壁部2b,蓋部2cとで構成された処理チャンバ2を備えている。
【0032】この処理チャンバ2内には,ウェハWを支持する基板支持部材3が設置されている。この基板支持部材3は,ベース部2aにベアリング4を介して回転自在に取り付けられた円筒フレーム5と,この円筒フレーム5の上端に設けられたリングフレーム6とからなっており,リングフレーム6の内側縁部には,ウェハWのエッジ部が支持される支持用段部6aが形成されている。ここで,ウェハWが基板支持部材3に支持された状態(図2)では,ウェハWの裏面側に,ベース部2aと基板支持部材3とウェハWとで囲まれた閉空間(以下,ウェハ裏面側閉空間という)Saが形成される。なお,リングフレーム6の支持用段部6aにウェハWのエッジ部が載ったときには,構造上,ウェハWとリングフレーム6との間に若干の間隙が生じることがある。
【0033】ベース部2aの下部には,搬送ロボット(図示せず)により処理チャンバ2内に搬送されたウェハWを基板支持部材3に支持するためのリフト部材7が設けられている。このリフト部材7は,ベース部2aを貫通してウェハWを持ち上げる複数本(例えば3本)の支持ピン8を有している。
【0034】処理チャンバ2の蓋部2cの上方には,基板支持部材3に支持されたウェハWを加熱する複数の加熱ランプ9からなるランプ群9Gが配置されている。蓋部2cには円形のランプ用窓部Lwが設けられており,加熱ランプ9の熱はそのランプ用窓Lwを介してウェハWに伝えられる。また,ベース部2aには,ウェハWの温度を光学的に検出する温度センサ10が設けられている。この温度センサ10は,ベース部2aにおける基板支持部材3に囲まれた円形プレート11において,その中心と周縁の一部を含み所定の角度(例えば90度)をもった略扇形のセンサ設置領域内に複数組み込まれている。なお,上述したウェハ裏面側閉空間Saは光学的には完全な閉空間となっており,光学的温度センサ10による閉空間Saを利用してのウェハWの温度検出が支障なく行える。
【0035】処理チャンバ2の側壁部2bには,ガス供給口12とガス排出口13とが対向して設けられている。ガス供給口12には,処理チャンバ2内におけるウェハ裏面側空間Saの外部(以下,ウェハ表面側空間という)Sbにプロセスガス(第1のガス)を供給するためのガス供給系14(図3参照)が接続されている。ガス排出口13には,ウェハ表面側空間Sb内のガスを処理チャンバ2の外部に排出するためのガス排出系15(図3参照)が接続されている。なお,プロセスガスとは,プロセスに使用されるガスのことであり,ここでは,窒素ガス(N_(2)ガス)が使用される。
【0036】ベース部2aの円形プレート11には,ガス供給口16及びガス排出口17が設けられている。ガス供給口16には,ウェハ裏面側閉空間Sa内に改質層形成用を含むガス(第2のガス)を供給するためのガス供給系18が接続され,ガス排出口17には,ウェハ裏面側閉空間Sa内のガスを処理チャンバ2の外部に排出するためのガス排出系19が接続されている。
【0037】ここで,改質層形成用ガスとしては,ウェハWの裏面に二酸化珪素SiO_(2)の改質層(化学的な保護膜)を形成するための酸素ガス(O_(2)ガス)が使用され,改質層形成用ガスを含むガスとしては,O_(2)ガスとN_(2)ガスの混合ガス(以下,酸素含有ガスという)が使用される。このように酸素含有ガスを,プロセスガスと同じN_(2)ガスを含むガスとすることにより,ウェハWの裏面への改質膜形成のための酸素濃度が必要最小限で済むと共に,ウェハWの表面側に漏れた際に生じる被害が最少となる。また,本プロセスで使用するガスが2種類で済むため,低コスト化が図れる。
【0038】円形プレート11の周縁におけるセンサ設置領域を含む部位には,断面L字型の突起片20が設けられ,この突起片20の内側にガス供給口16が形成されている。また,ガス排出口17は,円形プレート11においてその中心からガス供給口16の反対側にわずかにずれた位置に形成され,ガス供給口16とガス排出口17との間にセンサ設置領域が設けられた構成となっている。これにより,ガス供給口16から導入された酸素含有ガスは,円形プレート11におけるセンサ設置領域全範囲の上方を通ってガス排出口17から排出される。」
「【0052】その後,t_(2)時間経過すると,以下の熱処理プロセスが開始される。まず,制御装置38からMFC28,29に所定の流量設定信号が送出される。すると,ウェハ裏面側閉空間Sa内に酸素含有ガスが供給される。このとき,ニードルバルブ30は,ウェハ裏面側閉空間Sa内に供給される酸素含有ガスの流量がウェハ裏面側閉空間Sa内から排出されるガスの流量よりも少なくなるように制御されているため,ウェハ表面側空間Sb内のN_(2)ガスの一部がウェハ裏面側閉空間Sa内に引き込まれることになり,これにより,ウェハ裏面側閉空間Sa内のO_(2)ガスがウェハ表面側空間Sbに入り込むことはほとんど無い。なお,ここでは,酸素含有ガス中のO_(2)ガスとN_(2)ガスを同時にウェハ裏面側閉空間Sa内に供給しているが,まずN_(2)ガスを供給し,所定時間経過してからO_(2)ガスを供給するようにしてもよい。
【0053】上記のプロセスガス及び酸素含有ガスの供給とほぼ同時に,駆動手段(図示せず)により基板支持部材3を回転駆動させてウェハWを回転させると共に,複数の加熱ランプ9を点灯させる。これにより,ウェハWの温度は,図5に示すように,室温(25℃)から徐々に上昇していく。そして,t_(3)時間経過した時点で,ウェハWの温度が750℃程度に達し,ウェハWの裏面に,自然酸化膜であるシリコン亜酸化物SiOの昇華を抑える二酸化珪素SiO_(2)の酸化膜が形成される。その後,t_(4)時間経過した時点で,ウェハWの温度が1000℃に達する。
【0054】その後,t_(5)時間経過すると,熱処理プロセスが終了する。つまり,ウェハWの回転を停止させ,複数の加熱ランプ9の温度がウェハ搬出温度(750℃)となるように制御されると共に,制御装置38からMFC28,29に流量ゼロ信号が送出され,処理チャンバ2内への酸素含有ガスの供給が終了する。これにより,ウェハWの温度は,ほぼ750℃まで徐々に下降していく。その後,t_(6)時間経過すると,搬送ロボット(図示せず)によりウェハWが処理チャンバ2の外部に取り出される。」
「【0075】また,上記実施形態では,ガス排出系19にニードルバルブ31を設けると共に,ガス供給系18にMFC28,29を設けたが,ニードルバルブ31及びMFC28,29のいずれか一方のみ設けてもよく,あるいはウェハWの自重等によりウェハ裏面側閉空間Sa内の酸素含有ガスがウェハ表面側空間Sbにほとんど漏れないような場合には,そのような手段は特に無くてもかまわない。(略)」
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「基板加熱方法において,改質層形成用ガスとして酸素ガスを使用し,改質層として酸化膜を形成し,基板の裏面からSiOの昇華を防ぐこと,処理チャンバ2内のリングフレーム6でウェハのエッジ部を支持し,円形プレート11に設けられたガス供給口16から導入された酸素含有ガスは円形プレート11の上方を通ってガス排出口17から排出されること,熱処理プロセスが開始されると,ウェハ裏面側閉空間Sa内に酸素含有ガスが供給され,ウェハ表面側空間Sb内のガスの一部がウェハ裏面側閉空間Sa内に引き込まれ,これにより,ウェハ裏面側閉空間Sa内の酸素ガスがウェハ表面側空間Sbに入り込むことはほとんど無いこと。」
2 引用文献2の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献2には,図面とともに次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,基板の放射率を向上させることにより,並びに,基板温度の測定を収集することにより,半導体基板の非接触の温度測定を改良する技術に関する。」
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】温度測定におけるウエハ放射率の変化の影響を減少させる技術は知られている。この技術の1つに,ターゲット基板の裏面の近くに熱反射器を置き,基板からの熱放射が基板に反射し返される反射キャビティを形成することがある。反射器を貫いてキャビティに挿入される光パイプが反射キャビティからの放射を集め,集められた光をパイロメータに与える。理想的な反射器を想定すれば,基板から発せられる全ての熱放射は基板に反射し返されるので,反射キャビティが理想黒体のように振る舞うとして,数学的に示すことが可能である。即ち,反射キャビティ内の熱放射の強度は,基板表面の放射率の関数ではなくなるだろう。換言すれば,理想的なケースでは,反射キャビティは基板の有効放射率の値を1に等しい値まで増加させる。しかし,この反射器は完全よりも劣るであろうことから,基板の有効放射率はウエハの放射率よりも高くなるが1よりも小さくなるだろう。それにもかかわらず,ウエハの実際の放射率の変化は測定された温度にはあまり影響を与えないであろう。」
「【0030】(RTPシステムの概要の本発明を包含したRTPシステム)本発明に従って改良されたRTPシステムが図3(a)に示される。このRTPシステムは,ディスク形状の直径8インチ(200mm)のシリコン基板106を処理するための処理チャンバ100を有している。基板106は,チャンバ内で基板支持体108上に載置され,基板の真上に配置された加熱要素110によって加熱される。加熱要素110は,基板の約1インチ(2.5cm)上方の水冷クオーツウィンドウ組立体114を介して,処理チャンバ100に進入する放射エネルギー112を発生させる。基板106の下方には,水冷式のステンレス鋼のベース116上に載置される反射器102が存在する。反射器102は,アルミニウム製であり,高反射性のコーティング120を有している。基板106の下側と反射器102の頂部との間には,基板の有効放射率を増加させるための反射キャビティ118が形成されている。」
3 引用文献3の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献3には,図面とともに次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は化学反応によって平らなサンプルの表面上に薄膜を成膜したり,エッチングする装置に関するものである。本発明は特に「冷却壁型反応器 (reacteurs a murs froids)」すなわち装置壁を低温に保持した状態で被処理サンプルのみを必要温度に加熱する形式の気相化学反応装置で使用することができる。この種の反応装置はマイクロエレクトロニクス分野で特定の電気特性,導電性,電気絶縁性を有する薄膜の製造やそのエッチングに使用される。被処理サンプルとしては直径が 100?200 nmのシリコンウエハを挙げることができる。本発明はさらに,冶金分野での機械部品の被覆,例えば各種機械部品の表面硬度,熱特性,電気特性を変えるための被覆形成にも使用できる。本発明はさらに,光学的分野での反射膜や吸収膜の成膜に使用することもできる。」
「【0005】サンプル1とサンプル支持体5との間にガスを注入して圧力を 10 Torr (1330Pa) 以上にすると上記の問題は避けられるが,反応室2を低圧にすることができなくなる。逆に低圧にするとサンプルを締付け手段で機械的に保持しない限りサンプル1がサンプル支持体5から浮き上がり,サンプル支持体5がサンプル1と同じ化学反応に曝され,同じ薄膜で覆われて,装置が極めて単時間で汚染されてしまう。」
「【0015】反応室12の下側空間21内に不活性ガスが存在することによってサンプル支持体の下側表面上への付着を防ぐことができる。この場合,不活性ガスの循環によって下側空間21内の圧力P1を活性ガスの循環で生じる上側空間22内の圧力P2よりもごくわずかに高くする。従って,サンプル11はその自重によって着脱自在なリング15上に当接され,1Torr(1330 Pa)以下の低圧での処理が可能になる。2つの空間21,22の間の圧力差はサンプル1にその自重よりもわずかに小さい垂直方向の上向きの力が加わるように調節される。そのため,上側空間21と下側空間22にはそれぞれ別の圧力測定・制御手段が設けられている。すなわち,2つの空間の間の微小な圧力差は例えば下側空間21と上側空間22とに接続された差圧計24で測定手段を用いて得られる。この差圧計24は不活性ガスの出口23に設けられた第1弁25を制御して不活性ガスの循環量を調節し,従って下側空間21内の圧力を制御して上記のごく微小な圧力差を維持する。」
「【0021】活性ガスの反応圧力は約 0.5Torr(66Pa)であり,10Torr(1330 Pa) の圧力に較正された圧力計26によって調節される。圧力計24は不活性ガス出口23に設けられた第1の調節弁25を制御し,1Torr(130Pa) に較正された圧力計24によって下部空間21と上部空間22との間の圧力差を約 0.03Torr(4Pa)に調節する。(略)」
4 引用文献4の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献4には,図面とともに次の記載がある。
「【0001】発明分野
本発明は,一般に,複合基板の加工のための方法及び装置に関し,典型的には,電子デバイス,例えば一体型集積回路や平面パネルディスプレイの製造において用いられる複合基板の加工のための方法及び装置に関する。特には,本発明は,基板上に誘電体層を処理するための方法及び装置に関する。」
「【0056】ストリッピングチャンバ
図7は,本発明の例示的な基板ストリッピングチャンバの横断面図である。特に,図7は,処理された膜の非反応性ガスアニール及び酸化ガスストリップのいずれも行える高速熱アニールチャンバである。基板ストリッピングチャンバ又は高速熱アニール(RTA)チャンバ118は,好ましくは移送チャンバ108に連結している。図2及び3に示されているように,高圧堆積モジュール101は,好ましくは,2つのRTAチャンバ118を含み,それらは好ましくはキャッピングモジュール120から見て移送チャンバ108の反対側に配置され,基板は,基板ハンドラー112によってTRAチャンバ118内へとそしてそこから外へと移送される。」
「【0064】好ましくは,ガス入口936が囲い部902の側壁910を貫通するように配置され,アニール処理加工の間,選択されたガスがRTAチャンバ内に流れ込むのを可能とする。ガス入口936は,RTAチャンバ118内へのガスの流を制御するために,バルブ940を通じてガス供給源938に連結している。ガス供給源938は,高温アニーリングのために非反応性ガスを提供でき,また,露出した基板膜の酸化のために,酸化ガス好ましくはオゾンプラズマをアニーリングチャンバ118に供給する遠隔ユニットでありうる。ガス出口942が好ましくは,囲い部902の側壁910の低い部分に配置され,RTAチャンバ内のガスを排気し,そして好ましくは逃し/点検バルブ944に連結されてチャンバ外からの大気の逆流を防ぐ。任意に,ガス出口942は真空ポンプ(図示せず)に連結されて,アニール処理の間,RTAチャンバを所望の真空レベルに排気する。」
「【0066】基板の酸化ストリップのために,RTAチャンバ118は,約1トール?約10トールの圧力に近い圧力に維持され,酸化ガスは,高温にて酸素及びオゾン,或いはプラズマを含んだ酸素を含む。好ましくは,酸化は,酸素に敏感でない又は酸素と反応しない物質を含む基板表面で好ましくは行われる。好ましくは,RTAチャンバ118内への酸化ガスの流れは,高流速例えば20リットル/分より大きい流速に維持され,基板上の露出された膜の通過酸化ストリップを提供する。酸化ストリップ加工の間,基板は約200℃?約450℃の温度に約30秒?約30分の間,もっと好ましくは約350℃?約400℃の温度に約30秒?約5分の間加熱される。酸化ガスは,酸素供給源(図示せず)から受け取り,酸素供給源はまたガスを処理して,遠隔のプラズマ発生装置RF又は遠隔のマイクロ波発生装置(図示せず)から酸素種を提供する。」

第5 対比及び判断
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「基板加熱方法」は「処理チャンバ2内のリングフレーム6でウェハのエッジ部を支持し」て行われるから,本願発明の「処理チャンバ内に配置された基板を処理する方法」に相当する。
イ 引用発明の「円形プレート11」は,「ウェハWの裏面側に,ベース部2aとウェハWとで囲まれた閉空間」を形成する「ベース部2a」の一部である(前記第4の1(1)【0032】及び【0036】)から,本願発明の「前記基板の裏側の最も近くに配置された反射板」とは,「前記基板の裏側の最も近くに配置された板」という点で共通する。そして,引用発明の「熱処理プロセス」は,「処理チャンバ2内のリングフレーム6でウェハのエッジ部を支持し」て行われるから,本願発明の「基板を支持するように構成された基板支持リングと前記基板の裏側の最も近くに配置された板とを有する処理チャンバ内に配置された前記基板に対して処理を実行するステップ」に相当する。
ウ 引用発明の「円形プレート11に設けられたガス供給口16から導入された酸素含有ガス」「熱処理プロセスが開始されると,ウェハ裏面側閉空間Sa内に酸素含有ガスが供給され」は,本願発明の「前記基板に対して前記処理を実行している間,酸素を含むガスまたは窒素を含むガスのうちの一方のガスを含む第1のガスを,前記板内に配置された1つまたは複数の貫通穴を通して前記基板の裏側に供給するステップ」に相当する。
エ 引用発明の「改質層として酸化膜を形成し,基板の裏面からSiOの昇華を防ぐこと」は,本願発明の「前記基板の裏側にキャッピング層を形成するステップ」に相当する。
オ 引用発明の「円形プレート11に設けられたガス供給口16から導入された酸素含有ガスは円形プレート11の上方を通ってガス排出口17から排出されること」は,本願発明の「前記1つまたは複数の貫通穴のうちの1つまたは複数の貫通穴に真空を与えて,前記基板の裏側から離れる前記第1のガスの流れを生み出すステップ」に相当する。
カ すると,本願発明と引用発明とは,下記キの点で一致し,下記クの点で相違する。
キ 一致点
「処理チャンバ内に配置された基板を処理する方法であって,
基板を支持するように構成された基板支持リングと前記基板の裏側の最も近くに配置された板とを有する処理チャンバ内に配置された前記基板に対して処理を実行するステップと,
前記基板に対して前記処理を実行している間,酸素を含むガスまたは窒素を含むガスのうちの一方のガスを含む第1のガスを,前記板内に配置された1つまたは複数の貫通穴を通して前記基板の裏側に供給するステップと,
前記基板の裏側にキャッピング層を形成するステップと
を含み,
さらに,
前記1つまたは複数の貫通穴のうちの1つまたは複数の貫通穴に真空を与えて,前記基板の裏側から離れる前記第1のガスの流れを生み出すステップを含む,方法。」
ク 相違点
(ア)相違点1
本願発明の「前記基板の裏側の最も近くに配置された板」は「反射板」であるのに対し,引用発明の前記「板」は「円形プレート11」である点。
(イ)相違点2
本願発明では「前記処理チャンバにおいて,前記基板の表側の最も近くを第1の圧力に維持するとともに,前記基板の裏側の最も近くを第2の圧力に維持するステップであって,処理中に前記基板支持リングから前記基板が外れることがないように,前記第1の圧力及び前記第2の圧力を制御」し「前記第2の圧力が前記第1の圧力よりも2トル以上は大きくならないように制御」するのに対し,引用発明では「ウェハ表面側空間Sb内のガスの一部がウェハ裏面側閉空間Sa内に引き込まれ,これにより,ウェハ裏面側閉空間Sa内の酸素ガスがウェハ表面側空間Sbに入り込むことはほとんど無い」点。
(ウ)相違点3
本願発明では「前記第1のガスからプラズマを形成するステップと,前記基板の裏側を前記プラズマによって形成された励起種にさらすことによって」キャッピング層を形成するのに対し,引用発明ではこのステップが無い点。
(2)判断
ア 相違点1について
引用発明では「ウェハ裏面側閉空間Saは光学的には完全な閉空間となっており,光学的温度センサによる閉空間Saを利用してのウェハWの温度検出が支障なく行える」(前記第4の1(1)【0034】)とあり,温度検出を行うために反射器を用いて反射キャビティを形成することが引用文献2(前記第4の2)に記載されているから,引用発明において,温度検出のための閉空間を実現するために,引用文献2に記載された「反射器」を採用することは,当業者が容易になし得ることである。
イ 相違点2について
引用文献3(前記第4の3)には,シリコンウエハである被処理サンプルを処理するにあたり,サンプルがサンプル支持体から浮き上がらないように,下側空間内の圧力P1を上側空間内の圧力P2よりもごくわずかに高くし,2つの空間の圧力差はサンプルにその自重よりもわずかに小さい上向きの力が加わるように調節すること,具体的に下部空間と上部空間との圧力差を約0.03Torrに調節することが記載されており,引用発明において「ウェハ裏面側閉空間Sa内の酸素ガスがウェハ表面側空間Sbに入り込むことはほとんど無い」ようにするためにはそもそも「ウェハ裏面側閉空間Sa」の「閉空間」を保持する必要があること,また引用文献1にはウェハWの自重を利用することが示唆されている(前記第4の1(1)【0075】)ことから,ウェハが「浮き上がらないように」引用文献3に記載された技術的事項を採用することにより相違点2を解消することは,当業者が容易になし得ることである。
ウ 相違点3について
引用文献4(前記第4の4)には,ガス供給源938は露出した基板膜の酸化のために,オゾンプラズマをアニーリングチャンバ118に供給する遠隔ユニットであることが記載されており,引用発明において「改質層として酸化膜を形成」するために,引用文献4に記載された技術的事項を採用してプラズマを供給することは,当業者が容易になし得ることである。
(3)まとめ
よって,本願発明は引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

第6 結言
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明については,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-06 
結審通知日 2019-03-12 
審決日 2019-03-25 
出願番号 特願2014-552295(P2014-552295)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴山 将隆  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 梶尾 誠哉
深沢 正志
発明の名称 基板を処理する方法および装置  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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