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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E05B
管理番号 1353987
審判番号 不服2017-17758  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-30 
確定日 2019-08-08 
事件の表示 特願2014-545056「自動車用モジュールカメラおよび自動化入口用画像処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月13日国際公開、WO2013/082725、平成27年 3月12日国内公表、特表2015-507708〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年12月10日(パリ条約による優先権主張2011年12月9日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年10月12日付け: 拒絶理由通知書
(平成28年10月19日発送)
平成29年 1月18日: 期間延長請求書(2カ月)
平成29年 3月13日: 意見書、手続補正書の提出
平成29年 7月31日付け: 拒絶査定
(平成29年8月2日発送)
平成29年11月30日: 審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 8月24日付け: 当審拒絶理由通知書
(平成30年8月29日発送)
平成30年11月28日: 期間延長請求書(1カ月)
平成30年12月27日: 期間延長請求書(1カ月)
平成31年 1月18日 : 意見書、手続補正書の提出


第2 本願発明
以下、平成31年1月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面に基いて審理する。
本願の請求項に係る発明は、上記手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1ないし16に係る発明(以下、「本願発明1」等という。)は、その請求項1ないし16に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
自動車の自動化された乗り込みの入口のためのシステムであって、
前記入口に隣接して配置されたカメラと、
前記入口をオープンするように構成された機械システムと、
画像処理エンジンと、
キーフォブを検出して認識するように構成され、前記キーフォブの検証の後に、イネーブル信号を前記画像処理エンジン、前記カメラおよび前記入口に送信する、無線周波数(RF)ハブと、を備え、
前記画像処理エンジンは、
前記キーフォブの検出の決定と、
ユーザーが通り過ぎることなく前記自動車の傍に立っていることを示す光または色のグラデーション変化を用いている、前記カメラから受信する画像に基くユーザーの検出の判断と、
所定の仕草であることを示す光または色のグラデーション変化を用いている、前記カメラから受信する画像に基くユーザーの仕草の判断と、
に基いて、前記入口をオープンするために前記機械システムを作動する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記画像処理エンジンは、パワーマネージメント部と、LIN(local-interconnect-network)/CAN(control-area-network)のトランシーバと、DSP(digital-signal-processor)と、デシリアライザとを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記画像処理エンジンは、前記ユーザーに関連付けられたキーフォブを検出したことを検証するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記画像処理エンジンは、前記カメラおよびパワーリフトゲートモジュールのいずれか1つと一体化されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
自動車の入口を自動的に作動させるための方法であって、前記方法は、
キーフォブを検出して検証するステップと、
前記入口に隣接して配置されたカメラから画像を受信するステップと、
ユーザーの仕草が存在するかどうかを判断する、光または色のグラデーション変化を検出するために画像を処理するステップと、を備え、
前記処理は、
ユーザーが通り過ぎることなく前記自動車の傍に立っていることを示す光または色のグラデーション変化に基くユーザーの検出を判断するステップと、
あらかじめ決められた仕草であることを示す光または色のグラデーション変化に基くユーザーの仕草を判断するステップと、
前記ユーザーが通り過ぎることなく前記自動車の傍に立っていて、そして前記仕草をしていることを示す前記画像に基いて、前記入口をオープンするステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記処理するステップは、ユーザーが入口に存在するか否かの判断を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
キーフォブが自動車から所定の範囲内にあるか否かを判断するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
自動車であって、
前記自動車の入口に隣接して配置されたカメラシステムと、
前記入口をオープンするように構成された電気機械システムと、
前記カメラシステムにより捉えられた画像のビデオ情報を受信するように構成されている画像処理システムと、
キーフォブを検出して認識するように構成され、前記キーフォブの検証の後に、イネーブル信号を前記画像処理システム、前記カメラシステムおよび前記入口に送信する、無線周波数(RF)ハブと、を備え、
前記画像処理システムは、
前記キーフォブの検出および検証と、
ユーザーが通り過ぎることなく前記自動車の傍に立っていることを示す前記カメラシステムにより捉えられた画像に基くユーザーの検出の判断と、
所定の仕草であることを示す前記カメラシステムにより捉えられた画像に基くユーザーの仕草の判断と、
に基いて、前記入口をオープンするために前記電気機械システムを作動するように構成されている、
ことを特徴とする自動車。
【請求項9】
前記画像処理システムは、パワーマネージメント部と、LIN/CANトランシーバと、DSPと、デシリアライザと、を備えることを特徴とする、請求項8に記載の自動車。
【請求項10】
前記画像処理システムは、さらに前記ユーザーの仕草が前記カメラシステムから受信した画像に基づいて検出された場合に、前記入口をオープンさせるように構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の自動車。
【請求項11】
前記画像処理システムは、さらに前記自動車が関係するキーフォブが認証された場合に、前記入口をオープンさせるように構成されていることを特徴とする、請求項10に記載の自動車。
【請求項12】
前記画像処理システムは、前記カメラシステムと一体化されていることを特徴とする、請求項8に記載の自動車。
【請求項13】
自動車の自動化された乗り込みの入口のためのシステムであって、
前記入口に隣接して配置された画像システムと、
前記入口をオープンするように構成された電気機械システムと、
光または色のグラデーション変化を用いて前記画像システムとから収集された画像に基いて、前記画像システムからの前記画像を解析するように構成されている処理モジュールと、を備え、
前記処理モジュールは、
キーフォブの検出、認識、および検証と、
ユーザーが通り過ぎることなく前記自動車の傍に立っていることを示す前記画像の光、輪郭、または色のグラデーション変化に基くユーザーの検出の判断と、
所定の仕草であることを示す前記画像の光、輪郭、または色のグラデーション変化に基くユーザーの仕草の判断と、
に基いて、前記入口をオープンする信号を前記電気機械システムに送るように構成されている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記処理モジュールは、パワーマネージメント部と、LIN/CANトランシーバと、DSPと、デシリアライザとを含むことを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記処理モジュールは、さらに前記ユーザーおよび前記自動車の双方が関係するキーフォブが検出されたことを検証するように構成されていることを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記処理モジュールは、前記画像システムと一体化されていることを特徴とする、請求項13に記載のシステム。」

ただし、請求項13には「光または色のグラデーション変化を用いて前記画像システムとから収集された画像に基いて、」と記載されているが、請求項13中には「画像システム」以外に「画像」を供給し得るものが存在せず、「画像」が「画像システム」及び「画像システム」でないものの双方から収集されることは辻褄が合わない。そのため、請求項13の当該記載については、「光または色のグラデーション変化を用いて前記画像システムから収集された画像に基いて、」の誤記と認める。


第3 当審拒絶理由の概要
当審が通知した拒絶理由の概要は、整理すると以下のとおりである。

平成31年1月18日付け手続補正書による補正前の本願請求項1,3-10,12-15,17-19に係る発明は、本願の優先日前に頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
平成31年1月18日付け手続補正書による補正前の本願請求項2,11,16に係る発明は、本願の優先日前に頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明並びに引用文献3に示される周知技術基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第4 引用文献の記載事項、引用文献に記載された発明
1 引用文献1
(1)記載事項
当審による拒絶の理由で引用し、本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2006-328932号公報(平成18年12月7日公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審決で付した。以下、同様。)。

ア 記載事項ア
「【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機と車両側ユニットとが相互通信を行い、その通信結果に基づいて、車両ドアの状態を制御する車両ドア制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両ドア制御システムとして、携帯型電子キー(携帯機)と車両側ユニットとの双方向通信によるIDコードの照合結果をもとに、各ドアのロック・アンロック状態を制御するシステムが知られている。このシステムにおいては、車室内外に所定の通信エリアを設定し、この通信エリアにおいて、車両側ユニットにおける送信機から例えば所定間隔毎にリクエスト信号を発信する。このようにして、携帯機の保持者の車両への接近、車両への乗車や車両からの降車を監視している。
【0003】
例えば、携帯機の保持者が車両への乗車のために車両に接近し、通信エリアに進入すると、リクエスト信号に応答して携帯機がIDコードを含むレスポンス信号を車両側ユニットに返送する。車両側ユニットは、携帯機から取得したIDコードが登録IDコードに一致する等、所定の関係を満足すると判定される場合に、車両側ユニットのドアロック制御装置に対して、各ドアをアンロックスタンバイ状態にするように制御信号を与える。この状態となった時に、携帯機の保持者がドアハンドルに触れると、ドアロック制御装置は、それをタッチセンサ等で検出し、ドアをアンロックする。
【0004】
また、携帯機の保持者が、車両のエンジンを停止した後に降車すると、携帯機との通信エリアは、車室内から車室外へ移る。この場合に、例えばドアハンドルの近傍に設けられたドアロックスイッチが操作されると、ドアはロックされる。
【0005】
上述したシステムによれば、携帯機の保持者は、携帯機を手にすることなく、ドアのロック・アンロックを行うことが可能となり、携帯機の保持者にとっての利便性を向上することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、スライドドアや後部ドアに、電動モータ等を動力源として、それらのドアを自動的に開閉する自動開閉装置を備える車両が増加しつつある。このような車両が、上述した車両ドア制御システムを備えることもあるが、その場合、自動開閉装置と、車両ドア制御システムは独立して動作するのが現状である。
【0007】
すなわち、自動開閉装置は、通常、携帯機に設けられた開閉スイッチを操作することによって動作したり、もしくは車両のドアがアンロックされた後に、そのドアを所定開度以上開くことによって、その後、自動的にドアを開扉するように動作したりする。一方、車両ドア制御システムの動作は上述した通り、携帯機と車両側ユニットとの相互通信によって、ドアのロック・アンロックを行う。このように、自動開閉装置と車両ドア制御システムとは、車両のドアという共通の制御対象を有しながら、それぞれの動作が独立したものであったため、ユーザの利便性向上との観点から、改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたもので、携帯機と車両側ユニットとが相互通信を行い、その通信結果に基づいて、車両ドアの状態を制御する車両ドア制御システムにおいて、車両ドアの自動開閉機能を備える場合に、一層のユーザの利便性の向上を図ることが可能な、車両ドアの状態制御を行う車両ドア制御システムを提供することを目的とする。」

イ 記載事項イ
「【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る車両ドア制御システムを、図に基づいて説明する。図1は、本実施形態による車両ドア制御システムの全体の構成を示す構成図である。
【0038】
本実施形態における車両ドア制御システムは、携帯機(電子キー)1と車両側ユニットとの双方向通信によるIDコードの照合結果を基に、電子キーECU4が各ドアのロック・アンロック状態を制御する。また、電子キーECU4は、車両10のセキュリティ性を向上するために、ステアリングロック状態の制御、さらに車両10のエンジン始動の許可・禁止状態の制御も行う。さらに、電子キーECU4は、車両側ユニットと携帯機1との通信状態から、携帯機1の保持者が車両に乗車しようとしている状態を推測して、自動的にドアを開扉する制御を行う。
【0039】
図1に示すように、携帯機1は、車室外送信機2a?2eあるいは車室内送信機2fからのリクエスト信号を受信する受信機1a、このリクエスト信号の受信に応答して、IDコード等を含むレスポンス信号を送信する送信機1bを備えている。携帯機ECU1cは、上述した受信機1a及び送信機1bと接続され、各種の制御処理を実行する。具体的には、携帯機ECU1cは、受信機1aの受信信号に基づいてリクエスト信号の受信の有無を判定したり、そのリクエスト信号に応答して、IDコード等を含むレスポンス信号を生成して、送信機1bから送信させたりする。
【0040】
車両側ユニットは、車両10の各ドア11?15に設けられた車室外送信機2a?2e、及び車室内に設けられた車室内送信機2fを有する。これらの車室外送信機2a?2e及び車室内送信機2fは、車両側ユニットの主要部をなす電子キーECU4からの送信指示信号に基づいてリクエスト信号を発信する。
【0041】
なお、車両10には、前席に対応して、ヒンジ式の車両ドア11,12が設けられており、後席に対応して、スライド式の車両ドア13,14が設けられている。これらのスライド式の車両ドア13,14には、モータを駆動源とするスライドドア駆動部9c、9dが設けられており、電子キーECU4からの開閉信号に従って、自動的にスライド式の車両ドア13,14を開閉することが可能である。また、車両10は、跳ね上げ式の後部ドア15を備えている。この後部ドア15にも、スライドドア駆動部9c、9dと同様に、モータを駆動源とする後部ドア駆動部16が設けられており、後部ドア15も電子キーECU4からの開閉信号に従って、自動的に開閉することができる。スライド式の車両ドア13,14や、後部ドア15は、ドアが比較的重い場合が多いので、自動開閉機能を付与することにより、車両乗員の乗降時の負担を軽減できる。
【0042】
車室外送信機2a?2eのリクエスト信号の到達距離は、例えば1.0m程度に設定される。従って、車両10の駐車時には、そのリクエスト信号の到達距離に応じた通信エリアが車両10の各ドア11?15の周囲に形成され、携帯機1の保持者が車両10に接近したことを検知できるようにしている。また、車室内送信機2fによる通信エリアは、車室内をカバーするように設定され、携帯機1が車室内にあるか否かを検知できる。
【0043】
また、車両側ユニットは、車両10の車室内に設けられ、送信機2a?2fに対する送信指示信号の出力と同期してレスポンス信号受信可能状態にされて、携帯機1から送信されるレスポンス信号を受信する受信機3を有する。受信機3が受信したレスポンス信号は、電子キーECU4に出力される。電子キーECU4は、この受信したレスポンス信号に含まれるIDコードの照合結果に基づいて、ドアのロック・アンロック状態の制御等を実行すべきか否かの判定を行う。
【0044】
さらに、車両側ユニットは、車両10の各ドア11?15に設けられ、その各ドア11?15をロック・アンロック状態に制御するドアロック制御部5a?5eを有する。このドアロック制御部5a?5eは、電子キーECU4からの指示信号に応じて動作する。
【0045】
車両10において、自動開閉機能が付与されたドア13?15のドアハンドル6c?6eには、インジケータ6c1?6e1が設けられている。このインジケータ6c1?6e1は、例えばIDコードの照合結果がOKとなったときに点灯し、ドア13?15を自動開閉する条件の一つが満足されたことを携帯機1の保持者に報知する。
【0046】
このインジケータは、自動開閉機能が付与されていないドア11,12に設けて、IDコードの照合結果を報知するようにしても良い。また、インジケータとしては、ドア13?15のドアハンドル6c?6eに設ける以外にも、例えば車室内側のドアトリムに設けたりしても良い。さらに、車両に既に設置されているハザードランプやドアミラーに付設されたウインカーミラーなどをインジケータとして兼用させても良い。
【0047】
なお、図示していないが、車両には、ドアを自動開扉することを携帯機1の保持者に報知するためのブザーが設けられている。すなわち、インジケータが点灯している状態で、ブザーが鳴ることで、携帯機1の保持者は、自らが接近しているドアがこれから自動的に開扉することを知ることができる。また、ID照合がOKとなったときに、まずインジケータが点灯し、その後、携帯機1の保持者が乗車しようとしていることが推測されたときに、ブザーを鳴らしてドアを自動開扉することにより、車両側ユニットにおける車両ドアの自動開扉のための動作の段階を、携帯機1の保持者に的確に伝えることができる。なお、自動開扉を報知する際、ブザーの他に、音声にてドアが自動開扉することを案内しても良い。」

ウ 記載事項ウ
「【0052】
次に、携帯機1の保持者が、自動開閉機能が付与されたドア13?15に接近した場合に、上述した車両側ユニットと携帯機1との双方向通信によるIDコードの照合結果を基に、電子キーECU4が各ドアをアンロックするとともに、そのドアを自動的に開扉させる乗車時制御を実行するための処理に関して、図2のフローチャートに基づいて詳細に説明する。この乗車時制御により、携帯機1の保持者は、車両ドアのアンロックの後に、改めて車両ドアの自動開扉動作の実行を指示することが不要となり、携帯機1の保持者の利便性を一層向上することができる。
【0053】
図2に示す処理は、所定時間ごとに起動されて実施されるものである。すなわち、車両10のエンジンが停止され、かつ各ドア11?15がロックされた状態で駐車されている場合、所定時間経過毎に車室外送信機2a?2eに対してリクエスト信号の送信を指示して、携帯機1の保持者が車両10に接近したか否か確認する。なお、携帯機1の保持者が自動開閉機能が付与されていないドア11?12に接近した場合には、単に、各ドアをアンロックする処理のみが行われる。
【0054】
まず、ステップS10では、車室外送信機2a?2eに対して送信指示信号を出力して、車室外送信機2a?2eからリクエスト信号を送信させる。そして、ステップS20では、このリクエスト信号に応答する、携帯機1からのレスポンス信号を受信機3にて受信したか否かを判定する。レスポンス信号が受信されていない場合には、携帯機1が通信エリア内に存在しないとみなして、ステップS100の処理に進む。一方、携帯機1からレスポンス信号を受信した場合には、ステップS30の処理に進む。
【0055】
本実施形態では、車室外送信機2a?2eから、車室外送信機2a?2eごとに固有の識別コードを含むリクエスト信号が送信され、携帯機1は、その識別コードを含むレスポンス信号を返送するように構成している。あるいは、電子キーECU4は、各送信機2a?2eに、順番にリクエスト信号を送信するように指示しても良い。このようにすれば、電子キーECU4は、携帯機1がいずれの送信機2a?2eからのリクエスト信号に応答してレスポンス信号を返送したかを識別できる。すなわち、携帯機1の保持者が、いずれの車両ドア11?15に対して接近しているのかを識別できる。
【0056】
ステップS30では、レスポンス信号に含まれるIDコードが、予め登録されているIDコードと一致する等、所定の関係を満足するか否かが判定される(IDコードの照合OK・NG判定)。この判定処理において、IDコードの照合OKと判定されると、ステップS40の処理に進み、IDコードの照合NGと判定されると、ステップS100の処理に進む。
【0057】
ステップS40では、携帯機1の保持者が接近しているドアに設けられたインジケータ6c1?6e1を点灯して、IDコードの照合結果がOKであり、ドアを自動開扉する一つの条件が満足されたことを携帯機1の保持者に報知する。逆に、ステップS100では、正規の携帯機1の保持者が車両に接近している状況ではないので、インジケータ6c1?6e1を消灯させる。
【0058】
ステップS40にてインジケータ6c1?6e1を点灯させると、ステップS50の処理に進む。ステップS50では、リクエスト信号が送信される所定時間間隔よりも長い第2の所定時間以上継続してレスポンス信号を受信している状態であるか否かを判定する。すなわち、ID照合OKとなったレスポンス信号の受信結果は記憶され、第2の所定時間以上継続して、そのレスポンス信号の記憶が行われているか否かを判定する。
【0059】
このステップS50の判定処理において、第2の所定時間以上継続してレスポンス信号を受信していると判定した場合、携帯機1の保持者は、単に車両の傍を通り過ぎたのではなく、少なくとも第2の所定時間以上車両の近傍に留まっていると判断できる。従って、携帯機1の保持者は車両に乗車しようとしている状態であると推測することができる。この場合、ステップS60に進んで、ドアのアンロック制御を行う。このドアのアンロック制御では、携帯機1の保持者が近づいたドアのみアンロックするように、該当するドアロック制御部5a?5eに指示しても良いし、全てのドア11?15をアンロックするように各ドアロック制御部5a?5eに指示しても良い。
【0060】
続くステップS70では、携帯機1の保持者が近づいているドアが、自動的に開扉されることを事前に報知するために、ブザーを鳴らす。携帯機1の保持者は、インジケータが点灯し、かつブザーが鳴ることで、これから自らが面しているドアが自動的に開扉することを認識できる。
【0061】
ステップS80では、携帯機1と通信した車室外送信機2c?2eを備えるドア13?15を、携帯機1の保持者が乗車の際に利用しようとしているドアとみなして、そのドアをスライドドア駆動部9c、9dあるいは後部ドア駆動部16によって自動的に開扉させる。なお、乗車との用語は、後部ドア15を開扉させて、携帯機1の保持者が荷物等を車両に積み込むことを含む。
【0062】
ステップS90では、ステップS40にて点灯したインジケータを消灯させる。なお、このインジケータは、最初にID照合OKと判定されてから、ドアが自動開扉されるか、携帯機1の保持者が車両から離れることにより、携帯機1との通信が不能となるまで、継続的に点灯される。
【0063】
上述したように、第1実施形態に係わる車両ドア制御システムにおいては、車両側ユニットが、IDコードの照合がOKとなり、かつ携帯機1の保持者が自動開扉機能が付与された車両ドア13?15の近傍に留まっていることで乗車の意思を推測した場合に、車両ドア13?15のアンロックと同期して、その車両ドア13?15を自動的に開扉させる。これにより、携帯機の保持者1は、車両ドア13?15のアンロックの指示及び、アンロック後に改めて車両ドア13?15の自動開扉動作の実行を指示することが不要となり、携帯機1の保持者の利便性を一層向上することができる。」

エ 記載事項エ
「【0087】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態による車両ドア制御システムについて説明する。
【0088】
本実施形態では、自動開閉機能が付与されたドア13,14に、携帯機1の保持者を検知するための赤外線センサ17c、17dを設けて、その赤外線センサ17c、17dの検知信号に基づいて、携帯機1の保持者が乗車しようとしている状態を推測するものである。
【0089】
図6に示すように、赤外線センサ17c、17dは、ドア13,14の外表面において、ドア13,14がスライドして開扉したときに生じる開口部寄りに設置される。この赤外線センサ17c、17dは、ドアから略垂直方向の比較的狭い範囲を検知範囲とするように構成されている。なお、赤外線センサを用いると、携帯機1の保持者の体温により、柱や壁などの障害物と、携帯機1の保持者とを区別することができる。
【0090】
赤外線センサ17c、17dは上述した構成・配置を有するので、赤外腺センサ17c、17dによって携帯機1の保持者を検出し、その検出が所定時間継続した場合には、携帯機1の保持者がドア13,14の開かれる側に立ち止まっているとみなすことができる。携帯機の保持者が車両ドアの開口側近傍に立ち止まったことは、車両への乗車の意思を有するが為の行動と考えられるので、携帯機1の保持者は車両に乗車しようとしている状態であると推測することができる。
【0091】
図7は、本実施形態の車両側ユニットにおいて実行される乗車時制御のための処理を示すフローチャートである。この図7のフローチャートでは、ステップS350、S360の処理のみが、図2のフローチャートと異なるので、以下、この異なる処理について詳しく説明する。
【0092】
携帯機1の保持者が、自動開閉機能が付与されたドア13,14に接近して、ステップS320,330の判定処理がともに「Yes」と判定されると、ステップS350の処理が実行される。ステップS350では、携帯機1の保持者が接近したドアに設置された赤外線センサ17を用いて、携帯機1の保持者の検出を行う。そして、ステップS360では、赤外線センサ17c、17dの検知信号に基づいて、携帯機1の保持者が車両ドアの近傍で立ち止まっているか否かを判定する。例えば、比較的狭い検知範囲を持つ赤外線センサ17c、17dによって、所定時間継続して、携帯機1の保持者が検出された場合、携帯機1の保持者は、ドアの近傍に立ち止まっていると判定できる。
【0093】
ステップS360にて、携帯機1の保持者がドアの近傍に立ち止まっていると判定された場合には、携帯機1の保持者は車両に乗車する意思を有すると推測できるので、ステップS370以降の処理を行う。すなわち、上述した第1実施形態と同様にして、ドアをアンロックし、さらにドアの自動開扉を行う。
【0094】
上述した第4実施形態では、携帯機1の保持者を検出するために、赤外線センサ17c、17dを用いたが、例えば、車両のドアから携帯機1の保持者までの距離を検出する超音波センサ等の距離センサを用いても良い。この場合、距離センサによって検出される携帯機1の保持者までの距離が所定時間の間継続的に検出される。そして、検出された各距離が所定距離以下であって、それらの変動範囲が所定変動範囲内に収まっている場合、携帯機1の保持者は車両ドアの近傍で立ち止まっているとみなすことができる。
【0095】
また、赤外線センサ17c、17dに代えて、車両のドアの近傍を撮像する画像センサを用いても良い。この場合、図7のフローチャートのステップS350及びS360の処理を図8に示すステップS351及びステップS361の処理に置き換えれば良い。すなわち、ステップS351では、画像センサが所定時間毎に複数回撮像した、車両ドアの近傍の複数の画像を取得する。そして、ステップS361では、それらの複数の画像に対して、携帯機1の保持者の認識処理を行い、携帯機1の保持者が車両ドアの近傍で立ち止まっているか否かを判定する。
【0096】
このように画像センサを用いれば、車両に接近した携帯機1の保持者が、車両に乗車する意思を有しているか否かをより正確に推測することができる。
【0097】
さらに、車両のドアの近傍を撮像する画像センサを用いる場合、図9に示すように、ステップS362において、複数の画像に基づいて、携帯機1の保持者が車両ドアの近傍において予め設定された動作を行ったか否かを判別することによって、乗車の意思を推測するようにしても良い。例えば、設定動作として、携帯機1の保持者が車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った場合に、ユーザが乗車しようとしている状態と推測する。このように、携帯機1の保持者に所定の設定動作を行わせることにより、より確実に車両への乗車意思を推測することができる。」

オ 記載事項オ
図1,図7,図8,図9には、以下の図示がある。
【図1】



(2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 技術的事項ア
上記(1)記載事項アの段落【0008】、同記載事項イの段落【0037】、及び同記載事項エの段落【0087】より、引用文献1には、「車両ドア制御システム」という技術的事項が記載されている。

イ 技術的事項イ
上記(1)記載事項イの段落【0039】より、引用文献1には、「車両10の車室外送信機からのリクエスト信号に応答して、IDコードを含むレスポンス信号を送信する、携帯機1」という技術的事項が記載されている。
また、同記載事項イの段落【0043】、同記載事項ウの段落【0056】及び同記載事項アの段落【0003】より、引用文献1には、「携帯機1から送信されるIDコードを含むレスポンス信号を受信する、車両10側の受信機3」、及び、「当該受信機3が受信したレスポンス信号に含まれるIDコードを取得し、予め登録されているIDコードと一致するか否かを判定し、IDコードの照合結果に基づいて、ドアのロック・アンロック状態の制御等を実行すべきか否かの判定を行う、電子キーECU4」という技術的事項も、記載されている。

ウ 技術的事項ウ
上記(1)記載事項イの段落【0041】より、引用文献1には、「開閉信号に従って自動的に開閉することが可能な、モータを駆動源とするスライドドア駆動部9c,9dを備えた、スライド式の車両ドア13,14」という技術的事項が記載されている。
また、同記載事項イの段落【0044】?【0045】によれば、車両のドアには「ドアロック制御部5a?5e」及び「インジケータ6c1?6e1」が設けられるところ、同記載事項オの図1を参照すると、「車両ドア13,14」に対応する「ドアロック制御部」及び「インジケータ」は、「5c,5d」及び「6c1,6d1」である。そのため、段落【0044】?【0045】の記載を、「車両ドア13,14」に着目して整理すると、引用文献1には、「車両ドア13,14に設けられた、電子キーECU4からの指示信号に応じて動作するドアロック制御部5c,5d、及び、インジケータ6c1,6d1」という技術的事項が、記載されている。

エ 技術的事項エ
上記(1)記載事項エの段落【0088】,【0091】,【0095】?【0097】から、引用文献1における第4実施形態において「画像センサ」を用いる選択肢は、第1実施形態において、「携帯機1の保持者が車両に乗車しようとする意思を有しているか否か」という判定の部分を、画像センサによって行うものであり、上記ア?ウに示した技術的事項は、画像センサを用いる当該第4実施形態の変形例についても、変更はないと解される。
以下では、当該第4実施形態において画像センサを用いる選択肢に着目して、引き続き引用文献1に記載された技術的事項を確認する。
上記(1)記載事項エの段落【0093】及び【0095】から、引用文献1には、「車両ドア13,14の近傍を撮像する画像センサ」という技術的事項が記載されている。
また、同記載事項エの段落【0095】?【0097】に記載されるように、画像センサから取得した画像に対して認識処理を行うからには、引用文献1において、画像センサを用いる場合の「車両ドア制御システム」が、「画像センサが撮像した画像」を「認識処理」する手段を有することは、直接の明記はなくとも記載されているに等しい事項である。
そのため、引用文献1には、「画像センサが撮像した画像を認識処理する手段」という技術的事項も、記載されている。

オ 技術的事項オ
上記(1)記載事項オの図7より、引用文献1の第4実施形態において、「ID照合OK?」が「YES」となると「インジケータ点灯」となることが示されており、同記載事項エの段落【0091】を参照すると、当該インジケータ点灯の処理は第1実施形態と同様である。
当該第4実施形態におけるインジケータ点灯の処理について、上記(1)記載事項イの段落【0045】及び同記載事項ウの段落【0056】?【0057】における第1実施形態についての説明を引用して、車両ドア13及び14に関して整理すると、引用文献1には、「IDコードの照合結果がOKとなると、車両ドア13,14のインジケータ6c1,6d1を点灯して、ドアを自動開閉する条件の一つが満足されたことを携帯機1の保持者に報知する」という技術的事項が記載されている。

カ 技術的事項カ
上記(1)記載事項エの段落【0091】-【0092】,【0095】,【0096】、及び、同記載事項オの図7-9より、引用文献1の第4実施形態において、「ID照合OK?」が「YES」となると、画像センサを用いて携帯機1の保持者が車両に乗車する意思を有しているか否かの判定処理に進む、という技術的事項が記載されている。画像センサを用いた当該判定処理について、上記(1)記載事項エの段落【0095】-【0097】の記載を整理すると、引用文献1には、「IDコードの照合結果がOKとなると、画像センサが所定時間毎に撮像した複数の画像を取得し、それら複数の画像に対して携帯機1の保持者の認識処理を行い、携帯機1の保持者が車両ドアの近傍で立ち止まっているか否かを判定して、携帯機1の保持者が車両10に乗車する意思を有しているか否かをより正確に推測する、あるいは、携帯機1の保持者が車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別することにより、より確実に車両10への乗車意思を推測」する、という技術的事項が記載されている。

キ 技術的事項キ
上記(1)記載事項エの段落【0093】より、引用文献1には、「携帯機1の保持者は車両10に乗車する意思を有すると推測できた場合に、ドアをアンロックし、さらにドアの自動開扉を行う」という技術的事項が記載されている。

ク 技術的事項ク
上記(1)記載事項イの段落【0038】及び同記載事項オの図1の図示より、引用文献1には、上記ア?キの技術的事項を有する「車両ドア制御システム」を備えた「車両10」という技術的事項も、記載されている。
また、上記(1)記載事項ウの段落【0052】、同記載事項エの段落【0091】、及び同記載事項オの図7ないし9の図示より、引用文献1には、上記ア?キの技術的事項を有する「車両ドア制御システム」により「車両ドア13,14を自動的に開扉させる処理」、という技術的事項も、記載されている。

(3)上記(1)、(2)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「車両10の車室外送信機からのリクエスト信号に応答して、IDコードを含むレスポンス信号を送信する、携帯機1、
携帯機1から送信されるIDコードを含むレスポンス信号を受信する、車両10側の受信機3、及び、当該受信機3が受信したレスポンス信号に含まれるIDコードを取得し、予め登録されているIDコードと一致するか否かを判定し、IDコードの照合結果に基づいて、ドアのロック・アンロック状態の制御等を実行すべきか否かの判定を行う、電子キーECU4、
開閉信号に従って自動的に開閉することが可能な、モータを駆動源とするスライドドア駆動部9c,9dを備えた、スライド式の車両ドア13,14、
車両ドア13,14に設けられた、電子キーECU4からの指示信号に応じて動作するドアロック制御部5c,5d、及び、インジケータ6c1,6d1、
車両ドア13,14の近傍を撮像する画像センサ、
及び、画像センサが撮像した画像を認識処理する手段、
を備え、
IDコードの照合結果がOKとなると、車両ドア13,14のインジケータ6c1,6d1を点灯して、ドアを自動開閉する条件の一つが満足されたことを携帯機1の保持者に報知するとともに、
画像センサが所定時間毎に撮像した複数の画像を取得し、それら複数の画像に対して携帯機1の保持者の認識処理を行い、携帯機1の保持者が車両ドア13,14の近傍で立ち止まっているか否かを判定して、携帯機1の保持者が車両10に乗車する意思を有しているか否かをより正確に推測する、あるいは、携帯機1の保持者が車両ドア13,14の前に立って、車両ドア13,14を開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別することにより、より確実に車両10への乗車意思を推測し、
携帯機1の保持者は車両10に乗車する意思を有すると推測できた場合に、車両ドア13,14をアンロックし、さらに車両ドア13,14の自動開扉を行う、
車両ドア制御システム。
又は、当該車両ドア制御システムを備えた車両10。
又は、当該車両ドア制御システムにより車両ドア13,14を自動的に開扉させる処理。」

2 引用文献2
(1)記載事項
当審による拒絶の理由で引用し、本願の出願日前に頒布された引用文献である、特開2005-120787号公報(平成17年5月12日公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

ア 記載事項ア
「【0013】
(第1実施形態)
図1に本発明の第1実施形態における車載機器制御装置の構成を示す。この車載機器制御装置は、図1に示すように、送信機1およびそのアンテナ部2と、携帯機としてのスマートキー3と、受信機4と、IDコード照合手段および作動制御手段としてのスマートECU5と、カメラ6、7と、特定サイン照合手段としての画像認識用ECU8とを有している。
【0014】
本実施形態の車載機器制御装置は、以下に説明するように、主にカメラ6、7と画像認識用ECU8とを備えており、IDコード照合に加え、画像認識による照合により、車載機器を制御している点が従来のスマートキーシステムと異なるものである。
【0015】
送信機1およびそのアンテナ部2は、図1中では、運転席側のドア11に取り付けられており、アンテナ部2はドアアウトサイドハンドル12に取り付けられている。また、図示しないが、送信機1およびアンテナ部2は、車室内、トランクの内外にも取り付けられている。この送信機1は、スマートECU5から入力された送信要求信号(呼掛け信号)をアンテナ部2より定期的に送信する。
【0016】
スマートキー3は、ユーザが携帯するものであり、送信機1から送信された呼掛け信号に対して応答して、IDコード信号を送信する。
【0017】
受信機4は、車室内のルームミラー13や、トランク14内に取り付けられている。この受信機4は、スマートキー3から送信されたIDコード信号を受信し、スマートECU5に向けてIDコード信号を出力する。
【0018】
スマートECU5は、車内に取り付けられており、送信機1に対して呼掛け信号を出力するものである。また、スマートECU5はメモリを備えており、このメモリにあらかじめIDコードが記憶されている。そして、スマートECU5は、受信機4がスマートキー3から送信されたIDコード信号を受信し、受信機4からIDコードが入力された場合、入力されたIDコード信号をあらかじめ登録されているIDコードと照合する。これらのIDコードが一致し、IDコードの照合が完了すると、カメラ6、7に対して起動指示信号を送信する。
【0019】
また、スマートECU5は、車載機器の作動状態を制御する。具体的には、後述する画像認識用ECU8から特性サインの照合が完了したことを受けて、例えば、図示しないドア集中管理ECUにドアロックの解除指示信号を出し、ドアロックを解除させる。
【0020】
カメラ6は、バックガイド用カメラであり、ナンバープレート周辺14に取り付けられている。また、カメラ7は、車両周辺監視用の魚眼レンズカメラであり、ドアミラー15の内部に取り付けられている。このカメラ6、7により、図1中に斜線で示すように、車両の周囲を撮影することができる。カメラ6、7は、スマートECU5での照合が完了したときに、起動するようになっている。カメラ6、7により撮影されたカメラ画像は、画像認識用ECU8に送信される。なお、カメラとして、カメラ6、7以外にも、一般的なブラインドコーナカメラを用いることもできる。
【0021】
画像認識用ECU8は、車内に取り付けられている。この画像認識用ECU8は、スマートECU5とは別のECUである。画像認識用ECU8は、周辺監視カメラを統合して制御するものであり、本実施形態ではカーナビのECUと一体のものである。なお、画像認識用ECU8はカーナビと一体でなくても良い。
【0022】
画像認識用ECU8は、カメラ6、7の起動や、カメラ画像のモニター表示を制御する。例えば、バックガイドモニタにおいて、シフトをバックに入れたとき、カメラ7による車両後方の映像を映すように制御したり、カメラ6の魚眼レンズカメラの映像をモニターに見やすく表示するために画像処理したりする。
【0023】
また、画像認識用ECU8は、メモリを備えており、あらかじめ特定サインが登録されている。ここで、特定サインとは、例えば、二本の指を立ててV字の形にしたものである。この特定サインは、このV字サインに限らず、指で作る他の形や、立てた指の本数で数字を示し、この数字を組み合わせた数桁の数字列や、手を振る等の挙動等にすることもできる。要するに、特定サインは画像で識別できるものであれば何でも用いることができる。
【0024】
この特定サインは、メーカによりあらかじめ登録されたものでも、ユーザが任意で登録されたものでも良い。
【0025】
画像認識用ECU8は、カメラ6、7により撮影したカメラ画像を認識するものである。すなわち、画像認識用ECU8は、カメラ画像が入力されると、このカメラ画像を処理し、このカメラ画像を登録されている特定サインと照合する。カメラ画像が登録されている特定サインと一致した場合、画像認識用ECU8は、スマートECU5に対して、特定サインの照合が完了した旨の信号を送信する。
【0026】
次に、図2にスマートECU5および画像認識用ECU8が実行するドアロック解除処理のフローチャートを示す。以下では、ドアロックが解除されるまでの流れを例として説明する。スマートECU5は、バッテリからの給電により、定期的にこの処理を実行する。本実施形態では、ステップ21?24、27、28は、スマートECU5が実行する処理であり、ステップ25、26は、画像認識用ECU8が実行する処理である。
【0027】
ステップ21?23は、従来における一般的なスマートキーシステムと同様である。すなわち、ステップ21で、スマートECU5から送信機1に対して呼掛け信号が出力される。送信機1がこれを受けてアンテナ部2より呼掛け信号が送信される。そして、スマートキー3を所持するユーザが、図1中の破線で示す検出エリア内に入ると、スマートキー3が呼掛け信号に応答し、IDコード信号が送信される。
【0028】
ステップ22で、受信機4がスマートキー3から送信されたIDコード信号を受信したとき、そのIDコード信号を受信機4からスマートECU5に向けて出力され、スマートECU5にスマートキー3から送信されたIDコード信号が入力される。
【0029】
ステップ23で、スマートECU5により、スマートキー3から送信されたIDコードと、スマートECU5にあらかじめ登録されているIDコードとの照合が行われる。ここで、IDコードが一致している場合、ステップ24に進み、IDコードが一致していない場合、ステップ21に戻る。
【0030】
ステップ24で、スマートECU5から図示しないドア集中管理ECUに作動指示信号が送信され、ドアロック解除スタンバイ状態となる。また、カメラ6、7に対して、スマートECU5から起動指示信号が送信される。これにより、カメラ6、7が起動する。このように、IDコードの照合完了後にカメラ6、7を起動させることで、バッテリ上がりを防止できる。
【0031】
ステップ25で、カメラ6、7により車両の周囲の画像が撮影され、カメラ画像が画像認識用ECU8に入力される。
【0032】
ステップ26では、画像認識用ECU8が画像処理を行い、画像認識用ECU8により取得したカメラ画像が登録されている特定サインと照合される。
【0033】
この照合では、特定サインとして、例えば、ユーザの指をV字の形にしたものを登録した場合、カメラ6、7により撮影したカメラ画像が、指でV字の形を作ったものであれば、特定サインと一致したと判定する。このとき、この指(手)は必ずしもユーザの手でなくても良く、他人の手で同じような形であっても輪郭等の指の形が一致していれば、特定サインと一致していると判定する。これにより、ユーザがカメラ6、7に向けてサインを出したときはもちろんだが、ユーザ以外の者がサインを出したときでも照合が可能となっている。なお、カメラ画像はどのカメラ6、7で取得したものでも良い。
【0034】
そして、カメラ画像が特定サインと一致していると判定された場合、ステップ28に進み、一致していないと判定された場合、ステップ27に進む。
【0035】
ステップ27は、従来と同様の処理である。すなわち、スマートECU5により、ユーザがドアハンドルスイッチをオンにしたかどうかが判定される。ドアハンドルスイッチがオンになったと判定された場合、ステップ28に進み、オンになっていないと判定された場合、ステップ24に戻る。
【0036】
そして、ステップ28で、スマートECU5により、ドア集中管理ECUが制御されることで、ドアロックが解除される。このようにして、スマートECU5および画像認識用ECU8によりドアロック解除処理が実行される。」

イ 記載事項イ
「【0041】
(第2実施形態)
第1実施形態では、ドアロックを解除する場合を例として説明したが、ドアロック解除以外の他の車載機器の制御にも本発明を適することができる。例えば、ドアアンロック、ドアの自動開閉、パワーウィンドウの開閉にも本発明を適用することもできる。これらの場合、第1実施形態と同様に、カメラ画像と特定サインとの照合が完了し、スマートECU5がドア集中管理ECUに対して作動指示を出力することで、ドアアンロック、ドアの自動開閉、パワーウィンドウの開閉が行われるようにする。」

ウ 記載事項ウ
「【0045】
(他の実施形態)
第1実施形態では、画像認識用ECU8による特定サインの照合が完了したとき、スマートECU5が画像認識用ECU8より特定サインの照合が完了した旨の信号を受信し、スマートECU5により、ドア集中管理用ECUを制御する場合を説明した。しかし、スマートECU5がドア集中管理用ECUを制御する場合に限らず、画像認識用ECU8が、直接、ドア集中管理ECUを制御して、ドアロックを解除させることもできる。すなわち、画像認識用ECU8を作動制御手段として機能させることもできる。なお、第2実施形態においても同様に、スマートECU5でなく画像認識用ECU8により直接、車載機器を制御することができる。
【0046】
また、上記した各実施形態では、画像認識用ECU8は、スマートECU5と別のものである場合を例として説明したが、画像認識用ECU8をスマートECU5と一体とすることもできる。」

エ 記載事項エ
図2には、次の図示がある。



(2)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 技術的事項ア
上記(1)記載事項アの段落【0014】から、引用文献2には、「IDコード照合に加えて、画像認識による照合により、車載機器を制御」する「車載機器制御装置」という技術的事項が記載されている。
また、上記(1)記載事項イの段落【0041】から、引用文献2には、「車載機器の制御」として、「ドアアンロック」又は「ドアの自動開閉」が行われる、という技術的事項が記載されている。

イ 技術的事項イ
上記(1)記載事項アの段落【0016】より、引用文献2には、「呼掛け信号に対して応答して、IDコード信号を送信する、ユーザが携帯するスマートキー3」という技術的事項が、記載されている。

ウ 技術的事項ウ
上記(1)記載事項アの段落【0018】、【0030】及び上記(1)記載事項エの図2の図示より、引用文献2には、「スマートキー3から送信されたIDコード信号を受信する受信機4」、及び、「受信機4からIDコードが入力された場合、入力されたIDコード信号をあらかじめ登録されているIDコードと照合し、IDコードの照合が完了すると、カメラ6、7に対して起動指示信号を送信し、またドア集中管理ECUにドアロック解除スタンバイ状態とする作動指示信号を送信する、スマートECU5」という技術的事項が記載されている。

エ 技術的事項エ
上記(1)記載事項アの段落【0020】より、引用文献2には、「スマートECU5での照合が完了したときに起動し、車両の周囲を撮影して、撮影したカメラ画像を画像認識用ECU8に送信する、カメラ6、7」という技術的事項が記載されている。

オ 技術的事項オ
上記(1)記載事項アの段落【0025】より、引用文献2には、「画像認識用ECU8」が、「カメラ画像が入力されると、このカメラ画像を処理して、このカメラ画像を登録されている特定サインと照合し、カメラ画像が登録されている特定サインと一致」するか判断する、という技術的事項が記載されている。また、上記(1)記載事項イの段落【0041】より、前記「特定サインが一致」した場合の処理として、「ドアアンロック及びドアの自動開閉」という制御が行われるという技術的事項、及び上記(1)記載事項ウの段落【0045】より、当該制御を「画像認識用ECU8」が行うという技術的事項も、記載されている。

カ 技術的事項カ
上記(1)記載事項ウの段落【0046】より、引用文献2には、「画像認識用ECU8をスマートECU5と一体としてもよい」という選択肢も、記載されている。

(3)上記(1)、(2)から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「IDコード照合に加えて、画像認識による照合により、車載機器を制御して、ドアアンロック又はドアの自動開閉を行う、車載機器制御装置であり、
呼掛け信号に対して応答して、IDコード信号を送信する、ユーザが携帯するスマートキー3と、
スマートキー3から送信されたIDコード信号を受信する受信機4、及び、受信機4からIDコードが入力された場合、入力されたIDコード信号をあらかじめ登録されているIDコードと照合し、IDコードの照合が完了すると、カメラ6、7に対して起動指示信号を送信し、またドア集中管理ECUにドアロック解除スタンバイ状態とする作動指示信号を送信する、スマートECU5と、
スマートECU5での照合が完了したときに起動し、車両の周囲を撮影して、撮影したカメラ画像を画像認識用ECU8に送信する、カメラ6、7と、
カメラ画像が入力されると、このカメラ画像を処理して、このカメラ画像を登録されている特定サインと照合し、カメラ画像が登録されている特定サインと一致した場合、ドアアンロック及びドアの自動開閉を行わせる、画像認識用ECU8と、
を備え、
画像認識用ECU8をスマートECU5と一体としてもよい、
車載機器制御装置。」


第5 対比・判断
事案に鑑み、以下、独立請求項である本願発明1、本願発明5、本願発明8、及び本願発明13について、対比・判断を行う。

1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「車両10」、本願発明1における「自動車」に相当し、引用発明1における「車両ドア13,14」は、本願発明1における「乗り込みの入口」及び「入口」に相当する。引用発明1における「車両ドア制御システム」は、本願発明1における「システム」に相当し、引用発明1における「車両ドア制御システム」が「車両ドア13,14の自動開扉を行う」ことは、本願発明1における「システム」が「自動車の自動化された乗り込みの入口のため」のシステムであることに相当する。
引用発明1における「車両ドア13,14の近傍を撮像する画像センサ」は、本願発明1における「入口に隣接して配置されたカメラ」に相当する。
引用発明1において、「スライド式の車両ドア13,14」を「開閉信号に従って自動的に開閉することが可能」な「モータを駆動源とするスライドドア駆動部9c,9d」は、本願発明1における「入口をオープンするように構成された機械システム」に相当する。
引用発明1における「画像センサが撮像した画像を認識処理する手段」は、本願発明1における「画像処理エンジン」に相当する。
引用発明1において、「携帯機1から送信されるIDコードを含むレスポンス信号」に含まれる「IDコード」は、本願発明1における「キーフォブ」に相当する。
引用発明1において、「携帯機1から送信されるIDコードを含むレスポンス信号を受信する、車両側の受信機3」及び「当該受信機3が受信したレスポンス信号に含まれるIDコードを取得し、予め登録されているIDコードと一致するか否かを判定し、IDコードの照合結果に基づいて、ドアのロック・アンロック状態の制御等を実行すべきか否かの判定を行う、電子キーECU4」は、本願発明1において、「キーフォブを検出して認識するように構成され、前記キーフォブの検証」を行う「無線周波数(RF)ハブ」に相当する。
引用発明1において、「IDコードの照合結果がOK」となると、「画像センサが所定時間毎に撮像した複数の画像を取得し、それら複数の画像に対して携帯機1の保持者の認識処理」を行い、「携帯機1の保持者が車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別することにより、より確実に車両への乗車意思を推測」し、「携帯機1の保持者は車両に乗車する意思を有すると推測できた場合に、車両ドア13,14をアンロックし、さらに車両ドア13,14の自動開扉を行う」ことと、本願発明1において、「キーフォブの検証の後に、イネーブル信号」が「画像処理エンジン」と「カメラ」とに送信されたうえで、「前記画像処理エンジンは、前記キーフォブの検出の決定と、ユーザーが通り過ぎることなく前記自動車の傍に立っていることを示す光または色のグラデーション変化を用いている、前記カメラから受信する画像に基くユーザーの検出の判断と、所定の仕草であることを示す光または色のグラデーション変化を用いている、前記カメラから受信する画像に基くユーザーの仕草の判断と、に基いて、前記入口をオープンするために前記機械システムを作動する」こととは、「キーフォブの検出の決定の後に、カメラから受信する画像に基く、ユーザーが自動車の傍に立って、所定の仕草であるユーザーの仕草がなされていることの判断に基いて、入口をオープンするために機械システムを作動する」という点で、共通する。

以上を整理すると、本願発明1と引用発明1とは、
「自動車の自動化された乗り込みの入口のためのシステムであって、
前記入口に隣接して配置されたカメラと、
前記入口をオープンするように構成された機械システムと、
画像処理エンジンと、
キーフォブを検出して認識するように構成され、前記キーフォブの検証のを行う、無線周波数(RF)ハブと、を備え、
キーフォブの検出の決定の後に、カメラから受信する画像に基く、ユーザーが自動車の傍に立って、所定の仕草であるユーザーの仕草がなされていることの判断に基いて、入口をオープンするために機械システムを作動する、
システム。」
である点で一致するといえる。

そして両者は、以下の点で相違する。
(相違点1a)
イネーブル信号の送信について、
本願発明1では、「無線周波数(RF)ハブ」が「キーフォブの検証の後」に、「イネーブル信号」を「画像処理エンジン」、「カメラ」及び「入口」に送信するのに対し、
引用発明1では、IDコードの照合結果がOKとなると車両ドア13,14のインジケータ6c1,6d1を点灯するものの、「無線周波数(RF)ハブ」に相当する受信機3及び電子キーECU4がイネーブル信号を送ることは明確に特定されておらず、また画像センサ及び画像を認識処理する手段へイネーブル信号を送付してはいない点。

(相違点1b)
入口をオープンするための機械システムの作動について、
本願発明1では、「前記画像処理エンジンは、前記キーフォブの検出の決定と、・・・・(画像に基く)・・・の判断と、に基いて、前記入口をオープンするために前記機械システムを作動する」とされており、「機械システムを作動する」のは「画像処理エンジン」であり、また当該機械システムの作動が「前記キーフォブの検出の決定」と画像に基く判断とに基くのに対し、
引用発明1では、車両ドア13,14を自動開扉させる制御が、IDコードの照合結果がOKとなった後に行われているものの、画像を認識処理する手段によって行われておらず、また当該自動開扉させる制御が画像に基く判断と「前記キーフォブの検出の決定」とに基くとは明確に特定されていない点。

(相違点1c)
画像に基くユーザの状態の判断について、
本願発明1では、「ユーザーが通り過ぎることなく自動車の傍に立っていることを示す」「画像に基くユーザーの検出の判断」と、「所定の仕草であることを示す」「画像に基くユーザーの仕草の判断」との2つの判断が行われるのに対し、
引用発明1では、より確実に車両への乗車意思を推測する際に、画像の認識処理により、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」するものの、「車両ドアの前に立って」の部分で「通り過ぎることなく」立っていることを示す画像に基くユーザーの検出の判断を行っていることが明確に特定されておらず、また「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」の部分で「ユーザーの仕草の判断」という2つ目の判断を行っているか明確でない点。

(相違点1d)
画像がユーザーの状態を示す情報について、
本願発明1では、「光または色のグラデーション変化を用いている」と特定されているのに対し、
引用発明1では、光または色のグラデーション変化を用いることは直接明記されていない点。

(2)判断
ア 相違点1aについて
上記相違点1aについて検討する。
上記第4の2(3)に認定した引用発明2は、IDコード照合に加えて、画像認識による照合により、車載機器を制御して車両のドアの自動開閉を行う、という点で引用発明1と共通している。そのうえで、引用発明2は、入力されたIDコード信号をあらかじめ登録されているIDコードと照合し、IDコードの照合が完了すると、スマートECU5がカメラ6、7に対して起動指示信号を送信し、またドア集中管理ECUにドアロック解除スタンバイ状態とする作動指示信号を送信する、という構成を有している。
引用発明1においても、受信機3及び電子キーECU4によるIDコードの照合結果がOKとなると車両ドア13,14のインジケータ6c1,6d1を点灯しているところ、当該IDコードの照合結果がOKとなった段階で、IDコードの照合を確認した電子キーECU4から、車両ドア13,14に対してインジケータ6c1,6d1を点灯させるための信号を送信するとともに、後のドアロック解除に備えて、上記引用発明2が有する、ドアロック解除スタンバイとする作動指示信号をこの段階で送信する構成を採用し、もって相違点1aに係る構成のうち、「無線周波数(RF)ハブ」が「キーフォブの検証の後」に、「イネーブル信号」を「入口」に送信する構成とすることは、当業者であれば容易に想到できた事項である。
また、引用発明1において、画像センサによる複数の画像の取得は、IDコードの照合結果がOKとなった後に行われているところ、上記引用発明2が有する、IDコードの照合が完了するとカメラに対して起動指示信号を送信する構成を採用して、相違点1aに係る構成のうち、「無線周波数(RF)ハブ」が「キーフォブの検証の後」に、「イネーブル信号」を「カメラ」に対して送信する構成とすることも、当業者であれば容易に想到できた事項である。
その際、引用発明1において、画像センサによる複数の画像の取得に後続する、画像を認識処理する手段による処理も、IDコードの照合結果がOKとなった後に行われることから、画像センサのみならず画像を認識処理する手段も、IDコードの照合が完了した時点で画像センサと同様に信号により起動するようにし、もって相違点1aに係る構成のうち、「無線周波数(RF)ハブ」が「キーフォブの検証の後」に、「イネーブル信号」を「画像処理エンジン」に対しても送信する構成とすることは、設計事項程度である。
したがって、引用発明1において、「無線周波数(RF)ハブ」が「キーフォブの検証の後」に、「イネーブル信号」を「カメラ」、「画像処理エンジン」、及び「入口」に送信する、相違点1aに係る本願発明1の構成を得ることは、引用発明2に基いて、当業者であれば容易に想到できた事項である。

イ 相違点1bについて
(ア)「画像処理エンジン」が「機械システムを作動する」点について
上記相違点1bのうち、「画像処理エンジンは、・・・機械システムを作動する」点、すなわち「機械システムを作動する」のは「画像処理エンジン」である点について、検討する。
上記第4の2(3)に認定した引用発明2は、IDコードの照合に加えて、画像認識による照合により、車載機器を制御して車両のドアの自動開閉を行う、という点で引用発明1と共通している。そのうえで、引用発明2は、IDコードの照合が完了した後に、画像認識用ECU8によるカメラ画像の処理結果が登録されている特定サインと一致した場合、当該画像認識用ECU8が、ドアアンロック及びドアの自動開閉を行わせる構成を有しており、当該構成は相違点1bに係る本願発明1の構成のうち、「機械システムを作動する」のは「画像処理エンジン」である、という構成に相当する。
ここで、引用発明1でも、画像処理の結果、携帯機1の保持者が車両10に乗車する意思を有すると推測できれば、車両ドア13,14を自動開扉するところ、上記引用発明2の構成を採用し、車両ドア13,14を自動開扉する制御を、画像の認識処理を行う手段に行わせ、もって相違点1bに係る構成のうち、「画像処理エンジンは、・・・・機械システムを作動する」構成、すなわち「画像処理エンジン」が「機械システムを作動する」構成に至ることは、引用発明2に基いて当業者であれば想到容易である。

(イ)「機械システム」の作動が、画像に基く判断と「前記キーフォブの検出の決定と」に基く点について
相違点1bのうち、「画像処理エンジンは、・・・・機械システムを作動」することが、「前記キーフォブの検出の決定」と、画像に基く判断とに基づく、という点について、検討する。
この点については、
a 「画像処理エンジン」による「機械システムの作動」が結果として「前記キーフォブの検出の決定」にも基いていれば、「画像処理エンジン」自体が「前記キーフォブの検出の決定」を行う必要はない趣旨、
b 「画像処理エンジン」自体が「前記キーフォブの検出の決定」も行う趣旨、
のいずれとも解し得るので、両方の場合について検討する。

まず、上記aの趣旨の場合について、検討する。
引用発明1において、画像を認識処理する手段による画像の処理、及び、車両ドア13,14の自動的な開扉は、いずれも「IDコードの照合結果がOK」となった後に行われており、IDコードの照合結果がOKとなったうえで画像を認識処理する手段が行う画像に基く判断、またその判断結果に基く「車両ドア13,14の自動開扉を行う」という制御は、いずれも先行して行われる「IDコードの照合結果がOK」という判断結果に基いている。すなわち、引用発明1において、「車両ドア13,14の自動開扉を行う」という制御は、当該自動開扉に先行して行われる、「IDコードを含むレスポンス信号を受信」し、「受信したレスポンス信号に含まれるIDコードを取得」し、該IDコードが「予め登録されているIDコードと一致するか否かを判定」するという過程を経た「IDコードの照合結果がOK」という判断と、画像を認識処理する手段による画像に基く携帯機1の保持者の乗車意思の推測という判断との、両方に基いているから、相違点1bに係る本願発明1の構成が上記aの趣旨の場合、引用発明1でも、「機械システムの作動」が「前記キーフォブの検出の決定」と画像に基く判断とに基くという構成に相当する構成を有することとなる。そのため、上記aの趣旨の場合には、相違点1bは上記(ア)で検討した「画像処理エンジン」が「機械システムを作動する」という点のみとなり、その余の点は実際には相違点でないこととなる。そして、「画像処理エンジン」が「機械システムを作動する」点について、引用発明2に基いて当業者であれば想到容易であることは、上記(ア)で判断したとおりである。

次に、上記bの趣旨の場合について、検討する。
この場合にも、本願発明1において「キーフォブを検出して認識」し「キーフォブを検証」することは、「画像処理エンジン」に「イネーブル信号」が送られる前に、別途「無線周波数(RF)ハブ」によって行われているから、「画像処理エンジン」が行う「前記キーフォブの検出の決定」は、キーフォブが既に検出されていることを画像処理エンジン側でも確認することと解される。
これに対して、引用発明1においても、画像を認識処理する手段が画像処理を行うのは、IDコードの照合結果がOKとなった後であり、画像を認識処理する手段の画像に基く判断に先だって、IDコードの照合結果がOKとなったことは別途確認されている。また、上記アで相違点1aについて検討したとおり、引用発明1において、ID照合結果がOKとなった際に、画像を認識処理する手段に対して起動信号を送信することも、引用発明2に基いて、当業者であれば想到容易である。
ここにおいて、引用発明1において、画像を認識処理する手段による画像に基く判断は、IDコードの照合結果がOKとなった後に行われるものであるから、画像を認識処理する手段にも、IDコードが受信・取得されその照合結果がたしかにOKとなっていることを確認させたうえで、画像に基く判断を行わせること、その際に,IDコードの照合結果がOKとなったことに対応して起動信号が送信されたことを、該起動信号を受信した画像を認識処理する手段の側でも確認し、もって「画像処理エンジン」にも「前記キーフォブの検出の決定」を行わせる、上記bの趣旨と解した場合の相違点1bに係る構成とすることは、設計事項程度である。そして、相違点1bに係る構成のうち、「画像処理エンジン」が「機械システムを作動する」点については、上記(ア)で判断したとおりである。

(ウ)相違点1bの小括
以上より、引用発明1において、「画像処理エンジンは、前記キーフォブの検出の決定と、」画像に基く判断と、「に基いて、入口をオープンするために機械システムを作動する」という、相違点1bに係る本願発明1の構成を得ることは、引用発明2に基いて、当業者であれば容易に想到できた事項である。
なお、「キーフォブの検出の決定」については、本願明細書の記載を検討しても、「動作的には、このRFハブ30は、キーフォブ35または他の同様な装置を検出して認識し、イネーブルまたはウェークアップ信号をIPE20に送信する。」(段落【0009】)、「イネーブル信号160は、本人確認が認証あるいは検証された場合(たとえばキーフォブが検出された場合)、パワーマネージメントモジュール120およびMCU140に送られる。」(段落【0011】)、「受動的乗り込みシステム195は、キーフォブを検出および/または認証し、イネーブル信号160をPLGM190,IPE200,およびMACSモジュール100に送信する。」(段落【0016】)、「画像処理エンジン/モジュールは、何時入口をオープンするか判断するように構成されている。この判断は、ユーザーを検出したことの判断、ユーザーの仕草の判断、およびキーフォブの判断を含む。ユーザーを検出したことの判断およびユーザーの仕草の判断は、カメラから受信した画像に基づいており、キーフォブの判断は、無線周波数等の検出に基づいている。このキーフォブは、ユーザー、自動車または双方に関連づけられる。」(段落【0024】)との記載が存在するのみである。そのため、相違点1bに係る本願発明1の構成における「キーフォブの検出の決定」について、本願明細書の記載を参酌して検討しても、上記(イ)で検討したいずれの内容とも異なる処理がなされる趣旨と解することはできない。

ウ 相違点1cについて
上記相違点1cについて、検討する。
引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」するのは、車両への乗車意思をより確実に推測するためであるから、ここでの判断として、実際に携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」いることと、「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」こととの、両方の条件が満たされたことを、それぞれ確実に判別する動機付けは、引用発明1中に内在している。また、引用文献1の段落【0095】には、携帯機1の保持者が車両ドアの前に立っていることの判別について、「携帯機1の保持者が車両ドア13,14の近傍で立ち止まっているか否か」を判定することも記載されており、携帯機1の保持者が立っていることから正確に乗車意思を推測するために、「立ち止まっているか否か」を判定することも、引用文献1中に示唆されている。
そのため、携帯機保持者の乗車意思を判定するための設定動作として、「車両ドアの前に立って」及び「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」という2つの条件を有する動作を設定した引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」いることが画像によって示されたという判断、及び、携帯機1の保持者が「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」ことが画像によって示されたという判断の、2つの判断を行うとともに、このうち「車両ドアの前に立って」の部分についても、携帯機1の保持者の乗車意思をより確実に推測するために、単に「立って」いるだけでなく「立ち止まっている」ことを判断することは、同引用文献1中の上記示唆に基いて、当業者であれば想到容易である。
したがって、引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」、「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」する部分について、画像から携帯機1の保持者が車両ドアの前に立ち止まっていることが示されるとの判断、及び、画像から携帯機1の保持者が車両ドアを開扉させる方向に手を動かしたことが示されるとの判断の、2つの画像判断を行うこととし、もって相違点1cに係る本願発明1の構成である、「ユーザーが通り過ぎることなく自動車の傍に立っていることを示す」「カメラから受信する画像に基くユーザーの検出の判断」と、「所定の仕草であることを示す」「カメラから受信する画像に基くユーザーの仕草の判断」とを行うことは、引用文献1中の示唆に従い、当業者であれば容易に想到できた事項である。

エ 相違点1dについて
上記相違点1dについて検討する。
画像センサから得られる画像は、画像内の各点の光の情報及び/又は色の情報により構成されることが、証拠を示すまでもなく技術常識であるから、引用発明1において画像内の携帯機1の保持者の認識処理を行う際に、光の画像内変化状況(すなわち光のグラデーション)又は色の画像内変化状況(すなわち色のグラデーション)を用いることは、明記はなくとも通常はそうしていると解される事項である。
また引用発明1においては、所定時間毎に撮像した複数の画像から携帯機1の保持者の認識処理を行い、携帯機1の保持者が立って、車両ドア13,14を開扉する方向に手を動かす動作を行ったか判別するところ、その際に各々の画像の画像内状況(すなわち光又は色のグラデーション)が、所定時間毎に撮像した複数の画像間でどのように変化しているか(すなわち光又は色のグラデーションの変化)を判定することも、複数の画像から撮像された者の動作を判別するうえでは、明記はなくとも通常はそうしていると解される事項である。
そして、上述した2点については、仮にそうでないとしても、設計事項程度である。
なお、「光または色のグラデーション変化」については、本願明細書の記載を検討しても、「このアルゴリズムは、光、輪郭、または色のグラデーション変化に基づいていてよい。」(段落【0009】及び【0015】参照)との記載が存在するのみである。そのため、相違点1dに係る本願発明1の構成における「光または色のグラデーション変化を用いている」について、本願明細書の記載を参酌して検討しても、上記に検討した内容と異なる処理がなされる趣旨と理解できる記載はない。
したがって、相違点1dは、一応の相違点として検討したが、実際の相違点ではないか、単なる設計事項程度である。

オ 本願発明1についてのまとめ
以上のとおり、本願発明1は、引用発明1、及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 本願発明5について
(1)対比
本願発明5と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「車両10」は、本願発明5における「自動車」に相当し、引用発明1における「車両ドア13,14」は、本願発明5における「入口」に相当する。引用発明1における「車両ドア制御システムにより車両ドア13,14を自動的に開扉させる処理」は、本願発明5における「自動車の入口を自動的に作動させるための方法」に相当する。
引用発明1において、「携帯機1から送信されるIDコードを含むレスポンス信号」に含まれる「IDコード」は、本願発明5における「キーフォブ」に相当する。
引用発明1において、「受信機3」が「携帯機1から送信されるIDコードヲ含むレスポンス信号を受信」し、「電子キーECU4」が「当該受信機3が受信したレスポンス信号に含まれるIDコードを取得し、予め登録されているIDコードと一致するか否かを判定し、IDコードの照合結果に基づいて、ドアのロック・アンロック状態の制御等を実行すべきか否かの判定を行う」ことは、本願発明5における「キーフォブを検出して検証するステップ」に相当する。
引用発明1における「車両ドア13,14の近傍を撮像する画像センサ」は、本願発明5における「入口に隣接して配置されたカメラ」に相当する。
引用発明1において、「画像センサが撮像した画像を認識処理する手段」が、「画像センサが所定時間毎に撮像した複数の画像を取得」することは、本願発明5における、「入口に隣接して配置されたカメラから画像を受信するステップ」に相当する。
引用発明1において、「IDコードの照合結果がOK」となると、「画像センサが所定時間毎に撮像した複数の画像を取得し、それら複数の画像に対して携帯機1の保持者の認識処理」を行い、「携帯機1の保持者が車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別することにより、より確実に車両への乗車意思を推測」し、「携帯機1の保持者は車両に乗車する意思を有すると推測できた場合に、車両ドア13,14をアンロックし、さらに車両ドア13,14の自動開扉を行う」ことと、本願発明5において、「ユーザーの仕草が存在するかどうかを判断する、光または色のグラデーション変化を検出するために画像を処理するステップ」を備え、「前記処理は、ユーザーが通り過ぎることなく前記自動車の傍に立っていることを示す光または色のグラデーション変化に基くユーザーの検出を判断するステップと、あらかじめ決められた仕草であることを示す光または色のグラデーション変化に基くユーザーの仕草を判断するステップと、前記ユーザーが通り過ぎることなく前記自動車の傍に立っていて、そして前記仕草をしていることを示す前記画像に基いて、前記入口をオープンするステップと、を含む」構成とは、「ユーザーの仕草が存在するかどうかを判断するために画像を処理するステップ」を備え、「前記処理は、ユーザーが自動車の傍に立って、あらかじめ決められた仕草であるユーザーの仕草ををしていることを判断するステップと、前記ユーザーが前記自動車の傍に立っていて、そして前記仕草をしていることを示す画像に基いて、前記入口をオープンするステップと、を含む」という点で、共通する。

以上を整理すると、本願発明5と引用発明1とは、
「自動車の入口を自動的に作動させるための方法であって、前記方法は、
キーフォブを検出して検証するステップと、
前記入口に隣接して配置されたカメラから画像を受信するステップと、
ユーザーの仕草が存在するかどうかを判断するために画像を処理するステップと、を備え
前記処理は、ユーザーが自動車の傍に立って、あらかじめ決められた仕草であるユーザーの仕草ををしていることを判断するステップと、前記ユーザーが前記自動車の傍に立っていて、そして前記仕草をしていることを示す画像に基いて、前記入口をオープンするステップと、を含む、
方法。」
である点で一致するといえる。

そして両者は、以下の点で相違する。
(相違点5a)
画像に基くユーザの状態の判断について、
本願発明5では、「ユーザーが通り過ぎることなく自動車の傍に立っていることを示す」「ユーザーの検出」の判断と、「あらかじめ決められた仕草であることを示す」「ユーザーの仕草」の判断との、2つの判断が行われ、入口のオープンも「ユーザーが通り過ぎることなく」自動車の傍に立っていて、そして前記仕草をしていることを示す画像に基いて行われるのに対し、
引用発明1では、より確実に車両への乗車意思を推測する際に、画像の認識処理により、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」するものの、「車両ドアの前に立って」の部分で「通り過ぎることなく」立っていることを示す画像に基くユーザーの検出の判断を行っていることが明確に特定されておらず、また「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」の部分で、「ユーザーの仕草」の判断という2つ目の判断を行っているか明確でない点。

(相違点5b)
画像がユーザーの特定の状態を示すことを判断する際に、
本願発明5では、「光または色のグラデーション変化」を検出して、「光または色のグラデーション変化」に基いてユーザーの状態を判断すると特定されているのに対し、
引用発明1では、画像の光または色のグラデーション変化を検出して、光または色のグラデーション変化に基いてユーザーの状態を判断することは、直接明記されていない点。

(2)判断
ア 相違点5aについて
上記相違点5aについて検討する。
引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」するのは、車両への乗車意思をより確実に推測するためであるから、ここでの判断として、実際に携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」いることと、「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」こととの、両方の条件が満たされたことを、それぞれ確実に判別する動機付けは、引用発明1中に内在している。また、引用文献1の段落【0095】には、携帯機1の保持者が車両ドアの前に立っていることの判別について、「携帯機1の保持者が車両ドア13,14の近傍で立ち止まっているか否か」を判定することも記載されており、携帯機1の保持者が立っていることから正確に乗車意思を推測するために、「立ち止まっているか否か」を判定することも、引用文献1中に示唆されている。
そのため、携帯機保持者の乗車意思を判定するための設定動作として、「車両ドアの前に立って」及び「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」という2つの条件を有する動作を設定した引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」いることが画像によって示されたという判断、及び、携帯機1の保持者が「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」ことが画像によって示されたという判断の、2つの判断を行うとともに、このうち「車両ドアの前に立って」の部分についても、携帯機1の保持者の乗車意思をより確実に推測するために、単に「立って」いるだけでなく「立ち止まっている」ことを判断することは、同引用文献1中の上記示唆に基いて、当業者であれば想到容易である。
したがって、引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」、「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」する部分について、画像から携帯機1の保持者が車両ドアの前に立ち止まっていることが示されるとの判断、及び、画像から携帯機1の保持者が車両ドアを開扉させる方向に手を動かしたことが示されるとの判断の、2つの画像判断を行うこととし、もって相違点5aに係る本願発明5の構成である、「ユーザーが通り過ぎることなく自動車の傍に立っていることを示す」「ユーザーの検出を判断するステップ」と、「あらかじめ決められた仕草であることを示す」「ユーザーの仕草を判断するステップ」とを行うこととし、車両ドア13,14の自動開扉を、「ユーザーが通り過ぎることなく前記自動車の傍に立っていて、そして前記仕草をしていることを示す前記画像に基いて、前記入口をオープンするステップ」とすることは、引用文献1中の示唆に従い、当業者であれば容易に想到できた事項である。

イ 相違点5bについて
上記相違点5bについて検討する。
画像センサから得られる画像は、画像内の各点の光の情報及び/又は色の情報により構成されることが、証拠を示すまでもなく技術常識であるから、引用発明1において画像内の携帯機1の保持者の認識処理を行う際に、光の画像内変化状況(すなわち光のグラデーション)又は色の画像内変化状況(すなわち色のグラデーション)を検出して用いることは、明記はなくとも通常はそうしていると解される事項である。
また引用発明1においては、所定時間毎に撮像した複数の画像から携帯機1の保持者の認識処理を行い、携帯機1の保持者が立って、車両ドア13,14を開扉する方向に手を動かす動作を行ったか判別するところ、その際に各々の画像の画像内状況(すなわち光又は色のグラデーション)が、所定時間毎に撮像した複数の画像間でどのように変化しているか(すなわち光又は色のグラデーションの変化)を検出して判定することも、複数の画像から撮像された者の動作を判別するうえでは、明記はなくとも通常はそうしていると解される事項である。
そして、上述した2点については、仮にそうでないとしても、設計事項程度である。
なお、「光または色のグラデーション変化」については、本願明細書の記載を検討しても、「このアルゴリズムは、光、輪郭、または色のグラデーション変化に基づいていてよい。」(段落【0009】及び【0015】参照)との記載が存在するのみである。そのため、相違点5bに係る本願発明5の構成における「光または色のグラデーション変化を検出するために画像を処理する」及び「光または色のグラデーション変化に基く」について、本願明細書の記載を参酌して検討しても、上記に検討した内容と異なる処理がなされる趣旨と理解できる記載はない。
したがって、相違点5bは、一応の相違点として検討したが、実際の相違点ではないか、単なる設計事項程度である。

ウ 本願発明5についてのまとめ
以上のとおり、本願発明5は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本願発明8について
(1)対比
本願発明8と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「車両10」、本願発明8における「自動車」に相当し、引用発明1における「車両ドア13,14」は、本願発明8における「自動車の入口」及び「入口」に相当する。
引用発明1における「車両ドア13,14の近傍を撮像する画像センサ」は、本願発明8における「入口に隣接して配置されたカメラシステム」に相当する。
引用発明1において、「スライド式の車両ドア13,14」を「開閉信号に従って自動的に開閉することが可能」な「モータを駆動源とするスライドドア駆動部9c,9d」は、本願発明8における「入口をオープンするように構成された電気機械システム」に相当する。
引用発明1における「画像センサが撮像した画像を認識処理する手段」と、本願発明8における「前記カメラシステムにより捉えられた画像のビデオ情報を受信するように構成されている画像処理システム」とは、「カメラシステムにより捉えられた画像の情報を受信するように構成されている画像処理システム」である点で共通する。
引用発明1において、「携帯機1から送信されるIDコードを含むレスポンス信号」に含まれる「IDコード」は、本願発明8における「キーフォブ」に相当する。
引用発明1において、「携帯機1から送信されるIDコードを含むレスポンス信号を受信する、車両側の受信機3」及び「当該受信機3が受信したレスポンス信号に含まれるIDコードを取得し、予め登録されているIDコードと一致するか否かを判定し、IDコードの照合結果に基づいて、ドアのロック・アンロック状態の制御等を実行すべきか否かの判定を行う、電子キーECU4」は、本願発明8において、「キーフォブを検出して認識するように構成され、前記キーフォブの検証」を行う「無線周波数(RF)ハブ」に相当する。
引用発明1において、「IDコードの照合結果がOK」となると、「画像センサが所定時間毎に撮像した複数の画像を取得し、それら複数の画像に対して携帯機1の保持者の認識処理」を行い、「携帯機1の保持者が車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別することにより、より確実に車両への乗車意思を推測」し、「携帯機1の保持者は車両に乗車する意思を有すると推測できた場合に、車両ドア13,14をアンロックし、さらに車両ドア13,14の自動開扉を行う」ことと、本願発明1において、「キーフォブの検証の後に、イネーブル信号」が「画像処理システム」と「カメラシステム」と「入口」とに送られたうえで、「前記画像処理システムは、前記キーフォブの検出および検証と、ユーザーが通り過ぎることなく前記自動車の傍に立っていることを示す前記カメラシステムにより捉えられた画像に基くユーザーの検出の判断と、所定の仕草であることを示す前記カメラシステムにより捉えられた画像に基くユーザーの仕草の判断と、に基いて、前記入口をオープンするために前記電気機械システムを作動する」こととは、「キーフォブの検出及び検証の後に、カメラシステムにより捉えられた画像に基く、ユーザーが自動車の傍に立って、所定の仕草であるユーザーの仕草がなされていることの判断に基いて、入口をオープンするために電気機械システムを作動する」という点で、共通する。

以上を整理すると、本願発明8と引用発明1とは、
「自動車であって、
前記自動車の入口に隣接して配置されたカメラシステムと、
前記入口をオープンするように構成された電気機械システムと、
前記カメラシステムにより捉えられた画像の情報を受信するように構成されている画像処理システムと、
キーフォブを検出して認識するように構成され、前記キーフォブの検証を行う、無線周波数(RF)ハブと、を備え、
前記画像処理システムは、
前記キーフォブの検出および検証の後に、
カメラシステムにより捉えられた画像に基く、ユーザーが自動車の傍に立って、所定の仕草であるユーザーの仕草がなされていることの判断に基いて、入口をオープンするために電気機械システムを作動する、
自動車。」
である点で一致するといえる。

そして両者は、以下の点で相違する。
(相違点8a)
画像処理システムが受信する画像の情報について、
本願発明8では、「ビデオ情報」を受信するのに対して、
引用発明1では、所定時間毎に撮像された複数の画像が取得されるものの、「ビデオ情報」の形で画像を取得するとは特定されていない点。

(相違点8b)
イネーブル信号の送信について、
本願発明8では、「無線周波数(RF)ハブ」が「キーフォブの検証の後」に、「イネーブル信号」を「画像処理システム」、「カメラシステム」及び「入口」に送信するのに対し、
引用発明1では、IDコードの照合結果がOKとなると車両ドア13,14のインジケータ6c1,6d1を点灯するものの、「無線周波数(RF)ハブ」に相当する受信機3及び電子キーECU4がイネーブル信号を送ることは明確に特定されておらず、また画像センサ及び画像を認識処理する手段へイネーブル信号を送付してはいない点。

(相違点8c)
入口をオープンするための電気機械システムの作動について、
本願発明8では、「前記画像処理システムは、前記キーフォブの検出および検証と、・・・・(画像に基く)・・・の判断と、に基いて、前記入口をオープンするために前記電気機械システムを作動する」とされており、「電気機械システムを作動する」のは「画像処理システムン」であり、また当該電気機械システムの作動が「前記キーフォブの検出および検証」と画像に基く判断とに基くのに対し、
引用発明1では、車両ドア13,14を自動開扉させる制御が、IDコードの照合結果がOKとなった後に行われているものの、画像を認識処理する手段によって行われておらず、また当該自動開扉させる制御が画像に基く判断と「前記キーフォブの検出および検証」とに基くとは明確に特定されていない点。

(相違点8d)
画像に基くユーザの状態の判断について、
本願発明1では、「ユーザーが通り過ぎることなく自動車の傍に立っていることを示す」「画像に基くユーザーの検出の判断」と、「所定の仕草であることを示す」「画像に基くユーザーの仕草の判断」との2つの判断が行われるのに対し、
引用発明1では、より確実に車両への乗車意思を推測する際に、画像の認識処理により、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」するものの、「車両ドアの前に立って」の部分で「通り過ぎることなく」立っていることを示す画像に基くユーザーの検出の判断を行っていることが明確に特定されておらず、また「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」の部分で、「ユーザーの仕草の判断」という2つ目の判断を行っているか明確でない点。

(2)判断
ア 相違点8aについて
上記相違点8aについて検討する。
引用発明1において、画像センサが撮像した画像を認識処理する手段は、「携帯機1の保持者が車両ドア13,14の前に立って、車両ドア13,14を開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」することができる程度の時間間隔で、「画像センサが所定時間毎に撮像した複数の画像を取得」する必要があるから、人の動作を示すのに適した時間間隔の画像である、いわゆる動画の伝送において、証拠を示すまでもなく一般に汎用されている「ビデオ情報」の形式で、画像センサから画像を受け取るようにすることは、単なる設計事項程度である。
したがって、引用発明1において、相違点8aに係る本願発明8の構成を選択することは、単なる設計事項程度である。

イ 相違点8bについて
上記相違点8bについて検討する。
上記第4の2(3)に認定した引用発明2は、IDコード照合に加えて、画像認識による照合により、車載機器を制御して車両のドアの自動開閉を行う、という点で引用発明1と共通している。そのうえで、引用発明2は、入力されたIDコード信号をあらかじめ登録されているIDコードと照合し、IDコードの照合が完了すると、スマートECU5がカメラ6、7に対して起動指示信号を送信し、またドア集中管理ECUにドアロック解除スタンバイ状態とする作動指示信号を送信する、という構成を有している。
引用発明1においても、受信機3及び電子キーECU4によるIDコードの照合結果がOKとなると車両ドア13,14のインジケータ6c1,6d1を点灯しているところ、当該IDコードの照合結果がOKとなった段階で、IDコードの照合を確認した電子キーECU4から、車両ドア13,14に対してインジケータ6c1,6d1を点灯させるための信号を送信するとともに、後のドアロック解除に備えて、上記引用発明2が有する、ドアロック解除スタンバイとする作動指示信号をこの段階で送信する構成を採用し、もって相違点8bに係る構成のうち、「無線周波数(RF)ハブ」が「キーフォブの検証の後」に、「イネーブル信号」を「入口」に送信する構成とすることは、当業者であれば容易に想到できた事項である。
また、引用発明1において、画像センサによる複数の画像の取得は、IDコードの照合結果がOKとなった後に行われているところ、上記引用発明2が有する、IDコードの照合が完了するとカメラに対して起動指示信号を送信する構成を採用して、相違点8bに係る構成のうち、「無線周波数(RF)ハブ」が「キーフォブの検証の後」に、「イネーブル信号」を「カメラシステム」に対して送信する構成とすることも、当業者であれば容易に想到できた事項である。
その際、引用発明1において、画像センサによる複数の画像の取得に後続する、画像を認識処理する手段による処理も、IDコードの照合結果がOKとなった後に行われることから、画像センサのみならず画像を認識処理する手段も、IDコードの照合が完了した時点で画像センサと同様に信号により起動するようにし、もって相違点8bに係る構成のうち、「無線周波数(RF)ハブ」が「キーフォブの検証の後」に、「イネーブル信号」を「画像処理システム」に対しても送信する構成とすることは、設計事項程度である。
したがって、引用発明1において、「無線周波数(RF)ハブ」が「キーフォブの検証の後」に、「イネーブル信号」を「カメラシステム」、「画像処理システム」、及び「入口」に送信する、相違点8bに係る本願発明8の構成を得ることは、引用発明2に基いて、当業者であれば容易に想到できた事項である。

ウ 相違点8cについて
(ア)「画像処理システム」が「電気機械システムを作動する」点について
上記相違点8cのうち、「画像処理システムは、・・・電気機械システムを作動する」点、すなわち「電気機械システムを作動する」のは「画像処理システム」である点について、検討する。
上記第4の2(3)に認定した引用発明2は、IDコードの照合に加えて、画像認識による照合により、車載機器を制御して車両のドアの自動開閉を行う、という点で引用発明1と共通している。そのうえで、引用発明2は、IDコードの照合が完了した後に、画像認識用ECU8によるカメラ画像の処理結果が登録されている特定サインと一致した場合、当該画像認識用ECU8が、ドアアンロック及びドアの自動開閉を行わせる構成を有しており、当該構成は相違点8cに係る本願発明8の構成のうち、「電気機械システムを作動する」のは「画像処理システム」である、という構成に相当する。
ここで、引用発明1でも、画像処理の結果、携帯機1の保持者が車両10に乗車する意思を有すると推測できれば、車両ドア13,14を自動開扉するところ、上記引用発明2の構成を採用し、車両ドア13,14を自動開扉する制御を、画像の認識処理を行う手段に行わせ、もって相違点8cに係る構成のうち、「画像処理システムは、・・・・電気機械システムを作動する」構成、すなわち「画像処理システム」が「電気機械システムを作動する」構成に至ることは、引用発明2に基いて当業者であれば想到容易である。

(イ)「電気機械システム」の作動が、画像に基く判断と「前記キーフォブの検出および検証と」に基く点について
相違点8cのうち、「画像処理システムは、・・・・電気機械システムを作動」することが、「前記キーフォブの検出および検証」と、画像に基く判断とに基く、という点について、検討する。
この点については、
a 「画像処理システム」による「電気機械システムの作動」が結果として「前記キーフォブの検出および検証」にも基いていれば、「画像処理システム」自体が「前記キーフォブの検出および検証」を行う必要はない趣旨、
b 「画像処理システム」自体が「前記キーフォブの検出および検証」も行う趣旨、
のいずれとも解し得るので、両方の場合について検討する。

まず、上記aの趣旨の場合について、検討する。
引用発明1において、画像を認識処理する手段による画像の処理、及び、車両ドア13,14の自動的な開扉は、いずれも「IDコードの照合結果がOK」となった後に行われており、IDコードの照合結果がOKとなったうえで画像を認識処理する手段が行う画像に基く判断、またその判断結果に基く「車両ドア13,14の自動開扉を行う」という制御は、いずれも先行して行われる「IDコードの照合結果がOK」という判断結果に基いている。すなわち、引用発明1において、「車両ドア13,14の自動開扉を行う」という制御は、当該自動開扉に先行して行われる、「IDコードを含むレスポンス信号を受信」し、「受信したレスポンス信号に含まれるIDコードを取得」し、該IDコードが「予め登録されているIDコードと一致するか否かを判定」するという過程を経た「IDコードの照合結果がOK」という判断と、画像を認識処理する手段による画像に基く携帯機1の保持者の乗車意思の推測という判断との、両方に基いているから、相違点8cに係る本願発明8の構成が上記aの趣旨の場合、引用発明1でも、「電気機械システムの作動」が「前記キーフォブの検出および検証」と画像に基く判断とに基くという構成に相当する構成を有することとなる。そのため、上記aの趣旨の場合には、相違点8cは上記(ア)で検討した「画像処理システム」が「電気機械システムを作動する」という点のみとなり、その余の点は実際には相違点でないこととなる。そして、「画像処理システム」が「電気機械システムを作動する」点について、引用発明2に基いて当業者であれば想到容易であることは、上記(ア)で判断したとおりである。

次に、上記bの趣旨の場合について、検討する。
この場合にも、本願発明8において「キーフォブを検出して認識」し「キーフォブを検証」することは、「画像処理システム」に「イネーブル信号」が送られる前に、別途「無線周波数(RF)ハブ」によって行われているから、「画像処理システム」が行う「前記キーフォブの検出および検証」は、キーフォブが既に検出され検証されていることを画像処理システム側でも確認することと解される。
これに対して、引用発明1においても、画像を認識処理する手段が画像処理を行うのは、IDコードの照合結果がOKとなった後であり、画像を認識処理する手段の画像に基く判断に先だって、IDコードの照合結果がOKとなったことは別途確認されている。また、上記イで相違点8bについて検討したとおり、引用発明1において、ID照合結果がOKとなった際に、画像を認識処理する手段に対して起動信号を送信することも、引用発明2に基いて、当業者であれば想到容易である。
ここにおいて、引用発明1において、画像を認識処理する手段による画像に基く判断は、IDコードの照合結果がOKとなった後に行われるものであるから、画像を認識処理する手段にも、IDコードが受信・取得されその照合結果がたしかにOKとなっていることを確認させたうえで、画像に基く判断を行わせること、その際に,IDコードの照合結果がOKとなったことに対応して起動信号が送信されたことを、該起動信号を受信した画像を認識処理する手段の側でもあらためて確認し、もって「画像処理システム」にも「前記キーフォブの検出および検証」を行わせる、上記bの趣旨と解した場合の相違点8cに係る構成とすることは、設計事項程度である。そして、相違点8cに係る構成のうち、「画像処理システム」が「電気機械システムを作動する」点については、上記(ア)で判断したとおりである。

(ウ)相違点8cの小括
以上より、引用発明1において、「画像処理システムは、前記キーフォブの検出および検証と、」画像に基く判断と、「に基いて、入口をオープンするために電気機械システムを作動する」という、相違点8cに係る本願発明8の構成を得ることは、引用発明2に基いて、当業者であれば容易に想到できた事項である。
なお、「キーフォブの検出および検証」については、本願明細書の記載を検討しても、「動作的には、このRFハブ30は、キーフォブ35または他の同様な装置を検出して認識し、イネーブルまたはウェークアップ信号をIPE20に送信する。」(段落【0009】)、「イネーブル信号160は、本人確認が認証あるいは検証された場合(たとえばキーフォブが検出された場合)、パワーマネージメントモジュール120およびMCU140に送られる。」(段落【0011】)、「受動的乗り込みシステム195は、キーフォブを検出および/または認証し、イネーブル信号160をPLGM190,IPE200,およびMACSモジュール100に送信する。」(段落【0016】)、「画像処理エンジン/モジュールは、何時入口をオープンするか判断するように構成されている。この判断は、ユーザーを検出したことの判断、ユーザーの仕草の判断、およびキーフォブの判断を含む。ユーザーを検出したことの判断およびユーザーの仕草の判断は、カメラから受信した画像に基づいており、キーフォブの判断は、無線周波数等の検出に基づいている。このキーフォブは、ユーザー、自動車または双方に関連づけられる。」(段落【0024】)との記載が存在するのみである。そのため、相違点8cに係る本願発明8の構成における「キーフォブの検出および検証」について、本願明細書の記載を参酌して検討しても、上記(イ)で検討したいずれの内容とも異なる処理がなされる趣旨と解することはできない。

エ 相違点8dについて
上記相違点8dについて検討する。
引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」するのは、車両への乗車意思をより確実に推測するためであるから、ここでの判断として、実際に携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」いることと、「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」こととの、両方の条件が満たされたことを、それぞれ確実に判別する動機付けは、引用発明1中に内在している。また、引用文献1の段落【0095】には、携帯機1の保持者が車両ドアの前に立っていることの判別について、「携帯機1の保持者が車両ドア13,14の近傍で立ち止まっているか否か」を判定することも記載されており、携帯機1の保持者が立っていることから正確に乗車意思を推測するために、「立ち止まっているか否か」を判定することも、引用文献1中に示唆されている。
そのため、携帯機保持者の乗車意思を判定するための設定動作として、「車両ドアの前に立って」及び「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」という2つの条件を有する動作を設定した引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」いることが画像によって示されたという判断、及び、携帯機1の保持者が「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」ことが画像によって示されたという判断の、2つの判断を行うとともに、このうち「車両ドアの前に立って」の部分についても、携帯機1の保持者の乗車意思をより確実に推測するために、単に「立って」いるだけでなく「立ち止まっている」ことを判断することは、同引用文献1中の上記示唆に基いて、当業者であれば想到容易である。
したがって、引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」、「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」する部分について、画像から携帯機1の保持者が車両ドアの前に立ち止まっていることが示されるとの判断、及び、画像から携帯機1の保持者が車両ドアを開扉させる方向に手を動かしたことが示されるとの判断の、2つの画像判断を行うこととし、もって相違点8dに係る本願発明8の構成である、「ユーザーが通り過ぎることなく自動車の傍に立っていることを示す」「画像に基くユーザーの検出の判断」と、「所定の仕草であることを示す」「画像に基くユーザーの仕草の判断」とを行うことは、引用文献1中の示唆に従い、当業者であれば容易に想到できた事項である。

オ 本願発明8についてのまとめ
以上のとおり、本願発明8は、引用発明1、及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


4 本願発明13について
(1)対比
本願発明13と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「車両10」は、本願発明13における「自動車」に相当し、引用発明1における「車両ドア13,14」は、本願発明13における「乗り込みの入口」及び「入口」に相当する。引用発明1における「車両ドア制御システム」は、本願発明13における「システム」に相当し、引用発明1における「車両ドア制御システム」が「車両ドア13,14の自動開扉を行う」ことは、本願発明13における「システム」が「自動車の自動化された乗り込みの入口のため」のシステムであることに相当する。
引用発明1における「車両ドア13,14の近傍を撮像する画像センサ」は、本願発明13における「入口に隣接して配置された画像システム」に相当する。
引用発明1において、「スライド式の車両ドア13,14」を「開閉信号に従って自動的に開閉することが可能」な「モータを駆動源とするスライドドア駆動部9c,9d」は、本願発明13における「入口をオープンするように構成された電気機械システム」に相当する。
引用発明1における「画像センサが撮像した画像を認識処理する手段」と、本願発明13における「光または色のグラデーション変化を用いて前記画像システムから収集された画像に基いて、前記画像システムからの前記画像を解析するように構成されている処理モジュール」とは、「画像システムから収集された画像に基いて、前記画像システムからの前記画像を解析するように構成されている処理手段」という点で共通する。
引用発明1において、「携帯機1から送信されるIDコードを含むレスポンス信号」に含まれる「IDコード」は、本願発明13における「キーフォブ」に相当する。
引用発明1において、「携帯機1から送信されるIDコードを含むレスポンス信号を受信」し、「当該受信機3が受信したレスポンス信号に含まれるIDコードを取得し、予め登録されているIDコードと一致するか否かを判定」したうえで、「IDコードの照合結果がOK」となると、「画像センサが所定時間毎に撮像した複数の画像を取得し、それら複数の画像に対して携帯機1の保持者の認識処理」を行い、「携帯機1の保持者が車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別することにより、より確実に車両への乗車意思を推測」し、「携帯機1の保持者は車両に乗車する意思を有すると推測できた場合に、車両ドア13,14をアンロックし、さらに車両ドア13,14の自動開扉を行う」こと、及び車両ドア13,14の自動的な開閉が「開閉信号に従って自動的に開閉することが可能」な「モータを駆動源とするスライドドア駆動部9c,9d」によって行われることと、本願発明13において、「前記処理モジュールは、キーフォブの検出、認識、および検証と、ユーザーが通り過ぎることなく前記自動車の傍に立っていることを示す前記画像の光、輪郭、または色のグラデーション変化に基くユーザーの検出の判断と、所定の仕草であることを示す前記画像の光、輪郭、または色のグラデーション変化に基くユーザーの仕草の判断と、に基いて、前記入口をオープンする信号を前記電気機械システムに送るように構成されている」こととを対比すると、両者は、「キーフォブの検出、認識、および検証の後に、画像システムから収集された画像に基く、ユーザーが自動車の傍に立って、所定の仕草であるユーザーの仕草がなされていることの判断に基いて、入口をオープンする信号」が「電気機械システム」に送られる、という点で、共通する。

以上を整理すると、本願発明13と引用発明1とは、
「自動車の自動化された乗り込みの入口のためのシステムであって、
前記入口に隣接して配置された画像システムと、
前記入口をオープンするように構成された電気機械システムと、
前記画像システムから収集された画像に基いて、前記画像システムからの前記画像を解析するように構成されている処理手段と、を備え、
キーフォブの検出、認識、および検証の後に、
画像システムから収集された画像に基く、ユーザーが自動車の傍に立って、所定の仕草であるユーザーの仕草がなされていることの判断に基いて、入口をオープンする信号が、電気機械システムに送られる、
システム。」
である点で一致するといえる。

そして両者は、以下の点で相違する。
(相違点13a)
処理手段について、
本願発明13では「処理モジュール」が用いられ、「処理モジュール」が「画像」の「解析」を行うとともに、「キーフォブの検出、認識、および検証」と、画像に基くユーザーの状態の判断とに基いて、「入口をオープンする信号を前記電気機械システムに送信する」のに対し、
引用発明1では、「処理モジュール」が用いられておらず、IDコードの照合結果がOKとなることの判断、画像に基く携帯機1の保持者の状態の判断、及び車両ドア13,14を自動開扉させる開閉信号の送信が「処理モジュール」によって行われていない点。

(相違点13b)
画像の解析について、
本願発明13では、「光または色のグラデーション変化を用いて」画像の解析を行うことが特定され、画像に基くユーザーの状態の判断についても、「画像の光、輪郭、または色のグラデーション変化に基く」と特定されているのに対し、
引用発明1では、画像の認識処理において「光または色のグラデーション変化」を用いることは直接明記されておらず、画像に基く携帯機1の保持者の状態の判断も、「画像の光、輪郭、または色のグラデーション変化に基く」とは直接明記されていない点。

(相違点13c)
画像に基くユーザの状態の判断について、
本願発明13では、「ユーザーが通り過ぎることなく自動車の傍に立っていることを示す」画像に基く「ユーザーの検出の判断」と、「所定の仕草であることを示す」画像に基く「ユーザーの仕草の判断」との2つの判断が行われるのに対し、
引用発明1では、より確実に車両への乗車意思を推測する際に、画像の認識処理により、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」するものの、「車両ドアの前に立って」の部分で「通り過ぎることなく」立っていることを示す画像に基くユーザーの検出の判断を行っていることが明確に特定されておらず、また「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」の部分で、「ユーザーの仕草の判断」という2つ目の判断を行っているか明確でない点。

(2)判断
ア 相違点13aについて
上記相違点13aについて検討する。
上記第4の2(3)に認定した引用発明2は、IDコード照合に加えて、画像認識による照合により、車載機器を制御して車両のドアの自動開閉を行う、という点で引用発明1と共通している。そのうえで、引用発明2は、カメラ画像を登録されている特定サインと照合する画像認識用ECU8に、ドアアンロック及びドアの自動開閉まで行わせる構成、及び、該画像認識用ECU8と、IDコードの照合処理を行うスマートECU5とを、一体とする構成を有している。
引用発明1においても、受信機3が受信したレスポンス信号に含まれるIDコードを取得し、予め登録されているIDコードと一致するか否かを判定し、IDコードの照合結果に基づいて、ドアのロック・アンロック状態の制御等を実行すべきか否かの判定を行う、電子キーECU4と、画像センサが撮像した画像を認識処理する手段とを備えるところ、当該電子キーECU4及び画像を認識処理する手段とについて、上記引用発明2の上述した構成を採用し、画像を認識処理する手段に、開閉信号に従って車両ドア13,14を開閉させるスライドドア駆動部9c,9dへの信号を送信する処理まで行わせるとともに、当該画像を認識処理する手段を電子キーECU4と一体化し、該一体化した処理手段を、画像の認識処理及びスライドドア駆動部9c,9dへの信号送信処理並びにIDコードの取得及び照合に関する処理を併せて行う「処理モジュール」とすることにより、もって画像を解析するように構成された「処理モジュール」が、「キーフォブの検出、認識、および検証」と、画像に基くユーザーの状態に関する判断とに基いて、「入口をオープンする信号」を「電気機械システムに送る」という、相違点13aに係る本願発明13の構成に至ることは、当業者であれば想到容易である。
したがって、引用発明1において、相違点13aに係る本願発明13の構成に至ることは、引用発明2に基いて当業者が容易になし得た事項である。

イ 相違点13bについて
上記相違点13bについて検討する。
画像センサから得られる画像は、画像内の各点の光の情報及び/又は色の情報により構成されることが、証拠を示すまでもなく技術常識であるから、引用発明1において画像内の携帯機1の保持者の認識処理を行う際に、光の画像内変化状況(すなわち光のグラデーション)又は色の画像内変化状況(すなわち色のグラデーション)を用いることは、明記はなくとも通常はそうしていると解される事項である。
また引用発明1においては、所定時間毎に撮像した複数の画像から携帯機1の保持者の認識処理を行い、携帯機1の保持者が立って、車両ドア13,14を開扉する方向に手を動かす動作を行ったか判別するところ、その際に各々の画像の画像内状況(すなわち光又は色のグラデーション)が、所定時間毎に撮像した複数の画像間でどのように変化しているか(すなわち光又は色のグラデーションの変化)を判定することも、複数の画像から撮像された者の動作を判別するうえでは、明記はなくとも通常はそうしていると解される事項である。
そして、上述した2点については、仮にそうでないとしても、設計事項程度である。
したがって、相違点13bのうち、画像解析が「光または色のグラデーション変化を用いて」行われる点、及び、画像に基くユーザーの状態の判断が「光」または「色」の「グラデーション変化」に基く点は、実際の相違点ではないか、単なる設計事項程度である。
また、相違点13bのうち、画像に基くユーザーの状態の判断について、「光」または「色」と並列した選択肢として付加された「輪郭」について検討すると、「輪郭」は、画像内の光または色の変化が大きい部分として画像の認識処理に利用されることが、証拠を示すまでもなく周知の技術であるから、画像に基く判断を「輪郭」に基いて行う、という選択肢についても、単なる設計事項程度である。
なお、「光、輪郭、または色のグラデーション変化」については、本願明細書の記載を検討しても、「このアルゴリズムは、光、輪郭、または色のグラデーション変化に基づいていてよい。」(段落【0009】及び【0015】参照)との記載が存在するのみであるから、相違点13bに係る本願発明13の構成について、本願明細書の記載を参酌して検討しても、上記に検討した内容と異なる処理がなされる趣旨と理解できる記載はない。
したがって、相違点13bは、一応の相違点として検討したが、実際の相違点ではないか、単なる設計事項程度である。

ウ 相違点13cについて
上記相違点13cについて、検討する。
引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」するのは、車両への乗車意思をより確実に推測するためであるから、ここでの判断として、実際に携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」いることと、「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」こととの、両方の条件が満たされたことを、それぞれ確実に判別する動機付けは、引用発明1中に内在している。また、引用文献1の段落【0095】には、携帯機1の保持者が車両ドアの前に立っていることの判別について、「携帯機1の保持者が車両ドア13,14の近傍で立ち止まっているか否か」を判定することも記載されており、携帯機1の保持者が立っていることから正確に乗車意思を推測するために、「立ち止まっているか否か」を判定することも、引用文献1中に示唆されている。
そのため、携帯機保持者の乗車意思を判定するための設定動作として、「車両ドアの前に立って」及び「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」という2つの条件を有する動作を設定した引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」いることが画像によって示されたという判断、及び、携帯機1の保持者が「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行った」ことが画像によって示されたという判断の、2つの判断を行うとともに、このうち「車両ドアの前に立って」の部分についても、携帯機1の保持者の乗車意思をより確実に推測するために、単に「立って」いるだけでなく「立ち止まっている」ことを判断することは、同引用文献1中の上記示唆に基いて、当業者であれば想到容易である。
したがって、引用発明1において、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」、「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否かを判別」する部分について、画像から携帯機1の保持者が車両ドアの前に立ち止まっていることが示されるとの判断、及び、画像から携帯機1の保持者が車両ドアを開扉させる方向に手を動かしたことが示されるとの判断の、2つの画像判断を行うこととし、もって相違点13cに係る本願発明13の構成である、「ユーザーが通り過ぎることなく自動車の傍に立っていることを示す」「画像に基くユーザーの検出の判断」と、「所定の仕草であることを示す」「画像に基くユーザーの仕草の判断」とを行うことは、引用文献1中の示唆に従い、当業者であれば容易に想到できた事項である。

エ 本願発明13についてのまとめ
以上のとおり、本願発明13は、引用発明1、及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 請求人の主張について
請求人は、平成31年1月18日付け意見書において、引用文献1には、携帯機1の保持者の乗車の意思を推測する手段として、段落【0095】の画像センサを用いて携帯機1の保持者が車両ドアの近傍に立ち止まっているか否かを判定すること、あるいは、段落【0097】の画像センサを用いて携帯機1の保持者が車両ドアの近傍において予め設定された動作を行ったか否かを判別することについて、いずれか一方だけを選択して用いることしか示されていない旨を主張している。そして、本願発明1,5,8,13は、ユーザーが通り過ぎることなく自動車の傍に立っていることと、更に、ユーザーが所定の仕草をしたこととの、2つの検出結果を用いて判断する点で、引用文献1とは異なる旨、また当該2つの判断を行う構成により、キーフォブの保持者の意思に反して誤って入口をオープンする恐れを低減するという効果を奏する旨を、主張している(同意見書「4.拒絶の理由の解消について」の後半部参照)。
なるほど、引用文献1には、携帯機1の保持者が「立ち止まっているか否か」を判定することと、「予め設定された動作を行ったか否か」を判別することとの、両方を行うことは、直接明記されていない。しかしながら、引用文献1には、上記第4の1(2)カ及び(3)に認定したとおり、「携帯機1の保持者が・・・立ち止まっているか否かを判定」、あるいは、「携帯機1の保持者が車両ドアの前に立って、車両ドアを開扉させる方向に手を動かす動作を行ったか否か」を判別という、2つの選択肢が記載されていると認定でき、後者の選択肢では携帯機1の保持者の乗車意思を推測する条件は、「車両ドアの前に立って」、かつ、「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす」という2つの条件であると理解できる。
そして、後者の選択肢の場合、すなわち、携帯機1の保持者が「車両ドアの前に立って」、かつ「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす」という条件が満たされたことを画像から判定する場合について、同じく第4の1(2)カ及び(3)に認定したとおり、引用発明1が、携帯機1の保持者の車両10への乗車意思をより確実に推測することを意図していることも勘案して検討すると、「車両ドアの前に立って」の部分で携帯機1の保持者が立ち止まっていることを判別し、「車両ドアを開扉させる方向に手を動かす」の部分で携帯機1の保持者が当該手を動かしていることを判別するようにすることは、上記1(2)ウ、上記2(2)ア、上記3(2)エ、及び上記4(2)ウで判断したとおり、当業者であれば容易に想到できた事項である。そして、そうしたことにより、携帯機1の車両10への乗車意思の推測をより確実にできる、という効果も、引用文献1の記載から、事前に十分に予測される範囲を超えるものではない。
これに対して、本願明細書の記載を参酌して検討しても、画像に基くユーザーの状態の判断については、「このアルゴリズムは、自動車の傍に立っているかまたは通り過ぎるかを充分に安定して区別する。」(段落【0009】)、「このアルゴリズムは、人が立っていることと通過していることとを区別する。」(段落【0015】)、「1つの実施形態においては、人が所定の仕草の身振りをする必要があり、たとえば、後方視野カメラ・・・の前で膝を揺らすと、検出アルゴリズムの信頼性または安定性を向上あるいは確実にする。」(段落【0016】)、「この判断は、ユーザーを検出したことの判断、ユーザーの仕草の判断、およびキーフォブの判断を含む。ユーザーを検出したことの判断およびユーザーの仕草の判断は、カメラから受信した画像に基づいており、キーフォブの判断は、無線周波数等の検出に基づいている。」(段落【0024】)との記載がなされているのみであり、請求人が主張する2つの判断について、前述のとおり引用文献1の記載から示唆される構成とは異なる構成、あるいは引用文献1の記載から予測される範囲を超える効果を有するものと、解することはできない。
したがって、請求人の主張は、上記1?4の判断を覆すものではない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1,8及び13は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明5は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-07 
結審通知日 2019-03-13 
審決日 2019-03-26 
出願番号 特願2014-545056(P2014-545056)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 泰利小野 郁磨波多江 進  
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 有家 秀郎
西田 秀彦
発明の名称 自動車用モジュールカメラおよび自動化入口用画像処理システム  
代理人 特許業務法人ナガトアンドパートナーズ  

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