• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1353989
審判番号 不服2018-1731  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-07 
確定日 2019-08-08 
事件の表示 特願2013-256141「カテーテル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月22日出願公開、特開2015-112265〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成25年12月11日に出願された特願2013-256141号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成29年 8月16日付け:拒絶理由通知
平成29年10月23日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年10月31日付け:拒絶査定
平成30年 2月 7日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成31年 2月 7日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月15日 :意見書,手続補正書の提出(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「血管内に挿入されるカテーテルであって、
シャフトと、
前記シャフト内に、前記シャフトの長手方向に亘って設けられた芯金部と、
前記シャフトの遠位側に設けられたバルーンと、
前記バルーンに対応する位置に設けられた第1のX線不透過性材料と、
前記長手方向において前記第1のX線不透過性材料とは離れた位置にあり、前記芯金部を長手方向に亘ってコーティングしている、第2のX線不透過性材料と、
を具備するカテーテル。」

第3 拒絶の理由
平成31年2月7日付けで当審が通知した拒絶理由は,次のとおりのものである。

本願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平9-192232号公報
引用文献2:特開平9-111021号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1には,図面とともに次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】人間の身体の種々の場所における狭窄症を治療するためにバルーンカテーテルを使用することはよく知られている。典型的な手順において、例えば、環状動脈の狭窄部を拡張するために、比較的に大きな案内カテーテルが鼠径部の動脈組織に挿入される。案内カテーテルは、患者の心臓の近くの場所まで動脈を通って前進される。小さいワイヤガイドが案内カテーテルに挿入され、案内カテーテルの遠位端まで前進される。その点で、カテーテルは、環状動脈の狭窄部を通って拡張するように操作される。バルーンカテーテルは、狭窄部にわたって配置される。作動流体がバルーンカテーテルを通って送られ、それによって、バルーンが膨張し、狭窄部を通る通路を拡張する。」

「【0010】図1を参照すると、膨張したバルーンが参照符号10で示されている本発明の好ましい実施例が部分側断面図に示されている。カテーテル10は、膨張内腔13を画定するカテーテル軸12を有する。膨張内腔13は、膨張バルーンが狭窄部に配置されるとき、カテーテルの近位端が患者の外側になるように近位方向(図示せず)に十分に伸びている。カテーテル10の遠位端の近傍に、膨張内腔13が膨張バルーン14の内側に開放している。膨張可能なバルーン14の遠位端は閉鎖され、カテーテルの先端16に入り込んでいる。補強ワイヤ18は、カテーテル先端16内に補強ワイヤ18を固定するために遠位端で小さいボールまたは他の拡大部分20を有することが好ましい。補強ワイヤ18は、ステンレススチールまたは他の適当な堅い材料から形成されていることが好ましい。別の案として、補強ワイヤ18は、高可塑性状態のニチノールから製造され、これは、カテーテル10に曲げ抵抗を与える利点を有する。X線不透過性のマーカーバンド22及び24が金、タングステンまたは銀のようなX線不透過性材料から製造される。膨張可能なバルーン14の近位遠位端近傍のX線不透過性マーカバンド22の場所は、膨張可能なバルーン14の位置が膨張前に膨張可能なバルーン14の適性な位置を保証するためにX線透視検査法によって正確に決定される。」

(2)上記(1)の記載事項から,引用文献1には次の技術的事項が記載されているものと認められる。
ア 引用文献1に記載された技術は,例えば動脈の狭窄部を拡張するためのバルーンカテーテルに関するものである(【0002】)。

イ カテーテル10は,カテーテル軸12と,膨張バルーン14と,補強ワイヤ18と,マーカーバンド22及び24とを具備している(【0010】,【図1】)。

ウ 図1の記載から見て,補強ワイヤ18は,カテーテル軸12内に,カテーテル軸12の長手方向に亘って設けられている。

エ 図1の記載から見て,膨張バルーン14は,カテーテル軸12の遠位側に設けられている。

オ 図1の記載から見て,マーカーバンド22及び24は,膨張バルーン14に対応する位置に設けられている。

(3)上記(1)の記載事項,(2)の認定事項から,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「動脈に挿入されるカテーテル10であって、
カテーテル軸12と、
前記カテーテル軸12内に、前記カテーテル軸12の長手方向に亘って設けられた補強ワイヤ18と、
前記カテーテル軸12の遠位側に設けられた膨張バルーン14と、
前記膨張バルーン14に対応する位置に設けられたマーカーバンド22及び24と、
を具備するカテーテル10。」

2 引用文献2
引用文献2には,図面とともに次の記載がある。
「【0003】具体例を挙げれば、例えば、医療用器具として周知のバルーンカテーテルにおいては、カテーテルシャフトは、手元側での操作によって先端側のバルーンを血管内で押し進めねばならないため、手元側で加えられた力を先端側まで伝達できる特性(以下、プッシャビリティという)に優れているものが望ましく、それには軸方向の力に対する剛性が要求される。一方、血管には大小の曲がりくねった箇所があるため、曲がったところをスムーズに通過できる特性(以下、フレキシビリティという)に優れているものが望ましく、それには十分な柔軟性が要求される。」

「【0011】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するため、請求項1記載の樹脂製器具は、長尺状又はフィルム状の柔軟な樹脂製の基材の表面に、該基材よりも硬質なイオン蒸着膜を形成することにより、曲げには柔軟に変形する一方、表面に平行な方向には剛性を増したことを特徴とする。」

「【0014】
【発明の実施の形態】上記請求項1記載の樹脂製器具によれば、長尺状又はフィルム状の柔軟な樹脂製の基材の表面に、基材よりも硬質なイオン蒸着膜を形成してあるため、表面に平行な方向には剛性が増し、樹脂製器具が圧縮を受けた様な場合であっても、座屈等が発生しにくくなる。その一方、この膜を曲げる様な方向へ変形させると、膜には簡単に亀裂が生じるため、樹脂本来の曲げやすさは損なわれない。
【0015】上記イオン蒸着膜とは、イオン蒸着法により形成される薄膜のことである。このイオン蒸着法とは、イオン蒸着薄膜形成装置(例えば日新電機株式会社製等)を使って、金属等を蒸発させて蒸着させると共に、加速したイオンを照射して薄膜を形成する技術で、イオン蒸着法によれば、蒸着物質の種類及び量、イオンの種類、量、及び照射速度等を調整することにより、基材に対して比較的強く結合した薄膜を形成することができる。
【0016】イオン蒸着膜の厚さについては、同程度の柔軟性を残す場合でも、蒸着物質の種類によって異なり、特に、器具の使用目的等のより、そもそも要求される柔軟性が異なるため、一概には特定できないが、目安として1000オングストローム?10μm程度とすればよく、イオン蒸着膜を厚くするほど剛性は高くなる傾向があるので、それを考慮して目的に合わせて適宜厚さを調整すればよい。
【0017】イオン蒸着膜形成物質としては、金属系では、Au,Ag,Ni,Al,Mo,Pt,Ta,Ti,W、および、その他各種合金類を使うことができる。また、セラミックス系では、Al_(2 )O_(3) ,BN,Si_(2) O_(3) ,TiN,バイオガラス等を使うことができる。
【0018】なお、必要箇所にのみイオン蒸着膜を形成するには、イオン蒸着膜の形成が不要な箇所に予めマスキングを施しておき、その上で、金属の蒸着等を行えばよい。ちなみに、イオン蒸着膜を基材よりも硬度の高い物質で形成した場合には、器具の表面に傷がつきにくくなるという利点もある。また、イオン蒸着膜を基材よりも摩擦係数の小さい物質で形成した場合には、器具の表面の滑りが良くなる。また、放射線不透過物質で形成した場合には、器具の位置をX線等によって透視することができる。この場合、器具全体にイオン蒸着膜を形成すれば、その全体をX線等により造影することができるが、特定部分にイオン蒸着膜を形成し、特定部分の存在位置や向きの確認等に応用することもできる。」

「【0031】また、このバルーンカテーテル1の特徴的な構成として、内側チューブ7の表面(図示斜線部)に、イオン蒸着膜19が形成されている。このイオン蒸着膜19は、イオン蒸着薄膜形成装置(日新電機株式会社製)を使って、チタンを蒸着させると共に、アルゴンイオンを加速して照射することにより形成したもので、アルゴンイオンによりチタン原子が内側チューブ7の表面にたたき込まれることにより、イオン蒸着膜19は内側チューブ7に対して比較的強く結合している。この様なイオン蒸着膜19は、内側チューブ7の曲げに伴って亀裂が入りやすく、イオン蒸着膜19が内側チューブ7の湾曲を妨げることはない。また、イオン蒸着膜19は、亀裂は入りやすいものの、亀裂により分割されたブロックは、内側チューブ7の表面において、内側チューブ7の軸方向へ密に詰まった状態で配置されているため、イオン蒸着膜19によって内側チューブ7の圧縮に対する抵抗力は向上し、軸方向への力を有効に伝達できる。したがって、プッシャビリティ及びフレキシビリティの双方が共に改善される。」

「【0034】次に、別の実施例について説明する。なお、以下の実施例では、イオン蒸着膜の形成箇所以外は、第1実施例と同様なので、同じ構成には同じ符号をつけてその説明を省略する。
[第2実施例]第2実施例としてのバルーンカテーテル21は、図2に示す通り、第1実施例のものとほぼ同様に構成され、特徴的な構成として、外側チューブ5の表面(図示斜線部)に、イオン蒸着膜23が形成されている。このイオン蒸着膜23は、第1実施例と同様の方法で、イオン蒸着薄膜形成装置(日新電機株式会社製)を使って、シリコンを蒸着させると共に、酸素イオンを加速して照射することにより形成したものである。なお、酸素イオンは、シリコンをバルーン3の表面にたたき込むと同時に、蒸着したシリコンと反応して酸化物を形成し、シリコンはより化学的に安定な状態となる。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「動脈に挿入される」は,動脈が血管の一種であることから,本願発明の「血管内に挿入される」に相当する。
引用発明の「カテーテル10」は,明らかに本願発明の「カテーテル」に相当する。
引用発明の「カテーテル軸12」は,その構造から見て,本願発明の「シャフト」に,以下同様に,「補強ワイヤ18」は,「芯金部」に,「膨張バルーン14」は「バルーン」に,「マーカーバンド22及び24」は「第1のX線不透過性材料」に,それぞれ相当する。
そうすると,本願発明と引用発明とは以下の【一致点】で一致し,【相違点】で相違する。
【一致点】
「血管内に挿入されるカテーテルであって、
シャフトと、
前記シャフト内に、前記シャフトの長手方向に亘って設けられた芯金部と、
前記シャフトの遠位側に設けられたバルーンと、
前記バルーンに対応する位置に設けられた第1のX線不透過性材料と、
を具備するカテーテル。」
【相違点】
本願発明のカテーテルは,「前記長手方向において前記第1のX線不透過性材料とは離れた位置にあり、前記芯金部を長手方向に亘ってコーティングしている、第2のX線不透過性材料」を備えるのに対し,引用発明のカテーテルは,そのようなものを備えるか不明である点。

第6 判断
以下,相違点について検討する。
引用文献2には,マーカー17(「第1のX線不透過性材料」に相当。)とは長手方向において離れた位置にイオン蒸着膜を形成する技術が記載されている(上記第4の2の摘記事項【0034】,【図2】参照。)。
なおここで,【0034】に記載された第2実施例において外側チューブ5の表面にシリコンを蒸着させることとなっているが,上記【0014】乃至【0018】の記載から,バルーンカテーテルのプッシャビリティとフレキシビリティとを両立させるためにイオン蒸着膜を形成するにあたり,器具の特定部分のイオン蒸着膜をX線不透過性材料で形成することによって,特定部分の存在位置や向き等が確認できることを踏まえると,第2実施例においてもイオン蒸着膜としてX線透過性材料を使用することについて示唆していることは明らかである。
ここで,引用発明と引用文献2に記載された技術とは,いずれもバルーンを有するカテーテルに関するものであり(上記第4の2の摘記事項【0003】参照。),施療者が視認できない体内領域での治療行為において,カテーテルなどの器具を可視化することはよく知られた技術的課題であることを踏まえると,引用発明のカテーテルにおいて,引用文献2に記載された技術のように,X線不透過性のイオン蒸着膜を,その体腔内に導入される部分であってバルーンのマーカーとは長手方向に離れた位置に形成することは,当業者にとって何ら困難性はない。
その際,引用発明においては,体腔内へ導入される長尺部分は,芯金部(補強ワイヤ18)とカテーテル軸12のみであることから,治療にあたって視認できないものを可視化するに際して全体又はどの特定部分を可視化するかは,一般的には治療行為の内容や治療器具の構造等に応じた必要性を考慮して適宜決定し得ることであることを踏まえると,芯金部とカテーテル軸12のいずれにイオン蒸着膜を形成するかは必要に応じて定めることのできる単なる設計事項にすぎない。
なお,引用文献2には,外側チューブ5と内側チューブ7とからなるバルーンカテーテルにおいて,第1実施例として内側チューブ7の表面にイオン蒸着膜を形成する技術(上記第4の2の摘記事項【0031】参照。)や第2実施例として外側チューブ5の表面にイオン蒸着膜を形成する技術(上記第4の2の摘記事項【0034】参照。)が記載されていることからみても,カテーテルの内側部材と外側部材のいずれの部材にイオン蒸着膜を形成するかは,必要に応じて定めることができる設計的事項に過ぎないことが伺えるといえる。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用文献2に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-04 
結審通知日 2019-06-11 
審決日 2019-06-24 
出願番号 特願2013-256141(P2013-256141)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉▲崎▼ 覚  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 長屋 陽二郎
寺川 ゆりか
発明の名称 カテーテル  
代理人 鷲田 公一  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ