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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1354040 |
審判番号 | 不服2018-10878 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-08 |
確定日 | 2019-08-05 |
事件の表示 | 特願2017- 91696「固体撮像装置、および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-139498〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成26年2月28日の出願である特願2014-038584号の一部を,平成29年5月2日に新たな出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 5月 2日 上申書 平成29年11月30日付け 拒絶理由通知 平成30年 2月 1日 意見書・手続補正 平成30年 4月27日付け 拒絶査定(以下,「原査定」という。) 平成30年 8月 8日 審判請求 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成30年2月1日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。 「【請求項1】 1共有の形状が長方形であり,1共有単位に8つの光電変換素子が含まれる光電変換素子群と, 前記光電変換素子群の長辺方向に,1つの群として配置され,リセットトランジスタ,増幅トランジスタ,および選択トランジスタが含まれる画素トランジスタ群と を備え, 前記8つの光電変換素子は,それぞれ4つの光電変換素子で1つのフローティングディフュージョンを共有し, 前記光電変換素子群で共有される2つのフローティングディフュージョンの配列方向は,前記光電変換素子群の長辺方向と同じであり, 前記増幅トランジスタは,前記光電変換素子群の長辺方向において,前記光電変換素子群で共有される2つのフローティングディフュージョンの間に配置される 固体撮像装置。」 第3 原査定の拒絶の理由 本願発明について,原査定の拒絶の理由は次のとおりである。 本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2013-062789号公報 2.特開2008-270299号公報 3.特開2007-095917号公報 第4 引用文献及び引用発明 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された特開2013-062789号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付加した。以下同じ。) 「【技術分野】 【0001】 本開示は,固体撮像装置,及び,それを備える電子機器に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0013】 上述のように,従来,CMOSイメージセンサでは,様々な画素のレイアウト技術が提案されている。しかしながら,画素サイズを例えば1μm以下程度まで微細化すると,上述のような画素共有技術を用いても,例えばトランジスタ等のレイアウトに制限を受ける。 【0014】 具体的には,画素サイズの微細化に伴い,フォトダイオードの開口率が最大となるように設計するために,その分,トランジスタの占有面積をさらに縮小(最小化)する必要がある。この場合,例えば,画素サイズやトランジスタのレイアウト手法によっては,共有画素内の複数のフォトダイオード間で例えば感度(出力)等の特性に,ばらつきが生じる可能性がある。 【0015】 本開示は,上記問題を解消するためになされたものである。本開示の目的は,例えば画素サイズの微細化がさらに進行しても,複数のフォトダイオード間の例えば感度等の特性のばらつきを抑制することができる固体撮像装置,及び,それを備える電子機器を提供することである。」 「【0032】 [固体撮像装置の全体構成] 次に,第1の実施形態に係る固体撮像装置の全体構成について,図面を参照しながら具体的に説明する。なお,本実施形態では,固体撮像装置として,4トランジスタ型の裏面照射型CMOSイメージセンサを例に挙げ説明する。 【0033】 図1に,第1の実施形態に係るCMOSイメージセンサの概略ブロック構成を示す。CMOSイメージセンサ100は,画素アレイ部101と,垂直駆動部102と,カラム処理部103と,水平駆動部104と,システム制御部105とを備える。なお,画素アレイ部101,垂直駆動部102,カラム処理部103,水平駆動部104及びシステム制御部105は,図1には示さない一枚の半導体基板(チップ)上に形成される。 【0034】 さらに,CMOSイメージセンサ100は,信号処理部108及びデータ格納部109を備える。なお,信号処理部108及びデータ格納部109は,CMOSイメージセンサ100とは別の基板に設けられた,例えばDSP(Digital Signal Processor)やソフトウェアにより処理を行う外部信号処理部で構成してもよい。また,信号処理部108及びデータ格納部109を,例えば画素アレイ部101等が形成される半導体基板と同じ半導体基板上に搭載してもよい。 【0035】 画素アレイ部101は,行列状に2次元配置された複数の単位画素(以下,単に画素という)を備える。また,各画素には,入射光量に対応した電荷量の光電荷(以下,単に電荷という)を発生して内部に蓄積する光電変換素子(本実施形態ではフォトダイオード)が設けられる。なお,本実施形態では,複数の画素を共有する構成とするので,共有される複数の画素からなる共有単位部(以下,共有画素単位部という)を行列状に2次元配置して,画素アレイ部101が構成される。」 「【0056】 [共有画素単位部のレイアウト] (1)共有画素単位部全体のレイアウト 図4に,本実施形態のCMOSイメージセンサ100(固体撮像装置)における共有画素単位部110のレイアウト構成の概略平面図を示す。なお,図4に示す共有画素単位部110のレイアウト構成において,図3に示す共有画素単位部110の等価回路内の構成と対応する構成には同じ符号を付して示す。 【0057】 共有画素単位部110は,第1受光部21と,第2受光部22とを有する。第1受光部21及び第2受光部22は,共有画素単位部110内において,縦方向(図4中のY方向)に配列する。なお,後述するように,本実施形態では,8つの画素で共有されるFD領域16(フローティングディフュージョン部)は,各受光部にそれぞれ分けて設けられる(第1FD領域16a及び第2FD領域16b)。 【0058】 また,共有画素単位部110は,第1トランジスタ群31と,第2トランジスタ群32とを有する。すなわち,本実施形態では,8つの画素で共有する各種トランジスタを2つのトランジスタ群に分けて配置する。ただし,本実施形態では,第1トランジスタ群31に増幅トランジスタ13及び選択トランジスタ15を配置し,第2トランジスタ群32にリセットトランジスタ14を配置する。 【0059】 また,第1トランジスタ群31は,図4に示すように,第1受光部21と第2受光部22との間に配置される。さらに,第2トランジスタ群32は,第2受光部22の周辺領域において,第2受光部22の第1トランジスタ群31の配置側とは反対側の領域に配置される。 【0060】 なお,本実施形態では,各トランジスタ群は,横方向(図4中のX方向)に沿って,受光部の一方の端部付近の位置から他方の端部付近の位置まで延在して形成される。この際,本実施形態では,横方向における第1トランジスタ群31の両端の位置が,それぞれ,第2トランジスタ群32の両端の位置と略同じになるように,各トランジスタ群を配置する。」 「【0071】 また,本実施形態のCMOSイメージセンサ100では,より良好な特性を得るために,増幅ゲート13aの面積をより大きくすることが好ましいので,図4に示すように,増幅ゲート13aの面積を選択ゲート15aの面積より大きくする。具体的には,増幅ゲート13aの横方向(X方向)の延在長さを,選択ゲート15aのそれより長くする。」 「【0079】 上述のようにして各トランジスタ群を構成した場合,第1トランジスタ群31のレイアウト構成(第1のレイアウト構成:ゲート及びソース/ドレインのパターン及びサイズ)が,第2トランジスタ群32のレイアウト構成(第2のレイアウト構成)と略対称となる。より詳細には,図4に示すように,第1トランジスタ群31及び第2トランジスタ群32間の中心を通りかつ両トランジスタ群間の配置方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に延在する直線L1に対して両トランジスタ群のレイアウト構成が互いに略対称になる。 【0080】 それゆえ,本実施形態のCMOSイメージセンサ100では,第1トランジスタ群31及び第2トランジスタ群32間のレイアウト構成の非対称性により発生する上記問題を解消することができる。具体的には,各種トランジスタのゲート及び/又は各種ソース/ドレインの各フォトダイオードの出力(感度)への影響を,共有する複数のフォトダイオード間で略均一にすることができる。その結果,本実施形態の第1トランジスタ群31及び第2トランジスタ群32のレイアウト構成では,共有画素単位部110内の8つのフォトダイオード間における例えば感度(出力)等の特性のばらつきを抑制することができる。」 「【0171】 [共有画素単位部のレイアウト] (1)共有画素単位部全体のレイアウト 図10に,本実施形態の共有画素単位部170のレイアウト構成の概略平面図を示す。なお,図10に示す共有画素単位部170のレイアウト構成において,図3に示す共有画素単位部170の等価回路内の構成に対応する構成には同じ符号を付して示す。 【0172】 共有画素単位部170は,受光部60と,ウエルコンタクト23と,第1トランジスタ群61と,第2トランジスタ群62とで構成される。すなわち,本実施形態の共有画素単位部170内には,ウエルコンタクト23及び受光部60をそれぞれ一つずつ設ける。 【0173】 また,本実施形態では,受光部60の横方向(図10中のX方向)において,ウエルコンタクト23は,受光部60の一方の側(図10では左側)の周辺領域に配置され,各トランジスタ群は,受光部60の他方の側(図10では右側)の周辺領域に配置される。この際,ウエルコンタクト23は,受光部60内のFD領域16と対向する位置に配置される。ただし,ウエルコンタクト23及び各トランジスタ群の配置位置は,図10に示す例 に限定されず,受光部60に対するウエルコンタクト23と各トランジスタ群との配置関係が,図10に示す配置関係と逆になっていてもよい。 【0174】 第1トランジスタ群61及び第2トランジスタ群62は,受光部60の縦方向(図10中のY方向)に沿って,互いに所定間隔,離して配置される。そして,この際,第1トランジスタ群61及び第2トランジスタ群62はそれぞれ,受光部60の第1フォトダイオード111及び第2フォトダイオード112と対向する位置に配置される。」 (2)引用発明 前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「固体撮像装置であって, その画素アレイ部を構成する共有画素単位部は,第1受光部と,第2受光部とを有し,第1受光部及び第2受光部は,共有画素単位部内において,縦方向に配列され,8つの画素で共有される2つのフローティングディフュージョン部は,各受光部にそれぞれ分けて設けられ, 共有画素単位部は,第1トランジスタ群と,第2トランジスタ群とを有し,第1トランジスタ群に増幅トランジスタ及び選択トランジスタを配置し,第2トランジスタ群にリセットトランジスタを配置し, 第1トランジスタ群は,第1受光部と第2受光部との間に配置され,さらに,第2トランジスタ群は,第2受光部の周辺領域において,第2受光部の第1トランジスタ群の配置側とは反対側の領域に配置され,各トランジスタ群は,横方向に沿って,受光部の一方の端部付近の位置から他方の端部付近の位置まで延在して形成されること。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-270299号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は,複数の光電変換素子を含む単位セルがウェルに配列された光電変換装置及びそれを含む撮像装置に関する。」 「【0013】 図2は,1つの単位セルの構成例を示す回路図である。各単位セル20は,回路要素として,例えば,複数の光電変換素子21a?21d,複数の転送トランジスタ22a?22d,1つのフローティングディフュージョン(以下,FD)25,1つの増幅トランジスタ23及び1つのリセットトランジスタ24を含む。ここでは,各単位セル20が4個の光電変換素子21a?21d,即ち,4画素を含む構成を例示する。」 「【0024】 図3は,図2に示す単位セルの構造の一例を示す平面パターン図(レイアウト図)である。図3において,ゲート電極41a?41dは,それぞれ,光電変換素子21a?21dの光電変換領域(活性領域)42a?42dとFD43a?43dとの間に配置されて,転送トランジスタ22a?22dのゲート電極を形成している。FD43a?43dは,それぞれ,転送トランジスタ22a?22dのドレイン領域である。ゲート電極46,ソース領域47及びドレイン領域45bは,増幅トランジスタ23を構成している。ゲート電極44,ソース領域43e及びドレイン領域45aは,リセットトランジスタ24を構成している。」 図3には,ゲート電極46で構成される増幅トランジスタとゲート電極44で構成されるリセットトランジスタは,単位セルの長辺方向において,長辺に沿って配置されること,が記載されていると認められる。 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-095917号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は,画素領域のウェル電圧を制御可能な固体撮像装置に関する。」 「【0036】 (第4の実施形態) 図13は,本発明の第4の実施形態に係る固体撮像装置における一組の画素PXLa?PXLhの具体的な回路図の一例を示している。また,図14は,図13に示す画素の組が行列状に配置された画素領域PXRのレイアウトを示している。本実施形態では,第1の実施形態で説明した固体撮像装置の構成要素と同じものには同じ参照符号を付して説明を省略し,特徴的な点についてのみ説明する。 【0037】 本実施形態に係る固体撮像装置では,PD1a?1hと転送ゲート20a?20hとは,各画素PXLa?PXLhに個別に設けられている。その一方で,増幅トランジスタATrやリセットトランジスタRTrは,組をなす8画素PXLa?PXLhで共用されている。 【0038】 主ウェル配線4は,n(=8)列毎に敷設されており,より詳しくは,画素の組の端(境界部)を列方向に延伸している。そして,組をなす8個の画素PXLa?PXLhのうち,端の一つ(PXLa)に,ドープ領域2およびコンタクト3が設けられている。ドープ領域2は,主ウェル配線4と隣接して設けられている。また,リセットトランジスタRTrと増幅トランジスタATrとは,組をなす8個の画素のうち,両端から2画素目(PXLb,PXLe)と3画素目(PXLc,PXLd)とに設けられている。」 図14には,増幅トランジスタATrとリセットトランジスタRTrは,組をなす8画素PXLaからPXLhの長辺方向において,長辺方向に沿って配置されること,が記載されていると認められる。 第5 対比及び判断 1 対比 (1)本願発明と引用発明との対比 ア 引用発明では「共有画素単位部は,第1受光部と,第2受光部とを有し,第1受光部及び第2受光部は,共有画素単位部内において,縦方向に配列され」ており,第1受光部及び第2受光部はそれぞれ略正方形である(前記第4の1(1)図4)から,「共有画素単位部」の「形状は長方形であり,」また,「8つの画素で共有されるフローティングディフュージョン部」を有するから,引用発明の「共有画素単位部」は,本願発明の「1共有の形状が長方形であり,1共有単位に8つの光電変換素子が含まれる光電変換素子群」に相当する。 イ 引用発明では「第1トランジスタ群に増幅トランジスタ及び選択トランジスタを配置し,第2トランジスタ群にリセットトランジスタを配置」するから,これらの「トランジスタ群」は,本願発明の「画素トランジスタ群」と,「リセットトランジスタ,増幅トランジスタ,および選択トランジスタが含まれる画素トランジスタ群」である点で共通する。 ウ 引用発明では「8つの画素で共有される2つのフローティングディフュージョン部は,各受光部にそれぞれ分けて設けられ」るから,「前記8つの光電変換素子は,それぞれ4つの光電変換素子で1つのフローティングディフュージョンを共有」するといえる。 エ 引用発明では「第1受光部及び第2受光部は,共有画素単位部内において,縦方向に配列され,8つの画素で共有される2つのフローティングディフュージョン部は,各受光部にそれぞれ分けて設けられ」るから,「前記光電変換素子群で共有される2つのフローティングディフュージョンの配列方向は,前記光電変換素子群の長辺方向と同じ」といえる。 オ すると,本願発明と引用発明とは,下記(2)の点で一致し,下記(3)の点で相違する。 (2)一致点 「1共有の形状が長方形であり,1共有単位に8つの光電変換素子が含まれる光電変換素子群と, リセットトランジスタ,増幅トランジスタ,および選択トランジスタが含まれる画素トランジスタ群と を備え, 前記8つの光電変換素子は,それぞれ4つの光電変換素子で1つのフローティングディフュージョンを共有し, 前記光電変換素子群で共有される2つのフローティングディフュージョンの配列方向は,前記光電変換素子群の長辺方向と同じである, 固体撮像装置。」 (3)相違点 本願発明では「画素トランジスタ群」が「前記光電変換素子群の長辺方向に,1つの群として配置され」「前記増幅トランジスタは,前記光電変換素子群の長辺方向において,前記光電変換素子群で共有される2つのフローティングディフュージョンの間に配置される」のに対し,引用発明では「第1トランジスタ群は,第1受光部と第2受光部との間に配置され,さらに,第2トランジスタ群は,第2受光部の周辺領域において,第2受光部の第1トランジスタ群の配置側とは反対側の領域に配置され,各トランジスタ群は,横方向に沿って,受光部の一方の端部付近の位置から他方の端部付近の位置まで延在して形成される」点。 2 相違点についての判断 (1)容易想到性について 引用発明の目的は,固体撮像装置において「複数のフォトダイオード間の例えば感度等の特性のばらつきを抑制すること」(前記第4の1(1)【0015】)であり,このために,「図4に示すように,第1トランジスタ群31及び第2トランジスタ群32間の中心を通りかつ両トランジスタ群間の配置方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に延在する直線L1に対して両トランジスタ群のレイアウト構成が互いに略対称になる」(同【0079】)ようにするというものである。ここで,同図4をみると,「直線L1」は「第2受光部」の縦方向における中心を通っているから,「両トランジスタ群のレイアウト構成が互いに略対称」とするのは「受光部」についてであることがわかる。もし,「受光部」でなく「共有画素単位部」について略対称とするのであれば,図4の直線L1は「第1受光部」と「第2受光部」との間に位置するはずである。 そして,引用発明は,「共有画素単位部を行列状に2次元配置」する際に「行列状に2次元配置された複数の単位画素」が前提となっており(同【0035】),すなわち,略正方形の「受光部」が行列状に2次元配置されることが前提となっている。 してみると,「受光部」は略正方形で「長辺方向」と「短辺方向」の区別はなく,しかも行列状に2次元配置されるのであるから,縦方向と同様に横方向にも繰り返し配置されるものであることは,当業者に自明のことである。 すると,引用発明においてその目的を達成するためには,略正方形の受光部について「両トランジスタ群のレイアウト構成が互いに略対称」とする際に,縦方向に略対称としても横方向に略対称としても,等価であることは,当業者が容易に了解することである。 そして,それぞれの受光部について横方向に略対称とすれば,両トランジスタ群はそれぞれの受光部の縦方向に沿って配置され,横方向に隣接する受光部のトランジスタ群と横方向に略対称となり,また,縦方向に隣接する受光部のそれぞれのトランジスタ群は「長辺方向に,1つの群として配置」されることになる。ここで,このようなトランジスタ群の配置は引用文献1(前記第4の1(1)図10),引用文献2(前記第4の2)及び引用文献3(前記第4の3)に記載されているように周知技術であるから,引用発明において相違点に係る構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。 (2)効果について 本願発明の「固体撮像装置101において,Tr.のpoly-Siの密度が異なることによる影響を軽減し,PRNU(Photo Response Non Uniformity:感度不均一性)を改善することができる」(本願明細書段落0066)という効果は,対称性を高めることにより奏されるもの(同段落)であり,本願発明のようにトランジスタ群を縦方向に配置しようが引用発明のように横方向に配置しようが,対称性の点で変わらないことは,前記(1)で述べたとおりである。 また,本願発明の「Tr.(特に増幅Tr.)のL長を長くすることができるので,RN(ランダムノイズ)を改善することができる」(本願明細書段落0061)という効果は,引用文献1の記載(前記第4の1(1)【0071】)から,当業者が予測できる程度のものである。 してみると,本願発明について格別の効果は認められない。 3 まとめ 以上のとおりであるから,本願発明は,引用文献1-3に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 結言 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-06-07 |
結審通知日 | 2019-06-11 |
審決日 | 2019-06-24 |
出願番号 | 特願2017-91696(P2017-91696) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小池 英敏、鈴木 肇 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
深沢 正志 小田 浩 |
発明の名称 | 固体撮像装置、および電子機器 |
代理人 | 稲本 義雄 |
代理人 | 西川 孝 |