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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1354055
異議申立番号 異議2018-700761  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-20 
確定日 2019-06-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6297071号発明「ブロック共重合体組成物及び粘接着剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6297071号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。 特許第6297071号の請求項1?16に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6297071号の請求項1?16に係る発明についての出願は、2015(平成27)年1月22日(優先権主張 平成26年1月23日)を国際出願日とする出願であって、平成30年3月2日にその特許権の設定登録がされ、同年3月20日に特許掲載公報が発行されたところ、同年9月20日に、異議申立人 奥村 安記子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。

その後の経緯は、以下のとおりである。

平成30年12月3日付け 取消理由通知
平成31年2月4日 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年3月13日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
同年4月17日 意見書(申立人)(甲第7号証を添付)
申立人の証拠方法は、以下のとおりである。
<申立書に添付>
甲第1号証:特開平10-130349号公報
甲第2号証:国際公開第2001/85818号
甲第3号証:特開2000-309767号公報
甲第4号証:国際公開第2005/075555号
甲第5号証:特開2006-341593号公報
甲第6号証:特開2010-235772号公報

<意見書に添付>
甲第7号証:TAPPI Hot Melt Symposium,
June 13-16,1999,171-179頁
”APPLICATION OF RADIAL SIS POLYMERS TO HOT MELT PRESSURE SENSITIVE ADHESIVES”

(以下、甲第1号証?甲第7号証を、「甲1」等という。)

第2 訂正の請求について
平成31年2月4日に提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?16について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%である」と記載されているのを、「前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.7である」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「15質量%トルエン溶液における粘度が、10?90mPa・sである」とあるのを、「前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであり、15質量%トルエン溶液における粘度が、10?90mPa・sである」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「15質量%トルエン溶液における粘度が、90mPa・sを超え、600mPa・s以下である」とあるのを、「前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであり、15質量%トルエン溶液における粘度が、90mPa・sを超え、600mPa・s以下である」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が1.5以上2.5未満である成分(b-1)をさらに含む、請求項1?3のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。」とあるのを、「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?26.3質量%であり、前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が1.5以上2.5未満である成分(b-1)をさらに含み、前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%である、ブロック共重合体組成物。」

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に、「前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9である、請求項1?6のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。」とあるのを、「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであり、前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9である、ブロック共重合体組成物。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項14に、「前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%である、請求項1?13のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。」とあるのを、「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%であり、前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9である、ブロック共重合体組成物。」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項15に、「前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、70質量%を超える、請求項1?13のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。」とあるのを、「「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、70質量%を超え、前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9である、ブロック共重合体組成物。」に訂正する。

本件訂正前の請求項2?16は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1?16は一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項に対してされたものである。

2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、「ブロック共重合体組成物」について、「前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.7である」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書には、「成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比は、成分(b)の総面積に対し、好ましくは0.1?0.97であり」(【0028】)と記載されており、また「成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比は、前記成分(b)の総面積に対し、好ましくは0.03?0.9であり、より好ましくは0.05?0.8であり、さらに好ましくは0.1?0.7であり」(【0029】)と記載されているから、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2及び3について
訂正事項2及び3は、いずれも、「ブロック共重合体組成物」について、「前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであ」るものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書には、「成分(a)、(b)中の重合体ブロック(B)を構成する共役ジエン化合物は、共役二重結合を有するジオレフィンであれば特に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。このなかでも、共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。」(【0039】)と記載されているから、訂正事項2及び3は、いずれも、本件特許明細書等の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4が本件訂正前の請求項1を引用していたのをこれを引用しないこととして本件訂正前の請求項1を書き下して独立形式に改め、この際、成分(a)及び成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、成分(a)及び成分(b)の総量に対して、「10?50質量%」であったものを「10?26.3質量%」とし、さらに、「ブロック共重合体組成物」について、「前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%である」ものに限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、また、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正前の請求項14には、「前記成分(a)及び前記成分(b)中の共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%である」と記載されている。
また、本件特許明細書には、「一つの様態として、成分(a)及び成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、成分(a)及び成分(b)の総量に対して、好ましくは15?45質量%であり、より好ましくは20?40質量%である。・・・ また、別の態様として、成分(a)及び成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、成分(a)及び成分(b)の総量に対して、好ましくは11?40質量%であり、より好ましくは12?35質量%である。」(【0051】?【0052】)と記載され、さらに、実施例において具体的に、ブロック共重合体組成物29として、ビニル芳香族単量体単位の含有量が26.3質量%のものが記載されている(【0392】の表4)から、訂正事項4は、本件特許明細書等の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項7が本件訂正前の請求項1を引用していたのをこれを引用しないこととして本件訂正前の請求項1を書き下して独立形式に改め、この際、共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであることを限定したものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、また、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書には、「成分(a)、(b)中の重合体ブロック(B)を構成する共役ジエン化合物は、共役二重結合を有するジオレフィンであれば特に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。このなかでも、共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。」(【0039】)と記載されているから、訂正事項5は、本件特許明細書等の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項6及び7について
訂正事項6及び7は、本件訂正前の請求項14及び15が本件訂正前の請求項1?13のいずれか一項を引用していたのを、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項7を引用するものに限定するとともに、訂正前の請求項1及び7を書き下して独立形式に改めたものであるから、いずれも、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、また、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6及び7はいずれも、本件特許明細書等の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1?7に係る本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、結論のとおり、本件訂正を認める。

第3 本件発明
前記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?16に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」という)。

【請求項1】
成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、
前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、
前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.7である、
ブロック共重合体組成物。
【請求項2】
前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであり、
15質量%トルエン溶液における粘度が、10?90mPa・sである、請求項1に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項3】
前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであり、
15質量%トルエン溶液における粘度が、90mPa・sを超え、600mPa・s以下である、請求項1に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項4】
成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?26.3質量%であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が1.5以上2.5未満である成分(b-1)をさらに含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%である、
ブロック共重合体組成物。
【請求項5】
前記成分(b-1)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.6以下である、請求項4に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項6】
前記成分(b-1)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.2以下である、請求項4に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項7】
成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、
前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであり、
前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、
前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9である、
ブロック共重合体組成物。
【請求項8】
前記成分(b)の重量平均分子量が、60,000以上、600,000以下である、請求項1?7のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項9】
前記成分(a)が、(A-B)及び/又は(A-B)X(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示す。)によって表されるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、(A-B)_(3)X及び式(A-B)_(4)X(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示す。)によって表されるブロック共重合体である、
請求項1?8のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項10】
前記成分(a)が、(A-B)及び/又は(A-B)X(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示す。)によって表されるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、(A-B)_(2)X、(A-B)_(3)X、及び式(A-B)_(4)X(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示す。)によって表されるブロック共重合体である、
請求項1?8のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項11】
前記成分(a)の含有量が、50質量%以上、75質量%以下であり、
前記成分(b)の含有量が、25質量%以上、50質量%以下である、請求項1?10のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項12】
前記成分(a)の含有量が、70質量%以上、90質量%以下であり、
前記成分(b)の含有量が、10質量%以上、30質量%以下である、請求項1?10のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項13】
前記成分(a)の含有量が、50質量%以上、70質量%未満であり、
前記成分(b)の含有量が、30質量%を超え、50質量%以下である、請求項1?10のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項14】
成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%であり、
前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、
前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9である、
ブロック共重合体組成物。
【請求項15】
成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、70質量%を超え、
前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、
前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9である、
ブロック共重合体組成物。
【請求項16】
請求項1?15のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物:100質量部と、
粘着付与剤:50?400質量部と、
軟化剤:10?200質量部と、
を、含有する、粘接着剤組成物。

第4 取消理由の内容
1 取消理由通知書に記載した取消理由
平成30年12月3日付け取消理由通知書に記載した取消理由は、以下のとおりのものである。
(1)取消理由1
請求項1?13及び16に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2
請求項1?13及び16に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)取消理由3
請求項1?6、8?11、13、14及び16に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)取消理由4
請求項1?6及び8?16に係る発明は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

第5 当審の判断
1 取消理由1及び2について
(1)甲1に記載された発明
甲1の【0043】?【0049】(特に実施例1?6)から、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「開始剤を存在させ、スチレンを重合し、続いてイソプレンを添加し重合した後、カップリング剤としてテトラメトキシシランを添加してカップリング反応を行って得られた、スチレン含有量が38重量%、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)96,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.43で、4分枝体35.3重量%、3分枝体4.7重量%、2分枝体1.2重量%及びジブロック体58.8重量%が含まれるブロック共重合体。」(以下、「甲1-1発明」という。)

「開始剤を存在させ、スチレンを重合し、続いてイソプレンを添加し重合した後、カップリング剤としてテトラクロルシシランを添加してカップリング反応を行って得られた、スチレン含有量が41重量%、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)93,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.36で、4分枝体26.7重量%、3分枝体0.8重量%、及びジブロック体72.5重量%が含まれるブロック共重合体。」(以下、「甲1-2発明」という。)

「開始剤を存在させ、スチレンを重合し、続いてイソプレンを添加し重合した後、カップリング剤としてテトラクロルシシランを添加してカップリング反応を行って得られた、スチレン含有量が37重量%、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)116,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.39で、4分枝体34.5重量%、3分枝体1.0重量%、及びジブロック体64.5重量%が含まれるブロック共重合体。」(以下、「甲1-3発明」という。)

「開始剤を存在させ、スチレンを重合し、続いてイソプレンを添加し重合した後、カップリング剤としてテトラメトキシシランを添加してカップリング反応を行って得られた、スチレン含有量が37重量%、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)74,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.29で、4分枝体17.7重量%、3分枝体1.7重量%、及びジブロック体80.6重量%が含まれるブロック共重合体。」(以下、「甲1-4発明」という。)

「開始剤を存在させ、スチレンを重合し、続いてイソプレンを添加し重合した後、カップリング剤としてテトラメトキシシランを添加してカップリング反応を行って得られた、スチレン含有量が31重量%、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)135,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.46で、4分枝体34.9重量%、3分枝体7.3重量%、2分枝体1.7重量%、及びジブロック体56.1重量%が含まれるブロック共重合体。」(以下、「甲1-5発明」という。)

「開始剤を存在させ、スチレンを重合し、続いてイソプレンを添加し重合した後、カップリング剤としてテトラメトキシシランを添加してカップリング反応を行って得られた、スチレン含有量が27重量%、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)155,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.48で、4分枝体34.5重量%、3分枝体9.9重量%、2分枝体2.1重量%、及びジブロック体53.5%が含まれるブロック共重合体。」(以下、「甲1-6発明」という。)

(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1-1発明とを対比する。
a 甲1-1発明の「スチレン」、「イソプレン」は、それぞれ本件発明1の「ビニル芳香族単量体」、「共役ジエン単量体」に相当する。
b 甲1-1発明の「ジブロック体」、「4分枝体」、「3分枝体」、及び「2分枝体」は、それぞれ、(A-B)又は(A-B)X、(A-B)_(4)X、(A-B)_(3)X及び(A-B)_(2)X(ただし、Aはスチレン重合体ブロック、Bはイソプレン重合体ブロック、Xはカップリング剤残基)で表されるものである(甲1の請求項1、【0020】及び【0033】)。
一方、本件特許明細書の【0021】には、成分(a)として、式(A-B)又は式(A-B)Xによって表されるジブロック体が記載され、【0032】には、成分(b-2)として、式(A-B)_(3)Xで表される3分岐ブロック共重合体が記載され、成分(b-3)として、式(A-B)_(4)Xで表される4分岐ブロック共重合体が記載されている。また、【0025】には、「成分(b)」は、「成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が1.5以上2.5未満である成分(b-1)」を含んでもよいことが記載され、【0033】には、「成分(b-1)」として、式(A-B)_(2)Xで表される2分岐ブロック共重合体が記載されている。ここで、Aはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)、Bは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を表す(【0021】、【0032】、【0033】)。
そうすると、甲1-1発明の「ジブロック体」、「3分枝体」、「4分枝体」は、それぞれ、本件発明1の「成分(a)」、「成分(b-2)」及び「成分(b-3)」に相当し、これら「3分枝体」及び「4分枝体」は、いずれも本件発明1の「成分(b)」に相当する。また、甲1-1発明の「2分枝体」は上記「成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が1.5以上2.5未満である成分(b-1)」に相当し、「ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体」といえるから、これも、本件発明1の「成分(b)」に相当する。
c 甲1-1発明の「ブロック共重合体」は、「ジブロック体」、「3分枝体」、「4分枝体」及び「2分枝体」を含むから、「ブロック共重合体組成物」であるということができ、本件発明1の「ブロック共重合体組成物」に相当する。
また、甲1-1発明の「ジブロック体」と「4分枝体」、「3分枝体」及び「2分枝体」との重量割合は、58.8重量%と41.2重量%(=4.7+35.3+1.2)であって、それぞれ本件発明1の成分(a)の含有割合である「50質量%以上、90質量%以下」と成分(b)の含有割合である「10質量%以上、50質量%以下」の範囲に包含される。
そして、甲1-1発明の「ジブロック体」、「3分枝体」、「4分枝体」及び「2分枝体」中のスチレンの含有量は38重量%であって、本件発明1の成分(a)及び成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量である「10?50質量%」の範囲に包含される。

してみると、本件発明1と甲1-1発明とは、
「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%である
ブロック共重合体組成物。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1では、成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.7であるのに対して、甲1-1発明では、この点についての規定がない点。

相違点1について検討する。
成分(b-3)のGPC溶出曲線における、成分(b)の総面積に対する面積比は、成分(b)に対する成分(b-3)の含有割合であると解されるところ、甲1-1発明における、「2分枝体」「3分枝体」及び「4分枝体」の合計量に対する「4分枝体」の含有割合は、0.86(=35.3/(1.2+4.7+35.3)と計算されるから、甲1-1発明において、「4分枝体」のGPC溶出曲線における面積比が、「2分枝体」「3分枝体」及び「4分枝体」をあわせた総面積に対し、「0.03?0.7」の範囲には包含されるとはいえない。
そうすると、相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1-1発明ではない。

次に、相違点1に係る事項が当業者が容易に想到し得たものであったかについて検討する。
本件特許明細書の【0029】の記載によれば、本件発明1において、成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比を特定のものとして、優れた粘接着特性、低溶融粘度特性、高軟化点特性を有するブロック共重合体組成物を得ようとするものと解される。
これに対して、甲1は、4以上の分枝をもつ分枝体成分とジブロック体成分を必須に含むブロック共重合体に係るものであり(請求項1)、「芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体には、上記4以上の分枝をもつ分枝体成分とジブロック体成分の他に、2つの分枝をもつ分枝体成分および3つの分枝をもつ分枝体成分が含まれてもよい・・・が、これらの分枝体成分の量が多量であることは好ましくない。」(【0020】)、「カップリング剤の使用量を多くすると2つの分枝をもつブロック共重合体(A-B)_(2)X、3つの分枝をもつブロック共重合体(A-B)_(3)X、・・・が多量に副生し易く、4つ以上の分枝を持つ分枝体がほとんど得られない。」(【0033】)及び「目的とする4つ以上の分枝を有する分枝体成分と未カップリング反応のジブロック体成分とからなる本発明のブロック共重合体」(【0035】)との記載に鑑みれば、甲1-1発明において、「4分枝体」の含有割合を少なくすることについては、何ら示唆されるものではなく、その動機付けも見出せない。
そうであれば、甲1-1発明において、「2分枝体」「3分枝体」及び「4分枝体」の合計量に対する「4分枝体」の含有割合を0.86よりも少なくして、「4分枝体」のGPC溶出曲線における面積比を「2分枝体」「3分枝体」及び「4分枝体」をあわせた総面積に対し「0.03?0.7」の範囲とし、これにより、優れた粘接着性、低溶融粘度特性、高軟化点特性を有するブロック共重合体組成物を得ることは、何ら動機づけられない。
そうすると、相違点1に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明1は、甲1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)上記(ア)と同様にして、本件発明1と甲1-2発明?甲1-6発明とは、少なくとも、相違点1で相違するところ、甲1-2発明?甲1-6発明における、「2分枝体」、「3分枝体」及び「4分枝体」の合計量に対する「4分枝体」の含有割合は、それぞれ、0.97(甲1-2発明)、0.97(甲1-3発明)、0.91(甲1-4発明)、0.79(甲1-5発明)、0.74(甲1-6発明)であるから、いずれも、「4分枝体」のGPC溶出曲線における面積比が「2分枝体」「3分枝体」及び「4分枝体」をあわせた総面積に対し「0.03?0.7」の範囲にあるものとはいえないし、これを「0.03?0.7」とすることが、当業者が容易に想到し得たものであったとはいえないことは、上記(ア)で述べたとおりである。
してみると、本件発明1は、甲1-2発明?甲1-6発明のいずれでもなく、また、甲1-2発明?甲1-6発明のいずれかに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)上記(ア)及び(イ)に関する申立人の主張について
ここで、申立人は、平成31年4月17日に提出された意見書において、以下の主張をする。
本件特許発明のようなブロック共重合体組成物において、粘接着特性を変化させようとした場合、当業者であれば、4分岐体等の分岐体の組成を変化させることは通常試みる行為であり、また「前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.7である」旨の発明特定事項は、技術的意義がないから、本件発明1は、甲1に対して進歩性を有さない。
上記主張について検討する。
上記(ア)及び(イ)で述べたとおり、甲1の【0020】、【0030】及び【0035】の記載に鑑みれば、甲1-1発明?甲1-6発明において、「4分枝体」の含有割合を、少なくすることについては、何らの動機付けも見出せない。むしろ、これらの記載に接した当業者は、2分枝体及び3分枝体は、副生物であり、目的とする4分枝体とジブロック体に対して多すぎると好ましくないことを理解するものといえるから、「4分枝体」の含有割合を少なくすることは、阻害されている。
そうであれば、仮に、ブロック共重合体組成物において、粘接着特性を変化させようとした場合、4分岐体等の分岐体の組成を変化させることは通常試みる行為であったとしても、このことにより、甲1-1発明?甲1-6発明において、2分枝体、3分枝体及び4分枝体の合計量に対する4分枝体の含有割合を減少せしめることを動機付けられるといえない。
してみると、甲1-1発明?甲1-6発明において「前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.7である」ことが何ら動機づけられないのだから、上記申立人の主張は採用することができない。

(エ)以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、本件発明1について、取消理由1及び2はいずれも理由がない。

イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1を引用するものである。
そして、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは上記アで述べたとおりであるから、本件発明2及び3も、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、本件発明2及び3について、取消理由1及び2はいずれも理由がない。

ウ 本件発明4について
本件発明4と甲1-1発明?甲1-6発明とを対比する。
上記アで述べたものと同様の検討及び甲1-1発明?甲1-6発明の「2分枝体」は本件発明4の「成分(b-1)」に相当する(上記ア参照)ことから、本件発明4と甲1-1?甲1-6発明とは、
「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が1.5以上2.5未満である成分(b-1)をさらに含む
ブロック共重合体組成物。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点2>
本件発明4では、成分(a)及び成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%であるのに対して、甲1-1発明?甲1-6発明では、この点についての規定がない点。

相違点2について検討する。
甲1には、「ジブロック体」、「2分枝体」、「3分枝体」及び「4分枝体」を水素添加し、その水素添加率を「20質量%?70質量%」とすることについては何ら記載されていないから、相違点2は実質的な相違点であり、本件発明4は、甲1-1発明?甲1-6発明のいずれでもない。

次に、相違点2に係る事項が当業者が容易に想到し得たものであったかについて検討する。
本件発明4は、成分(a)及び(b)中の共役ジエン単量体単位中の水素添加率を20質量%?70質量%として、粘接着特性と溶解性、塗工性、高軟化点特性がより向上することに加えて、より高温での保持力、耐熱判定性をより向上せしめるものといえる(【0061】)。
これに対して、甲1には、「ジブロック体」、「2分枝体」、「3分枝体」及び「4分枝体」を水素添加することについて何ら記載も示唆もされていないから、甲1-1発明?甲1-6発明において、「ジブロック体」、「2分枝体」、「3分枝体」及び「4分枝体」を水素添加することは何ら動機づけられないし、ましてや、当該成分中の共役ジエン単量体単位中の水素添加率を20質量%?70質量%として、粘接着特性と溶解性、塗工性、高軟化点特性がより向上することに加えて、より高温での保持力、耐熱判定性をより向上せしめることは、何ら動機づけられるものではない。
そうすると、相違点2に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明4は、甲1-1発明?甲1-6発明のいずれかに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

よって、本件発明4は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明4について、取消理由1及び2はいずれも理由がない。

エ 本件発明5及び6について
本件発明5及び6は、本件発明4を引用するものである。
そして、本件発明4は、上記ウで述べたとおり、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明5及び6も、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、本件発明5及び6について、取消理由1及び2はいずれも理由がない。

オ 本件発明7について
本件発明7と、甲1-1発明?甲1-6発明とを対比する。
上記アと同様にして、本件発明7と甲1-1?甲1-6発明とは、
「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%である
ブロック共重合体組成物。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点3>
「共役ジエン単量体」について、本件発明7では「1,3-ブタジエン」であるのに対して、甲1-1発明?甲1-6発明では、「イソプレン」である点。

相違点3について検討する。
甲1-1発明?甲1-6発明は、「1,3-ブタジエン」を使用していないから、相違点3は実質的な相違点であり、本件発明7は、甲1-1発明?甲1-6発明のいずれでもない。

次に、相違点3に係る事項が当業者が容易に想到し得たものであるかについて検討する。
甲1は、ホットメルト接着剤その他の粘接着剤として有用な芳香族ビニル-イソプレンブロック共重合体・・に関するものであり(【0001】)、ブロック共重合体の単量体としてイソプレンを用いることを前提としたものであって、1,3-ブタジエンを使用することについては、記載も示唆もされていない。
してみると、甲1-1発明?甲1-6発明において、「イソプレン」に代えて「1,3-ブタジエン」を使用することは、何ら動機づけられない。
そうすると、相違点3に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明7は、甲1-1発明?甲1-6発明のいずれかに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

よって、本件発明7は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明7について、取消理由1及び2はいずれも理由がない。

カ 本件発明8?13について
本件発明8?13は、請求項1、4または7のいずれかを直接又は間接的に引用するものである。
そして、請求項1、4及び7のいずれも、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、上記ア、ウ及びオで述べたとおりであるから、本件発明8?13も、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、本件発明8?13について、取消理由1及び2はいずれも理由がない。

キ 本件発明16について
本件発明16は、本件発明1、4、7、14及び15を直接又は間接的に引用するものである。
そして、本件発明1、4、7のいずれも、甲1に記載された発明でなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは、上記ア、ウ及びオで述べたとおりである。
また、請求項14及び15は、取消理由1及び2の対象ではない。
したがって、本件発明16については、取消理由1及び2はいずれも理由がない。

(3)小括
以上のとおりであるから、取消理由1及び2はいずれも理由がない。

2 取消理由3及び4について
(1)甲2に記載された発明
甲2の28頁13?21行、35頁表4(特にポリマー35及び36)から、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。

「スチレンを重合した後、ブタジエンを加えて重合し、その後カップリング剤として四塩化シリカを添加してカップリングさせ、カップリングしたポリマーとカップリングしていないポリマーの混合物を得、その後水素添加をして得た、水素添加率55%、スチレン含量35重量%で、ピーク分子量が数平均分子量で6.0万及び19.5万のポリマーを50/50の比率で含むポリマー。」(以下、「甲2-1発明」という。」)

「スチレンを重合した後、ブタジエンを加えて重合し、その後カップリング剤として四塩化シリカを添加してカップリングさせ、カップリングしたポリマーとカップリングしていないポリマーの混合物を得、その後水素添加をして得た、水素添加率65%、スチレン含量35重量%で、ピーク分子量が数平均分子量で6.0万及び19.6万のポリマーを50/50の比率で含むポリマー。」(以下、「甲2-2発明」という。」)

(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と、甲2-1発明及び甲2-2発明とを対比する。
甲2-1発明及び甲2-2発明の「スチレン」及び「ブタジエン」は、それぞれ本件発明1の「ビニル芳香族単量体」及び「共役ジエン単量体」に相当する。
甲2-1発明及び甲2-2発明の「スチレンを重合した後、ブタジエンを加えて重合し、その後カップリング剤として四塩化シリカを添加してカップリングさせ」て得た、「カップリングしたポリマーとカップリングしていないポリマーの混合物」は、水素添加を経ても、カップリングしたポリマーとカップリングしていないポリマーの混合物であり、これらはいずれも、スチレン重合体ブロックとブタジエン重合体ブロックを含むものと解される。
一方、本件特許明細書には、本件発明1のブロック共重合体を製造の際ブロック共重合体及びカップリング剤を反応させるにあたり、カップリングしたブロック共重合体は「成分(b)」になり、カップリングせずに残ったブロック共重合体は「成分(a)」になることが記載されており(【0066】)、また、本件発明1の「成分(a)」及び「成分(b)」は、水素添加されたブロック共重合体も包含すると解される(【0061】?【0065】)。
そうすると、甲2-1発明及び甲2-2発明の「カップリングしていないポリマー」が水素添加されたもの(以下、「水添未カップリングポリマー」という。)は、「重量平均分子量が30,000以上、150,000以下である」点を除き、本件発明1の「成分(a)」に相当し、「カップリングしたポリマー」が水素添加されたもの(以下、「水添カップリングポリマー」という。)は、成分(b-2)及び成分(b-3)を含む点を除いて、本件発明1の「成分(b)」に相当する。そして、これら「水添未カップリングポリマー」と「水添カップリングポリマー」との量比は50/50であり、全体のスチレン含量は35重量%である。また、甲2-1発明及び甲2-2発明の「ポリマー」は、いずれもブロック共重合体である「水添未カップリングポリマー」と「水添カップリングポリマー」を含むから「ブロック共重合体組成物」であるといえる。
してみると、本件発明1と、甲2-1発明及び甲2-2発明とは、
「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%である、ブロック共重合体組成物。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点4>
「成分(b)」について、本件発明1では、成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.7であるのに対して、甲2-1発明では、「水添未カップリングポリマー」、「水添カップリングポリマー」のピーク分子量がそれぞれ6.0万、19.5万であり、甲2-2発明では、「水添未カップリングポリマー」、「水添カップリングポリマー」のピーク分子量がそれぞれ6.0万、19.6万であるものの、成分(b-2)及び成分(b-3)については規定がなく、これらのGPC溶出曲線における、成分(b)の総面積に対する面積比についても規定がない点。

相違点4について検討する。
甲2-1発明及び甲2-2発明では、4価のカップリング剤である四塩化シリカが使用されているところ、仮に、4価のカップリング剤により、「水添未カップリングポリマー」が3個カップリングすれば、本件発明1の「成分(b-2)」に相当するものが形成され、4個カップリングすれば、本件発明1の「成分(b-3)」に相当するものが形成されるといえる。
そして、甲2-1発明及び甲2-1発明において、4価のカップリング剤が使用されること、「水添カップリングポリマー」のピーク分子量は「水添未カップリングポリマー」のピーク分子量の概略3.3倍であると計算されることから、「水添未カップリングポリマー」が4個カップリングしたもの及び3個カップリングしたものが形成されると解されなくもない。
しかしながら、甲2には、これらをそれぞれどの程度含有するのかについてまでの記載はなく、また、甲2-1発明及び甲2-2発明の「ポリマー」を製造する際の、開始剤やカップリング剤の使用量についても何ら記載がない。
そうすると、単に、4価のカップリング剤が使用され、「水添カップリングポリマー」のピーク分子量は「水添未カップリングポリマー」のピーク分子量の概略3.3倍であることのみをもって、甲2-1発明及び甲2-2発明における「水添カップリングポリマー」が4個カップリングしたもの及び3個カップリングしたものの含有量が、それぞれのGPC溶出曲線における面積比が「水添カップリングポリマー」の総面積に対しそれぞれ「0.1?0.97」及び「0.03?0.7」である程度であるとまではいうことはできない。
してみると、相違点4は実質的な相違点であり、本件発明1は、甲2-1発明及び甲2-2発明のいずれでもない。

次に、相違点4に係る事項が当業者が容易に想到し得たものであるかについて検討する。
本件特許明細書の【0028】及び【0029】の記載によれば、本件発明1は、成分(b-2)及び(b-3)のGPC溶出曲線における面積比を特定のものにすることにより、優れた粘接着性、低溶融粘度特性、高軟化点特性を有するブロック共重合体組成物を得ようとするものである。
これに対して、甲2には、「水添未カップリングポリマー」が3個カップリングしたもの及び4個カップリングしたものそれぞれの、「水添カップリングポリマー」全体に占める含有量については、何ら記載も示唆もされていないから、甲2-1発明及び甲2-2発明において、「水添未カップリングポリマー」が3個カップリングしたもの、及び、4個カップリングしたものについて、それぞれのGPC溶出曲線における面積比を、「水添カップリングポリマー」の総面積に対し、それぞれ「0.1?0.97」及び「0.03?0.7」として、優れた粘接着性、低溶融粘度特性、高軟化点特性を有するブロック共重合体組成物を得ることは、何ら動機づけられない。
そうすると、相違点4に係る事項は当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明1は、甲2-1発明及び甲2-2発明のいずれかに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

よって、本件発明1は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1については、取消理由3及び4はいずれも理由がない。

イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1を引用するものである。
そして、本件発明1は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは上記アで述べたとおりであるから、本件発明2及び3も、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、本件発明2及び3については、取消理由3及び4はいずれも理由がない。

ウ 本件発明4について
本件発明4と、甲2-1発明及び甲2-2発明とを対比する。
上記アと同様の検討、及び、甲2-1発明及び甲2-1発明における、「スチレンを重合した後、ブタジエンを加えて重合し、その後カップリング剤として四塩化シリカを添加してカップリングさせ」て得た、「カップリングしたポリマーとカップリングしていないポリマーの混合物」を水素添加したポリマーの水素添加率はそれぞれ「55%」及び「65%」であって、いずれも本件発明4の成分(a)及び成分(b)中の共役ジエン単量体単位中の水素添加率である「20質量%?70質量%」に包含されることから、本件発明4と、甲2-1発明及び甲2-2発明とは、
「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%である、
ブロック共重合体組成物。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点5>
「成分(b)」について、本件発明4では、「成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が1.5以上2.5未満である成分(b-1)」を含むのに対して、甲2-1発明及び甲2-2発明では、成分(b-1)については規定がない点。

相違点5について検討する。
甲2-1発明及び甲2-2発明において、4価のカップリング剤である四塩化シリカにより「水添未カップリングポリマー」が2個カップリングすれば、本件発明4の「成分(b-1)」に相当するものが形成されるといえる。
しかしながら、甲2には、甲2-1発明及び甲2-2発明において、「水添未カップリングポリマー」が2個カップリングしたものが形成されることについては何ら記載されていないし、甲2-1発明及び甲2-2発明において、2個カップリングしたものが形成されるとする格別の根拠もない。
してみると、相違点5は実質的な相違点であり、本件発明4は、甲2-1発明及び甲2-2発明のいずれでもない。

次に、相違点5に係る事項が当業者が容易に想到し得たものであるかについて検討する。
本件発明特許明細書の【0025】の記載によれば、本件発明4は、成分(b-1)を含むことにより、優れた粘接着特性、低溶融粘度特性、高軟化点特性を有するブロック共重合体組成物が得られる傾向があるという知見に基き、成分(b-1)を含有させるものと解される。
これに対して、甲2には、甲2-1発明又は甲2-2発明において、「水添未カップリングポリマー」を2個カップリングしたものを含有させることについて何ら記載も示唆もされていないのであるから、甲2-1発明及び甲2-2発明において、「水添カップリングポリマー」に「水添未カップリングポリマー」を2個カップリングしたものを含有させ、優れた粘接着特性、低溶融粘度特性、高軟化点特性を有するブロック共重合体組成物が得るようにすることは何ら動機づけられるものではない。
してみると、相違点5に係る事項は当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明4は、甲2-1発明及び甲2-2発明のいずれかに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

よって、本件発明4は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明4については、取消理由3及び4はいずれも理由がない。

エ 本件発明5及び6について
本件発明5及び6は、本件発明4を引用するものである。
そして、本件発明4は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは上記ウで述べたとおりであるから、本件発明5及び6も、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、本件発明5及び6については、取消理由3及び4はいずれも理由がない。

オ 本件発明8?13について
本件発明8?13は、請求項1、4または7のいずれかを直接又は間接的に引用するものである。
そして、本件発明1及び4のいずれも、甲2に記載された発明でなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、上記ア及びウで述べたとおりである。
また、請求項7は、取消理由3及び4の対象ではない。
したがって、本件発明8?13については、取消理由3及び4はいずれも理由がない。

カ 本件発明14について
本件発明14と、甲2-1発明及び甲2-2発明とを対比する。
上記ア及びウで述べたものと同様にして、本件発明14と、甲2-1発明及び甲2-2発明とは、
「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%である
ブロック共重合体組成物。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点6>
「成分(b)」について、本件発明14では、成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9であるのに対して、甲2-1発明及び甲2-2発明では「水添未カップリングポリマー」、「水添カップリングポリマー」のピーク分子量がそれぞれ「6.0万、19.5万」及び「6.0万、19.6万」であるものの、成分(b-2)及び(b-3)については規定がなく、これらのGPC溶出曲線における、成分(b)の総面積に対する面積比についても記載がない点。

相違点6について検討する。
単に、4価のカップリング剤が使用され、「水添カップリングポリマー」のピーク分子量は「水添未カップリングポリマー」のピーク分子量の概略3.3倍であることのみをもって、甲2-1発明及び甲2-2発明における「水添カップリングポリマー」が4個カップリングしたもの及び3個カップリングしたものの含有量が、それぞれのGPC溶出曲線における面積比が「水添カップリングポリマー」の総面積に対しそれぞれ「0.1?0.97」及び「0.03?0.7」である程度であるとまではいうことはできないことは、上記アで記載したとおりであるが、同様の理由により、甲2-1発明及び甲2-2発明における「水添カップリングポリマー」が4個カップリングしたもの及び3個カップリングしたものの含有量が、それぞれのGPC溶出曲線における面積比が「水添カップリングポリマー」の総面積に対しそれぞれ「0.1?0.97」及び「0.03?0.9」である程度であるということもいえない。
してみると、相違点6は実質的な相違点であり、本件発明14は、甲2-1発明及び甲2-2発明のいずれでもない。

また、上記アで述べたものと同様の理由により、相違点6に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるともいえないから、本件発明14は、甲2-1発明及び甲2-2発明のいずれかに基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

よって、本件発明14は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明14については、取消理由3及び4はいずれも理由がない。

キ 本願発明15について
本件発明15は、「共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%」でなく、「70質量%を超える」点のみで、本件発明14と相違するから、本件発明15と、甲2-1発明及び甲2-2発明とは、少なくとも、上記カの相違点6と同様の相違点を有する。
そして、上記カで述べたものと同様の理由により、上記相違点6に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。
してみると、本件発明15は、甲2-1発明及び甲2-2発明のいずれかに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明15は、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明15については、取消理由4は理由がない。

ク 本件発明16について
本件発明16は、本件発明1、4、7、14及び15を直接又は間接的に引用するものである。
そして、本件発明1、4、14のいずれも、甲2に記載された発明でなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないこと及び本件発明15が、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、上記ア、ウ、カ及びキで述べたとおりである。
また、請求項7は、取消理由3及び4の対象ではなく、請求項15は、取消理由3の対象ではない。
したがって、本件発明16については、取消理由3及び4はいずれも理由がない。

(3)小括
以上のとおりであるから、取消理由3及び4はいずれも理由がない。

第6 取消理由通知書で採用しなかった特許異議申立理由及びその他の申立人の主張について

1 特許異議申立書で、申立人は以下の主張をする。
(1)主張1
請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明と、甲3及び甲5に記載された事項並びに周知技術(甲4)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明と、甲5に記載された事項及び周知技術(甲4)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(2)主張2
請求項7に係る発明は、甲2に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
(3)主張3
請求項1、2、4、8?13、16に係る発明は、甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
また、請求項14に係る発明は、甲3に記載された発明並びに甲2及び甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項15に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

2 上記主張について検討する。
(1)主張1について
本件発明2及び3は本件発明1を引用するものであるところ、本件発明1は甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明のいずれでもなく、甲1又は甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは、上記第5 1(2)ア及び2(2)アで述べたとおりである。そして、甲3、甲5及び周知技術として提示された甲4をみても、本件発明1が、甲1又は甲2に記載された発明と、甲3、甲5及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるという根拠は何ら見いだせないので、本件発明2及び3も、甲1又は甲2に記載された発明と、甲3及び甲5に記載された事項並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、主張1は採用できない。

(2)主張2について
本件発明7と、甲2-1発明及び甲2-2発明(第5 2(1)参照)とを対比する。
上記第5 2(2)アと同様の検討及び、甲2-1発明及び甲2-2発明における「ブタジエン」は本件発明7の「1,3-ブタジエン」に相当することから、本件発明7と、甲2-1発明及び甲2-2発明とは、
「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、
前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンである、
ブロック共重合体組成物。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点7>
「成分(b)」について、本件発明7では、成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9であるのに対して、甲2-1発明及び甲2-2発明では「水添未カップリングポリマー」、「水添カップリングポリマー」のピーク分子量がそれぞれ「6.0万、19.5万」及び「6.0万、19.6万」であるものの、成分(b-2)及び(b-3)については規定がなく、これらのGPC溶出曲線における、成分(b)の総面積に対する面積比についても記載がない点。

相違点7について検討する。
第5 2(2)カで述べたものと同様の理由により、相違点7は実質的な相違点であり、また、当該相違点7に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明7は、甲2-1発明及び甲2-2発明のいずれでもなく、また、甲2-1発明及び甲2-1発明のいずれかに基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、主張2は採用できない。

(3)主張3について
ア 甲3に記載された発明
甲3には、請求項1及び請求項2から、以下の発明が記載されていると認められる。
「少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共量合体(a)、及び少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体(b)からなるブロック共重合体組成物であって、(a)の割合が5?50重量%、(b)の割合が50?95重量%であり、(a)のピーク分子量が標準ポリスチレン換算で6万?12万、(b)のピ-ク分子量が標準ポリスチレン換算で1万?6万であり、更に全モノアルケニル芳香族化合物の含量が21?40重量%、及び15%トルエン溶液粘度が10?40cpsであり、ブロック共重合体(a)が、ブロック共重合体(b)を多官能カップリング剤を用いてカップリング反応によって得たカップリングポリマーである、ブロック共重合体組成物。」(以下、「甲3発明」)という。

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
甲3発明の「モノアルケニル芳香族化合物」及び「共役ジエン」は、それぞれ本件発明1の「ビニル芳香族単量体」及び「共役ジエン単量体」に相当する。
甲3発明の、ピーク分子量が「標準ポリスチレン変換で1万?6万」である「少なくとも1個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共量合体(b)」は、本件発明1の「成分(a)」に相当する。
甲3発明の「少なくとも2個のモノアルケニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共量合体(a)」は、「成分(b-2)」及び「成分(b-3)」を含むことを除いて、本件発明1の「成分(b)」に相当する。
甲3発明の「(b)の割合が50?95重量%」、「(a)の割合が5?50重量%」であることは、本件発明1の「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下」含むことに相当する。
甲3発明の「全モノアルケニル芳香族化合物の含量が21?40重量%」であることは、本件発明1の「前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%」であることに相当する。
してみると、本件発明1と甲3発明とは、
「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%である
ブロック共重合体組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点8>
「成分(b)」について、本件発明1では、成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.7であるのに対して、甲3発明では成分(b-2)、(b-3)については規定がない点。

相違点8について検討する。
甲3には、甲3発明において、ブロック共重合体(a)が、ブロック共重合体(b)に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分及びブロック共重合体(b)に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分を含むこと及びこれらのGPC溶出曲線における面積比が、ブロック共重合体(a)の総面積に対し、それぞれ、0.1?0.97及び0.03?0.7とすることについては記載も示唆もされていないから、相違点8は実質的な相違点であり、本件発明1は甲3発明ではない。

次に、相違点8に係る事項が、当業者が容易に想到し得たものであるかについて検討する。
本件特許明細書の【0023】、【0024】、【0028】及び【0029】をみると、本件発明1は、成分(b)に、成分(b-2)及び成分(b-3)を含有させ、これらの成分のGPC溶出曲線における面積比を、成分(b)の総面積に対し特定のものとして、優れた粘接着特性、低溶融粘度特性、高軟化点特性を有するブロック共重合体組成物を得ようとするものである。
これに対して、甲3発明において、仮に多官能カップリング剤として4官能のカップリング剤を使用すれば、「ブロック共重合体(b)」が3個カップリングしたもの及び4個カップリングしたものが形成されうると解されるものの、甲3には、カップリング剤として化合物が多数列挙される中に「テトラメトキシシラン」等の4官能のカップリング剤が記載されているにすぎない(【0016】)。さらに甲3には、2官能性カップリング剤が好適であることが記載され(【0016】)、4官能のカップリング剤を使用することの具体的な記載はない。
そうであれば、甲3発明において、4官能のカップリング剤を使用して、共重合体組成物のブロック共重合体(a)に、ブロック共重合体(b)に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分とブロック共重合体(b)に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分とを含有させ、さらに、これらの成分のGPC溶出曲線における面積比を、成分(b)の総面積に対しそれぞれ「0.1?0.97」及び「0.03?0.7」として、優れた粘接着特性、低溶融粘度特性、高軟化点特性を有するブロック共重合体組成物を得ることは、何ら動機づけられるものではない。
してみると、相違点8は、当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

よって、本件発明1は、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものである。
そして、本件発明1は、上記(ア)で述べたとおり、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、本件発明2も、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(ウ)本件発明4について
本件発明4と、甲3発明とを対比する。
上記(ア)と同様の検討及び甲3発明のモノアルケニル芳香族化合物の含量「21?40重量%」は、本件発明4の「10?26.3質量%」と重複することから、本件発明4と、甲3発明とは、
「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?26.3質量%である
ブロック共重合体組成物。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点9>
「成分(b)」について、本件発明4では、成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含むのに対して、甲3発明では、成分(b-2)及び(b-3)については規定がない点。

相違点9について検討する。
甲3発明には、ブロック共重合体(a)が、ブロック共重合体(b)に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分、ブロック共重合体(b)に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分を含むことについては記載も示唆もされていないから、相違点9は実質的な相違点であり、本件発明4は甲3発明ではない。

次に、相違点9に係る事項が、当業者が容易に想到し得たかについて検討する。
本件特許明細書の【0023】及び【0024】をみると、本件発明4は、成分(b)に、成分(b-2)及び成分(b-3)を含有させて、優れた粘接着特性、低溶融粘度特性、高軟化点特性を有するブロック共重合体組成物を得ようとするものである。
これに対して、甲3発明において、仮に多官能カップリング剤として4官能のカップリング剤を使用すれば「ブロック共重合体(b)」が3個カップリングしたもの及び4個カップリングしたものが形成されうると解されるものの、甲3には、カップリング剤として化合物が多数列挙される中に「テトラメトキシシラン」等の4官能のカップリング剤が記載されているにすぎないこと、2官能性カップリング剤が好適であることが記載されていることは上記(ア)で述べたとおりである。
そうであれば、甲3発明において、4官能のカップリング剤を使用し、「ブロック共重合体(a)」に、ブロック共重合体(b)に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分とブロック共重合体(b)に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分とを含有させて、優れた粘接着特性、低溶融粘度特性、高軟化点特性を有するブロック共重合体組成物を得ることは、何ら動機づけられない。
してみると、相違点9は、当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明4は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

よって、本件発明4は、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(エ)本件発明8?13について
本件発明8?13は、本件発明1、4または7のいずれかを直接又は間接的に引用するものである。
そして、本件発明1及び4のいずれも、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、上記(ア)及び(ウ)で述べたとおりである。
また、主張3は、請求項7を対象としていない。
よって、本件発明8?13も、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(オ)本件発明14について
本件発明14と甲3発明とを対比する。
上記(ア)と同様にして、本件発明14と甲3発明とは、
「成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%である
ブロック共重合体組成物。」
である点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点10>
「成分(b)」について、本件発明14では、成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9であるのに対して、甲3発明では成分(b-2)及び(b-3)については規定がない点。

相違点10について検討する。
上記(ア)と同様の理由により、甲3発明において、4官能のカップリング剤を使用して、共重合体組成物のブロック共重合体(a)に、ブロック共重合体(b)に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分とブロック共重合体(b)に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分とを含有させ、さらに、これらの成分のGPC溶出曲線における面積比を、成分(b)の総面積に対しそれぞれ「0.1?0.97」及び「0.03?0.9」として、優れた粘接着特性、低溶融粘度特性、高軟化点特性を有するブロック共重合体組成物を得ることは、何ら動機づけられるものではなく、甲2及び甲6をみても、このことは何ら覆されない。
してみると、本件発明14は、甲3に記載された発明並びに甲2及び甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。

(カ)本件発明15について
本件発明15は、「共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%」でなく、「70質量%を超える」点のみで、本件発明14と相違するから、本件発明15と、甲3発明とは、少なくとも、上記(オ)の相違点10と同様の相違点を有する。
そして、上記(オ)で述べたものと同様の理由により、上記相違点10に係る事項は当業者が容易に想到し得たものではなく、甲2をみても、このことは何ら覆されない。
してみると、本件発明15は、甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(キ)本件発明16について
本件発明16は、本件発明1、4、7、14及び15を直接又は間接的に引用するものである。
本件発明1及び4のいずれも、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないこと、本件発明14が甲3に記載された発明並びに甲2及び甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないこと、、本件発明15が甲3に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、上記(ア)、(ウ)、(カ)及び(キ)で述べたとおりである。
また、主張3は、請求項7を対象としてない。
よって、本件発明16は、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、主張3は採用できない。

3 申立人のその他の主張について
(1)平成31年4月17日に提出された意見書において、申立人は甲7を添付し、以下の主張をしている。
一般に、スチレン-イソプレンブロック共重合体においては、4分岐体の割合が大きいほど、保持力等の粘接着特性が良好となることは技術常識であるといえる(例えば甲7参照)。一方、本件特許明細書の実施例においては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体が用いられており、特許権者は「成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比を0.7以下とすることにより、優れた粘接着特性が発揮される」と主張するが、これは、技術常識から考えると、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の範囲内において効果を有するものであり、イソプレンブロック共重合体まで一般化することはできない。
したがって、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号に違反するものである。

(2)上記主張について検討するに、特許異議申立書には、申立理由として、特許法第36条第6項第1号に違反することは記載されていなかったから、上記意見書における申立人の主張及び上記意見書に添付された証拠は、特許異議申立書に記載されていなかった新たな取消理由の申立て及び証拠にあたり、採用することはできない。

(3)なお、念のため本件発明1が、特許法36条第6項第1号の規定に違反するものであるか否かについて検討する。
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な発明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決出来ると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
しかるに、本件発明1は、粘接着性能と溶融粘度のバランスに優れ、優れたタック、保持力、溶解性、及び塗工性を有する粘接着剤組成物となる、ブロック共重合体組成物を提供することを課題とするものである(【0012】)。
そして、本件特許明細書の【0039】には、「共役ジエン化合物は、共役二重結合を有するジオレフィンであれば特に限定されないが、・・・1,3-ブタジエン、イソプレン等が好ましい。」と記載され、実施例では、共役二重結合を有するジオレフィンであるブタジエンを用いたデータが具体的に示されているのだから、当業者であれば、イソプレンを使用しても上記課題が解決できると認識するものといえる。また、共役ジエン化合物としてイソプレンを使用した場合、上記課題が解決されないとする格別の理由もない。
ここで、仮に、スチレン-イソプレンブロック共重合体においては、4分岐体の割合が大きいほど、保持力等の粘接着特性が良好となることは技術常識であり、また、スチレン-ブタジエンブロック共重合体において、成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比を0.7以下とすることにより、優れた粘接着特性が発揮されるものであったとしても、これらの事項により、イソプレンを使用した場合には、粘接着性能と溶融粘度のバランスに優れ、優れたタック、保持力、溶解性、及び塗工性を有する粘接着剤組成物となる、ブロック共重合体組成物を提供するという上記課題が解決できないといえるものではない。
そうすると、本件発明1が、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであるとはいえない。

(4)よって、上記申立人の主張は採用できない。

第7 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?16に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明1?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、
前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、
前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.7である、
ブロック共重合体組成物。
【請求項2】
前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであり、
15質量%トルエン溶液における粘度が、10?90mPa・sである、請求項1に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項3】
前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであり、
15質量%トルエン溶液における粘度が、90mPa・sを超え、600mPa・s以下である、請求項1に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項4】
成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?26.3質量%であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が1.5以上2.5未満である成分(b-1)をさらに含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%である、
ブロック共重合体組成物。
【請求項5】
前記成分(b-1)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.6以下である、請求項4に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項6】
前記成分(b-1)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.2以下である、請求項4に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項7】
成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、
前記共役ジエン単量体が、1,3-ブタジエンであり、
前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、
前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9である、
ブロック共重合体組成物。
【請求項8】
前記成分(b)の重量平均分子量が、60,000以上、600,000以下である、請求項1?7のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項9】
前記成分(a)が、(A-B)及び/又は(A-B)X(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示す。)によって表されるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、(A-B)_(3)X及び式(A-B)_(4)X(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示す。)によって表されるブロック共重合体である、
請求項1?8のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項10】
前記成分(a)が、(A-B)及び/又は(A-B)X(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示す。)によって表されるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、(A-B)_(2)X、(A-B)_(3)X、及び式(A-B)_(4)X(Aは重合体ブロック(A)を示し、Bは重合体ブロック(B)を示し、Xはカップリング剤の残基又は重合開始剤の残基を示す。)によって表されるブロック共重合体である、
請求項1?8のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項11】
前記成分(a)の含有量が、50質量%以上、75質量%以下であり、
前記成分(b)の含有量が、25質量%以上、50質量%以下である、請求項1?10のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項12】
前記成分(a)の含有量が、70質量%以上、90質量%以下であり、
前記成分(b)の含有量が、10質量%以上、30質量%以下である、請求項1?10のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項13】
前記成分(a)の含有量が、50質量%以上、70質量%未満であり、
前記成分(b)の含有量が、30質量%を超え、50質量%以下である、請求項1?10のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項14】
成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、20質量%?70質量%であり、
前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、
前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9である、
ブロック共重合体組成物。
【請求項15】
成分(a)を50質量%以上、90質量%以下、成分(b)を10質量%以上、50質量%以下含み、
前記成分(a)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有し、重量平均分子量が30,000以上、150,000以下であるブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体であり、
前記成分(b)が、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が2.5以上3.4未満である成分(b-2)、及び、前記成分(a)の重量平均分子量に対する重量平均分子量比が3.4以上4.5未満である成分(b-3)を含み、
前記成分(a)及び前記成分(b)中のビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記成分(a)及び前記成分(b)の総量に対して、10?50質量%であり、
前記成分(a)及び前記成分(b)中の前記共役ジエン単量体単位中の水素添加率が、70質量%を超え、
前記成分(b-2)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.1?0.97であり、
前記成分(b-3)のGPC溶出曲線における面積比が、前記成分(b)の総面積に対し、0.03?0.9である、
ブロック共重合体組成物。
【請求項16】
請求項1?15のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物:100質量部と、
粘着付与剤:50?400質量部と、
軟化剤:10?200質量部と、
を、含有する、粘接着剤組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-06-14 
出願番号 特願2015-559113(P2015-559113)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤本 保  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 井上 猛
海老原 えい子
登録日 2018-03-02 
登録番号 特許第6297071号(P6297071)
権利者 旭化成株式会社 日本エラストマー株式会社
発明の名称 ブロック共重合体組成物及び粘接着剤組成物  
代理人 内藤 和彦  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 竹内 工  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 竹内 工  
代理人 江口 昭彦  
代理人 江口 昭彦  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 江口 昭彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  
代理人 竹内 工  

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