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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1354064
異議申立番号 異議2017-700953  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-04 
確定日 2019-06-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6110511号発明「自己折り畳み式ブロー成形プラスチック薄肉容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6110511号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?36〕について訂正することを認める。 特許第6110511号の請求項1、3?6、12?20、24?30、33に係る特許を取り消す。 特許第6110511号の請求項2、7?11、21?23、31、32、34?36についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6110511号(以下「本件特許」という。)の請求項1?36に係る特許についての出願は、平成24年12月28日を国際出願日とする特許出願であって、平成29年3月17日にその特許権の設定登録がされ(平成29年4月5日特許掲載公報発行)、その後、平成29年10月4日に特許異議申立人ジュネスプロパティーズ株式会社(以下「異議申立人」という。)より請求項1?36に対して特許異議の申立てがされ、平成30年1月15日付けで取消理由が通知され、平成30年5月30日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成30年7月20日に異議申立人から意見書が提出され、平成30年8月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成30年11月30日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)がされ、平成31年1月8日に異議申立人から意見書が提出されたものである。なお、平成30年5月30日付けでなされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1?24からなるものである。それぞれの訂正事項について、訂正箇所に下線を付して示すと次のとおりである。

ア.訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「縦軸(64)に沿って延びるプラスチック薄肉容器(1)は、
頂部と、
管状本体部分(6)と、
上記頂部と対向する底部構造(7)と、
上記容器が空になっていく期間には、上記容器は自己折り畳み可能であり、
上記容器は、少なくとも2つの横断する溝(6.1)を含み、
上記管状本体部分(6)の平均壁厚(T_(mean))は、200μm以下であることを特徴とする、プラスチック薄肉容器(1)。」とあるのを、
「縦軸(64)に沿って延びるプラスチック薄肉容器(1)は、
頂部と、
管状本体部分(6)と、
上記頂部と対向する底部構造(7)と、を備え、
上記管状本体部分(6)は、円筒状の側壁を含み、
上記容器は、少なくとも2つの横断する溝(6.1)を含み、
上記少なくとも2つの横断する溝(6.1)は、上記管状本体部分(6)に位置しており、かつ、上記円筒状の側壁に円形の弧(60)を介して連結された2つのまっすぐな分岐(58)を有するV形状の断面を有し、
上記管状本体部分(6)の平均壁厚(T_(mean))は、65?150μmであり、
上記プラスチック薄肉容器(1)が逆さまになって空になっていく期間に、上記容器は、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なく、自己折り畳み可能であることを特徴とする、プラスチック薄肉容器(1)。」に訂正する。請求項1の記載を引用する請求項3?6、12?20、24?30、33についても、同様に訂正する。

イ.訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ.訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、「上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、少なくとも2つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のプラスチック薄肉容器(1)。」とあるのを、「上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、少なくとも2つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック薄肉容器(1)。」に訂正する。

エ.訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に、「上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、少なくとも4つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のプラスチック薄肉容器(1)。」とあるのを、「上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、少なくとも4つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック薄肉容器(1)。」に訂正する。

オ.訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、「上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、4?8つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のプラスチック薄肉容器(1)。」とあるのを、「上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、4?8つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック薄肉容器(1)。」に訂正する。

カ.訂正事項6
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7を削除する。

キ.訂正事項7
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8を削除する。

ク.訂正事項8
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9を削除する。

ケ.訂正事項9
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10を削除する。

コ.訂正事項10
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11を削除する。

サ.訂正事項11
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12に、
「フープ延伸比率(hoop stretch ratio)が4.0?6.5であり、
軸延伸比率(axial stretch ratio)が2.8?5.0であり、
全体延伸比率(overall stretch ratio)が11.20?32.5であることを特徴とする、請求項1?11のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。」とあるのを、
「フープ延伸比率(hoop stretch ratio)が4.0?6.5であり、
軸延伸比率(axial stretch ratio)が2.8?5.0であり、
全体延伸比率(overall stretch ratio)が11.20?32.5であることを特徴とする、請求項1、3?6のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。」に訂正する。

シ.訂正事項12
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項14に、
「当該容器は、ボトル(1)であり、上記頂部は、
ネック端部(2)と、
ネック支持リング(3)と、
ネック(4)と、
上記管状本体部分(6)に上記ネック(4)を結合させる肩部(5)とを含むことを特徴とする、請求項1?13のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。」とあるのを、
「当該容器は、ボトル(1)であり、上記頂部は、
ネック端部(2)と、
ネック支持リング(3)と、
ネック(4)と、
上記管状本体部分(6)に上記ネック(4)を結合させる肩部(5)とを含むことを特徴とする、請求項1、3?6、12、13のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。」に訂正する。

ス.訂正事項13
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項15に、「満タンの時に、少なくとも2リットルの容量を有することを特徴とする、請求項1?14のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。」とあるのを、「満タンの時に、少なくとも2リットルの容量を有することを特徴とする、請求項1、3?6、12?14のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。」に訂正する。

セ.訂正事項14
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項21を削除する。

ソ.訂正事項15
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項22を削除する。

タ.訂正事項16
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項23を削除する。

チ.訂正事項17
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項24に、「上記プラスチックは、伸びた際に歪硬化を示すポリマーの中から選ばれることを特徴とする、請求項1?23のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。」とあるのを、「上記プラスチックは、伸びた際に歪硬化を示すポリマーの中から選ばれることを特徴とする、請求項1、3?6、12?20のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。」に訂正する。

ツ.訂正事項18
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項28に、「上記薄肉容器(1)の上記頂部内および上記底部構造(7)内の少なくとも一方に存在する、少なくとも1つの末端引っ込み式部分(2,3,4,5)(9)を含むことを特徴とする、請求項1?27のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。」とあるのを、「上記薄肉容器(1)の上記頂部内および上記底部構造(7)内の少なくとも一方に存在する、少なくとも1つの末端引っ込み式部分(2,3,4,5)(9)を含むことを特徴とする、請求項1、3?6、12?20、24?27のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。」に訂正する。

テ.訂正事項19
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項31を削除する。

ト.訂正事項20
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項32を削除する。

ナ.訂正事項21
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項33に、
「請求項1?30のいずれかに記載の薄肉容器(1)に含まれる液体を分配するための方法であって、
1.満タンの薄肉容器(1)が上記液体の流れを制御するための少なくともバルブ(530)を含むディスペンサー(500)に逆さまに配置され、
2.上記液体を分配するよう制御するためのバルブ(530)は開いており、
3.上記液体は流出し、上記薄肉容器(1)は自己折り畳みし、
4.上記液体の流れを制御するためのバルブ(530)は、流れを止めるよう閉じられ、自己折り畳みし、
5.上記自己折り畳みした薄肉容器(1)は、ディスペンサー(500)から取り外され、上記自己折り畳みした薄肉容器(1)が液体を分配しなくなると、満タンの薄肉容器(1)に取り換えられる、方法。」とあるのを、
「請求項1、3?6、12?20、24?30のいずれかに記載の薄肉容器(1)に含まれる液体を分配するための方法であって、
1.満タンの薄肉容器(1)が上記液体の流れを制御するための少なくともバルブ(530)を含むディスペンサー(500)に逆さまに配置され、
2.上記液体を分配するよう制御するためのバルブ(530)は開いており、
3.上記液体は流出し、上記薄肉容器(1)は、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なく、自己折り畳みし、
4.上記液体の流れを制御するためのバルブ(530)は、流れを止めるよう閉じられ、自己折り畳みし、
5.上記自己折り畳みした薄肉容器(1)は、ディスペンサー(500)から取り外され、上記自己折り畳みした薄肉容器(1)が液体を分配しなくなると、満タンの薄肉容器(1)に取り換えられる、方法。」に訂正する。

ニ.訂正事項22
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項34を削除する。

ヌ.訂正事項23
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項35を削除する。

ネ.訂正事項24
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項36を削除する。

(2)一群の請求項
本件訂正前の請求項1及び同請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?36は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1?24による訂正は当該一群の請求項1?36に対してなされたものである。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1
訂正事項1による一つめの訂正(以下「訂正事項1-1」という。)は、訂正前の請求項1における「管状本体部分(6)」が、「平均壁厚(T_(mean))は、200μm以下」であるということを、「円筒状の側壁を含み」「平均壁厚(T_(mean))は、65?150μm」であると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1-1による訂正は、本件特許明細書の段落【0052】の「(成形)プラスチック薄肉容器(例えばボトル)の注目すべき特徴によれば、管状本体部分は、実質的に円筒状、多面体または実質的な平面およびカーブ面を含み、好ましくは実質的にカーブ面に連結された平面が含まれる。」との記載、段落【0071】の「・・・2つの端(58)は、実質上、薄肉ボトル(1)の円筒状の側壁に・・・」との記載、【図1】において管状本体部分(6)が円筒状の側壁部を有していると解されること、及び、本件訂正前の【請求項10】の「上記管状本体部分(6)の平均壁厚(T_(mean))は、65?150μmである・・・」との記載からみて、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項1による二つめの訂正(以下「訂正事項1-2」という。)は、訂正前の請求項1における「少なくとも2つの横断する溝(6.1)」が、「上記管状本体部分(6)に位置しており、かつ、上記円筒状の側壁に円形の弧(60)を介して連結された2つのまっすぐな分岐(58)を有するV形状の断面を有」するものであると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1-2による訂正は、本件訂正前の【請求項2】の「上記少なくとも2つの横断する溝(6.1)は、上記管状本体部分(6)に位置している・・・」との記載、本件特許明細書の段落【0071】の「上記図、特には、図1AAに図示された実施の形態においては、薄肉ボトル(1)の溝(61)の各々は、V形状の断面を有し、さらに特には、同じ平面にある2つの端(58)および2つの端(58)の間の中間部分を有し、上記中間部分は、上記2つの端に対して、内側にシフトされた頂点(56)を示す。2つの端(58)は、実質上、薄肉ボトル(1)の円筒状の側壁に円形の弧(60)を介して連結されたV形状の2つのまっすぐな分岐(58)である。・・・」との記載、及び【図1】において溝(6.1)が管状本体部分(6)に位置し、かつ、円筒状の側壁に円形の弧(60)を介して連結された2つのまっすぐな分岐(58)を有するV形状の断面を有していると解されることからみて、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項1による三つめの訂正(以下「訂正事項1-3」という。)は、訂正前の請求項1における「上記容器が空になっていく期間には、上記容器は自己折り畳み可能」であるということを、「上記プラスチック薄肉容器(1)が逆さまになって空になっていく期間に、上記容器は、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なく、自己折り畳み可能」であるということに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1-3による訂正は、本件特許明細書の段落【0026】の「7.(ブロー)成形型プラスチック薄肉容器、好ましくは容器が完全に空になるまで、逆さまの位置で吐き出している間(spilling)に自己折り畳み可能である液体(例えば、水)分配において使用される容器を提供すること。」との記載、段落【0033】の「空になっていく間、容器の自己折り畳みは、任意の案内(容器は自己支持である)および/または任意の追加の力(バラスト)なく、注目に値する魅力的な特徴である。・・・」及び段落【0110】の「・・・さらに、逆さまに設置されたボトル(1)は、図5Aに図示されているように、バルブ(530)を開けることにより、ディスペンサー(500)から上記液体(例えば、水)がサンプリングされる時、機械的な維持力(セルフサポート)および自己折り畳みが維持される。」との記載からみて、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ.訂正事項2
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.訂正事項3
訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1または2を引用するものであったところ、本件訂正により削除された請求項2を引用しないとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ.訂正事項4
訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1または2を引用するものであったところ、本件訂正により削除された請求項2を引用しないとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

オ.訂正事項5
訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1または2を引用するものであったところ、本件訂正により削除された請求項2を引用しないとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

カ.訂正事項6
訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

キ.訂正事項7
訂正事項7による訂正は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ク.訂正事項8
訂正事項8による訂正は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ケ.訂正事項9
訂正事項9による訂正は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

コ.訂正事項10
訂正事項10による訂正は、訂正前の請求項11を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

サ.訂正事項11
訂正事項11による訂正は、訂正前の請求項12が訂正前の請求項1?11のいずれかを引用するものであったところ、本件訂正により削除された請求項2、7?11を引用しないとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

シ.訂正事項12
訂正事項12による訂正は、訂正前の請求項14が訂正前の請求項1?13のいずれかを引用するものであったところ、本件訂正により削除された請求項2、7?11を引用しないとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ス.訂正事項13
訂正事項13による訂正は、訂正前の請求項15が訂正前の請求項1?14のいずれかを引用するものであったところ、本件訂正により削除された請求項2、7?11を引用しないとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

セ.訂正事項14
訂正事項14による訂正は、訂正前の請求項21を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ソ.訂正事項15
訂正事項15による訂正は、訂正前の請求項22を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

タ.訂正事項16
訂正事項16による訂正は、訂正前の請求項23を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

チ.訂正事項17
訂正事項17による訂正は、訂正前の請求項24が訂正前の請求項1?23のいずれかを引用するものであったところ、本件訂正により削除された請求項2、7?11、21?23を引用しないとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ツ.訂正事項18
訂正事項18による訂正は、訂正前の請求項28が訂正前の請求項1?27のいずれかを引用するものであったところ、本件訂正により削除された請求項2、7?11、21?23を引用しないとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

テ.訂正事項19
訂正事項19による訂正は、訂正前の請求項31を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ト.訂正事項20
訂正事項20による訂正は、訂正前の請求項32を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ナ.訂正事項21
訂正事項21による一つめの訂正(以下「訂正事項21-1」という。)は、訂正前の請求項33が訂正前の請求項1?30のいずれかを引用するものであったところ、本件訂正により削除された請求項2、7?11、21?23を引用しないとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、また、新規事項を追加するものではなく、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

訂正事項21による二つめの訂正(以下「訂正事項21-2」という。)は、訂正前の請求項33における「上記液体は流出し、上記薄肉容器(1)は自己折り畳みし、」ということを、「任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なく」行われると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項21-2による訂正は、本件特許明細書の段落【0033】の「空になっていく間、容器の自己折り畳みは、任意の案内(容器は自己支持である)および/または任意の追加の力(バラスト)なく、注目に値する魅力的な特徴である。・・・」との記載からみて、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ニ.訂正事項22
訂正事項22による訂正は、訂正前の請求項34を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ヌ.訂正事項23
訂正事項23による訂正は、訂正前の請求項35を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ネ.訂正事項24
訂正事項24による訂正は、訂正前の請求項36を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)小括
したがって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?36〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求が認められたことにより、本件特許の請求項1?36に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?36に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
縦軸(64)に沿って延びるプラスチック薄肉容器(1)は、
頂部と、
管状本体部分(6)と、
上記頂部と対向する底部構造(7)と、を備え、
上記管状本体部分(6)は、円筒状の側壁を含み、
上記容器は、少なくとも2つの横断する溝(6.1)を含み、
上記少なくとも2つの横断する溝(6.1)は、上記管状本体部分(6)に位置しており、かつ、上記円筒状の側壁に円形の弧(60)を介して連結された2つのまっすぐな分岐(58)を有するV形状の断面を有し、
上記管状本体部分(6)の平均壁厚(T_(mean))は、65?150μmであり、
上記プラスチック薄肉容器(1)が逆さまになって空になっていく期間に、上記容器は、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なく、自己折り畳み可能であることを特徴とする、プラスチック薄肉容器(1)。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、少なくとも2つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項4】
上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、少なくとも4つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項5】
上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、4?8つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項6】
上記折り畳みスターターは、上記薄肉容器(1)の上記縦軸(64)に垂直な軸を中心に湾曲し、上記薄肉容器(1)の上記縦軸(64)に平行な軸を中心に曲折し、外側に突出する頂点を有していることを特徴とする、請求項3?5のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【請求項12】
フープ延伸比率(hoop stretch ratio)が4.0?6.5であり、
軸延伸比率(axial stretch ratio)が2.8?5.0であり、
全体延伸比率(overall stretch ratio)が11.20?32.5であることを特徴とする、請求項1、3?6のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項13】
フープ延伸比率(hoop stretch ratio)が4.2?6.0であり、
軸延伸比率(axial stretch ratio)が3.0?4.5であり、
全体延伸比率(overall stretch ratio)が12.6?27.0であることを特徴とする、請求項12に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項14】
当該容器は、ボトル(1)であり、上記頂部は、
ネック端部(2)と、
ネック支持リング(3)と、
ネック(4)と、
上記管状本体部分(6)に上記ネック(4)を結合させる肩部(5)とを含むことを特徴とする、請求項1、3?6、12、13のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項15】
満タンの時に、少なくとも2リットルの容量を有することを特徴とする、請求項1、3?6、12?14のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項16】
上記容量は、少なくとも3リットルであることを特徴とする、請求項15に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項17】
上記容量は、少なくとも5リットルであることを特徴とする、請求項15に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項18】
上記容量は、2?20リットルの範囲であることを特徴とする、請求項15に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項19】
上記容量は、7.5?12.5リットルの範囲であることを特徴とする、請求項15に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項20】
上記折り畳みスターター(6.2)は、上記薄肉容器(1)の上記縦軸(64)に対して、外側に伸びるピン(pin)であることを特徴とする、請求項3?6のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項21】(削除)
【請求項22】(削除)
【請求項23】(削除)
【請求項24】
上記プラスチックは、伸びた際に歪硬化を示すポリマーの中から選ばれることを特徴とする、請求項1、3?6、12?20のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項25】
上記プラスチックは、ポリエステル類から選ばれることを特徴とする、請求項24に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項26】
上記プラスチックは、芳香族ポリエステル類から選ばれることを特徴とする、請求項24に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項27】
上記プラスチックは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)またはポリプロピレンテレフタレート(PPT)から構成されるグループの中から選ばれることを特徴とする、請求項24に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項28】
上記薄肉容器(1)の上記頂部内および上記底部構造(7)内の少なくとも一方に存在する、少なくとも1つの末端引っ込み式部分(2,3,4,5)(9)を含むことを特徴とする、請求項1、3?6、12?20、24?27のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項29】
上記末端引っ込み式部分は、少なくとも1つの引っ込みスターター(5.1,7.1)を含むことを特徴とする、請求項28に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項30】
少なくとも1つの引っ込みスターター(5.1,7.1)は、溝、折り畳み線および突起のうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項29に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項31】(削除)
【請求項32】(削除)
【請求項33】
請求項1、3?6、12?20、24?30のいずれかに記載の薄肉容器(1)に含まれる液体を分配するための方法であって、
1.満タンの薄肉容器(1)が上記液体の流れを制御するための少なくともバルブ(530)を含むディスペンサー(500)に逆さまに配置され、
2.上記液体を分配するよう制御するためのバルブ(530)は開いており、
3.上記液体は流出し、上記薄肉容器(1)は、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なく、自己折り畳みし、
4.上記液体の流れを制御するためのバルブ(530)は、流れを止めるよう閉じられ、自己折り畳みし、
5.上記自己折り畳みした薄肉容器(1)は、ディスペンサー(500)から取り外され、上記自己折り畳みした薄肉容器(1)が液体を分配しなくなると、満タンの薄肉容器(1)に取り換えられる、方法。
【請求項34】(削除)
【請求項35】(削除)
【請求項36】(削除)

(2)取消理由の概要
当審において、訂正前の請求項1?36に係る発明の特許に対して、平成30年8月30日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

本件特許の請求項1、3?6、12?20、24?30、33に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<刊行物等一覧>
甲1.特開2010-42859号公報
甲2.特開平10-85639号公報
甲3.特開平7-172424号公報
甲6.特開平11-34153号公報
甲9.米国特許第5584413号明細書
甲10.特開2008-7181号公報
甲11.国際公開第2011/061343号
甲1等は、各々、特許異議申立書に添付された甲第1号証等である。

本件特許の請求項1、3?6、12?20、24?30、33に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2、3、6、9?11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)当審の判断
ア.頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明
a.甲1について
甲1には、図面と共に、以下の記載がある。
(a)「【0002】
・・・そこで、家庭やオフィスにウォーターサーバーと呼ばれる装置を設置して、この装置に専用のボトルを取り付けて、いつでも簡単に良質の飲料水を得られるサービスが展開されている。このボトルは、交換頻度を減らすため大容量とすべきだが、交換時の取り扱いも考慮する必要があり、10リットルから15リットルの製品が広く普及している。」

(b)「【0011】
本実施の形態のボトルを上方から見た場合、その形状は正方形、長方形、円形など自在だが、正方形などの場合、角部は、変形を容易にするため円弧を介在させて二面を滑らかに結ぶ。またボトル全体の素材としては、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)を用いている。PET樹脂は常温において無臭であり、内部に充填された液体に臭いが移る恐れがなく、しかもポリエチレン樹脂よりも硬質であり、液体が充填された状態でも大きく変形することはなく、自立的に形状を維持できる。」

(c)「【0015】
このように裾絞り部は、垂直に延在するのではなく、裾絞り状に傾斜している。ただし蛇腹部との接続部などは、局地的に垂直に延在していても構わない。このように傾斜した裾絞り部を設けることで、この部分に作用する大気圧がボトルの中心に向かうため、内部の液体の排出に伴って、裾絞り部がボトルの内部に陥没するように変形していく。」

(d)「【0023】
図1は、本実施の形態のボトル10の形状を示している。このボトル10は、上から見てほぼ正方形状で、下方に位置する底部11、側面を取り囲む胴部12、上面を覆う肩部14、肩部14の中心から円柱状に突出する首部13から構成され、首部13には密封のためのキャップ31が取り付けられている。底部11は、文字通りボトル10の底となる部分であり、単純な板状で、その外縁から壁状の胴部12が上方に突出している。胴部12は、底部11寄りの裾絞り部24と、この上の蛇腹部21で構成され、裾絞り部24は、底部11に近づくに連れて断面が絞り込まれている。また蛇腹部21は、複数の蛇腹22が上下に積層された構造で、個々の蛇腹22が押し潰されることで、蛇腹部21の高さが減少する。」

(e)「【0024】
胴部12の上には、ボトル10を覆う肩部14が形成されている。肩部14は、首部13に向けて突出する角錐状になっており、その強度を向上するため、複数のリブ23が形成されている。なお底部11から首部13までのボトル10全体は、PET樹脂を素材として一体的に製造されているが、キャップ31は密封性を確保する必要があり、他の素材を使用している。キャップ31の側面には割り溝32が形成されており、これを引き裂くことで、首部13からキャップ31だけを離脱できる構造になっている。」

(f)「【0026】
また図2(B)のように、ボトル10は上から順に、首部13、肩部14、胴部12、底部11によって構成され、肩部14の下の胴部12は、単にボトル10の側面を取り囲んでいるだけではなく、蛇腹部21や裾絞り部24が形成されている。なお肩部14と胴部12との境界は円弧によって滑らかに結ばれているが、この円弧部分は肩部14の範囲とする。蛇腹部21は、縦断面から見て「く」の字状に屈曲した蛇腹22が計六列並んでおり、押し潰しやすい構造になっている。」

(g)「【0028】
・・・図3(A)に示すように、肩部14および胴部12を構成する樹脂の厚さは同一だが、蛇腹部21は上下方向に対する伸縮性が向上しており、諸条件が揃えばボトル10の体積は縮小していく。・・・」

(h)「【0029】
図4は、本実施の形態のボトル10をウォーターサーバーSに取り付けた状態を示しており、図4(A)はボトル10を取り付けた初期段階で、図4(B)は液体Wが消費され始めた段階である。本実施の形態のボトル10は、図1などに示すように底部11を床面に接触させて保管するが、ウォーターサーバーSに取り付ける際は、上下を反転させて首部13を下に向ける。なお本図ではウォーターサーバーSの具体的な構造を描いていないが、中央にはボトル10から液体Wを取り出すためのパイプPを備えており、またボトル10の肩部14を載置するための支持台Hも備えている。そしてボトル10には、良質の地下水などの各種液体Wを充填するが、その際、ある程度の空気Aを残留させておく。この空気Aは、衛生面に十分な配慮がされており、液体Wを劣化させることはない。したがって図4(A)の初期段階においても、裾絞り部24の大半は空気Aで満たされることになる。」

(i)「【0031】
図4(A)の初期段階の後、液体Wが徐々に消費されていく際、その消費分に対して外部から空気が入り込むことはない。したがってボトル10は大気圧によって押し潰されていく。ところが、ボトル10の内部にはまだ多量の液体Wがあり、その自重によって大気圧に対する反力が発生する。そのため、液面よりも上の部分が最も押し潰されやすく、図4(B)のように底部11が陥没するように変形が進んでいく。」

(j)「【0032】
図5は、図4の後の状態を示しており、図5(A)は液体Wの約半分が消費された段階で、図5(B)はほぼ全量が消費された段階である。図5(A)では液面が蛇腹部21のほぼ中央に達しており、液面よりも上に位置する蛇腹22は、大気圧によって押し潰されており、さらに底部11も蛇腹部21の内部に引き込まれている。その後、液体Wの消費と共に蛇腹部21がさらに潰れていき、最終的には図5(B)のように蛇腹部21が完全に押し潰され、且つ蛇腹部21の内部に底部11や裾絞り部24が引き込まれており、容積が大きく減少する。」

(k)【図1】

(l)【図2】

(m)【図3】

(n)【図4】

(o)【図5】

ここで、記載(b)より、ボトルを上方から見た場合の形状が、円形であるボトルが把握される。また、記載(c)より、裾絞り部のうち、蛇腹部との接続部が垂直に延在するボトルが把握される。そこで、記載(b)及び(c)を合わせると、裾絞り部(胴部の一部である)のうち、蛇腹部との接続部が、円筒形状の側壁であるボトルが把握される。

したがって、甲1には、以下の発明が記載されている(以下「甲1発明」という。)。
「縦軸に沿って延びるPET樹脂製のウォーターサーバー用ボトル10は、
首部13及び肩部14と、
胴部12と、
上記首部13及び肩部14と対向する底部11と、を備え、
上記胴部12は、円筒状の側壁を含み、
上記容器は、少なくとも2つの横断する蛇腹22を含み、
上記少なくとも2つの横断する蛇腹22は、上記胴部12に位置しており、かつ、「く」の字状の断面を有し、
上記ボトル10が逆さまになって空になっていく期間に、上記ボトル10は、大気圧によって押し潰されることで、自己折り畳み可能であることを特徴とする、ボトル10。」

b.甲2について
甲2には、図面と共に以下の記載がある。
(a)「【0003】このような状況から、近年、図6に示す様なカートリッジ式の薬液容器を用いる薬液散布機が開発されている。」

(b)「【0004】図6において101は薬液散布機の本体、102は薬液散布機101側に設けられたソケット、103は噴射ノズル、104は薬液容器本体、105は薬液容器本体104側に設けられ、ソケット102に装着されるスパウト、106はスパウト105の流出口の開閉を行うためのハンドルレバーである。」

(c)「【0016】本発明に係る成形容器1は、胴部13の平均肉厚が0.05?0.20mmの範囲内に成形される。胴部13の平均肉厚が0.05mm未満では、強度的に十分ではなく、運搬時等における落下を想定した高さ(1.2?1.5m程度)からの落下により破袋し易く、更には、容器内に残液が発生し易い。一方、胴部13の平均肉厚が0.20mmを超えると、一般的な噴霧ポンプによる吸引力では潰れにくくなり、薬液の適正な排出が阻害され易く、特に通常用いられているPETボトルの肉厚(0.3mm程度)に近付くと、薬液を最後まで排出できなくなる。」

(d)「【0025】
【実施例】
[実施例1?6及び比較例1,2]図1に示したような成形容器1を、図2に示したようなポリエチレンテレフタレートからなる有底パリソン21を2軸延伸ブロー成形して、複数個形成した。各成形容器につき、胴部12の10箇所において肉厚を測定した。また、各成形容器に水を満たし、薬液散布機による吸引テストを行った。また、1.5mの高さからコンクリート面に最大5回落下させ、落下による破袋実験を行った。これらの結果を表1に示す。」

(e)「【0026】
【表1】
胴部12の平均肉厚(mm) 破袋までの落下回数 吸引結果
実施例1 0.05 3 △
実施例2 0.07 破袋なし ○
実施例3 0.09 破袋なし ○
実施例4 0.12 破袋なし ○
実施例5 0.15 破袋なし ○
実施例6 0.18 破袋なし ○
比較例1 0.04 1 X
比較例2 0.25 破袋なし X△

○:残液が殆ど無い
△:肩部に若干残液が発生
X△:容器が潰れにくく、吸引がスムーズに行えない
X:肩部が先に潰れてしまい、胴部に多量の残液が発生
表1に示したように、胴部の平均肉厚が0.05?0.20mmの範囲の本発明による成形容器では、落下衝撃に強く、且つ吸引を良好に行うことができた。」

(f)【図6】


したがって、甲2には、以下の事項が記載されている(以下「甲2-1事項」という。)。
「成形容器1において、胴部の平均肉厚を0.05?0.20mmの範囲とすることにより、薬液の排出に伴い容器が潰れやすくなり、薬液の適正な排出が阻害されなくなる。」

また、甲2には、図面と共に以下の記載もある。
(g)「【0014】本成形容器1は、図2に示すような首部11が予め形成された有底パリソン21をブロー成形して形成される。具体的には、例えば合成樹脂製の有底パリソン21を射出成形した後、首部11に形成されたフランジ22の下側部分をブロー金型内で一定温度に保ちながら縦方向に機械的に延伸し、同時にあるいは逐次に加圧空気を吹き込んで、図中の一点鎖線で示すように周方向に膨らませて形成することができる。」

(h)「【0024】また、本発明に係る成形容器1は、図5に示すように、紙(例えば段ボール)製等の外箱51に収容して、ボトルインボックスの形態で使用することが好ましい。この場合、首部11のフランジ22より先の部分が外箱51の外部に突出され、これにスパウトが連結される。また、薬液散布機本体のソケット102(図6参照)への装着を容易にするため、スパウトが動きにくい状態で外箱51から突出した構造としておくことが好ましい。具体的には、例えばスパウトの先端部分にもフランジを設け、成形容器の首部11とスパウトとを連結した状態で互いのフランジ間に外箱を挟み込む構成を取ることができる。」

(i)【図1】

(j)【図2】


したがって、甲2には、以下の事項も記載されている(以下「甲2-2事項」という。)。
「ブロー成形で形成される成形容器1において、首部11と肩部12との間に、フランジ22を備えること。」

c.甲3について
甲3には、図面と共に以下の記載がある。
(a)「【0038】図12から図14の実施態様において、ボトルの畝は、先と同様、ボトルの内側を向いた丸い先端を有し、環状の円弧を介してボトルの柱状の側壁と結合するV形状の2つの直線の分岐を持つV型の断面を有する。そしてこの実施態様では、各畝10は、折り曲げ開始部62を有する。折り曲げ開始部はボトルの長手方向軸64に関して角度が均一に分布しており、ボトルの外側に向かって畝の底から突起している。畝はこの折り曲げ開始部から一定の深さで離れている。」

(b)「【0039】折り曲げ開始部62の形状は、下記のように定義される。図14の平面ではカーブしている。例えば、環状の円弧で、カーブの凹部側がボトルの内側を向いている。各開始部はボトルの軸を含む対照な中央平面66を有する。同じ畝10の2つの連続した折り曲げ開始部の中央平面66は、2π/n(但しnは畝毎の折り曲げ開始部の数)の角度をなす。」

(c)「【0040】ボトル軸64に関する各折り曲げ開始部の角度は、0.2ラジアンから2π/n(ただしnは畝毎の折り曲げ開始部の数を表す)の範囲の角度εを有する。ボトルの軸を含む対照な中央平面66において、各折り曲げ開始部62は畝の2つの側面58の開始線又は隆起線68によって規定される。開始線又は隆起線69は畝の2つの側面の間に延び、環状の円弧70によって側面の1つに結合する。円弧70は、凹部側が外側を向き、半径が約0.5mmから開始線68及び畝の側面58の接線方向にある環状の円弧の半径までの範囲にある。」

(d)「【0041】開始線又は隆起線68は、屈曲部分の最小半径の丸い部分72を介して畝の他の側面58と結合する直線である。この結合線は、ボトルの軸に直角な平面において屈曲した形状をなしている。開始線又は隆起線68は、ボトルの長手軸に関して0°から45°の角度γで傾いている。」

(e)「【0042】畝10の中央平面74の折り曲げ開始部62の放射度λは、実質的に等しいか又は畝10の深さの半分よりもわずかに小さい(放射度λは畝の底56と、隆起線68と畝の中央平面74の交差点との間の距離)。一つの畝からの他の畝まで、折り曲げ開始部62はπ/n(ただしnは畝毎の折り曲げ開始部の数を表す)の角度でずれている。」

(f)「【0043】上記のnの数は、典型的には3から20の範囲である。図12及び図13の例では、折り曲げ開始部の隆起線68は、下方及び外側へ傾いている。しかし、ボトルの軸に略直角に示される方向と対照な方向でもよい。図15に示される例では、上記の折り曲げ開始部62は屈曲又は弓状をなさず、まっすぐな側面からなるV形状の非常に平らな頂点を持ち、各V形状の頂点は対応する開始部の対照平面66、即ちボトルの軸64を含む平面にある。」

(g)【図12】

(h)【図13】

(i)【図14】


したがって、甲3には、以下の事項が記載されている(以下「甲3事項」という。)。
「ボトルにおいて、
ボトルの畝のいくつかは、3から20個の折り曲げ開始部62が備えられており、
折り曲げ開始部62は、ボトルの縦軸に垂直な軸を中心に湾曲し、ボトルの縦軸に平行な軸を中心に曲折し、外側に突出する頂点を有していること。」

d.甲6について
甲6には、図面と共に以下の記載がある。
(a)「【0010】すなわち本発明は(A)ポリエチレンテレフタレートと、(B)ポリエチレンナフタレートを、(A)と(B)の合計に対するエチレンナフタレート成分比率5?15モル%で含み、且つ固有粘度が0.70(dl/g)以上のポリエステル樹脂組成物からなるプリフォーム成形体を、周方向に3.7?4.3、及び軸方向に2.7?3.3の延伸倍率で2軸延伸ブロー成形する工程を含む自立型容器の製造方法である。」

(b)「【0027】・・・延伸ブロー成形する際の延伸倍率は、周方向延伸倍率で3.7?4.3、縦軸方向延伸倍率で2.7?3.3あり、好ましくは周方向延伸倍率で3.9?4.1、縦軸方向延伸倍率で2.8?3.1である。延伸倍率が前記値より高い場合には、肉薄となり容器の耐熱圧性が劣り、あるいは成形時に破裂する場合がある。一方、より低い場合には、容器底部等に未延伸部が残る。特に底部の未延伸部では、加熱殺菌処理時に容器内の圧力上昇による熱クリープ現象が起き、底中央部全体が下方に膨出変形される結果、容器の自立性が損なわれる。」

(c)「【0046】表2から、周方向延伸倍率を3.7?4.3、及び縦軸方向延伸倍率を2.7?3.3とした場合は(実施例4、5)、平坦部で立たせたときの正立性、及び正立安定性に優れた容器を得ることができることがわかる。また、それらの容器は耐熱圧性にも優れる。一方、縦軸方向延伸倍率が2.7より小さく、周方向延伸倍率が4.3より大きい比較例3では、容器に未延伸部が生じ、成形性は良くなかった。耐熱圧性試験においても、脚部が変形し自立性が失われ、且つ満注容量変化率も実施例4、5に比べて大きかった。また、縦軸方向延伸倍率が3.3より大きい比較例4、5では容器に未延伸部及び白濁部を生じ、成形性は良くなかった。特に、比較例5については容器の成形自体が不可能であった。比較例4は実施例4、5に比べ耐熱圧性に劣った。」

したがって、甲6には、以下の事項が記載されている(以下「甲6事項」という。)。
「ポリエチレンテレフタレートを含むプリフォーム成形体を、周方向に3.7?4.3、及び軸方向に2.7?3.3の延伸倍率で2軸延伸ブロー成形する工程を含む自立型容器の製造方法。」

e.甲9について
甲9には、図面と共に以下の記載がある。
(a)FIG.1 及び FIG.2


(b)「FIG. 1 is a front view of the pleated plastic container of the present invention, showing partly out-away mouth, bottom and a portion of the periphery thereof. As shown, the pleated plastic container of the present invention comprises a body 1 and a mouth 2 or central aperture provided in the top of the container. Between the upper periphery of the body 1 and the lower periphery of the mouth is provided an outwardly directing concave recess 3. A bottom protrusion or upwardly extending portion 5 extends from the center of a bottom 4, the outer diameter of the protrusion 5 being the same as the inner diameter of the mouth 2. A lateral protrusion 6 extends from the upper periphery of the bottom protrusion 5.
The concave recess 6 is the same as the lateral protrusion 6 in numbers and direction. With is arrangement, as the pleated plastic container is folded completely, the concave recess 3 gets nearer to and engages the lateral protrusion 6. The height of the bottom protrusion 5 may be the same as or slightly larger than the height of the body 1 when the body 1 is folded completely. With this arrangement, the concave recess 6 can engage the concave recess 3.
FIG. 2 is a longitudinal sectional view of the pleated plastic container of the present invention in completely folded, closed condition. As shown, when the body 1 is completely folded, the mouth 2 covers the bottom protrusion and the concave recess 3 engages and covers the lateral protrusion 6. With this arrangement, the folded body 1 is locked.」(第2欄第9行?第36行)
(当審和訳
図1は、本発明の折りひだ付きプラスチック容器の正面図であり、部分的に離れた口、底部及びその周辺の一部を示している。図示されるように、本発明の折りひだ付きプラスチック容器は、本体1と、容器の頂部に設けられた口2または中央開口部とを備える。本体1の上縁部と口の下縁部との間には、外側に向けられた窪んだ凹部3が設けられている。底部突出部すなわち上向きに延在する部分5が底部4の中心から延びており、口2の内径と同じである。底部突出部5の上部周囲から側方突起6が延びている。
窪んだ凹部6は、側方突起6と同じ数及び方向である。折りひだ付きプラスチック容器が完全に折り畳まれると、窪んだ凹部3は側方突起6に接近して係合する。底部突出部5の高さは、本体1の高さと同一であってもよく、本体1は完全に折り畳まれる。この構成では、窪んだ凹部6が窪んだ凹部3に係合することができる。
図2は、本発明の折りひだ付きプラスチック容器の完全に折り畳まれた状態の縦断面図である。図示されているように、本体1が完全に折り畳まれると、口2が底部突出部を覆い、窪んだ凹部3が側方突起6と契合してこれを覆う。これにより折り畳まれた本体1がロックされる。)

(c)「In brief, the pleated plastic container of the present invention is folded completely and stored in a minimum space safely by using the bottom protrusion 5 and the concave recess 3 of the mouth 2. Once the plated plastic container is locked, the locked condition is maintained unless being manually opened. Thus, the pleated plastic container of the present invention is convenient to be stored. When the container is discarded, it occupies minimum space, rendering the disposal thereof convenient. Furthermore, lots of the containers can be loaded on a vehicle, thus saving transportation cost, bringing the convenience of transportation and providing regenerating factories with convenience.」(第2欄第49行?第61行)
(当審和訳
要するに、本発明の折りひだ付きプラスチック容器は完全に折り畳まれ、底部突出部5及び口2の窪んだ凹部3を使用することによって、安全に最小空間に保管される。めっきされたプラスチック容器がロックされると、手動で開かない限り、ロック状態が維持される。したがって、本発明の折りひだ付きプラスチック容器は、保管するのが便利である。容器が廃棄されるとき、それは最小のスペースしか占有せず、その処分を便利にする。さらに、多くのコンテナを車両に積み込むことができ、輸送コストを節約し、輸送の便宜をもたらし、再生工場に利便性を提供する。)

したがって、甲9には、以下の事項が記載されている(以下「甲9事項」という。)。
「折りひだ付きプラスチック容器において、ひだにより容器を折り畳むことによって、容器の上部を容器の内側に引き込むこと。」

f.甲10について
甲10には、図面と共に以下の記載がある。
(a)「【0021】
図4は、前記カートリッジ容器1を飲料ディスペンサ10にセットした状態を示す。この飲料ディスペンサ10は、上面に設けられた上向きの筒部11に供給口11aが設けられ、筒部11の供給口11aは、フロート弁12を介してタンク13に連通されている。また、飲料ディスペンサ10の上面には、カートリッジ容器1の支持枠14が載置されている。」

(b)「【0022】
前記カートリッジ容器1は、筒口部4を下向きにして逆さに支持枠14に支持され、キャップ部6の排出口7に筒部11が内挿されて、飲料ディスペンサ10にセットされている。前記排出口7に取り付けられたカップ形状の栓8は、筒部11の先端でカートリッジ容器1の内方へ押し込まれ、排出口7が開栓されている。」

(c)【図4】


したがって、甲10には、以下の事項が記載されている(以下「甲10事項」という。)。
「カートリッジ容器1を逆さまにして飲料ディスペンサ10に取り付けること、及び、飲料ディスペンサ10がフロート弁12を含むこと。」

g.甲11について
甲11には、図面と共に以下の記載がある。
(a)「Fig 7b shows the dispensing of beverage by swinging the tapping handle 24 of the beverage dispensing system 10 When the beverage container 28 has been installed into the beverage dispensing system 10 and the inner space 32 has been pressurized, the beverage dispensing system 10 is ready for use. By swinging the tapping handle 24 from a substantially vertical orientation constituting the non-beverage dispensing position, towards a substantially horizontal orientation constituting the beverage dispensing position, the tapping valve (not shown) inside the tapping head 22 will open and beverage will be expelled from the beverage container 28, via the dispensing line 40, the dispensing valve and through the beverage outlet 26. The beverage is preferably collected in a beer glass 52 positioned below the beverage outlet 26. 」(第17ページ第27行?第35行)
(当審和訳
図7bは、分配システム10のタッピングハンドル24を揺動させることによる飲料の分配を示す。飲料容器28が分配システム10に設置され、内部空間32が加圧されたとき、分配システム10は使用可能である。飲料非分配位置を構成する実質的に垂直な方向から飲料分配位置を構成する実質的に水平な方向に向かってタッピングハンドル24を揺動させることによって、タッピングヘッド22内のタッピングバルブ(図示せず)が開き、飲料が、飲料容器28、分配ライン40、分配バルブ、及び、飲料出口26を介して流れる。飲料は、好ましくは、飲料出口26の下方に位置するビールグラス52に収集される。)

(b)FIG.7B


したがって、甲11には、以下の事項が記載されている(以下「甲11事項」という。)。
「飲料容器28を逆さまにして分配システム10に取り付けること、及び、分配システム10がタッピングバルブを含み、タッピングバルブが飲料の流れを制御すること。」

イ.本件発明1について
(ア)本件発明1は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
甲1発明の「PET樹脂」は、本件発明1の「プラスチック」の一種である。また、甲1発明の「ボトル10」の用途はウォーターサーバーであるが、このような用途では、コスト削減と省資源の観点から容器の厚さをできる限り薄くすることが技術常識であるから、甲1発明の「ボトル10」も「薄肉容器」であると解される。したがって、甲1発明の「PET樹脂製のボトル10」は、本件発明1の「プラスチック薄肉容器(1)」に相当する。
甲1発明の「首部13及び肩部14」「胴部12」「底部11」は、それぞれ、本件発明1の「頂部」「管状本体部分(6)」「底部構造(7)」に相当する。
甲1発明の「大気圧によって押し潰されることで、」は、本件発明1の「任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なく、」に相当する。
甲1発明の「蛇腹22」は「「く」の字状の断面」を有するものであるが、「く」の字と2つのまっすぐな分岐(58)を有するV形状は実質的な形状としては一致するから、甲1発明の「蛇腹22」は、本件発明1の「溝(6.1)」に相当する。

よって、本件発明1と甲1発明は、以下の構成において一致する。
「縦軸(64)に沿って延びるプラスチック薄肉容器(1)は、
頂部と、
管状本体部分(6)と、
上記頂部と対向する底部構造(7)と、を備え、
上記管状本体部分(6)は、円筒状の側壁を含み、
上記容器は、少なくとも2つの横断する溝(6.1)を含み、
上記少なくとも2つの横断する溝(6.1)は、上記管状本体部分(6)に位置しており、かつ、2つのまっすぐな分岐(58)を有するV形状の断面を有し、
上記プラスチック薄肉容器(1)が逆さまになって空になっていく期間に、上記容器は、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なく、自己折り畳み可能であることを特徴とする、プラスチック薄肉容器(1)。」

そして、本件発明1と甲1発明は、以下の点で相違する。
・相違点1
本件発明1は「上記管状本体部分(6)の平均壁厚(T_(mean))は、65
?150μm」であるのに対し、甲1発明は「胴部12」の平均壁厚が明らかではない点。
・相違点2
本件発明1は、「2つのまっすぐな分岐(58)」が「上記円筒状の側壁に円形の弧(60)を介して連結され」るものであるのに対し、甲1発明は、蛇腹22の「く」の字状の断面のうち、裾絞り部24に隣接するものだけが、円筒状の側壁に連結されるものであるといえる点。

(ウ)上記相違点1について検討する。
甲1発明は、液体の消費に伴い蛇腹部21が押し潰されていくことで、ボトル10の体積が縮小していくものである。
上記ア.a.(g)において示したとおり、甲1発明は、ボトル10の体積を縮小させていくことができるように「諸条件」を揃えられたものであるが、胴部12の強度が高すぎるとボトル10の体積が縮小していかなくなることは自明である。そのため、胴部12の強度を左右する要因である、胴部12の厚さが、胴部12の素材などの要因と共に、前記「諸条件」の中に含まれることは自明である。
したがって、甲1発明を実施するに際して、ボトル10の体積を縮小させていくことができるように、胴部12の厚さを設計することは、当業者が通常なし得た事項である。
そして、甲1発明と甲2-1事項は、共に、内容液の排出に伴い容器が潰れるものであるという点で共通しているから、前記設計変更の過程で、甲2-1事項に接した当業者が、胴部12の平均肉厚を0.05?0.20mmの範囲とすることは、通常の創作力を発揮した程度のものであって、容易になし得たことである。
0.05?0.20mm(50?200μm)という範囲は、本件発明1の「65?150μm」という範囲を包含するものである。しかしながら、本件発明1の平均壁厚が65?150μmであることについて、本件明細書にはその臨界的意義について何ら示されておらず、その範囲における作用効果が予測し得ない格別顕著なものとも認められないところ、0.05?0.20mmという範囲のうち65?150μmという範囲で、甲1発明を実施することに、特段の困難性は見いだせない。

(エ)上記相違点2について検討する。
縦軸方向に潰れやすくした容器において、容器の本体部分を横断する溝の間に円筒状の側壁を設けた構造は、本件特許の出願前より周知の技術であり(例えば、甲3の図1や、甲4の図1などを参照。)、その採否は当業者が適宜決定し得たことにすぎない。
そして、甲1発明も縦軸方向に潰れやすくした構造を有しているから、甲1発明において当該周知技術を採用し、容器の本体部分を横断する溝の間に円筒状の側壁を設けた構造とすることは、当業者が容易になし得た事項であり、このことにより予想し得ない新たな効果が発揮されるというものでもない。

(オ)以上より、本件発明1は、甲1発明、甲2-1事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(カ)特許権者は平成30年11月30日付け意見書において、以下のように主張している。
「そこで、甲1号証を確認するに、段落【0012】に「本実施の形態のボトルの胴部は、単純な壁状ではなく、複数の蛇腹が並んだ蛇腹部が構成されている。・・・これによってボトルの柔軟性が向上するため、大気圧で容積を縮小できるようになる。」と記載されている。つまり、甲1発明にとって、複数の蛇腹が並んだ構成は必須なのであって、この構成を備えることにより、ボトルの柔軟性が向上し、大気圧で容積を縮小できるにしているのである。つまり、「甲1発明を実施しようとした当業者が当該周知技術を採用し、容器の本体部分を横断する溝の間に円筒状の側壁を設けた構造とする」との認定は、ひとまとまりの技術的思想としての甲1発明にはない構成を認定することになるのであり、そのような甲1発明に対する認定に基づいて本願発明1の進歩性を否定することは、平成18年(行ケ)10138号審決取消請求事件における判示事項に照らしても許されるべきではない。」(同意見書第7ページ第7行?第18行)
「甲第1号証には、「内部の液体の排出に伴ってボトルが押し潰される際は、ボトルが不規則に変形していく訳ではなく、液体の自重が作用しない液面よりも上の部分から徐々に変形していく。したがってウォーターサーバーにボトルを取り付けた場合、初期段階では、液面より上の部分が徐々に大気圧で押し潰されていく。」と記載されている(段落【0017】)。
一方、甲第3号証には、「この発明は、軸方向に力を加えると押しつぶすことができるプラスチック製ボトルに関する。」と記載されている。また、甲第4号証の【要約】には、「軸方向圧縮を加えて押し潰すことができるプラスチックボトルであって、・・・」と記載されている(段落【0001】)。
これらの記載を踏まえて、甲1発明に甲3発明又は甲4発明を適用した場合、内部の液体の排出に伴ってボトルが押し潰されるように工夫された甲1発明のボトルは、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なくしては変形しない甲3発明又は甲4発明の胴体部を含むことになり、甲1発明のボトルは、「潰れやすさが向上している」(甲第1号証の段落【0008】)との効果を奏しなくなるのであるから、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なくしては変形しないボトルに変更されると、甲1発明は、その技術的意義に変動が生じることとなる。
よって、平成23年(行ケ)第10358号審決取消請求事件の判示事項を参酌すれば、仮に縦軸方向に潰れやすくした容器において、容器の本体部分を横断する溝の間に円筒状の側壁を設けた構造が周知技術であったとしても、このような変更には阻害要因があると言わざるをえない。
このように、甲1発明に甲3発明又は甲4発明を適用することには阻害要因が認められるのであるから、甲1、3、4号証に基づいて本願発明1の進歩性が否定されるべきではない。」(同意見書第9ページ第10行?第10ページ第5行)

しかし、甲1発明の蛇腹部は、上下方向に伸縮するための構造である(甲1の段落【0014】などを参照。)。そのため、上下方向に伸縮することのできる構造であれば、同構造を前記蛇腹部に代えて採用することに、格別の阻害要因は認められない。
他方で、周知技術として甲3や甲4に例示される、容器の本体部分を横断する溝の間に円筒状の側壁を設けた構造は、容器の上下方向の圧縮を容易にするための構造として、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力によって変形する容器にしか適用し得ないものではなく、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力によらずに変形する容器に適用し得ないと考える特段の事情は存在しない。
したがって、特許権者の上記主張は当を得たものではない。

また、特許権者は同意見書において、以下のように主張している。
「上記課題を解決するために、甲2発明の成形容器1は、薬液散布機本体に設けられる一般的な噴霧ポンプによる吸引力で潰れるように形成されており、これによりカートリッジ式薬液容器の提供を実現している。
本願発明1は、カートリッジ式薬液容器に関するものでもなく、また、自己折り畳み可能な容器を提供することを解決すべき課題として認識しているのであるから(本願明細書の段落【0026】等)、当業者が、本願発明1の課題を解決するうえで甲第2号証を引用例として認識するとは考え難い。甲2発明は、(i)経済的な製造方法を追求するために側面に溝を設けず、(ii)カートリッジ式薬液容器を提供するために噴霧ポンプによる吸引力で潰れるように形成され、(iii)(i)及び(ii)等を実現するために胴部の膜厚を定めている。つまり、構成(i)?(iii)は技術的一体性を有する構成なのであり、本願発明1の進歩性を検討するうえで、甲2発明の構成(i)?(iii)の技術的一体性を考慮することなく、構成(iii)のみを取り出すべきではない。」(同意見書第8ページ第1?13行)
「同様のことが甲第2号証、甲第5号証にも言える。甲第2号証の段落【0023】には、「本発明に係る成形容器1は、薬液散布機本体に設けられる一般的な噴霧ポンプによる吸引力で容易に潰される」と記載されている。甲第5号証の段落【0006】には、「この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、減圧時に折れ皺が発生してしまうことを抑制しながらボトルを軸方向に収縮変形させることができ」と記載されている。
それゆえ、甲1発明に甲3発明又は甲4発明を適用することと同様の理由により、甲1発明に甲2発明又は甲5発明を適用することにも阻害要因が認められるのであるから、甲1、2、5号証に基づいて本願発明1の進歩性が否定されるべきではない。」(同意見書第10ページ第6行?第15行)

しかし、上記ア.a.(g)において示したとおり、甲1発明は、ボトル10の体積を縮小させていくことができるように「諸条件」を揃えられたものであるが、胴部12の強度が高すぎるとボトル10の体積が縮小していかなくなることは自明である。そのため、胴部12の強度を左右する要因である、胴部12の厚さが、胴部12の素材などの要因と共に、前記「諸条件」の中に含まれることは自明である。
したがって、甲1発明を実施するに際して、ボトル10の体積を縮小させていくことができるように、胴部12の厚さを設計することは、当業者が通常なし得た事項である。
そして、胴部12の厚さの具体的な数値として、胴部12の平均肉厚を0.05?0.20mmの範囲とすることは、甲2-1事項に鑑みて、格別の困難性があるとはいえず、またこのような範囲に定めることによる臨界的意義は認められない。
なお、甲5については検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2-1事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、特許権者の上記主張は当を得たものではない。

ウ.本件発明3について
(ア)本件発明3は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明3と甲1発明とを対比すると、上記相違点1及び2で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点3
本件発明3は「上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、少なくとも2つの折り畳みスターター(6.2)が備えられている」のに対して、甲1発明は折り畳みスターターに相当する構成を備えていない点。

(ウ)上記相違点3について検討する。
甲3事項において、畝10はボトルを横断するものであるから、本件発明3の「溝(6.1)」と同様の機能を有するものであり、折り曲げ開始部62はボトルが潰れる際に折り曲げが開始する部分であるから、本件発明3の「折り畳みスターター(6.2)」と同様の機能を有するものである。また、甲3事項は、畝10が折り曲げ開始部62を3?20個有しているから、畝10が折り曲げ開始部62を少なくとも2つ有しているといえる。
そして、甲1発明と甲3事項は、共に、容器が横断方向に溝を有し、縦軸方向に潰れるものであるという点で共通している。よって、甲1発明に甲3事項を適用し、蛇腹の溝に少なくとも2つの折り曲げ開始部を設けるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

(エ)以上より、本件発明3は、甲1発明並びに甲2-1,甲3事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ.本件発明4について
(ア)本件発明4は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明4と甲1発明とを対比すると、上記相違点1及び2で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点4
本件発明4は「上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、少なくとも4つの折り畳みスターター(6.2)が備えられている」のに対して、甲1発明は折り畳みスターターに相当する構成を備えていない点。

(ウ)上記相違点4について検討する。
甲3事項において、畝10はボトルを横断するものであるから、本件発明3の「溝(6.1)」と同様の機能を有するものであり、折り曲げ開始部62はボトルが潰れる際に折り曲げが開始する部分であるから、本件発明3の「折り畳みスターター(6.2)」と同様の機能を有するものである。また、甲3事項は、畝10が折り曲げ開始部62を3?20個有しているから、畝10が折り曲げ開始部62を少なくとも2つ有しているといえる。
そして、甲1発明と甲3事項は、共に、容器が横断方向に溝を有し、縦軸方向に潰れるものであるという点で共通している。よって、甲1発明に甲3事項を適用し、蛇腹の溝に3?20個の折り曲げ開始部を設けるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。そして、その折り曲げ開始部の数を4つ以上とすることに、格別の困難性は見いだせない。

(エ)以上より、本件発明4は、甲1発明並びに甲2-1,甲3事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ.本件発明5について
(ア)本件発明5は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明5と甲1発明とを対比すると、上記相違点1及び2で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点5
本件発明5は「上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、4?8つの折り畳みスターター(6.2)が備えられている」のに対して、甲1発明は折り畳みスターターに相当する構成を備えていない点。

(ウ)上記相違点5について検討する。
甲3事項において、畝10はボトルを横断するものであるから、本件発明3の「溝(6.1)」と同様の機能を有するものであり、折り曲げ開始部62はボトルが潰れる際に折り曲げが開始する部分であるから、本件発明3の「折り畳みスターター(6.2)」と同様の機能を有するものである。また、甲3事項は、畝10が折り曲げ開始部62を3?20個有しているから、畝10が折り曲げ開始部62を少なくとも2つ有しているといえる。
そして、甲1発明と甲3事項は、共に、容器が横断方向に溝を有し、縦軸方向に潰れるものであるという点で共通している。よって、甲1発明に甲3事項を適用し、蛇腹の溝に3?20個の折り曲げ開始部を設けるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。そして、その折り曲げ開始部の数を4?8つとすることに、格別の困難性は見いだせない。

(エ)以上より、本件発明5は、甲1発明並びに甲2-1,甲3事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ.本件発明6について
(ア)本件発明6は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明6と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?5で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点6
本件発明6は「上記折り畳みスターターは、上記薄肉容器(1)の上記縦軸(64)に垂直な軸を中心に湾曲し、上記薄肉容器(1)の上記縦軸(64)に平行な軸を中心に曲折し、外側に突出する頂点を有している」のに対して、甲1発明は折り畳みスターターに相当する構成を備えていない点。

(ウ)上記相違点6について検討する。
甲3事項において、折り曲げ開始部62は、ボトルの縦軸に垂直な軸を中心に湾曲し、ボトルの縦軸に平行な軸を中心に曲折し、外側に突出する頂点を有しているから、本件発明6の「折り畳みスターター」と同様の機能を有するものである。
そして、甲1発明と甲3事項は、共に、容器が横断方向に溝を有し、縦軸方向に潰れるものであるという点で共通している。よって、甲1発明に甲3事項を適用し、蛇腹の溝に折り曲げ開始部を設けるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

(エ)以上より、本件発明6は、甲1発明並びに甲2-1,甲3事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ.本件発明12について
(ア)本件発明12は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明12と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?6で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点7
本件発明12は「フープ延伸比率(hoop stretch ratio)が4.0?6.5であり、軸延伸比率(axial stretch ratio)が2.8?5.0であり、全体延伸比率(overall stretch ratio)が11.20?32.5である」のに対して、甲1発明はこのような限定がなされていない点。

(ウ)上記相違点7について検討する。
甲6事項は、周方向の延伸倍率を3.7?4.3とするものであるが、周方向の延伸倍率というのは、本件発明12の「フープ延伸比率」に相当する。
また、甲6事項は、軸方向の延伸倍率を2.7?3.3とするものである。
そして、全体延伸比率は周方向延伸倍率と軸方向延伸倍率をかけ合わせたものであるから、甲6事項は、全体延伸比率を9.99?14.19とするものである。
甲1発明のボトル10はPET樹脂製であり、PET樹脂製の容器をプリフォーム成形体の2軸延伸ブロー成形により製造することは、ごく一般的な製造方法である。
よって、甲1発明に甲6事項を適用し、甲1発明を周方向の延伸倍率が3.7?4.3であり、軸方向の延伸倍率が2.7?3.3であり、全体延伸比率が9.99?14.19であるように製造することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、周方向の延伸倍率の3.7?4.3という範囲は、本件発明12の「フープ延伸比率(hoop stretch ratio)が4.0?6.5」という範囲と一部が重複するものである。しかしながら、本件発明12のフープ延伸比率が4.0?6.5であることについて、本件明細書にはその臨界的意義について何ら示されておらず、その範囲における作用効果が予測し得ない格別顕著なものとも認められないところ、周方向の延伸倍率を4.0?6.5という範囲に変更して、甲1発明を実施することに、特段の困難性は見いだせない。
また、軸方向の延伸倍率の2.7?3.3という範囲は、本件発明12の「軸延伸比率(axial stretch ratio)が2.8?5.0」という範囲と一部が重複するものである。しかしながら、本件発明12の軸延伸比率が2.8?5.0であることについて、本件明細書にはその臨界的意義について何ら示されておらず、その範囲における作用効果が予測し得ない格別顕著なものとも認められないところ、軸方向の延伸倍率を2.8?5.0という範囲に変更して、甲1発明を実施することに、特段の困難性は見いだせない。
また、全体延伸比率の9.99?14.19という範囲は、本件発明12の「全体延伸比率(overall stretch ratio)が11.20?32.5」という範囲と一部が重複するものである。しかしながら、本件発明12の全体延伸比率が11.20?32.5であることについて、本件明細書にはその臨界的意義について何ら示されておらず、その範囲における作用効果が予測し得ない格別顕著なものとも認められないところ、全体延伸比率を11.20?32.5に変更して、甲1発明を実施することに、特段の困難性は見いだせない。

(エ)以上より、本件発明12は、甲1発明並びに甲2-1,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク.本件発明13について
(ア)本件発明13は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明13と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?7で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点8
本件発明13は「フープ延伸比率(hoop stretch ratio)が4.2?6.0であり、軸延伸比率(axial stretch ratio)が3.0?4.5であり、全体延伸比率(overall stretch ratio)が12.6?27.0である」のに対して、甲1発明はこのような限定がなされていない点。

(ウ)上記相違点8について検討する。
上記キ.(ウ)で検討したのと同様に、甲1発明に甲6事項を適用し、甲1発明を周方向の延伸倍率が3.7?4.3であり、軸方向の延伸倍率が2.7?3.3であり、全体延伸比率が9.99?14.19であるように製造することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、周方向の延伸倍率の3.7?4.3という範囲は、本件発明13の「フープ延伸比率(hoop stretch ratio)が4.2?6.0」という範囲と一部が重複するものである。しかしながら、本件発明13のフープ延伸比率が4.2?6.0であることについて、本件明細書にはその臨界的意義について何ら示されておらず、その範囲における作用効果が予測し得ない格別顕著なものとも認められないところ、周方向の延伸倍率を4.2?6.0という範囲に変更して、甲1発明を実施することに、特段の困難性は見いだせない。
また、軸方向の延伸倍率の2.7?3.3という範囲は、本件発明13の「軸延伸比率(axial stretch ratio)が3.0?4.5」という範囲と一部が重複するものである。しかしながら、本件発明13の軸延伸比率が3.0?4.5であることについて、本件明細書にはその臨界的意義について何ら示されておらず、その範囲における作用効果が予測し得ない格別顕著なものとも認められないところ、軸方向の延伸倍率を3.0?4.5という範囲に変更して、甲1発明を実施することに、特段の困難性は見いだせない。
また、全体延伸比率の9.99?14.19という範囲は、本件発明13の「全体延伸比率(overall stretch ratio)が12.6?27.0」という範囲と一部が重複するものである。しかしながら、本件発明13の全体延伸比率が12.6?27.0であることについて、本件明細書にはその臨界的意義について何ら示されておらず、その範囲における作用効果が予測し得ない格別顕著なものとも認められないところ、全体延伸比率を12.6?27.0に変更して、甲1発明を実施することに、特段の困難性は見いだせない。

(エ)以上より、本件発明13は、甲1発明並びに甲2-1,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ケ.本件発明14について
(ア)本件発明14は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明14と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
甲1発明の「首部13」「肩部14」は、それぞれ、本件発明14の「ネック(4)」「肩部(5)」に相当する。また、甲1発明の「首部13」の端部は、本件発明14の「ネック端部(2)」に相当する。
よって、本件発明14と甲1発明は、上記相違点1?8で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点9
本件発明14は「ネック支持リング(3)」を有しているのに対して、甲1発明はこのような構成を有していない点。

(ウ)上記相違点9について検討する。
甲1発明のボトル10はPET樹脂製であり、PET樹脂製の容器をブロー成形により製造することは、ごく一般的な製造方法である。
ここで、甲2には、ブロー成形で形成される成形容器1において、首部11と肩部12との間にフランジ22を備えるという甲2-2事項が記載されており、このフランジ22は、形状及び機能の点で本件発明14の「ネック支持リング(3)」に相当する。
そして、甲1発明を実施するにあたり、甲2-2事項に接した当業者にとって、首部13と肩部14との間にフランジを備えるようにすることは、容易になし得たことである。

(エ)以上より、本件発明14は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

コ.本件発明15について
(ア)本件発明15は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明15と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?9で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点10
本件発明15は「満タンの時に、少なくとも2リットルの容量を有する」のに対して、甲1発明の容量は不明である点。

(ウ)上記相違点10について検討する。
上記ア.a.(a)の記載より、甲1発明は、10リットルから15リットルの容量のボトルが使用されている用途を想定していると解される。
よって、甲1発明を実施するにあたり、ボトル10の容量を10リットルから15リットルとすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

(エ)以上より、本件発明15は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

サ.本件発明16について
(ア)本件発明16は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明16と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?9で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点11
本件発明16は満タンの時に、少なくとも3リットルの容量を有するのに対して、甲1発明の容量は不明である点。

(ウ)上記相違点11について検討する。
上記ア.a.(a)の記載より、甲1発明は、10リットルから15リットルの容量のボトルが使用されている用途を想定していると解される。
よって、甲1発明を実施するにあたり、ボトル10の容量を10リットルから15リットルとすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

(エ)以上より、本件発明16は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

シ.本件発明17について
(ア)本件発明17は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明17と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?9で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点12
本件発明17は満タンの時に、少なくとも5リットルの容量を有するのに対して、甲1発明の容量は不明である点。

(ウ)上記相違点12について検討する。
上記ア.a.(a)の記載より、甲1発明は、10リットルから15リットルの容量のボトルが使用されている用途を想定していると解される。
よって、甲1発明を実施するにあたり、ボトル10の容量を10リットルから15リットルとすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

(エ)以上より、本件発明17は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ス.本件発明18について
(ア)本件発明18は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明18と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?9で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点13
本件発明18は満タンの時に、2?20リットルの容量を有するのに対して、甲1発明の容量は不明である点。

(ウ)上記相違点13について検討する。
上記ア.a.(a)の記載より、甲1発明は、10リットルから15リットルの容量のボトルが使用されている用途を想定していると解される。
よって、甲1発明を実施するにあたり、ボトル10の容量を10リットルから15リットルとすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。
そして、10リットルから15リットルという範囲は、本件発明18の「2?20リットル」という範囲に含まれる。

(エ)以上より、本件発明18は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


セ.本件発明19について
(ア)本件発明19は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明19と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?9で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点14
本件発明19は満タンの時に、7.5?12.5リットルの容量を有するのに対して、甲1発明の容量は不明である点。

(ウ)上記相違点14について検討する。
上記ア.a.(a)の記載より、甲1発明は、10リットルから15リットルの容量のボトルが使用されている用途を想定していると解される。
よって、甲1発明を実施するにあたり、ボトル10の容量を10リットルから15リットルとすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。
そして、10リットルから15リットルという範囲は、本件発明19の「7.5?12.5リットル」という範囲と重複する。ここで、10リットルから15リットルという範囲を7.5?12.5リットルという範囲に変更して発明を実施することに、特段の困難性は見いだせない。

(エ)以上より、本件発明19は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ソ.本件発明20について
(ア)本件発明20は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明20と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?6で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点15
本件発明20は「上記折り畳みスターター(6.2)は、上記薄肉容器(1)の上記縦軸(64)に対して、外側に伸びるピン(pin)である」のに対して、甲1発明は折り畳みスターターに相当する構成を備えていない点。

(ウ)上記相違点15について検討する。
上記ウ.(ウ)で検討したのと同様に、甲1発明に甲3事項を適用することは当業者が容易になし得たことである。
そして、甲3事項において、折り曲げ開始部62は外側に突出する頂点を有しているが、これは外側に伸びるピンであるといえる。

(エ)以上より、本件発明20は、甲1発明並びに甲2-1,甲3事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

タ.本件発明24について
(ア)本件発明24は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明24と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
甲1発明のボトル10はPET樹脂(ポリエチレンテレフタラート樹脂)製である。そして、PET樹脂は「伸びた際に歪硬化を示すポリマー」の一種である。
したがって、本件発明24と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?15で相違するほかは、一致している。

(ウ)以上より、本件発明24は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

チ.本件発明25について
(ア)本件発明25は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明25と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
甲1発明のボトル10はPET樹脂(ポリエチレンテレフタラート樹脂)製である。そして、PET樹脂は「ポリエステル類」である。
したがって、本件発明25と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?15で相違するほかは、一致している。

(ウ)以上より、本件発明25は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ツ.本件発明26について
(ア)本件発明26は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明26と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
甲1発明のボトル10はPET樹脂(ポリエチレンテレフタラート樹脂)製である。そして、PET樹脂は「芳香族ポリエステル類」である。
したがって、本件発明26と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?15で相違するほかは、一致している。

(ウ)以上より、本件発明26は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

テ.本件発明27について
(ア)本件発明27は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明27と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
甲1発明のボトル10はPET樹脂(ポリエチレンテレフタラート樹脂)製である。
したがって、本件発明27と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?15で相違するほかは、一致している。

(ウ)以上より、本件発明27は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ト.本件発明28について
(ア)本件発明28は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明28と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
上記ア.a.(n)において図4(A)と(B)を比較すると、甲1発明では、底部11がボトル10の内側に引っ込む構造となっていると解される。
したがって、本件発明28と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?15で相違するほかは、一致している。

(ウ)以上より、本件発明28は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(エ)なお、甲9事項は、本件発明28の頂部内に末端引っ込み式部分を含む点に相当するものである。そして、甲1発明と甲9事項は、共に、容器が縦軸方向に潰れるものであるという点で共通している。よって、甲1発明に甲9事項を適用し、首部13がボトル10の内側に引っ込む構造とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(オ)以上より、本件発明28は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6,甲9事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

ナ.本件発明29について
(ア)本件発明29は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明29と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?15で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点16
本件発明29は「上記末端引っ込み式部分は、少なくとも1つの引っ込みスターター(5.1,7.1)を含む」のに対して、甲1発明は引っ込みスターターに相当する構成を備えていない点。

(ウ)上記相違点16について検討する。
甲9事項は、本件発明29の引っ込みスターターを含む点に相当するものである。そして、甲1発明と甲9事項は、共に、容器が縦軸方向に潰れるものであるという点で共通している。よって、甲1発明に甲9事項を適用し、引っ込みの起点となる折りひだを設けるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

(エ)以上より、本件発明29は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6,甲9事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ニ.本件発明30について
(ア)本件発明30は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明30と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?16で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点17
本件発明30は「少なくとも1つの引っ込みスターター(5.1,7.1)は、溝、折り畳み線および突起のうち少なくとも1つである」のに対して、甲1発明は引っ込みスターターに相当する構成を備えていない点。

(ウ)上記相違点17について検討する。
甲9事項は、本件発明30の引っ込みスターターは折り畳み線である点に相当するものである。そして、甲1発明と甲9事項は、共に、容器が縦軸方向に潰れるものであるという点で共通している。よって、甲1発明に甲9事項を適用し、引っ込みの起点となる折りひだ(折り畳み線)を設けるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

(エ)以上より、本件発明30は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6,甲9事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ヌ.本件発明33について
(ア)本件発明33は、上記3.(1)において示したとおりのものである。

(イ)本件発明33と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
上記ア.a.(h),(i)及び(n)で示したとおり、甲1発明のボトル10はウォーターサーバーSに逆さまに配置され、液体の流出に伴い、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なく、自己折り畳みするものである。
よって、本件発明33と甲1発明とを対比すると、上記相違点1?17で相違するほか、以下の点で相違する。
・相違点18
本件発明33は「ディスペンサー(500)」が「上記液体の流れを制御するための少なくともバルブ(530)を含」み、「上記液体を分配するよう制御するためのバルブ(530)は開い」たり、「上記液体の流れを制御するためのバルブ(530)は、流れを止めるよう閉じられ」たりするのに対して、甲1発明はウォーターサーバーSがバルブを含むかが不明である点。
・相違点19
本件発明33は「薄肉容器(1)が液体を分配しなくなると、満タンの薄肉容器(1)に取り換えられる」のに対して、甲1発明はボトル10が液体を分配しなくなった後、ボトル10が取り換えられるかが不明である点。

(ウ)上記相違点18について検討する。
ウォーターサーバーがバルブを含み、バルブの操作によってボトルからの液体の流れを制御するということは、本件特許に係る出願の前に周知の技術である(例えば、甲10事項や甲11事項などを参照。)。
甲1発明においても、ウォーターサーバーSがバルブを含むものとすることは、当業者が適宜なしえた設計事項である。

(エ)上記相違点19について検討する。
上記ア.a.(a)に「交換」と記載されているように、従来から知られているウォーターサーバーではボトルを交換するのが一般的な用法である。甲1発明もこのように従来から知られているウォーターサーバーと同様に使用されるものであると解されるから、ボトル10が液体を分配しなくなると新たなボトル10に交換して使用されるものである。
よって、相違点19は実質的な相違点ではない。

(オ)以上より、本件発明33は、甲1発明並びに甲2-1,甲2-2,甲3,甲6,甲9事項、及び、周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ネ.小括
以上のとおり、本件発明1、3?6、12?20、24?30、33に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、上記取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によって、本件発明1、3?6、12?20、24?30、33に係る特許は、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項2、7?11、21?23、31、32、34?36は、本件訂正が認められることにより削除されたため、本件特許の請求項2、7?11、21?23、31、32、34?36についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
よって、本件特許の請求項2、7?11、21?23、31、32、34?36についての特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法135条の規定により、却下すべきものである。
したがって、結論のとおり決定する。
 
別掲
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸(64)に沿って延びるプラスチック薄肉容器(1)は、
頂部と、
管状本体部分(6)と、
上記頂部と対向する底部構造(7)と、を備え、
上記管状本体部分(6)は、円筒状の側壁を含み、
上記容器は、少なくとも2つの横断する溝(6.1)を含み、
上記少なくとも2つの横断する溝(6.1)は、上記管状本体部分(6)に位置しており、かつ、上記円筒状の側壁に円形の弧(60)を介して連結された2つのまっすぐな分岐(58)を有するV形状の断面を有し、
上記管状本体部分(6)の平均壁厚(T_(mean))は65?150μmであり、
上記プラスチック薄肉容器(1)が逆さまになって空になっていく期間に、上記容器は、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なく、自己折り畳み可能であることを特徴とする、プラスチック薄肉容器(1)。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、少なくとも2つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項4】
上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、少なくとも4つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項5】
上記少なくとも1つの横断する溝(6.1)のいくつかは、4?8つの折り畳みスターター(6.2)が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項6】
上記折り畳みスターターは、上記薄肉容器(1)の上記縦軸(64)に垂直な軸を中心に湾曲し、上記薄肉容器(1)の上記縦軸(64)に平行な軸を中心に曲折し、外側に突出する頂点を有していることを特徴とする、請求項3?5のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【請求項12】
フープ延伸比率(hoop stretch ratio)が4.0?6.5であり、
軸延伸比率(axial stretch ratio)が2.8?5.0であり、
全体延伸比率(overall stretch ratio)が11.20?32.5であることを特徴とする、請求項1、3?6のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項13】
フープ延伸比率(hoop stretch ratio)が4.2?6.0であり、
軸延伸比率(axial stretch ratio)が3.0?4.5であり、
全体延伸比率(overall stretch ratio)が12.6?27.0であることを特徴とする、請求項12に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項14】
当該容器は、ボトル(1)であり、上記頂部は、
ネック端部(2)と、
ネック支持リング(3)と、
ネック(4)と、
上記管状本体部分(6)に上記ネック(4)を結合させる肩部(5)とを含むことを特徴とする、請求項1、3?6、12、13のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項15】
満タンの時に、少なくとも2リットルの容量を有することを特徴とする、請求項1、3?6、12?14のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項16】
上記容量は、少なくとも3リットルであることを特徴とする、請求項15に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項17】
上記容量は、少なくとも5リットルであることを特徴とする、請求項15に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項18】
上記容量は、2?20リットルの範囲であることを特徴とする、請求項15に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項19】
上記容量は、7.5?12.5リットルの範囲であることを特徴とする、請求項15に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項20】
上記折り畳みスターター(6.2)は、上記薄肉容器(1)の上記縦軸(64)に対して、外側に伸びるピン(pin)であることを特徴とする、請求項3?6のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項21】(削除)
【請求項22】(削除)
【請求項23】(削除)
【請求項24】
上記プラスチックは、伸びた際に歪硬化を示すポリマーの中から選ばれることを特徴とする、請求項1、3?6、12?20のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項25】
上記プラスチックは、ポリエステル類から選ばれることを特徴とする、請求項24に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項26】
上記プラスチックは、芳香族ポリエステル類から選ばれることを特徴とする、請求項24に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項27】
上記プラスチックは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)またはポリプロピレンテレフタレート(PPT)から構成されるグループの中から選ばれることを特徴とする、請求項24に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項28】
上記薄肉容器(1)の上記頂部内および上記底部構造(7)内の少なくとも一方に存在する、少なくとも1つの末端引っ込み式部分(2,3,4,5)(9)を含むことを特徴とする、請求項1、3?6、12?20、24?27のいずれかに記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項29】
上記末端引っ込み式部分は、少なくとも1つの引っ込みスターター(5.1,7.1)を含むことを特徴とする、請求項28に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項30】
少なくとも1つの引っ込みスターター(5.1,7.1)は、溝、折り畳み線および突起のうち少なくとも1つであることを特徴とする、請求項29に記載のプラスチック薄肉容器(1)。
【請求項31】(削除)
【請求項32】(削除)
【請求項33】
請求項1、3?6、12?20、24?30のいずれかに記載の薄肉容器(1)に含まれる液体を分配するための方法であって、
1.満タンの薄肉容器(1)が上記液体の流れを制御するための少なくともバルブ(530)を含むディスペンサー(500)に逆さまに配置され、
2.上記液体を分配するよう制御するためのバルブ(530)は開いており、
3.上記液体は流出し、上記薄肉容器(1)は、任意の案内、及び/又は、任意の追加の力なく、自己折り畳みし、
4.上記液体の流れを制御するためのバルブ(530)は、流れを止めるよう閉じられ、自己折り畳みし、
5.上記自己折り畳みした薄肉容器(1)は、ディスペンサー(500)から取り外され、上記自己折り畳みした薄肉容器(1)が液体を分配しなくなると、満タンの薄肉容器(1)に取り換えられる、方法。
【請求項34】(削除)
【請求項35】(削除)
【請求項36】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-01-28 
出願番号 特願2015-549998(P2015-549998)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (B65D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 家城 雅美  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 渡邊 豊英
竹下 晋司
登録日 2017-03-17 
登録番号 特許第6110511号(P6110511)
権利者 ソシエテ アノニム デ ゾ ミネラル デヴィアン エ オン ナブレジェ“エス.ア.ウ.エム.ウ”
発明の名称 自己折り畳み式ブロー成形プラスチック薄肉容器  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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