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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23F
管理番号 1354101
異議申立番号 異議2018-700260  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-27 
確定日 2019-07-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6212675号発明「茶飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6212675号の請求項1?11に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6212675号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成29年9月22日付けでその特許権の設定登録がされた(特許公報発行日:平成29年10月11日)。
そして、平成30年3月27日に特許異議申立人水野智之(以下、「申立人1」という。)より全請求項に係る特許に対して、また、平成30年4月10日に特許異議申立人岩▲崎▼精孝(ただし、「▲崎▼」は立崎、以下、「申立人2」という。)より全請求項に係る特許に対して、特許異議の申立てがされ、その後の手続の経緯は次のとおりである。
平成30年 7月11日付け 取消理由通知
同年 9月 7日付け 意見書(特許権者),訂正請求書
同年10月15日付け 意見書(申立人2)
同年10月18日付け 意見書(申立人1)
同年11月14日付け 訂正拒絶理由通知
上記訂正拒絶理由通知に対する、指定期間内の特許権者からの応答はなかった。
平成31年 2月13日付け 取消理由通知(決定の予告)
上記取消理由通知(決定の予告)に対する、指定期間内の特許権者からの応答はなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
特許権者による平成30年9月7日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりのものである(なお、下線は訂正箇所を示す。)。

(訂正事項A1)
特許請求の範囲の請求項1に「(B)イソクエルシトリン及びその糖付加物 3?1000質量ppm」と記載されているのを、「(B)イソクエルシトリン糖付加物 3?1000質量ppm」に訂正する。

(訂正事項A2)
特許請求の範囲の請求項1に「茶飲料」と記載されているのを、「緑茶飲料」に訂正する。

(訂正事項A3)
特許請求の範囲の請求項2に「成分(A)の含有量が20?100質量ppbである、請求項1記載の茶飲料」と記載されているのを、
「次の成分(A)及び(B);
(A)バニリン 20?100質量ppb、及び
(B)イソクエルシトリンを糖化合物の存在下に糖転移酵素を作用させたグルコシル化物 3?1000質量ppm
を含有し、
成分(A)と成分(B)との含有量が下記式(1);
Y≦0.04X+80 (1)
〔式(1)中、Yは成分(A)の含有量(質量ppb)を示し、Xは成分(B)の含有量(質量ppm)を示す。〕
の関係を満たす、緑茶飲料。」
に訂正する。

(訂正事項A4)
特許請求の範囲の請求項3に「茶飲料」と記載されているのを、「緑茶飲料」に訂正する。

(訂正事項A5)
特許請求の範囲の請求項4に「茶飲料」と記載されているのを、「緑茶飲料」に訂正する。

(訂正事項A6)
特許請求の範囲の請求項5に「茶飲料」と記載されているのを、「緑茶飲料」に訂正する。

(訂正事項A7)
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(訂正事項A8)
特許請求の範囲の請求項7に「容器詰茶飲料である、請求項1?6のいずれか1項に記載の茶飲料。」と記載されているのを、「容器詰緑茶飲料である、請求項1?5のいずれか1項に記載の緑茶飲料。」に訂正する。

(訂正事項A9)
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7のいずれか1項に記載の茶飲料。」と記載されているのを、「請求項1?5、7のいずれか1項に記載の緑茶飲料。」に訂正する。

(訂正事項A10)
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?8のいずれか1項に記載の茶飲料。」と記載されているのを、「請求項1?5、7、8のいずれか1項に記載の緑茶飲料。」に訂正する。

(訂正事項B1)
特許請求の範囲の請求項10に「(B)イソクエルシトリン及びその糖付加物 3?1000質量ppm」と記載されているのを、「(B)イソクエルシトリン糖付加物 3?1000質量ppm」に訂正する。

(訂正事項B2)
特許請求の範囲の請求項10に「茶飲料」と記載されているのを、「緑茶飲料」に訂正する。

(訂正事項C1)
特許請求の範囲の請求項11に「3?1000質量ppmの(B)イソクエルシトリン及びその糖付加物」と記載されているのを、「3?1000質量ppmの(B)イソクエルシトリン糖付加物」に訂正する。

(訂正事項C2)
特許請求の範囲の請求項11に「茶飲料」と記載されているのを、「緑茶飲料」に訂正する。

2.判断
(1)訂正事項A1,B1,C1について
訂正事項A1,B1,C1は、成分(B)について、「(B)イソクエルシトリン及びその糖付加物 3?1000質量ppm」又は「3?1000質量ppmの(B)イソクエルシトリン及びその糖付加物」と記載されていたのを、「(B)イソクエルシトリン糖付加物 3?1000質量ppm」又は「3?1000質量ppmの(B)イソクエルシトリン糖付加物」と訂正するものであるが、この訂正は、訂正前はイソクエルシトリン及びその糖付加物の合計が3?1000質量ppmであったのを、訂正後はイソクエルシトリン糖付加物のみで3?1000質量ppmとするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。
すなわち、成分(B)について、訂正後において「イソクエルシトリン糖付加物」のみで3?1000質量ppmとすることは、「イソクエルシトリン及びその糖付加物」の合計は、その上限値が1000質量ppmを超えることを意味するから、「イソクエルシトリン及びその糖付加物」は3?1000質量ppmを超える範囲を含むものとなる。
よって、訂正事項A1,B1,C1は、少なくとも特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合しない。

(2)訂正事項A3について
訂正事項A3は、請求項1を引用する訂正前の請求項2を独立請求項に改め、成分(B)について、「イソクエルシトリン及びその糖付加物」が3?1000質量ppmであったのを、「イソクエルシトリンを糖化合物の存在下に糖転移酵素を作用させたグルコシル化物」を3?1000質量ppmとするものである。
ここで、本件明細書の段落【0014】の記載からすれば、当該グルコシル化物は、イソクエルシトリン糖付加物に相当するものであるから、訂正事項A3も訂正事項A1,B1,C1同様、訂正前は「イソクエルシトリン及びその糖付加物」のみで3?1000質量ppmであったのを、訂正後は「イソクエルシトリン糖付加物」(すなわち、上記グルコシル化物)のみで3?1000質量ppmとするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。
よって、訂正事項A3は、少なくとも特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合しない。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求の訂正事項A1,A3,B1,C1は少なくとも特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合しない。
そして、訂正前の請求項2?9は、いずれも請求項1を引用するものであり、請求項1?9は一群の請求項を構成するものであるから、訂正事項A1,A3が訂正要件を満たさない以上、他の訂正事項については判断するまでもなく、請求項1?9に係る訂正は認められない。
また、請求項10,11に係る訂正は、訂正事項B1,C1が訂正要件を満たさない以上、認められない。
よって、本件訂正は認められない。

第3 特許異議の申立てについての判断
1.本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められないから、本件特許に係る発明は、登録時の特許請求の範囲の請求項1?11(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明11」といい、それらをまとめて「本件発明」という。)に記載された、次のとおりのものである。

【請求項1】
次の成分(A)及び(B);
(A)バニリン 20質量ppb以上、及び
(B)イソクエルシトリン及びその糖付加物 3?1000質量ppm
を含有し、
成分(A)と成分(B)との含有量が下記式(1);
Y≦0.04X+80 (1)
〔式(1)中、Yは成分(A)の含有量(質量ppb)を示し、Xは成分(B)の含有量(質量ppm)を示す。〕
の関係を満たす、茶飲料。
【請求項2】
成分(A)の含有量が20?100質量ppbである、請求項1記載の茶飲料。
【請求項3】
成分(D)としてカフェインを含有し、成分(D)の含有量が7?500質量ppmである、請求項1又は2記載の茶飲料。
【請求項4】
成分(B)と成分(D)との質量比[(D)/(B)]が0.01?20である、請求項3記載の茶飲料。
【請求項5】
pHが4?7である、請求項1?4のいずれか1項に記載の茶飲料。
【請求項6】
緑茶飲料、半発酵茶飲料、発酵茶飲料、焙じ茶飲料、又はブレンド茶飲料である、請求項1?5のいずれか1項に記載の茶飲料。
【請求項7】
容器詰茶飲料である、請求項1?6のいずれか1項に記載の茶飲料。
【請求項8】
加熱殺菌済である、請求項1?7のいずれか1項に記載の茶飲料。
【請求項9】
成分(C)としてルチンを含有し、成分(C)の含有量が0.1?100質量ppmである、請求項1?8のいずれか1項に記載の茶飲料。
【請求項10】
次の成分(A)及び(B);
(A)バニリン 20質量ppb以上、及び
(B)イソクエルシトリン及びその糖付加物 3?1000質量ppm
を、下記式(1);
Y≦0.04X+80 (1)
〔式(1)中、Yは(A)バニリンの含有量(質量ppb)を示し、Xは成分(B)の含有量(質量ppm)を示す。〕
の関係を満たすように配合する工程を含む、焙じ香の付与された茶飲料の製造方法。
【請求項11】
20質量ppb以上の(A)バニリンと、3?1000質量ppmの(B)イソクエルシトリン及びその糖付加物とを、下記式(1);
Y≦0.04X+80 (1)
〔式(1)中、Yは(A)バニリンの含有量(質量ppb)を示し、Xは成分(B)の含有量(質量ppm)を示す。〕
の関係を満たすように共存させる、茶飲料の焙じ香の付与方法。

2.判断
(1)平成31年2月13日付け取消理由通知(決定の予告)(以下、「取消理由通知」という。)で指摘したとおり、本件特許明細書において効果が評価されているのは、実施例記載の「緑茶葉(二番煎茶)」及び「市販のカフェインゼロの緑茶飲料」を元に製造した飲料のみであり(段落【0054】?【0060】参照。)、実施例の結果を茶飲料全般(あるいは緑茶(本件特許明細書の段落【0009】の記載によれば、焙じ茶も含まれる。)飲料、半発酵茶飲料、発酵茶飲料、焙じ茶飲料及びブレンド茶飲料全般)にまで、拡張ないし一般化することはできない。
よって、本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものではないから特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものではないし、また、本件特許明細書は、発明の課題を解決できると当業者が認識できるように記載されているとはいえないから特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものでもない。

(2)取消理由通知で指摘したとおり、本件特許明細書には、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンメリン AO-3000」及び「サンメリンC-10」を使用した実施例の記載しかない(段落【0054】?【0060】参照。)が、これらを構成する酵素処理イソクエルシトリンはイソクエルシトリン糖付加物であって(申立人2提出の甲第2号証及び特許権者提出の乙第2号証参照。)、実施例の結果を物性の異なるイソクエルシトリン及びその糖付加物にまで、拡張ないし一般化することはできない。
よって、本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものではないから特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものではないし、また、本件特許明細書は、発明の課題を解決できると当業者が認識できるように記載されているとはいえないから特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものでもない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1?11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号の規定に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-05-28 
出願番号 特願2017-527667(P2017-527667)
審決分類 P 1 651・ 537- ZB (A23F)
P 1 651・ 536- ZB (A23F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 西村 亜希子  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 井上 哲男
窪田 治彦
登録日 2017-09-22 
登録番号 特許第6212675号(P6212675)
権利者 花王株式会社
発明の名称 茶飲料  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  

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