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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C23C |
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管理番号 | 1354109 |
異議申立番号 | 異議2018-700658 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-08-07 |
確定日 | 2019-07-09 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6277277号発明「真空処理装置用の基板スプレッディングデバイス、基板スプレッディングデバイスを有する真空処理装置、及びそれを動作させる方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6277277号の請求項1?8、10?16に係る特許を取り消す。 同請求項9に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6277277号の請求項1?16に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)12月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年12月10日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成30年1月19日にその特許権の設定登録がされ、平成30年2月7日に特許掲載公報の発行がされたものであり、その後、平成30年8月7日付けで、特許異議申立人小柳恵子(以下、「特許異議申立人」という。)により、請求項1?16に係る特許に対する特許異議の申立てがなされ、平成30年10月17日付けで、請求項1?8、10?16に係る特許に対する取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかったものである。 第2 特許異議申立について 1 本件特許発明 特許第6277277号の請求項1?16に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?16に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認める。 【請求項1】 フレキシブル基板(110;640)を処理するための処理装置(100;600)であって、 真空チャンバ(120)と、 前記真空チャンバ(120)内の処理ドラム(110)であって、第一の方向に延びる軸(112)の周りに回転するように構成される処理ドラムと、 一つ以上のローラを含む基板移送アレンジメントであって、前記基板移送アレンジメントは、前記フレキシブル基板を巻戻しローラから巻取りローラへ案内し、前記一つ以上のローラは、前記第一の方向に前記フレキシブル基板を広げるように構成された第一のローラを含む、基板移送アレンジメントと、 前記処理ドラムに隣接する加熱デバイス(130)であって、前記第一の方向への前記フレキシブル基板の広がりを維持するように構成され、基板移送方向と平行な方向の寸法が、少なくとも20mmである加熱デバイスと、を備え、 前記加熱デバイスが、前記処理ドラムと前記第一のローラとの間に配置され、前記第一のローラは、前記処理ドラムの上流に配置されている、処理装置。 【請求項2】 フレキシブル基板(110;640)を処理するための処理装置(100;600)であって、 真空チャンバ(120)と、 前記真空チャンバ(120)内の処理ドラム(110)であって、第一の方向に延びる軸(112)の周りに回転するように構成される処理ドラムと、 一つ以上のローラを含む基板移送アレンジメントであって、前記基板移送アレンジメントは、前記フレキシブル基板を巻戻しローラから巻取りローラへ案内し、前記一つ以上のローラは、前記第一の方向に前記フレキシブル基板を広げるように構成された第一のローラを含む、基板移送アレンジメントと、 前記処理ドラムに隣接する加熱デバイス(130)であって、前記第一の方向への前記フレキシブル基板の広がりを維持するように構成され、基板移送方向と平行な方向の寸法が、少なくとも20mmである加熱デバイスと、を備え、 前記第一のローラが、前記処理ドラムと前記加熱デバイスとの間に配置され、前記第一のローラは、前記処理ドラムの下流に配置されている、処理装置。 【請求項3】 前記第一のローラが、スプレッダローラである、請求項1または2に記載の処理装置。 【請求項4】 前記加熱デバイスの第一の側面に向かい合って配置される熱調整ユニットであって、前記熱調整ユニット及び前記加熱デバイスが、前記フレキシブル基板の経路を提供する間隙又はトンネルを形成する、熱調整ユニットを更に備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の処理装置。 【請求項5】 前記熱調整ユニットが、別の加熱デバイス、熱リフレクタプレート、又はその組合せである、請求項4に記載の処理装置。 【請求項6】 前記加熱デバイスが、赤外線加熱デバイスと誘導性加熱デバイスのうちの少なくとも一つである、請求項1から5のいずれか1項に記載の処理装置。 【請求項7】 前記基板移送アレンジメントが、前記真空チャンバ内で前記フレキシブル基板の裏側にのみ接触するように適合される、請求項1から6のいずれか1項に記載の処理装置。 【請求項8】 前記基板移送アレンジメントが、ガイドローラ、スプレッダデバイス、偏向デバイス、調整ローラからなるグループから選択される少なくとも一つのローラを含む、請求項7に記載の処理装置。 【請求項9】 前記加熱デバイスと前記第一のローラの間に設けられた冷却ユニットであって、前記加熱デバイスによって生成された熱放射から前記第一のローラを保護するように構成される冷却ユニットを更に備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の処理装置。 【請求項10】 前記加熱デバイスから前記処理ドラムまでの最小距離が、20cm以下である、請求項1から9のいずれか1項に記載の処理装置。 【請求項11】 前記フレキシブル基板の移送経路に沿った前記第一のローラから前記処理ドラムまでの距離が、100cm以下である、請求項1から10のいずれか1項に記載の処理装置。 【請求項12】 真空チャンバ内の処理ドラムであって、第一の方向に延びる軸の周りに回転するように構成される処理ドラムを有する、フレキシブル基板を処理するための真空処理装置を動作させる方法であって、 前記処理ドラムの上流に配置されている第一のローラを含む基板移送アレンジメントによって、前記フレキシブル基板を巻戻しローラから巻取りローラへ案内することであって、前記第一のローラは、前記第一の方向に前記フレキシブル基板を広げる、案内することと、 前記処理ドラムに隣接して配置された加熱デバイスで、前記第一の方向への前記フレキシブル基板の広がりを維持することと、 を含み、 前記加熱デバイスは、前記処理ドラムと前記第一のローラの間に配置されている、方法。 【請求項13】 真空チャンバ内の処理ドラムであって、第一の方向に延びる軸の周りに回転するように構成される処理ドラムを有する、フレキシブル基板を処理するための真空処理装置を動作させる方法であって、 前記処理ドラムの下流に配置されている第一のローラを含む基板移送アレンジメントによって、前記フレキシブル基板を巻戻しローラから巻取りローラへ案内することであって、前記第一のローラは、前記第一の方向に前記フレキシブル基板を広げる、案内することと、 前記処理ドラムに隣接して配置された加熱デバイスで、前記第一の方向への前記フレキシブル基板の広がりを維持することと、を含み、 前記第一のローラは、前記処理ドラムと前記加熱デバイスの間に配置されている、方法。 【請求項14】 前記加熱デバイスは、基板移送方向と平行な方向の寸法が、少なくとも20mmである、請求項12または13に記載の方法。 【請求項15】 前記第一のローラは、スプレッダローラである、請求項12から14のいずれか1項に記載の方法。 【請求項16】 前記フレキシブル基板の裏側のみを、一つ以上のローラを含む基板移送アレンジメントと接触させることを更に含む、請求項12から15のいずれか1項に記載の方法。 2 取消理由について (1)取消理由の概要 本件請求項1?8、10?16に係る特許に対して、平成30年10月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 本件請求項1?8、10?16に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献1?引用文献5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は取り消すべきものである。 (引用文献一覧) 引用文献1:特開平2-166280号公報(甲第1号証) 引用文献2:特開2013-121689号公報 引用文献3:特開2012-246511号公報 引用文献4:国際公開第2013/115125号(甲第2号証) 引用文献5:特開2013-179019号公報 (2)当審の判断 手続の経緯に示したとおり、上記(1)の取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。 そして、上記取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項1?8、10?16に係る特許は、この取消理由によって取り消されるべきものである。 3 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立理由 特許異議申立人は、本件請求項9に係る発明は、甲第1号証(特開平2-166280号公報、取消理由の引用文献1)及び甲第4号証(特開平1-165032号公報)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その特許は取り消すべきものであることを主張している(特許異議申立書第18頁末行?第19頁第9行)。 (2)申立理由の検討 ア 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、その第1頁右下欄第9行?第2頁左上欄第9行、第3頁左上欄第7行?右上欄第6行、第3頁右上欄第18行?左下欄第10行、及び、第1図?第3図の記載によれば、 「熱膨張性のフィルムに薄膜を形成する真空蒸着装置であって、 真空チャンバと、 真空チャンバに収納される、供給ロールと、電子線衝撃加熱装置と、エキスパンドローラと、回転する円筒状キャンと、フリーローラと、巻取りロールと、を備え、 フィルムが、供給ロールより巻出され、電子線衝撃加熱装置により加熱されて熱膨張しながら、エキスパンドローラにより幅方向に拡張され、円筒状キャンの外周面に接触して走行し、円筒状キャンに巻き付けられたフィルムに薄膜を形成し、成膜されたフィルムが、フリーローラを経て巻取りロールに巻き取られるように構成され、 電子線衝撃加熱装置は、エキスパンドローラの上流側から下流側にわたってフィルムを加熱するように設置されていると共に、円筒状キャンの近傍に設置されている、真空蒸着装置。」 の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 当審の判断 本件請求項9に係る発明と甲1発明を対比する。 甲1発明の「エキスパンドローラ」と「電子線衝撃加熱装置」は、それぞれ、本件請求項9に係る発明の「第一のローラ」と「加熱デバイス」に相当するところ、本件請求項9に係る発明では、「前記加熱デバイスと前記第一のローラの間に」、「前記加熱デバイスによって生成された熱放射から前記第一のローラを保護するように構成される冷却ユニット」を備えているのに対して、甲1発明では、「エキスパンドローラ」と「電子線衝撃加熱装置」の間に冷却ユニットを備えていない点(相違点)で、少なくとも相違している。 そこで、上記相違点について検討する。 甲第4号証には、「磁性層形成装置」の「エキスパンドゴムローラー12」と「回転ドラム2」との間に「回転ドラム2からの放射熱を防ぐ防熱板13」を設けるとの技術的事項が記載されている(第3頁左上欄第13行?右上欄第4行及び第1図)。 しかしながら、甲1発明では、「電子線衝撃加熱装置は、エキスパンドローラの上流側から下流側にわたってフィルムを加熱するように設置」され、「電子線衝撃加熱装置」と「エキスパンドローラ」は、「フィルム」が「電子線衝撃加熱装置により加熱されて熱膨張しながら、エキスパンドローラにより幅方向に拡張され」るように構成されており、「エキスパンドローラ」は、「電子線衝撃加熱装置」により加熱されることを前提とするものであるから、その間に熱を遮るような、甲第4号証に記載された「防熱板」を設けることには阻害要因がある。 そうしてみると、甲1発明において、「エキスパンドローラ」と「電子線衝撃加熱装置」の間に、上記相違点に係る冷却ユニットを設けることは、当業者が容易に想到し得るものといえない。 したがって、本件請求項9に係る発明は、甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件請求項9に係る特許に対する申立理由は理由がない。 第3 むすび 以上のとおり、本件請求項1?8、10?16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるものである。 また、本件請求項9に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によって、特許を取り消すことはできない。そして、他に本件請求項9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2019-03-01 |
出願番号 | 特願2016-538053(P2016-538053) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZC
(C23C)
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最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 塩谷 領大、谷本 怜美、小川 武 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
小川 進 宮澤 尚之 |
登録日 | 2018-01-19 |
登録番号 | 特許第6277277号(P6277277) |
権利者 | アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド |
発明の名称 | 真空処理装置用の基板スプレッディングデバイス、基板スプレッディングデバイスを有する真空処理装置、及びそれを動作させる方法 |
代理人 | 園田・小林特許業務法人 |