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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1354395
審判番号 不服2018-5861  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-27 
確定日 2019-08-15 
事件の表示 特願2015-532701「酸化物半導体基板及びショットキーバリアダイオード」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月26日国際公開、WO2015/025499〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年(2014年)8月8日を国際出願日(国内優先権主張 平成25年8月19日)とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 6月 5日付け 拒絶理由通知
平成29年 8月 4日 意見書
平成30年 1月25日付け 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成30年 4月27日 審判請求・手続補正
平成30年12月19日付け 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
平成31年 2月22日 意見書・手続補正
平成31年 3月15日付け 最後の拒絶理由通知
令和 1年 5月16日 意見書・手続補正

第2 本願発明
本願の請求項8に係る発明のうち請求項1を引用する部分(以下,「本願発明」という。)は,令和1年5月16日に補正された特許請求の範囲の請求項1及び8に記載された事項で特定される,次のとおりのものと認める。
「シリコン(Si)基板と,酸化物半導体層と,ショットキー電極層と,オーミック電極層とを有し,前記オーミック電極層が,前記シリコン(Si)基板の,酸化物半導体層が配置された側と反対の側に配置されるショットキーバリアダイオード素子であって,前記酸化物半導体層が,3.0eV以上,5.6eV以下のバンドギャップを有する多結晶及び/又は非晶質の酸化物半導体を含み,
前記酸化物半導体が多結晶の酸化物半導体である場合,前記多結晶の酸化物半導体はInを含み,さらにAl,Si,Ga,Hf,Zr,Ce,及びSnからなる群から選択される1種以上を含むショットキーバリアダイオード素子であって,
前記シリコン基板上に前記ショットキー電極層が形成され,前記ショットキー電極層上に前記酸化物半導体層が形成されたショットキーバリアダイオード素子。」

第3 当審拒絶理由
本願発明(審判請求時に補正された特許請求の範囲の請求項6に対応する。)についての当審拒絶理由は,本願発明は,本願の優先権主張日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願の優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1 特開2010-182852号公報
引用文献2 国際公開第2008/096768号
引用文献3 特開2013-102189号公報
引用文献5 特開2012-138552号公報

第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1
当審拒絶理由で引用された特開2010-182852号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は,塗布プロセスによる金属酸化物前駆体膜を作製し,この前駆体に半導体変換処理を行って金属酸化物半導体を製造する,金属酸化物半導体の製造方法に関し,特に基板表面の表面エネルギーを制御した塗布プロセスによる金属酸化物半導体の製造方法に関する。さらにはこの金属酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタに関する。」
「【0054】
(金属の組成比)
本発明の方法により,前述した金属原子から選ばれた単独,または複数の金属原子を含む金属酸化物半導体の薄膜を作製する。金属酸化物半導体としては,単結晶,多結晶,非晶質のいずれの状態も使用可能だが,好ましくは非晶質の薄膜を用いる。
【0055】
形成された金属酸化物半導体に含まれる金属原子は,前駆体の記述に挙げた物と同様に,インジウム(In),錫(Sn),亜鉛(Zn)のいずれかを含むことが好ましく,さらにガリウム(Ga)またはアルミニウム(Al)を含むことが好ましい。」
「【0093】
本発明の金属酸化物半導体を用いて,ダイオードやフォトセンサに用いることもできる。例えば後述する電極材料からなる金属薄膜と重ねることで,ショットキーダイオードや,フォトダイオードを作製することも可能である。
【0094】
(素子構成)
図1は,本発明に係わる金属酸化物半導体を用いた,薄膜トランジスタ素子の代表的な素子構成を示す図である。
【0095】
薄膜トランジスタの構成例を幾つか断面図にて図1(a)?(f)に示す。図1において,ソース電極102,ドレイン電極103を,金属酸化物半導体からなる半導体層101がチャネルとして連結するよう構成される。
【0096】
同図(a)は,支持体106上にソース電極102,ドレイン電極103を形成して,これを基材(基板)として,両電極間に半導体層101を形成し,その上にゲート絶縁層105を形成し,さらにその上にゲート電極104を形成して電界効果薄膜トランジスタを形成したものである。同図(b)は,半導体層101を,(a)では電極間に形成したものを,電極および支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。(c)は,支持体106上に,まず,半導体層101を形成し,その後ソース電極102,ドレイン電極103,そして絶縁層105を形成した後,ゲート電極104を形成したものを表す。本発明においては,半導体層が本発明の方法で形成されていればよい。」
「【0101】
(電極)
本発明において,TFT素子を構成するソース電極,ドレイン電極,ゲート電極等の電極に用いられる導電性材料としては,電極として実用可能なレベルでの導電性があればよく,特に限定されず,白金,金,銀,ニッケル,クロム,銅,鉄,錫,アンチモン鉛,タンタル,インジウム,パラジウム,テルル,レニウム,イリジウム,アルミニウム,ルテニウム,ゲルマニウム,モリブデン,タングステン,酸化スズ・アンチモン,酸化インジウム・スズ(ITO),フッ素ドープ酸化亜鉛,亜鉛,炭素,グラファイト,グラッシーカーボン,銀ペーストおよびカーボンペースト,リチウム,ベリリウム,ナトリウム,マグネシウム,カリウム,カルシウム,スカンジウム,チタン,マンガン,ジルコニウム,ガリウム,ニオブ,ナトリウム,ナトリウム-カリウム合金,マグネシウム,リチウム,アルミニウム,マグネシウム/銅混合物,マグネシウム/銀混合物,マグネシウム/アルミニウム混合物,マグネシウム/インジウム混合物,アルミニウム/酸化アルミニウム混合物,リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。」
「【0114】
基板を構成する支持体材料としては,種々の材料が利用可能であり,例えば,ガラス,石英,酸化アルミニウム,サファイア,チッ化珪素,炭化珪素などのセラミック基板,シリコン,ゲルマニウム,ガリウム砒素,ガリウム燐,ガリウム窒素など半導体基板,紙,不織布などを用いることができるが,本発明においては,支持体(基板)は樹脂からなることが好ましく,例えばプラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては,例えばポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリエーテルスルホン(PES),ポリエーテルイミド,ポリエーテルエーテルケトン,ポリフェニレンスルフィド(PPS),ポリアリレート,ポリイミド(PI),ポリアミドイミド(PAI),ボリカーボネート(PC),セルローストリアセテート(TAC),セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで,ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ,可搬性を高めることができると共に,衝撃に対する耐性を向上できる。
【0115】
上記基材を用い,目的の表面エネルギーにするために基板上に表面処理,下引き層塗布をしてもかまわない。表面処理はプラズマ処理,UV処理,オゾン処理等が利用でき,それらを併用することも出来る。またコロナ放電で表面エネルギーを合わせることも可能である。
【0116】
下引き層は特に限定は無いが,酸化ケイ素,酸化アルミニウム,酸化タンタル,酸化チタン,酸化スズ,酸化バナジウム,チタン酸バリウムストロンチウム,ジルコニウム酸チタン酸バリウム,ジルコニウム酸チタン酸鉛,チタン酸鉛ランタン,チタン酸ストロンチウム,チタン酸バリウム,フッ化バリウムマグネシウム,チタン酸ビスマス,チタン酸ストロンチウムビスマス,タンタル酸ストロンチウムビスマス,タンタル酸ニオブ酸ビスマス,トリオキサイドイットリウム等の無機層,またはポリイミド,ポリアミド,ポリエステル,ポリアクリレート,光ラジカル重合系,光カチオン重合系の光硬化性樹脂,あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体,ポリビニルフェノール,ポリビニルアルコール,ノボラック樹脂等の有機層,およびそれらを併用または積層する事が可能である。またこれら下引き層の膜厚としては2nmから3μm,好ましくは5nm?1μmである。」
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「インジウムとガリウムを含む金属酸化物半導体の非晶質の薄膜を用いた薄膜トランジスタ素子であって,
支持体上に電極を形成して,これを基材として,半導体層を,電極および支持体表面全体を覆うように形成し,
支持体材料としては,シリコン半導体基板を用いるもの。」
2 引用文献2について
当審拒絶理由で引用された国際公開第2008/096768号(以下,「引用文献2」という。)には,図19の「比較例5」ないし「比較例8」の記載からみて,In及びZnを含む非晶質の金属酸化物半導体のエネルギーバンドギャップが3.7?4.2eVであることが,記載されていると認められる。
3 引用文献3について
当審拒絶理由で引用された特開2013-102189号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに次の記載がある。
「【0093】
In-Ga-Zn-Oのバンドギャップは,3.05eVであり,この値を元に真性キャリア密度を計算する。固体中の電子のエネルギー分布f(E)は次の式で示されるフェルミ・ディラック統計に従うことが知られている。」
4 引用文献5について
当審拒絶理由で引用された特開2012-138552号公報(以下,「引用文献5」という。)には,図面とともに次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,ショットキーダイオードおよびその製造方法に関するものであり,さらに詳細には,逆方向バイアス電圧印加時のリーク電流を低減させ,順方向バイアス電圧印加時の電圧降下を小さくすることができるショットキーダイオードおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイオードは,電荷キャリアの移動方向を制限する電子部品であり,本質的に,一方の方向に電流が流れることは許容するが,反対方向へ電流が流れることを阻止する機能を有している。」
「【0031】
図1に示されるように,本発明の好ましい実施態様にかかるショットキーダイオード1は,支持基板11を備え,支持基板11の表面上に,絶縁膜12,密着層13,ショットキー金属層14,第一の誘電体層15,第二の誘電体層16およびオーミック金属層17がこの順に積層されている。
【0032】
本実施態様において,支持基板11はシリコンによって形成されている。
【0033】
支持基板11の表面上には,絶縁膜12が形成され,本実施態様においては,シリコン酸化膜によって絶縁膜12が形成されている。絶縁膜12は,支持基板11とショットキー金属層14とを絶縁する機能を有している。
【0034】
絶縁膜12の表面上には,絶縁膜12とショットキー金属層14とを密着させる機能を有する密着層13が形成されている。本実施態様においては,厚さ10nmの酸化チタン層によって,密着層13が構成されている。
【0035】
図1に示されるように,密着層13の表面上には,アノード電極として機能するショットキー金属層14が形成されている。本実施態様においては,白金によって,膜厚が250nmになるように,ショットキー金属層14が形成されている。
【0036】
ショットキー金属層14の表面上には,(Ba_(1-x)Sr_(x))TiO_(3)(ここに,0≦x≦1.0である。)によって,膜厚が20nmの第一の誘電体層15が形成され,第一の誘電体層15中には,添加物として,Mnが添加されている。
【0037】
第一の誘電体層15の表面上には,(Ba_(1-x)Sr_(x))TiO_(3)(ここに,0≦x≦1.0である。)によって,膜厚が130nmの第二の誘電体層16が形成されている。ここに,第二の誘電体層16中には,Mnなどの金属イオンは添加されていない。
【0038】
図1に示されるように,第二の誘電体層16の表面上には,カソード電極として機能するオーミック金属層17が形成されている。オーミック金属層17は250nmの膜厚を有し,Taによって形成されている。」
「【0060】
こうして作製されたショットキーダイオードサンプル#1のアノード電極として機能するショットキー金属層に相対的に負の電圧を印加し,カソード電極となるオーミック金属層に相対的に正の電圧を印加して,ショットキーダイオードサンプル#1に逆方向バイアス電圧を印加し,ショットキー金属層に印加される相対的に負の電圧を徐々に低くするとともに,オーミック金属層に印加される相対的に正の電圧を徐々に低くして,ショットキーダイオードサンプル#1に印加される逆方向バイアス電圧を徐々に低くし,ショットキーダイオードサンプル#1を流れる電流の変化を測定した。
【0061】
さらに,ショットキーダイオードサンプル#1のアノード電極として機能するショットキー金属層に相対的に正の電圧を印加し,カソード電極となるオーミック金属層に相対的に負の電圧を印加して,ショットキーダイオードサンプル#1に順方向バイアス電圧を印加し,ショットキー金属層に印加される相対的に正の電圧を徐々に高くするとともに,オーミック金属層に印加される相対的に負の電圧を徐々に高くして,ショットキーダイオードサンプル#1に印加される順方向バイアス電圧を徐々に高くし,ショットキーダイオードサンプル#1を流れる電流の変化を測定した。」
5 周知技術について
(1)引用文献6について
本願の優先権主張日前日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開昭63-306623号公報(以下,「引用文献6」という。)には,図面とともに次の記載がある。
「産業上の利用分野
本発明はシリコンであるウエハとの間にオーミックコンタクトを形成する半導体装置のシンタリング方法に関する。
従来の技術
IC,トランジスタ等の半導体装置の裏面電極は,ダイボンディングにおけるウエハとの密着性,ウエハの構成材料であるシリコンとフレームとの熱膨張率の差による歪を和らげる緩衝層としての特性を考慮して,クロム(Cr)+ニッケル(Ni)+銀(Ag)+金(Au)または金(Au)+ニッケル(Ni)+銀(Ag)+金(Au)等の多重金属層で構成される。」(1頁左欄10行-同右欄3行)
(2)引用文献7について
本願の優先権主張日前日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2008-004681号公報(以下,「引用文献7」という。)には,図面とともに次の記載がある。
「【0027】
このように構成されたNMOSFET10aからなる半導体装置10は,半導体基板(ウエハ,シリコンウエハ)11上に複数形成され,ダイシングにより個々の半導体チップ(ペレットとも言う)19に個別化される。かかる半導体チップ19は,図2,3に示すように,例えば,リードフレーム30のダイパッド(フレームとも言う)30a上にダイボンディングされる。
【0028】
ダイボンディングに際しては,ダイパッド30a上の銀メッキ層31上に,半導体チップ19の裏面に形成した金膜20を,窒素雰囲気中で380℃?450℃に加熱して,ダイパッド30aに押しつけながら溶着して行われる。その際,Au-Si共晶合金層32が形成され,さらにAgとも合金を作りながら接合される。」
(3)周知技術
前記(1)及び(2)より,次の技術的事項は本願の優先権主張日前において周知技術と認められる。
「IC,トランジスタ等の半導体装置のシリコンウェハにオーミックコンタクトする裏面電極を設けて,ダイパッドにダイボンディングすること。」
第5 対比及び判断
1 本願発明について
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「支持体」は,「支持体材料としては,シリコン半導体基板を用いる」から,本願発明の「シリコン(Si)基板」に相当する。
イ 引用発明の「インジウムとガリウムを含む金属酸化物半導体の非晶質の薄膜」は,本願発明の「酸化物半導体層」に相当する。
ウ 引用発明の「電極」と,本願発明の「ショットキー電極層」とは,「電極層」である点で共通する。
エ 引用発明の「薄膜トランジスタ素子」と,本願発明の「ショットキーバリアダイオード素子」とは,「素子」である点で共通する。
オ 引用発明の「インジウムとガリウムを含む金属酸化物半導体の非晶質の薄膜」は「非晶質の酸化物半導体を含む」ものであるといえる。
カ 引用発明では「支持体上に電極を形成して,これを基材として,半導体層を,電極および支持体表面全体を覆うように形成」するから,前記アないしウを考慮すると,「前記シリコン基板上に前記電極層が形成され,前記電極層上に前記酸化物半導体層が形成された」といえる。
キ すると,本願発明と引用発明とは,下記クの点で一致し,下記ケの点で相違する。
ク 一致点
「シリコン(Si)基板と,酸化物半導体層と,電極層と,を有する,素子であって,前記酸化物半導体層が,非晶質の酸化物半導体を含む素子であって,
前記シリコン基板上に前記電極層が形成され,前記電極層上に前記酸化物半導体層が形成された素子。」
ケ 相違点
(ア)相違点1
本願発明の「電極層」は「ショットキー電極層」であり本願発明は「ショットキーバリアダイオード素子」であるのに対し,引用発明の「電極」は「ショットキー電極層」ではなく,引用発明は「薄膜トランジスタ素子」である点。
(イ)相違点2
本願発明では「オーミック電極層」を有し,「前記オーミック電極層が,前記シリコン(Si)基板の,酸化物半導体層が配置された側と反対の側に配置される」のに対し,引用発明では「オーミック電極層」を有さない点。
(ウ)相違点3
本願発明では「酸化物半導体層」が「3.0eV以上,5.6eV以下のバンドギャップを有する」のに対し,引用発明では「金属酸化物半導体」のバンドギャップが明示されない点。
(2)相違点についての検討
ア 相違点1について
引用文献1には「後述する電極材料からなる金属薄膜と重ねることで,ショットキーダイオード」「を作製することも可能である。」と記載されている(前記第4の1(1)【0093】)から,引用発明の「薄膜トランジスタ素子」において「電極」の「電極材料」を選択して「ショットキー電極」とし,「ショットキーダイオード素子」とすることが示唆されている。
よって,前記示唆に従い,引用発明において,相違点1に係る構成を得ることは,当業者が容易になし得ることである。
イ 相違点2について
(ア)「オーミック電極層」の意義
ショットキーダイオードは,電荷キャリアの移動方向を制限する電子部品であり,本質的に順方向に電流が流れることは許容するが,逆方向へ電流が流れることを阻止する機能を有するもので(前記第4の4【0001】-【0002】),アノード電極とカソード電極の2つの電極を有し(同【0031】-【0038】),アノード電極とカソード電極の間に逆方向バイアス電圧を印加し,又は,順方向バイアス電圧を印加すること(同【0060】-【0061】)により,前述の機能を実現するものである。
すると,アノード電極とカソード電極との間にある部分に電圧がかかることでショットキーダイオードとしての機能が実現することになる。
ところが,本願発明では,本願発明の「Si基板上にバンドギャップの広い化合物半導体を安価で量産性に優れた方法で形成し,優れた電流-電圧特性を有するショットキーバリアダイオード素子を提供する」(本願明細書段落0006)という目的との関係で,「3.0eV以上,5.6eV以下のバンドギャップを有する」「酸化物半導体層」は「シリコン基板上」の「ショットキー電極層上に」形成され,「前記オーミック電極層」は,「前記シリコン(Si)基板の,酸化物半導体層が配置された側と反対の側に配置される」から,バンドギャップの広い「酸化物半導体層」は「ショットキー電極層」と「オーミック電極層」の間にはない。ここで,その名称からも「ショットキーバリアダイオード」の一部であることが明らかな「ショットキー電極層」の方はともかく,「オーミック電極層」の方はショットキーダイオードとしての機能には関係しておらず,また,本願発明の目的とも関係がないことになる。
(イ)「オーミック電極層」を「前記シリコン(Si)基板の,酸化物半導体層が配置された側と反対の側に配置」することの容易想到性
前述のとおり,本願発明の「オーミック電極層」はショットキーダイオードとしての機能とは無関係であり,すると,ショットキーダイオードや薄膜トランジスタに限らず,半導体装置のシリコンウェハにオーミックコンタクトする裏面電極を設けて,ダイパッドにダイボンディングすることは周知技術であり(前記第4の5),引用発明においても素子をパッケージに実装する際にダイパッドに固定しなくてはならないから,前記周知技術を採用して,「前記シリコン(Si)基板の,酸化物半導体層が配置された側と反対の側」すなわち裏面にオーミック電極層を設けることは,当業者が容易になし得ることである。
ウ 相違点3について
引用文献2及び3の記載(前記第4の2及び同3)からみて,引用発明の「金属酸化物半導体」が物性として「3.0eV以上,5.6eV以下」のバンドギャップを有することは,当業者が容易に理解できることである。
エ 本願発明の効果について
本願発明の「Si基板上にバンドギャップの広い化合物半導体を安価で量産性に優れた方法で形成し,優れた電流-電圧特性を有するショットキーバリアダイオード素子を提供することができる」(本願明細書段落0008)という効果は,引用発明がバンドギャップの広い(前記第4の2及び同3)「インジウムとガリウムを含む金属酸化物半導体」を用いるものであることから,当業者が予測できる程度のものである。
2 請求人の主張について
(1)請求人は,平成31年2月22日提出の意見書において,次の主張をしている。
ア 引用発明は薄膜トランジスタに関する発明であり,当業者は,薄膜トランジスタが「前記オーミック電極層が,前記シリコン(Si)基板の,酸化物半導体層が配置された側と反対の側に配置される」という構成をとるとは考えないこと。(「主張ア」という。)
イ 引用発明では,塗布成膜工程で,基材へ不純物が拡散するため,基材の汚染が避けられず,酸化物半導体薄膜形成時に不純物が一部残留するから,ショットキーバリアとしての理想的な界面の性能が達成されないこと。(「主張イ」という。)
(2)主張アについて検討する。
薄膜トランジスタやショットキーバリアダイオードに限らず,半導体装置のシリコンウェハにオーミックコンタクトする裏面電極を設けて,ダイパッドにダイボンディングすることは周知技術であり,周知技術の裏面電極を引用発明に採用することが容易であることは,前記1(2)イ(イ)で述べたとおりである。
(3)主張イについて検討する。
引用発明において,ショットキーバリアとしての理想的な界面の性能が達成できない程度に汚染されるかどうかは不明であり,出願人の主張には根拠がない。
また,本願発明は物の発明であり,製造方法を何ら限定するものではないから,製造方法の相違による効果の主張はその前提を欠く。
(4)よって,請求人の主張はいずれも採用できない。
第6 結言
以上のとおり,本願の請求項8に係る発明のうち請求項1を引用する部分については,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-11 
結審通知日 2019-06-18 
審決日 2019-07-01 
出願番号 特願2015-532701(P2015-532701)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河合 俊英高橋 宣博  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 梶尾 誠哉
深沢 正志
発明の名称 酸化物半導体基板及びショットキーバリアダイオード  
代理人 特許業務法人平和国際特許事務所  

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