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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 B63H
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B63H
管理番号 1354507
審判番号 不服2018-10932  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-08 
確定日 2019-09-03 
事件の表示 特願2014-216749号「操船装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日出願公開、特開2016- 83972号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成26年10月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年11月 6日付け:拒絶理由通知書
平成30年 1月10日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 5月10日付け:拒絶査定(原査定)
平成30年 8月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出



第2.原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1?3に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2004-352007号公報
2.特開平9-104397号公報
3.特開2011-169801号公報



第3.審判請求時の補正について

審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項、第4項及び第5項第2号の要件を満たしている。そして、「第6.対比・判断」に示すように、補正後の請求項1に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。



第4.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年8月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
衛星測位システムの信号と方位センサの信号とに基づいて船舶を目標座標に移動させ、
目標方位に回頭させる操船装置において、
操作具の操作量に基づいて目標座標および前記目標座標における船首の方位である目標方位を算出し、前記目標座標および前記目標方位を確定する信号を取得した後に船舶を前記目標座標に向けて移動させるとともに、前記目標方位に向けて回頭させ、
前記衛星測位システムの信号から算出した現在座標が前記目標座標に一致し、かつ前記方位センサの信号から算出した現在方位が前記目標方位に一致するまで、船舶を移動させるとともに、回頭させ、
前記現在座標および前記現在方位を表示装置に表示し、前記目標座標および前記目標方位を前記操作具の操作量に対応するように表示装置に表示し、船舶の移動に対応するように前記目標座標の表示を変更するとともに、船舶の回頭に対応するように前記目標方位の表示を変更し、
前記現在座標および前記現在方位を一の図形によって表示し、前記目標座標および前記目標方位を他の図形によって表示し、
前記他の図形は、破線形状である
操船装置。」



第5.引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、目標位置及び目標方位角へ船舶及び飛行船等の航走体を到達させるべく、当該目標位置及び目標方位角並びに航走体の現在位置及び現在方位角に基づいて航走体の位置制御を行う航走体の操縦方法及びその実施に使用する操縦装置に関し、特に当該位置制御中のオペレータによる手動操縦の介入を許容する航走体の操縦方法及びその実施に使用する操縦装置に関する。
・・・
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した如き従来の航走体の操縦装置にあっては、位置制御オフのときには、ジョイスティックの傾倒及びダイアルの回転によってオペレータが航走体の推力及び推力モーメントの指令値を手動入力し、位置制御オンのときには、同様の操作で航走体の速度及び角速度の指令値を手動入力するように構成されており、位置制御オンのときと位置制御オフのときとではオペレータの操縦感覚が異なるものとなっていた。
【0008】
また、オペレータが所望する位置又は方位角に航走体が到達した場合には、オペレータがジョイスティック又はダイアルを中立位置に戻すこととなるが、このとき積分器103の出力値は一定値となり、またこのときには航走体が依然として移動しているため航走体が目標位置又は目標方位角を一旦行き過ぎてしまい、その後目標位置又は目標方位角へと再び近づくべく戻ることとなるので、例えばケーブルで曳航体を曳航しながら作業する海洋調査船又はケーブル敷設船等にあっては、再び目標位置又は目標方位角へ近づく際にケーブルがプロペラ等に絡まることがあった。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、位置制御オン及び位置制御オフの両方においてオペレータに同様の操縦感覚を与え、従来に比して操縦性を向上させることができる航走体の操縦方法及びその実施に使用する操縦装置を提供することを目的とする。」

・「【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る航走体の操縦装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る船舶(航走体)の構成の一部を示すブロック図である。図1に示す如く、本実施の形態に係る船舶1は、入力装置(手動入力受付手段)2,検出装置(検出手段)3,目標推力演算装置(予測手段,目標推力演算手段)4及びスイッチ(切替手段)5によって主として構成された操縦装置6と、推力配分装置7と、制御装置8とを備えている。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態に係る操縦装置6の一部の外観を示す斜視図である。図2に示す如く、操縦装置6の一部は、船員たるオペレータが船舶1を操縦したり、船舶1の運行状態を確認することができるように、コンソール10として船舶1の内部に設けられている。コンソール10は、その前面に入力装置2及び表示パネル9を有しており、オペレータがかかる表示パネル9に表示されている情報を確認しながら入力装置2を操作することによって、船舶1の手動操縦が可能となっている。
【0024】
入力装置2は、コンソール10の前側に夫々配設されたキーパッド21,ジョイスティック22,ダイアル23を有しており、キーパッド21,ジョイスティック22及びダイアル23が夫々入力を受け付けた各種データを目標推力演算装置4へ送信することが可能であるように当該目標推力演算装置4に接続されている(図1参照)。キーパッド21は複数の操作キーから構成されており、後述するように、かかるキーパッド21を操作することによって、オペレータが船舶1の位置、船首の方位角及び船速を設定するようになっている。
・・・
【0027】
表示パネル9は、目標推力演算装置4にデータの受信が可能であるように接続されており(図1参照)、目標推力演算装置4から受信した目標位置、目標方位角、目標速度、現在位置、現在方位角、現在速度、位置制御のオン/オフ等の情報を表示するようになっている。
【0028】
また図1に示す如く、検出装置3は、船舶1の現在位置を検出するGPS等の位置センサ31と、船舶1の船首の方位角を検出するジャイロコンパス等の方位角センサ32と、船舶1の船速(対地速度)を検出する速度センサ33とを備えている。また、検出装置3は、目標推力演算装置4に接続されており、検出した船舶1の現在位置、方位角及び速度の各情報を目標推力演算装置4に出力するようになっている。
・・・
【0030】
また、入出力インタフェース44は、検出装置3から船舶1の現在位置、方位角及び船速の各情報を受信し、入力装置2から目標位置及び目標方位角並びに推力及び推力モーメントの指令値の各情報を受信するように構成されている。更に、この入出力インタフェース44は、CPU41が演算した目標推力及び目標推力モーメントの各情報をスイッチ5へ出力し、また船舶1の現在位置、方位角及び船速並びに目標位置、目標方位角及び目標速度の各情報を表示パネル9に表示すべく、かかる情報の表示用データを表示パネル9へ出力するようになっている。
・・・
【0032】
スイッチ5は、c接点であり、図2に示す如く操作面10aに設けられている。図1に示すように、スイッチ5には、前記入出力インタフェース44に繋がる端子51と、前記入力装置2に繋がる端子52と、推力配分装置7に繋がる端子53とを有している。端子51は、入出力インタフェース44から与えられた目標推力及び目標推力モーメントを示す信号11を出力するようになっている。また、入力装置2と入出力インタフェース44とを繋ぐ信号線は、その途中において分岐しており、この分岐先が端子52へと延びており、これによって端子52は、入力装置2から与えられた推力及び推力モーメントの指令値を示す信号12を出力するようになっている。このようなスイッチ5は、オペレータの操作によって、端子51及び53を接続する状態(以下、制御オン状態という)と、端子52及び53を接続する状態(以下、制御オフ状態という)との間で、接続を切り替えることができるようになっている。
【0033】
従って、オペレータがスイッチ5を操作することによって制御オン状態が選択されたときには、端子51及び53が接続されて、推力配分装置7には目標推力演算装置4から目標推力及び目標推力モーメントを示す信号11が出力されることとなり、制御オフ状態が選択されたときには、端子52及び53が接続されて、推力配分装置7には入力装置2から推力及び推力モーメントの指令値を示す信号12が出力されることとなる。これにより、オペレータがスイッチ5を操作することによって、船舶1の位置制御のオン/オフを切り替えることができるようになっている。
・・・
【0035】
推力配分装置7は、CPU、ROM及びRAM等から構成されており、入力装置2又は目標推力演算装置4から入力した目標推力及び目標推力モーメントに基づいて、船舶1が備えるプロペラ及び舵等のプロペラ推力及び舵角を演算する。船舶1には、複数のプロペラ(バウスラスタを含む)及び舵が設けられており、前記目標推力及び目標推力モーメントを達成する夫々のプロペラ推力及び舵角を演算するようになっている。このような推力配分装置7は、制御装置8に接続されており、演算結果の各プロペラ推力及び各舵角を制御装置8に出力するようになっている。なお、本実施の形態においては、船舶1にプロペラ及び舵を複数設けられており、推力配分装置7が与えられた目標推力及び目標推力モーメントを達成するこれらのプロペラ推力及び舵角を演算する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、船舶1に複数の旋回式スラスタが設けられており、推力配分装置7が与えられた目標推力及び目標推力モーメントを達成する各旋回式スラスタのプロペラ推力及び旋回角度を演算する構成としてもよい。
・・・
【0037】
制御装置8は、CPU、ROM及びRAM等から構成されており、推力配分装置7から入力した各プロペラ推力及び各舵角と、各種センサから入力した現在の各プロペラの回転数及び各舵角とに基づいて、各プロペラのプロペラ推力及び各舵の舵角が、推力配分装置7から出力された各プロペラ推力及び各舵角に夫々追従するように、例えばPID制御等を用いて、各プロペラのプロペラ推力及び各舵の舵角を制御する。駆動装置は、与えられた制御信号に従ってプロペラ用のエンジン又は舵用のモータ等のアクチュエータを駆動することが可能であるように構成されており、制御装置8から駆動装置に対して制御信号が出力され、各プロペラ及び各舵が夫々駆動される。
・・・
【0040】
スイッチ5が位置制御オン状態とされており、しかもジョイスティック22及びダイアル23がオペレータによって操作されている場合には、ジョイスティック22及びダイアル23の各操作量に応じた推力及び推力モーメントの指令値が、船舶1の位置及び方位角の変化量予測部45に与えられる。
【0041】
目標推力演算装置4のROM42又はRAM43には、船舶1の位置及び方位角の変化量を予測するための変化量演算プログラム45a及び船舶1の目標推力及び目標推力モーメントを演算するための目標推力演算プログラム46aの2つのコンピュータプログラムが格納されている(図1参照)。変化量予測プログラム45aに従ってCPU41が演算処理を行った場合には、目標推力演算装置4が船舶1の位置及び方位角の変化量を予測する変化量予測部45として機能し、目標推力演算プログラム46aに従ってCPU41が演算処理を行った場合には、船舶1の目標推力及び目標推力モーメントを演算する目標推力演算部46として機能するようになっている。
【0042】
次に、変化量予測部45の処理について説明する。図4は、本実施の形態に係る変化量予測部45において使用する船舶1の前後左右方向の推力の指令値JX,JY及び旋回方向の推力モーメントの指令値DN並びに船舶1の前後左右方向の速度u,v及び旋回方向の
角速度rの定義を示す模式図であり、図5は、本実施の形態に係る変化量予測部45において使用する船舶1の前後方向の位置の変化量(原点に対する前後方向相対位置)XGr,左右方向の位置の変化量(原点に対する左右方向相対位置)YGr及び旋回方向の方位角の変化量(XG方向に対する相対角度)Ψrを規定するXG-YG座標系の定義を示す模式図である。図4に示す如く、船舶1の前後方向の推力の指令値JX,左右方向の推力の指令値JY及び旋回方向の推力モーメントの指令値DN並びに船舶1の前後方向の速度u,左右方向の速度v及び旋回方向の角速度rを定義する。なお、推力の指令値JX及び速度uは前方向を正とし、推力の指令値JY及び速度vは右方向を正とし、推力モーメントの指令値DN及び角速度rは時計回りを正として夫々定義する。そして、ジョイスティック22及びダイアル23から夫々与えられた推力の指令値JX,JY及び推力モーメントの指令値DNから、(1)?(3)式に従って、かかる指令値JX,JY,DNによって夫々指令された推力及び推力モーメントが発生した場合の船舶1の速度u,v及び角速度rを演算する。
・・・
【0046】
図5に示すようなXG-YG座標系にて船舶1の位置(及び姿勢)制御が行われている場合、指令値JX,JY,DNによって夫々指令された推力及び推力モーメントが発生した場合の船舶1の前後方向の位置の変化量XGr,左右方向の位置の変化量YGr及び方位角の変化量Ψrは、前述のようにして求めた速度u,v及び角速度rから、(4)?(6)式に従って、夫々演算することができる。
【0051】
次に、目標推力演算部46の処理について説明する。以上のようにして得られた船舶1の位置及び方位角の変化量は目標推力演算部46に与えられる。本実施の形態に係る操縦装置6においては、オペレータがキーパッド21を操作することによって、目標推力演算装置4に予め目標位置及び目標方位角を設定することが可能となっている。キーパッド21から入力される目標位置及び目標方位角は、例えば緯度及び経度並びに方位によって表される絶対位置及び絶対方位角であり、これらは目標推力演算装置4のRAM43に格納される。目標推力演算部46は、変化量予測部45から船舶1の位置及び方位角の変化量が与えられたときには、かかる位置の変化量を前記目標位置に付加して新たな目標位置を算出し、またかかる方位角の変化量を前記目標方位角に付加して新たな目標方位角を算出して、これらをRAM43に格納していた目標位置及び目標方位角に代えてRAM43に格納する。
【0052】
また、目標推力演算部46は、検出装置3から船舶1の現在位置及び現在方位角を取り込み、これらと(新たな)目標位置及び目標方位角とに基づいて、例えばPID制御によって船舶1が目標位置及び目標方位角へ近づくような目標推力及び目標推力モーメントを演算し、これらを出力する。
【0053】
目標推力演算部46から出力された目標推力及び目標推力モーメントには、入力装置2から入力された推力及び推力モーメントの指令値が重み付け部13によって所定の重み付けがされたものが付加され、これによってフィードフォワード補償がされる。そして、かかるフィードフォワード補償がされた目標推力及び目標推力モーメントがスイッチ5へ出力されることとなる。
・・・
【0057】
また、本実施の形態においては、目標推力及び目標推力モーメントのフィードフォワード補償を行う構成としたが、これに限定されるものではなく、目標推力及び目標推力モーメントのフィードフォワード補償を行うことなく、目標推力演算部46の演算結果の目標推力及び目標推力モーメントを直接スイッチ5へ出力する構成であってもよい。


(2)以上より、引用文献1には、以下の事項が認定できる。

ア.上記明細書段落【0022】から、次の事項が認定できる。
「船舶1は、操縦装置6と、推力配分装置7と、制御装置8とを備えていること」、及び、「操縦装置6は、入力装置(手動入力受付手段)2,検出装置(検出手段)3,目標推力演算装置(予測手段,目標推力演算手段)4及びスイッチ(切替手段)5によって主として構成されること。」


イ.上記ア.に示す「操縦装置6」に関し、上記明細書【0023】の「操縦装置6の一部は、船員たるオペレータが船舶1を操縦したり、船舶1の運行状態を確認することができるように、コンソール10として船舶1の内部に設けられている。コンソール10は、その前面に入力装置2及び表示パネル9を有しており、」との記載、及び、上記明細書【0024】の「入力装置2は、コンソール10の前側に夫々配設されたキーパッド21,ジョイスティック22,ダイアル23を有しており、」との記載から、次の事項が認定できる。

「操縦装置6の一部は、コンソール10として船舶1の内部に設けられ、コンソール10は、その前面に入力装置2及び表示パネル9を有しており、
入力装置2は、コンソール10の前側に夫々配設されたキーパッド21,ジョイスティック22,ダイアル23を有していること。」


ウ.上記ア.に示す「操縦装置6」に関して、上記明細書段落【0001】の「目標位置及び目標方位角へ船舶及び飛行船等の航走体を到達させるべく、当該目標位置及び目標方位角並びに航走体の現在位置及び現在方位角に基づいて航走体の位置制御を行う航走体の操縦方法及びその実施に使用する操縦装置」との記載、及び、上記明細書段落【0028】の「船舶1の現在位置を検出するGPS等の位置センサ31と、船舶1の船首の方位角を検出するジャイロコンパス等の方位角センサ32と、船舶1の船速(対地速度)を検出する速度センサ33とを備える検出装置3は、検出した船舶1の現在位置、方位角及び速度の各情報を目標推力演算装置4に出力するようになっている」との記載から見て、以下の事項が認定できる。

「操縦装置6は、目標位置及び目標方位角へ船舶等の航走体を到達させるべく、当該目標位置及び目標方位角並びに航走体の現在位置及び現在方位角に基づいて航走体の位置制御を行う航走体の操縦方法の実施に使用するものであり、現在位置はGPS等の位置センサ31で検出し、船首の方位角はジャイロコンパス等の方位角センサ32で検出すること。」

エ.上記ア.に示す「目標推力演算装置(予測手段,目標推力演算手段)4」に関して、上記明細書段落【0040】の「ジョイスティック22及びダイアル23の各操作量に応じた推力及び推力モーメントの指令値が、船舶1の位置及び方位角の変化量予測部45に与えられる」との記載、上記明細書段落【0041】の「変化量予測プログラム45aに従ってCPU41が演算処理を行った場合には、目標推力演算装置4が船舶1の位置及び方位角の変化量を予測する変化量予測部45として機能し、目標推力演算プログラム46aに従ってCPU41が演算処理を行った場合には、船舶1の目標推力及び目標推力モーメントを演算する目標推力演算部46として機能するようになっている」との記載、上記明細書段落【0042】の「ジョイスティック22及びダイアル23から夫々与えられた推力の指令値JX,JY及び推力モーメントの指令値DNから、(1)?(3)式に従って、かかる指令値JX,JY,DNによって夫々指令された推力及び推力モーメントが発生した場合の船舶1の速度u,v及び角速度rを演算する」との記載、上記明細書段落【0046】の「指令値JX,JY,DNによって夫々指令された推力及び推力モーメントが発生した場合の船舶1の前後方向の位置の変化量XGr,左右方向の位置の変化量YGr及び方位角の変化量Ψrは、前述のようにして求めた速度u,v及び角速度rから、(4)?(6)式に従って、夫々演算することができる」との記載、及び、上記明細書段落【0051】の「船舶1の位置及び方位角の変化量は目標推力演算部46に与えられる」との記載、「操縦装置6においては、オペレータがキーパッド21を操作することによって、目標推力演算装置4に予め目標位置及び目標方位角を設定することが可能となっている。キーパッド21から入力される目標位置及び目標方位角は、例えば緯度及び経度並びに方位によって表される絶対位置及び絶対方位角であり」との記載、「目標推力演算部46は、変化量予測部45から船舶1の位置及び方位角の変化量が与えられたときには、かかる位置の変化量を前記目標位置に付加して新たな目標位置を算出し、またかかる方位角の変化量を前記目標方位角に付加して新たな目標方位角を算出して、これらをRAM43に格納していた目標位置及び目標方位角に代えてRAM43に格納する」との記載から、以下の事項が認定できる。

「目標推力演算装置(予測手段,目標推力演算手段)4が、変化量予測部45及び目標推力演算部46として機能するものであって、
オペレータがキーパッド21を操作することによって、目標推力演算装置4に予め目標位置及び目標方位角を設定し、キーパッド21から入力される目標位置及び目標方位角は、緯度及び経度並びに方位によって表される絶対位置及び絶対方位角であり、
変化量予測部45に与えられたジョイスティック22及びダイアル23の各操作量に応じた推力JX,JY及び推力モーメントDNの指令値から、夫々指令された推力及び推力モーメントが発生した場合の船舶1の速度u,v及び角速度rを演算するものであり、当該速度u,v及び角速度rから、指令値JX,JY,DNによって夫々指令された推力及び推力モーメントが発生した場合の船舶1の前後方向の位置の変化量XGr,左右方向の位置の変化量YGr及び方位角の変化量Ψrは夫々演算することができ、船舶1の位置及び方位角の変化量は目標推力演算部46に与えられ、目標推力演算部46は、変化量予測部45から船舶1の位置及び方位角の変化量が与えられたときには、かかる位置の変化量を前記目標位置に付加して新たな目標位置を算出し、またかかる方位角の変化量を前記目標方位角に付加して新たな目標方位角を算出すること。」

オ.上記エ.に示す「目標推力演算部46」、上記ア.に示す「推力配分装置7」及び「制御装置8」に関して、上記明細書段落【0052】の「目標推力演算部46は、検出装置3から船舶1の現在位置及び現在方位角を取り込み、これらと(新たな)目標位置及び目標方位角とに基づいて、例えばPID制御によって船舶1が目標位置及び目標方位角へ近づくような目標推力及び目標推力モーメントを演算し、これらを出力する」との記載、上記段落【0057】の「目標推力演算部46の演算結果の目標推力及び目標推力モーメントを直接スイッチ5へ出力する」との記載、上記明細書段落【0032】の「スイッチ5には、前記入出力インタフェース44に繋がる端子51と、前記入力装置2に繋がる端子52と、推力配分装置7に繋がる端子53とを有し」との記載、上記明細書段落【0033】の「オペレータがスイッチ5を操作することによって制御オン状態が選択されたときには、端子51及び53が接続されて、推力配分装置7には目標推力演算装置4から目標推力及び目標推力モーメントを示す信号11が出力される」との記載、上記明細書段落【0035】の「推力配分装置7は・・・前記目標推力及び目標推力モーメントを達成する夫々のプロペラ推力及び舵角を演算するようになっている。このような推力配分装置7は、制御装置8に接続されており、演算結果の各プロペラ推力及び各舵角を制御装置8に出力するようになっている。」との記載、及び、上記明細書段落【0037】の「制御装置8から駆動装置に対して制御信号が出力され、各プロペラ及び各舵が夫々駆動される」との記載から、以下の事項が認定できる。

「目標推力演算部46は、検出装置3から船舶1の現在位置及び現在方位角を取り込み、これらと(新たな)目標位置及び目標方位角とに基づいて、PID制御によって船舶1が目標位置及び目標方位角へ近づくような目標推力及び目標推力モーメントを演算し、演算結果の目標推力及び目標推力モーメントを直接スイッチ5へ出力するものであり、
推力配分装置7には、オペレータがスイッチ5を操作することによって制御オン状態が選択されたときに、入出力インタフェース44に繋がる端子51と推力配分装置7に繋がる端子53が接続されて、目標推力演算装置4から目標推力及び目標推力モーメントを示す信号11が出力され、推力配分装置7は、前記目標推力及び目標推力モーメントを達成する夫々のプロペラ推力及び舵角を演算するとともに、制御装置8に接続されており、演算結果の各プロペラ推力及び各舵角を制御装置8に出力するようになっており、
制御装置8から駆動装置に対して制御信号が出力され、各プロペラ及び各舵が夫々駆動されること。」


カ.上記イ.に示す「表示パネル」に関して、上記明細書段落【0027】の「表示パネル9は、・・・目標推力演算装置4から受信した目標位置、目標方位角、目標速度、現在位置、現在方位角、現在速度、位置制御のオン/オフ等の情報を表示するようになっている」との記載から、以下の事項が認定できる。

「表示パネル9は、目標推力演算装置4から受信した目標位置、目標方位角、目標速度、現在位置、現在方位角、現在速度、位置制御のオン/オフ等の情報を表示すること。」


以上から、「船舶1」の「操縦装置6」、「推力配分装置7」及び「制御装置8」について、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明1」という。)。

「船舶1の操縦装置6、推力配分装置7及び制御装置8であって、

操縦装置6は、入力装置(手動入力受付手段)2,検出装置(検出手段)3,目標推力演算装置(予測手段,目標推力演算手段)4及びスイッチ(切替手段)5によって主として構成され、操縦装置6の一部は、コンソール10として船舶1の内部に設けられ、コンソール10は、その前面に入力装置2及び表示パネル9を有し、
入力装置2は、コンソール10の前側に夫々配設されたキーパッド21,ジョイスティック22,ダイアル23を有するものにおいて、

操縦装置6は、目標位置及び目標方位角へ船舶等の航走体を到達させるべく、当該目標位置及び目標方位角並びに航走体の現在位置及び現在方位角に基づいて航走体の位置制御を行う航走体の操縦方法の実施に使用するものであり、現在位置はGPS等の位置センサ31で検出し、船首の方位角はジャイロコンパス等の方位角センサ32で検出するものであり、

目標推力演算装置(予測手段,目標推力演算手段)4が、変化量予測部45及び目標推力演算部46として機能するものであって、
オペレータがキーパッド21を操作することによって、目標推力演算装置4に予め目標位置及び目標方位角を設定し、キーパッド21から入力される目標位置及び目標方位角は、緯度及び経度並びに方位によって表される絶対位置及び絶対方位角であり、
変化量予測部45に与えられたジョイスティック22及びダイアル23の各操作量に応じた推力JX,JY及び推力モーメントDNの指令値から、夫々指令された推力及び推力モーメントが発生した場合の船舶1の速度u,v及び角速度rを演算するものであり、当該速度u,v及び角速度rから、指令値JX,JY,DNによって夫々指令された推力及び推力モーメントが発生した場合の船舶1の前後方向の位置の変化量XGr,左右方向の位置の変化量YGr及び方位角の変化量Ψrは夫々演算することができ、船舶1の位置及び方位角の変化量は目標推力演算部46に与えられ、目標推力演算部46は、変化量予測部45から船舶1の位置及び方位角の変化量が与えられたときには、かかる位置の変化量を前記目標位置に付加して新たな目標位置を算出し、またかかる方位角の変化量を前記目標方位角に付加して新たな目標方位角を算出するものであり、

目標推力演算部46は、検出装置3から船舶1の現在位置及び現在方位角を取り込み、これらと(新たな)目標位置及び目標方位角とに基づいて、PID制御によって船舶1が目標位置及び目標方位角へ近づくような目標推力及び目標推力モーメントを演算し、演算結果の目標推力及び目標推力モーメントを直接スイッチ5へ出力するものであり、
推力配分装置7には、オペレータがスイッチ5を操作することによって制御オン状態が選択されたときに、入出力インタフェース44に繋がる端子51と推力配分装置7に繋がる端子53が接続されて、目標推力演算装置4から目標推力及び目標推力モーメントを示す信号11が出力され、推力配分装置7は、前記目標推力及び目標推力モーメントを達成する夫々のプロペラ推力及び舵角を演算するとともに、制御装置8に接続されており、演算結果の各プロペラ推力及び各舵角を制御装置8に出力するようになっており、
制御装置8から駆動装置に対して制御信号が出力され、各プロペラ及び各舵が夫々駆動されるものであり、

表示パネル9は、目標推力演算装置4から受信した目標位置、目標方位角、目標速度、現在位置、現在方位角、現在速度、位置制御のオン/オフ等の情報を表示する、

船舶1の操縦装置6、推力配分装置7及び制御装置8。」


2.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動操船時の到達すべき目標値として設定された同目標値を、自動操船の途中で修正等の必要性が生じて変更する際に、同目標値の変更を、簡便な操作により容易に行なうことができるようにした操船指示方法、およびその方法を実施するための操船指示装置に関する。
・・・
【0004】そこで、本発明は、自動操船の途中で目標値を修正等のために変更する場合に、その都度新たに目標値を絶対値により入力し直す必要がなく、自動操船状況に応じて、簡便な操作により随時目標値を修正するなど変更しながら、常時最適な操船指示を行なうことができるような、操船指示方法および操船指示装置を提供することを目的としている。」

・「【0006】
【発明の実施の形態】以下、図面により本発明の実施の形態について説明する。図1には、本発明に係る操船指示装置の第1の実施の形態としてのジョイステックレバー式の操船指示装置5の外観図、図2には、その回路図が示されている。この操船指示装置5の操作盤上には、タッチパネル式(入力兼用)表示部3aと、操船により到達すべき船体の方位や船位等の目標値を絶対値により設定するためのデジタル設定部3bと、設定された目標値である到達すべき船体の船位の変更操作用および操船用のジョイステックレバー1と、設定された目標値である到達すべき船体の方位の変更操作用および操船用の旋回ダイヤル2とが配列されている。タッチパネル兼用の表示部3aには、船体の現在の方位や船位、操船により到達すべき船体の方位または船位、推進機や関連機器の作動状態等が表示される。さらに、押す事により入力可能な操縦方法(手動、自動船位保持制御、自動方位保持制御)が表示される。なお、デジタル設定部3bは、キーボードであっても良く、例えば緯度や経度等を用いて絶対値により目標値を設定する際に使用される。
【0007】そして、図2に示すように、表示部3aの操縦方法の表示で”手動”を選択した場合は、ジョイステックレバー1、および旋回ダイヤル2の操作信号は操作推力演算器27に送信され、この操作量に基づき、必要な合計推力が操作推力演算器27で演算された後、切替器28にてこの信号が選択され、推力配分器29にて、複数のアクチュエータ30の推力に配分され、配分された各々の推力に基づき、複数のアクチュエータ30をアクチュエータ制御装置である制御盤32により駆動する。
【0008】また、表示部3aの操縦方法の表示で“自動船位保持制御”または“自動方位保持制御”を選択した場合は、デジタル設定部3bから入力された“船体の方位”または“船体の船位”の絶対値の目標値は、自動船位保持制御装置22の目標値設定記憶器24に記憶される。なお、同時に平均船速等も入力、記憶される。次に比較器23で記憶された船体の方位または船位の目標値とジャイロコンパス21または船位測定装置20からの実測値とを比較した後、必要推力演算器25にて誤差を修正しつつ航行するために必要な推力等を演算し、切替器28にてこの信号が選択され、推力配分器29にて各アクチュエータで発生させるべき推力に配分して、複数のアクチュエータ制御装置である制御盤32により対応する複数のアクチュエータ30が操作される。
【0009】さらに、操船指示装置5に付随して(または操船指示装置5内に)目標値変更装置6が設けられている。表示部3aの操縦方法の表示で“自動船位保持制御”または“自動方位保持制御”を選択した場合は、目標値変更装置6により、目標値設定記憶器24から入力された現在の目標値(船位または方位)を、ジョイスティックレバー1または旋回ダイヤル2からの信号に基づき、目標値を変更処理して、変更した目標値を目標値設定記憶器24に出力できるようになっている。
【0010】目標値変更装置6には、ジョイスティックレバー1からのレバーの傾動方位信号に基づき、現在の目標値(例えば船位)をどの方向に変更するのかを示す「目標値の変更の方向」を指示するための目標値変更方向指示部7と、レバーの傾動角度信号に基づき、現在の目標値(船位)を新たな目標値に変更する場合の変更速度である「目標値の変更速度」を演算するための目標値変更速度指示部8と、レバーの作動継続時間信号に基づき、目標値の変更を続ける時間間隔である「目標値の変更時間」を指示するための目標値変更時間指示部9とを有している。そして、目標値変更方向指示部7、目標値変更速度指示部8、目標値変更時間指示部9からの信号に基づき、目標値設定記憶器24から入力された現在の目標値(船位)を変更処理し、変更された目標値(船位)を目標値設定記憶器24へ出力する。
【0011】同様に、目標値変更装置6には、旋回ダイヤル2からのダイヤルの旋回の向きの信号に基づき、現在の目標値(例えば方位)をどの方向に変更するのかを示す「目標値の変更の方向」を指示するための目標値変更方向指示部11と、ダイヤルの旋回角度信号に基づき、現在の目標値(方位)を新たな目標値に変更する場合の変更速度である「目標値の変更速度」を演算するための目標値変更速度指示部11と、ダイヤルの作動継続時間信号に基づき、目標値の変更を続ける時間間隔である「目標値の変更時間」を指示するための目標値変更時間指示部13とを有している。そして、目標値変更方向指示部11、目標値変更速度指示部12、目標値変更時間指示部13からの信号に基づき、目標値設定記憶器24から入力された現在の目標値(方位)を変更処理し、変更された目標値(方位)を目標値設定記憶器24へ出力する。
・・・
【0014】図3において、表示部3aの操縦方法の表示で“自動船位保持制御”を選択しなければ、各装置は、現在船位保持制御中ではないものと判断し別の処理を行なう。表示部3aの操縦方法の表示で“自動船位保持制御”が選択されると、各装置は、現在自動船位保持制御中であるものと判断し、ジョイステックレバー1が操作されない限り、目標値設定記憶器24に記憶されている目標値が達成されるように、前述のごとく自動制御系を作動させる。ジョイステックレバー1が操作されると、目標値変更装置6にて、ジョイステックレバー1の傾動の方位および傾動角度の大きさより船位の変更の向きおよび変更量を演算して新たな船位の目標値が算出されるとともに、目標値設定記憶器24に記憶された目標値が更新され、更新された新たな船位の目標値に到達するように、前述のごとく自動制御系を作動させる。
・・・
【0016】図4において、表示部3aの操縦方法の表示で“自動方位保持制御”を選択しなければ、各装置は、現在方位保持制御中ではないものと判断し別の処理を行なう。表示部3aの操縦方法の表示で“自動方位保持制御”が選択されると、各装置は、現在方位保持制御中であるものと判断し、旋回ダイヤル2が操作されない限り、そのまま設定された目標値が達成されるように、前述のごとく自動制御系を作動させる。旋回ダイヤル2が操作されると、目標値変更装置6にて、旋回ダイヤル2の旋回の向きおよび旋回角度の大きさより方位の変更の向きおよび変更量を演算して新たな方位の目標値が算出されるとともに、目標値設定記憶器24に記憶された目標値が更新され、更新された新たな方位の目標値に到達するように、前述のごとく自動制御系を作動させる。」


以上から、引用文献2には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明2」という。)。

「 操船指示装置5の操作盤上には、タッチパネル式(入力兼用)表示部3aと、操船により到達すべき船体の方位や船位等の目標値を絶対値により設定するためのデジタル設定部3bと、設定された目標値である到達すべき船体の船位の変更操作用および操船用のジョイステックレバー1と、設定された目標値である到達すべき船体の方位の変更操作用および操船用の旋回ダイヤル2とが配列されているものであり、
表示部3aの操縦方法の表示で“自動船位保持制御”または“自動方位保持制御”を選択した場合は、デジタル設定部3bから入力された“船体の方位”または“船体の船位”の絶対値の目標値は、自動船位保持制御装置22の目標値設定記憶器24に記憶されるとともに、
比較器23で記憶された船体の方位または船位の目標値とジャイロコンパス21または船位測定装置20からの実測値とを比較した後、必要推力演算器25にて誤差を修正しつつ航行するために必要な推力等を演算し、切替器28にてこの信号が選択され、推力配分器29にて各アクチュエータで発生させるべき推力に配分して、複数のアクチュエータ制御装置である制御盤32により対応する複数のアクチュエータ30が操作される、
操船指示装置5及び自動船位保持制御装置22において、

ジョイステックレバー1が操作されると、目標値変更装置6にて、ジョイステックレバー1の傾動の方位および傾動角度の大きさより船位の変更の向きおよび変更量を演算して新たな船位の目標値が算出されるとともに、目標値設定記憶器24に記憶された目標値が更新され、更新された新たな船位の目標値に到達するように、前述のごとく自動制御系を作動させ、
旋回ダイヤル2が操作されると、目標値変更装置6にて、旋回ダイヤル2の旋回の向きおよび旋回角度の大きさより方位の変更の向きおよび変更量を演算して新たな方位の目標値が算出されるとともに、目標値設定記憶器24に記憶された目標値が更新され、更新された新たな方位の目標値に到達するように、前述のごとく自動制御系を作動させるものであって、

タッチパネル兼用の表示部3aには、船体の現在の方位や船位、操船により到達すべき船体の方位または船位、推進機や関連機器の作動状態等が表示される、操船指示装置5及び自動船位保持制御装置22。」


3.引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
本発明は、船の航行に有益な情報を提供する航行情報表示装置に関する。
・・・
【0006】
すなわち、航行情報表示装置に基づく操船では、自船位置画像を介して目標地点の位置を間接的に認識するため、目標地点を直接目視できる場合に比べて、目標地点の位置がわかり難く、目標地点の位置を認識するまでに遅れ(認知遅れ)が生じる。また、検出した最新の自船位置や船首方向を自船位置画像に反映するまでの遅れ(表示遅れ)もある。従来の航行情報表示装置では、こうした認知遅れや表示遅れが、操船者が認知する目標地点と、実際の目標地点の位置にズレを生じさせ、目標地点への正確な到達を難しくしている。このため、従来の航行情報表示装置では、操船者が目標地点へ上手く操船できず、目標地点へのアプローチを繰り返すことがある。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来構成よりも目標地点への到達を容易にする航行情報表示装置の提供を目的とする。」

・「【0032】
上述のように、本実施例の航行情報表示装置1では、自船位置画像29の地図28上の点をキー操作部26で指定することにより、指定した地点の位置情報(二次元絶対座標)を測定情報用メモリ13に記憶可能となっており、操作者は、測定情報用メモリ13に記憶された任意の地点を目標地点として設定可能となっている。
【0033】
図2に示すように、目標地点に設定された地点は、自船位置画像29の地図28上に四角形の目標マーク41として示される。本実施例では、目標到達支援画像31は、目標地点周辺の狭い水域で目標地点への到達を支援するのに特化した画像であり、通常、目標地点へ向かう際には、目標到達支援画像31を用いる前に、まず、自船位置画像29に示された目標マーク41を手掛かりに目標地点の周辺水域まで航行する。
【0034】
目標到達支援画像31は、上述のように、目標地点周辺にあって、目標地点への精密な到達を支援するためのものである。この目標到達支援画像31を用いる際には、画像の表示遅れを最小限にするために、図3(a)に示すように、目標到達支援画像31を表示画面10全体に表示して、その他の画像を極力表示しないことが望ましい。
【0035】
目標到達支援画像31は、図3(a)に示すように、平面表示した仮想水面42に、現在の自船位置と船首方向を固定表示するとともに、目標地点と、該目標地点を基準とする複数の等距離線39とを、自船位置及び船首方向の変化に合わせて変動表示してなるもの
である。この目標到達支援画像31は、目標地点の相対位置を示すものであり、表示遅れを最小限に抑えるために海岸線や等深線等の地図情報は表示しない。
【0036】
仮想水面42は、自船に対する目標地点の相対位置を示すための平面である。この仮想水面42では自船位置と船首方向が固定され、仮想水面42上の全ての点は、自船からの距離と、船首方向に対する相対方位によって規定される。目標到達支援画像31では、仮想水面42の原点となる自船位置が画像の中央に固定的に表示され、該自船位置には自船位置画像29同様に船形の自船マーク34が付されている。また、目標到達支援画像31では、仮想水面42は船首方向が画像の上方となるよう固定され、前記自船マーク34は画像中央に先端を上向きにして固定表示される。
【0037】
目標到達支援画像31では、図3(a)に示すように、仮想水面42上の目標地点に対応する位置に、四角形状の目標マーク41が表示され、また、自船マーク34と目標マーク41を結ぶように直線状のガイドライン40が表示される。そして、かかる目標到達支援画像31の仮想水面42上に、目標マーク41を中心に、複数の等距離線39が等間隔に同心円状に表示される。この等距離線39は、目標地点を基準として、等距離間隔(ここでは10m間隔)で表示されており、各等距離線39には、目標地点までの距離がメートル単位で標記される。
【0038】
かかる目標到達支援画像31は、自船位置検出装置や方位検出装置が自船位置情報や方位情報を出力するのに合わせて高頻度で更新される。目標到達支援画像31では、上記のように、自船位置と船首方向が固定的に表示されるため、画像が更新されても自船マーク34は変動せず、自船位置と船首方向の変化に合わせて目標マーク41やガイドライン40、等距離線39が変動表示される。例えば、図3(a)の目標到達支援画像31の状態にあって、自船を自船マーク34の位置からP地点まで航行させた場合には、図3(b)に示すように、自船マーク34の位置・向きが固定されたまま、目標マーク41や等距離線39が自船マーク34の周囲を移動するように目標到達支援画像31が更新されることとなる。
【0039】
かかる目標到達支援画像31によれば、操船者は、仮想水面42上に表示される複数の等距離線39によって目標地点までの距離を簡単に把握可能となる。特に、等距離線39は、目標マーク41を中心に等距離間隔で同心円状に形成され、また、各等距離線には目標地点までの距離が標記されるため、操船者は目標地点までの距離を瞬時に把握できる。また、目標到達支援画像31では、等距離線39が目標マーク41とともに変動するため、操船者は、画像全体で目標地点の相対方位を把握でき、目標地点の相対方位も瞬時に把握できるという利点がある。」


以上の記載から、引用文献3には、以下の技術的事項が記載されていると認められる(以下「引用文献3に記載の技術的事項」という。)。

「航行情報表示装置において、
目標到達支援画像31は、自船位置検出装置や方位検出装置が自船位置情報や方位情報を出力するのに合わせて高頻度で更新されるものであり、
自船位置と船首方向が固定的に表示されるため、画像が更新されても自船マーク34は変動せず、自船位置と船首方向の変化に合わせて目標マーク41やガイドライン40、等距離線39が変動表示されるものであり、
仮想水面42の原点となる自船位置が画像の中央に固定的に表示され、該自船位置には自船位置画像29同様に船形の自船マーク34が付されているものであって、
仮想水面42は船首方向が画像の上方となるよう固定され、前記自船マーク34は画像中央に先端を上向きにして固定表示されるとともに、
仮想水面42上の目標地点に対応する位置に、四角形状の目標マーク41が表示されること。」



第6.対比・判断

1.引用発明1を主発明とした場合について

(1)対比

本願発明と引用発明1とを対比する。

ア.引用発明1の「船舶1の操縦装置6、推力配分装置7及び制御装置8」は、本願発明の「操船装置」に相当する。


イ.引用発明1の「現在位置」は「GPS等の位置センサ31で検出」するものであるから、本願発明の「衛星測位システムの信号」に相当する。
また、引用発明の「船首の方位角」は「ジャイロコンパス等の方位角センサ32で検出するもの」であり、「現在方位角」も現在の「船首の方位角」であって、同様に検出するものといえるから、引用発明の「船首の方位角」及び「現在方位角」は本願発明の「方位センサの信号」に相当する。
さらに、引用発明1の「オペレータがキーパッド21を操作することによって、目標推力演算装置4に予め目標位置及び目標方位角を設定し、キーパッド21から入力される目標位置及び目標方位角は、例えば緯度及び経度並びに方位によって表される絶対位置及び絶対方位角であ」ることからみて、引用発明1の「目標位置」は、緯度及び経度からなる座標といえるから本願発明の「目標座標」に相当し、引用発明1の「目標方位角」は本願発明の「目標方位」に相当し、引用発明の「船舶等の航走体」は、本願発明の「船舶」に相当するところ、引用発明1の「船舶等の航走体を」、「目標位置及び目標方位角へ到達させるべく、航走体の位置制御を行う」ことは、本願発明の「船舶を目標座標に移動させ、目標方位に回頭させる」ことに相当する。


ウ.引用発明1の「ジョイスティック22及びダイアル23」は本願発明の「操作具」に相当する。
また、引用発明1の「目標推力演算装置(予測手段,目標推力演算手段)4」は「操縦装置6」を構成するものであるところ、引用発明の「目標推力演算装置(予測手段,目標推力演算手段)4が、変化量予測部45及び目標推力演算部46として機能するものであって、オペレータがキーパッド21を操作することによって、目標推力演算装置4に予め目標位置及び目標方位角を設定し、キーパッド21から入力される目標位置及び目標方位角は、例えば緯度及び経度並びに方位によって表される絶対位置及び絶対方位角であり、変化量予測部45に与えられたジョイスティック22及びダイアル23の各操作量に応じた推力JX,JY及び推力モーメントDNの指令値から、夫々指令された推力及び推力モーメントが発生した場合の船舶1の速度u,v及び角速度rを演算するものであり、当該速度u,v及び角速度rから、指令値JX,JY,DNによって夫々指令された推力及び推力モーメントが発生した場合の船舶1の前後方向の位置の変化量XGr,左右方向の位置の変化量YGr及び方位角の変化量Ψrは夫々演算することができ、船舶1の位置及び方位角の変化量は目標推力演算部46に与えられ、目標推力演算部46は、変化量予測部45から船舶1の位置及び方位角の変化量が与えられたときには、かかる位置の変化量を前記目標位置に付加して新たな目標位置を算出し、またかかる方位角の変化量を前記目標方位角に付加して新たな目標方位角を算出する」ことは、本願発明の「操船装置」において、「操作具の操作量に基づいて目標座標および前記目標座標における船首の方位である目標方位を算出する」ことと、「操作具の操作量に基づいて目標座標および目標方位を算出する」限度で一致する。


エ.上記ウ.に示すように引用発明1の「目標推力演算部46」は「目標推力演算装置(予測手段,目標推力演算手段)4」の機能であって、「操縦装置6」を構成するものである。

また、引用発明1において、「目標位置及び目標方位角へ近づくような目標推力及び目標推力モーメントを演算」することは、「(新たな)目標位置及び目標方位角とに基づ」くものであるから、「目標位置及び目標方位角を確定する信号を取得した後に」行われることは技術的に明らかである。

さらに、引用発明1は「目標位置及び目標方位角へ近づくよう」に演算された「目標推力及び目標推力モーメントを達成する」よう「推力配分装置7」が演算した「各プロペラ推力及び各舵角」が「制御装置8」に出力され、「制御装置8から駆動装置に対して制御信号が出力され、各プロペラ及び各舵が夫々駆動される」ものであるから、「船舶1」を「目標位置」に向けて移動させるとともに「目標方位角」へ向けて回頭させるものといえる。

加えて、引用発明1は「検出装置3から船舶1の現在位置及び現在方位角を取り込み、これらと(新たな)目標位置及び目標方位角とに基づいて、PID制御によって船舶1が目標位置及び目標方位角へ近づくよう」演算された「目標推力及び目標推力モーメント」を達成するよう「推力配分装置7」が演算した「各プロペラ推力及び各舵角」が「制御装置8」に出力され、「制御装置8から駆動装置に対して制御信号が出力され、各プロペラ及び各舵が夫々駆動される」ものであるから、「現在位置」が「目標位置」に一致し、かつ「現在方位角」が「目標方位角」に一致するまで、「船舶1」を移動させるとともに、回頭させるものといえる。

そして、上記イ.での対比もふまえると、引用発明1の「現在位置」は本願発明の「現在座標」に、引用発明1の「現在方位角」は本願発明の「現在方位」に相当し、引用発明1の「目標推力演算部46は、検出装置3から船舶1の現在位置及び現在方位角を取り込み、これらと(新たな)目標位置及び目標方位角とに基づいて、PID制御によって船舶1が目標位置及び目標方位角へ近づくような目標推力及び目標推力モーメントを演算し、演算結果の目標推力及び目標推力モーメントを直接スイッチ5へ出力するものであり、推力配分装置7には、オペレータがスイッチ5を操作することによって制御オン状態が選択されたときに、入出力インタフェース44に繋がる端子51と推力配分装置7に繋がる端子53が接続されて、目標推力演算装置4から目標推力及び目標推力モーメントを示す信号11が出力され、推力配分装置7は、前記目標推力及び目標推力モーメントを達成する夫々のプロペラ推力及び舵角を演算するとともに、制御装置8に接続されており、演算結果の各プロペラ推力及び各舵角を制御装置8に出力するようになっており、制御装置8から駆動装置に対して制御信号が出力され、各プロペラ及び各舵が夫々駆動されるものであ」ることは、本願発明の「操船装置」が、「前記目標座標および前記目標方位を確定する信号を取得した後に船舶を前記目標座標に向けて移動させるとともに、前記目標方位に向けて回頭させ、前記衛星測位システムの信号から算出した現在座標が前記目標座標に一致し、かつ前記方位センサの信号から算出した現在方位が前記目標方位に一致するまで、船舶を移動させるとともに、回頭させ」ることに相当する。


オ.引用発明1の「表示パネル9」は本願発明の「表示装置」に相当し、上記ウ.で検討したとおり、引用発明1の「目標推力演算装置4」は「操作具の操作量に基づいて目標座標および目標方位を算出する」ものであるから、引用発明1の「表示パネル9」に表示する「目標推力演算装置4から受信した目標位置、目標方位角」は、前記操作具の操作量に対応するよう表示されるといえる。また、上記エ.で検討したように、引用発明1の「現在位置」は本願発明の「現在座標」に、引用発明1の「現在方位角」は本願発明の「現在方位」に相当する。
そうすると、引用発明1の「表示パネル9は、目標推力演算装置4から受信した目標位置、目標方位角、目標速度、現在位置、現在方位角、現在速度、位置制御のオン/オフ等の情報を表示する」ことと、本願発明の「前記現在座標および前記現在方位を表示装置に表示し、前記目標座標および前記目標方位を前記操作具の操作量に対応するように表示装置に表示する」こととは、「前記現在座標および前記現在方位を表示装置に表示し、前記目標座標および前記目標方位を前記操作具の操作量に対応するように表示装置に表示する」(ただし本願発明の「前記目標方位」は「前記目標座標における船首の方位」であり、引用発明1の「目標方位角」は、「キーパッド21から入力される」、「緯度及び経度並びに方位によって表される」「絶対方位角」に、「変化量予測部45に与えられた」「ダイアル23の各操作量に応じた」「推力モーメントDNの指令値」に基づき演算される、「指令値」によって指令された「推力モーメントが発生した場合」の「船舶1」の「方位角の変化量Ψr」を付加したもの。)点で共通する。


したがって、本願発明と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点1>
「衛星測位システムの信号と方位センサの信号とに基づいて船舶を目標座標に移動させ、目標方位に回頭させる操船装置において、
操作具の操作量に基づいて目標座標および目標方位を算出し、前記目標座標および前記目標方位を確定する信号を取得した後に船舶を前記目標座標に向けて移動させるとともに、前記目標方位に向けて回頭させ、
前記衛星測位システムの信号から算出した現在座標が前記目標座標に一致し、かつ前記方位センサの信号から算出した現在方位が前記目標方位に一致するまで、船舶を移動させるとともに、回頭させ、
前記現在座標および前記現在方位を表示装置に表示し、前記目標座標および前記目標方位を前記操作具の操作量に対応するように表示装置に表示する、
操船装置。」


<相違点1>
本願発明は、「目標方位」が「前記目標座標における船首の方位であ」り、
「表示装置」について、「船舶の移動に対応するように前記目標座標の表示を変更するとともに、船舶の回頭に対応するように前記目標方位の表示を変更し、前記現在座標および前記現在方位を一の図形によって表示し、前記目標座標および前記目標方位を他の図形によって表示し、前記他の図形は、破線形状である」のに対して、

引用発明1の「目標方位角」は、「キーパッド21から入力される」、「緯度及び経度並びに方位によって表される」「絶対方位角」に、「変化量予測部45に与えられた」「ダイアル23の各操作量に応じた」「推力モーメントDNの指令値」に基づき演算される、「指令値」「DN」によって指令された「推力モーメントが発生した場合」の「船舶1」の「方位角の変化量Ψr」を付加したものであって、「目標位置」における「船首の方位角」であるか不明であり、

引用発明1の「表示パネル9」は、「目標推力演算装置4から受信した目標位置、目標方位角、目標速度、現在位置、現在方位角、現在速度、位置制御のオン/オフ等の情報を表示する」ものであり、「船舶の移動に対応するように前記目標座標の表示を変更するとともに、船舶の回頭に対応するように前記目標方位の表示を変更し、前記現在座標および前記現在方位を一の図形によって表示し、前記目標座標および前記目標方位を他の図形によって表示し、前記他の図形は、破線形状である」構成を具備していない点。

(2)判断

相違点1について検討する。

ア.引用文献1の記載について

引用発明1においては「オペレータがキーパッド21を操作することによって、目標推力演算装置4に予め目標位置及び目標方位角を設定し、キーパッド21から入力される目標位置及び目標方位角は、緯度及び経度並びに方位によって表される絶対位置及び絶対方位角であ」るから、引用発明1において表示される「目標推力演算装置4から受信した目標位置、目標方位角」の「情報」は、「緯度及び経度並びに方位によって表される絶対位置及び絶対方位角」であるといえる一方、当該「緯度及び経度並びに方位によって表される絶対位置及び絶対方位角」の具体的な表示の態様までは引用文献1に記載も示唆もされていないから、引用文献1において、引用発明1を相違点1に係る本願発明の構成のように構成する動機付けは存在しない。


イ.引用発明2の構成及び適用について

上記第5.2.に示すとおり、引用発明2は「操船指示装置5及び自動船位保持制御装置22」に関し、「ジョイステックレバー1が操作されると、目標値変更装置6にて、ジョイステックレバー1の傾動の方位および傾動角度の大きさより船位の変更の向きおよび変更量を演算して新たな船位の目標値が算出されるとともに、目標値設定記憶器24に記憶された目標値が更新され、更新された新たな船位の目標値に到達するように、前述のごとく自動制御系を作動させ、旋回ダイヤル2が操作されると、目標値変更装置6にて、旋回ダイヤル2の旋回の向きおよび旋回角度の大きさより方位の変更の向きおよび変更量を演算して新たな方位の目標値が算出されるとともに、目標値設定記憶器24に記憶された目標値が更新され、更新された新たな方位の目標値に到達するように、前述のごとく自動制御系を作動させるものであって、タッチパネル兼用の表示部3aには、船体の現在の方位や船位、操船により到達すべき船体の方位または船位、推進機や関連機器の作動状態等が表示される」構成を具備するものである。

引用発明2の「操船指示装置5及び自動船位保持制御装置22」は本願発明の「操船装置」に、以下同様に「タッチパネル兼用の表示部3a」は「表示装置」に、「現在の方位」は「現在方位」に、「現在の船位」は「現在座標」に、「操船により到達すべき船体の方位」は「前記目標座標における船首の方位である目標方位」に、「操船により到達すべき船体の船位」は「目標座標」に、「ジョイステックレバー1」及び「旋回ダイヤル2」は「操作具」に、「傾動角度の大きさ」及び「旋回角度の大きさ」は「操作量」に相当する。

また、引用発明2は、「ジョイステックレバー1が操作されると、目標値変更装置6にて、ジョイステックレバー1の傾動の方位および傾動角度の大きさより船位の変更の向きおよび変更量を演算して新たな船位の目標値が算出されるとともに、目標値設定記憶器24に記憶された目標値が更新され、更新された新たな船位の目標値に到達するように、前述のごとく自動制御系を作動させ、旋回ダイヤル2が操作されると、目標値変更装置6にて、旋回ダイヤル2の旋回の向きおよび旋回角度の大きさより方位の変更の向きおよび変更量を演算して新たな方位の目標値が算出されるとともに、目標値設定記憶器24に記憶された目標値が更新され、更新された新たな方位の目標値に到達するように、前述のごとく自動制御系を作動させるものであ」るから、引用発明2の「表示部3a」に表示される「操船により到達すべき船体の方位または船位」は、「ジョイステックレバー1」の「傾動角度の大きさ」及び「旋回ダイヤル2」の「旋回角度の大きさ」に対応して表示されるものといえる。

以上のとおり、引用発明2は、本願発明の「前記現在座標および前記現在方位を表示装置に表示し、前記目標座標および前記目標方位を前記操作具の操作量に対応するように表示装置に表示する」ことに相当する構成を備えたものといえる。

しかしながら、引用文献2には、「タッチパネル兼用の表示部3a」を、「船体」の移動や回頭に対応するよう「操船により到達すべき船体の方位または船位」の「表示を変更する」こと、及び、「前記現在座標および前記現在方位」を一の図形によって表示し、「操船により到達すべき船体の方位または船位」を他の図形によって表示し、前記他の図形を破線形状とすること、すなわち本願発明の上記相違点1における「船舶の回頭に対応するように前記目標方位の表示を変更し、前記現在座標および前記現在方位を一の図形によって表示し、前記目標座標および前記目標方位を他の図形によって表示し、前記他の図形は、破線形状である」よう構成することは記載も示唆もないから、引用発明1に、引用発明2を適用しても、本願発明の上記相違点1に係る構造には至らず、また、引用発明1に、引用発明2を適用した際に、本願発明の上記相違点1に係る構造を具備させることの動機付けも存在しない。


ウ.引用文献3に記載の技術的事項の構成及び適用について

上記第5.3.に示す引用文献3に記載の技術的事項は次のとおりである。
「航行情報表示装置において、
目標到達支援画像31は、自船位置検出装置や方位検出装置が自船位置情報や方位情報を出力するのに合わせて高頻度で更新されるものであり、
自船位置と船首方向が固定的に表示されるため、画像が更新されても自船マーク34は変動せず、自船位置と船首方向の変化に合わせて目標マーク41やガイドライン40、等距離線39が変動表示されるものであり、
仮想水面42の原点となる自船位置が画像の中央に固定的に表示され、該自船位置には自船位置画像29同様に船形の自船マーク34が付されているものであって、
仮想水面42は船首方向が画像の上方となるよう固定され、前記自船マーク34は画像中央に先端を上向きにして固定表示されるとともに、
仮想水面42上の目標地点に対応する位置に、四角形状の目標マーク41が表示される、こと。」

上記引用文献3に記載の技術的事項の「航行情報表示装置」は本願発明1の「表示装置」に相当し、以下同様に、「自船位置と船首方向」は「現在座標」と「現在方位」に、「目標マーク41」は「目標座標」に相当する。
そして、上記引用文献3に記載の技術的事項の「自船位置と船首方向の変化に合わせて目標マーク41やガイドライン40、等距離線39が変動表示される」ことは、本願発明の「船舶の移動に対応するように前記目標座標の表示を変更する」ことに相当する。
さらに、上記引用文献3に記載の技術的事項の「自船位置と船首方向が固定的に表示されるため、画像が更新されても自船マーク34は変動せず、自船位置と船首方向の変化に合わせて目標マーク41やガイドライン40、等距離線39が変動表示されるものであ」るから、「船形の自船マーク34」は、本願発明の「前記現在座標および前記現在方位を表示」する「一の図形」に相当し、引用文献3に記載の技術的事項の「自船位置と船首方向が固定的に表示されるため、画像が更新されても自船マーク34は変動せず、自船位置と船首方向の変化に合わせて目標マーク41やガイドライン40、等距離線39が変動表示されるものであ」ることは、本願発明の「前記現在座標および前記現在方位を一の図形によって表示」することに相当する。
加えて、上記引用文献3に記載の技術的事項の「仮想水面42上の目標地点」は「目標座標」を示すものといえるから、上記引用文献3に記載の技術的事項の「仮想水面42上の目標地点に対応する位置に、四角形状の目標マーク41が表示される」ことと、本願発明の「前記目標座標および前記目標方位を他の図形によって表示する」こととは、「前記目標座標を他の図形によって表示する」点で共通する。

以上のとおり、引用文献3に記載の技術的事項は、上記相違点1における本願発明の構成のうち、「船舶の移動に対応するように前記目標座標の表示を変更し、前記現在座標および前記現在方位を一の図形によって表示し、前記目標座標を他の図形によって表示する」ことに相当する構成を含むものといえる。

しかしながら、上記引用文献3に記載の技術的事項の課題は、上記第5.3.に示すように、「従来の航行情報表示装置では、こうした認知遅れや表示遅れが、操船者が認知する目標地点と、実際の目標地点の位置にズレを生じさせ、目標地点への正確な到達を難しくしている」(段落【0006】)ことに鑑みてなされた、「従来構成よりも目標地点への到達を容易にする航行情報表示装置の提供」(段落【0007】)であるが、引用発明1の課題は、上記第5.1.(1)に示すように、「位置制御オン及び位置制御オフの両方においてオペレータに同様の操縦感覚を与え、従来に比して操縦性を向上させることができる航走体の操縦方法及びその実施に使用する操縦装置を提供すること」(段落【0009】)であるから、引用発明1に引用文献3に記載の技術的事項を適用する動機付けは存在しない。

また、引用文献3に記載の技術的事項は、「前記目標方位」(すなわち「目標座標における船首の方向である目標方位」)を「目標マーク41」によって表示し、船首方向の変化に合わせて「目標マーク41」の表示を変更するものでなく、さらに、「目標マーク41」を、「破線形状」としたものでもないから、本願発明の上記相違点1における「目標方位」が「前記目標座標における船首の方位であ」り、「船舶の回頭に対応するように前記目標方位の表示を変更し」、「前記目標方位を他の図形によって表示し、前記他の図形は、破線形状である」よう構成することは記載も示唆もなく、引用発明1に、引用文献3に記載の技術的事項を適用しても、本願発明の上記相違点1に係る構造には至らない。


以上のことから、本願発明は、当業者であっても引用発明1?2、引用文献3に記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


2.引用発明2を主発明とした場合について

本願発明と引用発明2とを対比すると、上記1.(2)イ.に示したように、少なくとも引用発明2が本願発明の上記相違点1における「船舶の回頭に対応するように前記目標方位の表示を変更し、前記現在座標および前記現在方位を一の図形によって表示し、前記目標座標および前記目標方位を他の図形によって表示し、前記他の図形は、破線形状である」ことに相当する構成を備えていない点で相違する(以下「相違点2」という。)。

一方、上記1.(2)ウ.に示すように、上記引用文献3に記載の技術的事項の課題は、「従来の航行情報表示装置では、こうした認知遅れや表示遅れが、操船者が認知する目標地点と、実際の目標地点の位置にズレを生じさせ、目標地点への正確な到達を難しくしている」ことに鑑みてなされた、「従来構成よりも目標地点への到達を容易にする航行情報表示装置の提供」であるが、引用発明2の課題は、上記第5.2.に示すように、「自動操船の途中で目標値を修正等のために変更する場合に、その都度新たに目標値を絶対値により入力し直す必要がなく、自動操船状況に応じて、簡便な操作により随時目標値を修正するなど変更しながら、常時最適な操船指示を行なうことができるような、操船指示方法および操船指示装置を提供すること」(段落【0004】)であるから、引用発明2に引用文献3に記載の技術的事項を適用する動機付けは存在しない。

そして、上記1.(2)で検討したように、上記相違点2に係る本願発明の構成における「船舶の回頭に対応するように前記目標方位の表示を変更し」、「前記目標方位を他の図形によって表示し、前記他の図形は、破線形状である」よう構成することは、引用文献1乃至3に記載も示唆もない。


以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、当業者であっても引用発明1?2、引用文献3に記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。



第7.原査定について

審判請求時の補正により、本願発明は「前記他の図形は、破線形状である」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載されている発明(引用発明1)、引用文献2に記載されている発明(引用発明2)及び引用文献3に記載されている事項(引用文献3に記載の技術的事項)に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8.むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-08-16 
出願番号 特願2014-216749(P2014-216749)
審決分類 P 1 8・ 572- WY (B63H)
P 1 8・ 121- WY (B63H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 畔津 圭介  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 岡▲さき▼ 潤
中川 真一
発明の名称 操船装置  
代理人 矢野 寿一郎  
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