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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F03B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F03B
管理番号 1354523
審判番号 不服2018-6352  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-09 
確定日 2019-08-14 
事件の表示 特願2015-517851「流体流れによるエネルギーを変換する装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月27日国際公開、WO2013/190304、平成27年 7月16日国内公表、特表2015-520329〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)6月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年6月20日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月1日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年8月7日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年12月27日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成30年1月9日)、これに対して平成30年5月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成30年5月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年5月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「水流から電気を発生させるための装置であって、
- ベンチュリが収束部分の端部と混合チャンバとの間に画定されるように、混合チャンバへの入口を定める混合チャンバの第1の端部に連結された収束部分と、
- 前記混合チャンバの出口を定める前記混合チャンバの第2の端部に連結された拡散器部分であって、使用時、出口の圧力が、前記ベンチュリの圧力よりも大きいように構成された拡散器部分と、
- 環状路がチューブと前記収束部分との間に画定されて、主流れ用の第1の流路を形成するように前記収束部分内に配置され、前記チューブの内部に副流れ用の第2の流路を画定するチューブの少なくとも一部と、
- 発電機に連結可能なタービンと、
を含み、前記タービンは前記チューブ内に配置され、
前記装置は、使用時、主流れが前記混合チャンバで副流れと混合して、前記拡散器部分に入ることができる混合流を形成するように、構成される、装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年8月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「水流から電気を発生させるための装置であって、
- ベンチュリが収束部分の端部と混合チャンバとの間に画定されるように、混合チャンバへの入口を定める混合チャンバの第1の端部に連結された収束部分と、
- 前記混合チャンバの出口を定める前記混合チャンバの第2の端部に連結された拡散器部分であって、使用時、出口の圧力が、前記ベンチュリの圧力よりも大きいように構成された拡散器部分と、
- 環状路がチューブと前記収束部分との間に画定されて、第1の流路を形成するように前記収束部分内に配置され、前記チューブの内部に第2の流路を画定するチューブの少なくとも一部と、
- 発電機に連結可能なタービンと、
を含み、前記タービンは前記チューブ内に配置される、装置。」

2.補正の適否
本件補正前の請求項1に「第1の流路」とあるのを「主流れ用の第1の流路」とし、本件補正前の請求項1に「第2の流路」とあるのを「副流れ用の第2の流路」とした上で、本件補正前の請求項1に「前記装置は、使用時、主流れが前記混合チャンバで副流れと混合して、前記拡散器部分に入ることができる混合流を形成するように、構成される」という事項を加入する補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記「1(1)」に記載した、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)引用例の記載事項
ア.原査定の拒絶理由で引用された本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例である、米国特許出願公開第2010/0289268号明細書(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、当審が付与した。)。
a.「[0001] The invention relates to an underwater turbine for converting flow energy from water, for example water flowing in brooks, rivers or tidal and/or ocean currents, into mechanical and/or electrical energy.」
(仮訳:本発明は、水、例えば小川、川又は潮流及び/若しくは海流を流れる水からの流れエネルギーを機械的及び/又は電気的エネルギーに変換する水中タービンに関する。)
b.「[0022] The embodiment of an underwater turbine according to the invention which is illustrated in FIG. 1 and denoted in its entirety by 10 has an inner axial turbine constructed as a shrouded turbine 12 of which the turbine wheel 14 is connected so as to be fixed against rotation to the shaft of a generator 18-in the illustrated case an electrical generator-which is disposed centrally in the turbine housing 15(当審注:「15」は「16」の誤記).」
(仮訳:[0022] 図1で説明され、全体が10で示される、本発明に係る水中タービンの実施形態は、シュラウド付きタービン12として構成された内側軸流タービンを有し、そのタービンホイール14は、タービンハウジング16の中心に配置されたエネルギー変換器18-図示の場合では発電機-の軸に回転不能に固定されるように接続されている。)
c.「[0023] The shrouded turbine 12 is disposed in the region of the narrowest cross-section of a Venturi nozzle arrangement 20 which surrounds it. Thus a part-quantity of the water flowing in from above in the downward direction in the drawing flows through the axial turbine in the central region, whereby the turbine wheel 14 and the shaft of the generator 18 connected thereto so as to be fixed against rotation are driven and electrical energy is produced.」
(仮訳:[0023] シュラウド付きタービン12は、これを取り囲むベンチュリノズル装置20の最も狭い断面の領域内に配置されている。したがって、図中上方から下方向に流れる水の一部が中心領域の軸流タービンに流れ、これにより、タービンホイール14及びそれに回転不能に連結された発電機18の軸が駆動され、電気エネルギーが生成される。)
d.「[0024] A second part-quantity flows through the space formed between the interior of the Venturi nozzle arrangement 20 and the shrouded turbine 12, whereby in the region of the narrowest cross-section of the Venturi nozzle arrangement a central part-quantity of the flow flowing off from the axial turbine is combined with the second part-quantity of the flow which surrounds it concentrically. Due to the pressure which is thereby reduced at the turbine outlet the pressure drop between the turbine inlet and outlet is enhanced and thus the turbine output is increased.」
(仮訳:[0024] 第2の部分は、ベンチュリノズル装置20の内側とシュラウド付きタービン12との間に形成された空間を通って流れ、これにより、ベンチュリノズル装置の最も狭い断面の領域において、軸流タービンから流出する流れの中央部分がこれを同心的に取り囲む前記第2の部分と合わさる。それによりタービン出口で低減される圧力のために、タービン入口と出口との間の圧力降下が高められ、タービン出力が増大される。)
e.「[0025] The embodiment of the underwater turbine 10 according to the invention which is shown in FIG. 2 corresponds in function and basic construction to the embodiment described above in connection with FIG. 1, where functionally identical components in the two embodiments in the drawings are also allocated the same reference numerals, so that in order to avoid repetitions it is sufficient if only the amendments or additions which are made relative to the first embodiment are described, whilst reference can be made moreover to the preceding description.」
(仮訳:[0025] 図2に示されている、本発明に係る水中タービン10の実施形態は、機能及び基本的な構成に関して図1に関連して上述した実施形態と一致している。図示された2つの実施形態において、機能的に同一の構成要素には同一の参照番号が付されており、繰り返しを避けるため、第1の実施形態に対して行われる修正又は追加のみを記載すれば十分であるが、更に先の説明を参照することもできる。)
f.「[0026] In contrast to the first embodiment, the Venturi nozzle arrangement 20 in the second embodiment does not have a circular cross-section but is deformed in cross-section to an oval shape, so that on opposing sides of the turbine housing 16 of the shrouded turbine 12 two partially or completely separate flow chambers are formed for the outer part-quantities of the flow flowing through the Venturi nozzle arrangement. In order to prevent the production of energy-absorbing turbulence in the total flow quantity flowing out due to the radial components of the outer part-quantity or part-quantities of the flow, a baffle wall 22 like a guide vane extending in the longitudinal central direction of the underwater turbine is provided on the outlet side and is also guided a little way into the outlet side of the turbine housing 16 of the shrouded turbine 12 and passes radially through the outlet side of the Venturi nozzle arrangement.」
(仮訳:[0026] 第1の実施形態とは対照的に、第2の実施形態のベンチュリノズル装置20は、円形断面を有しておらず、断面が楕円形に変形されている。そのため、シュラウド付きタービン12のタービンハウジング16の対向する側に、ベンチュリノズル装置を流れる流れの外側部分に対する2つの部分的又は完全に分離された流れ室が形成されている。流れの前記外側部分の半径方向成分により流出する全体の流れにおいてエネルギーを吸収する乱流が発生することを防止するために、水中タービンの長手中心方向に延びる案内羽根のようなバッフル壁22が出口側に設けられており、また、シュラウド付きタービン12のタービンハウジング16の出口側中にわずかに案内され、ベンチュリノズル装置の出口側を半径方向に貫通している。)
そして、記載事項a、b及びeからみて、次の事項が理解できる。
g.図1又は図2に記載された水中タービン10は、いずれも、流れる水からの流れエネルギーを電気的エネルギーに変換する水中タービン10である。
記載事項c及びdを併せて考慮すると、図1の記載から、次の事項が看取できる。
h.ベンチュリノズル装置20は、ベンチュリノズル装置20の入口から下流にいくに従って断面が狭くなる上流部分と、前記上流部分の下流側に連続し、断面が変化しない中間部分と、前記中間部分の下流側に連続し、ベンチュリノズル装置20の出口に向かって下流にいくに従って断面が広くなる下流部分とからなり、
タービンハウジング16は、ベンチェリノズル装置20内に配置されてベンチェリノズル装置20の入口から前記上流部分を貫通して前記中間部分の途中まで延在し、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分及び前記中間部分の内側とタービンハウジング16との間に空間が形成され、タービンハウジング16の出口が前記中間部分内に位置し、
タービンホイール14は、タービンハウジング16内に配置される。
そして、記載事項fから図1に記載されたベンチュリノズル装置20が円形断面を有していることが理解できるから、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分ないし前記下流部分のうち、前記中間部分が最も断面が狭いということができる。そうすると、記載事項c及びd並びに図1の記載から、更に次の事項が理解できる。
i.ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、タービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出する中央部分と、前記空間を通って流れる第2の部分とが、ベンチュリノズル装置20の前記中間部分内において合わさる。
また、記載事項e及びfを併せて考慮すると、図2の記載から、次の事項が看取できる。
j.ベンチュリノズル装置20は、ベンチュリノズル装置20の入口から下流にいくに従って断面が狭くなる上流部分と、前記上流部分の下流側に連続し、断面が変化しない中間部分と、前記中間部分の下流側に連続し、ベンチュリノズル装置20の出口に向かって下流にいくに従って断面が広くなる下流部分とからなり、
タービンハウジング16は、ベンチェリノズル装置20内に配置されてベンチェリノズル装置20の入口から前記上流部分の途中まで延在し、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分の内側とタービンハウジング16との間に空間が形成され、タービンハウジング16の出口が前記上流部分内に位置し、タービンハウジング16の断面は、タービンハウジング16の出口近傍において前記出口に向かって下流にいくに従って広くなり、
タービンホイール14は、タービンハウジング16内に配置され、
バッフル壁22は、タービンハウジング16内におけるタービンホイール14よりも下流からベンチュリノズル装置20の出口まで水中タービン10の長手中心方向に延在する。
そして、記載事項fを併せて考慮すると、更に次の事項も理解できる。
k.ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、中央部分がタービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出し、外側部分が前記空間を通って流れる。
イ.そうすると、これらの事項、特に記載事項aないしd、事項gないしi並びに図1の記載からみて、本件補正後の請求項1の記載に倣って整理すれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「流れる水からの流れエネルギーを電気的エネルギーに変換する水中タービン10であって、
ベンチュリノズル装置20の入口から下流にいくに従って断面が狭くなる上流部分と、前記上流部分の下流側に連続し、断面が変化しない中間部分と、前記中間部分の下流側に連続し、ベンチュリノズル装置20の出口に向かって下流にいくに従って断面が広くなる下流部分とからなるベンチュリノズル装置20と、
ベンチェリノズル装置20内に配置されてベンチェリノズル装置20の入口から前記上流部分を貫通して前記中間部分の途中まで延在し、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分及び前記中間部分の内側との間に空間を形成し、出口が前記中間部分内に位置するタービンハウジング16と、
タービンハウジング16内に配置され、発電機18の軸に回転不能に連結されたタービンホイール14と、
を含み、
ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、タービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出する中央部分と、前記空間を通って流れる第2の部分とが、ベンチュリノズル装置20の前記中間部分内において合わさる、水中タービン10。」
更に、特に記載事項a、e及びf、事項g、j及びk並びに図2の記載からみて、本件補正後の請求項1の記載に倣って整理すれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明2」という。)も記載されていると認められる。
「流れる水からの流れエネルギーを電気的エネルギーに変換する水中タービン10であって、
ベンチュリノズル装置20の入口から下流にいくに従って断面が狭くなる上流部分と、前記上流部分の下流側に連続し、断面が変化しない中間部分と、前記中間部分の下流側に連続し、ベンチュリノズル装置20の出口に向かって下流にいくに従って断面が広くなる下流部分とからなるベンチュリノズル装置20と、
ベンチェリノズル装置20内に配置されてベンチェリノズル装置20の入口から前記上流部分の途中まで延在し、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分の内側との間に空間を形成し、出口が前記上流部分内に位置し、断面が前記出口近傍で前記出口に向かって下流にいくに従って広くなるタービンハウジング16と、
タービンハウジング16内に配置され、発電機18の軸に回転不能に連結されたタービンホイール14と、
タービンハウジング16内におけるタービンホイール14よりも下流からベンチュリノズル装置20の出口まで水中タービン10の長手中心方向に延在するバッフル壁22と、
を含み、
ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、中央部分がタービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出し、外側部分が前記空間を通って流れる、水中タービン10。」
(3)対比・判断
ア.本件補正発明と引用発明1の対比・判断
本件補正発明と引用発明1を対比する。
a.引用発明1の「流れる水からの流れエネルギーを電気的エネルギーに変換する」ことは、本件補正発明の「水流から電気を発生させる」ことに相当するから、引用発明1の「流れる水からの流れエネルギーを電気的エネルギーに変換する水中タービン10」は、本件補正発明の「水流から電気を発生させるための装置」に相当する。
b.引用発明1のベンチュリノズル装置20の「ベンチュリノズル装置20の入口から下流にいくに従って断面が狭くなる上流部分」及び「ベンチュリノズル装置20の出口に向かって下流にいくに従って断面が広くなる下流部分」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本件補正発明の「収束部分」及び「拡散器部分」に相当する。引用発明1の「タービンハウジング16」、「発電機18」及び「タービンホイール14」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本件補正発明の「チューブ」、「発電機」及び「タービン」に相当する。そうすると、引用発明1の「タービンハウジング16内に配置され、発電機18の軸に回転不能に連結されたタービンホイール14と、を含」むことは、本件補正発明の「発電機に連結可能なタービンと、を含み、前記タービンは前記チューブ内に配置され」ることに相当し、引用発明1の「ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、タービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出する中央部分」は、本件補正発明の「副流れ」に相当する。
そして、引用発明1において、前記「(2)ア」において検討したように引用例の記載事項fからベンチュリノズル装置20が円形断面を有していることが理解でき、このことからもみて、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分及び前記中間部分の内側とタービンホイール16との間に形成される空間の断面は環状であって、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの第2の部分が当該空間を通って流れるから、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分及び前記中間部分の内側とタービンホイール16との間に形成される空間のうちベンチュリノズル装置20の前記上流部分の内側とタービンホイール16との間に形成される部分は、本件補正発明の「チューブと前記収束部分との間に画定され」る「環状路」に相当し、引用発明1の「ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、」「前記空間を通って流れる第2の部分」は、本件補正発明の「主流れ」に相当する。
更に、本件補正後の請求項1には「環状路がチューブと前記収束部分との間に画定されて・・・(中略)・・・チューブの少なくとも一部」(下線は、当審が付与した。)と記載されており、発明の詳細な説明にも「チューブの下流端は、混合チャンバ16から距離X1で終端している。チューブ22の上流端は、収束部分14の入口から距離X2で外に延びている。・・・(中略)・・・X1およびX2は、装置の1つの構成において、チューブの上流端が収束部分内に配置することができ、装置の別の構成において、チューブの下流端が混合チャンバの内部に配置することができるように、正または負とすることができる。」(段落0071、0072)と記載されていることから、本件補正発明は、前記チューブの上流端が前記収束部分の入口よりも上流側に延び、又は前記チューブの下流端が前記収束部分の出口よりも下流側に延びたものをも包含する。そして、引用発明1において、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分がタービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出することは、タービンハウジング16の内部がベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分が流れる流路を画定していることにほかならない。
そうすると、引用発明1の「ベンチェリノズル装置20内に配置されてベンチェリノズル装置20の入口から前記上流部分を貫通して前記中間部分の途中まで延在し、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分及び前記中間部分の内側との間に空間を形成し、出口が前記中間部分内に位置するタービンハウジング16と、」「を含み、」「ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、タービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出する中央部分と、前記空間を通って流れる第2の部分とが、ベンチュリノズル装置20の前記中間部分内において合わさる」ことは、本件補正発明の「環状路がチューブと前記収束部分との間に画定されて、主流れ用の第1の流路を形成するように前記収束部分内に配置され、前記チューブの内部に副流れ用の第2の流路を画定するチューブの少なくとも一部と、」「を含」むことに相当する。
c.引用例には、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分と前記第2の部分とについて、「in the region of the narrowest cross-section of the Venturi nozzle arrangement a central part-quantity of the flow ・・・ is combined with the second part-quantity of the flow」と記載され(前記「(2)アd」参照)、請求人は、審判請求書において、「引用文献1(当審注:本審決における引用例)は、ベンチュリノズル配置の最も狭い断面で、内管からの流れが、ベンチュリノズル配置の入口部分を通る流れと合わさると述べているにすぎません。」と主張している(請求の理由「3.本願発明が特許されるべき理由」参照)。しかしながら、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分は、タービンホイール14を通過して回転トルクを与える際、その反作用として不可避的に、長手中心方向に対して角度をなす速度成分を有することとなるから、引用発明1において、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分は、タービンハウジング16の出口から流出すると、ベンチュリノズル装置20の前記中間部分内において、少なくとも一定程度はベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記第2の部分と混合されると解される。そして、この解釈は、「combine」の語義(join or merge to form a single unit or substance)や、国際出願日における明細書や請求の範囲に記載され、特許法第184条の4第1項の翻訳文において「混合(する)」と翻訳された「mix」の語義(combine or put together to form one substance or mass)(いずれも、オックスフォード新英英辞典(Oxford Dictionary of English))とも矛盾するものではない。
そうすると、引用発明1のベンチュリノズル装置20の「断面が変化しない中間部分」は、本件補正発明の「混合チャンバ」に相当する。そして、前記「(2)ア」において検討したように、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分ないし前記下流部分のうち前記中間部分が最も断面が狭く、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分はベンチュリノズル装置20の入口から下流にいくに従って断面が狭くなり、ベンチュリノズル装置20の前記下流部分はベンチュリノズル装置20の出口に向かって下流にいくに従って断面が広くなるから、引用発明1においても、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分と、当該上流部分の下流側に連続する、ベンチュリノズル装置20の前記中間部分との接続部において、本件補正発明でいうところの「ベンチュリ」が画定されており、ベンチュリノズル装置20の出口の圧力は、当然、当該接続部の圧力よりも高くなる。
してみれば、引用発明1の「ベンチュリノズル装置20の入口から下流にいくに従って断面が狭くなる上流部分と、前記上流部分の下流側に連続し、断面が変化しない中間部分と、前記中間部分の下流側に連続し、ベンチュリノズル装置20の出口に向かって下流にいくに従って断面が広くなる下流部分とからなるベンチュリノズル装置20と、」「を含」むことは、本件補正発明の「- ベンチュリが収束部分の端部と混合チャンバとの間に画定されるように、混合チャンバへの入口を定める混合チャンバの第1の端部に連結された収束部分と、- 前記混合チャンバの出口を定める前記混合チャンバの第2の端部に連結された拡散器部分であって、使用時、出口の圧力が、前記ベンチュリの圧力よりも大きいように構成された拡散器部分と、」「を含」むことに相当する。
更に、引用発明1において、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分と前記第2の部分とがベンチュリノズル装置20の前記中間部分内において混合されれば、ベンチュリノズル装置20の前記中間部分から前記下流部分に入る流れは、当然、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分と前記第2の部分とが混合された流れとなる。そうすると、引用発明1の「ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、タービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出する中央部分と、前記空間を通って流れる第2の部分とが、ベンチュリノズル装置20の前記中間部分内において合わさる」ことは、本件補正発明の「前記装置は、使用時、主流れが前記混合チャンバで副流れと混合して、前記拡散器部分に入ることができる混合流を形成するように、構成される」ことに相当する。
d.以上のとおり、引用発明1は、本件補正発明を特定する事項の全てを備えているから、本件補正発明は、引用例に記載された発明である。
イ.本件補正発明と引用発明2の対比・判断
本件補正発明と引用発明2を対比する。
a.引用発明2の「流れる水からの流れエネルギーを電気的エネルギーに変換する」ことは、本件補正発明の「水流から電気を発生させる」ことに相当するから、引用発明2の「流れる水からの流れエネルギーを電気的エネルギーに変換する水中タービン10」は、本件補正発明の「水流から電気を発生させるための装置」に相当する。
b.引用発明2のベンチュリノズル装置20の「ベンチュリノズル装置20の入口から下流にいくに従って断面が狭くなる上流部分」及び「ベンチュリノズル装置20の出口に向かって下流にいくに従って断面が広くなる下流部分」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本件補正発明の「収束部分」及び「拡散器部分」に相当する。引用発明2の「タービンハウジング16」、「発電機18」及び「タービンホイール14」は、その構成及び機能からみて、それぞれ、本件補正発明の「チューブ」、「発電機」及び「タービン」に相当する。そうすると、引用発明2の「タービンハウジング16内に配置され、発電機18の軸に回転不能に連結されたタービンホイール14と、を含」むことは、本件補正発明の「発電機に連結可能なタービンと、を含み、前記タービンは前記チューブ内に配置され」ることに相当し、引用発明2の、タービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出する「ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、中央部分」は、本件補正発明の「副流れ」に相当する。
そして、引用例の記載事項fからみて、引用発明2は、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分の内側とタービンホイール16との間に形成される空間が完全には2つに分離されていない、すなわち当該空間の断面が環状であるものをも包含しており、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの外側部分が当該空間を通って流れるから、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分の内側とタービンホイール16との間に形成される空間は、本件補正発明の「チューブと前記収束部分との間に画定され」る「環状路」に相当し、引用発明2の 、前記空間を通って流れる、「ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、」「外側部分」は、本件補正発明の「主流れ」に相当する。
更に、前記「ア」で検討したとおり、本件補正発明は、前記チューブの上流端が前記収束部分の入口よりも上流側に延びたものをも包含する。そして、引用発明2において、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分がタービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出することは、タービンハウジング16の内部がベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分が流れる流路を画定していることにほかならない。
そうすると、引用発明2の「ベンチェリノズル装置20内に配置されてベンチェリノズル装置20の入口から前記上流部分の途中まで延在し、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分との間に空間を形成し、出口が前記上流部分内に位置し、断面が前記出口近傍で前記出口に向かって下流にいくに従って広くなるタービンハウジング16と、」「を含み、」「ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、中央部分が、タービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出し、外側部分が前記空間を通って流れる」ことは、本件補正発明の「環状路がチューブと前記収束部分との間に画定されて、主流れ用の第1の流路を形成するように前記収束部分内に配置され、前記チューブの内部に副流れ用の第2の流路を画定するチューブの少なくとも一部と、」「を含」むことに相当する。
c.引用例には、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、タービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出した前記中央部分と、前記空間を通った前記外側部分と、の混合について、直接的な記載はない。しかしながら、前記「ア」において引用発明1について検討したのと同様に、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分は、タービンホイール14を通過する際、不可避的に、長手中心方向に対して角度をなす速度成分を有することとなり、加えて、タービンハウジング16は、その断面が出口近傍で前記出口に向かって下流にいくに従って広くなっている。更に、タービンハウジング16がベンチェリノズル装置20の前記上流部分の途中まで延在し、その出口がベンチェリノズル装置20の前記上流部分内に位置していることから、長手中心方向についてタービンハウジング16の出口の位置にある、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記外側部分は、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分により絞られ、長手中心方向に対して角度をなす速度成分を有することとなる。そうすると、引用発明2において、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分は、タービンハウジング16の出口から流出すると、ベンチュリノズル装置20の前記上流部分及びその下流の前記中間部分内において、少なくとも一定程度はベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記外側部分と混合すると解される。
なお、引用例には、「[0011] At least one baffle wall like a guide vane extending in the water outflow direction is then advantageously provided in the region of the Venturi nozzle arrangement on the flow outlet side in order to substantially avoid the turbulence of the emerging flow of water.」(仮訳:この場合、流出する水流の乱流を実質的に回避するために、流出側のベンチュリノズル装置の領域に、水の流出方向に延びる案内羽根のような少なくとも1つのバッフル壁を設けるのが有利である。)との記載及び「In order to prevent the production of energy-absorbing turbulence in the total flow quantity flowing out due to the radial components of the outer part-quantity or part-quantities of the flow, a baffle wall 22 like a guide vane extending in the longitudinal central direction of the underwater turbine is provided on the outlet side and is also guided a little way into the outlet side of the turbine housing 16 of the shrouded turbine 12 and passes radially through the outlet side of the Venturi nozzle arrangement.」との記載(前記「(2)アf」参照)がある。しかしながら、当該記載を参酌しても、引用発明2のバッフル壁22は、その構造からして、ベンチュリノズル装置20を流れる流れ全体に亘る乱流を防止するが、ベンチュリノズル装置20の内側かつタービンハウジング16の出口より下流側の空間であって、バッフル壁22により二分された一対の空間の一方を流れる流れにおける乱流の発生及び当該空間の他方を流れる流れにおける乱流の発生までを防止するものではない。かえって、引用例の前記記載には、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記外側部分が半径方向の速度成分を有することが開示されている。引用例の前記記載は、引用発明2についての前記認定を異ならせるものではない。
そうすると、前記「ア」において引用発明1について検討したのと同様に、引用発明2のベンチュリノズル装置20の「断面が変化しない中間部分」は、本件補正発明の「混合チャンバ」に相当し、引用発明2の「ベンチュリノズル装置20の入口から下流にいくに従って断面が狭くなる上流部分と、前記上流部分の下流側に連続し、断面が変化しない中間部分と、前記中間部分の下流側に連続し、ベンチュリノズル装置20の出口に向かって下流にいくに従って断面が広くなる下流部分とからなるベンチュリノズル装置20と、」「を含」むことは、本件補正発明の「- ベンチュリが収束部分の端部と混合チャンバとの間に画定されるように、混合チャンバへの入口を定める混合チャンバの第1の端部に連結された収束部分と、- 前記混合チャンバの出口を定める前記混合チャンバの第2の端部に連結された拡散器部分であって、使用時、出口の圧力が、前記ベンチュリの圧力よりも大きいように構成された拡散器部分と、」「を含」むことに相当する。
更に、引用発明2において、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分と前記外側とがベンチュリノズル装置20の前記上流部分及び前記中間部分内において混合されれば、ベンチュリノズル装置20の前記中間部分から前記下流部分に入る流れは、当然、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分と前記外側部分とが混合された流れとなる。そうすると、「ベンチュリノズル装置20を流れる流れの、中央部分がタービンハウジング16内を通って流れてタービンハウジング16の出口から流出し、外側部分が前記空間を通って流れる」引用発明2は、本件補正発明の「前記装置は、使用時、主流れが前記混合チャンバで副流れと混合して、前記拡散器部分に入ることができる混合流を形成するように、構成される」ことに相当する事項を備えている。
d.以上のとおり、引用発明2は、本件補正発明を特定する事項の全てを備えているから、本件補正発明は、引用例に記載された発明である。
ウ.請求人の主張の検討
a.請求人は、審判請求書において、十分な長さの領域が拡散器および収束部分の間に提供され、流れが拡散器領域に入る前に2つの流れが混合することができるという点において、本願発明の装置と引用例に開示されている装置との間には構造的な違いがあり、そのような領域は引用例の図1または2に存在せず、引用例に開示されている装置は、内管から出る流れが収束部分の流れと混合することができ、合流が拡散器部分に入る前に、実質的に均一な流れを提供する、拡散器部分の前の領域を提供していない旨主張している(請求の理由「3.本願発明が特許されるべき理由」参照)。
しかしながら、本件補正後の請求項1には「前記装置は、使用時、主流れが前記混合チャンバで副流れと混合して、前記拡散器部分に入ることができる混合流を形成するように、構成される」としか記載されておらず、前記拡散器部分に入る混合流における混合の程度は何ら特定されていない。更に、本件補正後の発明の詳細な説明には、本願発明の一実施形態として、「混合チャンバ16は、副および主流れが合流して、実質的に均一な流れを形成することができる領域を形成し、この実質的に均一な流れは、拡散器部分を通る流れにおける十分な圧力回復により、ベンチュリでの低い圧力と拡散器部分の出口での高い方の圧力との間の圧力差を維持するのが可能になる速度プロファイルを有して、混合チャンバを出て拡散器部分20に入る前に実質的に均一である。」(段落0056)との記載がある一方、「チューブの出口におけるチューブの外の高速主流れ32は、チューブを通り、チューブの端部から出た遅い方の副流れ34を主流れに引き込む助けとなる。副流れ34は、主流れ32と混ざるときに加速する。ベンチュリの上流から混合チャンバの内部に向かうX1、つまりチューブの出口の位置を変えることで、非常に乱れて複雑な流れ状態である様々な混合特性がもたらされる。」(段落0074)とも記載されている。そうすると、チューブの下流端の位置についても何ら特定されていない本件補正後の請求項1に係る発明である本件補正発明において、混合チャンバにおいて形成される「使用時、主流れが前記混合チャンバで副流れと混合して、前記拡散器部分に入ることができる混合流」を、当該混合流が前記拡散器部分に入る地点である「前記混合チャンバの出口を定める前記混合チャンバの第2の端部」において実質的に均一な流れと限定的に解することはできない。そして、引用発明1において、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分と前記第2の部分とが、また引用発明2において、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分と前記外側部分とが、ベンチュリノズル装置20の前記中間部分内において、少なくとも一定程度は混合すると解されることは、先に述べたとおりである。
b.請求人は、審判請求書において、引用例の[0011]及び[0026]の記載からみて、引用例の装置は、「最も狭い」領域が2つの流れの十分な混合が拡散器部分への実質的に均一な流れを提供することができるようにするのに十分な長さでないので、出力端における乱流を回避するためにバッフル壁の追加が必要とされている、すなわち、拡散器部分における乱流の防止は、引用例の装置では、バッフル壁によって実現し、本件補正発明では、拡散器部分の前に位置する、混合チャンバを有することによって、まず第一に拡散器部分への実質的に均一な流れを提供することによって実現しており、バッフル壁の存在は、引用例の装置が「主流れが前記混合チャンバで副流れと混合」するように混合チャンバを有することを反対教示している旨も主張している。
しかしながら、前記「a」で検討したとおり、本件補正発明において、混合チャンバにおいて形成される「使用時、主流れが前記混合チャンバで副流れと混合して、前記拡散器部分に入ることができる混合流」を、当該混合流が前記拡散器部分に入る地点である「前記混合チャンバの出口を定める前記混合チャンバの第2の端部」において実質的に均一な流れと限定的に解することはできない。更に、バッフル壁が存在しているとしても、引用発明2において、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分と前記外側部分とが、ベンチュリノズル装置20の前記中間部分内において、少なくとも一定程度は混合すると解されることは、先に述べたとおりである。
c.請求人は、平成30年11月5日付けの上申書において、家庭用混合弁又は蛇口などの、大規模な乱流又は旋回が起きる低速装置では、ベンチュリの下流の短い長さ又は部分において混合が起こることはあり得るが、引用例に記載された装置は、完全な乱流レジームで非常に高いレイノルズ数で動作し、当業者であれば、そのような混合が「最も狭い断面領域」において起こることはないとを理解する旨主張している。
しかしながら、引用例には、引用例に記載された水中タービンを小川、川又は海で用いることは記載されているが(前記「(2)アa」参照)、その速度について特段限定はされていないし、かえって「[0006] Due to the increase in the flow rate of the water in the turbine, this turbine can also be used in slow-flowing stretches of water.」(仮訳:タービン内における水の流量が増加するため、このタービンは、流れが遅い水域でも使用することができる。)と記載されているように、タービン内において流速は上がるとはいえ、引用発明1を流れが遅い水域において使用することが記載されている。
d.更に、請求人は、前記上申書において、CFDモデルを示しつつ、高速環状水である主流れとより低速で動く副流れは、副流れチューブ終端の下流でかなりの距離にわたって径方向にかなり分離したままである旨主張している。
しかしながら、前記CFDモデルは、主流れ及び副流れの流速は図中の色の濃度により推認できるものの、主流れ及び副流れの流れの状態は明らかではない。更に、本件補正後の請求項1を引用する請求項11に係る発明は、前記チューブ内に一連の半径方向支持ブレードをさらに含むものであって、本件補正後の発明の詳細な説明を参照すると、前記半径方向支持ブレードは、タービンによって引き起こされる副流れの旋回流を打ち消し、前記チューブから出た流れを可能な限り軸方向に近くするためのものである。そうすると、前記半径方向支持ブレードを含まないものを包含する本件補正発明は、前記チューブから出た副流れが前記タービンにより引き起こされる旋回流の成分を有しているものをも包含するものである。そして、先に検討したとおり、引用発明1及び引用発明2において、タービンホイール14を通過後の、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分は、不可避的に、流れ中心方向に対して角度をなす速度成分を有しているから、請求人が示した前記CFDモデルの結果をもって、引用発明1において、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分と前記第2の部分とが、また引用発明2において、ベンチュリノズル装置20を流れる流れの前記中央部分と前記外側部分とが、ベンチュリノズル装置20の前記中間部分内において混合することはないとはいえない。
e.以上のとおりであるから、請求人のこれらの主張は、いずれも、本件補正発明は引用例に記載された発明であるとの判断を異ならせるものではない
(4)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
本件補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年8月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし36に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記「第2[理由]1(2)」に記載されたとおりのものである。


2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、(1)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、(2)この出願の請求項2?6、9?26及び32?36に係る発明は、その優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2ないし5に記載された技術及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.米国特許出願公開第2010/0289268号明細書 (本審決における「引用例」)
引用文献2.米国特許第3980894号明細書
引用文献3.米国特許出願公開第2010/0201132号明細書
引用文献4.米国特許第4021135号明細書
引用文献5.国際公開第2011/114156号

3.引用文献
原査定の理由の通知で引用された引用文献1、すなわち引用例1の記載事項は、前記「第2[理由]2(2)」に記載したとおりである。

4.対比・判断
前記「第2[理由]2」で検討したとおり、本件補正発明は、本願発明を特定する事項である「第1の流路」を「主流れ用の第1の流路」とし、本願発明を特定する事項である「第2の流路」を「副流れ用の第2の流路」とした上で、「前記装置は、使用時、主流れが前記混合チャンバで副流れと混合して、前記拡散器部分に入ることができる混合流を形成するように、構成される」という事項を加入することにより、本願発明を限定したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]2(3)、(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明であるから、本願発明も、引用例に記載された発明である。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-14 
結審通知日 2019-03-19 
審決日 2019-04-01 
出願番号 特願2015-517851(P2015-517851)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F03B)
P 1 8・ 113- Z (F03B)
P 1 8・ 575- Z (F03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田谷 宗隆  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 長馬 望
久保 竜一
発明の名称 流体流れによるエネルギーを変換する装置  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  

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